(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかるに、従来の歩行者用押ボタン箱では、庇状の部分が正面よりも突出している量(突出量)は、せいぜい10mm程度であり、この程度では庇状の部分の影によって十分に表示部を覆うことができない。
庇状の部分の長さを長くすれば上記問題を解消できるものの、歩行者用押ボタン箱が大型化してしまう。歩行者用押ボタン箱が大型化すると、歩道を通行する歩行者や自転車等が歩行者用押ボタン箱と接触する危険性が高くなるので、歩行者用押ボタン箱は極力薄型が望ましい。しかし、従来の歩行者用押ボタン箱では、箱本体を小型化できないので、庇状の部分の突出量を10mm以上にすることは実際上難しい。
以上のような事情もあり、従来の歩行者用押ボタン箱では、日中等における表示部の文字が見えにくかったり文字が透けて見えたりするという問題を解消することは難しい。
【0009】
また、従来の歩行者用押ボタン箱では、正面板に表示部や押ボタンが設けられており、本体内部には、この表示部や押ボタンを本体内部の端子台に連結する配線(内部配線)が存在している。このため、本体の開口を開いた状態とすると、内部配線が本体の開口を覆うように配置されることになる。
一方、本体内部の端子台に外部の交通信号制御器からの配線(外部配線)を接続する場合、外部配線を本体下方または背面から本体内部に導入して端子台に接続される。この際、本体の開口を開いて作業を行うが、本体の開口を開いた状態とすると、内部配線が本体の開口を覆うように配置されるので、この内部配線の背後を通して外部配線を端子台に接続しなければならない。また、メンテナンスを行う場合でも、外部配線と内部配線とが重なった状態で作業を行わなければならなくなる。
したがって、従来の歩行者用押ボタン箱では、歩行者用押ボタン箱を設置する作業や内部の電子機器などのメンテナンスが非常にやりにくいという問題がある。
【0010】
本発明は上記事情に鑑み、表示部の文字が見えにくかったり文字が透けて見えたりすること防止でき、装置の設置やメンテナンスが容易である歩行者用押ボタン箱を提供することを目的とする。
また、本発明は、歩行者用押ボタン箱の表示部に適した色弱の方に優しい歩行者用押ボタン箱用表示器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1発明の歩行者用押ボタン箱は、情報を表示する表示部を備えた歩行者用押ボタン箱であって、正面が開口した本体部と、該本体部の開口を覆うように設けられた正面カバーと、を備えており、該正面カバーは、その上端を支点として、その下端が上下に揺動可能に設けられて
おり、前記正面カバーは、前記本体部と丁番によって連結されており、該丁番は、前記本体部に固定された固定プレートと、前記正面カバーに固定された移動プレートと、該移動プレートと前記固定プレートとを揺動可能に連結する連結軸と、を備えており、前記移動プレートは、前記固定プレートに対して、前記連結軸の軸方向に沿って接近離間可能となるように該連結軸を介して連結されており、前記正面カバーを前記本体部に対して上方まで揺動させかつ前記移動プレートを前記固定プレートに対して離間させた場合において、前記正面カバーの下方への揺動を規制する揺動規制機構が設けられていることを特徴とする。
第2発明の歩行者用押ボタン箱は、第1発明において、外部機器および/または前記表示部と配線によって連結される端子台が、前記本体部の内部上方に配設されており、前記表示部は、エッジライト方式を採用した表示器を備えていることを特徴とする。
第3発明の歩行者用押ボタン箱は、第2発明において、前記正面カバーの正面上部を囲むように、庇部が設けられており、該庇部は、前記正面カバーの正面からの突出量が15mm以上となるように形成されていることを特徴とする。
第4発明の歩行者用押ボタン箱は、第1、第2または第3発明において
、前記移動プレートは、前記固定プレートに対して前記連結軸の軸方向に沿って移動させると、前記固定プレートに対して着脱可能となるように設けられており、前記正面カバーが前記本体部に対して下方に揺動した状態において、前記固定プレートに対して前記移動プレートが前記連結軸の軸方向に沿って移動することを規制する軸方向移動規制機構が設けられていることを特徴とする。
第5発明の歩行者用押ボタン箱は、第1乃至第4発明のいずれかにおいて、前記本体部は前記正面カバーが揺動可能に連結される上部プレートと、該上部プレートを挟むように設けられた一対の側壁と、を有する正面が開口した中空な箱型の部材であり、前記正面カバーは、前記本体部に揺動可能に連結される上部プレートと、該上部プレートを挟むように設けられた一対の側壁と、を有する背面が開口した中空な箱型の部材であり、該正面カバーは、前記上部プレートおよび前記一対の側壁の後端によって囲まれた背面の開口から前記本体部をその内部に収容しうる大きさに形成されており、前記本体部の一対の側壁の外面には、前記本体部の正面を向きかつ該本体部の上下方向に沿って延びた側方連結面を有する段差が形成されており、前記正面カバーの一対の側壁の内面には、前記正面カバーの背面を向きかつ該正面カバーの上下方向に沿って延びた側方連結面を有する段差が形成されており、前記正面カバーの側方連結面および前記本体部の側方連結面は、前記本体部の開口を覆うように前記正面カバーが配置された状態において、両者が互いに対向する位置に形成されていることを特徴とする。
第6発明の歩行者用押ボタン箱は、第5発明において、前記本体部の上部プレートの外面には、前記本体部の正面を向きかつ該本体部の一対の側壁間を繋ぐように形成された上方連結面を有する段差が形成されており、前記正面カバーの上部プレートの内面には、前記正面カバーの背面を向きかつ該正面カバーの一対の側壁間を繋ぐように形成された上方連結面を有する段差が形成されており、前記正面カバーの上部連結面および前記本体部の上方連結面は、前記本体部の開口を覆うように前記正面カバーが配置された状態において、両者が互いに対向する位置に形成されており、前記本体部の上方連結面は前記本体部の側方連結面と連続し、前記正面カバーの上部連結面は前記正面カバーの側方連結面と連続するように設けられていることを特徴とする。
第7発明の歩行者用押ボタン箱は、第1乃至第6発明のいずれかにおいて、前記本体部は、該本体部の開口を覆うように前記正面カバーが配置された状態において、該本体部の下端部の先端面と、前記正面カバーの背面との間に隙間が形成されるように形成されていることを特徴とする。
第8発明の歩行者用押ボタン箱は、第1乃至第7発明のいずれかにおいて、前記表示部が、光によって情報を表示する表示器であって、情報が描かれた情報表示部と、該情報表示部の情報を隠蔽するカバー部と、からなる情報提示部と、該情報提示部の背面から光を供給する光源部と、を備えており、該光源部が、エッジライト方式を採用した光源であることを特徴とする。
