特許第6014406号(P6014406)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6014406高周波回路基板用カバーレイの取り付け方法及びそのカバーレイ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6014406
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月25日
(54)【発明の名称】高周波回路基板用カバーレイの取り付け方法及びそのカバーレイ
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/28 20060101AFI20161011BHJP
【FI】
   H05K3/28 C
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-170752(P2012-170752)
(22)【出願日】2012年8月1日
(65)【公開番号】特開2014-32980(P2014-32980A)
(43)【公開日】2014年2月20日
【審査請求日】2015年6月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000219266
【氏名又は名称】東レ・デュポン株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077012
【弁理士】
【氏名又は名称】岩谷 龍
(72)【発明者】
【氏名】日高 正太郎
(72)【発明者】
【氏名】田中 丈士
(72)【発明者】
【氏名】町田 英明
【審査官】 井上 信
(56)【参考文献】
【文献】 特開平 7− 22741(JP,A)
【文献】 特開昭62−162542(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリイミドフィルム層と融点が250℃以下のフッ素樹脂層からなるカバーレイのフッ素樹脂側を銅張積層体の回路に接するように積層し、カバーレイと銅張積層体とを、カバーレイに使用するフッ素樹脂の融点より低く、150〜200℃の範囲の最大温度で仮止めし、前記積層前におけるカバーレイのポリイミドフィルム層とフッ素樹脂層間の接着強度が3.0N/cm以下であり、最大温度が前記仮止め工程の最大温度より30℃以上高い温度で、フリーテンションでアニール処理を行い、前記アニール処理後の高周波回路基板の密着力をアニール処理前と比較して30倍以上に増大させること特徴とするカバーレイの取り付け方法。
【請求項2】
ポリイミドフィルムと融点が250℃以下のフッ素樹脂とを積層してなり、ポリイミドフィルムが、主として、パラフェニレンジアミン、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル及び4,4’−ジアミノジフェニルエーテルからなる群から選ばれる1以上の芳香族ジアミン成分と、ピロメリット酸二無水物及び3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物からなる群から選ばれる1以上の酸無水物成分とからなり、ポリイミド層とフッ素樹脂層間の接着強度が3.0N/cm以下である、高周波回路基板用カバーレイ。
【請求項3】
請求項2に記載のカバーレイを配線加工した銅張積層体に取り付けて得られる高周波回路基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高周波回路基板用カバーレイの取り付け方法及びそのカバーレイに関するものである。
【背景技術】
【0002】
プリント配線板は広く電子・電機機器に使用されている。中でも、折り曲げ可能なフレキシブルプリント配線板は、パーソナルコンピューターや携帯電話等の折り曲げ部分、ハードディスク等の屈曲が必要な部分に広く使用されている。
【0003】
このようなフレキシブルプリント配線板の基材、及び配線板を保護するためのカバーレイの基材としては、耐熱性、寸法安定性、柔軟性、高屈曲性、薄膜化の容易性等の性質を考慮して、通常各種のポリイミドフィルムが使用されており、ポリイミドフィルムと接着剤を組み合わせたカバーレイが主に使用されている。
【0004】
