(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6014492
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月25日
(54)【発明の名称】車両用端子接続構造
(51)【国際特許分類】
B60R 16/02 20060101AFI20161011BHJP
B60J 1/00 20060101ALI20161011BHJP
B60J 1/20 20060101ALN20161011BHJP
B60S 1/02 20060101ALN20161011BHJP
【FI】
B60R16/02 621B
B60J1/00 B
!B60J1/20 C
!B60S1/02 B
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-284241(P2012-284241)
(22)【出願日】2012年12月27日
(65)【公開番号】特開2014-125139(P2014-125139A)
(43)【公開日】2014年7月7日
【審査請求日】2015年9月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】390026538
【氏名又は名称】ダイキョーニシカワ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山下 純一郎
【審査官】
高島 壮基
(56)【参考文献】
【文献】
実開平03−043063(JP,U)
【文献】
特開2002−170615(JP,A)
【文献】
特開2003−346937(JP,A)
【文献】
特開2005−332644(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60J 1/00
1/20
B60R 16/02
B60S 1/02
H04R 4/48
13/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電線(41)を有する窓部材(7)と、該窓部材(7)との間に空洞部(35)を有し且つ該窓部材(7)を支持する車体パネル部材(3)と、該車体パネル部材(3)の上記空洞部対応箇所に設けられた接続部材(37)とを備え、該接続部材(37)に上記導電線(41)を接触させて両者(37,41)が電気的に接続された車両用端子接続構造であって、
上記車体パネル部材(3)の上記空洞部対応箇所には、上記接続部材(37)を取り付けるための取付座(43)が設けられ、
上記接続部材(37)は、
上記取付座(43)と上記導電線(41)との間で弾性圧縮される金属製の板バネからなり、
上記取付座(43)に取り付けられるパネル側弾性部(37a)と、
当該接続部材(37)の反発力によって上記導電線(41)に押し付けられる端子部(49)が設けられた窓側弾性部(37b)と、
上記パネル側弾性部(37a)と上記窓側弾性部(37b)との間に設けられ、上記窓側弾性部(37b)が所定の量以上に撓んだときに上記窓部材(7)に当接して該窓側弾性部(37b)の撓み量を規制し、上記窓部材(7)に当接した状態で当該接続部材(37)の圧縮方向に作用する押圧力を上記パネル側弾性部(37a)に及ぼす当接部(51)とを有し、
上記パネル側弾性部(37a)は、上記取付座(43)と上記窓部材(7)との間で上記当接部(51)を介して作用する押圧力により圧縮されて撓み、上記窓側弾性部(37b)に発生する反発力以上の反発力で上記当接部(51)及び上記端子部(49)を上記窓部材(7)に向かって付勢する
ことを特徴とする車両用端子接続構造。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用端子接続構造において、
上記取付座(43)は、上記パネル側弾性部(37a)が設置される設置面(43b)と、該設置面(43b)に突設された略L字状の突部(43c)とを有し、
上記突部(43c)は、上記設置面(43b)に対し上記窓部材(7)側に間隔をあけて対向する部分を有し、
上記パネル側弾性部(37a)は、上記当接部(51)を介して押圧力が作用していない状態で、上記設置面(43b)と上記突部(43c)のうち該設置面(43b)に対向する部分との間に圧縮された状態で挟まれる構成となっている
ことを特徴とする車両用端子接続構造。
【請求項3】
請求項2に記載の車両用端子接続構造において、
上記設置面(43b)の上記突部(43c)突出箇所と反対側には、上記パネル側弾性部(37a)の上記設置面(43b)からの離脱を規制する規制部(43d)が設けられている
