(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6014429
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月25日
(54)【発明の名称】粒子センサ
(51)【国際特許分類】
G01N 15/06 20060101AFI20161011BHJP
F02D 45/00 20060101ALI20161011BHJP
F01N 3/00 20060101ALI20161011BHJP
【FI】
G01N15/06 D
F02D45/00 312Q
F01N3/00 F
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-200090(P2012-200090)
(22)【出願日】2012年9月12日
(65)【公開番号】特開2014-55820(P2014-55820A)
(43)【公開日】2014年3月27日
【審査請求日】2015年8月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005463
【氏名又は名称】日野自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】304027349
【氏名又は名称】国立大学法人豊橋技術科学大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000512
【氏名又は名称】特許業務法人山田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川田 吉弘
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 聡
(72)【発明者】
【氏名】水野 彰
【審査官】
渡邊 吉喜
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−210533(JP,A)
【文献】
特開昭56−110461(JP,A)
【文献】
特表2006−503270(JP,A)
【文献】
特開2010−151613(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N15/00−15/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気管を流れる排気ガス中に含まれるPMの濃度を検出する粒子センサであって、排気管の途中に排気ガスの流れを横切るように挿入され且つ該排気ガスの流れの向きに並ばないように互いに平行を成して対向配置された円柱形状の一対の電極と、該電極の一方を高電圧電極とし且つ他方を接地電極として両電極間に部分放電が発生するよう矩形波の交流高電圧を印加するパルス高電圧発生手段と、前記交流高電圧の印加に伴って前記電極間を流れる電流値を測定する電流測定手段と、該電流測定手段により測定された電流値をPM濃度に換算する演算手段とを備え、前記交流高電圧の印加による前記電極間の電界の正負の切り替えに伴い、前記電極からPMが分離除去されるよう構成したことを特徴とする粒子センサ。
【請求項2】
排気管内の排気ガスの温度を検出する温度センサを更に備え、該温度センサに測定された排気温度に基づき演算手段で算出したPM濃度に温度補正をかけ且つ所定の下限温度以上でのみPM濃度の検出を実施し得るよう構成したことを特徴とする請求項1に記載の粒子センサ。
【請求項3】
一対の電極のうちの一方をワイヤで構成し且つ他方を前記ワイヤを支持するためのサポート材を兼ねたロッドで構成したことを特徴とする請求項1又は2に記載の粒子センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒子センサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジンから排出されるPM(Particulate Matter:粒子状物質)は、炭素質から成る煤分と、高沸点炭化水素成分から成るSOF分(Soluble Organic Fraction:可溶性有機成分)とを主成分とし、更に微量のサルフェート(ミスト状硫酸成分)を含んだ組成を成すものであるが、この種のパティキュレートの低減対策としては、排気ガスが流通する排気管の途中に、パティキュレートフィルタを装備することが従来より行われている。
【0003】