近年、伝送する情報量の増加に伴って、高周波数用途の回路基板の要求が高まっている。伝送に使用する周波数を増加させると、周波数の増加に比例して、伝送損失も高くなる。伝送損失が高い回路は、実用的ではないため、高周波数で情報を効率的に伝送するためには、伝送損失を下げる必要がある。
【0005】
伝送損失は、基板やカバーレイの誘電率を下げることによって、下げることができるため、低誘電率の基板やカバーレイが求められている。通常、フレキシブルプリント配線板の基板やカバーレイに用いられるポリイミドはフィルム、誘電率が3.0〜3.5であり、低誘電材料としては不十分である。
【0006】
そこで、低誘電化の方法として、基板に用いる回路線(銅張積層体(CCL)側で、銅箔をエッチングしたもの)において銅とポリイミド層の間に、誘電率の低いフッ素樹脂を積層する方法が開発されていた(特許文献1、2)。
【0007】
しかしながら、ポリイミドフィルムを基材とするカバーレイにフッ素樹脂を使用し、かつ回路線側にも同じフッ素樹脂を使用すると、カバーレイを取り付ける工程でフッ素樹脂を溶融させるために融点以上の熱をかけることが必要になる。この場合、カバーレイを取り付ける工程でかかる熱処理で、回路線側のフッ素樹脂も溶融してしまい、配線が撚れてしまうという問題があった。
【0008】
また、基材にフッ素樹脂層を用いていないCCLとしては、ポリイミド等のフィルムと銅箔を、接着剤を介して貼り合わせるものが一般的である。接着剤にはエポキシ系、アクリル系、ポリイミド系接着剤等が用いられる。これに対し、FEP(四フッ化エチレン・六フッ化ポリプロピレン)等に代表されるフッ素樹脂の融点は通常260〜320℃以上であることが知られている。このため、ポリイミドフィルムとフッ素樹脂から成るカバーレイを回路基板にカバーレイを取り付ける場合、フッ素樹脂を溶融させるために少なくとも300℃以上の温度が必要になり、エポキシ系、アクリル系接着剤を用いた場合には回路材の接着剤が劣化する懸念があった。
回路の接着剤にポリイミド系接着剤を用いる、所謂疑似2層CCLを用いた場合でも、ポリイミドとフッ素樹脂からなるカバーレイを取り付ける際の高温暴露により、高温加熱によるCCLの熱膨張の影響で寸法安定性が低下するといった問題があった。
【0009】
また、カバーレイを取り付ける工程で300℃以上の熱を加えるには通常の装置では出来ないため、新たに高温プレスの設備を導入する必要があり、工業的に不利となる。
【0010】
一方で、ポリイミドフィルムとフッ素樹脂からなるカバーレイ装着温度を低くした場合には十分な密着力が得られないため、基板として成り立たないことが問題となる。
【0011】
そのため、ポリイミドフィルムとフッ素樹脂からなるカバーレイを使用した高周波回路基板は、実用化できていなかった。
【0012】
このような事情から、ポリイミドフィルムを基材とするカバーレイにフッ素樹脂を使用する高周波回路基板の実用化に向けた新たな製造方法の開発が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特許第2890747号公報
【特許文献2】特許第4917745号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、ポリイミドフィルムを基材とするカバーレイにフッ素樹脂を使用した場合に、配線が撚れることがなく、得られる高周波回路基板が十分な接着強度を有し、かつ、既存のカバーレイ加工設備とは別に新たな製造設備も必要としない、カバーレイの取り付け方法を提供すること、及びポリイミドフィルムを基材とするカバーレイにフッ素樹脂を使用し、十分な接着強度を有する高周波回路基板を提供すること、並びに該高周波回路基板用カバーレイを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
すなわち、本発明は以下の発明に関する。
[1]ポリイミドフィルム層とフッ素樹脂層からなるカバーレイのフッ素樹脂側を銅張積層体の回路に接するように積層し、カバーレイと銅張積層体とを仮止めし、前記積層前におけるカバーレイのポリイミドフィルム層とフッ素樹脂層間の接着強度が3.0N/cm以下であり、アニール処理を行い、前記アニール処理後の高周波回路基板の密着力をアニール処理前と比較して30倍以上に増大させること特徴とするカバーレイの取り付け方法。
[2]アニール処理の対象が前記仮止めした銅張積層体とカバーレイであって、仮止め工程の最大温度がカバーレイに使用するフッ素樹脂の融点より低く、アニール処理工程での最大温度が前記仮止め工程の最大温度より30℃以上高いことを特徴とする前記[1]記載の方法。
