特許第6014393号(P6014393)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6014393
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月25日
(54)【発明の名称】画像処理装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/03 20060101AFI20161011BHJP
【FI】
   A61B6/03 360J
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-157581(P2012-157581)
(22)【出願日】2012年7月13日
(65)【公開番号】特開2014-18287(P2014-18287A)
(43)【公開日】2014年2月3日
【審査請求日】2015年6月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】橋元 惇
(72)【発明者】
【氏名】小林 正樹
【審査官】 増渕 俊仁
(56)【参考文献】
【文献】 特許第3842171(JP,B2)
【文献】 特許第4891956(JP,B2)
【文献】 特許第4891957(JP,B2)
【文献】 特開2009−106335(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0130975(US,A1)
【文献】 特開2009−247505(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00−6/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体の断層画像内において背骨を特定する背骨特定部と、
前記断層画像内において2つの大腿骨を特定する大腿骨特定部と、
前記断層画像内において、背骨と2つの大腿骨の位置に基づいて、大腿部の脂肪を避けるように内臓脂肪の解析領域を設定する解析領域設定部と、
前記断層画像に設定された内臓脂肪の解析領域内において脂肪を特定する内臓脂肪特定部と、
を有する、
ことを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像処理装置において、
前記解析領域設定部は、前記断層画像内において、背骨と2つの大腿骨に取り囲まれるように内臓脂肪の解析領域を設定する、
ことを特徴とする画像処理装置。
【請求項3】
請求項2に記載の画像処理装置において、
前記解析領域設定部は、前記断層画像内において、背骨から一方の大腿骨に向かう境界線と背骨から他方に向かう境界線とにより取り囲まれた内臓脂肪の解析領域を設定する、
ことを特徴とする画像処理装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の画像処理装置において、
被検体の腹部から得られる複数の断層画像を上腹部と下腹部に分ける腹部分別部をさらに有し、
前記背骨特定部は、上腹部に属する各断層画像内における上腹部の背骨の位置に基づいて、下腹部に属する各断層画像内において背骨探索領域を設定し、その背骨探索領域内において下腹部の背骨を特定し、
前記大腿骨特定部は、下腹部に属する各断層画像内において、下腹部の背骨の位置に基づいて2つの大腿骨探索領域を設定し、各大腿骨探索領域ごとに1つの大腿骨を探索することにより、2つの大腿骨探索領域内において2つの大腿骨を特定し、
前記解析領域設定部は、下腹部に属する各断層画像内において、下腹部の背骨と2つの大腿骨の位置に基づいて内臓脂肪の解析領域を設定する、
ことを特徴とする画像処理装置。
【請求項5】
請求項4に記載の画像処理装置において、
前記背骨特定部は、下腹部に属する各断層画像内において、被検体の中心側から上腹部の背骨側に向かって広がる扇状の背骨探索領域を設定し、その背骨探索領域内において面積が最大となる骨を探索して下腹部の背骨とする、
ことを特徴とする画像処理装置。
【請求項6】
