(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記樹脂接着材がエポキシ樹脂からなり、前記導電ペーストが有機系樹脂のバインダと該バインダに混入された銀粒子とを有する銀ペーストであることを特徴とする請求項1に記載のディスク装置用サスペンションのアクチュエータ搭載部。
ディスク装置用サスペンションのアクチュエータ素子の電極と金属製の導電プレートとを電気的に接続しかつ前記電極と前記導電プレートとの間に樹脂接着材を存するブリッジ接続部に、前記樹脂接着材に対する濡れ性が前記電極および前記導電プレートに対する濡れ性よりも低い導電ペーストを塗布する導電ペーストの塗布方法であって、
前記導電ペーストをエアの圧力によって前記ブリッジ接続部に向けて吐出するディスペンサに収容し、
前記電極と前記導電プレートとの間の前記樹脂接着材上に形成される前記導電ペーストの第1の部分の厚さが目標厚さ以上となるように前記導電ペーストの使用経過時間に応じて前記エアの圧力を設定し、
前記第1の部分の厚さが前記導電プレート上に形成される前記導電ペーストの第2の部分の厚さおよび前記電極上に形成される第3の部分の厚さよりも小さくなるように前記エアの圧力によって前記導電ペーストを前記ディスペンサから前記ブリッジ接続部に向けて吐出し、
前記使用経過時間が長くなるほど前記エアの圧力を大きくすることにより、前記導電ペーストの前記目標厚さを維持することを特徴とする導電ペーストの塗布方法。
ディスク装置用サスペンションのアクチュエータ素子の電極と金属製の導電プレートとを電気的に接続しかつ前記電極と前記導電プレートとの間に樹脂接着材を存するブリッジ接続部に、前記樹脂接着材に対する濡れ性が前記電極および前記導電プレートに対する濡れ性よりも低い導電ペーストを塗布するペースト塗布装置であって、
前記導電ペーストをエアの圧力によって前記ブリッジ接続部に向けて吐出するディスペンサと、
前記導電ペーストの吐出を制御する制御部とを有し、該制御部は、
前記ディスペンサ内の前記導電ペーストの使用経過時間に応じた情報を得る手段と、
前記電極と前記導電プレートとの間の前記樹脂接着材上に形成される前記導電ペーストの第1の部分の厚さが目標厚さ以上となるように前記導電ペーストの前記使用経過時間に応じて前記エアの圧力を設定し、前記第1の部分の厚さが前記導電プレート上に形成される前記導電ペーストの第2の部分の厚さおよび前記電極上に形成される第3の部分の厚さよりも小さくなるように前記エアの圧力によって前記導電ペーストを前記ディスペンサから前記ブリッジ接続部に向けて吐出し、前記使用経過時間が長くなるほど前記エアの圧力を大きくすることにより前記導電ペーストの前記目標厚さを維持する手段と、
を具備したことを特徴とするペースト塗布装置。
【背景技術】
【0002】
パーソナルコンピュータ等の情報処理装置に、ハードディスク装置(HDD)が使用されている。ハードディスク装置は、スピンドルを中心に回転する磁気ディスクと、ピボット軸を中心に旋回するキャリッジなどを含んでいる。キャリッジはアクチュエータアームを有し、ボイスコイルモータ等のポジショニング用モータによって、ピボット軸を中心にディスクのトラック幅方向に旋回する。
【0003】
前記アクチュエータアームにサスペンションが取付けられている。サスペンションは、ロードビーム(load beam)と、ロードビームに重ねて配置されるフレキシャ(flexure)などを含んでいる。フレキシャの先端付近に形成されたジンバル部に、磁気ヘッドを構成するスライダが取付けられている。スライダには、データの読取りあるいは書込み等のアクセスを行なうための素子(トランスジューサ)が設けられている。
【0004】
ディスクの高記録密度化に対応するためには、ディスクの記録面に対して磁気ヘッドをさらに高精度に位置決めできるようにすることが必要である。そのために、下記の特許文献1や特許文献2に開示されているように、ポジショニング用モータ(ボイスコイルモータ)とPZT(ジルコンチタン酸鉛)等の圧電体からなるアクチュエータ素子とを併用するDSAサスペンションが開発されている。DSAは、デュアルステージアクチュエータ(Dual Stage Actuator)の略である。
【0005】