[3]仮止め工程における最大温度が150〜200℃の範囲である前記[2]記載の方法。
[4]アニール処理工程を、フリーテンションで行うことを特徴とする前記[1]〜[3]のいずれかに記載の方法。
[5]カバーレイを配線加工した銅張積層体に取り付けて得られ、前記カバーレイがポリイミド層とフッ素樹脂層との積層体からなる高周波回路基板。
[6]前記フッ素樹脂の融点が250℃以下であることを特徴とする前記[5]記載の高周波回路基板。
[7]ポリイミドフィルムとフッ素樹脂とを積層してなり、ポリイミドフィルムが、主として、パラフェニレンジアミン、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル及び4,4’−ジアミノジフェニルエーテルからなる群から選ばれる1以上の芳香族ジアミン成分と、ピロメリット酸二無水物及び3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物からなる群から選ばれる1以上の酸無水物成分とからなり、ポリイミド層とフッ素樹脂層間の接着強度が3.0N/cm以下である、高周波回路基板用カバーレイ。
[8]ポリイミドフィルムとフッ素樹脂からなるカバーレイであって、前記フッ素樹脂の融点が250℃以下であることを特徴とする前記[7]記載のカバーレイ。
【発明の効果】
【0016】
本発明の製造方法を用いることにより、ポリイミドフィルムを基材とするカバーレイにフッ素樹脂を使用した場フッ素樹脂合に、配線が撚れることがなく、高周波回路基板を製造することができる。また、本発明の製造方法は、既存のカバーレイ加工設備とは別に新たな製造設備を必要としないため、工業的に有利である。本発明の高周波回路基板は、低誘電率のフッ素樹脂を誘電率が低く、伝送損失を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本発明の高周波回路基板の一態様を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明のカバーレイの取り付け方法は、ポリイミドフィルム層とフッ素樹脂層からなるカバーレイのフッ素樹脂側を銅張積層体の回路に接するように積層し、カバーレイと銅張積層体とを仮止めし、前記積層前におけるカバーレイのポリイミドフィルム層とフッ素樹脂層間の接着強度が3.0N/cm以下であり、アニール処理を行い、前記アニール処理後の高周波回路基板の密着力をアニール処理前と比較して30倍以上に増大させること特徴とする。
【0019】
本発明に用いるカバーレイは、ポリイミドフィルムとフッ素樹脂とを積層してなる。
【0020】
前記カバーレイに用いるポリイミドフィルムの製造に際しては、まず芳香族ジアミン成分と酸無水物成分とを有機溶媒中で重合させることにより、ポリアミック酸溶液(以下、ポリアミド酸溶液ともいう。)を得る。
【0021】
前記芳香族ジアミン成分の具体例としては、パラフェニレンジアミン、メタフェニレンジアミン、ベンジジン、パラキシリレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、1,5−ジアミノナフタレン、3,3’−ジメトキシベンチジン、1,4−ビス(3メチル−5アミノフェニル)ベンゼン及びこれらのアミド形成性誘導体等が挙げられる。この中でフィルムの引張弾性率を高くする効果のあるパラフェニレンジアミン、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル等のジアミンの量を調整し、最終的に得られるポリイミドフィルムの引張弾性率が3.0GPa以上にすることが回路基板用途の点から好ましい。これらの芳香族ジアミンのうち、パラフェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテルが好ましい。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。パラフェニレンジアミンと4,4’−ジアミノジフェニルエーテル及び/又は3,4’−ジアミノジフェニルエーテルとを併用する場合、(i)4,4’−ジアミノジフェニルエーテル及び/又は3,4’−ジアミノジフェニルエーテルと、(ii)パラフェニレンジアミンとを69/31〜100/0(モル比)で用いることがより好ましく、70/30〜90/10(モル比)で用いることがとりわけ好ましい。
