【実施例1】
【0035】
本発明に係るレーザー走査顕微鏡装置の実施例1を、以下に図面を参照しつつ説明する。
図1は、本実施例に係るレーザー走査顕微鏡装置の構成を示すブロック図である。まず、レーザー光がそれぞれ出射されるレーザー光源11及びレーザー光源12を含む合成光学系1について述べる。合成光学系1内のレーザー光源11及びレーザー光源12は、それぞれHe-Ne等のガスレーザー、半導体レーザー、もしくは固体レーザーであり、コヒーレント光をそれぞれ発生する。
【0036】
ここでレーザー光源11とレーザー光源12は、相互に近接した波長のレーザー光を発生するような、たとえば523nmと532nmの波長をそれぞれ有する半導体レーザーとすることが考えられる。そして、これらのレーザー光の光軸を、合成光学系1内に存在する合成プリズム13によって以降の光学系の光軸Lに合わせるようにする。
【0037】
なお、この合成プリズム13はハーフミラーで構成しても良いが、この場合には50%程度の光量のロスが発生する。これに対して、それぞれのレーザー光を直交する直線偏光の光とすると共に、合成プリズム13を偏光ビームスプリッターにすれば、光の利用効率は100%近くになる。ただしこの場合、合成プリズム13から出射された光は、直交した直線偏光の光となるので、円偏光に変換する1/4波長板を合成プリズム13に近接して配置する必要がある。これに伴い、光に変調を加える素子として音響光学素子を用いた場合、直線偏光の光で最大効率となる。従って、この場合も音響光学素子から出射される光は、50%程度になる。以上のように本実施例の合成光学系1はいくつかの手法により実現できる。
【0038】
本実施例では、各レーザー光をそれぞれ二つに分離するための光変調器である音響光学素子(AOD)3が採用されていて、
図1に示すように合成光学系1とこの音響光学素子3との間に、光学系としてコリメーターレンズ2が配置されている。他方、この音響光学素子3は、信号発生器であるAODドライバー4が接続されていて、このAODドライバー4により音響光学素子3は動作される。そして、これらレーザー光源11、12およびAODドライバー4は、図示しない制御基板にそれぞれ接続されていて、この制御基板により動作がそれぞれ制御されるようになる。これに伴い、キャリア交流信号としての周波数fcと正弦波信号としての変調周波数fmを制御基板に内蔵の信号発生器がAODドライバー4に対して印加する。
【0039】
以上の構成から本実施例では、これら各レーザー光源11、12からのレーザー光をコリメーターレンズ2により平行光束にし、音響光学素子3に入射させる。このとき、レーザー光の入射ビーム径は、後述の瞳伝達レンズ系5との兼ね合いより、絞り機構(図示せず)等を用いて適正化しておくことにする。さらに、この音響光学素子3には、上記AODドライバー4より、sin(2πfct)sin(2πfmt)のようなDSB変調信号が変調信号として加えられる。
【0040】
この様な変調を行うと、fc+fmとfc-fmの2つの周波数変調が加えられたことになる音響光学素子3は、ブラッグ回折格子のピッチdに相当する音波の粗密波を発生する。すなわち、超音波の速度をVa、印加する周波数をfとすると、d=Va/fとなる。具体的には、この粗密波により、音響光学素子3に入射されたレーザー光であるビームは、±1次回折光に分離され、各々の回折光は周波数fc±fmの周波数で変調される。たとえば、音響光学素子3の材料としてTeO
2が用いられるが、この材料の音速は、660m/sである。
【0041】
キャリアー周波数の周波数fcとして40MHzを選択すると、d=16.5μmとなり、He-Neレーザーをレーザー光源11、12に用いた場合、回折角θは2.198度程度の角度になる。
図1においては、光軸Lが変化していないように図示してあるが、実際には音響光学素子3以降の光学系を回折角θだけ傾けておくか、2次元走査デバイス6にバイアスを付与して、回折角θの傾きを実効上与えておくことにする。このキャリアー周波数に4MHz程度の周波数fmを加えると、±1次回折光はθ=2.417度とθ=1.978度となり、44MHzと36MHzでそれぞれ変調されることになる。
【0042】
この一方、本実施例では、この音響光学素子3に対して2枚のレンズからなる瞳伝達レンズ系5、入力されたレーザー光を2次元走査する走査光学素子である2次元走査デバイス6、入力されたレーザー光を分離して出射するビームスプリッター7が順に並んで配置されている。