第9発明の歩行者用押ボタン箱は、第8発明において、前記表示器は、前記光源部からの光で前記情報表示部に表示される情報が、色弱の方でも視認できる色となるように調整されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
第1発明によれば、正面カバーを上方に揺動させれば本体部が開口した状態とすることができる。しかも、正面カバーが上方に揺動すると、表示部や押ボタン等と端子台とを連結する配線(内部配線)も上方に位置するので、本体部を開口させた状態において、外部から端子台に接続される配線(外部配線)と内部配線とが重ならない状態とすることができる。このため、内部の機器のメンテナンスや、最初の外部配線を端子台に接続する作業が容易になる。
正面カバーを上方に揺動させて、移動プレートを固定プレートに対して離間させれば、揺動規制機構によって、正面カバーを上方に揺動した状態のままで保持しておくことができる。すると、本体部を開口した状態のまま保持しておくために、正面カバーを作業者が支えておく必要がないので、作業者が作業を行いやすくなる。
第2発明によれば、端子台が本体部の内部上方に配設されているので、本体部が開口した状態において、その下部に形成される空間を大きくすることができる。また、表示部としてエッジライト方式を採用した表示器を使用しているので、表示器の厚さを薄くすることができる。このため、端子台および表示器を、両者が重なるような位置に配置した場合でも、両者を収容するために必要な空間を狭くすることができる。すると、歩行者用押ボタン箱自体の厚さも薄くすることができる。
第3発明によれば、庇状の部分の影によって表示部を覆うことができる領域が大きくなるので、表示部の文字が見やすくなるし、表示部の文字が透けて見えることを防止しやすくなる。しかも、歩行者用押ボタン箱自体の厚さが薄いので、庇部の突出量が長くなっても、歩行者用押ボタン箱の大きさを小さくすることができる。
第4発明によれば
、正面カバーを上方に揺動させれば、移動プレートを固定プレートから取り外すことができる。すると、正面カバーを本体部から取り外すことができるので、作業性を向上することができる。しかも、正面カバーを下方に揺動した状態、つまり、本体部の開口を閉じた状態では、軸方向移動規制機構によって、固定プレートに対する移動プレートの移動が規制される。したがって、本体部の開口を閉じた状態では、本体部から正面カバーが外れることを防ぐことができる。
第5発明によれば、本体部の一対の側壁外面と正面カバーの一対の側壁内面との間を通って水が流れる際の、外部から歩行者用押ボタン箱の内部までの径路を長くすることができる。しかも、径路が、断面視で略クランク状になるので、正面カバーの側方連結面の位置で、本体部の側壁外面に沿った水の流れを遮ることができる。したがって、正面カバーの側壁の内面と本体部の側壁の外面との間の隙間に侵入した水が、正面カバーの側方連結面より内方に侵入することを防止できる。しかも、正面カバーの側方連結面は上下方向に沿うように配置されるので、正面カバーの側方連結面まで到達した水を正面カバーの側方連結面に沿って下方に流して外部に排出することができる。つまり、正面カバーの側壁の内面と本体部の側壁の外面との間に侵入した水が歩行者用押ボタン箱内に侵入することを防ぎつつ、水を外部に効果的に排出することができる。
第6発明によれば、本体部の上部プレートの外面と正面カバーの上部プレートの内面との間を通って水が流れる際の、外部から歩行者用押ボタン箱の内部までの径路を長くすることができる。しかも、径路が、断面視で略クランク状になるので、正面カバーの上部連結面の位置で、本体部の上部プレートの外面に沿った水の流れを遮ることができる。正面カバーの上部プレートの内面と本体部の上部プレートの外面との間の隙間に侵入した水が、歩行者用押ボタン箱内に侵入することに侵入することを防止できる。しかも、正面カバーの上部連結面まで到達した水を、正面カバーの上部連結面に沿って移動させて、正面カバーの側方連結面の位置まで導くことができる。したがって、正面カバーの側方連結面に沿って水を外部に排出することができる。つまり、正面カバーの上部プレートの内面と本体部の上部プレートの外面との間に侵入した水が歩行者用押ボタン箱内に侵入することを防ぎつつ、水を外部に効果的に排出することができる。
第7発明によれば、本体部の下端部の先端面と正面カバーの背面との間に形成された隙間から、歩行者用押ボタン箱内に侵入した水を排出することができる。すると、水抜き穴を形成する手間が省けるので、本体部等の加工工数を少なくできる。しかも、形成される隙間を調整すれば、隙間の幅を通常の水抜き穴の直径よりも短くしても、開口面積を水抜き穴を設けた場合と同等以上にすることも可能となる。したがって、歩行者用押ボタン箱からの排水性を維持または向上しつつ、歩行者用押ボタン箱内に外部から虫や水などが侵入しにくくすることができる。
第8発明によれば、光源部がエッジライト方式を採用した光源であるので、表示器を薄い板状に形成することができる。すると、既存の歩行者用押ボタン箱に取り付けられている表示器と取り替えても、歩行者用押ボタン箱内に確実に収めることができる。
第9発明によれば、光源部からの光で情報提示部に表示される情報が、色弱の方でも視認できるように調整されているので、既存の歩行者用押ボタン箱の表示部と交換すれば、既存の歩行者用押ボタン箱を、簡単に色弱の方に対応した歩行者用押ボタン箱とすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
つぎに、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
本実施形態の歩行者用押ボタン箱1は、車両用信号機の信号柱Pに取り付けて使用されるものである。この本実施形態の歩行者用押ボタン箱1は、配線LWによって、車両用信号機の作動を制御する交通信号制御器に電気的に接続されている。そして、歩行者用押ボタン箱1に設けられている押ボタン3が歩行者等によって押されると、交通信号制御器によって車両用信号機の点灯色を切り替える制御が行われるように構成されている。
つまり、本実施形態の歩行者用押ボタン箱1は、押ボタン式信号機を操作するための操作用押ボタンが設けられている箱である。
【0015】
(本実施形態の歩行者用押ボタン箱1の概略構造の説明)
以下、本実施形態の歩行者用押ボタン箱1(以下、単に歩行者用押ボタン箱1という)の構成を説明するが、歩行者用押ボタン箱1を構成する各部の構造を説明する前に、歩行者用押ボタン箱1が有する一般的な構成を簡単に説明する。
【0016】
図1に示すように、歩行者用押ボタン箱1の正面には、押ボタン3、表示部30、および案内表示4が設けられている。
【0017】
まず、押ボタン3は、車両用信号機の点灯色を切り替えるために歩行者等によって押されるボタンである。この押ボタン3を押すことによって、交通信号制御器に信号が送信され、交通信号制御器によって車両用信号機の点灯色を切り替える制御が行われる。