ことを特徴とする車両用端子接続構造。
【請求項4】
請求項3に記載の車両用端子接続構造において、
上記パネル側弾性部(37a)のうち上記突部(43c)とは反対側に位置する部分は、当該パネル側弾性部(37a)の幅方向における両側に、切欠状のストッパ係止部(37c)をそれぞれ有し、
上記規制部(43d)は、上記設置面(43b)に互いに間隔をあけて一対に設けられ、各々上記ストッパ係止部(37c)に嵌合されることにより、上記パネル側弾性部(37a)のうち上記ストッパ係止部(37c)の間の部分を挟んだ状態で上記パネル側弾性部(37a)の上記設置面(43d)に平行な方向への移動を規制する
ことを特徴とする車両用端子接続構造。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の車両用端子接続構造において、
上記窓側弾性部(37b)の幅は、上記パネル側弾性部(37a)の幅よりも狭い
ことを特徴とする車両用端子接続構造。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の車両用端子接続構造において、
上記パネル側弾性部(37a)及び上記窓側弾性部(37b)は、互いに反対方向に膨出した湾曲部で構成されている
ことを特徴とする車両用端子接続構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に設置された曇り防止用熱線やアンテナ等の導電線の端子接続構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車両用端子接続構造の一例が開示されている。この構造では、車両用バックドアの車体パネル部材に設けられた配線と窓ガラスに設けられた導電線とを備え、配線が断面コ字状のクリップ(接続部材)を有し、このクリップに可撓性を有する端子が突設されている。端子は、クリップがアウタパネルに形成された開口部の縁部を挟んだ状態で窓ガラス側に突出していて、窓ガラスがアウタパネル側に押し付けられてアウタパネルに接着されている。この状態で、端子が撓み、その反発力で窓ガラス側に押し付けられて導電線に圧接し、配線と導電線とがクリップ(接続部材)を介して電気的に接続している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−247732号公報(段落0023欄、段落0024欄、
図2〜
図4)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1の車両用端子接続構造では、端子がクリップによって一定の力で窓ガラス側に押し付けられているが、窓ガラスをアウタパネルに接着する接着剤の厚みにバラツキがあるため、端子と導電線との接触強度にバラツキが生じるという問題がある。また、バックドアに振動や衝撃が加わる場合にもクリップの圧縮代が変化して端子と導電線との接触強度が変化し、導電線の摩耗等が生じるという問題がある。
【0005】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、車体パネル部材に設置された接続部材の端子を窓部材に設置された導電線に常時一定の強さで接触させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明は、接続部材の構造を工夫したものである。
【0007】
具体的には、本発明は、導電線を有する窓部材と、該窓部材との間に空洞部を有するように該窓部材を支持する車体パネル部材と、該車体パネル部材の上記空洞部対応箇所に設けられた接続部材とを備え、該接続部材に上記導電線を接触させて該導電線と該接続部材とが電気的に接続された車両用端子接続構造を対象とし、次のような解決手段を講じた
ものである。
【0008】
第1の発明は、上記車体パネル部材の上記空洞部対応箇所
に、上記接続部材を取り付けるための取付座が設けられ
た構成を有する。上記接続部材は、
上記取付座と上記導電線との間で弾性圧縮される金属製の板バネからなり、上記取付座に取り付けられるパネル側弾性部
と、当該接続部材の反発力によって上記導電線に押し付けられる端子部が設けられた窓側弾性部と
、上記パネル側弾性部と上記窓側弾性部との間に設けられ、
上記窓側弾性部が所定の量以上に撓んだときに上記窓部材に当接して該窓側弾性部の撓み量を規制
し、上記窓部材に当接した状態で当該接続部材の圧縮方向に作用する押圧力を上記パネル側弾性部に及ぼす当接部とを有
する。そして、第1の発明は、上記パネル側弾性部
が、上記取付座と上記窓部材との間で
上記当接部を介して作用する押圧力により圧縮されて撓み、上記窓側弾性部