【0022】
前記酸無水物成分の具体例としては、ピロメリット酸、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、2,3’,3,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、2,3,6,7−ナフタレンジカルボン酸、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル、ピリジン−2,3,5,6−テトラカルボン酸及びこれらのアミド形成性誘導体等の酸無水物が挙げられる。これらの酸無水物のうち、ピロメリット酸、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、2,3’,3,4’−ビフェニルテトラカルボン酸が好ましい。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0023】
本発明のカバーレイに用いるポリイミドフィルムとしては、主として、パラフェニレンジアミン、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル及び4,4’−ジアミノジフェニルエーテルからなる群から選ばれる1以上の芳香族ジアミン成分と、ピロメリット酸二無水物及び3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物からなる群から選ばれる1以上の酸無水物成分とからなるものが、好適に挙げられる。
【0024】
また、本発明において、ポリアミック酸溶液の形成に使用される有機溶媒の具体例としては、例えば、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド等のスルホキシド系溶媒、N,N−ジメチルホルムド、N,N−ジエチルホルムアミド等のホルムアミド系溶媒、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド等のアセトアミド系溶媒、N−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドン等のピロリドン系溶媒、フェノール、o−,m−,又はp−クレゾール、キシレノール、ハロゲン化フェノール、カテコール等のフェノール系溶媒、あるいはヘキサメチルホスホルアミド、γ−ブチロラクトン等の非プロトン性極性溶媒を挙げることができ、これらを単独又は混合物として用いるのが望ましいが、さらにはキシレン、トルエン等の芳香族炭化水素も使用できる。
【0025】
重合方法は公知のいずれの方法で行ってもよく、例えば、(1)先に芳香族ジアミン成分全量を溶媒中に入れ、その後酸無水物成分を芳香族ジアミン成分全量と当量になるよう加えて重合する方法。
【0026】
(2)先に酸無水物成分全量を溶媒中に入れ、その後芳香族ジアミン成分を酸無水物成分と当量になるよう加えて重合する方法。
【0027】
(3)一方の芳香族ジアミン化合物を溶媒中に入れた後、反応成分に対して酸無水物成分が95〜105モル%となる比率で反応に必要な時間混合した後、もう一方の芳香族ジアミン化合物を添加し、続いて酸無水物成分を全芳香族ジアミン成分と酸無水物成分とがほぼ当量になるよう添加して重合する方法。
【0028】
(4)酸無水物成分を溶媒中に入れた後、反応成分に対して一方の芳香族ジアミン化合物が95〜105モル%となる比率で反応に必要な時間混合した後、酸無水物成分を添加し、続いてもう一方の芳香族ジアミン化合物を全芳香族ジアミン成分と酸無水物成分とがほぼ当量になるよう添加して重合する方法。
【0029】
(5)溶媒中で一方の芳香族ジアミン成分と酸無水物成分をどちらかが過剰になるよう反応させてポリアミド酸溶液(A)を調整し、別の溶媒中でもう一方の芳香族ジアミン成分と酸無水物成分をどちらかが過剰になるよう反応させポリアミド酸溶液(B)を調製する。こうして得られた各ポリアミド酸溶液(A)と(B)を混合し、重合を完結する方法。この時ポリアミド酸溶液(A)を調整するに際し芳香族ジアミン成分が過剰の場合、ポリアミド酸溶液(B)では酸無水物成分を過剰に、またポリアミド酸溶液(A)で酸無水物成分が過剰の場合、ポリアミド酸溶液(B)では芳香族ジアミン成分を過剰にし、ポリアミド酸溶液(A)と(B)を混ぜ合わせこれら反応に使用される全芳香族ジアミン成分と酸無水物成分とがほぼ当量になるよう調整する。
