【実施例】
【0037】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明する。本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。配合量については特に断りのない限り質量%で示す。
【0038】
表1の比率で各種脂肪族第1級アミンのアルキレンオキサイド付加物を試作した。
【0039】
製造方法は、表1記載の原料アミン1モルを撹拌式1リットルオートクレーブに仕込み150〜160℃にてエチレンオキサイド(EO)及びプロピレンオキサイド(PO)を表1のモル数付加させ目的の脂肪族第1級アミンのアルキレンオキサイド付加物を製造した。
【0040】
製造したサンプルのエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドの付加モル数を
1H−NMRにより解析した。
図1は実施例6の脂肪族第1級アミンのアルキレンオキサイド付加物(POE(2)オクチルアミン)の
1H−NMR測定結果及びピークである。
【0041】
オクチルアミンの末端のCH
3−(a)のプロトン積分比を3とすると、窒素の隣のポリオキシエチレンの−CH
2−(e)のプロトン積分比が3.97であるので、平均付加数は(e)/2=1.99である。また、ヒドロキシル基の隣のポリオキシエチレンの−CH
2−(f)のプロトン積分比が5.42であるので、ポリオキシエチレンの付加数は(f)/2=2.71である。よって、平均付加モル数は 2.34となり、仕込みモル比に応じた試料が生成されていることを確認した。
【0042】
【表1】
【0043】
得られた本発明増泡剤(実施例1〜5、25〜28、62)及びその周辺物質(比較例1〜3)と起泡性界面活性剤を表2〜6の比率で配合して洗浄剤サンプルを試作した。各洗浄剤サンプルに対して泡立ちの速さ、起泡量等の評価を行った。なお、表3中、「ソフタゾリンLSB」、「ソフタゾリンLAO」、「ソフタゾリンCH」、「ソフタゾリンCL」は、川研ファインケミカル(株)製の両性界面活性剤である。
【0044】
評価方法は以下の通りである。
(A)速泡性
洗浄剤サンプルを界面活性剤濃度が1wt%になるように水で希釈し調整した。動的表面張力計(KRUSS社製「BUBBLE PRESSURE TENSIOMETER−BP−2」)を用い、測定温度25℃での最大泡圧法による継時変化に伴う動的表面張力を測定した。得られたデータを基に、泡立ち初期の時間と推定される0.1〜1秒での動的表面張力曲線の比較を行った。起泡性界面活性剤単独成分の1%水溶液の動的表面張力結果と比較して、本発明増泡剤(実施例1〜5、25〜28)及びその周辺物質(比較例1〜3)を配合したサンプルはどのような動的表面張力曲線を描くか解析を行った。起泡性界面活性剤単独成分の1%水溶液の動的表面張力結果よりも高い表面張力値を示していた場合、気液界面に吸着する界面活性剤が飽和吸着となるまで多くの時間を要してしまうため、吸着速度が遅い、即ち速泡性に欠けるといえる。反対に、起泡性界面活性剤単独成分の1%水溶液の動的表面張力結果よりも低い表面張力値を示していた場合、飽和吸着となるまでの時間が短いので速泡性が高いといえる。
【0045】
泡立ち初期の時間とされる0.1〜1秒の中間である0.5秒での表面張力値を用い、次式(I)より、表面張力変化の差分を算出した。
【0046】
【数1】
【0047】
式(I)中のγ
0は、0.5秒での起泡性界面活性剤単独成分の1%水溶液の動的表面張力値(mN/m)で、γは洗浄剤サンプルの動的表面張力値(mN/m)である。式(I)にて算出された値が大きい程表面張力低下能即ち速泡性に優れ、反対に値が小さい、または負である時は、速泡性が低い、または無いといえる。
【0048】
本発明者らは、式(I)にて算出された値の中で、特に3mN/m以上の値を示すサンプルに関しては、官能評価でも明らかな速泡性を有しているという相関性があることを見出した。よって、本評価において速泡性が高い為には、3mN/m以上であることが好ましい。
【0049】
(B)起泡量