【0043】
次に、瞳伝達レンズ系5を拡大レンズ系で構成した場合を考え、一波長での原理的な説明を行う。
瞳伝達レンズ系5に入射した光は、拡大率分だけお互いの角度差を減じることができる。音響光学素子3とビームスプリッター7との間に配置されている瞳伝達レンズ系5は、音響光学素子3の出射面位置を次の2次元走査デバイス6の図示しない走査素子面に共役にするための光学系であり、また、拡大することにより、±1次回折光の出射角度差を小さくしている。例えば、拡大率をm倍にすれば、角度のタンジェントの比として、1/mにすることができる。従って、音響光学素子3の変調周波数fmを高くしても、拡大率mを調整することで、2つのレーザー光であるビームを近接させることができる。
【0044】
さらに、このビームスプリッター7に隣り合って、2組のレンズからなる瞳伝達レンズ系10が位置し、この隣に対物レンズ17が対象物Sと対向して配置されている。つまり、これら各部材が光軸Lに沿って並んでいることになる。
【0045】
このため、瞳伝達レンズ系5を通過した光は、2次元走査デバイス6に送られビームスプリッター7で一部分離されるが、このビームスプリッター7を介した2次元走査デバイス6からの光は、対物レンズ17の瞳位置に共役にする瞳伝達レンズ系10により、対物レンズ17に角度差が小さくなった±1次回折光として入射する。この結果として、拡大率を適正にして、±1次回折光同士の距離を十分に小さくすれば、
図2の実線で示すビームLAおよび点線で示すビームLBのように、非常に接近して相互に同一径とされる2つのビームを得ることができる。
【0046】
また、これら2つのビームLA、LBの有する周波数は、「光の振動数+キャリア周波数fc±変調周波数fm」となる。2つの接近したビームの中心距離を上記したように回折限界以下に設定した場合、各々のビームは、アッべの理論の回折限界以下にはならないが、わずかにずらした各々別の周波数の光であるために、ヘテロダイン検波をすることにより、微分情報を取得することができる。
【0047】
図1および
図2に示す対象物Sで反射されたこの2つのビームLA、LBは、対物レンズ17、瞳伝達レンズ系10およびビームスプリッター7を介して、分離光学素子90に入射される。そして、この分離光学素子90で分離されて第2の受光素子群である受光素子91や受光素子93に導かれる。これら受光素子91、93を2次元走査デバイス6の位置と共役な位置に配しておくと、2つのビームLA、LBは同じ位置に戻るので、2つのビームLA、LBの位相差δがビート信号として検出される。
【0048】
さらに、
図1に示す受光素子91及び受光素子93をそれぞれ2分割以上の分割受光素子91A、91B、93A、93Bとし、
図2に示す光軸Lを境界線Cとして、この境界線Cを挟んでビームの分離方向に対して垂直な方向に暗線を有するように、これら分割受光素子91A、91B、93A、93Bを配置し、その和信号あるいは差信号より、ビート信号を取得させる。この時、和信号を用いると、実質的に微分干渉顕微鏡と等価になり、差信号を用いるとはるかに高い横分解能が得られる。
【0049】
次に、対象物Sに送られる光の性質について具体的に説明する。
対物レンズ17で絞られた光は、
図2に示すように近接した2つのビームLA、LBとなり、対象物Sに送られる。なお、ビームLAの複素振幅EaおよびビームLBの複素振幅Ebは、下記式のようになる。
Ea=Aexpj(2π(fo+fc+fm)t)
Eb=Bexpj(2π(fo+fc-fm)t+δ)
この複素振幅Ebの式のδは、ビームLAを基準としたビームLBの高さ方向の位相差を表わし、foは光の周波数を表す。なお、前述したようにこの2つのビームの間隔は、音響光学素子3に加えた変調周波数fmによって決定されるので、走査速度とは無関係である。
【0050】
また、前述の受光素子91、93は、光電変換された各々のビート信号を作成する光電変換部(図示せず)を有した構造とされていて、これら受光素子91、93上における2つのビームLA、LBの強度Iは、下記式に基づく値で受光素子91、93の光電変換部により検出され、スイッチャー14を介して位相比較器である信号比較器15に送られる。
I=(Ea+Eb)(Ea+Eb)
*=A
2+B
2+2ABcos(2π*2fmt+δ)
これに伴い、
