(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上りリンクの送信電力が初期化された場合、前記累積値保持部で保持された累積値に基づく送信電力制御コマンドを送信する区間を算出する区間算出部を更に有する、請求項1に記載の基地局。
前記送信電力制御コマンド決定部は、前記累積値保持部で保持された累積値が正である場合、送信電力制御コマンドの値として、送信電力を最大限増加させる値を算出し、前記累積値保持部で保持された累積値が負である場合、送信電力制御コマンドの値として、送信電力を最大限減少させる値を算出し、
前記区間算出部は、前記累積値保持部で保持された累積値を、前記送信電力制御コマンド決定部で算出された送信電力制御コマンドの増減値で除算することにより、送信電力制御コマンドを送信する区間を算出する、請求項2に記載の基地局。
前記区間算出部は、前記累積値保持部で保持された累積値に応じて予め決められた区間に基づいて、送信電力制御コマンドを送信する区間を算出する、請求項2に記載の基地局。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のように、PUSCHのTPCコマンドは、移動局からの上りリンク送信データが存在する場合に送信される。従って、移動局からの上りリンク送信データが存在せず、PUSCHが割り当てられない場合、PUSCHのTPCコマンドは送信されない。
【0007】
また、PUCCHのTPCコマンドは、移動局へ下りリンク送信データが存在する場合に送信される。従って、移動局への下りリンク送信データが存在せず、PDSCHが割り当てられない場合、PUCCHのTPCコマンドは送信されない。
【0008】
このため、移動局からの上りリンク送信データが存在しない期間が続くと、PUSCHのTPCコマンドが送信されないことにより、伝搬状況の変動に追従できなくなる。同様に、移動局への下りリンク送信データが存在しない期間が続くと、PUCCHのTPCコマンドが送信されないことにより、伝搬状況の変動に追従できなくなる。
【0009】
また、例えば、基地局においてオペレータの入力等によってリコンフィグレーション(Reconfiguration)等が実施された場合又は移動局がランダムアクセスを開始する場合、上りリンクの送信電力が初期化される。このような場合には、上りリンクの送信電力が一時的に伝搬状況から大きく乖離し、伝搬状況に追従するまでに時間がかかり、その間の通信品質が劣化する。PUSCHの通信品質が劣化した場合、制御信号(C-plane)の送信が失敗したり、データ(U-plane)のスループットが低下したりする可能性がある。PUCCHの通信品質が劣化した場合、PDSCH用の制御情報(ACK、NACK、CQI(Channel Quality Indicator)、RI(Rank Information)等)の送信が失敗し、その結果、スループットが低下する可能性がある。例えば、初期化された上りリンクの送信電力に対して上りリンクの干渉電力が高い場合、通信品質が劣化し、初期化された上りリンクの送信電力に対して上りリンクの干渉電力が低い場合、他の移動局に対して過剰に干渉電力を与える。
【0010】
本発明は、移動局からの上りリンク送信データ又は移動局への下りリンク送信データが存在しない場合であっても、基地局からTPCコマンドを送信することにより、上りリンクの送信電力を適切に制御することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一形態による基地局は、
移動局に送信した送信電力制御コマンドの累積値を保持する累積値保持部と、
基地局のリコンフィグレーションの場合又は前記移動局がランダムアクセスを開始した場合、前記累積値保持部で保持された累積値に基づいて送信電力制御コマンドを決定する送信電力制御コマンド決定部と、
前記送信電力制御コマンド決定部で決定された送信電力制御コマンドを制御チャネルで前記移動局に送信する制御チャネル送信部と、
を有することを特徴とする。
【0012】
本発明の一形態による基地局は、
下りリンクのデータ又は上りリンクのデータが送信されない無通信区間を監視する無通信区間監視部と、
前記無通信区間監視部で監視された無通信区間が所定値以上である場合、移動局からデータ又は制御情報を送信させるための制御情報を送信する制御チャネル送信部と、
前記移動局から受信したデータ又は制御情報の受信品質に基づいて送信電力制御コマンドを決定する送信電力制御コマンド決定部と、
を有することを特徴とする。
【0013】
本発明の一形態による送信電力制御方法は、
基地局における上りリンクの送信電力制御方法であって、
移動局に送信した送信電力制御コマンドの累積値を保持するステップと、