【0030】
なお、重合方法はこれらに限定されることはなく、その他公知の方法を用いてもよい。
【0031】
こうして得られるポリアミック酸溶液は、固形分を5〜40重量%、好ましくは10〜30重量%を含有しており、またその粘度はブルックフィールド粘度計による測定値で10〜10000Pa・s、好ましくは、300〜5000Pa・sのものが、安定した送液のために好ましく使用される。また、有機溶媒溶液中のポリアミック酸は部分的にイミド化されていてもよい。
【0032】
次に、前記ポリアミック酸溶液を用いた本発明のポリイミドフィルムの製造方法について説明する。
【0033】
ポリイミドフィルムを製膜する方法としては、ポリアミック酸溶液をフィルム状にキャストし熱的に脱環化脱溶媒させてポリイミドフィルムを得る方法、及びポリアミック酸溶液に環化触媒及び脱水剤を混合し化学的に脱環化させてゲルフィルムを作製し、これを加熱脱溶媒することによりポリイミドフィルムを得る方法が挙げられる。
【0034】
前記ポリアミック酸溶液は、環化触媒(イミド化触媒)、脱水剤及びゲル化遅延剤等を含有することができる。
【0035】
本発明で使用される環化触媒の具体例としては、トリメチルアミン、トリエチレンジアミン等の脂肪族第3級アミン、ジメチルアニリン等の芳香族第3級アミン、及びイソキノリン、ピリジン、ベータピコリン等の複素環第3級アミン等が挙げられるが、複素環式第3級アミンから選ばれる少なくとも一種類のアミンを使用するのが好ましい。
【0036】
本発明で使用される脱水剤の具体例としては、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸等の脂肪族カルボン酸無水物、及び無水安息香酸等の芳香族カルボン酸無水物等が挙げられるが、無水酢酸及び/又は無水安息香酸が好ましい。
【0037】
ポリアミック酸溶液からポリイミドフィルムを製造する方法としては、環化触媒及び脱水剤を含有せしめたポリアミック酸溶液をスリット付き口金から支持体上に流延してフィルム状に成形し、支持体上でイミド化を一部進行させて自己支持性を有するゲルフィルムとした後、支持体より剥離し、加熱乾燥/イミド化し、熱処理を行う。
【0038】
前記ポリアミック酸溶液は、スリット状口金を通ってフィルム状に成型され、加熱された支持体上に流延され、支持体上で熱閉環反応をし、自己支持性を有するゲルフィルムとなって支持体から剥離される。
【0039】
前記支持体とは、金属製の回転ドラムやエンドレスベルトであり、その温度は液体又は気体の熱媒により及び/又は電気ヒーター等の輻射熱により液体又は気体の熱媒により及び/又は電気ヒーター等の輻射熱により制御される。
【0040】
前記ゲルフィルムは、支持体からの受熱及び/又は熱風や電気ヒーター等の熱源からの受熱により30〜200℃、好ましくは40〜150℃に加熱されて閉環反応し、遊離した有機溶媒等の揮発分を乾燥させることにより自己支持性を有するようになり、支持体から剥離される。
【0041】
前記支持体から剥離されたゲルフィルムは、必要に応じて、回転ロールにより走行速度を規制しながら走行方向に延伸処理を施されてもよい。機械搬送方向への延伸倍率(MDX)、及び機械搬送方向に直交する方向への延伸倍率(TDX)は、1.01〜1.9倍、好ましくは1.05〜1.6倍で実施される。
【0042】
前記の乾燥ゾーンで乾燥したフィルムは、熱風、赤外ヒーター等で15秒から10分加熱される。次いで、熱風及び/又は電気ヒーター等により、250〜500の温度で15秒から20分熱処理を行う。
【0043】
また、走行速度を調整しポリイミドフィルムの厚みを調整するが、ポリイミドフィルムの厚みとしては、通常3〜250μm程度であり、3〜100μm程度が好ましい。これより薄くても厚くてもフィルムの製膜性が著しく悪化するので好ましくない。
【0044】
本発明に用いるポリイミドフィルムとしては、市販品を用いてもよい。市販品としては、特に限定されないが、例えば、カプトンのENタイプ(例えば、50EN−S(商品名、東レ・デュポン株式会社製)、100EN(商品名、東レ・デュポン株式会社製)等)、カプトンのHタイプ(例えば、カプトン100H(商品名、東レ・デュポン株式会社製等)等が挙げられる。
【0045】
