特許第6014434号(P6014434)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6014434
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月25日
(54)【発明の名称】車両用内装部品の取付構造
(51)【国際特許分類】
   B60K 37/00 20060101AFI20161011BHJP
   B60R 11/02 20060101ALN20161011BHJP
【FI】
   B60K37/00 B
   B60K37/00 Z
   B60K37/00 D
   !B60R11/02 S
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-205535(P2012-205535)
(22)【出願日】2012年9月19日
(65)【公開番号】特開2014-58270(P2014-58270A)
(43)【公開日】2014年4月3日
【審査請求日】2015年5月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】390026538
【氏名又は名称】ダイキョーニシカワ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】飯田 哲夫
(72)【発明者】
【氏名】安達 健三
【審査官】 佐々木 淳
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−274620(JP,A)
【文献】 特開2008−238853(JP,A)
【文献】 特開2008−055937(JP,A)
【文献】 特開2001−310653(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 37/00
B60R 11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂製の車両用内装部品(9)を樹脂製の被取付部材(1)に形成された嵌合孔(3)に嵌合して上記内装部品(9)を上記被取付部材(1)に取り付ける取付構造であって、
上記内装部品(9)の乗員側外周縁には、係合片(9f,9k)が裏側に向かって突設され、
上記被取付部材(1)の上記嵌合孔(3)の乗員側外周りには、上記係合片(9f,9k)が係合する係合孔(19)が形成され、
上記係合孔(19)の上記乗員側外周りには、一対のスリット(19a)又は一対の破断予定線(29)が上記係合片(9f)の幅方向に間隔をあけて形成され、
これら一対のスリット(19a)又は一対の破断予定線(29)の間が、乗員(A)が上記被取付部材(1)の上記嵌合孔(3)手前に衝突したときに、上記係合片(9f,9k)に当接して変形することにより、衝撃荷重を吸収する衝撃吸収部(21)を構成していることを特徴とする車両用内装部品の取付構造。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用内装部品の取付構造において、
上記係合片(9f)には、上記係合孔(19)の上記乗員側外周りに係止する係止爪(9h)が形成され、
上記内装部品(9)の反乗員側外周縁には、上記嵌合孔(3)の反乗員側外周りに係合する係合片(9e)が裏側に向かって突設されていることを特徴とする車両用内装部品の取付構造。
【請求項3】
請求項1に記載の車両用内装部品の取付構造において、
上記内装部品(9)の反乗員側外周縁には、係止爪(9p)が形成された係合片(9m)が裏側に向かって突設され、
上記被取付部材(1)の上記嵌合孔(3)の反乗員側外周りには、上記係止爪(9p)が形成された上記係合片(9m)が係合する反乗員側の係合孔(23)が形成されていることを特徴とする車両用内装部品の取付構造。
【請求項4】
請求項に記載の車両用内装部品の取付構造において、
上記被取付部材(1)における上記反乗員側の係合孔(23)の反乗員側外周りには、上記内装部品(9)の反乗員側への移動を規制する立壁部(13e)が突設されていることを特徴とする車両用内装部品の取付構造。
【請求項5】
請求項又はに記載の車両用内装部品の取付構造において、