基地局のリコンフィグレーションの場合又は前記移動局がランダムアクセスを開始した場合、保持された累積値に基づいて送信電力制御コマンドを決定するステップと、
決定された送信電力制御コマンドを制御チャネルで前記移動局に送信するステップと、
を有することを特徴とする。
【0014】
本発明の一形態による送信電力制御方法は、
基地局における上りリンクの送信電力制御方法であって、
下りリンクのデータ又は上りリンクのデータが送信されない無通信区間を監視するステップと、
監視された無通信区間が所定値以上である場合、移動局からデータ又は制御情報を送信させるための制御情報を送信するステップと、
前記移動局から受信したデータ又は制御情報の受信品質に基づいて送信電力制御コマンドを決定するステップと、
を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、移動局からの上りリンク送信データ又は移動局への下りリンク送信データが存在しない場合であっても、基地局が上りリンクの送信電力を制御し、通信品質を向上させることが可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施例について、図面を参照して説明する。
【0018】
本発明の実施例では、基地局は、移動局に送信したTPCコマンドの累積値を保持する。そして、基地局は、上りリンクの送信電力が初期化された場合、保持された累積値に基づいてTPCコマンドを決定し、決定されたTPCコマンドを制御チャネルで移動局に送信する。
【0019】
また、基地局は、下りリンクのデータ又は上りリンクのデータが送信されない無通信区間を監視し、監視された無通信区間が所定値以上である場合、移動局からデータ又は制御情報を送信させるための制御情報を送信できる。
【0020】
このように、基地局は、上りリンクの送信電力が初期化された場合又は無通信区間が所定値以上である場合には、移動局からの上りリンク送信データ又は移動局への下りリンク送信データが存在しない場合であっても、基地局からTPCコマンドを送信する。
【0021】
図1を参照して、本発明の実施例におけるPUSCHの送信電力制御について説明する。
【0022】
LTE方式の移動通信ステムでは、基地局は、移動局からの上りリンク送信データが残っていることを示すバッファステータスレポートを移動局から受信した場合等に、基地局のスケジューラによって移動局にPUSCH送信を割り当て、PDCCHで上りリンクスケジューリンググラントを送信する。本発明の実施例では、移動局からの上りリンク送信データが存在しない場合であっても、上りリンクの送信電力が初期化された場合又は上りリンクのデータが送信されない無通信区間が所定値以上である場合、基地局は、PDCCHで上りリンクスケジューリンググラントを送信する(S11)。この上りリンクスケジューリンググラントと共に、PUSCHのTPCコマンドが送信されてもよい。移動局は、TPCコマンドに従って送信電力を決定し、有効なデータが入っていないPUSCHを送信する(S12)。このときのPUSCHには、予め決められたダミーのデータが入れられてもよい。基地局は、PUSCHが受信できなかった場合、物理HARQインジケータチャネル(PHICH:Physical Hybrid-ARQ Indicator Channel)等により再送を指示する(S13)。
【0023】
図1のステップS11で送信されるPUSCHのTPCコマンドは、TS36.213のTable 5.1.1.1-2及びTable 5.1.1.1-3に規定されている。DCI format 0/3によれば、TPCコマンドは2ビットの値を取ることができる。TPCコマンドが0である場合、送信電力の増減値は-1dBであり、TPCコマンドが1である場合、送信電力の増減値は0dBであり、TPCコマンドが2である場合、送信電力の増減値は1dBであり、TPCコマンドが2である場合、送信電力の増減値は3dBである。また、DCI format 3Aによれば、TPCコマンドは1ビットの値を取ることができる。TPCコマンドが0である場合、送信電力の増減値は-1dBであり、TPCコマンドが1である場合、送信電力の増減値は1dBである。
【0024】
次に、
図2を参照して、本発明の実施例におけるPUCCHの送信電力制御について説明する。
【0025】
