(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
この出願の発明は、上記の通りの特徴を持つものであるが、以下にその実施の形態について説明する。
【0016】
<ヒートシンク101と半導体チップ103の接合構造>
本発明では、ヒートシンク101と半導体チップ103とを接合する焼結金属の接合構造を低密度な構造にすることで応力を緩和し・半導体チップ103の反りを防止することが可能である。具体的な低密度構造としては以下に挙げるものである。
【0017】
本発明では、反りを抑制するための一つの要因として接合部の密度が重要になる。
図1に銀の密度に対する弾性率の関係を示す。バルクの銀の密度は10.5g/cm
3である。半導体チップ103とヒートシンク101との間に形成された銀の接合部の密度が7.35g/cm
3以下、つまり接合部の密度が銀のバルク密度に対して70%以下のときには、銅からなるヒートシンク101の反りを抑制するために必要な弾性率である30GPa以下となるため好ましい。これは現行使用されているSnAgCuの鉛フリーはんだの弾性率が約30GPaであり、この値になると反りの問題がなくなるためである。また、半導体チップ103とヒートシンク101との間に形成された銀の接合部の密度が3.15g/cm
3以上、つまり接合部の密度が銀のバルク密度に対して30%以上のときには接合強度及び放熱性を十分確保することが出来、使用時のヒートシンク101の反りを抑制することが可能となるため好ましい。
【0018】
したがって、半導体チップ103とヒートシンク101の間に形成された接合部の密度は、半導体チップ103とヒートシンク101との間に形成された接合部が全て銀などの金属で埋められている場合と比較して接合部の金属密度が30%以上70%以下であること、つまり、半導体チップ103とヒートシンク101とが対向して形成される空間の30%〜70%の領域が焼結金属で構成されていることが好ましい。なお、ここでは便宜上銀を使用して説明したが、銅などの金属でも同様の金属密度であることが好ましい。
【0019】
低密度化するには接合面でパターンを形成することで可能となる。これにより接合部の低応力化が可能となる。このような構造としては、ヒートシンク101の上から見た場合に平面状で正方形、長方形、円、三角、ひし形、楕円等の形状にして各種パターンを描くことが可能である。結果として平面内において70〜90%の領域を占める程度になればよい。例えば格子状に正方形を規則的に配列させる構造でもよいし、
図8の上面図及び当該上面図のA―A断面図に示すように、真ん中に大きな正方形の格子303をおいて、周囲に真ん中の大きな正方形の格子303よりも小さな格子302を配置させてもよい。また、結果的に70〜90%の領域で印刷が可能であれば不規則に配置させる構造でも可能である。
【0020】
焼結金属ペーストのパターンを作成することによって、焼結後の接合部は、半導体チップ103とヒートシンク101とが焼結金属102を介して接続される接続部と、半導体チップ103とヒートシンク101が焼結金属102を介さず対向してなる空間から構成される。このように構成することによって、単純に焼結金属の空隙率を上げすぎることなく空間の割合を増やすことが可能となるため、接合強度及び放熱性を保ちつつ接合ができ、電子回路基板100の反りを抑制した電子制御装置10を提供することが可能となる。
【0021】
また、銅配線105と半導体チップ103の接合する接続材料の配置を上記ヒートシンク101と半導体チップ103の焼結金属ペーストを塗布するパターンと同様のパターンで構成しても良い。
【0022】
このように構成することによって、半導体チップ103のヒートシンク101側、及び銅配線105側の接合層を同様の構造とすることができるので半導体チップ103の両面で熱膨張係数を揃えることが可能となり、反りを抑制した電子制御装置10を提供することが可能となる。
【0023】
なお、このときには半導体チップ103の両面で同じ種類の焼結金属を用いた方が、熱膨張係数を揃えることが可能となるため、より好ましい。
【0024】
なお、均一に応力を低減するという観点からは、格子状に規則的に配列させる構造が好ましい。また、十分な熱拡散をさせて放熱性を向上させて使用時の応力低減を重視する場合は、
図8に示すように真ん中に大きな正方形の格子303をおいて、周囲に真ん中の大きな正方形の格子303よりも小さな格子302を配置させる構造が好ましい。
【0025】
