(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
近年、電力を動力原として駆動する機器として、例えば、電気自動車やハイブリッドカーといった車両が知られている。
【0003】
この種の車両には、モータを駆動等するための大容量のバッテリ(二次電池)及びこれに接続される電気回路(以下、「高電圧回路」と称す)が収納されたバッテリパックが搭載されるのが一般的である。
【0004】
このような車両において、バッテリや高電圧回路のメンテナンス作業(点検整備)は、バッテリパックのカバー部材を取り外した状態で行われるが、バッテリから電気回路に出力される電力は高電圧であるため、感電を防止する観点から、カバー部材を取り外す前に、バッテリから供給される出力電圧を完全に遮断する必要がある。
【0005】
そこで、上記バッテリから供給される出力電圧を遮断する技術として、例えば、高電圧回路にサービスプラグ(コネクタ)を設けたものが広く知られている(特許文献1参照)。
【0006】
このような技術によれば、バッテリ等のメンテナンス作業を行う際、サービスプラグ(コネクタ)を取り外せば、バッテリと高電圧回路とが電気的に切り離されるため、カバー部材を取り外した、その後の作業(メンテナンス作業)を安全に行うことが可能となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述したように、バッテリや高電圧回路のメンテナンス作業を安全に行うためには、サービスプラグの取り外しは必須である。しかしながら、特許文献1に記載の車両では、サービスプラグの取り外し以外の措置について何ら考慮されていないため、サービスプラグの取り外しを行わないまま、誤って、カバー部材の取り外しを行う可能性がある。
【0009】
本発明は、上記不都合を解消するためになされたものであり、その目的は、バッテリや高電圧回路のメンテナンス作業をより安全に行うことが可能なバッテリパックを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題は本発明に係るバッテリパックによれば、バッテリ及び該バッテリに接続された電気回路を支持する
面を有する略板状の基台と、前記基台に対して着脱自在に設けられ、前記基台に取り付けられた状態で該基台を覆うカバー部材と、前記基台
の前記面に設けられ、前記カバー部材に形成された開口部を介してサービスプラグが接続されたときに前記電気回路への電力の供給を行うとともに、前記サービスプラグとの接続が解除されたされたときに前記電気回路への電力の停止を行うことが可能なサービスプラグ接続部とを備えたバッテリパックであって、前記カバー部材は、
前記開口部が、前記カバー部材が前記基台に取り付けられた状態で前記サービスプラグ接続部が挿抜可能な位置に形成され、前記サービスプラグが前記開口部を介して前記サービスプラグ接続部と接続された状態で、前記サービスプラグの所定方向側の側面と当接又は近接する接部を有し、前記
基台の前記面に平行な方向で且つ前記所定方向と反対方向へ移動させることによって前記基台からの取り外しを行うことが可能なように構成されていることにより解決される。
【0011】
上記構成では、サービスプラグが、カバー部材に形成された開口部を介してサービスプラグ接続部に接続されている状態では、カバー部材に設けられた接部がサービスプラグの所定方向側と当接等するため、カバー部材を当該所定方向とは反対方向へ移動させることができないように構成されている。また、このカバー部材は、サービスプラグの挿入方向と直交する直交方向で且つ上記反対方向へ移動させたときにのみ基台から取り外すことができるように構成されている。
【0012】
すなわち、このように構成されたバッテリパックによれば、カバー部材は、サービスプラグがサービスプラグ接続部に接続されている場合、基台から取り外すことができず、サービスプラグがカバー部材に形成された開口部から引き抜かれたときにはじめて、基台から取り外すことが可能なように構成されている。
【0013】
このように、上記構成では、サービスプラグを取り外さないまま、カバー部材を取り外してメンテナンス作業を行うといった事態を確実に防止することが可能である。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、本発明に係るバッテリパックによれば、簡単な構成で、バッテリ等のメンテナンス作業を安全に行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を、図面に基づいて説明する。