LTE方式の移動通信ステムでは、基地局は、移動局への下りリンク送信データが存在する場合、基地局のスケジューラによって移動局にPDSCH送信を割り当て、PDCCHで下りリンクスケジューリング情報を送信する。本発明の実施例では、移動局への下りリンク送信データが存在しない場合であっても、上りリンクの送信電力が初期化された場合又は下りリンクのデータが送信されない無通信区間が所定値以上である場合、基地局は、PDCCHで下りリンクスケジューリング情報を送信する(S21)。また、同じサブフレーム内で、移動局宛の有効なデータが入っていないPDSCHを送信してもよい。このときのPDSCHには、予め決められたダミーのデータが入れられてもよい。この下りリンクスケジューリング情報と共に、PUCCHのTPCコマンドが送信されてもよい。移動局は、TPCコマンドに従ってPDSCH用の制御情報(ACK/NACK)をPUCCHで送信する(S22)。基地局は、必要に応じて、更にPDCCHで下りリンクスケジューリング情報を送信する(S23)。
【0026】
図2のステップS21及びS23で送信されるPUCCHのTPCコマンドは、TS36.213のTable 5.1.2.1-1及びTable 5.1.2.1-1に規定されている。DCI format 1A/1B/1D/1/2A/2B/2/3によれば、TPCコマンドは2ビットの値を取ることができる。TPCコマンドが0である場合、送信電力の増減値は-1dBであり、TPCコマンドが1である場合、送信電力の増減値は0dBであり、TPCコマンドが2である場合、送信電力の増減値は1dBであり、TPCコマンドが2である場合、送信電力の増減値は3dBである。また、DCI format 3Aによれば、TPCコマンドは1ビットの値を取ることができる。TPCコマンドが0である場合、送信電力の増減値は-1dBであり、TPCコマンドが1である場合、送信電力の増減値は1dBである。
【0027】
このように、上りリンクの送信電力が初期化された場合又は無通信区間が所定値以上である場合にTPCコマンドを送信する基地局の構成及び動作について、以下に詳細に説明する。
【0028】
<基地局の構成>
本発明の実施例に係る基地局について説明する前に、
図3を参照して、LTE方式の移動通信システムにおける上りリンクの送信電力について説明する。
【0029】
LTE方式の移動通信システムにおける上りリンクの送信電力は、上記の通り、基地局からのTPCコマンドに従って制御される。(A)に示すように、上りリンクの干渉電力が高くなる場合、基地局はTPCコマンドを用いて、移動局の送信電力を増加させる。(B)の間に、移動局からの上りリンク送信データ又は移動局への下りリンク送信データが存在しないことを想定する。この場合、基地局からTPCコマンドは送信されないため、移動局の上り送信電力は変化しない。(B)の間に上りリンクの干渉電力は高くなっているため、移動局からの上りリンク送信データ又は移動局への下りリンク送信データが発生した場合、(C)において、基地局はTPCコマンドを用いて移動局の送信電力を増加させる。(D)において、(A)と同様に、基地局はTPCコマンドを用いて、移動局の送信電力を増加させる。
【0030】
(E)において、基地局の意図的なリコンフィグレーション又は移動局のランダムアクセスにより、上りリンクの送信電力はリセットされる。上りリンクの干渉電力が高い状態で上りリンクの送信電力がリセットされた場合、上りリンクの干渉電力に対して初期化された上りリンクの送信電力が低くなる。このため、(F)において、基地局はTPCコマンドを用いて、移動局の送信電力を増加させる。(G)に示すように、更に上りリンクの干渉電力が高くなる場合、基地局はTPCコマンドを用いて、移動局の送信電力を増加させる。一方、(H)に示すように、上りリンクの干渉電力が低くなる場合、基地局はTPCコマンドを用いて、移動局の送信電力を減少させる。(I)において、基地局のリコンフィグレーション又は移動局のランダムアクセスにより、上りリンクの送信電力はリセットされる。上りリンクの干渉電力が低い状態で上りリンクの送信電力がリセットされた場合、上りリンクの干渉電力に対して初期化された上りリンクの送信電力が高くなる。このため、(J)において、基地局はTPCコマンドを用いて、移動局の送信電力を減少させる。
【0031】
本発明の実施例では、
図3の(B)のように移動局からの上りリンク送信データ又は移動局への下りリンク送信データが存在しない場合、又は
図3の(E)又は(I)のように上りリンクの送信電力がリセットされた場合に、物理上りリンク共有チャネルの送信電力及び物理上りリンク制御チャネルの送信電力制御する基地局について説明する。
【0032】
図4に、本発明の実施例に係る基地局のブロック図を示す。本発明の実施例に係る基地局は、TPC制御初期化決定部101と、TPC制御初期化実施部103と、TPC累積値保持部105と、振り分け部111と、TPC制御初期化後TPCコマンド算出部113と、TPCコマンド算出部117と、制御チャネル送信部127とを有する。本発明の実施例に係る基地局は、TPC制御初期化後補正区間算出部107と、確認部109と、無通信区間監視部129とを有してもよい。