請求項4または5に記載の画像処理装置において、
前記大腿骨特定部は、下腹部に属する各断層画像内において、被検体の中心と下腹部の背骨を通る境界線により被検体を2つの領域に分割し、分割された各領域ごとに、被検体の中心から下腹部の背骨とは反対側に各大腿骨探索領域を設定し、各大腿骨探索領域ごとに面積が最大となる骨を探索して1つの大腿骨とすることにより、2つの大腿骨探索領域内において2つの大腿骨を特定する、
ことを特徴とする画像処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置に関し、特に、画像内において脂肪を特定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
脂肪は、皮下に形成される皮下脂肪と内臓周辺に形成される内臓脂肪とに大別され、このうち内臓脂肪は、生活習慣病等の診断において注目されている。そのため、脂肪全体の量を反映した体脂肪量の計測だけではなく、脂肪の種類を判別して各種類ごとに脂肪量などを計測できることが望ましい。
【0003】
こうした事情から、本願の出願人は、特許文献1において、X線CT装置などから得られる断層画像内で脂肪を種別する技術を提案している。特許文献1には、例えばX線CT装置の断層画像内において皮下脂肪と内臓脂肪とを識別することができる画期的な技術が記載されている。さらに、本願の出願人は、特許文献2,3において、内臓脂肪を識別するにあたって好適な改良技術を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3842171号公報
【特許文献2】特許第4891956号公報
【特許文献3】特許第4891957号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した背景技術に鑑み、本願の発明者は、動物等の被検体から得られる画像内において内臓脂肪を特定する技術について研究開発を重ねてきた。
【0006】
例えば、動物の大腿部には比較的大きな脂肪があるため、内臓脂肪を的確に特定するにあたっては、大腿部の脂肪と内臓脂肪とを識別できることが望ましい。また、動物の上腹部と下腹部では、互いに内臓の位置や形状が異なるため、それを考慮したうえで内臓脂肪を特定することが望ましい。
【0007】
本発明は、その研究開発の過程において成されたものであり、その目的は、被検体の画像内において内臓脂肪を特定するにあたっての改良技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的にかなう好適な画像処理装置は、被検体の断層画像内において背骨を特定する背骨特定部と、前記断層画像内において2つの大腿骨を特定する大腿骨特定部と、前記断層画像内において、背骨と2つの大腿骨の位置に基づいて、大腿部の脂肪を避けるように内臓脂肪の解析領域を設定する解析領域設定部と、前記断層画像に設定された内臓脂肪の解析領域内において脂肪を特定する内臓脂肪特定部と、を有することを特徴とする。
【0009】
上記構成において、被検体の断層画像は、公知の様々な医療関連装置から得ることが可能である。特にX線CT装置において形成される断層画像が好適である。また、被検体の好適な例は、マウスやラットやハムスターなどの小動物である。そして、上記構成によれば、大腿部の脂肪を避けるように内臓脂肪の解析領域が設定され、その解析領域内において脂肪が特定されるため、大腿部の脂肪を避けつつ内臓脂肪を特定することができる。
【0010】
望ましい具体例において、前記解析領域設定部は、前記断層画像内において、背骨と2つの大腿骨に取り囲まれるように内臓脂肪の解析領域を設定する、ことを特徴とする。
【0011】
望ましい具体例において、前記解析領域設定部は、前記断層画像内において、背骨から一方の大腿骨に向かう境界線と背骨から他方に向かう境界線とにより取り囲まれた内臓脂肪の解析領域を設定する、ことを特徴とする。
【0012】