図1は本発明の実施の一形態に係る車両の後方側に配置されたバッテリパックの斜視図、
図2はバッテリパックの分解斜視図、
図3は基台及びカバー部材が組み付けられた状態におけるバッテリパックの要部拡大斜視図、
図4はサービスプラグが接続された状態におけるバッテリパックの要部拡大断面図である。なお図中FRは車両後方を、UPは車両上方をそれぞれ示している。また、以下の説明における左右方向は、車両前方を向いた状態での左右方向を意味する。
【0017】
図1に示すように、本実施形態に係る車両1は、エンジンとモータとの両方で走行することが可能なハイブリッドカー又はモータのみで走行する電気自動車であり、車両後方側にバッテリパック10が取り付けられている。
【0018】
車両1は、車幅方向両側のそれぞれに配置され、車両前後方向に延設される一対のリアサイドフレーム2,2と、リアサイドフレーム2,2に車両前後方向に所定間隔をあけて架設される一対のクロスメンバ3,3とを備えている。
【0019】
図1及び
図2に示すように、バッテリパック10は、基台11と、この基台11に対して着脱可能なカバー部材21とを備えている。カバー部材21は、基台11に取り付けられた状態で、基台11を上方から覆うように構成されている。なお、上記基台11と、カバー部材21とが、それぞれ、特許請求の範囲に記載の「基台」と、「カバー部材」とに該当する。
【0020】
基台11は、略板状に形成され、車両前後方向の両端部にそれぞれ、クロスメンバ3取付用のボルト50を挿通することが可能な複数(本実施形態では車両前後方向両端部のそれぞれに2個ずつ)のボルト挿通孔11aと、カバー部材21取付用のボルト51を挿通することが可能な複数(本実施形態では車両前後方向両端部のそれぞれに2個ずつ)のボルト挿通孔11bとが形成されている。
【0021】
基台11は、ボルト挿通孔11aにボルト50を挿通して締め込むことにより、クロスメンバ3に固定することが可能となっている。
【0022】
この基台11には、その所定位置に、複数のバッテリモジュールが直列接続されたバッテリ16と、このバッテリ16に電気的に接続される高電圧回路17とが取り付けられている。
【0023】
高電圧回路17は、サービスプラグ31(
図4参照)を接続することが可能なサービスプラグ接続部17aや、リレースイッチ(図示省略)等の電気装置を含み、これら電気装置はハーネス等のケーブルを介してバッテリ16と電気的に接続されている。なお、上記サービスプラグ31とサービスプラグ接続部17aとが、それぞれ、特許請求の範囲に記載の「サービスプラグ」と、「サービスプラグ接続部」とに該当する。
【0024】
また、基台11の車幅方向両端部の所定位置には、それぞれ、後述する、カバー部材21の切欠き部28,28に挿通させることが可能なカバー部材取付用軸部12,12が取り付けられている。
【0025】
カバー部材取付用軸部12は、略棒形状を有し、基台11に固定される固定部材13に取り付けられている。カバー部材取付用軸部12,12は、固定部材13,13を介して基台11に取り付けられた状態で、上方から視て、基台11の車幅方向両端部からそれぞれ車幅方向外側へ向けて突出するように配置される。
【0026】
カバー部材21は、カバー部材本体部22と、フランジ部23とを備え、これらは一体的に形成されている。このカバー部材21は、例えば、絶縁性を有する部材(例えば、樹脂)等により形成されている。
【0027】
カバー部材本体部22は、中空直方体状を有し、基台11に取り付けられた状態で、車両上方側に位置する板状の上板部22aと、上板部22aの車幅方向両端部からそれぞれ屈曲し下方へ延びる一対の車幅方向側壁部22b,22bと、上板部22aの車両前後方向両端部からそれぞれ屈曲し、下方へ延びる一対の車両前後方向側壁部22c,22cとを備えている。
【0028】
上板部22aの所定位置には、サービスプラグ31を挿通することが可能な略矩形状の開口部24が形成されている。サービスプラグ31は、カバー部材21が基台11に取り付けられた状態で、開口部24を介して、基台11に取り付けられたサービスプラグ接続部17aと接続することが可能となっている(
図4参照)。なお、上記開口部24が特許請求の範囲に記載の「開口部」に該当する。
【0029】
サービスプラグ31は、サービスプラグ接続部17aに接続されると、バッテリ16に直列的に接続され、これにより、バッテリ16から高電圧回路17に電力を供給することが可能となる。換言すれば、サービスプラグ31が、サービスプラグ接続部17aから取り外された状態では、バッテリ16から高電圧の電力が高電圧回路17に供給されることがないため、基台11からカバー部材21から取り外して、バッテリ16や高電圧回路17のメンテナンス作業を安全に行うことが可能となる。