【0018】
表示部30は、押ボタン3が押されると情報を表示するように構成されたものである。この表示部30は光源35を備えた表示器31を有しており、押ボタン3が押されると光源35の光によって情報を表示するようになっているが、詳細は後述する。
【0019】
案内表示4は、押ボタン3の操作を案内する情報が表示されたものである。
図1では、歩行者用押ボタン箱1の本体部10の表面を削って形成された凹凸によって、所定のメッセージを表示した例を示している。
なお、案内表示4は上記の構造に限られず、情報を表示する種々の方法を採用することができる。例えば、表示部30と同様に、光源からの光によって文字および/または図柄など情報を表示する表示器を設けて案内表示4を構成してもよいし、情報が印刷等された金属プレート等を本体部10の表面に貼り付けて案内表示4としてもよい。
【0020】
また、歩行者用押ボタン箱1は、歩行者用押ボタン箱1を信号柱Pに固定するための固定用ブラケット2を備えている。この固定用ブラケット2は歩行者用押ボタン箱1の背面に設けられており、固定ベルトvなどを使用して信号柱Pに固定することができるような構造を有している。
【0021】
この固定用ブラケット2の構造はとくに限定されないが、例えば、以下のような構造とすることができる。
【0022】
図4に示すように、固定用ブラケット2は、一対の板状部材2a,2aを備えており、各板状部材2aの基端が歩行者用押ボタン箱1の背面に固定されている。また、一対の板状部材2a,2aは、その先端が互いに離間する方向に向けて(つまり外方に向けて)曲げられている。そして、一対の板状部材2a,2aにおける先端と基端の間の側面には、この側面を貫通する貫通孔pが形成されている。
【0023】
このため、一対の板状部材2a,2aの先端を信号柱Pの側面に当てた状態で、一対の板状部材2a,2aの貫通孔pに固定ベルトvを通して、この固定ベルトvを信号柱Pに巻きつける。すると、一対の板状部材2a,2aを信号柱Pに固定できる。つまり、固定用ブラケット2を介して、歩行者用押ボタン箱1を信号柱Pに固定できるのである。
【0024】
なお、歩行者用押ボタン箱1を信号柱Pに固定する方法はとくに限定されず、金具やベルトを利用せずに、ビスなどによって固定してもよい。また、歩行者用押ボタン箱1を固定する対象は、信号柱に限られず、電柱等にも固定される。また、歩行者用押ボタン箱1を設置するために専用に立設された柱(自立ポール)に歩行者用押ボタン箱1を設置する場合もある。
また、図示しないが、歩行者用押ボタン箱1の側面に反射板などを貼り付けてもよい。すると、自動車のヘッドライト等が当たれは反射板が光るので、夜間でも、歩行者が歩行者用押ボタン箱1を認識しやすくなる。また、自動車の運転手も、反射板が光ることによって、信号柱Pの存在や歩行者が横断する可能性があることを把握しやすくなる。
さらに、歩行者用押ボタン箱1を夜間に認識しやすくするのであれば、歩行者用押ボタン箱1の塗料として、蓄光塗料を使用することも有効である。
【0025】
(歩行者用押ボタン箱1の構造の詳細な説明)
つぎに、歩行者用押ボタン箱1の構造について詳細に説明する。
まず、
図2〜
図6、
図8に示すように、歩行者用押ボタン箱1は、本体部10と正面カバー20とを備えている。
なお、
図5および
図6では、構造をわかりやすくするために、配線LWおよび配線CWは記載を割愛している。
【0026】
(本体部10の説明)
本体部10は、正面に開口を有する略箱状の部材である。この本体部10は、背面プレート11と、この背面プレート11の左右に設けられた一対の側壁12,12と、背面プレート11の上端に設けられた上部プレート13と、背面プレート11の下端に設けられた下部プレート14と、を備えている。そして、背面プレート11の前面側に、一対の側壁12,12、上部プレート13および下部プレート14によって囲まれた収容空間10hが形成されている(
図8(A)参照)。
【0027】
この本体部10の収容空間10h内には、その背面プレート11の上部に一対の台座11b,11bが設けられており、この一対の台座11b,11bには、端子台Tが取り付けられている(
図5(B)参照)。この端子台Tは、押ボタン3や表示部30と交通信号制御器とを電気的に接続するために設けられているものである。
【0028】
具体的には、押ボタン3や表示部30から延びた導線CWの一端が端子台Tの端子に接続されており、また、交通信号制御器から延びた配線LWの一端も端子台Tの端子に接続されている(
図2、
図3参照)。そして、端子台Tにおける所定の端子に各線を接続すると、押ボタン3からの信号を表示部30や交通信号制御器に相互に送信でき、また、交通信号制御器から押ボタン3や表示部30に対して電力を供給できるようになっている。
【0029】
(正面カバー20の説明)
正面カバー20は、背面に開口を有する略箱状の部材である。この正面カバー20は、正面プレート21と、その左右に設けられた一対の側壁22,22と、正面プレート21の上端に設けられた上部プレート23と、を備えている。そして、背面プレート11の背面側には、一対の側壁22,22、上部プレート23によって囲まれた収容空間20hが形成されている(
図8(B)参照)。
【0030】
図8に示すように、正面カバー20は、一対の側壁22,22の内面間の距離W2が、前記本体部10の一対の側壁12,12の外面間の距離W1よりも若干長くなるように形成されている。
【0031】
しかも、正面カバー20の上部プレート23の内面から、正面カバー20の下端までの距離H2が、前記本体部10の上部プレート13の上面から下部プレート14の下面までの距離H1よりも若干長くなるように形成されている。
【0032】
そして、正面カバー20の正面プレート21の背面から、正面カバー20の後端までの距離D2が、前記本体部10の背面プレート11の背面から下部プレート14の先端までの距離D1と同等程度となるように設けられている(
図5参照)。
【0033】
このため、正面カバー20の正面プレート21の背面と本体部10の背面プレート11の前面とが対向するように両者を重ねると、正面カバー20の収容空間20h内に本体部10が収容された状態とすることができる。つまり、正面カバー20を本体部10に被せれば、正面カバー20によって本体部10の開口を閉じた状態とすることができるのである(
図4(B)、
図5(B)参照)。
【0034】
なお、両者を重ね合わせた状態では、正面カバー20の正面プレート21の背面と本体部10の背面プレート11の前面との間に、中空な空間1hを形成することができる(
図5(B)参照)。そして、距離D1と距離D2とがほぼ同等であるので、空間1hは、距離D1から本体部10の背面プレート11の厚さを除いた長さと同等程度の長さの奥行きD3(
図5では左右方向の長さ)を有する空間とすることができる。
【0035】
また、
図4および