に発生する反発力以上の反発力で上記当接部及び上記端子部を上記窓部材に向かって付勢することを特徴とする。
【0009】
第2の発明は、上記第1の発明
の車両端子接続構造において、上記取付座
が、上記パネル側弾性部が設置される設置面と、該設置面に上記窓部材側に間隔をあけて突設され
た略L字状の突部とを有
する構成となっている。上記突部は、上記設置面に対し上記窓部材側に間隔をあけて対向する部分を有する。そして、第2の発明は、上記パネル側弾性部
が、上記当接部を介して押圧力が作用していない状態で、上記設置面と上記突部
のうち該設置面に対向する部分との間に圧縮された状態で挟まれ
る構成となっていることを特徴とする。
【0010】
第3の発明は、上記第2の発明
の車両端子接続構造において、上記設置面の上記突部突出箇所と反対側
に、上記パネル側弾性部の上記設置面からの離脱を規制する規制部が設けられていることを特徴とする。
【0011】
第4の発明は、上記第3の発明の車両用端子接続構造において、上記パネル側弾性部のうち上記突部とは反対側に位置する部分が、当該パネル側弾性部の幅方向における両側に、切欠状のストッパ係止部をそれぞれ有する構成となっています。そして、第4の発明は、上記規制部が、上記設置面に互いに間隔をあけて一対に設けられ、各々上記ストッパ係止部に嵌合されることにより、上記パネル側弾性部のうち上記ストッパ係止部の間の部分を挟んだ状態で上記パネル側弾性部の上記設置面に平行な方向への移動を規制することを特徴とする。
【0012】
第5の発明は、上記第1〜第4の発明のいずれか1つの車両用端子接続構造において、上記窓側弾性部の幅が、上記パネル側弾性部の幅よりも狭いことを特徴とする。
【0013】
第6の発明は、上記第1〜第5の発明のいずれか1つの車両用端子接続構造において、上記パネル側弾性部及び上記窓側弾性部が、互いに反対方向に膨出した湾曲部で構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
第1の発明によれば、窓部材を車体パネル部材に組み付ける際、先ず、窓部材が端子部に当接する。次に、パネル側弾性部が窓側弾性部よりも反発力が大きいため、パネル側弾性部が撓むことなく窓側弾性部が撓み始める。窓部材がさらに車体パネル部材側に押し付けられて窓部材が当接部に当接すると、窓側弾性部の撓み量が規制され、続いて、窓部材を押し付ける押付力が当接部を介してパネル側弾性部に作用し、パネル側弾性部が撓み始める。窓部材をさらに押し付けると、パネル側弾性部が撓み、最後に窓部材が車体パネル部材に当接し、両部材が組みつけられる。このように組み付けられた状態で、窓部材及び車体パネル部材間の距離にバラツキがあっても、窓側弾性部が当接部によって撓み量を規制された状態でパネル側弾性部によって窓部材側に押し付けられるので、端子部を適正な押付力で導電線に押し付ける状態を維持することができる。また、車両に衝撃が加わって窓部材及び車体パネル部材の間の距離が変化しても、パネル側弾性部がその変化に追随するように窓側弾性部を窓部材側に押し付けるので、端子部を適正な押付力で導電線に圧接させる状態を維持することができる。このように、接続部材の端子部を窓部材の導電線に常時一定の接触強度で接触させることができる。
【0015】
第2の発明によれば、パネル側弾性部を突部の先端と取付座の設置面との間に押し込むことで接続部材を取付座に取り付けることができる。したがって、組み付け性が良い。
【0016】
第3の発明によれば、パネル側弾性部が取付座の設置面上に設けられた突部と規制部とによって挟まれているので、パネル側弾性部が設置面から離脱するのを規制することができる。そのため、端子部と導電線との接触状態を安定して維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】実施形態に係る車両用端子接続構造を適用した車両用バックドアの全体斜視図である。
【
図2】実施形態に係る車両用端子接続構造を適用した車両用バックドアの分解斜視図である。
【
図3】
図2のA部を後方から見た拡大平面図である。
【
図5】リヤガラスをインナパネル部材及びアウタパネル部材に接着する途中における
図4相当図である。
【
図6】リヤガラスをインナパネル部材及びアウタパネル部材に接着した状態における
図4相当図である。
【
図7】リヤガラスをインナパネル部材及びアウタパネル部材に接着した状態における
図3のC−C線矢視断面相当図である。
【
図8】接続部材を取付座に取り付ける前の
図2のD部拡大斜視相当図である。
【
図10】実施形態の変形例に車両用端子接続構造を適用した車両用バックドアの