【0030】
図2及び
図4に示すように、開口部24の開口周縁部には、その車両後方側に、車両前方側で且つ下方へ向けて延設される略板状のストッパ片25が設けられている。このストッパ片25は、開口部24の開口周縁部に一体的に成形されている。なお、ストッパ片25と開口部24の開口周縁部とを一体的に成形する場合に限られず、ストッパ片が形成された部材(別部材)を、開口部24の開口周縁部に、ボルト等により取り付けることも可能である。なお、上記ストッパ片25が特許請求の範囲に記載の「接部」に該当する。
【0031】
ストッパ片25の下端部25aは、サービスプラグ31が開口部24を介してサービスプラグ接続部17aと接続された状態で、サービスプラグ31の車両後方側の外周面から近接する位置(距離L1離れた位置)に配置されるようになっている。
【0032】
車幅方向側壁部22bには、基台11に取り付けられたカバー部材取付用軸部12を挿通することが可能な切欠き部28が形成されている。
切欠き部28は、車幅方向側壁部の12bの端部から上方へ向かって開口する長穴状の第1孔部28aと、第1孔部28aの上側部から連続し、車両前方へ向かって延びる長穴状の第2孔部28bとを有している。
【0033】
図2に示すように、フランジ部23,23は、略板状に形成され、車両前後方向側壁部22c,22cの下端部の所定位置から、それぞれ、車両前後方向に相反する方向に延びている。このフランジ部23には、その所定位置に、基台11取付用のボルト51を挿通することが可能なボルト挿通孔23aが複数(本実施形態ではそれぞれ2個)形成されている。
【0034】
このように形成されたカバー部材21の基台11への取り付けは、(1)まず、基台11のカバー部材取付用軸部12,12が、第1孔部28a,28aのそれぞれに挿入されるように、カバー部材21を下方へ向けて移動させる。(2)次に、カバー部材21を車両後方側へスライド移動させて、カバー部材取付用軸部12,12を、第2孔部28b,28bの車両前方側に位置させる。(3)その後、フランジ部23のボルト挿通孔23aと、基台11のボルト挿通孔11bとにボルト51を挿通して締め込む。これにより、カバー部材21は、基台11に対して固定される。この状態では、基台11に取り付けられたバッテリ16や高電圧回路17が、カバー部材21によって上方から覆われることとなる。
【0035】
一方、カバー部材21の基台11からの取り外しは、上記取り付け手順とは逆の手順、すなわち、(1)フランジ部23のボルト挿通孔23aと、基台11のボルト挿通孔11bとに挿通されたボルト51を取り外した後、(2)カバー部材取付用軸部12,12が第1孔部28a,28aの上側部に位置するまでカバー部材21を車両前方側へスライド移動させ、(3)その後、カバー部材21を上方へ向けて移動させることによって行われる。
【0036】
ここで、サービスプラグ31は、上述したように、カバー部材21が基台11に取り付けられた状態で、カバー部材21の開口部24を介して、サービスプラグ接続部17aに接続されるようになっている。
【0037】
ここで、本実施形態では、
図3に示すように、カバー部材21が基台11に取り付けられた状態で、カバー部材取付用軸部12の車両前方側の外周面が、第1孔部28aの車両前方側から距離L2分、離れた位置に配置されるようにしている。
この距離L2は、サービスプラグ31の車両後方側の周面からストッパ片25の下端部25aからの距離L1(
図4参照)よりも大きくなるように設定されている。
【0038】
このため、本実施形態では、基台11にカバー部材21が取り付けられ、且つ、サービスプラグ31がサービスプラグ接続部17aに接続された状態で、カバー部材21を、車両前方側へ移動させようとしても、カバー部材取付軸部18が第1孔部28aに達する前に、カバー部材21のストッパ片25がサービスプラグ31に当接するように構成されている。
【0039】
すなわち、本実施形態では、サービスプラグ31がサービスプラグ接続部17aに接続された状態で、カバー部材21を基台11から取り外そうとして車両前方側へ移動させても、カバー部材21のストッパ片25とサービスプラグ31との当接によって、それ以上のカバー部材21の移動が規制され、基台11からカバー部材21を取り外すことができないように構成されている。
【0040】