【0033】
TPC制御初期化決定部101は、オペレータの入力等によってリコンフィグレーションが実施されたか又は移動局がランダムアクセスを開始したかを検出し、上りリンクの送信電力を初期化するか否かを決定する。
【0034】
TPC制御初期化実施部103は、TPC制御初期化決定部101で上りリンクの送信電力の初期化が決定された場合、上りリンクの送信電力を予め設定された初期値に設定する。以下では、上りリンクの送信電力を初期化することをTPC制御初期化と呼ぶ。
【0035】
TPC累積値保持部105は、移動局に送信したTPCコマンドの累積値を保持する。例えば、TPC累積値保持部105は、DCI format 0/3又はDCI format 1A/1B/1D/1/2A/2B/2/3を用いて移動局に送信した送信電力の増減値(-1dB〜3dB)の累積値を保持してもよく、DCI format 3Aを用いて移動局に送信した送信電力の増減値(-1dB又は1dB)の累積値を保持してもよい。
【0036】
TPC制御初期化後補正区間算出部107は、上りリンクの送信電力が初期化された場合、TPC累積値保持部105で保持された累積値に基づいてTPCコマンドを送信する区間を算出する。以下では、上りリンクの送信電力が初期化された場合に移動局に連続して又は高頻度にTPCコマンドを送信する区間を補正区間と呼ぶ。「連続して」とは、例えば連続するサブフレームを意味し、「高頻度に」とは、例えば無線リソースが許す限り連続するサブフレームを意味する。
【0037】
例えば、TPC制御初期化後補正区間算出部107は、TPC累積値保持部105で保持された累積値に応じて予め決められた区間を、TPCコマンドを送信する補正区間としてもよい。
図5に、TPCコマンドの累積値とTPCコマンドを送信する補正区間との関係の例を示す。例えば、TPCコマンドの累積値が-10より下である場合、TPCコマンドを送信する補正区間は10サブフレームとしてもよく、TPCコマンドの累積値が0〜-10である場合、TPCコマンドを送信する補正区間は5サブフレームとしてもよく、TPCコマンドの累積値+10〜0である場合、TPCコマンドを送信する補正区間は3サブフレームとしてもよく、TPCコマンドの累積値+20〜+10である場合、TPCコマンドを送信する補正区間は5サブフレームとしてもよく、TPCコマンドの累積値+30より上である場合、TPCコマンドを送信する補正区間は10サブフレームとしてもよい。
【0038】
例えば、上りリンクの送信電力の初期化が決定されたときにTPC累積値保持部105で保持された累積値が正である場合、できるだけ早く伝搬状況に追従させるため、DCI format 0/3又はDCI format 1A/1B/1D/1/2A/2B/2/3において3dBのTPCコマンドが使用されてもよい。この場合、TPC制御初期化後補正区間算出部107は、TPC累積値保持部105で保持された値を3で除算することにより、TPCコマンドを送信する補正区間を算出してもよい。また、DCI format 3Aにおいて1dBのTPCコマンドが使用されてもよい。この場合、TPC制御初期化後補正区間算出部107は、TPC累積値保持部105で保持された値と同じサブフレームを、TPCコマンドを送信する補正区間としてもよい。例えば、上りリンクの送信電力の初期化が決定されたときにTPC累積値保持部105で保持された累積値が負である場合、DCI format 0/3、DCI format 1A/1B/1D/1/2A/2B/2/3又はDCI format 3Aにおいて-1dBのTPCコマンドが使用されてもよい。この場合、TPC制御初期化後補正区間算出部107は、TPC累積値保持部105で保持された値と同じサブフレームを、TPCコマンドを送信する補正区間としてもよい。更に、TPC制御初期化後補正区間算出部107は、このように算出された区間に任意の係数を掛けた値又は足した値を、TPCコマンドを送信する補正区間としてもよい。
【0039】
確認部109は、現在のサブフレームがTPC制御初期化後補正区間算出部107で算出された補正区間内であるか否かを確認する。
【0040】
振り分け部111は、TPCコマンドを決定する際に、TPC制御初期化後TPCコマンド算出部113を用いるか、TPCコマンド算出部117を用いるかを振り分ける。現在のサブフレームがTPC制御初期化後補正区間算出部107で算出された補正区間内である場合、振り分け部111は、移動局に連続して又は高頻度にTPCコマンドを送信するために、TPC制御初期化後TPCコマンド算出部113を用いる。現在のサブフレームがTPC制御初期化後補正区間算出部107で算出された補正区間内でない場合、振り分け部111は、通常のようにPUSCH又はPUCCHの受信品質に基づいてTPCコマンドを決定するために、TPCコマンド算出部117を用いる。