上記被取付部材(1)における上記反乗員側の係合孔(23)の反乗員側外周りには、上記衝撃吸収部(27)が設けられていることを特徴とする車両用内装部品の取付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用内装部品の取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば特許文献1に開示されているように、樹脂製インストルメントパネル(被取付部材)に形成された嵌合孔に樹脂製のスピーカグリル(内装部品)を取り付ける車両用内装部品の取付構造が知られている。
【0003】
図12は、インストルメントパネルの車幅方向両端に形成されたサイドデミスターエア吹出口に樹脂製のデミスタグリルを取り付ける取付構造の一例を示す断面図である。サイドデミスターエア吹出口101は、インストルメントパネル本体105の上面部の車幅方向両端部に形成され、デフダクト107を介して図示しない空調装置から送られてきた調和空気を図示しないサイドガラスに向かって吹き出す。上記サイドデミスターエア吹出口101には、調和空気をサイドガラスに向けるためのデミスタグリル103が取り付けられている。このデミスタグリル103は、内側に複数枚の固定フィン103aが一体に設けられた枠状のグリル本体103bを有し、このグリル本体103b裏面には車体前後方向両端から係合片103cが下方にそれぞれ突設されている。前端の係合片103cは、サイドデミスターエア吹出口101の前側外周りを上下から挟み込んでいる。一方、後端の係合片103cには係止爪103dが設けられている。この係止爪103dは、サイドデミスターエア吹出口101の後側外周りに形成された係合孔109外周りに係止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−310653号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記デミスタグリル103の取付構造において、図13に示すように、乗員Aがインストルメントパネル本体105にサイドデミスターエア吹出口101手前から衝突すると、該インストルメントパネル本体105が変形し、上記係合孔109が狭まる。一方、上記デミスタグリル103は、比較的剛性が高く、撓みにくいため、その形状が保持される。そうすると、係合孔109後側外周りがデミスタグリル103の後側係合片103cに衝突し、該後側係合片103cが破断する。そして、インストルメントパネル本体105の変形がさらに進むと、デミスタグリル103は、前後方向に撓んで後側がせり上がり、図14に示すように反力によって後側に飛散し、乗員Aに当たる虞がある。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、車両用内装部品が被取付部材から飛散して乗員に当たるのを防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明は、係合孔外周りの構造を工夫したものである。
【0008】
具体的には、本発明は、樹脂製の車両用内装部品を樹脂製の被取付部材に形成された嵌合孔に嵌合して上記内装部品を上記被取付部材に取り付ける取付構造を対象とし、次のような解決手段を講じた。
【0009】
第1の発明は、上記内装部品の乗員側外周縁には、係合片が裏側に向かって突設され、上記被取付部材の上記嵌合孔の乗員側外周りには、上記係合片が係合する係合孔が形成され、上記係合孔の上記乗員側外周りには、一対のスリット又は一対の破断予定線が上記係合片の幅方向に間隔をあけて形成され、これら一対のスリット又は一対の破断予定線の間が、乗員が上記被取付部材の上記嵌合孔手前に衝突したときに、上記係合片に当接して変形することにより、衝撃荷重を吸収する衝撃吸収部を構成していることを特徴とする。
【0010】
の発明は、上記第1の発明において、上記係合片には、上記係合孔の上記乗員側外周りに係止する係止爪が形成され、上記内装部品の反乗員側外周縁には、上記嵌合孔の反乗員側外周りに係合する係合片が裏側に向かって突設されていることを特徴とする。
【0011】
の発明は、上記第1の発明において、上記内装部品の反乗員側外周縁には、係止爪が形成された係合片が裏側に向かって突設され、上記被取付部材の上記嵌合孔の反乗員側外周りには、上記係止爪が形成された上記係合片が係合する反乗員側の係合孔が形成されていることを特徴とする。
【0012】
の発明は、上記第の発明において、上記被取付部材における上記反乗員側の係合孔の反乗員側外周りには、上記内装部品の反乗員側への移動を規制する立壁部が突設されていることを特徴とする。
