(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照し、本発明の一実施形態に係るカップ容器用蓋体1及びこれを用いたカップ容器10について説明する。
図1及び
図2に示されるように、カップ容器10は、内容物が収容される有底筒状をなし、その口部3がシール部材4により破断可能に閉塞された容器体2と、容器体2の口部3に装着されるカップ容器用蓋体1と、を備えている。また、シール部材4により密封された容器体2内には、内容物として、例えば飲料等の液体が収容される。
ここで、容器体2及びカップ容器用蓋体1の各中心軸線は、共通軸上に位置している。本明細書では、この共通軸を容器軸Oといい、容器軸Oに沿う方向(容器軸O方向)のうち、容器体2の底部側を下側といい、カップ容器用蓋体1側を上側といい、容器軸Oに直交する方向を径方向といい、容器軸O回りに周回する方向を周方向という。
【0015】
図2において、容器体2は、該容器体2の胴部及び口部3を構成する周壁5と、底部を構成する底壁19と、を有している。周壁5は、底壁19から上側に向かうに従い漸次拡径するテーパ筒状をなしており、該周壁5の上端開口部が、前記口部3となっている。また、周壁5の上端開口部には、径方向外側に向けて突出するとともに周方向に沿って延びる環状のフランジ6が形成されている。
【0016】
周壁5の口部3には、径方向内側に向けて突出するとともに周方向に沿って延びる口部突起28が形成されている。
また周壁5の胴部における下端部には、径方向内側に向けて突出する底部突起29が、周方向に間隔をあけて複数形成されている。これら底部突起29は、周壁5の下端部において底壁19から上側に離間して配置されている。底部突起29が周壁5から径方向内側に向けて突出する突出量は、図示の例では、周壁5の厚さと同等程度となっている。また、底壁19は、周壁5の下端開口部よりも上側に位置しており、内容物を充填する前の容器体2を容器軸O方向に複数積み重ねて保管する場合などにおいて、下側に位置する容器体2の底部突起29には、上側に位置する容器体2の周壁5における下端開口部が、前記底部突起29の上側から当接するようになっている。
これらの口部突起28及び底部突起29は、内容物を収容する前のシール部材4が貼着されていない状態の容器体2を、容器軸O方向に複数重ねて保管する場合などにおいて、これら容器体2の周壁5同士が密着することを抑制して前記周壁5同士の間に隙間を形成するとともに、これら容器体2同士を容器軸O方向に離間させやすくする目的で設けられている。
【0017】
シール部材4は、例えばアルミ蒸着シートや積層されたプラスチックフィルムなどのバリア性シート材で構成されており、シール部材4の下面には熱溶着層が形成されている。シール部材4は、容器体2内に内容物が充填された後に、フランジ6の上面に熱溶着されており、内容物が容器外部に漏出しないように口部3を封止している。尚、シール部材4としてバリア性シート材を用いた場合には、空気などが容器体2内に侵入することを防止して内容物の変質を防ぐことができる。
【0018】
カップ容器用蓋体1は、容器体2の口部3に装着される装着筒7と、装着筒7に支持されてシール部材4上に配設される本体板8と、本体板8に形成された貫通孔9内に配設される回動板11と、回動板11をカップ容器10の側方(両側)から挟むように一対配置され、本体板8に対して回動板11を回動可能に連結するヒンジ12と、を備えている。
ここで、回動板11は、一枚の板状体からなるとともに、
図1に示される上面視で、容器軸Oを挟んで一方側(
図1における左側)に配置される刃部22と、他方側(
図1における右側)に配置される操作部23と、を備えている。本明細書においては、前記径方向のうち、容器軸Oから刃部22へ向かう方向をカップ容器10の前方といい、容器軸Oから操作部23へ向かう方向をカップ容器10の後方といい、これら前方及び後方に直交する方向をカップ容器10の側方(
図1における上下方向)という。尚、前記側方は、カップ容器10を前方から見たときの左方と右方とを含んでおり、つまり左右方向のうちいずれか又は両方である。
【0019】
装着筒7は、容器体2のフランジ6に外嵌される嵌合筒部13と、嵌合筒部13上に立設されるガイド筒部14と、を有している。
嵌合筒部13は、周壁15と、天壁16と、を有している。
図2に示される縦断面視で、周壁15は、天壁16の外周端部から下側に向かうに従い漸次径方向外側に向かって傾斜して延びている。周壁15には、径方向内側に向かって突出するとともに周方向に沿って延びる環状又は円弧状の突起17が突設されており、該突起17は、フランジ6の外周端部にその下側から当接可能となっている。突起17が円弧状をなす場合は、周壁15の内周面に周方向に間隔をあけて、複数の突起17が形成されることが好ましい。
