(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6014430
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月25日
(54)【発明の名称】バンパー
(51)【国際特許分類】
B60R 19/04 20060101AFI20161011BHJP
【FI】
B60R19/04 M
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-200630(P2012-200630)
(22)【出願日】2012年9月12日
(65)【公開番号】特開2014-54909(P2014-54909A)
(43)【公開日】2014年3月27日
【審査請求日】2015年8月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】503399920
【氏名又は名称】株式会社アステア
(74)【代理人】
【識別番号】100114535
【弁理士】
【氏名又は名称】森 寿夫
(74)【代理人】
【識別番号】100075960
【弁理士】
【氏名又は名称】森 廣三郎
(74)【代理人】
【識別番号】100155103
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 厚
(72)【発明者】
【氏名】下津 晃治
【審査官】
田合 弘幸
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−290581(JP,A)
【文献】
特開2007−290582(JP,A)
【文献】
特開2010−179832(JP,A)
【文献】
米国特許第03905630(US,A)
【文献】
特表2010−502496(JP,A)
【文献】
特開平08−020297(JP,A)
【文献】
特開2014−043218(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 19/04
B60R 19/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
全体的に焼き入れされた金属製の補強部材を、車体フレームから左右一対で突出する支持部材に架け渡して構成されるバンパーにおいて、
補強部材は、支持部材に挟まれる区間に、焼き入れされた全体に比べて相対的に強度の低い非焼き入れ部位を2箇所形成してなり、
背面に当接する支持部材の左右内側の輪郭から左右中央までの距離と前記輪郭から前面に形成される非焼き入れ部位の左右内側の輪郭までの距離との比が、焼き入れ部位の強度と非焼き入れ部位の強度との比に等しくしたことを特徴とするバンパー。
【請求項2】
補強部材は、左右対称に非焼き入れ部位を2箇所形成した請求項1記載のバンパー。
【請求項3】
補強部材は、少なくとも前面に非焼き入れ部位を形成した請求項1又は2いずれか記載のバンパー。
【請求項4】
補強部材は、角形中空断面で、少なくとも前面に非焼き入れ部位を形成した請求項1〜3いずれか記載のバンパー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全体的に焼き入れされた金属製の補強部材を、車体フレームから左右一対で突出する支持部材に架け渡して構成されるバンパーに関する。
【背景技術】
【0002】
バンパーは、例えば車両の前端に配置され、車両が障害物に衝突した際の衝撃エネルギーを吸収する。全体的に焼き入れされた金属製の補強部材を、車体フレームから左右一対で突出する支持部材に架け渡して構成されるバンパーは、前記補強部材又は支持部材の塑性変形又は破壊により衝撃エネルギーを吸収する。この場合、補強部材がどのように塑性変形又は破壊するかによって、吸収できる衝撃エネルギーの総量や荷重変位特性(補強部材の変位量(後退量)と前記変位に要する荷重との関係)が変化するため、補強部材の構成又は構造が種々検討される(特許文献1及び特許文献2)。
【0003】
特許文献1が開示するバンパーは、衝突時に中央部に最大の曲げモーメント分布の発生する補強部材(バンパーリインフォースメント)の直状部に、曲げ強度を低下させる曲げ強度低下手段が複数位置形成されている(特許文献1・請求項1、
図1〜