【0041】
TPC制御初期化後TPCコマンド算出部113は、初期化後補正区間算出部107で算出された補正区間内においてTPCコマンドの値を算出する。TPC制御初期化後TPCコマンド算出部113は、TPCコマンド決定部115を有する。
【0042】
TPCコマンド決定部115は、上りリンクの送信電力が初期化された場合、TPC累積値保持部105で保持された累積値に基づいてTPCコマンドを決定する。TPCコマンド決定部115は、TPC累積値保持部105で保持された累積値が正である場合、TPCコマンドの値として、送信電力を最大限増加させる値を決定してもよい。例えば、上記のように、TPCコマンド決定部115は、DCI format 0/3又はDCI format 1A/1B/1D/1/2A/2B/2/3において3dBのTPCコマンドを決定してもよく、DCI format 3Aにおいて1dBのTPCコマンドを決定してもよい。TPCコマンド決定部115は、TPC累積値保持部105で保持された累積値が負である場合、TPCコマンドの値として、送信電力を最大限減少させる値を決定してもよい。例えば、上記のように、TPCコマンド決定部115は、DCI format 0/3、DCI format 1A/1B/1D/1/2A/2B/2/3又はDCI format 3Aにおいて-1dBのTPCコマンドを決定してもよい。
【0043】
TPCコマンド算出部117は、初期化後補正区間算出部107で算出された補正区間外においてTPCコマンドの値を算出する。TPCコマンド算出部117は、目標受信SIR算出部119と、受信SIR測定部121と、比較部123と、TPCコマンド決定部125とを有する。
【0044】
目標受信SIR算出部119は、受信信号の誤り率等によって目標受信品質を算出する。目標受信品質は、Target SIR(Target Signal to Interference Ratio)とも呼ばれる。
【0045】
受信SIR測定部121は、PUSCH又はPUCCHの受信品質を測定する。この受信品質は、受信SIRとも呼ばれ、干渉電力に対する信号電力によって求められる。
【0046】
比較部123は、目標受信SIR算出部119で算出された目標受信品質と、受信SIR測定部121で測定された受信品質を比較する。
【0047】
TPCコマンド決定部125は、比較部123での比較結果に基づいてTPCコマンドを決定する。例えば、目標受信SIR算出部119で算出された目標受信品質に対して受信SIR測定部121で測定された受信品質が低い場合、TPCコマンド決定部125は、送信電力を増加させるTPCコマンドを決定する。例えば、目標受信SIR算出部119で算出された目標受信品質に対して受信SIR測定部121で測定された受信品質が高い場合、TPCコマンド決定部125は、送信電力を減少させるTPCコマンドを決定する。
【0048】
制御チャネル送信部127は、TPC制御初期化後TPCコマンド算出部113又はTPCコマンド算出部117で決定されたTPCコマンドを制御チャネルで移動局に送信する。TPCコマンドは、PDCCHの下りリンク制御情報(DCI:Downlink Control Information)を用いて送信される。特に、PUSCHのTPCコマンドは、上りリンクスケジューリンググラントで送信され、PUCCHのTPCコマンドは、下りリンクスケジューリング情報で送信される。
【0049】
無通信区間監視部129は、下りリンクのデータ又は上りリンクのデータが送信されない無通信区間を監視する。例えば、無通信区間監視部129は、前回のPUSCH送信からの経過時間を監視してもよく、前回のPDCCH送信からの経過時間を監視してもよい。PUSCHの無通信区間が所定値以上である場合、制御チャネル送信部127は、移動局からの上りリンクのデータを送信させるための制御情報(上りリンクスケジューリンググラント)を送信する。PDCCHの無通信区間が所定値以上である場合、制御チャネル送信部127は、移動局からの制御情報を送信させるための制御情報(下りリンクスケジューリング情報)を送信する。
【0050】
<基地局の動作>
図6に、本発明の実施例に係る送信電力制御方法のフローチャート(TPC制御初期化の場合)を示す。
【0051】
TPC制御初期化決定部101は、基地局のリコンフィグレーション等のシーケンスにより、基地局から意図的にTPC制御初期化が指示されたかを検出する。或いは、TPC制御初期化決定部101は、移動局がランダムアクセスを開始することによりTPC制御初期化が発生したかを検出する(S101)。
【0052】