望ましい具体例において、前記画像処理装置は、被検体の腹部から得られる複数の断層画像を上腹部と下腹部に分ける腹部分別部をさらに有し、前記背骨特定部は、上腹部に属する各断層画像内における上腹部の背骨の位置に基づいて、下腹部に属する各断層画像内において背骨探索領域を設定し、その背骨探索領域内において下腹部の背骨を特定し、前記大腿骨特定部は、下腹部に属する各断層画像内において、下腹部の背骨の位置に基づいて2つの大腿骨探索領域を設定し、各大腿骨探索領域ごとに1つの大腿骨を探索することにより、2つの大腿骨探索領域内において2つの大腿骨を特定し、前記解析領域設定部は、下腹部に属する各断層画像内において、下腹部の背骨と2つの大腿骨の位置に基づいて内臓脂肪の解析領域を設定する、ことを特徴とする。
【0013】
上記構成によれば、複数の断層画像が上腹部と下腹部に分けられるため、例えば、上腹部に属する各断層画像については上腹部に適した処理により、下腹部に属する各断層画像については下腹部に適した処理により、内臓脂肪を特定することが可能になる。例えば、下腹部に属する各断層画像については、下腹部の背骨と2つの大腿骨の位置に基づいて内臓脂肪の解析領域が設定され、その解析領域を利用して内臓脂肪が特定される。
【0014】
望ましい具体例において、前記背骨特定部は、下腹部に属する各断層画像内において、被検体の中心側から上腹部の背骨側に向かって広がる扇状の背骨探索領域を設定し、その背骨探索領域内において面積が最大となる骨を探索して下腹部の背骨とする、ことを特徴とする。
【0015】
望ましい具体例において、前記大腿骨特定部は、下腹部に属する各断層画像内において、被検体の中心と下腹部の背骨を通る境界線により被検体を2つの領域に分割し、分割された各領域ごとに、被検体の中心から下腹部の背骨とは反対側に各大腿骨探索領域を設定し、各大腿骨探索領域ごとに面積が最大となる骨を探索して1つの大腿骨とすることにより、2つの大腿骨探索領域内において2つの大腿骨を特定する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、被検体の画像内において内臓脂肪を特定するにあたっての改良技術が提供される。例えば、本発明の好適な態様によれば、大腿部の脂肪を避けつつ内臓脂肪を特定することができる。また、本発明の他の好適な態様によれば、上腹部に属する各断層画像については上腹部に適した処理により、下腹部に属する各断層画像については下腹部に適した処理により、内臓脂肪を特定することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施において好適な画像処理装置の全体構成を示す図である。
図2】小動物のX線CT撮影を説明するための図である。
図3】境界断面の具体例を示す図である。
図4】背骨特定部における処理を説明するための図である。
図5】大腿骨特定部における処理を説明するための図である。
図6】解析領域設定部における処理を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は、本発明の実施において好適な画像処理装置100の全体構成を示す図であり、図1には、画像処理装置100とX線CT装置200で構成された画像処理システムが示されている。なお、本発明の実施においては、X線CT装置200に代えて、他の画像形成装置を用いてもよい。
【0019】
図1に示すX線CT装置200は、被検体のX線CT撮影を行う装置であり、これには既存の装置を利用することができる。図1の画像処理システムの対象となる被検体の好適な例は、マウスやラットやハムスターなどの小動物である。そこで、以下においては、小動物を被検体とした場合について説明する。
【0020】
X線CT装置200は、小動物のX線CT撮影を行って、その小動物の腹部内を映し出した複数の断層画像を形成する。X線CT装置200は、小動物の背骨の伸長方向に対して略直交する各断層画像を形成し、背骨の伸長方向に沿って略等間隔で配列された複数の断層画像を得る。
【0021】
画像処理装置100は、X線CT装置200において形成された複数の断層画像(画像データ)を画像処理する。画像処理装置100は、例えば、CPUやメモリやハードディスクなどのハードウェアと、それらハードウェアの動作を制御するプログラムなどのソフトウェアとによって実現することができる。図1には、そのハードウェアとソフトウェアとが協働して実現する代表的な機能が示されている。