図9相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0019】
図1は本実施形態に係る車両用端子接続構造をリヤガラスに設けられる電熱線に適用した車両用バックドア(以下、バックドアという)1を示す。このバックドア1は、ハッチバック車の車体(図示せず)後端のバックドア開口部(図示せず)を上下方向に開閉する。上記車体の上記バックドア開口部の左右両側下半部に対応する位置にはウィンカ(図示せず)が設けられていて、このウィンカを車体後方に露出させるために、上記バックドア1の下半部分は下方に行くに従って左右幅が狭くなっている。
【0020】
図2は上記バックドア1の分解斜視図である。該バックドア1は、略矩形状の樹脂製インナパネル部材(車体パネル部材)3と、該インナパネル部材3に車外側から組み付けられるアウタパネル部材5と、窓部材としてのリヤガラス7とからなる。なお、窓部材は樹脂製であってもよい。
【0021】
上記インナパネル部材3は、PP−GF(Polypropylene Glass Fiber)、PP−CF
(Polypropylene Carbon Fiber)等の繊維補強材を含有する熱可塑性樹脂からなる。該インナパネル部材3は、一枚物であり、上半部分が台形状をなし、下半部分が下方に行くに従って左右幅が狭くなっている本体部8を有し、該本体部8の外周縁全体には、環状の外側立ち壁9が上記アウタパネル部材5側に立ち上がるように突設され、該外側立ち壁9の突出端全体には、接合用の外側フランジ11が外側に張り出すように設けられている。上記インナパネル部材3の上半部分には、左右に延びる窓用開口部13が形成され、該窓用開口部13上方には、一対のヒンジ取付部15,15が左右に間隔をあけて設けられている。上記窓用開口部13の内周縁全体には、環状の内側立ち壁17が上記アウタパネル部材5側に立ち上がるように突設され、該内側立ち壁17の突出端全体には、接合用の内側フランジ19が上記窓用開口部13内側に張り出すように設けられている。上記内側立ち壁17下縁と上記外側立ち壁9下縁との間の左右方向中央部には、ナンバープレート(図示せず)照明用のライト(図示せず)が取り付けられるライト取付部21が形成され、その下端、すなわち外側立ち壁9下縁の左右方向中央には、上記車体に固定されたストライカ(図示せず)に係合・離脱するロック装置(図示せず)が取り付けられるロック装置取付部23が形成されている。
【0022】
上記アウタパネル部材5は、樹脂製アウタアッパ部材29と、樹脂製アウタロア部材31とに分割され、両分割部材は、タルク入りPP(Polypropylene)等の熱可塑性樹脂か
らなる。
【0023】
上記アウタアッパ部材29は、左右に細長い略矩形板状をなし、下端縁部全体に車体前方に凹む段差が形成されている。該アウタアッパ部材29の外周縁部は、上記インナパネル部材3の上記窓用開口部13上側で該窓用開口部13上端縁部及び該インナパネル部材3外周縁部に接着されている。
【0024】
上記アウタロア部材31は、下方に行くに従って左右幅が狭くなる略矩形板状をなし、上端縁部全体に車体前方に凹む段差が形成されている。該アウタロア部材31の外周縁部は、上記インナパネル部材3の上記窓用開口部13下側で該窓用開口部13下端縁部及び該インナパネル部材3外周縁部に接着されている。上記アウタロア部材31の中央部には、ナンバープレート取付部31aが形成されている。
【0025】
上記リヤガラス7は、矩形板状をなし、上記窓用開口部13に対応する領域が透明であって、その外側領域が黒色のセラミクス7aによって隠蔽されている。該リヤガラス7は、上記アウタアッパ部材29及び上記アウタロア部材31が上記インナパネル部材3に接着された状態で、該アウタアッパ部材29下端の上記段差と該アウタロア部材31上端の上記段差との間に嵌め込まれ、上記インナパネル部材3の上記外側フランジ11及び内側フランジ19に接着剤33を介して接着されている。これにより、上記リヤガラス7は、両パネル部材3,5によって支持されている。この支持された状態で、上記窓用開口部13の車幅方向両側には、上記インナパネル部材3の上記本体部8、上記外側立ち壁9及び上記内側立ち壁17と、リヤガラス7との間に空洞部35が形成される(
図3、
図6、
図7参照)。
【0026】
上記本体部8の上記窓用開口部13車幅方向両側、すなわち上記インナパネル部材3の上記空洞部35対応箇所には、ハーネス45によって図示しない電源に繋がる接続部材37が設置されている。一方、上記リヤガラス7の透明領域には、車幅方向に延びる複数の熱線39が上下に等間隔に塗布され、これら熱線39に接続して該熱線39に電流を流す導電線41が透明領域の車幅方向両側の隠蔽領域に設置されている。そうして、上記接続部材37に上記導電線41を接触させて両者が電気的に接続され、該導電線41に電流が供給されている。なお、上記熱線39及び上記導電線41は、銀粉末を主成分とし、かつバインダとして熱硬化性樹脂を含むペーストからなる。
