特許第6014518号(P6014518)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6014518
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月25日
(54)【発明の名称】穿刺装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/151 20060101AFI20161011BHJP
【FI】
   A61B5/14 300D
【請求項の数】9
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-41223(P2013-41223)
(22)【出願日】2013年3月1日
(65)【公開番号】特開2014-168534(P2014-168534A)
(43)【公開日】2014年9月18日
【審査請求日】2015年3月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】390014960
【氏名又は名称】シスメックス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】朝倉 義裕
【審査官】 佐藤 高之
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−222735(JP,A)
【文献】 特開2009−011704(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0199892(US,A1)
【文献】 特開2006−081751(JP,A)
【文献】 特開2012−075620(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/00−5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一部に開口が設けられたカバー部と、
前記カバー部に保持され、前記カバー部に対して前記開口から所定方向へ移動可能な本体部と、
前記所定方向へ発射される穿刺部と、
前記本体部を前記所定方向へ移動可能に構成され、前記穿刺部を前記所定方向に発射させるために前記所定方向へ操作される操作部と、を備え、
前記操作部に対して前記所定方向に力が与えられたときに、前記本体部が前記所定方向への移動を規制されている場合には、前記穿刺部を前記所定方向へ発射し、前記本体部が前記所定方向への移動を規制されていない場合には、前記本体部が前記所定方向へ移動し、前記穿刺部を前記所定方向へ発射しないように構成されている、穿刺装置。
【請求項2】
前記本体部は、
前記穿刺部を前記所定方向へ付勢する付勢部と、
前記付勢部による付勢をロックし、前記操作部の操作に応じてロックを解除するロック部と、を具備し、
前記操作部に対して前記所定方向に力が与えられたときに、前記本体部が前記所定方向と反対方向に押圧されている場合には、前記本体部が前記カバー部に対して移動することなく、前記ロック部がロックを解除して前記付勢部が前記穿刺部を付勢し、前記本体部が前記反対方向に押圧されていない場合には、前記ロック部がロックを解除することなく、前記本体部が前記カバー部に対して移動するように構成されている、請求項1に記載の穿刺装置。
【請求項3】
前記付勢部は、弾性体である、請求項2に記載の穿刺装置。
【請求項4】
前記本体部が前記カバー部に対して第1位置から第2位置へ移動されることで、前記付勢部が消勢状態から付勢状態に移行し、前記ロック部が前記付勢部による付勢をロックし、前記ロック部のロックを維持したまま、前記本体部を前記カバー部に対して前記第1位置へ復帰させることが可能であるように構成されている、請求項2又は3に記載の穿刺装置。
【請求項5】
前記操作部に対して前記所定方向に力が与えられたときに、前記本体部が前記所定方向への移動を規制されている場合には、前記本体部が前記カバー部に対して前記第1位置に位置したまま、前記ロック部がロックを解除して前記付勢部が前記穿刺部を付勢し、前記本体部が前記所定方向への移動を規制されていない場合には、前記ロック部がロックを解除することなく、前記本体部が前記カバー部に対して前記第1位置から前記第2位置へ移動するように構成されている、請求項4に記載の穿刺装置
【請求項6】
前記本体部は、前記カバー部に対する前記所定方向への移動をガイドするガイド部を有する、請求項1乃至の何れか1項に記載の穿刺装置。
【請求項7】
前記カバー部は、被験者が把持可能に構成されており、
前記操作部は、被験者の前記カバー部を把持した手で操作可能に構成されている、請求項1乃至の何れか1項に記載の穿刺装置。
【請求項8】
前記カバー部は、一端に前記開口を有する筒状をなしている、請求項に記載の穿刺装置。