前記アクチュエータ素子に電圧を印加し、アクチュエータ素子を変形させることによって、サスペンションの先端側をスウェイ方向(トラック幅方向)に高速で微小量移動させることができる。このアクチュエータ素子は、サスペンションに設けられたアクチュエータ搭載部に配置されている。
【0006】
前記圧電体は板状をなし、その厚み方向の一方の面に一方の電極が設けられ、他方の面に他方の電極が設けられている。一方の電極は、例えば銀ペースト等の導電ペーストからなるブリッジ接続部を介して、グランド側である導電プレートに電気的に接続されている。他方の電極は、例えばボンディングワイヤ等の導電部材を介して、フレキシャの配線部材に接続されている。あるいは特許文献2に開示されているように、配線部材の端子部が導電性接着材を介してアクチュエータ素子の電極に接続されることもある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前記したように導電アクチュエータの一方の電極は、銀ペースト等の導電ペーストからなるブリッジ接続部によって、アクチュエータ搭載部の導電プレートに電気的に接続されている。ブリッジ接続部の電気抵抗値を小さくするには、より多くの導電ペーストを使用すればよい。しかし銀ペースト等の導電ペーストは、一般の樹脂系接着材と比較して高価であるため、ブリッジ接続部に使用する導電ペーストの使用量が多くなるほど、アクチュエータ搭載部のコストが高くなる。
【0009】
前記導電ペーストは、ディスペンサによってブリッジ接続部に塗布される。ここで導電ペーストの使用量を管理するには、例えば導電ペーストの吐出量が一定となるようにディスペンサを制御するか、あるいは導電ペーストの塗布面積が一定になるように画像処理を利用するなどの手段が考えられる。しかし導電ペーストの使用量を極力減らすために吐出量や塗布面積を制御すると、ブリッジ接続部に塗布された導電ペーストの形態によっては、導通試験を行なったときに、電気抵抗値が許容値を越えてしまう事例が見られた。例えば電極と導電プレートとの間には、アクチュエータ素子を導電プレートに固定するために電気絶縁性の樹脂接着材が存在している。この樹脂接着材に対して前記導電ペーストの濡れ性が低いため、導電ペーストをブリッジ接続部に薄く塗布すると、樹脂接着材上において導電ペーストの“ひけ”が生じ、導電ペーストが細ることによって、電気抵抗値が許容値を越えてしまう原因になることがわかった。
【0010】
従ってこの発明の目的は、導電ペーストの使用量を抑制しつつアクチュエータ素子と導電プレートとの間のブリッジ接続部の導通を確実になすことができるディスク装置用サスペンションのアクチュエータ搭載部と、導電ペーストの塗布方法およびペースト塗布装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のアクチュエータ搭載部は、電極を有するアクチュエータ素子と、前記アクチュエータ素子を収容する開口を有した
金属製の導電プレートと、前記アクチュエータ素子を前記導電プレートに固定する電気絶縁性の樹脂接着材と、前記導電プレートと前記電極とを電気的に接続するためのブリッジ接続部に塗布され
前記樹脂接着材に対する濡れ性が前記電極および前記導電プレートに対する濡れ性よりも低い導電ペーストとを有している。そして前記ブリッジ接続部の前記導電ペーストは、第1の部分と、第2の部分と、第3の部分とを有している。第1の部分は、前記電極と前記導電プレートとの間の前記樹脂接着材上に形成され、該樹脂接着材上の厚さが、前記導電プレート上の厚さおよび前記電極上の厚さよりも小さい。第2の部分は、前記導電プレート上に形成され、該導電プレート上のペースト幅が前記第1の部分のペースト幅よりも大きい。第3の部分は、前記電極上に形成され、該電極上のペースト幅が前記第1の部分のペースト幅よりも大きい。前記アクチュエータ素子の一例は、PZT等の圧電体からなる。前記導電ペーストの一例は、有機系樹脂のバインダと該バインダに混入された導電粒子としての銀粒子とを有し、使用経過時間が長くなるとバインダの粘度が上昇する。
【0012】
導電ペーストの粘度が経過時間とともに上昇する理由の1つは、例えば熱硬化型のバインダ(接着材)を使用する導電ペーストの場合、室温であってもその熱による化学反応で徐々に硬化が進むからである。保存時の指定温度がマイナス40℃の冷凍であれば反応は抑制されるが、指定温度外では、反応がある程度進むことになる。紫外線硬化型のバインダを使用する導電ペーストの場合には、例えば蛍光灯に含まれる紫外線成分(UV成分)の影響によって徐々に硬化が進むこともある。