図7)。具体的な曲げ強度低下手段は、例えば断面日の字状の板金製の補強部材の背面側に、前記補強部材の延在直交方向に延びる長孔(長穴)を上下二段に並べた構成(特許文献1・[0013]、
図1)や、丸孔(丸穴)を補強部材の延在直交方向に等間隔で並べた構成(特許文献1・[0021]、
図6)が例示されている。
【0004】
特許文献1が開示するバンパーは、衝突時に補強部材が曲げ強度低下手段が形成された複数位置で折れ曲がり、中央部の1箇所で曲折する場合より衝撃エネルギー(衝突エネルギー)の吸収能力が向上して変形量が減少するため、補強部材の後退量が減少し、車両本体への損傷を十分に防止できるとしている。このほか、特許文献1が開示するバンパーは、補強部材を肉厚にすることなく衝撃エネルギーを吸収できるため、従来品より軽量化できて、結果としてコスト低減できるとしている(特許文献1・[0010][0026])。
【0005】
特許文献2が開示するバンパーは、特許文献1が開示するバンパーに類似して、板金製の補強部材(バンパー補強部材)に、局所的な強度低下部位を設けている(特許文献2・請求項1)。特許文献2が開示するバンパーは、ホットプレス加工により、全体的に焼き入れして強度を高めながら、前記強度低下部位を焼き鈍して形成する点が、特許文献1が開示するバンパーと相違している(特許文献2・請求項2)。強度低下部位は、補強部材の屈曲部や車体骨格への取り付け部に設けている(特許文献2・請求項4及び請求項5)。また、強度低下部位は、上面(縦壁部)=荷重負荷方向に対して概略平行な部位に設けている(特許文献2・請求項6)。
【0006】
特許文献2が開示するバンパーは、例えば強度低下部位を屈曲部に配置した場合、中央部の座屈前に屈曲部の座屈が先行して起こり、断面崩壊による荷重低下が少なくなり、大変形下でも十分な荷重反力を示す効果を得るとしている(特許文献1・[0020])。この結果、種々の荷重条件下での車両の安全性を高めたり、補強部材の製造コストを低減させたりできる。また、強度低下部位の配置を変化させることにより、車両の大きさや荷重条件に合わせた調整が容易にでき、車両開発の全体コストも低減できるとしている(特許文献1・[0015])。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平08-020297号公報
【特許文献2】特開2007-290581号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
バンパーが障害物に衝突すると、補強部材が左右方向(車両の前後方向に直交する方向)に一様な強度を有していれば、障害物の衝突した部位を中心に補強部材が屈曲し、一部が突出して後退する虞がある。こうした極端な後退は、場合によって後退した部位が車体フレームや車体フレームに搭載するエンジンその他に干渉する虞があり、危険である。これから、バンパーは、吸収できる衝撃エネルギーの総量を増やしながら、補強部材の後退量を低減する荷重変位特性が得られるように、補強部材の構成又は構造の検討が必要になる。
【0009】
特許文献1が開示するバンパーは、補強部材に複数の曲げ強度低下手段を形成することにより、障害物が衝突した際、曲げ強度低下手段を形成した部位を先行して塑性変形又は破壊させ、前記曲げ強度低下手段を形成した部位に挟まれた中央部分を一体的に後退させて、補強部材の一部が突出して後退することを抑制又は防止できる(特許文献1・
図5)。しかし、具体的な曲げ強度低下手段である長孔や丸孔は、加えられる衝撃によって前記長孔や丸孔の内周縁から割れを生じさせたり、補強部材に物理的な断続を招いて円滑な塑性変形又は破壊がしにくくなったりする虞がある。これは、吸収できる衝撃エネルギーの総量を減らす問題を招く。
【0010】
特許文献2が開示するバンパーは、特許文献1が開示するバンパー同様、強度低下部位に挟まれた中央部分を一体的に後退させて、補強部材の一部が突出して後退することを抑制又は防止できる。特許文献2が開示するバンパーは、特許文献1が開示するバンパーと異なり、焼き鈍しにより強度低下部位を形成しているので、加えられる衝撃によって補強部材に割れを生じさせたり、補強部材に物理的な断続を招いて円滑な塑性変形又は破壊がしにくくなったりする問題がない。しかし、特許文献2が開示するバンパーは、焼きなましは加熱した接続部分をゆっくりと冷却する必要があり、生産性に劣る問題がある。