【0013】
の発明は、上記第又は第の発明において、上記被取付部材における上記反乗員側の係合孔の反乗員側外周りには、上記衝撃吸収部が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
第1の発明によれば、乗員が被取付部材の嵌合孔手前に衝突したときに、係合孔の乗員側外周りに設けられた衝撃吸収部が係合片に当接して変形することにより、衝撃荷重を吸収するので、係合孔の乗員側外周りが係合片に衝突せず、該係合片が破断するのを防止することができる。したがって、乗員の衝突時に内装部品と被取付部材との係合状態が保持されるので、内装部品の飛散を防止することができる。
【0015】
また、衝撃吸収部は、一対のスリット間に設けられているので、撓みやすい。したがって、係合片の係合孔への挿入時に該係合片が衝撃吸収部に当たっても、該衝撃吸収部が撓むため、比較的小さい力で該係合片を該係合孔に挿入することができる。
【0016】
の発明によれば、内装部品の反乗員側裏面に嵌合孔の反乗員側外周りに係合する係合片が設けられている。つまり、内装部品には乗員側及び反乗員側の両側において被取付部材と係合する係合片が設けられているので、内装部品の乗員側及び反乗員側の両端部で該内装部品を被取付部材に係合させることができる。したがって、内装部品が飛散するのをより確実に防止することができる。さらに、乗員側の係合片には係合孔外周りと係止する係止爪が形成されているので、被取付部材との係合状態がより強固になる。したがって、内装部品が飛散するのをより確実に防止することができる。
【0017】
の発明によれば、乗員が被取付部材の嵌合孔手前に衝突したときに、反乗員側の係合片に設けられた係止爪が反乗員側の係合孔の外周りに係止しているので、該反乗員側の係合片が該反乗員側の係合孔から外れるのを防止することができる。したがって、内装部品が被取付部材から飛散するのをより確実に防止することができる。
【0018】
の発明によれば、乗員が被取付部材の嵌合孔手前に衝突したときに、反乗員側の係合片が反乗員側に押されて反乗員側の係合孔の外周りに当接して傾斜するように変形するものの、内装部品が立壁部に当接することによって該内装部品の反乗員側への移動が規制される。そうすると、上記反乗員側の係合片の反乗員側への移動も規制され、該係合片の変形も抑制される。したがって、当該係合片が折れて破断するのを防止することができる。これにより、当該係合片が反乗員側の上記係合孔に係合する状態が保持され、内蔵部品が被取付部材から飛散するのを一層確実に防止することができる。
【0019】
の発明によれば、乗員が被取付部材の嵌合孔手前に衝突したときに、反乗員側の係合片に作用する衝撃荷重が反乗員側の係合孔外周りに設けられた衝撃吸収部によって吸収されるため、該反乗員側の係合片が係合孔外周りに当接し、破断するのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の第1実施形態に係る車両用内装部品の取付構造によってデミスタグリルが取り付けられた自動車のインストルメントパネルの略左半分を示す正面図である。
図2】インストルメントパネルの左端部を示す斜視図である。
図3図2のIII-III線矢視断面図である。
図4】インストルメントパネル本体にデミスタグリルを取り付ける前の状態を示す斜視図である。
図5】デミスタグリルを示す全体斜視図である。
図6】サイドデミスターエア吹出口を示す斜視図である。
図7】乗員がインストルメントパネルに衝突した状態における図3相当図である。
図8】(a)は第2実施形態に係る車両用内装部品の取付構造によってデミスタグリルが取り付けられた自動車のインストルメントパネルにおける図3相当図であり、(b)は(a)のVIIIb部拡大図である。
図9】乗員がインストルメントパネルに衝突した状態における図8(a)相当図である。
図10】第3実施形態に係る車両用内装部品の取付構造によってデミスタグリルが取り付けられた自動車のインストルメントパネルにおける図8(a)相当図である。
図11】係合孔の変形例を示す図6相当図である。
図12】従来のデミスタグリルの取付構造を示す断面図である。
図13】乗員がインストルメントパネルに衝突した状態における図12相当図である。
図14】デミスタグリルが飛散した状態における図12相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について図面に基づいて説明する。