さらには上記数字の範囲内であれば不規則な形状を不規則に配置させる構造でも結果的に応力を緩和することが可能となる。
【0026】
上記の接合に用いる焼結金属材料はいずれも高い放熱性を有しているためその密度が低下しても十分な放熱性を有することになる。
【0027】
また、接合材料の厚さは10um以上400um以下とする。10um以下の厚みでは上記弾性率の値でも接合部の応力を緩和することが困難になるからである。また、400um以上の厚さでは放熱性が悪くなるためである。
【0028】
以下で本発明で用いる3種類の低温焼結する金属粒子材料について述べる。
【0029】
<金属ナノ粒子の例>
1つ目は平均粒径が100nm以下の金属ナノ粒子を用いる方法である。粒径が100nm以下になると350℃以下の低温で金属が焼結するようになる。この方法では接合後にはバルクの金属となるため高い放熱性と耐熱性が得られる。金属ナノ粒子は接合時に接合相手電極に例えばAuやAgに対して接合が可能である。また、CuやNiなどに対しても表面酸化膜を還元して直接接合が可能であるためCuのヒートシンクへの貴金属めっき、しいてはNiめっきなどの処理が不要になるメリットがある。このように相手電極を還元することが可能なのは金属粒子が室温での安定性を保つために有機物で被覆されているためである。金属粒子を被覆する有機物としてはアルキルカルボン酸、アルキルアミン、アルキルチオールがある。この中でも特に酸化膜に対して還元性の強いアルキルカルボン酸、アルキルアミンを用いることが好ましい。
【0030】
上記金属粒子としては銀、銅の2種類が挙げられる。2種類の金属とも放熱性が非常に高い。が、コストを考えると、銅を用いることが好ましい。
【0031】
<金属酸化物の例>
2つ目は100nm〜10um程度の金属酸化物粒子を用いる方法である。ここで用いる金属酸化物粒子としては酸化金、酸化銀、酸化銅がある。金属酸化物粒子は、平均粒径が100nm以上10um以下としている。金属酸化物の平均粒径が10umより大きくなると、導電性接合材料中における分散性が悪くなり、緻密な接合層を得ることが困難になるためである。さらにこれ以上の粒径になるとスクリーン印刷をする場合はスクリーンに目詰まりをおこしたりするからである。また、平均粒径を100nm以上としたのは、平均粒子が100nm未満になると特に酸化銀の安定性が悪くなるからである。
【0032】
<還元剤の例>
金属酸化物粒子を用いる場合には接合時に還元して金属に戻すため還元剤との組み合わせが必須である。還元剤としては炭素数30以下の有機物からなるアルコール類、カルボン酸類、アミン類から選ばれた1種以上の混合物を用いることができる。これらは金属酸化物粒子を還元して金属にする効果だけではなく、混合粒子の溶媒への金属粒子の周りを有機物で被覆し、有機溶剤への分散性を向上する作用もある。
【0033】
ここで、還元剤として例えばステアリン酸を用いた場合、金属酸化物として酸化銀を用いた場合、酸化銀とそれに付着していたステアリン酸とが140〜150℃で還元反応を起こし、ステアリン酸が酸化銀粒子から除去される。このため、酸化銀の混合割合がステアリン酸の量に比べて多すぎると、十分に還元反応を起こすことができずに酸化銀が接合材内に残ってしまう。これでは接合強度が上がらない。よって、酸化銀に対する還元剤は0.1wt%以上とする。また、多量にステアリン酸が存在すると接合後にステアリン酸が残存し、接合強度の低下を招くため50wt%以下を限度とする。
【0034】
有機物還元剤の炭素数を30以下としたのは、炭素数が多くなりすぎると、分散材の沸点が高くなってしまって、接合時に加熱(例えば200℃)しても分散材が接合部分に残ってしまい、接合強度及び信頼性に問題となる可能性があるからである。
【0035】
また、利用可能なアルコール基を含む化合物としては、アルキルアルコールが挙げられ、例えば、エタノール、プロパノール、ブチルアルコール、ペンチルアルコール、ヘキシルアルコール、ヘプチルアルコール、オクチルアルコール、ノニルアルコール、デシルアルコール、ウンデシルアルコール、ドデシルアルコール、トリデシルアルコール、テトラデシルアルコール、ペンタデシルアルコール、ヘキサデシルアルコール、ヘプタデシルアルコール、オクタデシルアルコール、ノナデシルアルコール、イコシルアルコール、がある。さらには1級アルコール型に限らず、2級アルコール型、3級アルコール型、及びアルカンジオール、環状型の構造を有するアルコール化合物を用いることが可能である。それ以外にも、エチレングリコール、トリエチレングリコール、または、クエン酸、アスコルビン酸、グルコースなど多数のアルコール基を有する化合物を用いてもよい。