図5に示すように、本体部10と正面カバー20は、本体部10の上端を支点として正面カバー20が上下方向に揺動できるように、丁番5によって連結されている。
【0036】
具体的には、以下のような構造で、本体部10と正面カバー20とが丁番5によって連結されている。
【0037】
図7に示すように、本体部10の上部プレート13の上面には、その後端縁を切り取るように凹み部13gが設けられている。この凹み部13gは、本体部10の左右方向の中央部に設けられている。
一方、正面カバー20の上部プレート23の内面には、その先端縁を切り取るように凹み部23gが設けられている。この凹み部23gは、正面カバー20の左右方向の中央部に設けられている。
そして、各凹み部13g,23gには、丁番5の一対のプレート5a,5bがそれぞれ取り付けられている。
【0038】
丁番5は、正面カバー20を本体部10に被せた状態において、丁番5が閉じた状態(
図5(B)参照)となるように取り付けられている。しかも、丁番5が閉じた状態において、丁番5の一対のプレート5a,5bを連結する軸5cが、本体部10の背面プレート11よりも外方かつ正面カバー20の上部プレート23の先端よりも外方に位置するように取り付けられている。さらに、本体部10と正面カバー20とが丁番5によって連結された状態において、本体部10を幅方向で2等分する面と正面カバー20を幅方向で2等分する面とが同一面となるように、丁番5の一対のプレート5a,5bは両凹み部13g,23gに取り付けられる。
【0039】
このため、丁番5の軸5cを支点として、正面カバー20を本体部10に対して上下方向に揺動させることができる。
【0040】
そして、丁番5を上述したような配置となるように取り付けているので、正面カバー20を下方に揺動させれば、正面カバー20を本体部10に被せた状態、つまり、正面カバー20によって本体部10の開口を閉じた状態とすることができる(
図5(B)参照)。しかも、正面カバー20を上方に揺動させれば(言い換えれば、本体部10を開口すれば)、正面カバー20全体を本体部10の上方まで移動させることができる(
図5(A)参照)。
【0041】
ここで、正面カバー20の正面プレート21には、押ボタン3が取り付けられる孔21hや、表示部30が取り付けられる窓21wが形成されている。そして、孔21hを挿通するように押ボタン3が取り付けられており、正面プレート21の窓21wの開口を背面から覆うように表示部30の表示器31が取り付けられている。そして、押ボタン3や表示器31と端子台Tとが導線CWによって連結されているので、本体部10を開口すれば導線CWが露出する。
【0042】
しかし、この状態では、正面カバー20は本体部10よりも上方に位置しているので、導線CWは本体部10の開口の上方に位置する(
図3、
図4(A)参照)。すると、本体部10が開口した状態において、交通信号制御器から延びた配線LWと導線CWとが重ならない状態とすることができる。したがって、押ボタン3や表示器31のメンテナンスや、配線LWや導線CWと端子台Tとの結線状況の確認やメンテナンスが容易になる。
【0043】
また、歩行者用押ボタン箱1を信号柱Pに取り付けた状態で配線LWを端子台Tに接続するような場合でも、導線CWが邪魔にならないので、歩行者用押ボタン箱1の設置作業も容易かつ迅速に行うことができる。
【0044】
とくに、丁番5として、一対のプレート5a,5bが軸5cの軸方向に沿って互いに接近離間できるものを使用することが好ましい。
【0045】
例えば、プレート5aとプレート5bが、いずれも軸5cに対して回転可能に取り付けられる筒状部を有しており、しかも、プレート5aの筒状部は軸5cに対してその軸方向には移動できないが、プレート5bの筒状部が軸5cに対してその軸方向には移動できるように設けられている丁番5を使用する。
かかる丁番5を設けた場合には、正面カバー20全体が本体部10よりも上方に位置するまで、正面カバー20を上方に揺動させる(
図6(A)、
図7(A))。
【0046】
そして、その状態から、プレート5bの筒状部がプレート5aの筒状部から離間するように移動させる。つまり、本体部10に対して、正面カバー20が本体部10の幅方向において若干ズレた状態となるように移動させる(
図6(B)、
図7(B))。具体的には、本体部10に正面カバー20を被せた状態において、少なくとも本体部10の側壁12外面からこの側壁12と対向する正面カバー20の側壁12内面までの距離よりも大きく移動させる。
すると、その状態から正面カバー20が下方に揺動しても、正面カバー20の側壁12が本体部10の上部プレート13の上面に載った状態となる(
図6(B))。
【0047】
このため、正面カバー20はそれ以上下方に揺動できなくなるので、作業者が支えなくでも、正面カバー20を上方に揺動した状態のまま保持しておくことができる。すると、本体部10を開口した状態で作業をする場合に、開口状態を保持しておくために、作業者が正面カバー20を支えておく必要がないので、作業者が作業を行いやすくなる。
【0048】
とくに、プレート5bの筒状部が完全に軸5cから取り外すことができるようになっていることが好ましい。この場合には、正面カバー20を本体部10から完全に取り外すことができるので、正面カバー20に取り付けられている押ボタン3や表示部30の交換や押ボタン3や表示部30に対して手間のかかる作業を行う場合に、作業が行い易くなるという利点が得られる。
【0049】
かかる丁番5を使用した場合には、正面カバー20全体が本体部10よりも上方に位置するまで、プレート5bの筒状部が軸5cから完全に外れないようにしておくことが望ましい。すると、正面カバー20を上方に揺動させている際や、正面カバー20が下方に揺動した状態、つまり、本体部10の開口を閉じた状態において、本体部10から正面カバー20が外れることを防ぐことができる。
【0050】
正面カバー20を上方に揺動させている際や、正面カバー20が下方に揺動した状態、つまり、本体部10の開口を閉じた状態において、本体部10から正面カバー20が外れることを防ぐ方法は特に限定されない。軸5cの軸方向におけるプレート5aに対するプレート5bの移動を規制できるのであれば、どのような方法を採用してもよい。
【0051】
例えば、本体部10の側壁12および正面カバー20の側壁22を、正面カバー20全体が本体部10よりも上方に位置するまでは両者が側面視で重なっている部分があるような形状や大きさにすれば、上記効果を得ることができる。
【0052】
上記丁番5のプレート5aが特許請求の範囲にいう固定プレートに相当し、上記丁番5のプレート5bが特許請求の範囲にいう移動プレートに相当する。
また、本体部10の上部プレート13と正面カバー20の一方の側壁22(
図2、
図3、
図6(B)では右側の側壁22)が特許請求の範囲にいう揺動規制機構を構成している。
さらに、本体部10の側壁12と正面カバー20の側壁22が特許請求の範囲にいう軸方向移動規制機構を構成している。
【0053】