【0020】
天壁16は、円環板状をなしてフランジ6上に配置されており、その径方向内側に位置する部位が大きく円形状に切り欠かれている。
図3に示されるように、天壁16には、下側に向けて突出するとともに周方向に沿って延びる環状のシール突起18が形成されており、該シール突起18は、フランジ6上に位置するシール部材4の外周端部に、その上側から当接している。
【0021】
ガイド筒部14は、嵌合筒部13の天壁16の内周端部に立設されている。
図2に示される例では、ガイド筒部14は、上側に向かうに従い漸次薄肉となるように形成されている。
【0022】
図2に示されるように、ガイド筒部14の高さ(嵌合筒部13から上側へ向けて突出する長さ)は、該ガイド筒部14の前方部分において最も高くされており、前方部分から側方部分にかけての領域では後方に向かうに従い漸次低くなっていき、側方部分から後方部分にかけての領域が最も低くされている。尚、特に図示していないが、例えばガイド筒部14の後方部分に、上側に向けて突出する支持凸部を形成するとともに、該支持凸部の高さと、ガイド筒部14の前方部分の高さとを、互いに同一としてもよい。
【0023】
本体板8は、装着筒7における嵌合筒部13の天壁16とガイド筒部14との接続部分から径方向内側へ向かって延設されて、該装着筒7内に配設されている。
図1に示されるように、本体板8は、全体として円板状をなしており、その外周端部が装着筒7の内周面に連結されることにより、該装着筒7に支持されている。また、
図2に示される縦断面視で、本体板8は、その径方向中央(径方向内側)に位置する部位が容器軸Oに垂直な平坦状とされ、径方向外側に位置する部位については、径方向外側に向かうに従い漸次下側へ向かって傾斜するテーパ状となっている。
【0024】
本体板8は、シール部材4の上面との間に間隔をあけて、該シール部材4をその上側から覆うように配設されている。本体板8は、容器軸Oに垂直な平坦状をなすシール部材4から上側に向けて膨出するように形成されており、これらの本体板8とシール部材4との間には隙間が設けられている。
【0025】
貫通孔9は、本体板8を容器軸O方向に貫通して形成されている。
図1に示される上面視で、貫通孔9は、本体板8の中央(容器軸O上)とその前方部分及び後方部分にわたって開口されており、カップ容器10の前後方向(
図1における左右方向)に長い矩形状をなしている。図示の例では、全体として円形状をなす本体板8に対して、前後方向に延びる貫通孔9が該本体板8を分断するように開口されていることで、本体板8に、半円形状をなす一対の側方部分が形成されている。
【0026】
貫通孔9における前方端部と容器軸Oとの間に位置する部分には、側方に向けて切り欠かれるように一対の凹部21が形成されている。これらの凹部21は、互いに逆向きの側方(つまり左方と右方)に向けて、それぞれ窪まされている。
図1に示される上面視で、貫通孔9において一対の凹部21より前方に位置する部分は、前方に向かうに従い漸次その幅が狭くなるように形成されている。貫通孔9における前方端部は、シール部材4が開封された際に、カップ容器10を傾けて内容物を流出させる取出口となっている。
【0027】
回動板11は、貫通孔9に対応する形状をなしているとともに、該貫通孔9内に収容されている。
図1に示される上面視で、回動板11は、カップ容器10の前後方向に長い矩形状をなしている。回動板11は、該回動板11において前方に位置する刃部22と、後方に位置する操作部23と、これら刃部22及び操作部23の中間部分(接続部分)から側方に向けてそれぞれ延びる一対の凸部24と、を備えている。
尚、特に図示しないが、回動板11の剛性を確保する目的で、該回動板11の表裏面(いずれか一方でもよい)には、前後方向や左右方向に延設される補強壁部を設けてもよい。
【0028】
一対の凸部24は、回動板11における前方端部と容器軸Oとの間に位置する部分から、側方に向けて突出して形成されている。これらの凸部24は、回動板11において刃部22及び操作部23が形成される本体部分から、互いに逆向きの側方に向けて、それぞれ突設されている。
【0029】
図1に示すように、凸部24における後方端部(後方を向く端面)と、凹部21における後方端部(前方を向く端面)とは、薄肉とされて弾性変形可能なヒンジ12により連結されている。すなわち、回動板11は、互いに側方に間隔をあけて配置された一対のヒンジ12を介して本体板8に連結されており、これにより回動板11は、本体板8に対してヒンジ12回りに安定して回動可能となっている。