【0036】
また、利用可能なカルボン酸を含む化合物としてアルキルカルボン酸がある。具体例としては、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、トリデカン酸、テトラデカン酸、ペンタデカン酸、ヘキサデカン酸、ヘプタデカン酸、オクタデカン酸、ノナデカン酸、イコサン酸、オレイン酸が挙げられる。また、上記アルコール基と同様に1級アルコール型に限らず、2級カルボン酸型、3級カルボン酸型、及びジカルボン酸、環状型の構造を有するカルボキシル化合物を用いることが可能である。
【0037】
また、用いる還元材は上記アルコール、カルボン酸を含む有機物に限らず、アルデヒド基やエステル基、スルファニル基、ケトン、アミノ基などを含む有機物を用いることが可能である。
【0038】
<金属粒子の例>
3つ目は100nm〜10um程度の銀粒子を用いる方法である。金属粒子は10um以下の粒径でも400℃以下の低温で焼結し、接合材料として用いられる。この銀粒子は室温での安定性を保つために有機物で被覆されているためである。金属粒子を被覆する有機物としてはアルキルカルボン酸、アルキルアミン、アルキルチオールがある。この中でも特に酸化膜に対して還元性の強いアルキルカルボン酸、アルキルアミンを用いることが好ましい。
【0039】
<ペースト溶剤>
本実施形態で用いられる導電性接合材料は金属酸化物粒子と還元剤(プラス他の金属粒子)のみで生成してもよいが、ペースト状の接合材料として用いる場合には沸点が350℃以下の溶媒を加えて用いてもよい。このような溶媒としては例えばアルコール類等が挙げられる。ここで、沸点350℃以下としたのは、接合温度のターゲットが200〜250℃であるので、あまり沸点が高いと蒸発するのに時間が掛かりすぎるからであり、350℃を限度にするのが適当と考えられるからである。ただし、その温度を超える沸点を有するアルコール類等の有機物が絶対に不適かというとそうではない。用途によってはそのような有機物を用いても良いのはもちろんである。
【0040】
利用可能なアルコール基を有する有機物としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブチルアルコール、ペンチルアルコール、ヘキシルアルコール、ヘプチルアルコール、オクチルアルコール、ノニルアルコール、デシルルコール、ウンデシルアルコール、ドデシルアルコール、トリデシルアルコール、テトラデシルアルコール、ペンタデシルアルコール、ヘキサデシルアルコール、ヘプタデシルアルコール、オクタデシルアルコール、ノナデシルアルコール、イコシルアルコール、がある。また、ジエチレングリコール、エチレングリコール、トリエチレングリコールなどのグリコール系を用いることができる。さらには1級アルコール型に限らず、2級アルコール型、3級アルコール型、及びアルカンジオール、環状型の構造を有するアルコール化合物を用いることが可能である。それ以外にも、テルピネオール、エチレングリコール、トリエチレングリコール、または、クエン酸、アスコルビン酸、グルコースなど多数のアルコール基を有する化合物を用いてもよい。これらの中でもグリコール系の溶媒を用いることが好ましい。これはグリコール系の溶媒は安価で、人体等に対する毒性も少ないからである。
【0041】
また、接合材料中には平均粒径が10um以下の金属粒子を予め混合しておいてもよい。このような金属の種類としては白金、パラジウム、ロジウム、オスミウム、ルテニウム、鉄、錫、亜鉛、コバルト、ニッケル、クロム、チタン、タンタル、タングステン、インジウム、ケイ素、アルミニウム等の中から少なくとも1種類の金属あるいは2種類以上の金属からなる合金を用いることが可能である。これらは本発明における導電性接合材料の特性を大きく低下させない範囲で混合させて用いてもよい。
【0042】
また、上記アルコール基を含む有機物に限らず、カルボン酸、アミン、アルデヒド基やエステル基、スルファニル基、ケトン基などを含む有機物を用いることができる。さらには、上記のような官能基を有さない、トルエンや、炭化水素のみからなる有機物を用いてもよく、そのような例としてはヘキサン、シクロへキサンなどが挙げられる。このように用いる有機溶剤としては沸点が350℃以下であればよく、そのような中からは1種のみではなく、2種類以上の混合物を用いることが可能である。ここで、350℃以下の沸点を有する有機物とは、一般に市販されている、Seiko Instruments 製TG/DTA6200や、島津製作所製TGA−50等の熱重量測定が可能な装置を用いて10℃/min において窒素中において測定を行った場合に350℃までに99wt%の重量減少を起こす有機物とする。