【0022】
つまり、画像処理装置100は、画像記憶部10と腹部分別部20と内臓脂肪特定部30と背骨特定部40と大腿骨特定部50と解析領域設定部60と内臓脂肪量算出部70と表示部80などを有している。なお、これらの機能に対応したプログラムを用いて、コンピュータにより画像処理装置100を実現してもよい。
【0023】
図1の画像処理装置100は、小動物の腹部から得られた複数の断層画像(画像データ)を画像処理して内臓脂肪を特定し、その小動物の内臓脂肪量を算出する。そこで、図1の画像処理装置100による処理について以下に詳述する。なお、図1に示した部分(構成)については、以下の説明においても図1の符号を利用する。
【0024】
図2は、小動物のX線CT撮影を説明するための図である。図2には、X線CT撮影の対象となる小動物AのX線画像が図示されている。X線CT撮影は、小動物Aの腹部を対象として、図2に示すZ軸方向に沿って、撮影開始ポイントSから撮影終了ポイントEまでの区間において行われる。つまり、まず撮影開始ポイントSにおいてZ軸に直交する断層画像が形成され、Z軸に沿って例えば等間隔で互いに平行な複数の断層画像が、撮影終了ポイントEに達するまで次々に形成される。
【0025】
なお、撮影開始ポイントSと撮影終了ポイントEは、X線CT装置200(図1)に予め設定された位置とされてもよいし、例えば図2に示す小動物AのX線画像を確認したユーザ(検査者)が、そのX線画像内において、撮影開始ポイントSと撮影終了ポイントEを所望の位置に設定できるようにしてもよい。
【0026】
こうして、X線CT撮影により小動物Aから複数の断層画像が得られると、それら複数の断層画像(画像データ)が画像処理装置100(図1)に送られて画像記憶部10に記憶される。
【0027】
腹部分別部20は、画像記憶部10に記憶された複数の断層画像を上腹部と下腹部に分別する。腹部分別部20は、図2の撮像開始ポイントS側から順に各断層画像を確認し、上腹部と下腹部の境界に対応した境界断面Dを探索する。
【0028】
図3は、境界断面Dの具体例を示す図である。各断層画像は複数の画素で構成されており、腹部分別部20は、各断層画像ごとにそれを構成する複数の画素の画素値(CT値)を確認する。そして、腹部分別部20は、各断層画像内において、例えば閾値などを利用して、骨に対応した比較的高い(大きい)画素値の画素を特定する。
【0029】
各断層画像内において骨に対応した複数の画素が特定されると、腹部分別部20は、その断層画像内において、骨に対応した複数の画素で構成された塊(画素領域)のうち、面積が最大の塊を背骨B1であると判断する。さらに、腹部分別部20は、その断層画像内において、背骨B1の両側に領域E1と領域E2を設定し、領域E1と領域E2の各領域内において、骨に対応した画素があるか否かを確認する。
【0030】
腹部分別部20は、図2の撮像開始ポイントS側から順に各断層画像を確認し、骨に対応した画素があり(条件1)、且つ、背骨B1の両側に設定された領域E1と領域E2の両方の領域において骨に対応した画素がある(条件2)断層画像を、境界断面Dと判定する。これにより、図2の撮像開始ポイントS側からZ軸方向に沿って順に配列された複数の断層画像の中から、背骨B1の両側に骨盤B2がある図3の境界断面Dが決定される。
【0031】
なお、境界断面Dを判定するための上記条件2を、背骨B1の両側に設定された領域E1と領域E2のうちの少なくとも一方の領域において骨に対応した画素があるとする条件3に代えてもよい。
【0032】
また、領域E1と領域E2の位置や大きさは、X線CT撮影時における小動物の姿勢に応じて決定するようにしてもよい。また、各断層画像内において、背骨B1から見た場合に体厚の薄い方向を背中側と判定し、背骨B1から背中側に向かう方向に対して垂直な方向に沿って、背骨B1を挟むように領域E1と領域E2を設定するようにしてもよい。
【0033】