一方、近年においては、車両の排ガス対策システムにおける故障発生の有無を監視し、故障発生時には警告灯等を点灯させて運転者に故障の発生を報知すると共に、故障内容を記録しておく車載式故障診断装置(オンボードダイアグノーシス:onboard diagnosis:略称OBD)の装備が各国で義務付けられており、パティキュレートフィルタの出側で排気ガス中のPM濃度を検出してパティキュレートフィルタに性能不良が生じていないかどうかを監視し得るようにすることが研究されているが、本発明者らは、パティキュレートフィルタの入側でも排気ガス中のPM濃度を検出してエンジン状態を監視し得るようにすることを検討するに到った。
【0004】
尚、本発明に関連する先行技術文献情報としては下記の特許文献1、2等がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開昭64−50355号公報
【特許文献2】特開2007−327936号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、現状においては、実験用の測定器として、PMの粒子数(量)を重量、電荷量、光透過(光散乱)等の物理量を検出して濃度とするものが既に存在しているものの、これらは所定量のサンプルを採取してバッチ式に測定を行う形式のものばかりであり、時々刻々変化するPMの濃度を連続的に検出することが可能な車載の粒子センサとして供し得るようなものではなかった。
【0007】
このため、時々刻々変化するPMの濃度を連続的に検出することが可能な車載の粒子センサの開発が望まれており、先の特許文献1、2等といった粒子センサの提案も成されてはいるが、PMを多く含む排気ガスの流れに晒されながら前記PMの堆積による悪影響を受けずに正確な測定を長期間に亘り継続できる粒子センサは未だ実用化に到っていないのが実情である。
【0008】
本発明は上述の実情に鑑みてなしたもので、時々刻々変化するPMの濃度を連続的に検出し且つPMの堆積による悪影響を受けずに正確な測定を長期間に亘り継続し得る粒子センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、排気管を流れる排気ガス中に含まれるPMの濃度を検出する粒子センサであって、排気管の途中に排気ガスの流れを横切るように挿入され且つ該排気ガスの流れの向きに並ばないように互いに平行を成して対向配置された円柱形状の一対の電極と、該電極の一方を高電圧電極とし且つ他方を接地電極として両電極間に部分放電が発生するよう矩形波の交流高電圧を印加するパルス高電圧発生手段と、
前記交流高電圧の印加に伴って前記電極間を流れる電流値を測定する電流測定手段と、該電流測定手段により測定された電流値をPM濃度に換算する演算手段とを備え
、前記交流高電圧の印加による前記電極間の電界の正負の切り替えに伴い、前記電極からPMが分離除去されるよう構成したことを特徴とするものである。
【0010】
而して、パルス高電圧発生手段により両電極間に矩形波の交流高電圧を印加すると、該電極間に部分放電が発生してPMが帯電し、その帯電したPMが電極の夫々に付着することになるが、このPMの付着により電極間のギャップが縮まり且つ相互の対向面の表面積が増えることで前記電極間を流れる電流値が変化するので、この電流値を電流測定手段により測定して演算手段で換算することでPM濃度を検出することが可能となる。
【0011】
この際、両電極間に矩形波の交流高電圧が印加されていることから電界の正負が交互に切り替わるので、この切り替わりにより各電極に付着していたPMが電極側と同じ電荷となって反発することで剥離し、排気ガスの流れによりPMが吹き飛ばされて一旦リセットされる形となり、その後で新たな電界により帯電したPMが付着し始めることになる。
【0012】
ここで、前記各電極は排気ガスの流れに対し平面を持たない円柱形状となっており、しかも、排気管の途中に排気ガスの流れを横切るように挿入され且つ排気ガスの流れの向きに並ばないように対向配置されているので、特に前記各電極の対向面は、排気ガスが接線方向に近い向きから強く吹き付けてPMが留まり難い環境が作り出され、電界の正負の切り替えに伴うPMの分離除去が確実に行われることになる。
【0013】
また、本発明においては、排気管内の排気ガスの温度を検出する温度センサを更に備え、該温度センサに測定された排気温度に基づき演算手段で算出したPM濃度に温度補正をかけ且つ所定の下限温度以上でのみPM濃度の検出を実施し得るよう構成することが好ましい。
【0014】