TPC制御初期化が発生した場合(S101:YES)、TPC累積値保持部105は、移動局に送信したTPCコマンドの累積値を保持し、TPC制御初期化後補正区間算出部107は、TPC累積値保持部105で保持された累積値に基づいてTPCコマンドを送信する補正区間を算出する(S103)。例えば、TPC制御初期化後補正区間算出部107は、上記のように、TPC累積値保持部105で保持された累積値に応じて予め決められた区間を、TPCコマンドを送信する補正区間としてもよく、TPC累積値保持部105で保持された値をTPCコマンドの増減値で除算することにより、TPCコマンドを送信する補正区間を算出してもよい。次に、TPC制御初期化実施部103は、上りリンクの送信電力を予め設定された初期値に設定する(S105)。
【0053】
確認部109は、現在のサブフレームがTPC制御初期化後補正区間算出部107で算出された補正区間内であるか否かを確認する(S107)。補正区間内である場合(S107:YES)、振り分け部111は、TPCコマンドを決定する際に、TPC制御初期化後TPCコマンド算出部113を用いる。
【0054】
TPC制御初期化後TPCコマンド算出部113は、TPC累積値保持部105で保持された累積値が正である場合(S109:YES)、送信電力を増加させるTPCコマンドを決定する。TPCコマンドの値として、送信電力を最大限増加させる値を決定してもよい。制御チャネル送信部127は、決定されたTPCコマンドを移動局に送信する(S111)。
【0055】
一方、TPC制御初期化後TPCコマンド算出部113は、TPC累積値保持部105で保持された累積値が負である場合(S109:NO)、送信電力を減少させるTPCコマンドを決定する。TPCコマンドの値として、送信電力を最大限減少させる値を決定してもよい。制御チャネル送信部127は、決定されたTPCコマンドを移動局に送信する(S113)。
【0056】
補正区間内である限り、同様にして、連続して又は高頻度にTPCコマンドが移動局に送信され続ける。
【0057】
なお、TPC制御初期化が発生しない場合(S101:NO)又は現在のサブフレームがTPC制御初期化後補正区間算出部107で算出された補正区間外である場合(S107:NO)、振り分け部111は、TPCコマンドを決定する際に、TPCコマンド算出部117を用いる。TPCコマンド算出部117は、目標受信品質と受信品質との比較に基づいて、TPCコマンドを決定し、制御チャネル送信部127は、決定されたTPCコマンドを移動局に送信する(S115)。
【0058】
図7に、本発明の実施例に係る送信電力制御方法のフローチャート(無通信区間が所定値以上になった場合)を示す。
【0059】
無通信区間監視部129は、下りリンクのデータ又は上りリンクのデータが送信されない無通信区間を監視する(S151)。無通信区間が所定値未満である場合(S153:NO)、無通信区間監視部129は、無通信区間の監視を続ける(S151)。
【0060】
無通信区間が所定値以上になった場合(S153:YES)、制御チャネル送信部127は、上りリンクスケジューリンググラント又は下りリンクスケジューリング情報を送信する(S155)。上りリンクスケジューリンググラントの送信により、移動局は、TPCコマンドに従って送信電力を決定し、有効なデータが入っていないPUSCHを送信する。また、下りリンクスケジューリング情報の送信と共に、基地局は、有効なデータが入っていないPDSCHを送信し、移動局は、TPCコマンドに従ってACK/NACKをPUCCHで送信する。
【0061】
基地局がPUSCH又はPUCCHを受信した場合、振り分け部111は、TPCコマンドを決定する際に、TPCコマンド算出部117を用いる。TPCコマンド算出部117は、受信品質を測定し(S157)、目標受信品質と受信品質との比較に基づいて、TPCコマンドを決定する。制御チャネル送信部127は、決定されたTPCコマンドを移動局に送信する(S159)。
【0062】
<変形例の基地局の構成>
図4〜7を参照して説明した実施例では、上りリンクの送信電力が初期化された場合、TPCコマンドの送信の前にTPCコマンドを送信する補正区間が算出されるが、TPCコマンドの送信の前に補正区間を算出しない変形例について以下に説明する。
【0063】
図8に、本発明の変形例に係る基地局のブロック図を示す。本発明の変形例に係る基地局は、TPC制御初期化決定部201と、TPC制御初期化実施部203と、TPC累積値保持部205と、演算部209と、振り分け部211と、TPC制御初期化後TPCコマンド算出部213と、TPCコマンド算出部217と、制御チャネル送信部227と、無通信区間監視部229とを有する。
【0064】
TPC制御初期化決定部201、TPC制御初期化実施部203、TPC累積値保持部205、TPCコマンド算出部217、制御チャネル送信部227及び無通信区間監視部229は、