境界断面Dが探索されると、その境界断面Dを境界として、撮像開始ポイントS側(図2参照)にある複数の断層画像が上腹部と判定され、撮像終了ポイントE側(図2参照)にある複数の断層画像が下腹部と判定される。なお、境界断面Dも下腹部に含める。
【0034】
こうして、複数の断層画像が上腹部と下腹部に分別されると、内臓脂肪特定部30(図1)は、上腹部と下腹部に対して互いに異なる処理を適用して、各断層画像内において内臓脂肪に対応した画素を特定する。
【0035】
内臓脂肪特定部30は、上腹部に適した処理として、例えば、特許文献1(特許第3842171号公報)または特許文献2(特許第4891956号公報)に記載された処理を利用する。
【0036】
例えば、特許文献2に説明されるように(特許文献2の図5等参照)、各断層画像内において、皮下脂肪カーソルが破線の矢印に沿って被検体の外側から重心位置に向かって移動する。皮下脂肪カーソルは、筋肉画素へ到達するまで移動される。皮下脂肪カーソルが筋肉画素へ到達するまでに通過した脂肪画素を皮下脂肪画素と判定する。そして、被検体を取り囲む全方位から皮下脂肪カーソルを重心位置に向かって直線に沿って移動させて皮下脂肪画素を判定する。こうして、被検体を取り囲む全方位(全角度)において皮下脂肪画素が判定され、皮下脂肪画素を除いた残りの脂肪画素が内臓脂肪画素と判定される。
【0037】
一方、下腹部に適した処理においては、解析領域設定部60により、各断層画像に対して内臓脂肪の解析領域が設定される。解析領域設定部60は、下腹部に属する各断層画像内において、背骨特定部40により特定される背骨の位置と、大腿骨特定部50により特定される2つの大腿骨の位置に基づいて、内臓脂肪の解析領域を設定する。
【0038】
図4は、背骨特定部40における処理を説明するための図である。背骨特定部40は、下腹部に属する各断層画像内において下腹部の背骨を特定する。図4には、下腹部に属する複数の断層画像のうちの1つである例示断面Rが図示されている。図4に示す例示断面Rは、図2の例示断面Rの位置に対応した断層画像である。
【0039】
背骨特定部40は、下腹部の背骨を特定するにあたって、上腹部の背骨の位置を利用する。背骨特定部40は、上腹部に属するいくつかの断層画像(全てでもよい)について、各断層画像内において背骨を特定する。例えば、上腹部の各断層画像内において、閾値などを利用して、骨に対応した比較的高い(大きい)画素値の画素を特定し、その断層画像内において、骨に対応した複数の画素で構成された塊(画素領域)のうち、面積が最大の塊を背骨であると判断する。そして、背骨特定部40は、上腹部に属するいくつかの断層画像内で特定した背骨の位置の平均を算出する。これにより、上腹部の背骨の位置P2が得られ、図4に示すように、下腹部の例示断面R内で利用される。
【0040】
さらに、背骨特定部40は、下腹部の例示断面R内において、小動物の断面の重心位置P1を算出する。例えば、例示断面R内における小動物の全断面に関する面積重心を重心位置P1とする。
【0041】
そして、背骨特定部40は、例示断面R内において、小動物の重心位置P1と上腹部の背骨の位置P2を通る直線L1を中心線として、重心位置P1を頂点とした扇状の背骨探索領域E3を設定する。扇状の背骨探索領域E3の中心角は、予め設定された角度(例えば20〜30度)とされる。なお、ユーザ(検査者)が背骨探索領域E3の中心角を調整できるようにしてもよい。
【0042】
こうして、背骨探索領域E3が設定されると、背骨特定部40は、背骨探索領域E3内において、例えば閾値などを利用して、骨に対応した比較的高い(大きい)画素値の画素を特定し、面積が最大となる骨を探索して下腹部の背骨B3とする。下腹部における断層画像は、背骨B3の他に比較的大きな大腿骨を含む場合があるものの、背骨探索領域E3を利用することにより、大腿骨を避けつつ下腹部の背骨B3を特定することができる。
【0043】
背骨特定部40により下腹部の背骨B3が特定されると、その背骨B3の位置に基づいて大腿骨特定部50により大腿骨が特定される。
【0044】