尚、
図2及び
図3に示される回動板11のうち、2点鎖線で表されるものが、本体板8に対して回動操作する前(カップ容器10の開封前)の回動板11の姿勢であり、実線で表されるものが、本体板8に対して回動操作された後(カップ容器10の開封後)の回動板11の姿勢である。
【0030】
回動板11においてヒンジ12(具体的には一対のヒンジ12間)からカップ容器10の前方に向けて延びる部位が、シール部材4を破断可能な刃部22となっている。
図1に示される上面視で、刃部22は、前方に向かうに従い漸次その幅が狭くなるように形成されている。また、
図2及び
図3に示される縦断面視で、刃部22の前方端部における下端部(後述する先鋭刃25部分)は、下側に向かうに従い漸次薄肉とされている。
【0031】
刃部22の下面における前方端部には、下側に向けて突出されるとともにシール部材4に切り込み可能な先鋭形状とされた先鋭刃25が形成されている。刃部22の前方端部及び側方端部(左右端部)には、該刃部22を下側から見て略コ字状をなすように、壁部が下側へ向けて突設されており、先鋭刃25は、前記前方端部に垂下設された壁部部分に形成されている。また、刃部22の前記側方端部に垂下設された壁部部分には、先鋭刃25よりも後方に配置され、該先鋭刃25よりも下側に向けた突出量が小さい突起26が形成されている。
【0032】
図3に示すように、先鋭刃25は、回動板11の径方向外側の端部において最も下側に位置しており、突起26は、先鋭刃25よりも上側に位置している。
図3に2点鎖線で示す回動操作前の回動板11において、先鋭刃25及び突起26と、シール部材4との間には、隙間が設けられている。この隙間は、例えば容器体2の内圧が増加するなどしてシール部材4が上側に向けて膨出した場合においても、該シール部材4が先鋭刃25や突起26に当接しない程度に設定されていることが好ましい。
【0033】
また、回動板11の刃部22には、該回動板11をその厚さ方向に貫通する取出孔27が形成されている。
図1に示される上面視で、取出孔27は、矩形状をなしており、刃部22の前方端部において互いに側方に間隔をあけて一対形成されている。
刃部22によりシール部材4が開封された際において、これらの取出孔27内には、内容物が流通可能となっている。
【0034】
そして、刃部22には、該刃部22により破断されたシール部材4の開封部分、又は、容器体2の内周面に係止可能とされた係止片20が突設されている。係止片20は、刃部22の前方端部から上側(容器軸O方向に沿う容器外側)へ向けて延設されている。
【0035】
本実施形態においては、係止片20は、板状又は羽根状をなしており、
図3に示される縦断面視で、該係止片20は、刃部22の前方端面における先鋭刃25の上側部分から突設されるとともに、前方に向かうに従い漸次上側へ向かって延びている。そして、
図3に実線で示す回動操作後の回動板11において、係止片20は、シール部材4の開封部分にその下側から当接し、係止されている。尚、特に図示していないが、本実施形態とは異なり、刃部22がシール部材4を破断した後、該刃部22の係止片20が、容器体2の内周面に係止する構成としてもよい。この場合、係止片20が、口部突起28に係止可能であることがより好ましい。
【0036】
また、回動板11において一対のヒンジ12間からカップ容器10の後方に向けて延びる部位が、これらヒンジ12回りに刃部22を回動させるための操作部23となっている。
図2に示される縦断面視で、操作部23における後端部の上面は、後方に向かうに従い漸次下側に向かって傾斜して延びている。
また、貫通孔9内における操作部23の後方には、隙間が形成されている。
図1に示される例では、この隙間が矩形状をなしている。
【0037】
以上説明した本実施形態のカップ容器10では、
図2に示すように、容器体2の口部3にカップ容器用蓋体1が装着された状態で、該蓋体1における回動板11の操作部23を引き上げる(上側に向けて操作する、すなわち容器軸O方向に沿う容器外側に向けて操作する)ことで、この回動板11において操作部23とは反対側に位置する刃部22が、一対のヒンジ12回りに、操作部23とは逆向きに(下側に向けて、すなわち容器軸O方向に沿う容器内側に向けて)回動させられるとともに、該刃部22の先鋭刃25がシール部材4に押し当てられ、該シール部材4が破断されて、容器体2の口部3の閉塞が解除される。
【0038】
本実施形態の刃部22には、先鋭刃25と間隔をあけて突起26が形成されており、予め先鋭刃25が破断したシール部材4の開封部分を、該突起26でも押し広げて、シール部材4が所定範囲以上の開口面積となるように開封される。
【0039】