【0013】
本発明に係る導電ペーストの塗布方法では、前記電極と前記導電プレートとの間の樹脂接着材上に形成される
前記導電ペーストの第1の部分の厚さが目標
厚さ以上となるように前記導電ペーストの使用経過時間に応じて前記エアの圧力を設定し、
前記第1の部分の厚さが前記導電プレート上に形成される前記導電ペーストの第2の部分の厚さおよび前記電極上に形成される第3の部分の厚さよりも小さくなるように前記エアの圧力によって前記導電ペーストを前記ディスペンサから前記ブリッジ接続部に向けて吐出する。しかも前記使用経過時間が長くなるほど前記エアの圧力を大きくすることにより、前記導電ペーストの前記目標
厚さを維持する。
【0014】
本発明に係るペースト塗布装置の制御部は、ディスペンサ内の前記導電ペーストの使用経過時間に応じた情報を得る手段と、前記電極と前記導電プレートとの間の樹脂接着材上
に形成される前記導電ペーストの第1の部分の厚さが目標
厚さ以上となるように前記使用経過時間に応じて前記エアの圧力を設定し、
前記第1の部分の厚さが前記導電プレート上に形成される前記導電ペーストの第2の部分の厚さおよび前記電極上に形成される第3の部分の厚さよりも小さくなるように前記エアの圧力によって前記導電ペーストを前記ディスペンサから前記ブリッジ接続部に向けて吐出し、前記使用経過時間が長くなるほど前記エアの圧力を大きくすることにより前記導電ペーストの前記目標
厚さを維持する手段とを具備している。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ディスク装置用サスペンションのアクチュエータ搭載部において、アクチュエータ素子の電極と導電プレートとを電気的に接続するブリッジ接続部の導電ペーストの使用量を抑制できかつ該ブリッジ接続部の電気的な導通を確保することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、第1の実施形態に係るアクチュエータ搭載部を備えたディスク装置用サスペンションについて、
図1から
図9を参照して説明する。
図1に示すディスク装置(HDD)1は、ケース2と、スピンドル3を中心に回転するディスク4と、ピボット軸5を中心に旋回可能なキャリッジ6と、キャリッジ6を駆動するためのポジショニング用モータ(ボイスコイルモータ)7などを有している。ケース2は、図示しない蓋によって密閉される。
【0018】
図2はディスク装置1の一部を模式的に示す断面図である。
図1と
図2に示されるように、キャリッジ6にアーム(キャリッジアーム)8が設けられている。アーム8の先端部にサスペンション10が取付けられている。サスペンション10の先端部に、磁気ヘッドを構成するスライダ11が設けられている。ディスク4が高速で回転すると、ディスク4とスライダ11との間にエアベアリングが形成される。ポジショニング用モータ7によってキャリッジ6が旋回すると、サスペンション10がディスク4の径方向に移動することにより、スライダ11がディスク4の所望トラックまで移動する。
【0019】
図3はDSAタイプのサスペンション10の平面図である。
図4はこのサスペンション10を反対側から見た図である。DSAはデュアルステージアクチュエータ(Dual Stage Actuator)の略である。このサスペンション10は、キャリッジ6のアーム8(
図1と
図2に示す)に固定されるベース部20と、アクチュエータ搭載部21と、ロードビーム22と、配線付きフレキシャ(flexure with conductors)23などを備えている。ベース部20には、前記アーム8に形成された孔8a(
図2に示す)に挿入されるボス部20aが形成されている。
【0020】
図3に矢印Xで示す方向がロードビーム22の長手方向すなわちサスペンション10の長手方向(前後方向)、矢印Yが幅方向である。矢印Sがスウェイ方向である。ロードビーム22の基部(後端部)には、厚さ方向に弾性的に撓むことができるヒンジ部25が形成されている。アクチュエータ搭載部21は、ベース部20とロードビーム22との間に設けられ、ロードビーム22をスウェイ方向(矢印Sで示す方向)に動かす機能を有している。
【0021】