図4のTPC制御初期化決定部101、TPC制御初期化実施部103、TPC累積値保持部105、TPCコマンド算出部117、制御チャネル送信部127及び無通信区間監視部129と同じであり、また、TPCコマンド算出部217に含まれる目標受信SIR算出部219、受信SIR測定部221、比較部223及びTPCコマンド決定部225は、
図4の目標受信SIR算出部119、受信SIR測定部121、比較部123及びTPCコマンド決定部125と同じであるため、以下では、異なる機能部について説明する。
【0065】
演算部209は、TPC累積値保持部205で保持された送信電力制御コマンドの累積値Aと、TPC制御初期化後のTPCコマンドの累積値Bとの差(A-B)を算出する。TPC制御初期化後のTPCコマンドの累積値は、以下に説明する通り、初期化後TPC累積値保持部216に保持されている。なお、演算部209は、TPC累積値保持部205で保持された送信電力制御コマンドの累積値Aに任意の係数を掛けた値又は足した値を用いてもよい。例えば、演算部209は、A-Bの算出の代わりに、(α×A+β)-Bを算出してもよい。以下では、演算部209がA-Bを算出することについて説明するが、(α×A+β)-Bを算出する場合も同様に適用可能である。
【0066】
振り分け部211は、TPCコマンドを決定する際に、TPC制御初期化後TPCコマンド算出部213を用いるか、TPCコマンド算出部217を用いるかを振り分ける。演算部209で算出された差(A-B)が一度でも0になっていない場合、振り分け部221は、移動局に連続して又は高頻度にTPCコマンドを送信するために、TPC制御初期化後TPCコマンド算出部213を用いる。演算部209で算出された差(A-B)が一度でも0になった場合、振り分け部111は、通常のようにPUSCH又はPUCCHの受信品質に基づいてTPCコマンドを決定するために、TPCコマンド算出部217を用いる。
【0067】
TPC制御初期化後TPCコマンド算出部213は、演算部209で算出された差(A-B)に基づいてTPCコマンドの値を算出する。TPC制御初期化後TPCコマンド算出部213は、TPCコマンド決定部215と、初期化後TPC累積値保持部216とを有する。
【0068】
TPCコマンド決定部215は、演算部209で算出された差(A-B)に基づいてTPCコマンドを決定する。例えば、DCI format 0/3又はDCI format 1A/1B/1D/1/2A/2B/2/3が用いられるときに、TPCコマンド決定部215は、(A-B)≧3である場合、3dBのTPCコマンドを決定し、2≧(A-B)≧1である場合、1dBのTPCコマンドを決定し、(A-B)=0である場合、0dBのTPCコマンドを決定し(TPCコマンドを送信しないことを決定し)、(A-B)≦-1である場合、-1dBのTPCコマンドを決定する。例えば、DCI format 3Aが用いられるときに、TPCコマンド決定部215は、(A-B)≧1である場合、1dBのTPCコマンドを決定し、(A-B)≦-1である場合、-1dBのTPCコマンドを決定する。従って、TPCコマンド決定部215は、(A-B)=0となるまでTPCコマンドを決定する。
【0069】
初期化後TPC累積値保持部216は、上りリンクの送信電力が初期化された後にTPCコマンド決定部215で決定されたTPCコマンドの累積値を保持する。
【0070】
<変形例の基地局の動作>
図9に、本発明の変形例に係る送信電力制御方法のフローチャート(TPC制御初期化の場合)を示す。
【0071】
TPC制御初期化決定部201は、基地局のリコンフィグレーション等のシーケンスにより、基地局から意図的にTPC制御初期化が指示されたかを検出する。或いは、TPC制御初期化決定部201は、移動局がランダムアクセスを開始することによりTPC制御初期化が発生したかを検出する(S201)。
【0072】
TPC制御初期化が発生した場合(S201:YES)、TPC累積値保持部205は、移動局に送信したTPCコマンドの累積値を保持する(S203)。次に、TPC制御初期化実施部203は、上りリンクの送信電力を予め設定された初期値に設定する(S205)。
【0073】
演算部209は、TPC累積値保持部205で保持された送信電力制御コマンドの累積値Aと、TPC制御初期化後のTPCコマンドの累積値Bとの差(A-B)を算出する(S207)。初期化直後は、TPCコマンドの累積値Bは0である。
【0074】
演算部209で算出された差(A-B)が一度でも0になっていない場合(S207:NO)、振り分け部211は、移動局に連続して又は高頻度にTPCコマンドを送信するために、TPC制御初期化後TPCコマンド算出部213を用いる。