【0022】
(第1実施形態)
図1及び図2は、自動車用の樹脂製インストルメントパネル(被取付部材)1の車幅方向中央部から左端に亘る部分を示している。図3は、図2のIII-III線矢視断面図である。上記インストルメントパネル1は自動車の運転席前方に配置され、その本体を構成するパネル本体13は、基材13aと、その表面側の表皮13bと、該基材13aと該表皮13bとの間に挟まれた発泡層13cと、の3層構造となっている。このパネル本体13の上面部13dの両サイドには、前方ほど細くなっている略三角形状のサイドデミスターエア吹出口(嵌合孔)3が形成され、その車体後方に矩形状のサイドベントエア吹出口5が該サイドデミスターエア吹出口3と上下に接近してそれぞれ形成され、さらに、サイドベントエア吹出口5の下側には、加飾パネル7が車幅方向左端から中央部に亘って取り付けられている。
【0023】
上記パネル本体13の背面部前方には、上記サイドベントエア吹出口5に図示しない空調装置の調和空気を導く角筒状の樹脂製ベントダクト15が配設され、該ベントダクト15後端部が上記サイドベントエア吹出口5に取り付けられる樹脂製ベントグリル11の前端部と連結されている。このベントグリル11は、4枚の可動フィン11aを有し、上記空調装置で生成されて車室Rに吹き出す調和空気の風向きを当該可動フィン11aで調整する。
【0024】
一方、上記パネル本体13の上面部13d下方には、上記サイドデミスターエア吹出口3に上記空調装置の調和空気を導く樹脂製デフダクト17が設けられ、該デフダクト17は上記上面部13d裏面に溶着されている。上記サイドデミスターエア吹出口3には、その形状に対応する略三角形状の樹脂製デミスタグリル9が取り付けられている。このデミスタグリル9は、5枚の固定フィン9aを有し、これら固定フィン9aは、上記空調装置で生成された調和空気を図示しないサイドガラスに吹き出すように各々傾斜している。
【0025】
図4は上記インストルメントパネル1に上記デミスタグリル9を取り付ける前の斜視図である。また、図5は、上記デミスタグリル9の全体斜視図である。上記デミスタグリル9は、例えばポリプロピレン等の樹脂からなる射出成形品である。このデミスタグリル9は、略三角枠状のグリル枠9bを有し、該グリル枠9bは、内側に5枚の上記固定フィン9aが一体に設けられた枠本体9cと、該枠本体9cの上端から外側に張り出す鍔部9dとによって構成されている。上記枠本体9cの前後両端には、係合片9e,9fが裏側に向かってそれぞれ突設されている。前端に設けられた上記係合片(以下、前端係合片という)9eは、前方に向かって下側に傾斜する平板状をなしている。後端に設けられた上記係合片(以下、後端係合片という)9fは、上記枠本体9c裏面から鉛直下方に延びる矩形枠状の係合片外枠9gと、該係合片外枠9gの下端中央部から上方に延び且つ後方に突出する略四角錐状の係止爪9hとを有し、該係止爪9hの上側及び車幅方向両側には上記係合片外枠9gとの間に隙間9jが形成されている。該係止爪9hは、上記係合片外枠9gの内側において車体前後方向に撓むことができる。
【0026】
上記サイドデミスターエア吹出口3の前端外周りは、上記枠本体9cの前端部と上記前端係合片9eとによって上下両側から挟まれている。一方、上記後端係合片9fは、上記サイドデミスターエア吹出口3の後側外周りに形成された後側係合孔19に係合している。図6は、上記サイドデミスターエア吹出口3を後側、すなわち乗員側から見た斜視図である。この後側係合孔19は、図6に示すように車体前後方向に長い矩形状をなし、その車幅方向寸法は上記後端係合片9fの幅よりも僅かに大きい。該後側係合孔19の後側外周りは、上記表皮13b及び発泡層13cによって覆われておらず、上記基材13aが剥き出しになっている。そして、この後側外周りには、車幅方向に間隔をあけて設けられた一対のスリット19aが形成され、両スリット19a間には、車体前方に延びる水平な矩形板状の衝撃吸収部21が形成されている。この衝撃吸収部21に車体前後方向の衝撃荷重がかかると、該衝撃吸収部21が折れ曲がることによって該衝撃荷重を吸収する。この衝撃吸収部21は、上記スリット19a間に形成されて片持ち支持されているため、上下方向に撓みやすくなっている。したがって、後端係合片9fを後側係合孔19に挿入する際に衝撃吸収部21に当たっても、該衝撃吸収部21が撓むため、該後端係合片9fを後側係合孔19に比較的小さい力で挿入することができる。尚、上記衝撃吸収部21及び上記後側係合孔19外周りは、上記衝撃荷重をより効率的に吸収すべく、薄肉に形成されているのが好ましい。