【0027】
次に、上記導電線41と上記接続部材37との接続構造について
図3〜
図9を参照して説明する。
図3はインナパネル部材3にリヤガラス7を組み付ける前の状態である
図2のA部を後方から見た拡大平面図、
図4は
図3のB−B線矢視断面図、
図5はリヤガラス7をインナパネル部材3及びアウタパネル部材5に接着して組み付ける途中における
図4相当図、
図6はリヤガラス7をインナパネル部材3及びアウタパネル部材5に接着して組み付けた状態における
図4相当図、
図7はリヤガラス7をインナパネル部材3及びアウタパネル部材5に接着して組み付けた状態における
図3のC−C線矢視断面相当図、
図8は接続部材37を後述する取付座43に取り付ける前の
図2のD部拡大斜視図、
図9は
図2のD部拡大斜視図である。なお、
図3では、上記導電線41を仮想線で示している。
【0028】
上記インナパネル部材3の上記空洞部35対応箇所には、上記接続部材37を取り付けるための取付座43が上記リヤガラス7側に突設されている。該取付座43は、門型の取付座本体43aと、該取付座本体43aの上記リヤガラス7側の面(以降、設置面という)43bに上記リヤガラス7側に間隔をあけて突設され、該設置面43bに対向するように延びる略L字状の突部43cとを有し、該設置面43bの該突部43c突出箇所と反対側には、一対のストッパ(規制部)43d,43dが車幅方向に間隔をあけて上記リヤガラス7側に突設されている。
【0029】
上記接続部材37は、矩形板状の金属製板バネを曲げ加工してS字状にしたものであって、上記本体部8側の湾曲部が上記電源に繋がるハーネス45に接続されると共に上記取付座本体43aに設置されるパネル側弾性部37aを構成する一方、該パネル側弾性部37aに連続して上記リヤガラス7側に延びる湾曲部がガラス側弾性部37bを構成している。
【0030】
上記パネル側弾性部37aは、
図6に示すように、上記取付座本体43aの設置面43bと上記突部43cとの間において、該設置面43bに沿って該突部43c側に一旦延びて折り返した後、該突部43c突出箇所の反対側に延びている。該パネル側弾性部37aの上記ハーネス45との接続部幅方向両端には、上記ストッパ43d,43dに係止する矩形切欠状のストッパ係止部37c,37cが形成されている。該パネル側弾性部37aは、上記リヤガラス7が上記インナパネル部材3及び上記アウタパネル部材5に接着されていない状態で、上記取付座43の設置面43bと上記突部43cとの間に圧縮された状態で挟まれ、かつ上記ストッパ係止部37c,37cが上記ストッパ43d,43dに係止している。このようにして上記接続部材37が上記取付座43に取り付けられる(
図4、
図8及び
図9参照)。したがって、上記パネル側弾性部37aを該取付座43の上記設置面43bと上記突部43c先端との間に押し込んで、上記ストッパ係止部37c,37cを上記ストッパ43d,43dに係止させるという比較的簡単な作業で上記接続部材37を上記取付座43に取り付けることができる。よって、組み付け性が良い。また、上記ストッパ係止部37c,37cが上記取付座43の上記ストッパ43d,43dに係止し、該ストッパ43d,43dが該パネル側弾性部37aが上記突部43c突出箇所とは反対側に離脱するのを規制している。これにより、上記パネル側弾性部37aが上記突部43cと上記一対のストッパ43d,43dとによって両側から挟まれているので、該パネル側弾性部37aが上記設置面43bから脱離するのを防止することができる。したがって、上記接続部材37が上記取付座43に保持される。
【0031】
上記ガラス側弾性部37bは、該パネル側弾性部37a先端から上記突部43c突出端を回って上記突部43c突出箇所側に折り返しており、上記パネル側弾性部37aより弾性反発力が小さくなるように、該パネル側弾性部37aより幅が狭く設けられている。また、上記ガラス側弾性部37b先端の上記リヤガラス7側の面には、該リヤガラス7の上記導電線41に接触する端子部49が突設されている。さらに、上記板バネ47の上記ガラス側弾性部37bと上記パネル側弾性部37aとの間には、幅方向両端から上記リヤガラス7側に立ち上がって先端が車幅方向外側に延びる当接部51が設けられている。そして、上記ガラス側弾性部37bが該リヤガラス7及び上記取付座43によって圧縮されて撓み、その反発力が先端の上記端子部49に作用して、該端子部49が上記リヤガラス7の上記導電線41に接触している。また、上記当接部51先端が上記リヤガラス7に当接して上記ガラス側弾性部37bの撓み量を規制している。さらに、上記パネル側弾性部37aが上記取付座43と上記リヤガラス7との間で圧縮されて撓むものの、該パネル側弾性部37aは、上記ガラス側弾性部37bの発生する反発力以上の反発力で上記当接部51及び上記端子部49を上記リヤガラス7に向かって付勢している。