なお、正面カバー20を上方に揺動した状態のまま保持しておくだけであれば、上述したような丁番5を設けなくても、正面カバー20の側壁12と本体部10の上部プレート13の上面との間に板などを挟めばよい。しかし、上述したような丁番5を設けておけば、両者の間に挟む部材がなくてもよいので、簡単かつ迅速に正面カバー20を上方に揺動し保持された状態とすることができるので好ましい。
【0054】
(本体部10と正面カバー20の固定)
通常の使用時には、本体部10と正面カバー20は両者が揺動できないように固定される。両者を固定する方法はとくに限定されず、どのような方法を用いてもよい。
例えば、正面カバー20に貫通孔を設け、正面カバー20を本体部10に被せたときに、本体部10において貫通孔と対応する位置にネジ穴を形成しておく。すると、ボルト等を正面カバー20の貫通孔を通して本体部10のネジ穴に螺合すれば、本体部10と正面カバー20とを固定することができる。
【0055】
ところで、このようにボルトを利用して本体部10と正面カバー20とを固定する場合、正面カバー20の表面にボルトの頭が配置される。かかるボルトの頭が正面カバー20の正面や側面に配置されると、押ボタン箱用表示器1を見たときの外観が悪くなる。
【0056】
しかし、以下のような構造とすれば、ボルトを利用して本体部10と正面カバー20とを固定しても、押ボタン箱用表示器1を見たときにボルトの頭が視認されにくいので、押ボタン箱用表示器1の外観を向上させることができる。
【0057】
図5および
図8に示すように、正面カバー20の正面プレート21の背面には、一対の固定突起21pが設けられている。この一対の固定突起21p,21pの下面、つまり、正面カバー20を本体部10に被せた状態において、正面カバー20の下部プレート24の内面と対向する面には、ネジ穴が形成されている。
【0058】
一方、正面カバー20の下部プレート24において、一対の固定突起21p,21pの下面と対応する位置には、一対の貫通孔24h,24hが形成されている。この一対の貫通孔24h,24hは、正面カバー20を本体部10に被せた状態において、その中心軸が一対の固定突起21p,21pの下面に形成されているネジ穴の中心軸とほぼ同軸とすることができるように設けられている。
【0059】
このため、正面カバー20を本体部10に被せた状態において、下部プレート24の外面(下面)からボルトBを一対の貫通孔24h,24hを通して、ボルトBを一対の固定突起21p,21pのネジ穴に螺合すれば、本体部10に対して正面カバー20を固定することができる。
【0060】
しかも、下部プレート14の下面からボルトBを挿通しているので、押ボタン箱用表示器1を見ても、ボルトBの頭は見えにくい。したがって、ボルトBによって本体部10に対して正面カバー20を固定しても、押ボタン箱用表示器1の外観をすっきりさせることができる。
【0061】
(本体部10と正面カバー20のシール性)
本実施形態の歩行者用押ボタン箱1は屋外に設置されるものである。このため、雨などから内部の電子機器を保護するために、歩行者用押ボタン箱1内に雨水などが侵入しないように、両者の間がシールされていることが好ましい。
【0062】
例えば、上述したような構造を有する場合には、各凹み部13g,23gの深さを、丁番5の一対のプレート5a,5bの厚さよりも深くしておく。すると、正面カバー20を本体部10に被せたときに、正面カバー20の上部プレート23の内面と本体部10の上部プレート13の外面とがほぼ面接触した状態になる(
図5(B)参照)。また、正面カバー20の正面プレート21の内面と本体部10の下部プレート14の先端面とがほぼ面接触した状態になる(
図5(B)参照)。一方、正面カバー20の一対の側壁22,22の内面と本体部10の一対の側壁12,12の外面との間には、若干の隙間が形成される。
このため、この隙間を埋めるように、正面カバー20の一対の側壁22,22の内面および/または本体部10の一対の側壁12,12の外面に棒状や板状のゴムなどのシール部材を設けてもよい。すると、正面カバー20と本体部10との隙間から、雨水などが歩行者用押ボタン箱1内に入りにくくすることができる。
もちろん、正面カバー20の上部プレート23の内面および/または本体部10の上部プレート13の外面にも、両者間に隙間ができないように、棒状や板状のゴムなどのシール部材を設けてもよい。この場合、正面カバー20を本体部10に被せたときに、正面カバー20の自重などによってゴムシール等が押しつぶされる。すると、正面カバー20の上部プレート23の内面と本体部10の上部プレート13の外面との間のシール性を高めることができる。
また、正面カバー20の正面プレート21の背面および/または本体部10の下部プレート14の先端面にも、両者間に隙間ができないように、棒状や板状のゴムなどのシール部材を設けてもよい。すると、正面カバー20を本体部10に被せたときに、両者間で隙間ができないので、歩行者用押ボタン箱1内に雨水などが侵入する可能性を低くすることができる。
【0063】
また、正面カバー20の一対の側壁22,22の内面と本体部10の一対の側壁12,12の外面の両方に段差を設けて、正面カバー20を本体部10に被せると、両者の段差同士が組み合わされるようにしてもよい。
つまり、本体部10の一対の側壁12,12の外面に、本体部10の正面を向きかつ本体部10の上下方向に沿って延びた側方連結面12cを有する段差を形成する。言い換えれば、側方連結面12cを本体部10の一対の側壁12,12と交差する側方連結面22cが形成されるように段差を形成する(
図2、
図3、
図8参照)。
一方、正面カバー20の一対の側壁22,22の外面に、正面カバー20の背面を向きかつ正面カバー20の上下方向に沿って延びた側方連結面22cを有する段差を形成する。言い換えれば、側方連結面22cを正面カバー20の一対の側壁22,22と交差する側方連結面22cが形成されるように段差を形成する(
図2、
図3、
図8参照)。
そして、側方連結面22cおよび側方連結面12cは、正面カバー20を本体部10に被せたときに、両者が互いに対向するように形成する。好ましくは、両者が面接触するように形成する。
【0064】
外部から歩行者用押ボタン箱1の内部に侵入する場合、本体部10の一対の側壁12,12の外面と正面カバー20の一対の側壁22,22の内面との間を通って流れる。上記のごとき段差を設ければ、水が流れる際の、外部から歩行者用押ボタン箱1の内部までの径路を長くすることができる。しかも、この径路は、断面視で略クランク状になるので、正面カバー20の側方連結面22cの位置で、本体部の側壁外面に沿った水の流れを遮ることができる。
【0065】