【0043】
混合する有機溶剤の量は本発明における焼結する金属材料を100重量%とした場合に50重量%以内(より好適には20重量%以内)であればよい。この際には乳鉢、擂潰機、振動ボールミル、ローラーミル、遊星ボールミル等を用いて攪拌して混合すればよい。
【0044】
<接合条件>
上記の3種類の焼結性金属粒子材料を用いた場合は、接合するためには熱を加えることが必須である。接合条件としては、1秒以上180分以内で100℃以上350℃以下の加熱を加えることが好ましい。
【0045】
また、接合強度向上のために、必要があれば加圧をかけて用いてもよい。 加熱温度を100℃以上としたのは、これよりも低温での加熱であると、接合を達成することが不可能だからである。
【0046】
加熱時間を180分以下としたのは加熱時間を180分以上とすると、一つの製品を作製するのにあまりにも多くの時間がかかり、大量生産を行うことが難しくなるからである。
【0047】
このときの接合雰囲気としては、大気中に限らず、還元雰囲気、例えば、水素雰
囲気、または不活性雰囲気である窒素雰囲気、アルゴン雰囲気などを用いることが可能である。このような雰囲気で接合を行うことで、電子部品等の大気中での酸化等の問題を軽減することが可能となる。
【0048】
以下、具体的な実施形態を用いて本発明をより詳細に説明する。
<第一の実施形態>
図2は、本実施形態における車両のエンジンECU(Electric Control Unit)の概略構成を説明するための組み付け前の状態を示す分解図である。
図2に示すように、ECU10は、筐体301、当該筐体301内に収容される電子回路基板100と、コネクタ部分200により構成される。
【0049】
筐体301は、例えばポリブチレンテレフタラート(PBT)等からなり、一方が開放され、もう片方はコネクタ端子を差し込むための穴(図示しない)が形成された構成となる。そして、この中に電子回路基板100を収容する内部空間を構成する。
【0050】
基板部111は、銅配線105や当該配線間を接続するビアホール(図示しない)等から構成されるものである。電子回路基板100は、当該基板部111に、ヒートシンク101、半導体チップ(マイコン)103、コンデンサ106、抵抗等の電子部品を実装して構成されるものである。本実施形態においては、基板部111の材料としては、例えばエポキシ樹脂とガラスファイバーからなる基板を用いている。
【0051】
なお、本実施形態では上記構成の電子回路基板100を用いたが、上記構成に限定されるものではなく、それ以外の樹脂基板や、セラミック基板を適用することができる。ヒートシンク103には銅が放熱性の観点から好ましいが、より軽いAlなどを用いてもよい。また、表面にはNiめっき、Agめっき、Auめっき等を施して使用してもよい。
【0052】
また、半導体チップ103が、過度に発熱する発熱する半導体チップ103である。この103が、特許請求の範囲で示す発熱する半導体チップである。尚、コネクタ201は、電子回路基板100に実装された外部接続端子としてのコネクタであり、当該コネクタ201は、筺体301とカバー401を締結した状態で、一端が筐体301外に露出するように構成されている。
【0053】
次に、半導体チップ103にて生じた熱をヒートシンク101に放出する電子回路基板100の放熱構造の詳細を、
図3、
図4、及び
図5を用いて説明する。
図3は、組み付け後の電子回路基板100の概略構成を示す図である。
図3に示すように半導体チップ103とヒートシンク101の接合部はパターン構造により低応力化されている。
【0054】
図4は、ヒートシンク101と半導体チップ103の接合前の焼結金属ペースト 122の印刷方法を示す図である。
図4に示すような電子回路基板100の放熱構造を形成するためには、半導体チップ103と銅のヒートシンク101をはじめに接合する。
【0055】
図5にその接合方法を示す。まず、焼結金属を用いて、銅のヒートシンク101と半導体チップ103を接合する。銅のヒートシンク101上に焼結金属となる焼結金属ペースト材料122を格子マスクを用いて印刷する。この際の印刷する領域はチップサイズよりも小さくが(例えばチップサイズが8mmの場合は8mm×8mmよりも狭い)、その領域において平面の密度70%以下となるようにペースト材料を印刷する(例えばチップサイズが8mmの場合は2mm×2mmの9つの正方形を1mm間隔で均等に配置する)。