このようにすれば、排気温度による電流値の変動を加味して、より精度の高いPM濃度を求めることが可能となり、しかも、所定の下限温度を下まわるような排気温度の低い結露環境下での不正確な検出を回避することが可能となる。
【0015】
更に、本発明をより具体的に実施するに際しては、一対の電極のうちの一方をワイヤで構成し且つ他方を前記ワイヤを支持するためのサポート材を兼ねたロッドで構成することが好ましく、このようにすれば、サポート材を別途設置する必要がなくなって製作が容易となり、サポート材が不要となる分だけ排気ガスの流れに対する圧力損失も少なくて済む。
【発明の効果】
【0016】
上記した本発明の粒子センサによれば、下記の如き種々の優れた効果を奏し得る。
【0017】
(I)本発明の請求項1に記載の発明によれば、電極の形状と配置を工夫し且つ該各電極に矩形波の交流高電圧をパルス高電圧発生手段で印加することでPMの付着と剥離を確実に行わしめて、時々刻々変化するPMの濃度を連続的に検出することができ、しかも、PMの堆積による悪影響を受けずに正確な測定を長期間に亘り継続することができる。
【0018】
(II)本発明の請求項2に記載の発明によれば、排気温度による電流値の変動を加味した精度の高いPM濃度を求めることができると共に、所定の下限温度を下まわるような排気温度の低い結露環境下での不正確な検出を回避することができる。
【0019】
(III)本発明の請求項3に記載の発明によれば、サポート材を不要として製作を容易化することができ、しかも、サポート材が不要となる分だけ排気ガスの流れに対する圧力損失を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明を実施する形態の一例を示す概略図である。
【
図4】パルス高電圧発生手段の印加電圧と電流測定器の電流値を示すグラフである。
【
図5】PMの付着と剥離の様子を模式的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
【0022】
図1は本発明を実施する形態の一例を示すもので、図中1はエンジンからの排気ガス2が流れる排気管を示しており、排気管1の途中に排気ガス2の流れを横切るように一対の電極3,4が挿入されているが、ここに図示している例では、一対の電極3,4のうちの一方を直径約0.2mm程度のステンレス製のワイヤで構成し且つ他方を前記ワイヤを支持するためのサポート材を兼ねた直径約5mm程度のステンレス製のロッドで構成している。
【0023】
ここで、前記各電極3,4は、互いに平行を成して対向配置された円柱形状を成すようになっており、一対のワイヤで構成することも可能であるが、その場合にはサポート材を別途設けなければならないため、本形態例の場合はワイヤとロッドの組み合わせ例としている。
【0024】
また、
図1では、説明の便宜上から各電極3,4を排気ガス2の流れ方向に並べた図示となっているが、実際には、
図2に
図1のII−II方向の矢視図で示している通り、前記各電極3,4を排気ガス2の流れを横切るように並べ、該排気ガス2の流れの向きには並ばないようにする必要がある。
【0025】
この際、前記各電極3,4は、排気管1の半径方向に向け中心部近くまで挿し入れて排気ガス2の主流に晒されるようにしておくことが好ましく、このように排気ガス2の主流を検出対象とした方が、排気管1の内壁近くの流れを検出対象とするよりもPM濃度の検出が正確なものとなる。
【0026】
図3は前記各電極3,4の詳細な構造を拡大図で示したものであり、ワイヤで構成された一方の電極3の上下端が、ロッドで構成されている他方の電極4の上下端に装着された絶縁体5,6により支持されるようにしてあり、両者間に約5mm程度の間隔wが確保されるようにしてある。
【0027】
そして、先の
図1に示してある通り、ワイヤで構成された一方の電極3は、車載のバッテリ7(直流電源)に対しスイッチング回路8と昇圧回路9とを介して接続された高電圧電極を成し、ロッドで構成されている他方の電極4は、電流測定器10(電流測定手段)を介し接地されて接地電極を成すようになっており、前述のバッテリ7とスイッチング回路8と昇圧回路9とから成るパルス高電圧発生手段11により矩形波の交流高電圧が印加されて両電極3,4間に部分放電が発生されるようにしてある。尚、バッテリ7とスイッチング回路8と昇圧回路9とを1台のパルスジェネレータに置き換えてパルス高電圧発生手段11を構成させることも可能である。
【0028】