【0075】
例えば、DCI format 0/3又はDCI format 1A/1B/1D/1/2A/2B/2/3が用いられるときに、(A-B)≧3である場合、TPC制御初期化後TPCコマンド算出部213は、3dBのTPCコマンドを決定し、2≧(A-B)≧1である場合、1dBのTPCコマンドを決定し、(A-B)=0である場合、0dBのTPCコマンドを決定し(TPCコマンドを送信しないことを決定し)、(A-B)≦-1である場合、-1dBのTPCコマンドを決定する。例えば、DCI format 3Aが用いられるときに、TPC制御初期化後TPCコマンド算出部213は、(A-B)≧1である場合、1dBのTPCコマンドを決定し、(A-B)≦-1である場合、-1dBのTPCコマンドを決定する。制御チャネル送信部227は、決定されたTPCコマンドを移動局に送信する(S209)。
【0076】
(A-B)が0になるまで、同様にして、連続して又は高頻度にTPCコマンドが移動局に送信され続ける。
【0077】
なお、TPC制御初期化が発生しない場合(S201:NO)又は演算部209で算出された差(A-B)が一度でも0になった場合(S207:NO)、振り分け部211は、TPCコマンドを決定する際に、TPCコマンド算出部217を用いる。TPCコマンド算出部217は、目標受信品質と受信品質との比較に基づいて、TPCコマンドを決定し、制御チャネル送信部227は、決定されたTPCコマンドを移動局に送信する(S211)。
【0078】
この変形例において無通信区間が所定値以上になった場合の動作は、
図7と同様に実施される。
【0079】
説明の便宜上、本発明の実施例に係る移動局は機能的なブロック図を用いて説明しているが、本発明の実施例に係る移動局は、ハードウェア、ソフトウェア又はそれらの組み合わせで実現されてもよい。また、各機能部が必要に応じて組み合わせて使用されてもよい。
【0080】
説明の便宜上、本発明の実施例に係る方法は処理の流れを示すシーケンス図を用いて説明しているが、本発明の方法は、実施例に示す順序と異なる順序で実施されてもよい。
【0081】
<実施例の効果>
本発明の実施例によれば、移動局からの上りリンク送信データ又は移動局への下りリンク送信データが存在しない場合であっても、基地局が上りリンクの送信電力を制御し、通信品質を向上させることが可能になる。
【0082】
上りリンクの送信電力が初期化された場合に、初期化直前のTPCコマンドの累積値に基づいて連続して又は高頻度にTPCコマンドを送信することで、伝搬環境の変動に迅速に追従することが可能になる。その結果、上りリンク通信品質を向上させること又は他の移動局への干渉電力を低減することが可能になる。
【0083】
また、無通信区間が存在する場合に、上りリンク送信データ又は下りリンク送信データが存在しない場合であってもTPCコマンドを送信することで、伝搬環境の変動に迅速に追従することが可能になる。その結果、上りリンク通信品質を向上させること又は他の移動局への干渉電力を低減することが可能になる。
【0084】
このように連続して又は高頻度にTPCコマンドを送信する補正区間内で、送信電力を最大限増加又は減少させるTPCコマンドを用いることにより、伝搬環境の変動への追従性がより迅速になる。
【0085】
また、上記の変形例によれば、TPCコマンドの増減値が複数存在する場合に、きめ細かく送信電力を制御できる。
【0086】
図10に、LTE方式の移動通信システムにおける上りリンクの送信電力と本発明の実施例に係る移動局の上りリンクの送信電力との比較を示す。
【0087】
LTE方式の移動通信システムでは、
図3の(B)のように無通信区間が存在する場合、(C)に示すように、伝搬環境の変動に追従するまで時間がかかる。一方、本発明の実施例によれば、無通信区間が所定値以上になった場合にTPCコマンドが送信されるため、伝搬環境の変動に迅速に追従できる。
【0088】
また、LTE方式の移動通信システムでは、
図3の(E)又は(I)のように上りリンクの送信電力が初期化された場合、伝搬環境の変動に追従するまで時間がかかり、上りリンク通信品質の劣化又は他の移動局への過剰な干渉電力が生じる。一方、本発明の実施例によれば、初期化直前のTPCコマンドの累積値に基づいて連続して又は高頻度にTPCコマンドを送信することで、送信電力が初期化された場合であっても、伝搬環境の変動に迅速に追従できる。
【0089】
以上、移動局からの上りリンク送信データ又は移動局への下りリンク送信データが存在しない場合に上りリンクの送信電力を制御するための基地局、送信電力制御方法について説明したが、本発明は、上記の実施例に限定されることなく、特許請求の範囲内において、種々の変更・応用が可能である。