各洗浄剤サンプルについてパネラー10名による手洗いによる官能評価を行った。表1の比較例6を基準として評価し、以下の評価基準に従って評価した。
多い・・・○
普通・・・△
少ない・・×
【0050】
(C)泡質
各洗浄剤サンプルについてパネラー10名による手洗いによる官能評価を行った。表1の比較例5を基準(普通)として評価し、細かいか粗いかという評価基準に従って評価した。
【0051】
(D)使用感試験(速泡性、泡質、総合評価)
各洗浄剤剤サンプルについて、パネラー10名により、手洗いによる使用試験を行い、
使用時の泡立ち(泡のボリューム)、
泡質(泡の形状、泡質のクリーミィさ)、
すすぎ時の感触(すすぎやすさ、ヌルつき)、
総合使用感(手洗い後のつっばり感を含めた総合評価)
の官能試験を行った。評価は表1の比較例5を標準3点とした。
【0052】
5段階相対評価とし、評価結果の平均点を算出し、算出された平均値が
4.5 以上の場合を 非常に良好(◎)
4.5〜3.5の場合を 良好(○)
3.5〜3.0の場合を 普通(△)、
3.0 以下の場合を 不良(×)
と表示した。
【0053】
(E)低温安定性の評価
増粘性試験で試作した各サンプルを−5℃で12時間静置したのち、サンプルを取りだし状態観察する。
評価は以下の2段階
× 白濁、結晶析出のあったもの
○ 透明な溶液形態を保持しているもの
【0054】
(F)速泡性測定
表4〜6に記した配合比の洗浄剤を総界面活性剤濃度が1wt%になるように精製水で調整した。この水溶液200mLを
図2に表記した泡立て装置の200mL容器(
図2のB)に量り入れ、6枚傾斜パドル翼(
図2のF)を回転させ、200mLメスシリンダー(
図2のA)に収集された泡の量が「100mLに到達した時の時間(秒)」を測定した。この測定で100mLに到達する時間が速い程、速泡性が高いと言える。
【0055】
(G)泡立ち評価
(D)の使用感試験と同様に、各洗浄剤サンプルについて、パネラー10名により、手洗いによる使用試験を行い、使用時の泡の立ち上がりの官能試験を行った。表4の洗浄剤の泡立ち評価は比較例11を、表5の洗浄剤の泡立ち評価は比較例15を、表6の洗浄剤の泡立ち評価は比較例19の標準3点とした。
5段階相対評価とし、評価結果の平均点を算出し、算出された平均値が
4.5 以上の場合を 非常に良好(◎)
4.4〜3.5の場合を 良好(○)
3.4〜3.0の場合を 普通(△)、
2.9 以下の場合を 不良(×)
と表示した。
【0056】
(A)〜(E)の評価結果を下記表2及び表3に、(F)〜(G)の評価結果を下記表4〜6に併記する。
【0057】
【表2】
【0058】
【表3】
【0059】
実施例6〜10および比較例4〜6を比較すると、各種脂肪族第1級アミンのアルキレンオキサイド付加物を同じ起泡性界面活性剤(ヤシカリ石鹸)と同比率で配合しても、起泡量及び速泡性に関して差異が発生する。特に式(1)のR
1で示されるC8である実施例7、9、10の起泡量及び速泡性の改善が顕著である。また比較例5および実施例7、9、10を比較するとアルキレンオキシドの付加モル数が大きくなると発明の効果が消失する。このことは、本発明の効果が特定の構造を有する脂肪族第1級アミンのアルキレンオキサイド付加物に特異的に発生することを示している。また、その効果は従来より増泡剤として使用されている比較例7、8に示される脂肪酸アルカノールアミドやアルキルグリセリルエーテル類の増泡効果に比較しても優れており、特に速泡性に関してすぐれている。
【0060】
また、表2の実施例11〜16および表3の実施例17〜24によると、本発明の効果が特定の構造を有する脂肪族第1級アミンのアルキレンオキサイド付加物の増泡効果は様々な起泡性界面活性剤に対しても優れた増泡効果、速泡効果を与えることがわかる。
【0061】
【表4】
【0062】
【表5】
【0063】
【表6】
【0064】
表4、表5、表6に記した実施例1〜5、25〜38の化合物、及び比較例2〜3の化合物による「100mL到達時の秒数」を比較すると、各種脂肪族第1級アミンのアルキレンオキサイド付加物を同種の起泡性界面活性剤と同比率で配合しても、鎖長やアルキレンオキサイド付加量によって速泡性及び起泡量に関して差異が発生する。特に式(1)のR