また、前記電流測定器10は、前記電極3,4間を流れる電流値を測定するようになっており、その測定された電流値が制御装置12(演算手段)に信号入力されてPM濃度に換算されるようになっている。
【0029】
ここで、特に本形態例においては、各電極3,4の配置位置に近い排気管1の適宜位置に温度センサ13が備えられ、該温度センサ13に測定された排気温度が前記制御装置12に信号入力されるようになっており、該制御装置12でPM濃度に温度補正がかけられ且つ所定の下限温度(約100℃程度)以上でのみPM濃度の検出が実施されるようにしてある。
【0030】
而して、このように粒子センサを構成した場合、パルス高電圧発生手段11により両電極3,4間に矩形波の交流高電圧を印加すると、該電極3,4間に部分放電が発生してPMが帯電し、その帯電したPMが電極3,4の夫々に付着することになるが、このPMの付着により電極3,4間のギャップが縮まり且つ相互の対向面の表面積が増えることで前記電極3,4間を流れる電流値が変化するので、この電流値を電流測定器10により測定して制御装置12で換算することでPM濃度を検出することが可能となる。
【0031】
図4はパルス高電圧発生手段11の印加電圧と電流測定器10の電流値をグラフで示したものであり、波形Aのように矩形波の交流高電圧を印加した場合、電流測定器10により測定される電流値は波形Bのように検出されるが、時間軸を印加電圧のパルス毎に分割して、その分割された単位時間内でのピークの電流値、若しくは、平均電流値を測定値として制御装置12でPM濃度に換算すれば良い。
【0032】
ここで、本形態例の場合は、温度センサ13に測定された排気温度に基づき制御装置12で算出したPM濃度に温度補正がかけられるようになっているので、排気温度による電流値の変動を加味して、より精度の高いPM濃度が制御装置12で求められることになる。
【0033】
また、両電極3,4間に矩形波の交流高電圧が印加されていることから電界の正負が交互に切り替わるので、この切り替わりにより各電極3,4に付着していたPMが電極3,4側と同じ電荷となって反発することで剥離し、排気ガス2の流れによりPMが吹き飛ばされて一旦リセットされる形となり、その後で新たな電界により帯電したPMが付着し始めることになる。
【0034】
ここで、
図5に模式的に示している通り、前記各電極3,4は排気ガス2の流れに対し平面を持たない円柱形状となっており、しかも、排気管1の途中に排気ガス2の流れを横切るように挿入され且つ排気ガス2の流れの向きに並ばないように対向配置されているので、特に前記各電極3,4の対向面は、排気ガス2が接線方向に近い向きから強く吹き付けてPMが留まり難い環境が作り出され、電界の正負の切り替えに伴うPMの分離除去が確実に行われることになる。
【0035】
従って、上記形態例によれば、電極3,4の形状と配置を工夫し且つ該各電極3,4に矩形波の交流高電圧をパルス高電圧発生手段11で印加することでPMの付着と剥離を確実に行わしめて、時々刻々変化するPMの濃度を連続的に検出することができ、しかも、PMの堆積による悪影響を受けずに正確な測定を長期間に亘り継続することができる。
【0036】
また、排気管1内の排気ガス2の温度を検出する温度センサ13を更に備え、該温度センサ13に測定された排気温度に基づき制御装置12で算出したPM濃度に温度補正をかけ且つ所定の下限温度以上でのみPM濃度の検出を実施し得るよう構成しているので、排気温度による電流値の変動を加味した精度の高いPM濃度を求めることができると共に、所定の下限温度を下まわるような排気温度の低い結露環境下での不正確な検出を回避することができる。
【0037】
更に、一対の電極3,4のうちの一方をワイヤで構成し且つ他方を前記ワイヤを支持するためのサポート材を兼ねたロッドで構成しているので、サポート材を不要として製作を容易化することができ、しかも、サポート材が不要となる分だけ排気ガス2の流れに対する圧力損失を低減することができる。
【0038】
尚、本発明の粒子センサは、上述の形態例の如きパティキュレートフィルタの入側への適用に限定されることなく、排気管途中のどのような場所に適用しても良いこと、その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0039】
1 排気管
2 排気ガス
3 電極
4 電極
7 バッテリ(直流電源)
8 スイッチング回路
9 昇圧回路
10 電流測定器(電流測定手段)
11 パルス高電圧発生手段
12 制御装置(演算手段)
13 温度センサ