したがって、正面カバー20の側壁22の内面と本体部10の側壁12の外面との間の隙間に侵入した水が、正面カバー20の側方連結面22cより内方に侵入することを防止できる。しかも、正面カバー20の側方連結面22cは上下方向に沿うように配置されるので、正面カバー20の側方連結面22cまで到達した水を正面カバー20の側方連結面22cに沿って下方に流して外部に排出することができる。つまり、正面カバー20の側壁22の内面と本体部10の側壁12の外面との間に侵入した水が歩行者用押ボタン箱1内に侵入することを防ぎつつ、水を外部に効果的に排出することができる。
【0066】
とくに、側方連結面12cと側方連結面22cを設けた上で、側方連結面12cおよび/または側方連結面22cに棒状や板状のゴムなどのシール部材を設ければ、シール性をさらに高くすることができる。しかも、この構造の場合、正面カバー20と本体部10とを連結したときに、シール部材が若干圧縮されるようにしておくことが好ましい。すると、正面カバー20と本体部10とを連結した状態でのシール性を高めることができる。なお、かかる状態とするには、シール部材を設けずに正面カバー20と本体部10とを連結した状態で側方連結面12cと側方連結面22cとの間に形成される隙間よりも、シール部材の厚さを厚くしておけばよい。
【0067】
また、上述したように、正面カバー20を本体部10に被せたときに、正面カバー20の上部プレート23の内面と本体部10の上部プレート13の外面とがほぼ面接触する。このため、正面カバー20の上部プレート23の内面および本体部10の上部プレート13の外面に、上述した側壁22,21のような段差を設けなくても、ある程度のシール性は維持することができる。しかし、正面カバー20の上部プレート23の内面および本体部10の上部プレート13の外面にも、側壁22,21に形成された段差と実質的に同様な構造を有する段差を設ければ、さらにシール性を高くすることができる。
つまり、本体部10の上部プレート13の外面に、本体部10の正面を向きかつ本体部10の一対の側壁12,12間を繋ぐように形成された上方連結面13cを有する段差を形成する(
図5、
図8参照)。また、正面カバー20の上部プレート23の内面に、正面カバー20の背面を向きかつ正面カバー20の一対の側壁22,22間を繋ぐように形成された上方連結面23cを有する段差を形成する(
図5、
図8参照)。
そして、上方連結面23cおよび上方連結面13cは、正面カバー20を本体部10に被せたときに、両者が互いに対向するように形成する。好ましくは、両者がほぼ面接触するように形成する。
【0068】
すると、本体部10の上部プレート13の外面と正面カバー20の上部プレート23の内面との間を通って水が流れる際の、外部から歩行者用押ボタン箱の内部までの径路を長くすることができる。しかも、径路が、断面視で略クランク状になるので、正面カバー20の上部プレート23の上方連結面23cの位置で、本体部10の上部プレート13の外面に沿った水の流れを遮ることができる。
【0069】
とくに、連結面23cと連結面22cとが連続した面となるように形成することが好ましい。この場合、連結面23cで侵入を防止した水を、連結面23cに沿って移動させつつ、連結面22cの位置まで導くことができるので、連結面22cに沿って水を外部に排出することができる。つまり、正面カバー20の上部プレート23の内面と本体部10の上部プレート13の外面との間に侵入した水が歩行者用押ボタン箱1内に侵入することを防ぎつつ、水を適切に外部に排出することができる。
【0070】
そして、正面カバー20の上部プレート23の内面および本体部10の上部プレート13の外面に段差を設けた場合でも、連結面13cおよび/または連結面23cに棒状や板状のゴムなどのシール部材を設ければ、シール性をさらに高くすることができる。
【0071】
棒状のゴムをシールとして使用する場合には、本体部10の連結面12cおよび連結面13cに沿って棒状のゴムパッキンgを配置することが好ましいが、その配設方法として、例えば、以下のような方法で配設することができる。
図8に示すように、一対の側壁12,12の下部において、連結面12cの近傍にそれぞれ、本体部10内と外部との間を貫通する貫通孔14tを形成しておく。そして、棒状のゴムパッキンgの一端部を前述した一方の貫通孔14tから本体部10内に入れた状態で、棒状のゴムを引っ張りながら、連結面12cおよび連結面13cに沿って棒状のゴムパッキンgを配置する。つまり、棒状のゴムパッキンgが連結面12cおよび連結面13cと接触した状態となるように、連結面12cおよび連結面13cに沿って棒状のゴムパッキンgを配置する。そして、棒状のゴムパッキンgの他端部を他方の貫通孔から本体部10内に入れた状態で、棒状のゴムパッキンgの両端部を、圧着スリーブで連結したりくくったりすれば、棒状のゴムパッキンgを本体部10の所定の位置に配置して取り付けることができる(
図2〜
図5参照)。
なお、棒状のゴムパッキンgは、その両端部を連結しなくてもよく、その端部が貫通孔14tから抜けないようになっていればよい。例えば、棒状のゴムパッキンgの一端部を一方の貫通孔14t内に入れた状態でこの一端部において本体部10の内部にある部分に結び目などの抜け防止構造を設け、同様に、棒状のゴムパッキンgの他端部にも他方の貫通孔14tから本体部10内に入れた状態でこの他端部において本体部10の内部にある部分に結び目などの抜け防止構造を設ける。すると、棒状のゴムパッキンgの両端部が貫通孔14tから抜けないので、本体部10の所定の位置に配置して取り付けることができる。
また、棒状のゴムパッキンgを取り付ける方法はとくに限定されず、棒状のゴムパッキンgを連結面12cおよび連結面13cに接着して固定してもよい。棒状のゴムパッキンg以外のシール部材(例えば、ゴム板等)も、連結面12cおよび連結面13cに接着すれば、簡単に連結面12cおよび連結面13cに固定することができる。
【0072】
また、上述したような構造としても、雨水などが歩行者用押ボタン箱1内に完全に入らないようにすることは難しい。一方、上述したような構造とした場合、歩行者用押ボタン箱1内に入った水を排出することが難しくなる。したがって、歩行者用押ボタン箱1には、水抜き穴を設けておくほうが好ましい。もちろん、水抜き穴は、雨水などが入りにくい位置や形状、大きさに形成されるのはいうまでもない。
【0073】
また、水抜き穴を設ける代わりに、正面カバー20を本体部10に被せたときに、両者間に隙間ができるようにしてもよい。例えば、正面カバー20を本体部10に被せたときに、正面カバー20の正面プレート21の内面と本体部10の下部プレート14の先端面との間に隙間ができるような構造として、その隙間を水抜き用スリットとするようにしてもよい。この場合、水抜き穴を形成する手間が省けるので、本体部10の加工工数を少なくできる。しかも、水抜き用スリットの幅を通常の水抜き穴の直径よりも短くしても、開口面積を水抜き穴を設けた場合と同等以上にすることも可能となる。したがって、歩行者用押ボタン箱1からの排水性を維持または向上しつつ、歩行者用押ボタン箱1内に外部から虫や水などが侵入しにくくすることができる。例えば、水抜き用スリットの幅を1mm程度とした場合でも、本体部10の幅が10cm程度あれば、開口面積を1cm