【0027】
上記デミスタグリル9を上記サイドデミスターエア吹出口3に取り付ける際には、先ず、上記前端係合片9eを該サイドデミスターエア吹出口3前端に差し込み、次に、上記後端係合片9fを上記後側係合孔19に挿入してデミスタグリル9後端部を下方に押し込む。そうすると、デミスタグリル9の上記枠本体9c前端と前端係合片9eとによってサイドデミスターエア吹出口3の前端外周りが上下両側から挟まれ、さらに、後端係合片9fの上記係止爪9hが後側係合孔19外周りに係止することにより、デミスタグリル9がサイドデミスターエア吹出口3に嵌合する。
【0028】
次に、乗員Aが上記インストルメントパネル1に衝突したときの該インストルメントパネル1及び上記デミスタグリル9の挙動について図7を参照して説明する。図7は、乗員Aがインストルメントパネル1に衝突した状態における図3相当図である。
【0029】
車体が前後方向に衝突すると、その衝撃によって乗員Aが前方に移動してインストルメントパネル1に後方から衝突する。具体的には、乗員Aがインストルメントパネル1の上面部13d後端に衝突する。すると、該上面部13d後端が前方に押されて、衝撃吸収部21が前方に移動する一方、比較的剛性の高いデミスタグリル9は撓みにくく、その形状が保持されるため、衝撃吸収部21先端が後端係合片9fに当接する。そして、さらに上面部13d後端が前方に押されると、該上面部13d後端が前方に圧縮され、図7に示すように上方に湾曲するとともに、衝撃吸収部21が後端係合片9fに負けて上方に突出するように折れ曲がって上記衝撃荷重を吸収する。これにより、後側係合孔19外周りが後端係合片9fに衝突せず、該後端係合片9fが破断するのを防止することができる。したがって、係止爪9hが後側係合孔19外周りに係止する状態が保持されるため、後端係合片9fが該後側係合孔19から外れるのを防止することができる。さらに、衝撃吸収部21は、折れ曲がった状態で後端係合片9kを下方に押さえ付けている。したがって、後端係合片9kが後側係合孔19から外れるのをより確実に防止することができる。
【0030】
このように、乗員Aがインストルメントパネル1に後方から衝突しても、デミスタグリル9とインストルメントパネル1との係合状態が保持されるため、該デミスタグリル9が飛散するのを防止することができる。よって、乗員Aを保護することができる。
【0031】
(第2実施形態)
上記第1実施形態では、後端係合片9fに係止爪9hが設けられていて、デミスタグリル9をサイドデミスターエア吹出口3に取り付ける際には、該デミスタグリル9の前端部から先に取り付けている。これとは反対に、前端係合片に係止爪が設けられ、デミスタグリル9の後端部を先に取り付ける形態もある。図8は、本実施形態に係る車両用内装部品の取付構造によってデミスタグリル9が取り付けられた自動車のインストルメントパネル1の断面図であって、(a)は図3相当図であり、(b)は(a)のVIIIb部拡大図である。尚、デミスタグリル9の前後両端係合片9m,9k及びサイドデミスターエア吹出口3外周り以外の構成は、上記第1実施形態のものと同一であり、同一箇所には同一符号を付し、その説明を省略する。
【0032】
デミスタグリル9の後端係合片9kは、後方に向かって下側に傾斜する平板状をなしている。前端係合片9mは、枠本体9c裏面から鉛直下方に延びており、矩形枠状の係合片外枠9nと、該係合片外枠9nの下端中央部から上方に延び且つ前方に突出する略四角錐状の係止爪9pとを有し、該係止爪9pの上側及び車幅方向両側には上記係合片外枠9nとの間に隙間9rが形成されている。該係止爪9pは、上記係合片外枠9nの内側において車体前後方向に撓むことができる。
【0033】
サイドデミスターエア吹出口3の前後両側には、上記前端係合片9mが挿入係止する前側係合孔23及び上記後端係合片9kが差し込まれる上記後側係合孔19がそれぞれ形成されている。該前側係合孔23の前側外周りは、上記表皮13b及び発泡層13cに覆われておらず、上記基材13aが剥き出しになっている。そして、該前側係合孔23の前方には、図8(b)に示すように、上記パネル本体13から板状の立壁部13eが突設されている。尚、上記衝撃吸収部21及び上記後側係合孔19外周りは、上記衝撃荷重をより効率的に吸収すべく、薄肉に形成されているのが好ましい。
【0034】