【0011】
このように、特許文献1が開示するバンパーは、バンパーの吸収できる衝撃エネルギーの総量を減らす虞があり、また特許文献2が開示するバンパーは、生産性に劣る問題がある。そこで、補強部材の後退を抑制又は防止しながら、円滑な塑性変形又は破壊により吸収できる衝撃エネルギーの総量が確保でき、しかも生産性に問題のないバンパーを開発するため、検討した。
【課題を解決するための手段】
【0012】
検討の結果、全体的に焼き入れされた金属製の補強部材を、車体フレームから左右一対で突出する支持部材に架け渡して構成されるバンパーにおいて、補強部材は、支持部材に挟まれる区間に、焼き入れされた全体に比べて相対的に強度の低い非焼き入れ部位を2箇所形成し
てなり、背面に当接する支持部材の左右内側の輪郭から左右中央までの距離と前記輪郭から前面に形成される非焼き入れ部位の左右内側の輪郭までの距離との比が、焼き入れ部位の強度と非焼き入れ部位の強度との比に等しくしたことを特徴とするバンパーを開発した。非焼き入れ部位は、補強部材を焼き入れする際、変態開始温度(AC1)を超えないようにして形成する部位で、加熱手段を制御して温度上昇を抑制又は防止したり、別途冷却手段により連続的又は間断的に強制冷却したりして形成する。
【0013】
補強部材は、全体を焼き入れして強度を高めながら、部分的に非焼き入れ部位を形成することから金属製(好ましくは板金製)に限られる。支持部材は、車体フレームの一部として突出する延長部分や、前記車体フレームから突出して設けられる別体部分で、衝撃エネルギーを吸収する働きがあってもなくてもよい。また、支持部材は、金属製に限られず、セラミックス製又は樹脂製でもよい。
【0014】
本発明の補強部材は、支持部材に挟まれる区間に、焼き入れされた全体に比べて相対的に強度の低い非焼き入れ部位を2箇所形成し、障害物が衝突した際、非焼き入れ部位を先行して塑性変形又は破壊させる。これにより、補強部材は、非焼き入れ部位を境にして屈曲させ、支持部材に支持された両端部分に対し、非焼き入れ部位に挟まれた中央部分を一体に後退させる。こうした非焼き入れ部位の屈曲による後退は、補強部材が左右中央で屈曲して一部を突出させる後退より小さくできる。
【0015】
補強部材は、左右対称に非焼き入れ部位を2箇所形成すると、非焼き入れ部位の屈曲による後退を左右均等にして、非焼き入れ部位に挟まれた中央部分の後退量を最も小さくできる。また、補強部材は、少なくとも前面に非焼き入れ部位を形成すると、非焼き入れ部位の塑性変形又は破壊による屈曲を円滑に導ける。補強部材の前面は、前方から障害物が衝突する点又は線を含む面を意味し、例えば円形中空断面の補強材の場合、平面視前縁を含む上下一定の範囲の曲面である。これから、補強部材は、角形中空断面で、少なくとも前面に非焼き入れ部位を形成する構成が、非焼き入れ部位を形成する前面を特定しやすく、非焼き入れ部位を形成した前面の塑性変形又は破壊を招きやすく、好ましい。
【0016】
補強部材は、障害物と衝突する前の初期状態で、背面に当接する支持部材の左右内側の輪郭から左右中央までの距離と前記輪郭から前面に形成される非焼き入れ部位の左右内側の輪郭までの距離との比が、焼き入れ部位の強度と非焼き入れ部位の強度との比に等しくすると、補強部材の屈曲が非焼き入れ部位の左右内側の輪郭に沿って円滑に生じ、非焼き入れ部位に挟まれた中央部分を一体に後退させやすくなる。
【0017】
支持部材の左右内側の輪郭から左右中央までの距離は、補強部材の背面に当接する支持部材の前端面の輪郭のうち左右中央に最も近い部分から、前記左右中央までの左右方向に沿った直線距離を意味する。支持部材の左右内側の輪郭から前面に形成される非焼き入れ部位の左右内側の輪郭までの距離は、補強部材の背面に当接する支持部材の前端面の輪郭のうち左右中央に最も近い部分から、補強部材の前面に形成される非焼き入れ部位を縁取る輪郭のうち左右中央に最も近い部分までの左右方向に沿った直線距離を意味する。
【発明の効果】
【0018】
本発明のバンパーは、補強部材が2箇所の非焼き入れ部位に合わせて屈曲し、前記非焼き入れ部位に挟まれた中央部分が一体に後退するようにして、一部が突出する場合に比べて後退量を抑制できる。このとき、非焼き入れ部位が塑性変形又は破壊される際、加えられる衝撃によって割れを生じさせることなく、前記塑性変形又は破壊が円滑に進むので、吸収できる衝撃エネルギーの総量を確保しながら、補強部材の後退を抑制又は防止した荷重変位特性を実現できる効果が得られる。