図1に示す位相比較器である信号比較器15を用いて、周波数2fmのヘテロダイン検波の位相比較を行うことにより、位相差δを測定することができる。このようにして、位相情報を取得する。
【0051】
以上のようにすれば、変調周波数fmを高くし、かつ、ビームを非常に接近させることができるので、横分解能を高くすることができると同時に、データの取得を高速に行うことができる。なぜならば、位相比較を行う時間は、変調周波数fmに逆比例するので、たとえば、ビデオレート(水平走査周波数約15KHz)で、1000点以上のデーターを取得しようとすれば、1点の情報取得の周波数は15MHzとなる。例えば、変調周波数fmを8MHzにすれば、ビート周波数は、16MHzとなるので、十分にビデオレートで情報取得をすることができる。
【0052】
ここで、分離光学素子90とビームスプリッター7を挟んで対向して分離光学素子80が配置されている他、受光素子91、93とビームスプリッター7を挟んで対向して第1の受光素子群である受光素子81、83が配置されている。そして、これら受光素子81、83も、図示しない光電変換部を有した構造とされているだけでなく、それぞれ2分割以上の分割受光素子81A、81B、83A、83Bにより構成されている。この際、これら分割受光素子81A、81B、83A、83Bは、
図2に示す光軸Lを境界線Cとして、この境界線Cを挟んでビームの分離方向に対して垂直な方向に暗線を有するように、配置されている。
【0053】
なお、前述と同様にこれら受光素子81、83はビームスプリッター7で入射ビームの一部を取り出した光路上に音響光学素子3の回折光出射面と共役な位置になるように配置される。但し、分離光学素子80の他に、図示していないものの必要であれば瞳伝達レンズ系10と同様なレンズ系をビームスプリッター7と受光素子81、83の間に挿入しても良い。
【0054】
以上のことから、光軸Lが通過する方向に対して直交する方向であってビームスプリッター7の両隣の位置には、それぞれセンサである受光素子81、83と受光素子91、93とが配置されている。これら受光素子81、83、91、93が、受光素子81、83、91、93からのそれぞれの信号を切り替えるスイッチャー14にそれぞれ接続されている。そして、このスイッチャー14が受光素子81、83、91、93からの信号を比較する信号比較器15にそれぞれ接続され、この信号比較器15が、最終的にデータを処理して対象物Sのプロフィル等の情報を得るためのデータ処理部16に繋がっている。
【0055】
以上より、音響光学素子3で生じる回折光の入射ビームのビート信号がこの受光素子81、83に入射されて、受光素子81、83の光電変換部により検出される。つまり、音響光学素子3までに光学系等で生じた位相差を受光素子81、83の光電変換部により検出することになるので、この受光素子81、83は位相の基準を与える役割をしている。
【0056】
この一方、前述のようにビームLAとビームLBの2つのビーム間の位相差情報を加えたビート信号が、受光素子91、93内の光電変換部により求まり、スイッチャー14を介して信号比較器15に送られる。したがって、信号比較器15においてこの2つの位相比較を行うことにより、真の位相差δが検出されることになる。この真の位相差δは、ビームLAとビームLBの平均の位相差、すなわち、平均の高さhの差情報であるδh=λδ/4πとなる。この情報をデータ処理部16で平面の走査情報とともに記録していき、表面のプロファイル情報を簡単に導くことができる。ここで、λはレーザー光源11、12からのレーザー光の波長を表す。
【0057】
この信号比較器15と接続されたCPUやメモリ等からなるデータ処理部16にこれらの情報を送り込めば、データ処理部16でこの情報を平面の走査情報とともに記録していき、対象物Sの表面のプロファイル情報を簡単に導くことができる。
【0058】
ここで、計測される位相差δについて考えると、2πの不確定値のあることがわかるので、これについて、以下に説明する。
1つのレーザー光による一波長を用いた一連の流れを述べてきたが、本実施例では、合成光学系1にて合成された2種類の波長のレーザー光を用いている。このため、2つの波長を用いた場合の光学系と効果を以下に具体的に述べる。
【0059】