前記カバーレイに用いるフッ素樹脂は、特に限定されないが、後記する仮止め工程を行った場合に、十分な密着力を有する高周波回路基板が得られるため、融点が250℃以下であることが好ましく、200℃以下がより好ましい。融点が250℃以下のフッ素樹脂としては、特に限定されないが、ベースとなるフッ素樹脂に官能基を導入したものが好ましい。ベースとなるフッ素樹脂は、特に限定されないが、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、四フッ化エチレン・六フッ化ポリプロピレン共重合体(FEP)、ペルフルオロアルコキシフッ素樹脂(PFA)、エチレン・四フッ化エチレン共重合体(ETFE)、エチレン・クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニル(PVF)等、フッ素化された構造を持つ樹脂が挙げられる。
【0046】
ベースとなるフッ素樹脂に導入する官能基は、特に限定されないが、例えば、アミノ基、メルカプト基、エポキシ基、カルボキシル基、カーボネート基、ビニル基、イソシアネート基、イソシアヌレート基、アクリル基、アルキル基(例えば、C1〜10等)、アルコキシ基(例えば、C1〜10等)等が挙げられ、エポキシ基、カルボキシル基、カーボネート基、ビニル基、アクリル基、アルキル基(例えば、C1〜10等)、アルコキシ基(例えば、C1〜10等)が好適であり、これらの基は、後記の置換基で置換されていてもよい。これらの官能基を1種のみを有していてもよく、2種以上を組み合わせて有していてもよい。
【0047】
前記官能基の置換基としては、特に限定されないが、例えば、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子)、ハロアルキル基(置換可能な任意の位置が1又は2以上、好ましくは1〜3の同一又は異なる前記ハロゲン原子で置換されたC1〜10のアルキル基)、ハロアルコキシ基(置換可能な任意の位置が1又は2以上、好ましくは1〜3の同一又は異なる前記ハロゲン原子で置換されたC1〜10のアルコキシ基)が好適に挙げられる。
【0048】
前記フッ素樹脂としては、市販品を用いてもよい。市販品としては、特に限定されないが、例えば、ネオフロン EFEP(商品名)のRPシリーズのRP−4020、RP−5000(以上、ダイキン工業株式会社製)が好適に挙げられる。
【0049】
本発明のカバーレイは、前記ポリイミドフィルムと前記フッ素樹脂とを積層して得られる。積層の方法は、特に限定されないが、例えば、ラミネーション方法やコーティング法が挙げられる。また、フッ素樹脂層はポリイミドフィルムの片面、または両面にラミネーション、コーティングしても問題ない。
【0050】
銅張積層体に取り付ける前のカバーレイのポリイミド層とフッ素樹脂層間の接着強度は、アニール処理によって十分な密着力が得られ、配線の撚りも生じなくなる点から、3.0N/cm以下が好ましく、1.0N/cm以下がより好ましく、0.5N/cm以下がさらに好ましい。前記接着強度の下限値は特に限定されないが、カバーレイフィルムのハンドリング性、機械加工性の観点から0.001N/cm以上が望ましい。
【0051】
本発明のカバーレイにおけるポリイミド層の厚さとしては、特に限定されないが、フッ素樹脂層の総厚さの0.01〜2.0倍程度が好ましく、0.05〜1.0倍程度がより好ましく、0.1〜0.9倍程度がさらに好ましい。ポリイミド層の厚さが、2.0倍を超えると、基板としての剛性や寸法安定性は向上するものの、誘電率が増加するため好ましくない。また、0.01倍未満であると、ポリイミド層の剛性が低下し、線膨張係数が増加する傾向となり、基板としての剛性や寸法安定性は低下する。
【0052】
本発明に用いる銅張積層体は、基材フィルム上に銅層が形成されている銅張積層体であれば特に指定はない。例えば、基材フィルムと銅箔とを接着剤を介して積層したものや、基材フィルムに蒸着やスパッタ加工と電気めっきを利用して銅層を形成してなるもの、銅箔上にポリイミド層をキャスティングして形成した所謂キャスト型2層CCL(COC)、基材フィルムに無電解めっきを用いて銅層を形成したもの等が挙げられる。
【0053】