このようにシール部材4が開封されることで、容器体2内と、本体板8の貫通孔9における前記取出口とが連通される。
次いで、操作者(カップ容器10の内容物を飲む者)は、例えばガイド筒部14の前方部分に口を付けながら、このカップ容器10の上部を前方に向けて倒すように、該カップ容器10を傾ける。これにより、容器体2内からシール部材4の開封部分及び貫通孔9の前記取出口を通して、内容物が容器外部に流出し、この内容物が、ガイド筒部14の周面を伝いながら操作者の口に導入される。このとき、前記取出口から取り出された内容物がカップ容器用蓋体1から零れ落ちることは、ガイド筒部14により抑制されることとなる。
【0040】
本実施形態のカップ容器用蓋体1によれば、刃部22によりシール部材4が破断されて開口した該シール部材4の開封部分、又は容器体2の内周面に対して、該刃部22の係止片20が係止可能とされているので、カップ容器10の開封後に、本体板8に対して回動板11の刃部22の位置を安定させることができる。すなわち、シール部材4を破断した後、回動板11の刃部22が前述の回動とは逆向きに(容器軸O方向に沿う容器外側に向けて)回動したり、不安定に揺動したりするようなことが防止され、これにより内容物を安定して容器外部に取り出すことができる。
【0041】
そして、本実施形態のカップ容器用蓋体1は、刃部22に係止片20が突設されるだけの簡単な構造で、かつ、該刃部22によりシール部材4を破断させるだけの簡単な操作によって、前述した作用効果を奏するのである。
【0042】
また、係止片20が、刃部22の前方端部から上側へ向けて延設されているので、刃部22によりシール部材4を破断する際には、該刃部22の係止片20が径方向で弾性変形可能となっているためシール部材4の開封部分や容器体2の内周面に引っ掛かりにくくされている一方、シール部材4の破断後には、該シール部材4の開封部分や容器体2の内周面に対して、係止片20がより確実に係止されやすくなる。
【0043】
尚、本発明は前述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0044】
例えば、前述の実施形態では、カップ容器用蓋体1に装着筒7が設けられており、該装着筒7を介して、本体板8が容器体2の口部3に装着されているとしたが、これに限定されるものではない。すなわち、装着筒7が設けられる代わりに、本体板8が、容器体2の口部3に直接装着されているとともに、シール部材4との間に間隔をあけて該シール部材4の上側を覆っていても構わない。
【0045】
また、前述の実施形態では、ガイド筒部14が一重筒状をなしているとしたが、これに限定されるものではなく、ガイド筒部14は二重筒状であってもよい。また、ガイド筒部14が設けられていなくても構わない。
【0046】
また、本体板8に開口される貫通孔9の形状が、カップ容器10の前後方向に長い矩形状をなしているとしたが、これに限定されるものではない。すなわち、貫通孔9の開口形状は、前記矩形状以外の例えば多角形状、楕円形状、長円形状等であってもよい。
【0047】
また、前述の実施形態では、ヒンジ12が、本体板8の凹部21における後方端部と、回動板11の凸部24における後方端部とを連結しているとしたが、この代わりに、凹部21の前方端部と、凸部24の前方端部とを連結していてもよい。
【0048】
また、回動板11の刃部22に、該回動板11を厚さ方向に貫通する取出孔27が形成されているとしたが、これに限定されるものではない。すなわち、取出孔27は、例えば回動板11の刃部22の外周端縁から窪まされた切り欠き形状とされていてもよく、或いは、取出孔27は形成されていなくても構わない。
【0049】
また、回動板11と本体板8とを繋ぐヒンジ12の形状、数、配置等は、前述した実施形態に限定されるものではない。
また、回動板11には操作部23が設けられていなくてもよく、この場合、操作者は、例えば刃部22を直接下側へ向けて押し込むことで、該刃部22を本体板8に対して回動させて、シール部材4を破断させてもよい。
【0050】
また、係止片20が、板状又は羽根状をなしており、刃部22の前方端面における先鋭刃25の上側部分から突設されるとしたが、これに限定されるものではない。具体的に、係止片20は、例えば針状や棒状をなして刃部22に突設されていてもよく、或いは、刃部22に突設された複数の突起からなることとしてもよい。また、係止片20が、刃部22の前方端部から突設される代わりに、例えば刃部22の側方から突設されていても構わない。
【0051】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上記した変形例を適宜組み合わせてもよい。