このように、本実施形態では、サービスプラグ31がカバー部材21に形成された開口部24を介してサービスプラグ接続部17aに接続されている状態では、カバー部材21のストッパ片25がサービスプラグ31の車両後方側の外周面と近接する位置に配置されるため、カバー部材21を車両前方側へ所定距離(距離L1分)移動させた場合、ストッパ片25とサービスプラグ31とが当接し、それ以上、カバー部材21が車両前方側へ移動することができないように構成されている。また、このカバー部材21は、車両前方側へ所定距離(上記距離L2よりも大きな距離L2分)スライド移動させたときにのみ基台11から取り外すことができるように構成されている。
【0041】
すなわち、このように構成されたバッテリパック10によれば、カバー部材21は、サービスプラグ31がサービスプラグ接続部17aに接続されている場合、基台11から取り外すことができず、サービスプラグ31がカバー部材21に形成された開口部24から引き抜かれたときにはじめて、基台11から取り外すことが可能なように構成されている。
【0042】
このように、上記本実施形態では、サービスプラグ31の取り外しを行わないまま、カバー部材21を取り外して、メンテナンス作業を行うといった事態を防止することが可能である。
【0043】
また、本実施形態では、ストッパ片25が、開口部24の開口周縁部に形成されているため、その加工が容易である。
【0044】
なお、上述した実施形態では、上述したように、基台11に、カバー部材取付用軸部12を設けるとともに、カバー部材21に、カバー部材取付用軸部12を挿通することが可能な切欠き部28を形成したが、これに限られず、例えば、カバー部材及び基台を、
図5のように構成することも可能である。
【0045】
具体的に、基台11´には、上述したカバー部材取付用軸部12に代えて、当該基台11´の所定位置に固定される板状の支持部材61と、支持部材61の上面から突設し先端部が車両前方側に指向する断面略L字状の鉤状部材62とを設ける。
【0046】
一方、カバー部材21´には、上述した切欠き部28に代えて、その開口部24´の開口周縁部に、断面U字状の移動規制片71をその開口方向が車幅方向右側となるように取り付ける。なお、
図5に示すように、この移動規制片71は、(上述したストッパ片25と同様の)ストッパ片25´を有する取付部材72に一体的に設けることも可能である。
【0047】
このように構成された、カバー部材21´の基台11´への取り付けは、(1)まず、カバー部材21´の移動規制片71を開口部24´(の車両前方側)に挿入する。(2)次に、移動規制片71の車両後方側が鉤状部材62に当接するまで、カバー部材21´を車両後方へ向けてスライド移動させる。(3)その後、フランジ部23のボルト挿通孔23aと、基台11のボルト挿通孔11bとにボルト51を挿通して締め込む(
図2参照)。これにより、カバー部材21´は基台11´に対して固定されることとなる。
【0048】
すなわち、本実施形態では、上述した実施形態と同様、ボルト51を取り外した後、カバー部材21´を車両前方へ向けてスライド移動しなければ、基台11´からカバー部材21´を取り外せないようになっている。
【0049】
また、本実施形態も、上述した実施形態と同様に、サービスプラグ31が開口部24´を介してサービスプラグ接続部17a(
図4参照)に接続された場合、基台11´に対するカバー部材21´の車両前方への移動がストッパ片25´によって規制されるように構成されている。
【0050】
すなわち、本実施形態も、上述した実施形態と同様に、サービスプラグ31がサービスプラグ接続部17aに接続されている場合(
図4参照)、カバー部材21´を基台11´から取り外すことができず、サービスプラグ31がカバー部材21´に形成された開口部24´から引き抜かれたときにはじめて、カバー部材21´を基台11´から取り外すことが可能なように構成されている。
【0051】
このように、本実施形態では、開口部24´を介して、鉤状部材62と移動規制片71との嵌合状態を確認することが可能なため、基台11´に対するカバー部材21´の取り付けを容易に行うことが可能である。
【0052】
また、本実施形態では、ストッパ片25´及び移動規制片71を一体的に形成した場合、この一体的に形成された取付部材72を、カバー部材21´に取り付ければよいため、カバー部材21´の製作を容易に行うことが可能である。
【0053】
以上、本発明者によってなされた発明を適用した実施形態について説明したが、この実施形態による本発明の開示の一部をなす論述及び図面により、本発明は限定されることはない。すなわち、この実施形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施形態、実施例及び運用技術等は全て本発明の範疇に含まれることは勿論であることを付け加えておく。