前記基材フィルムとしては、高周波回路用にポリイミドフィルムやLCPフィルム等が挙げられる。また、接着剤層としては、エポキシ系やアクリル系、ポリイミド系接着剤、フッ素樹脂等が挙げられる。接着剤は市販品を使用することができる。市販品としては、特に限定されないが、パイララックス(Pyralux、デュポン株式会社製)のLFシリーズ(アクリル系接着剤)等が挙げられる。これらの中で好ましい形態は、LCPフィルムを用いた銅張積層体、基材フィルムと銅箔とをフッ素樹脂を介して積層体とした銅張積層体である。
【0054】
これらの銅張積層体の製造方法に特に制限はなく、公知の方法を用いて良い。また、用いる銅張積層体は片面構造、両面構造のどちらであっても問題ない。
【0055】
前記銅張積層体に用いるポリイミドフィルムとしては、上記のカバーレイ用のポリイミドフィルムと同様のものが挙げられ、その組成はカバーレイ用のポリイミドフィルムと同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0056】
前記銅張積層体に用いるフッ素樹脂としては、特に限定されないが、公知のフッ素系樹脂を使用でき、市販品を用いてもよい。前記市販品としては、例えば、トヨフロンF、FE、FL、FR、FV(商品名;以上、東レフィルム加工株式会社製)等が挙げられる。
【0057】
本発明の銅張積層体におけるポリイミド層(ポリイミド接着剤を使用する場合、接着剤を含めた層)の総厚さとしては、特に限定されないが、フッ素樹脂層の総厚さの0.01〜2.0倍程度が好ましく、0.05〜1.0倍程度がより好ましく、0.1〜0.9倍程度がさらに好ましい。ポリイミド層の厚さが、2.0倍を超えると、銅張積層体としての剛性や寸法安定性は向上するものの、誘電率が増加するため好ましくない。また、0.01倍未満であると、ポリイミド層の剛性が低下し、線膨張係数が増加する傾向となり、銅張積層体としての剛性や寸法安定性は低下する。
【0058】
前記銅張積層体をエッチング処理し、配線加工した銅張積層体が得られる。エッチング処理の方法は、特に限定されず、公知の方法を使用することができる。
【0059】
本発明の方法では、前記カバーレイのフッ素樹脂側を銅張積層体の回路に接するように積層し、カバーレイと銅張積層体とを仮止めを行う。
【0060】
銅張積層体とカバーレイとの仮止め工程としては、公知の方法を使用することができ、特に限定されないが、例えば、銅張積層体とカバーレイとの位置合わせをし、キスラミネーションをした後に、必要に応じてクイックプレスをして、150〜200℃程度でラミネーションする方法、銅張積層体とカバーレイとの位置合わせをし、多段プレスする方法等が挙げられる。本発明において、仮止め工程における最大温度は、カバーレイに使用するフッ素樹脂の融点より低ければ、特に限定されないが、続いて行うアニール処理によって十分な接着強度が得られる点から、150〜200℃の範囲が好適である。仮止め工程の処理時間は特に限定されない。
【0061】
本発明では、前記仮止め工程に続いて、カバーレイを取り付けた銅張積層体をアニール処理する工程を行う。
【0062】
アニール処理工程での最大温度は、200℃以上350℃以下の範囲内で、前記仮止め工程の最大温度より30℃以上高い温度とするのが、得られる高周波回路基板の接着強度が良好である点から好ましく、前記温度差は、40℃以上とするのがより好ましい。また、前記アニール処理工程では、別途新たな加熱温度や圧力を調製するための設備を必要せず、撚れをなくし、十分な密着力を得られる点からフリーテンションで、かつ200℃以上350℃以下で行うのが好ましい。アニール温度については、200℃以上280℃以下がより好ましく、205℃以上275℃以下がさらに好ましい。アニール処理時間は特に限定されない。
【0063】
前記アニール処理によって、フッ素樹脂層の接着力に基づいて密着力が高まり、実用的な接着強度(ピール強度)を有する高周波数用回路基板が得られる。本発明の高周波回路基板のアニール処理後の接着強度は、アニール処理前に比べて、通常30倍以上であり、好ましくは40倍以上であり、より好ましくは50倍以上である。高周波回路基板の密着力(アニール処理後の密着力)の具体的な値は、カバーレイとしての性能を確保する面から、10N/cmを超える値が好ましい。より好ましくは14N/cm以上である。本発明における接着強度は、後記する実施例に記載の方法で測定した値である。
【0064】
本発明の高周波回路基板は、上記したカバーレイと、配線加工した銅張積層体を積層して得られる。本発明の高周波回路基板としては、例えば、図1に示される構成を有するのが好適である。