【0019】
また、本発明のバンパーは、焼き入れに際して温度上昇を抑制又は防止したり、積極的に冷却したりして非焼き入れ部位を形成でき、焼き入れ処理後、焼き鈍しのような長い冷却時間を要しない。このように、本発明のバンパーは、補強部材を全体的に焼き入れする際に非焼き入れ部位を形成する方法により簡単に製造できるため、生産性を低下させない利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明を適用したバンパーの一例を表す斜視図(紙面斜め右下方向が前方)である。
【
図2】本例のバンパーの正面図(紙面直交手前が前方)である。
【
図3】本例のバンパーの平面図(紙面上方が前方)である。
【
図4】本例のバンパーが障害物に衝突した時の
図3相当平面図である。
【
図5】従来のバンパーが障害物に衝突した時の
図3相当平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための形態について図を参照しながら説明する。本発明は、
図1〜
図3に見られるように、外観上、従来同様のバンパー1に適用される。本例のバンパー1は、全体的に焼き入れされた鋼板製の補強部材11を、車体フレーム3(後掲
図4参照)から左右一対で突出する鋼板製の支持部材12,12に架け渡して構成される。本例のバンパー1は、支持部材12の後端面に形成される正面視方形の後接続フランジ122を介して、車体フレーム3に接続される。
【0022】
本例の補強部材11は、前面111の上縁及び下縁から後方に上面112及び下面114を折り曲げ、前記上面112の後縁から上方に上フランジ113を折り曲げて形成し、同様に下面114の後縁から下方に下フランジ115を折り曲げて形成した断面略コ字状(いわゆるハット型断面)で、後面が開放された角形中空断面の鋼板製である。これから、本例の補強部材11は、障害物2が衝突することで受ける衝撃力Fによる衝撃エネルギーを全体の塑性変形により吸収する。
【0023】
本例の補強部材11は、水平面内で前方に凸となるように前面111、上面112、上フランジ113、下面114及び下フランジ115を一体に湾曲させながら、前記上フランジ113及び下フランジ115の左右端部のみを、左右方向に一直線となるように折り曲げている。これにより、左右端部の上フランジ113及び下フランジ115は、左右方向に平行な倣い平面を構成し、支持部材12の前端面に形成される正面視方形の前接続フランジ121接面して、溶接やボルト止め等により、前記支持部材12が接続される。
【0024】
本例の補強部材11は、全体的に焼き入れされて強度を高めているが、支持部材12,12に挟まれる区間に、焼き入れされた全体に比べて相対的に強度の低い非焼き入れ部位13,13を2箇所形成しれている。非焼き入れ部位13は、角形中空断面の補強材11のうち、少なくとも前面111に形成されていればよい。本例の非焼き入れ部位13は、湾曲した補強部材11に対して、車両の前後方向に平行な左右一対の直線状の輪郭131,132に挟まれた帯形状で、補強部材11の前面111のみならず、上面112、上フランジ113、下面114及び下フランジ115にわたって形成されている。
【0025】
非焼き入れ部位13は、補強部材11の上フランジ113及び下フランジ114が形成する倣い面(背面)に当接する支持部材12の左右内側の輪郭123から左右中央までの距離L1と、前記輪郭123から補強部材11の前面111に形成される非焼き入れ部位13の左右内側の輪郭131までの距離L2との比が、焼き入れ部位の強度(焼き入れされた補強部材11の強度)と非焼き入れ部位13の強度との比に等しくなるように、補強部材11の前面111に形成される左右内側の輪郭131の位置を設定する。
【0026】
本発明のバンパー1は、補強部材11の前面111に形成される非焼き入れ部位13の左右内側の輪郭131が、上記設定に従っていれば、前記前面111を除く上面112、上フランジ113、下面114及び下フランジ115に形成される非焼き入れ部位13の左右内側の輪郭131や、非焼き入れ部位13の左右外側の輪郭132が、直線や曲線でもよく、また蛇行していても構わない。また、非焼き入れ部位13を挟む左右一対の輪郭131,132の距離は制限されないため、非焼き入れ部位13の幅は、本例より広くても狭くてもよい。