まず、上記のように近接した波長を有する2つのレーザー光をビームスプリッター7により本来の光軸Lから分離し、さらに分離光学素子80にて2つの波長の光に分離させる。この分離光学素子80は、例えばハーフミラーと狭帯域のバンドパスフィルターの組み合わせ等により実現できる。この様にしたことで、上記した532nmの光は、受光素子81に導かれ光電変換部で光電変換された信号がスイッチャー14に送られる。また、上記した523nmの光は、受光素子83に導かれ光電変換部で光電変換された信号がスイッチャー14に送られる。
【0060】
同様に、被測定物である対象物Sで反射した光も、対物レンズ17、瞳伝達レンズ系10、 ビームスプリッター7を経て、分離光学素子90に導かれる。この分離光学素子90は、上記した分離光学素子80と同様の作用をするので、532nmの光は、受光素子91に導かれ光電変換部で光電変換された信号がスイッチャー14に送られる。また、523nmの光は、受光素子93に導かれ光電変換部で光電変換された信号がスイッチャー14に送られる。
【0061】
このスイッチャー14は、受光素子81、83、91、93からのそれぞれの信号を切り替える役割を行い、それぞれの信号を信号比較器15に送る。信号比較器15では、ヘテロダイン検波をし、直交変換やIQ変換をし、それぞれの位相を検出し、データ処理部16に送る。データ処理部16では、それぞれの波長ごとの真の位相θ1、θ2(測定位相−基準位相)を算出し、2次元走査情報とともに記録する。
【0062】
ここで、真の位相θ1、θ2は、それぞれ下記のようになる。
θ1=2πdn/λ1
θ2=2πdn/λ2
この結果として、θ1とθ2を測定すれば、下記の波長λと等価な波長を実質的に与えたことになる。
λ=λ1λ2/|λ1−λ2|
すなわち、523nmと532nmの場合には、30915nmの波長に相当する。従って、対象物Sの位相差を±πまで深さ、屈折率分布測定等へ適用できるとすれば、深さは±15000nm程度の測定が可能となる。
【0063】
このままの位相情報を使用しても良いが、位相θ1と位相θ2の差の情報を、あくまでθ1あるいはθ2が2πの整数倍値mを同定することに使用するとすれば、位相θ1、θ2は以下のようになる。
θ1=2π*m+Θ1
θ2=2π*m+Θ2
このことから、θ1−θ2は以下のように求まる。
θ1−θ2=2πdn(1/λ1−1/λ2)
この式より、dを算出し、mを決定し、θ1あるいはθ2のそれぞれの位相からdを算出しなおしても良い。
【0064】
このようにすると、θ1−θ2より導いた位相は、精度を落としてもよく、たとえば、15000/532=28.19、すなわち、おおよそ180度を30分割程度とした約6度ぐらいの測定精度で整数倍値は与えられる。この後、θ1およびθ2の位相より導いた値を平均化するなどの処理を施すことにより、測定精度を向上させることが可能となる。この結果、測定レンジが広く、かつ、測定精度も高い検出が可能となる。また、近接したレーザー光を同時に対象物Sに照射しているので、データ処理を高速に行うことができる。
【0065】
他方、2つの波長を同時に照射する光学系を用いることなく、瞬間的にはいずれかの波長を照射するようにすることで、同様な効果をもたらすことが出来る。以下、このような方法について具体的に述べる。
すなわち、
図1において、分離光学素子80及び、受光素子81または受光素子83のどちらか一つを省き、さらに分離光学素子90及び、受光素子91または受光素子93のどちらか一つを省くことにする。このようにして、たとえば1つの波長で走査範囲全域を走査した後、波長を切り替えて他の波長で走査範囲全域を走査する。これは、ビデオレートの走査の場合、フレームごとに切り替えることに相当する。この結果として得られた真の位相θ1、θ2を基にして、上記した方法によって面外の測定レンジの拡大を行うことができる。
【0066】
この場合、2波長を同時に照射していないので、同時照射に比較して2倍程度の処理時間を要するが、光学系が簡素になる利点を有する。ただし、波長切り替えをフレームごとに行わず、1ラインあるいはドットごとに切り替え、データ処理部16で合成しても良い。
以上のように、2つの波長を同時に照射しなければ、上記と実質上同様の効果をもたらすことができることになる。
【0067】
尚、上記実施例は、瞳伝達レンズ系5を拡大レンズ系で構成した例であったが、この瞳伝達レンズ系5は通常の瞳伝達レンズ径にしても測定レンジの拡大については、同様な効果をもたらすことになる。ただし、瞳伝達レンズ系5を拡大レンズ系で構成すると、高速な処理が可能になる利点がある。また、さらに高速なデータ取得をするには、できるだけVaの大きい音響光学素子を用い、拡大倍率を適正化することにすれば良い。