上記デミスタグリル9を上記サイドデミスターエア吹出口3に取り付ける際には、先ず、上記後端係合片9kを上記後側係合孔19に差し込み、次に、上記前端係合片9mを前側係合孔23に挿入してデミスタグリル9前端部を下方に押し込む。そうすると、デミスタグリル9の上記枠本体9c後端と後端係合片9kとによってサイドデミスターエア吹出口3の後端外周りが上下両側から挟まれ、さらに、前端係合片9mの上記係止爪9pが前側係合孔23外周りに係止することにより、デミスタグリル9がサイドデミスターエア吹出口3に嵌合する。これにより、デミスタグリル9がサイドデミスターエア吹出口3に取り付けられる。尚、この取付状態で、図8(b)に示すように、デミスタグリル9の枠本体9cと立壁部13eとの間に隙間25が形成されている。この隙間25が設けられていることにより、デミスタグリル9をサイドデミスターエア吹出口3に嵌め込みやすくなっている。
【0035】
上記取付状態で車体が前後方向に衝突すると、その衝撃によって乗員Aが前方に移動してインストルメントパネル1に後方から衝突する。すると、インストルメントパネル1の上面部13dの後端部が前方に押され、衝撃吸収部21が前方に移動する一方、比較的剛性の高いデミスタグリル9は撓みにくく、その形状が保持されるため、衝撃吸収部21先端が後端係合片9kに当接する。さらに上面部13d後端が前方に押されると、該上面部13d後端が前方に圧縮され、図9に示すように上方に湾曲し、衝撃吸収部21が後端係合片9kに負けて上方に突出するように折れ曲がる。これにより、後側係合孔19外周りが後端係合片9kに衝突せず、該後端係合片9kが破断するのを防止することができる。したがって、グリル枠9b及び後端係合片9kが後側係合孔19外周りを上下両側から挟む状態が保持されるため、後端係合片9kが該後側係合孔19から外れるのを防止することができる。さらに、衝撃吸収部21は、折れ曲がった状態で後端係合片9kを下方に押さえ付けている。したがって、後端係合片9kが後側係合孔19から外れるのをより確実に防止することができる。
【0036】
一方、前端係合片9mも前方に押されて前側係合孔23の前側外周りに当接し、該前端係合片9mが傾斜するように変形する。それと同時に、デミスタグリル9の枠本体9c前端が立壁部13eに当接し、デミスタグリル9の前方への移動が規制される。そうすると、前端係合片9mの前方への移動も規制され、該前端係合片9mの変形も抑制される。したがって、前端係合片9mが折れて破断するのを防止することができる。これにより、係止爪9pが前側係合孔23の外周りに係止する状態を保持することができる。よって、前端係合片9mが前側係合孔23から外れるのを防止することができる。
【0037】
このように、乗員Aがインストルメントパネル1に後方から衝突しても、デミスタグリル9とインストルメントパネル1との係合状態が保持されるため、該デミスタグリル9が飛散するのを防止することができる。よって、乗員Aを保護することができる。
【0038】
(第3実施形態)
上記第2実施形態では、衝撃吸収部21がサイドデミスターエア吹出口3の外周り後側に設けられていたが、前後両側に設けられていてもよい。図10は、本実施形態に係る車両用内装部品の取付構造によってデミスタグリル9が取り付けられたインストルメントパネル1の図8(a)相当図である。尚、前側係合孔23の外周り以外の構成は、上記第2実施形態のものと同一であり、同一箇所には同一符号を付し、その説明を省略する。
【0039】
前側係合孔23の前側外周りは、上記表皮13b及び発泡層13cに覆われておらず、上記基材13aが剥き出しになっている。この前側係合孔23の前側外周りには、車幅方向に間隔をあけて一対の図示しないスリットが形成され、両スリット間には車体後方に延びる水平な矩形板状の衝撃吸収部27が形成されている。この衝撃吸収部27に車体前後方向の衝撃荷重がかかると、該衝撃荷重を該衝撃吸収部27が折れ曲がることによって吸収する。なお、上記第2実施形態の立壁部13eは形成されていない。また、上記衝撃吸収部27及び上記前側係合孔23の外周りは、比較的薄肉に形成されている。
【0040】
上記デミスタグリル9は、後端係合片9kが後側係合孔19に差し込まれて衝撃吸収部21に下方からあてがわれている一方、前端係合片9mが前側係合孔23に挿入されて係止爪9pが該前側係合孔23の前側外周りに係止して、サイドデミスターエア吹出口3に取り付けられている。
【0041】