1で示されるC8の化合物である実施例2、4、5、27、28、の中でも4、27、28の速泡性及び起泡量の改善が顕著である。また、実施例2及び比較例2を比較すると、アルキレンオキサイドの付加モル数が小さくなる若しくは大きくなると発明の効果が消滅する。また、実施例1〜5、25〜28、並びに比較例1〜3を比較すると、式(1)のR
1で示される鎖長がC8を極大とした速泡性及び起泡量の改善が顕著である。このことは、本発明が特定の構造を有する脂肪族第1級アミンのアルキレンオキサイド付加物に特異的に発生することを示している。また、その効果は従来より増泡剤として使用されている脂肪酸アルカノールアミド類の増泡効果と比較しても優れており、特に速泡性に関して優れていることが分かる。
【0065】
本発明の増泡剤と各種起泡性界面活性剤を組み合わせて以下の洗浄剤組成物を試作した。
いずれも優れた速泡性と泡量を示し総合評価は良い成績であった。
【0066】
実施例56 シャンプー組成物
ポリオキシエチレン(3)ラウリルエーテル硫酸ナトリウム 15.00%
ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン 4.00%
実施例28のアミン 5.00%
エチレングリコールジステアレート 0.50%
カチオン化セルロース 0.50%
クオータニウム−33 1.00%
セチルアルコール 0.60%
ジメチルポリシロキサン(20cs) 1.00%
グルタミン酸 5%蒸留水希釈液のpH=4.0
防腐剤 0.20%
色素 適量
香料 0.30%
精製水 残余
【0067】
実施例57 殺菌用ハンドソープ組成物
ラウリン酸 5.50%
ラウリン酸アミドプロピルジメチルアミンオキシド 3.00%
POE(3)ラウリルエーテル酢酸 30%水溶液 3.00%
塩化ベンザルコニウム 1.00%
塩化ベンゼトニウム 0.50%
実施例4のアミン 2.00%
N−ヤシ脂肪酸アシル−N’−カルボキシメチル−N’−エチレンジアミンナトリウム塩
9.50%
トリエタノールアミン pH=7.8とする量
グリセリン 3.00%
精製水 残余
【0068】
実施例58 ボディソープ
ラウリン酸 6.00%
ミリスチン酸 8.00%
パルミチン酸 2.00%
水酸化カリウム 3.89%
ラウリン酸アミドプロピルヒドロキシスルホベタイン 3.00%
ラウロイル−N−メチル−β−アラニンカリウム 2.00%
実施例27のアミン 3.00%
ヤシ油脂肪酸アシルグリシンカリウム塩 0.50%
グリセリン 5.00%
エチレングリコールジステアレート 2.00%
ヒドロキシプロピルメチルセルロース 0.20%
EDTA・4ナトリウム 0.20%
メチルパラベン 0.20%
精製水 残余
【0069】
実施例59 透明固形洗浄剤組成物
牛脂脂肪酸ナトリウム 32.00%
ヤシ脂肪酸ナトリウム 8.00%
N-ココイル-グルタミン酸ナトリウム 2.00%
実施例4のアミン 5.00%
濃グリセリン 8.00%
白糖 10.00%
エタノール 15.00%
ラウリン酸アミドプロピルジメチルアミンオキサイド 7.00%
ヒドロキシエタンジホスホン酸 0.50%
精製水 残余
※製造直後の重量に対して80%まで乾燥させて透明固形洗浄剤を得る
【0070】
実施例60 固形洗浄剤組成物
アミソフトGS−11 味の素株式会社製 49.10%
アミソフトCK−11 味の素株式会社製 25.00%
ベヘニルアルコール 2.00%
イソステアリルアルコール 3.00%
アラントイン 0.20%
実施例27のアミン 15.00%
EDTA・2Na 0.10%
酸化チタン 0.10%
精製水 5.50%
【0071】
実施例61 台所用洗浄剤
ポリオキシエチレン(2)ラウリルエーテル硫酸ナトリウム 50.00%
ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン 30.00%
ヤシ油脂肪酸モノエタノールアミド 6.00%
実施例28のアミン 1.00%
EDTA・2Na 0.10%
クエン酸 0.10%
精製水 12.80%