【0068】
このような光学系を用いることにより、3次元計測データをビデオレート以上の高速で取得することが可能で、かつ、面外の測定レンジも拡大することができる。したがって、本実施例のレーザー走査顕微鏡装置によれば、細胞や微生物の状態変化や表面状態の過渡的な変化等を、高速に観察、計測することができる。
【0069】
さらに、製品化されている裸眼立体ディスプレイや偏光めがねを使用した3次元ディスプレイ等を用いることにより、ビデオレートの3次元立体画像を表示することもできるので、教育や研究、医療において、有用な装置とすることができる。また、2つのビームの重なりの程度をビーム径よりも小さくしてあるので、2つのビームの行路差はほとんど生じていない。したがって、外乱や振動の影響も2つのビームで、同時に生じるので、これらの影響が相殺される。
【0070】
上記実施例では、ビームの分離度を個々のビーム径よりも非常に小さくした例を示したが、変調周波数を高くすることによりビームの分離度が大きくなるような場合であって、ビーム径程度の分離度が必要となる場合にも、本発明の光学系が有用であることになる。尚、上記実施例においては、2次元走査デバイスの説明をしたが、単純な一方向だけのデータが必要なアプリケーションであれば、1次元走査デバイスに置き換えても同様な効果が得られることになる。
【0071】
これらの1次元走査デバイスとしては、ガルバノミラーやレゾナントミラー、回転ポリゴンミラー等を用いることができる。また、2次元走査デバイスとしては、上記した1次元走査デバイスをX方向用とY方向用の2つを用意し、瞳伝達レンズ系を介すことにより、実現できる。さらに、マイクロマシーンの技術を用いたマイクロミラーデバイスを用いても良い。このデバイスとしては、1次元、2次元用ともに製品化されている。
【0072】
以上において、主に高速にデータを取得する手段について述べたが、次に、横分解能を著しく増大させる手段について述べる。
【0073】
簡単のために1次元で考える。まず、表面のプロファイルd(x)の位相分布をAe
jθ(x)とおく。ここで、θ(x)=2πd(x)/λである。本実施例のように反射の場合には、光路差は2倍になるので、観測されるθ(x)の半分を高さ情報とすればよい。
さて、上記のように音響光学素子3にキャリア信号fcと変調信号fmの掛け算信号(DSB変調)を与えると、実質上、回折光は2つの僅かに分離したfc±fmの周波数を持った光となる。対物レンズ17で収束されるとΔxだけ分離した2つのビームとなり、各ビームプロファイルをu(x)とする。この場合、対物レンズ17から離れた場所では、表面プロファイルとビームプロファイルの積のフーリエ変換となる。
【0074】
本レーザー走査顕微鏡装置においては、一方の受光素子で受光されるビームは、e
j(ωc-ωm)tで変調を受けていることになり、中心距離Δxだけ離れた他方の受光素子で受光されるビームは、e
j(ωc+ωm)tで変調を受けていることになる。従って、受光素子上の複素振幅分布は、以下のようになる。
E=∫(Ae
jθ(x) u(x)e
jkxdx・e
j(ωc-ωm)t+Ae
jθ(x+Δx) u(x)e
jkxdx・e
j(ωc+ωm)t)
【0075】
これら受光素子により強度Iの検出を行うと、I=EE
*、さらに、2ωmのヘテロダイン検波を行うので、以下の(1)式のようになる。
I(k)=A
2∫e
j(θ(x)-θ(x'+Δx') u(x) u(x’) e
jk(x-x')dxdx’e
-j2ωmt
+A
2∫e
-j(θ(x)-θ(x'+Δx') u(x) u(x’) e
jk(x-x')dxdx’e
j2ωmt・・・・・(1)式
【0076】
そして、2つのビームLA、LBの重なっている照射領域A,Bのほぼ中心を
図3の境界線Cとし、この境界線Cを挟んだ位置であって、ビームLA、LBの分離方向である各々の照射領域A,Bの分離方向に沿った位置に対応して2つの受光素子を対象物Sから離して配置する。
ここでまず、2つの受光素子の和信号がどのようになるかを考える。対象物Sから離れた位置では、フーリエ変換面であると考えられるので、受光素子で受光できる最大空間周波数をKmaxとすると、和信号では強度Iが下記式から求められる。
I=∫I(k)dk(積分範囲は-KmaxからKmax)
=A