図5は、大腿骨特定部50における処理を説明するための図である。図5には、図4と同じ例示断面Rが図示されている。大腿骨特定部50は、例示断面R内において、小動物の重心位置P1と下腹部の背骨B3の位置(例えば背骨B3の面積重心位置)を通る直線L2により、小動物の断面を2つの領域に分割する。
【0045】
さらに、大腿骨特定部50は、重心位置P1において直線L2に直交する直線L3を設定する。そして、大腿骨特定部50は、直線L3を境界として下腹部の背骨B3とは反対側の領域において、直線L2を境界として対向する2つの大腿骨探索領域E4,E5を設定する。
【0046】
こうして、2つの大腿骨探索領域E4,E5が設定されると、大腿骨特定部50は、大腿骨探索領域E4内において、例えば閾値などを利用して、骨に対応した比較的高い(大きい)画素値の画素を特定し、面積が最大となる骨を探索して大腿骨B4とする。同様に大腿骨探索領域E5内において、面積が最大となる骨を探索して大腿骨B5とする。
【0047】
背骨特定部40により下腹部の背骨B3が特定され、さらに、大腿骨特定部50により2つの大腿骨B4,B5が特定されると、それらの位置に基づいて解析領域設定部60により内臓脂肪の解析領域が設定される。
【0048】
図6は、解析領域設定部60における処理を説明するための図である。図6には、図4図5と同じ例示断面Rが図示されている。解析領域設定部60は、例示断面R内において、下腹部の背骨B3の位置(例えば背骨B3の面積重心位置)と大腿骨B4の位置(例えば大腿骨B4の面積重心位置)を通る直線L4を設定し、下腹部の背骨B3の位置と大腿骨B5の位置(例えば大腿骨B5の面積重心位置)を通る直線L5を設定する。
【0049】
そして、解析領域設定部60は、直線L4と直線L5を境界線として、これらの境界線により取り囲まれた内臓脂肪の解析領域E6を設定する。例えば、直線L4と直線L5を境界線として二分された領域のうち、小動物の重心位置P1(図4,5参照)が含まれる領域を内臓脂肪の解析領域E6とする。これにより、大腿骨B4,B5の近傍にある大腿部の脂肪Nを避けるように、内臓脂肪の解析領域E6が設定される。
【0050】
背骨特定部40と大腿骨特定部50と解析領域設定部60は、下腹部に属する他の断層画像についても、図4から図6を利用して説明した例示断面Rと同じ処理を実行する。こうして、下腹部に属する複数の断層画像の各々に対して、内臓脂肪の解析領域E6(図6)が設定される。
【0051】
内臓脂肪特定部30は、下腹部に属する各断層画像について、内臓脂肪の解析領域E6内で脂肪を特定する。例えば閾値などを利用して、脂肪に対応した画素値の範囲にある画素を特定する。なお、下腹部に適した処理として、例えば、特許文献3(特許第4891957号公報)に記載された処理を利用してもよい。つまり、内臓脂肪の解析領域E6内において、特許文献3に記載された処理を利用して、内臓脂肪をより的確に特定するようにしてもよい。
【0052】
こうして、内臓脂肪特定部30により、上腹部と下腹部に属する複数の断層画像において内臓脂肪が特定されると、内臓脂肪量算出部70において、小動物の内臓脂肪量が算出される。内臓脂肪量算出部70は、上腹部と下腹部に属する複数の断層画像の各々から得られる内臓脂肪量(内臓脂肪の面積)を加算して、小動物の腹部全体に亘る内臓脂肪量(内臓脂肪の体積)を算出する。その算出にあたって、断層画像間の間隔が利用されてもよい。また、上腹部と下腹部のそれぞれについての内臓脂肪量が算出されてもよい。そして算出された内臓脂肪量は表示部80に表示される。
【0053】
以上、本発明の好適な実施形態を説明したが、上述した実施形態は、あらゆる点で単なる例示にすぎず、本発明の範囲を限定するものではない。本発明は、その本質を逸脱しない範囲で各種の変形形態を包含する。
【符号の説明】
【0054】
10 画像記憶部、20 腹部分別部、30 内臓脂肪特定部、40 背骨特定部、50 大腿骨特定部、60 解析領域設定部、70 内臓脂肪量算出部、80 表示部、100 画像処理装置、200 X線CT装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6