この取付状態で車体が前後方向に衝突すると、その衝撃によって乗員Aが前方に移動してインストルメントパネル1に後方から衝突する。すると、インストルメントパネル1の上面部13d後端が前方に押され、衝撃吸収部21が前方に移動する一方、比較的剛性の高いデミスタグリル9は撓みにくく、その形状が保持されるため、衝撃吸収部21先端が後端係合片9kに当接する。さらに上面部13d後端が前方に押されると、該上面部13d後端が前方に圧縮され、上方に湾曲し、比較的剛性の低い衝撃吸収部21がデミスタグリル9に負けて上方に突出するように折れ曲がる。これにより、後側係合孔19外周りが後端係合片9kに衝突せず、該後端係合片9kが破断するのを防止することができる。したがって、グリル枠9b及び後端係合片9kが後側係合孔19外周りを上下両側から挟み込む状態が保持されるため、後端係合片9kが該後側係合孔19から外れるのを防止することができる。さらに、衝撃吸収部21は、折れ曲がった状態で後端係合片9kを下方に押さえ付けるため、後端係合片9kが後側係合孔19から外れるのをより確実に防止することができる。
【0042】
一方、前端係合片9mも前方に押され、該前端係合片9mが前側係合孔23の前側外周りに形成された衝撃吸収部27先端に当接する。そして、前端係合片9mがさらに押されると、比較的剛性の低い衝撃吸収部27が前端係合片9mに負けて上方に突出するように折れ曲がる。これにより、前側係合孔23外周りが前端係合片9mに衝突せず、該前端係合片9mが破断するのを防止することができる。したがって、係止爪9pが前側係合孔23外周りに係止する状態が保持されるため、前端係合片9mが該前側係合孔23から外れるのを防止することができる。さらに、衝撃吸収部27は、折れ曲がった状態で係止爪9pを下方に押さえ付けている。したがって、前端係合片9mが前側係合孔23から外れるのをより確実に防止することができる。
【0043】
このように、乗員Aがインストルメントパネル1に後方から衝突しても、デミスタグリル9とインストルメントパネル1との係合状態が保持されるため、該デミスタグリル9が飛散するのを防止することができる。よって、乗員Aを保護することができる。
【0044】
なお、上記実施形態では、本発明に係る車両用内装部品の取付構造をデミスタグリル9の取付構造に適用したが、これに限定されず、例えばスピーカグリルの取付構造に適用してもよい。
【0045】
また、上記実施形態では、車両用内装部品及びそれが取り付けられる被取付部材がそれぞれデミスタグリル9及びインストルメントパネル1であったが、これに限定されず、例えば車両用内装部品及び被取付部材がそれぞれ加飾パネル及びドアトリムであってもよい。
【0046】
さらに、上記実施形態では、衝撃吸収部21,27の幅方向両側にスリット19aを設けたが、図11に示すように破断予定線(ティアライン)29を設けてもよい。この場合、破断予定線29は、衝撃吸収部21の衝撃吸収を阻害しない程度に切り込まれることにより設けられている。また、この破断予定線29を設けることにより、スリット19aを設ける場合と比較して衝撃吸収部21が撓みにくくなっている。そのため、通常使用時において、後側係合孔19に挿入された後端係合片9f、9kが該後側係合孔19から外れるのをより確実に防止することができる。
【0047】
さらにまた、上記実施形態では、上記衝撃吸収部21,27並びに上記後側係合孔19及び前側係合孔23の外周りは、比較的薄肉に形成されている。これに限定されず、例えば、該衝撃吸収部21,27は、該衝撃吸収部21,27のそれぞれに対応する上記係合片9f,9k,9mに当接し、折れ曲がって衝撃荷重を吸収することができれば、上記係号孔19,23外周りの上記基材13aと同一厚みに形成されてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0048】
以上説明したように、本発明に係る車両用内装部品の取付構造は、車両用内装部品が被取付部材から飛散して乗員に当たるのを防止する用途等に適用することができる。
【符号の説明】
【0049】
1 インストルメントパネル(被取付部材)
3 サイドデミスターエア吹出口(嵌合孔)
9 デミスタグリル(内装部品)
9f、9k 後側係合片
9e、9m 前側係合片
9h、9p 係止爪
13e 立壁部
19 後側係合孔(係合孔)
19a スリット
23 前側係合孔(反乗員側の係合孔)
21,27 衝撃吸収部
図1
図2
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