2∫cos(θ(x)−θ(x’+Δx’)−2ωmt) u(x) u(x’)sin(Kmax(x-x’))/(x-x’)dxdx’
【0077】
受光素子を近接させてより広い空間周波数まで受光するように配置すると、
sin(Kmax(x-x’))/(x-x’)=Kδ(x-x’)となるので、以下の(2)式のようになる。
I=A
2∫cos(θ(x) −θ(x+Δx) −2ωmt) u(x)
2dx・・・・・(2)式
【0078】
すなわち、2つのビームの分離位置の位相差をビームプロファイルのウェイトで積分したことになる。
(2)式を変形すると下記の式を得る。
Iq=A
2∫cos(θ(x)−θ(x+Δx) u(x)
2dx)・cos(2ωmt)
Ii=A
2∫sin(θ(x)−θ(x+Δx) u(x)
2dx)・sin(2ωmt)
【0079】
従って、直交変換により、観測される位相差Θは以下の(3)式のようになる。
Θ=tan
-1(∫sin(θ(x)−θ(x+Δx)) u(x)
2dx/∫cos(θ(x)−θ(x+Δx)) u(x)
2dx)・・・・・(3)式
【0080】
この一方、2つの受光素子の差信号を考えると、和信号の場合と同様にして下記の式が得られる。
I=∫I(k)dk(積分範囲は0からKmax)−∫I(k)dk(積分範囲は−Kmaxから0)
=A
2∫sin(θ(x)−θ(x’+Δx’)−2ωmt) u(x) u(x’)( cos(Kmax(x-x’)-1)/(x-x’)dxdx’
【0081】
受光素子を近接させたより広い空間周波数まで受光するように配置すると、
(cos(Kmax(x-x’)-1)/(x-x’)=δ’(x-x’)+1/x(δ(x)-1)となるので、下記(4)式のようになる。
I=A
2∫d/dx(sin(θ(x)―θ(x+Δx)―2ωmt) )u(x)
2dx・・・・・(4)式
さらに、この(4)式を変形すると、下記のようになる。
Iq=A
2∫d/dx(sin(θ(x)−θ(x+Δx)) u(x)
2dx・cos(2ωmt)
Ii=−A
2∫d/dx(cos(θ(x)−θ(x+Δx)) u(x)
2dx・sin(2ωmt)
【0082】
従って、直交変換により観測される位相差Θは以下の(5)式のようになる。
Θ=tan
-1(−∫d/dx(cos(θ(x)−θ(x+Δx)) u(x)
2dx/∫d/dx(sin(θ(x)−θ(x+Δx))u(x)
2dx)・・・・・(5)式
【0083】
ここで、(3)式と(5)式の比較を行う。定性的には、以下の点がわかる。
まず、(3)式では、ビームの中心距離Δxだけ離れた2点の位相差をu(x)の重み関数で、平滑化した結果として得られる位相差を示しているので、ビーム内の平均的な位相差を示している。これは、微分干渉顕微鏡と等価な処理である。
【0084】
他方、(5)式では、ビームの中心距離Δxだけ離れた2点の位相差の微分に対して、u(x)の重み関数で、平滑化しているので、おおよそ元の関数を復元していることになる。従って、ビームを走査するとビーム分離度に相当する横分解能で、位相差および位置情報を取得することが可能となる。
【0085】
ここでは、2分割の分割受光素子を適用した場合を記述したが、照射領域A,Bの重なった領域の中心付近に、2つのビームの分離方向に沿って複数の受光素子を対象物Sから離して配置した場合も同様になる。特に、差出力を得る場合には、光軸Lの中心付近に対応して配置した複数の受光素子のうちの、対応する複数の受光素子間同士で差演算するようにすれば良い。また、複数の受光素子の和出力だけを用いるのであれば、実質上1つの受光素子を用いることで、同様のことが実現できることになる。
【0086】
また、上記実施例では、2つの僅かに異なる波長(523,532nm)を用いて説明したが、相互に波長の異なる3以上のレーザー光を用いても同様なことが出来ることになる。この場合には、分離光学素子が多少複雑になり受光素子等も増えるが、たとえば使用する波長を3つにしたときであっても、3波長のうち2つを使用して位相を算出すると共に、選択する2波長の組み合わせを変えて位相を算出し、それらの平均化を行うなどすれば、測定精度の向上につながる。以下の実施例においては、この点を踏まえ、すべて2つの波長を用いた場合のみを記述する。
【0087】
以上述べたように、フーリエ変換面にて空間周波数情報を処理することにより、特に差演算では非常に高い横分解能の向上をもたらすことができる。