図4に示すようにフレキシャ23はロードビーム22に沿って配置されている。ロードビーム22の先端部付近すなわちフレキシャ23の先端部付近に、ジンバル部として機能するタング23aが形成されている。タング23aには、磁気ヘッドをなす前記スライダ11が取付けられている。
【0022】
スライダ11の端部には、例えばMR素子のように磁気信号と電気信号とを変換可能な素子28(
図4に示す)が設けられている。これらの素子28によって、ディスク4に対するデータの書込みあるいは読取り等のアクセスが行なわれる。スライダ11と、ロードビーム22と、フレキシャ23等は、ヘッドジンバルアセンブリ(head gimbals assembly)を構成している。フレキシャ23の後部23bはベース部20の後方に延びている。
【0023】
図5は、フレキシャ23の幅方向に沿う断面の一例を示している。フレキシャ23は、例えばステンレス鋼からなるメタルベース30と、メタルベース30上に形成された配線部材31とを備えている。配線部材31は、ポリイミド等の電気絶縁材料からなる絶縁層32と、絶縁層32上に形成された書込用導体33および読取用導体35と、ポリイミド等の電気絶縁材料からなるカバー層37などを含んでいる。書込用導体33と読取用導体35とは、スライダ11の前記素子28に接続されている。フレキシャ23のメタルベース30は、例えばレーザースポット溶接等の溶接部W1(
図4に一部を示す)によって、ロードビーム22に固定されている。
【0024】
図6は、
図3中のF6−F6線に沿うアクチュエータ搭載部21の断面図である。アクチュエータ搭載部21は、第1のプレート要素41と第2のプレート要素42とを厚さ方向に重ねてなる導電プレート40と、PZT等の圧電体からなる一対のアクチュエータ素子51,52(
図3,
図4,
図6に示す)を含んでいる。導電プレート40の一部(後部)は前記ベース部20をなしている。
【0025】
導電プレート40は、ベース部20に連なる固定部分40a(
図4に示す)と、ヒンジ部25に連なる可動部分40bと、これら固定部分40aと可動部分40bとをつなぐ部分40cとを有している。固定部分40aはベース部20に対して実質的に動かない部分である。可動部分40bは、アクチュエータ素子51,52によってスウェイ方向に動かされる部分である。
【0026】
導電プレート40には、アクチュエータ素子51,52を収納可能な開口61,62が形成されている。これら開口61,62にアクチュエータ素子51,52が収容されている。アクチュエータ素子51,52は、例えばエポキシ樹脂などの電気絶縁性の樹脂接着材65によって、導電プレート40に固定されている。この樹脂接着材65は、導電プレート40とアクチュエータ素子51,52との間に設けられている。
【0027】
図6に一方のアクチュエータ素子51を代表して示すように、アクチュエータ素子51の厚さ方向の一方の面に第1の電極71が設けられている。アクチュエータ素子51の他方の面に第2の電極72が設けられている。これら電極71,72は、スパッタリングあるいはメッキ等によってPZTの表面に形成され、平坦な形状の電極面をなしている。なお、他方のアクチュエータ素子52もこのアクチュエータ素子51と同様に構成されている。
【0028】
一方のアクチュエータ素子51の第1の電極71は、銀ペースト等の導電ペースト80(
図3と
図6に示す)によって、グランド側の導電プレート40に電気的に接続されている。他方のアクチュエータ素子52の第1の電極71も、導電ペースト80によって、導電プレート40に電気的に接続されている。これら導電ペースト80によって、各アクチュエータ素子51,52の電極71と導電プレート40とを電気的に接続するブリッジ接続部81が形成されている。
【0029】
ブリッジ接続部81に使用される導電ペースト80は、例えばエポキシ樹脂等の有機系樹脂のバインダと、該バインダに混入された導電粒子としての銀粒子とを含んでいる。バインダの一例は熱硬化型の接着材であるが、紫外線硬化型であってもよい。この導電ペースト80は、例えば180℃以下の温度で低温焼成することにより、バインダが硬化するとともに銀粒子同士が互いに接することにより、電気的な導通が得られる。
【0030】