【0032】
つづいて、接続部材37が取付座43に取り付けられた状態で、リヤガラス7をインナパネル部材3に接着させる際の接続部材37の挙動について
図4〜
図6を参照して説明する。端子部49は、ガラス側弾性部37bが自由状態であるため、リヤガラス7側に突出している(
図4参照)。この状態からリヤガラス7をインナパネル部材3側に押し付けると、先ず、リヤガラス7が端子部49に当接する。次に、パネル側弾性部37aがガラス側弾性部37bよりも反発力が大きいため、パネル側弾性部37aが撓むことなくガラス側弾性部37bが撓み始める。リヤガラス7がさらにインナパネル部材3側に押し付けられてリヤガラス7が当接部51,51に当接すると、ガラス側弾性部37bの撓み量が規制され、続いて、リヤガラス7を押し付ける押付力が当接部51,51を介してパネル側弾性部37aに作用し、パネル側弾性部37aが撓み始める。リヤガラス7をさらに押し付けると、パネル側弾性部37aが撓み、最後にリヤガラス7がインナパネル部材3に当接し、リヤガラス7がインナパネル部材3に接着される。
【0033】
このように組み付けられた状態で、リヤガラス7及びインナパネル部材3間の距離にバラツキがあっても、ガラス側弾性部37bが当接部51,51によって撓み量を規制された状態でパネル側弾性部37aによってリヤガラス7側に押し付けられるので、端子部49を適正な押付力で導電線41に押し付けることができる。また、車両に衝撃が加わってリヤガラス7及びインナパネル部材3の間の距離が変化しても、パネル側弾性部37aがその変化に追随するようにガラス側弾性部37bをリヤガラス7側に押し付けるので、端子部49を適正な押付力で導電線41に圧接させる状態を維持することができる。このように、端子部49を導電線41に常時一定の接触強度で接触させることができる。
【0034】
また、上記のように、接続部材37が取付座43に保持されているので、端子部49と導電線41との接触状態を安定して維持することができる。
【0035】
《実施形態の変形例》
上記実施形態では、上記取付座43が門型の取付座本体43aを有しているが、取付座43の構造はこれに限定されない。
図10は、本変形例に係る取付座を示す
図9相当図である。本変形例に係る取付座44は、上記板バネ47を固定するためのボス部44aを有し、該ボス部44aから車幅方向両側に一対の略矩形状のリブ44b,44bが張り出し、さらに、該ボス部44aから該リブ44b,44bと直交する方向に矩形状のリブ44cが張り出している。上記各リブ44b,44bは、上記ボス部44aよりも高く形成されているものの、該ボス部44a近傍には、矩形状の切欠部44dが形成されている。一方、上記リブ44cは、上記ボス部44aと同一高さに形成されている。そして、上記板バネ47は、上記一対のリブ44b,44bの切欠部44d,44dに対応する部位及び上記リブ44c上に設置され、ネジSによって固定されている。そうして、該板バネ47は、切欠部44d,44dの内周縁に当接することによって上記ボス部44aの軸周りに回転するのを規制される。これにより、上記板バネ47の配置が安定し、該板バネ47の先端に設けられた上記端子部49を上記導電線41に安定して接触させることができる。
【0036】
なお、上記実施形態では、本発明に係る車両用端子接続構造をバックドア1のリヤガラス7に設けられる電熱線に適用した形態について説明したが、適用対象は電熱線に限定されずアンテナでもよく、電気的な接続を要するものであれば全てに適用することができる。また、適用箇所はバックドア1に限定されない。
【産業上の利用可能性】
【0037】
以上説明したように、本発明に係る車両用端子接続構造は、接続部材の端子を導電線に常時一定の強さで接触させる用途等に適用することができる。
【符号の説明】
【0038】
3 インナパネル部材(車体パネル部材)
7 リヤガラス(窓部材)
35 空洞部
37 接続部材
41 導電線
43 取付座
43b 設置面
43c 突部
43d ストッパ(規制部)
47 板バネ
37a パネル側弾性部
37b ガラス側弾性部(窓側弾性部)
49 端子部
51 当接部