【0065】
本発明の高周波回路基板は、ポリイミドフィルムの厚みとフッ素樹脂の厚みが上記の特定の割合となることで、電気特性や、耐屈曲性を含む機械的特性がより一層高まるだけでなく、寸法安定性が優れるため、銅層の回路形成のためのエッチング処理や、回路形成後の後工程における各種の加熱工程を施しても、カール、ねじれ、反り等の発生をより一層抑制することができる。
【実施例】
【0066】
次に、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではなく、多くの変形が本発明の技術的思想内で当分野において通常の知識を有する者により可能である。
【0067】
本発明における各種特性の測定方法について以下に説明する。
【0068】
(1)ピール強度
サンプルを10mm幅で短冊状へ裁断し、島津製作所製万能引張試験器オートグラフAG−ISを用いて、90℃引き試験(引張速度:50mm/min、測定長:20mm、測定範囲:5.0−20.0mm)にてピール強度を測定した(単位:N/cm)。
【0069】
(2)撚れ性
基板作製後、目視にて撚れ性を確認した。
【0070】
[実施例1]
表1に記載の構成にて、真空プレス機を用いて320℃雰囲気にて3.0MPaで5分間プレスを実施して銅張積層体を作製した。その後、Line/Space(L/S):120μm/70μmにて回路を作製し、表2に記載のカバーレイを、フッ素樹脂層側を銅張積層体の回路に接するように積層した後、175℃、3.0MPa、3分間プレスした。その後、回路をフリーテンションで230℃、15分間アニール処理して回路基板を得た。カバーレイと得られた回路のピール強度の試験結果を表3に示す。
【0071】
[実施例2]
表1に記載の構成にて、真空プレス機を用いて320℃雰囲気にて3.0MPaで5分間プレスを実施して銅張積層体を作製した。その後、L/S:120μm/70μmにて回路を作製し、表2に記載のカバーレイを、フッ素樹脂層側を銅張積層体の回路に接するように積層した後、175℃、3.0MPa、3分間プレスした。その後、回路をフリーテンションで230℃、15分間アニール処理して回路基板を得た。カバーレイと得られた回路のピール強度試験の結果を表3に示す。
【0072】
[実施例3]
表1に記載の構成にて、真空プレス機を用いて175℃雰囲気にて1.0MPaで30分間プレスを実施して銅張積層体を作製した。その後、L/S:120μm/70μmにて回路を作製し、表2に記載のカバーレイを、フッ素樹脂層側を銅張積層体の回路に接するように積層した後、175℃、3.0MPa、3分間プレスした。その後、回路をフリーテンションで230℃、15分間アニール処理して回路基板を得た。カバーレイと得られた回路のピール強度の試験結果を表3に示す。
【0073】
[比較例1]
表1に記載の構成にて、真空プレス機を用いて280℃雰囲気にて3.0MPaで5分間プレスを実施して銅張積層体を作製した。その後、L/S:120μm/70μmにて回路を作製し、表2に記載のカバーレイを、フッ素樹脂層側を銅張積層体の回路に接するように積層した後、280℃、3.0MPa、3分間プレスした。その後、回路をフリーテンションで310℃、15分間アニール処理して回路基板を得た。カバーレイと得られた回路のピール強度の試験結果を表3に示す。
【0074】
【表1】
【0075】
【表2】
【0076】
【表3】
(表中、(1)カバーレイ及び(2)回路基板の各ピール強度は、ポリイミドフィルム層とフッ素樹脂層の間の接着強度を表し、(2)/(1)はアニール処理前後の密着力の倍率を表す。)
【0077】
上記のように、本発明の製造方法で得られた高周波回路基板では、銅張積層体へ取り付ける前のカバーレイの接着強度に比べて、100倍以上も増大していた。また、本発明の製造方法では、撚れが発生しないことが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明の製造方法は、事前の高温プレスが不要で、低温プレスとその後のフリーテンションでの加熱により高周波特性、寸法安定性、配線精度(撚れの無さ)に優れたFPCを得ることができる。また、本発明の高周波回路基板は、低誘電率であるため、伝送損失を抑えることができる。
【符号の説明】
【0079】
1 ポリイミドフィルム
2 フッ素樹脂
3 銅(配線)
4 高周波回路基板
図1