2とすることができる。この開口面積は、直径1cmの孔の断面積と同等程度であり、直径5mmの孔を5個の総断面積に相当する。直径1cmや直径5mmの孔であれば簡単に虫が内部に侵入できるが、幅が1mmの隙間であれば虫が侵入しにくいので、排水性を確保しつつ、歩行者用押ボタン箱1内への虫の侵入を防止することができる。
【0074】
(端子台Tの配置)
歩行者用押ボタン箱1において、端子台Tを設ける位置はとくに限定されないが、
図2に示すように、端子台Tは本体部10の上部に設けることが好ましい。交通信号制御器から延びた配線LWは、通常、歩行者用押ボタン箱1の底(上記構成では本体部10の下部プレート14)に形成された孔から歩行者用押ボタン箱1内部に導入される。このため、端子台Tは本体部10の上部に設けられていれば、配線LWを端子台Tに接続する作業が行い易くなる。とくに、歩行者用押ボタン箱1では、正面カバー20が上方に揺動して開口する。このため、端子台Tが本体部10の上部に設けられていれば、本体部10の開口を開けたときに、押ボタン3や表示部30から延びた導線CWが本体部10の下部を覆わない。したがって、より一層、配線LWを端子台Tに接続する作業が行い易くなる。
また、歩行者用押ボタン箱1内に水が入った場合などにおいて、端子台Tに水がかかったりすることを防ぐことができるので、漏電等の問題も生じにくくなる。
【0075】
(配線LW用孔の配置)
また、本実施形態の歩行者用押ボタン箱1では、事前に孔を設けずに、現場において作業者が形成するようにすることができる。通常、歩行者用押ボタン箱では、箱の底部に、配線LWを通す孔が事前に形成されている。このため、現場の状況によっては、配線LWを孔に通しにくかったり、配線LWの取り回しがやりにくかったりする場合がある。
しかし、本実施形態の歩行者用押ボタン箱1では、事前に孔を設けていないので、現場での設置状況に応じて、作業者が適切な位置に配線LWを通す孔を形成することができる。しかも、歩行者用押ボタン箱1では、端子台Tは本体部10の上部に設けられており、本体部10の開口を開けたときに導線CWが本体部10の下部に位置しない。したがって、下部プレート14に孔を形成する作業において、端子台Tや配線などを損傷する可能性が低くなるので、孔を形成する作業も容易になる。
【0076】
(歩行者用押ボタン箱1の奥行き)
また、正面カバー20には、その上部には表示部30が設けられている。具体的には、正面カバー20の正面プレート21には、その上部に窓21wが設けられており、この窓21wを塞ぐように、正面プレート21の背面には表示部30の表示器31が取り付けられている。このため、端子台Tは本体部10の上部に設けると、端子台Tと表示器31が接近し、両者が重なりあうように配置される可能性がある。すると、両者が接触したりしないように、正面カバー20の正面プレート21の背面と本体部10の背面プレート11の正面との距離を取らなければならなくなる。この距離が大きくなると、歩行者用押ボタン箱1の奥行き(つまり厚さ)を大きく取らなければならなくなる。
【0077】
しかし、歩行者用押ボタン箱1では、表示器31として、エッジライト方式を採用した光源35を有するものを使用しているので(
図9参照)、表示器31全体の厚さを薄くすることができる。具体的には、表示器31の厚さを、10mm以下とすることもできる。
すると、正面カバー20の正面プレート21の背面と本体部10の背面プレート11の正面との距離D3(
図5(B)参照)をそれほど大きくしなくても、端子台Tと表示器31の接触を防ぐことができるから、歩行者用押ボタン箱1を薄くすることができる。
例えば、正面カバー20の正面プレート21の背面と本体部10の背面プレート11の正面との距離が30〜40mm程度であっても、端子台Tと表示器31の接触しない状態とすることができる。
【0078】
(庇部25について)
そして、歩行者用押ボタン箱1には、通常、正面カバー20の正面プレート21の上部または全周を囲うように庇部25を設けている。上述したように、歩行者用押ボタン箱1を薄くできれば、この庇部25の長さ、つまり、庇部25の先端が正面カバー21の正面からの突出している量(突出量)を大きくすることができる。突出量が大きくなれば庇状25によって正面カバー21に影が形成される領域を大きくできるので、その影によって表示部30を覆うことができる。すると、表示部30の文字が見やすくなるし、表示部30の文字が透けて見えることを防止できる。
【0079】
しかも、上述したような表示器31を採用したことによって、歩行者用押ボタン箱1自体の厚さが薄くできるので、庇部25の突出量が長くなっても、歩行者用押ボタン箱1を薄くすることができる。すると、歩道を通行する歩行者や自転車等と接触する危険性が低くすることができる。
【0080】
例えば、庇部25の突出量は、15mm以上であれば、正面カバー21に影が形成される領域を大きくできる。したがって、表示部30の文字をある程度見やすくでき、表示部30の文字が透けて見えることを防止できる、という効果が得られる。とくに、歩行者用押ボタン箱1を薄型に維持しつつ上記効果をより確実に得るためには、庇部25の突出量は、20mm以上が好ましく、30mm以上がより好ましい。
なお、庇部25の突出量の上限はとくに限定されない。しかし、庇部25の突出量があまり長くなると、庇部25を除いた歩行者用押ボタン箱1の厚さを薄くできても、歩行者用押ボタン箱1全体の厚さが厚くなってしまう。このため、庇部25の突出量は、50mm程度までが現実的である。
したがって、庇部25の突出量は、15mm以上であればよく、20mm〜50mm、好ましくは30mm〜50mmとすること可能であるが、表示部30の文字の見えやすさ等と薄さとを両立する上では、30mm〜40mm程度が好ましい。
【0081】
そして、庇部25が上述したような突出量、とくに、30mm以上程度あれば、押ボタン3として、キノコ型の押ボタンを採用することが可能となる。
キノコ型の押ボタン3は正面カバー20の正面プレート21からの突出量が大きくなるので、庇部の突出量が小さい場合、通行人などが誤って押ボタン3に触れてしまう可能性が高くなるという問題がある。このため、従来の歩行者用押ボタン箱の押ボタンとして採用できなかった。
しかし、庇部25を上述したような突出量とすれば、キノコ型の押ボタンでも、庇部25よりも突出している量を少なくできるので(
図4(B)参照)、上記のごとき問題を防ぐことができる。
しかも、通常使用されている平型では、ボタンを指で押し込まなければならないため、お年寄りや子供、手の不自由な方は、ボタンを押しにくい。しかし、キノコ型の押ボタンであれば、押ボタン3を叩くようにしてもボタンを押すことができる。すると、お年寄りや子供、手の不自由な方でも、ボタンを押しやすくなるという利点も得られる。
【0082】