【0027】
非焼き入れ部位13は、例えば補強部材11となる原板(鋼板)の前面111、上面112、上フランジ113、下面114及び下フランジ115となる部分に冷却ブロックを宛てがいながら前記原板を加熱し、原板全体が変態完了温度(AC3)を超えて温度上昇しても、前記冷却ブロックを宛てがった部分が変態開始温度(AC1)を超えないようにして、前記冷却ブロックを宛てがった部分として形成する。また、非焼き入れ部位13は、補強部材11となる原板の加熱を途中で中止して、前記原板の前面111、上面112、上フランジ113、下面114及び下フランジ115となる部分に冷却ブロックを宛てがって冷却し、再び原板全体を加熱することにより、原板全体が変態完了温度(AC3)を超えて温度上昇しても変態開始温度(AC1)を超えないようにして、前記冷却ブロックを宛てがった部分として形成する。補強部材11は、全体が変態完了温度(AC3)を超えた原板をホットプレス加工により成型するとよい。
【0028】
本例の支持部材12は、角形中空断面の鋼板製で、記述したように、前端面に正面視方形である鋼板製の前接続フランジ121を、後端面に同形で同じ鋼板製の後接続フランジ122をそれぞれ溶接により一体化し、前接続フランジ121を上フランジ113及び下フランジ115に接面して補強部材11を溶接又はボルト止めにより接続し、後接続フランジ122を車体フレーム3(後掲
図4参照)に接面して、溶接又はボルト止めにより接続する。本例の支持部材12は、障害物2が衝突して受ける衝撃力Fによる衝撃エネルギーを、自身を前後方向に圧縮させる塑性変形により吸収する。
【0029】
本発明のバンパー1は、補強部材11全体や支持部材12に先行して、非焼き入れ部位13が塑性変形することが望まれる。そこで、補強部材11を全体的に焼き入れすることにより、非焼き入れ部位13の強度を前記補強部材11の全体に比べて相対的に低くし、支持部材12の板厚を肉厚にすることにより、非焼き入れ部位13の強度を前記支持部材12に比べて相対的に低くするとよい。これにより、非焼き入れ部位13は、補強部材11全体のみならず、支持部材12よりも先行して塑性変形できるようになる。
【0030】
本例のバンパー1が障害物2に衝突して左右中央に衝撃力Fが加えられると、
図4に見られるように、障害物2の衝突した補強部材11が非焼き入れ部位13を境に折れ曲がり、前記非焼き入れ部位に挟まれた中央部分をそのまま後退させるので、前記中央部分の後退料は制限され、車体フレーム3に干渉する虞がない。また、前記中央部分の後退は、専ら非焼き入れ部位13の塑性変形に基づき、非焼き入れ部位13より左右外側の部分が左右中央に向けて引っ張られずに済むため、支持部材12が左右内側に向けて屈曲又は傾倒することが防止される。これは、前後方向に圧縮して衝撃エネルギーを吸収する支持部材12の衝撃吸収部材としての働きが確保されることを意味する。
【0031】
補強部材11全体が一様に焼き入れされた従来のバンパー1は、
図5に見られるように、障害物2の衝突した補強部材11が、衝突した障害物2により衝撃力Fの加えられた左右中央の部分を中心として折れ曲がり、最も後方に向けて突出する左右中央が車体フレーム3に干渉する。また、補強部材11全体が折れ曲がる塑性変形をするため、折れ曲がりの中心から左右外側の部分が左右中央に向けて引っ張られる虞があり、支持部材12が左右内側に向けて屈曲又は傾倒する懸念が残る。これは、上述した支持部材12の衝撃吸収部材としての働きが阻害される可能性のあることを意味する。
【0032】
このように、本発明のバンパー1は、支持部材12が塑性変形又は破壊による衝撃吸収部材として働く場合、前記支持部材12の働きが損なわれないように、補強部材11を塑性変形又は破壊させることができる。これにより、本発明のバンパー1は、補強部材11にひび割れ等生じさせないだけでなく、補強部材11及び支持部材12がいずれも衝撃吸収部材として十分に衝撃エネルギーを吸収できるようになり、バンパー1として吸収できる衝撃エネルギーの総量が確保できる。
【符号の説明】
【0033】
1 バンパー
11 補強部材
12 支持部材
13 非焼き入れ部位
2 障害物
3 車体フレーム
F 衝撃力