導電ペースト80の焼成温度は、フレキシャ23の樹脂部、例えば絶縁層32やカバー層37の耐熱温度以下である。また、アクチュエータ素子51,52にPZT等の圧電体を用いる場合には、該圧電体の分極量が急激に下がる圧電体のキュリー点(℃)の値の2分の1以下の温度が望ましい。
【0031】
図3と
図6に示すように、ブリッジ接続部81の導電ペースト80は、樹脂接着材65上において樹脂接着材65に接着した第1の部分80aと、導電プレート40上において導電プレート40に接着した第2の部分80bと、電極71,72上において電極71,72に接着した第3の部分80cとを有している。第1の部分80aのペースト高さH1(
図6に示す)は、導電プレート40上の第2の部分80bのペースト高さよりも小さく、かつ、電極71,72上の第3の部分80cのペースト高さよりも小さい。しかも第2の部分80bと第3の部分80cのペースト幅Y1(
図3に示す)は、いずれも、第1の部分80aのペースト幅よりも大きい。このような形状の導電ペースト80において、第1の部分80aのペースト高さH1を、下記の目標高さH2以上とすることにより、ブリッジ接続部81の導電性を確保しつつ、導電ペースト80の使用量を極力少なくすることができる。
【0032】
アクチュエータ素子51,52の第2の電極72(
図6に示す)は、それぞれ、端子部90,91を介して、配線部材31の導体31a,31b(
図4に示す)に接続されている。これらの端子部90,91は互いに共通の構成である。
図6に一方の端子部90が示されている。この端子部90は、メタルベース92と、メタルベース92上に形成された電気絶縁層93と、電気絶縁層93上に形成された導体層94とを有している。導体層94は、カバー層95によって覆われている。この端子部90は、銀ペースト等の導電性接着材96によって、アクチュエータ素子51の第2の電極72に固定されている。他方の端子部91も前記端子部90と同様に、導電性接着材96によってアクチュエータ素子52の第2の電極72に固定されている。
【0033】
ブリッジ接続部81を構成する導電ペースト80は、
図7に模式的に示すペースト塗布装置100によって塗布される。以下にペースト塗布装置100について説明する。
図7に示されたペースト塗布装置100は、複数のサスペンション10を所定ピッチで並べて保持する可動ステージ110と、可動ステージ110を矢印M1で示す方向に移動させる駆動機構111と、上下方向に移動可能な昇降ステージ112と、昇降ステージ112を矢印M2で示す方向に移動させる昇降機構113と、昇降ステージ112に設けられたシリンジ114を含むディスペンサ115と、エア供給源116と、ステージコントローラ117と、導電ペースト80の吐出を制御するシーケンサ等を備えた制御部118を含んでいる。エア供給源116からシリンジ114に送られるエアの圧力は、図示しない圧力調整機構によって変化させることができる。
【0034】
図8は、冷凍保存されていた導電ペースト80が冷凍庫から取出され、ディスペンサ115にセットされた後の時間(この明細書では導電ペーストの使用経過時間と呼ぶ)と、前記導電ペースト80の第1の部分80aの高さH1(ペースト高さ)との関係を示している。
図8に示す線分H2が目標高さの一例である。この目標高さH2であれば、第1の部分80aに含まれる導電粒子(銀粒子)が導体として十分機能することにより、ブリッジ接続部81の電気抵抗値が実用に適した小さな値となる。
【0035】
本実施形態のペースト塗布装置100の制御部118は、導電ペースト80の使用経過時間に関する情報を得る手段として、導電ペースト80がディスペンサ115にセットされた後の時間をカウントするタイマを備えている。例えば、導電ペースト80がシリンジ114に収容されてからの経過時間がタイマによってカウントされる。
【0036】
図8に示されるように、ディスペンサ115から吐出された導電ペースト80の高さH1は、使用経過時間が長くなるほど小さくなる。また、エアの圧力が大きいほどペースト高さH1が大きくなる。この導電ペースト80は、使用経過時間が長くなるにつれてバインダの粘度が大きくなる性質を有しているためである。
【0037】
図9は、導電ペースト80の使用経過時間と、制御部118によって制御されるエアの圧力と、ペースト高さH1との関係を示している。制御部118は、導電ペースト80の使用経過時間に応じて目標高さH2を維持できるエア圧となるように、使用経過時間が長くなるほどエア圧を大きくする。