また、庇部25を設ける領域は特に限定されず、正面カバー20の全周や、上端縁および両側端縁の全体に設けてもよい。また、正面カバー20の上端縁ではその全域に庇部25を設けるが、正面カバー20の側端縁では、その上端からある程度の位置までにだけ庇部25を設けるようにしてもよい。
また、庇部25の突出量は、庇部25の全体で同じ突出量としてもよいし、位置によって突出量を変化させてもよい。例えば、
図5に示すように、正面カバー20の側端縁に設けられている庇部25を、上端から下端に向けて庇部25の突出量が短くなるようにしてもよい。
【0083】
(表示部30)
表示部30には、上述したようにエッジライト方式を採用した光源35を有する表示器31を備えている。以下、表示器31の構造を説明する。
【0084】
図9に示すように、表示器31は、情報提示部32と光源部35とが積層されて略プレート状に形成されたものである。情報提示部32および光源部35は、平面視で長方形状に形成されており、その長さや幅がほぼ同じとなるように形成されている。
【0085】
まず、情報提示部32は、例えば、アクリル板やポリカーボネート樹脂板などの透明な板状の部材からなる表面プレート32aを備えている。
【0086】
この表面プレート32aの背面には、カバー部32bが設けられている。このカバー部32bは、表面プレート32aを表面から見たときに背面側を見通せないようにするためのものである。カバー部32bは、例えば、着色フィルムなどのように通常の光では表面プレート32aを表面から見たときに背面側を見通せないが、背面側から光が照射されると、その光を表面側から見通せるようなものである。
【0087】
カバー部32bの背面には、情報表示部32cが設けられている。この情報表示部32cは、後述する光源35からの光が照射されると、所定の文字や図柄などの情報が表面プレート32aの表面側から視認できるように設けられたものである。
例えば、所定の色の塗料など使用して、カバー部32bの背面に所定の文字や図柄などの情報(
図9であれば「おまちください」の文字)を印刷して、情報表示部32cを形成することができる。
また、遮光プレートなどに、所定の文字や図柄の形状を有する貫通孔を形成して、情報表示部32cとすることも可能である。
【0088】
光源部35は、光源を駆動する基板36と、拡散板37と、を備えている。
【0089】
基板36は、端子台Tに接続されており、押ボタン3からの信号や交通信号制御器からの信号によってLED素子36aの点灯を制御する機能を有している。具体的には、押ボタン3が押されるとLED素子36aを点灯させ、車両用信号機の点灯色変更が終了すると、交通信号制御器からの信号に基いてLED素子36aを消灯させるように、LED素子36aの点灯を制御している。
【0090】
この基板36の表面には、複数のLED素子36aが取り付けられている。具体的には、
図9に示すように、LED素子36aが、基板36の長手方向に沿って2列並んで設けられている。この2列のLED素子36aの列(以下、LED素子列という)は、両者の間隔が、情報表示部32cの情報の幅(
図9では上下方向)よりも広くなるように設けられている。
【0091】
また、基板36の表面には、拡散板37が設けられている。この拡散板37は、その端面から光が入射されると、その光を乱反射してその表面から放出する機能を有するものである。この拡散板37は、基板36と幅および長さがほぼ同等となるように形成されている。
この拡散板37には、その表裏を貫通する一対の長孔37h,37hが形成されている。この一対の長孔37h,37hは、その軸方向が拡散板37の長手方向に沿うように形成されている。しかも、拡散板37を基板36の表面に重ねると、一対のLED素子列がそれぞれ一対の長孔37h,37h内に収容されるように、一対の長孔37h,37hは形成されている。
【0092】
したがって、情報提示部32のカバー部32bの背面(つまり情報表示部32c)と光源部35の拡散板37の表面と合わせるように両者を積層すれば、表示器31を形成することができる。すると、LED素子36aを点灯させれば、情報提示部32の表面プレート32aの表面に情報表示部32cの情報を表示させることができる。
つまり、LED素子36aが放出した光が、一対の長孔37h,37hの内面から拡散板37内に入り、拡散板37内で散乱した散乱光が拡散板37の表面から放出される。すると、この散乱光は、情報表示部32cを光らせる、または、情報表示部32cの貫通孔の部分だけを通過するので、情報表示部32cの情報はカバー部32bを通しても視認することができるのである。
【0093】
一方、LED素子36aが消灯している場合には、カバー部32bによって表面プレート32aの表面から情報表示部32cに照射される光を遮ることができるので、情報表示部32cの情報が見えないようにすることができるのである。
【0094】
なお、
図9では、2列のLED素子列において、両者のLED素子36aが基板36の長手方向において同じ位置(つまり基板36の軸端からの距離が同じ位置)となるように配列されているが、必ずしもそのように配置しなくてもよい。例えば、一の列のLED素子36aと他の列のLED素子36aの位置が、基板36の長手方向において、互いに位置がずれていてもよい。例えば、2列のLED素子列のLED素子36aが千鳥配置となるように、各列のLED素子36aを配置してもよい。
【0095】
なお、光源部35は、エッジライト方式を採用した他の構造とすることも可能である。つまり、拡散板37として、一対の長孔37h,37hを有しない平板を使用する。そして、基板36として、拡散板37を基板36の表面に重ねると、拡散板37を側方から挟む状態または軸方向から挟む状態となるように、LED素子36aを設ける。この場合でも、拡散板37の端面からLED素子36aが放出した光を拡散板37内に入射することができる。
また、光源部35の発光体としてLED素子を使用した場合を説明したが、発光体はLED素子に限られず、他の公知の発光素子を使用することも可能である。
【0096】
さらに、LED素子36aが放出する光の色や情報表示部32cの色、カバー部32bの色などを調整すれば、表示器31の表示を、色弱の方でも視認しやすいものとすることができる。例えば、LED素子36aが点灯したときに、背景が灰色や黒色、情報が白などとなるようにすればよい。
そして、上述したような表示器31について、表示器31を歩行者用押ボタン箱に取り付けるための孔ピッチPTなどを調整すれば、既設の歩行者用押ボタン箱の表示器と上記の表示器31とを交換することも可能となる。
すると、既設の表示器を上述したような表示器31に交換するだけで、既存の歩行者用押ボタン箱を、簡単に色弱の方に対応した歩行者用押ボタン箱とすることができる。しかも、表示器31が薄い板状であるので、既設の表示器と交換しても、歩行者用押ボタン箱内の他の機器との干渉を少なくできる。したがって、表示器31を歩行者用押ボタン箱内に確実に収めることができる。