【0056】
また、焼結金属となるペーストは前述した3種類の金属ペーストを用いることが可能である。次にこれらを上述したような熱処理することで接合を行う。この際の雰囲気も前述のように還元・大気・不活性雰囲気などを採用してよい。また、接合温度も150〜300℃の範囲で行うことが可能である。
【0057】
次に
図2で示すように、例えば接合材料104を介して半導体チップ103を回路基板100上の銅配線105に実装する。この際のはんだとしては鉛フリーはんだを用いて接続されている。鉛フリーはんだとしては、Sn−Cuはんだ、Sn−Ag−Cuはんだ、Sn−Ag−Cu−Biはんだ等が用いられるが、特にこれらに限らず、プレスフィット接続等のはんだを用いず、接触のみで電気的に接続させる無はんだ接続でもよい、この半導体チップ103が実装された回路基板100を、筐体301に取り付ける。また、前述したAu, Ag, Cuなどを焼結させた金属接合技術を用いてもよい。
【0058】
なお、半導体チップ103の熱応力を低減するという観点を重視すると接合材料104に焼結金属を用いる方が、半導体チップ103の両面で熱膨張係数を揃えることが可能になるので好ましい。この際には、接続材料104のパターンを焼結金属102と同様のパターンにすることによって、半導体チップ103の両面にかかる応力を揃えることが出来るため、使用時により反りを低減することが可能となる。また、接続材料104と焼結金属102を同様の材料とすることによっても半導体チップ103の両面に係る応力を揃えることが可能となる。
【0059】
一方で、接合材料104にはんだを用いた場合には、はんだが融解して接合されるため、仮に半導体チップ103に若干の反りがあったとしても、はんだで反りによって発生する応力を無理なく吸収することが出来るため、半導体チップ103にチップばらつきの大きい低価格な半導体チップ103を用いる場合では好ましい。また、このように構成することによって、仮に半導体チップ103が破損等したとしても、回路基板100側のはんだを再度溶融させることによって、別の半導体チップ103と容易に交換可能になるため、生産性が向上するというメリットがある。
【0060】
また
図2や
図3にも示すように、封止樹脂107で、電子回路基板100の半導体チップ103及び銅のヒートシンク101を封止するのが望ましい。これによりヒートシンク101と半導体チップ103の接合部の信頼性が向上する。また、樹脂107で封止することで半導体チップ103からの放熱性も向上する。この封止材料としては熱硬化性樹脂、あるいは熱可塑性樹脂を用いてよい。
【0061】
このような工程を得て
図6に示すような電子制御装置を得ることが出来る。
【0062】
<第二の実施形態>
図7は、本実施形態における車両のエンジンECU(Electric Control Unit)の概略構成を説明するための組み付け前の状態を示す分解図である。
【0063】
第一の実施形態と本実施形態で異なる点は、2つの半導体チップ103がそれぞれ電子回路基板から露出された構成となる電子回路基板110を用いた点である。この電子回路基板110は上部と下部に設置した半導体チップ103に接合されたヒートシンク101がどちらも電子回路基板110外部に露出されている。このような構造にすることによって、電子回路基板110のコネクタ200側に配置されているヒートシンク101までの構成と、電子回路基板110のカバー401側に配置されているヒートシンク101までの構成を同様にすることが可能となる。
【0064】
したがって、電子回路基板110の上下で熱膨張係数を揃えることが可能となり、電子制御装置20を使用している最中に、熱による電子回路基板110の反りを抑制することができる。
【0065】
また、筺体301とカバー401の内部が全て樹脂で封止樹脂501により封止されている。このような構造により第一の実施形態に係る構造よりもより外部へ熱が伝わりやすい構造となり放熱性の向上により反りを抑制することが可能となる。
【0066】
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の設計変更を行なうことができるものである。例えば、前記した実施形態は本発明をわかりやすく説明するために詳細に記載したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。さらに、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。