【0038】
冷凍庫で保存されていた導電ペースト80がシリンジ114にセットされる。シリンジ114内の導電ペースト80は、エア供給源116から送られるエアの圧力によって、シリンジ114の吐出口114aからブリッジ接続部81に向けて吐出される。吐出された導電ペースト80の量が従来のように多ければ、
図6に2点鎖線L1で示すように導電ペースト80がビード状に盛り上がる。
【0039】
導電ペースト80は、導電プレート40や電極71等の金属に対する濡れ性は良好であるが、樹脂接着材65に対する濡れ性が低い。このためブリッジ接続部81の電気抵抗が許容値を越えない範囲で導電ペースト80の量を少なくすることにより、樹脂接着材65上の第1の部分80aのペースト高さとペースト幅を、第2の部分80bおよび第3の部分80cのペースト高さとペースト幅よりも小さくすることができる。このため第1の部分80aが多少くびれた形状となる。
【0040】
このような形状の第1の部分80aのペースト高さH1が目標高さH2以上となるようにディスペンサ115を制御することにより、ブリッジ接続部81の電気抵抗値が許容値を越えることを回避できる。すなわち制御部118は、ブリッジ接続部81の導電ペースト80の第1の部分80aのペースト高さH1が目標高さH2以上となるようにエアの圧力を制御するのである。
【0041】
ここで制御部118は、導電ペースト80の使用経過時間に応じてエアの圧力を設定するとともに、該エアの圧力によって導電ペースト80をブリッジ接続部81に向けて吐出するようにディスペンサ115を制御する。しかも
図9に示すように、使用経過時間が長くなるほど前記エアの圧力を大きくして目標高さH2を維持するように、使用経過時間に応じて導電ペースト80の吐出を制御するコンピュータプログラムが組込まれている。このように構成されたペースト塗布装置100によって、導電ペースト80の目標高さH2が維持され、ブリッジ接続部81の電気抵抗値が許容値を越えないようにすることができる。
【0042】
以下に前記サスペンション10の動作について説明する。
ポジショニング用モータ7によってキャリッジ6(
図1と
図2に示す)が旋回すると、サスペンション10がディスク4の径方向に移動することにより、磁気ヘッドのスライダ11がディスク4の記録面の所望トラックまで移動する。アクチュエータ素子51,52に電圧が印加されると、電圧に応じてアクチュエータ素子51,52が互いに反対方向に歪むことにより、ロードビーム22をスウェイ方向(
図3に矢印Sで示す方向)に微小量移動させることができる。例えば一方のアクチュエータ素子51が伸び、他方のアクチュエータ素子52が縮むことにより、ロードビーム22がスウェイ方向に移動する。このためスライダ11をスウェイ方向に高速かつ高精度に位置決めすることができる。
【0043】
図10は第2の実施形態に係るサスペンション10Aを示している。このサスペンション10Aのアクチュエータ搭載部21Aは1つのアクチュエータ素子51を備えている。導電プレート40の両側部に、U形に湾曲した一対の腕部200を有している。アクチュエータ素子51の第1の電極71は、第1の実施形態と同様に、銀ペースト等の導電ペースト80を介して、グランド側である導電プレート40に電気的に接続されている。アクチュエータ素子51の第2の電極(図示せず)は、第1の実施形態と同様に、端子部を介してフレキシャ23の配線部材31に接続されている。
【0044】
この実施形態のアクチュエータ搭載部21Aでは、アクチュエータ素子51に電圧が印加されて変形すると、一対の腕部200のうちの一方が縮み、他方が伸びることにより、ロードビーム22をスウェイ方向(
図10に矢印Sで示す)に移動させることができる。それ以外の構成と効果は第1の実施形態のアクチュエータ搭載部21を備えたサスペンション10と共通であるため、両者に共通の部位に共通の符号を付して説明を省略する。
【0045】
なお本発明を実施するに当たって、ディスク装置用サスペンションの具体的な態様をはじめとして、アクチュエータ素子や導電プレート、樹脂接着材、導電ペーストなどアクチュエータ搭載部を構成する各要素の具体的な態様を種々に変更して実施できることは言うまでもない。またペースト塗布装置についても種々の形態で実施することが可能である。