【請求項9】
前記本体部は、一端に前記穿刺部を射出するための開口を有しており、前記操作部は、前記本体部の他端に設けられている、請求項1乃至8の何れか1項に記載の穿刺装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被験者の身体に体液抽出用の孔を形成するための穿刺装置に関する。
【背景技術】
【0002】
被験者の体液中のグルコース等の成分を測定するために、針を被験者の身体に穿刺して体液抽出用の孔を皮膚に形成する穿刺装置が知られている(特許文献1及び2参照)。
【0003】
特許文献1には、筒状のハウジングの一端にエンドキャップが設けられ、前記エンドキャップにランセット開口が設けられ、前記ランセット開口から針状のランスが進出可能なランシング装置が開示されている。当該ランシング装置では、ハウジングの側面にユーザアクセス可能な構成要素が設けられ、ユーザによってこのユーザアクセス可能な構成要素がハウジング側に押し込まれると、ランスがバネにより付勢され、ランセット開口からランスが突出するように構成されている。
【0004】
特許文献2には、筒状のハウジングの一端にカバー部が、他端に操作キャップが設けられ、前記カバー部に貫通孔が設けられ、前記貫通孔からランセットの針部が進出可能な穿刺装置が開示されている。当該穿刺装置では、ハウジングの軸長方向(ランセットの針部の穿刺方向)に操作キャップがスライド可能であり、操作キャップがハウジング側に押し込まれると、ランセットがバネにより付勢され、カバー部の貫通孔から穿刺方向へランセットの針部が突出するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2009−529959号公報
【特許文献2】特開2011−177523号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載されたランシング装置にあっては、ユーザがハウジングを把持する方向と、ユーザアクセス可能な構成要素の操作方向とが同じであるため、ユーザがハウジングを把持するときにユーザアクセス可能な構成要素を誤操作する虞がある。また、特許文献2に記載された穿刺装置にあっては、ユーザがハウジングを把持する方向と、操作キャップの操作方向とが異なるものの、カバー部をユーザ(被験者)の身体に当接させずにユーザが操作キャップを操作することで、ユーザが意図せずに、鋭利なランセットの針部がカバー部の先端から露出する虞がある。
【0007】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、ユーザの誤操作を防止して、ユーザが意図せずに穿刺部が露出することを防止する穿刺装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するために、本発明の一の態様の穿刺装置は、一部に開口が設けられたカバー部と、前記カバー部に保持され、前記カバー部に対して前記開口から所定方向へ移動可能な本体部と、前記所定方向へ発射される穿刺部と、前記本体部を前記所定方向へ移動可能に構成され、前記穿刺部を前記所定方向に発射させるために前記所定方向へ操作される操作部と、を備え、前記操作部に対して前記所定方向に力が与えられたときに、前記本体部が前記所定方向への移動を規制されている場合には、前記穿刺部を前記所定方向へ発射し、前記本体部が前記所定方向への移動を規制されていない場合には、前記本体部が前記所定方向へ移動し、前記穿刺部を前記所定方向へ発射しないように構成されている。
【0009】
これにより、本体部がユーザの身体に押し当てられる等して所定方向(穿刺部の移動方向)への移動が規制されている状態で操作部に前記所定方向の力が与えられると、操作部が操作され、穿刺部が本体から発射されてユーザの皮膚を穿刺することとなり、本体部がユーザの身体から離れており、前記所定方向への移動が規制されていない状態で操作部に前記所定方向の力が与えられると、本体部が前記所定方向へ移動し、穿刺部が露出することが防止される。したがって、ユーザの誤操作が防止され、ユーザが意図せずに穿刺部が露出することが防止される。
【0010】
上記態様において、前記本体部は、前記穿刺部を前記所定方向へ付勢する付勢部と、前記付勢部による付勢をロックし、前記操作部の操作に応じてロックを解除するロック部と、を具備し、前記穿刺装置は、前記操作部に対して前記所定方向に力が与えられたときに、前記本体部が前記所定方向と反対方向に押圧されている場合には、前記本体部が前記カバー部に対して移動することなく、前記ロック部がロックを解除して前記付勢部が前記穿刺部を付勢し、前記本体部が前記反対方向に押圧されていない場合には、前記ロック部がロックを解除することなく、前記本体部が前記カバー部に対して移動するように構成されていてもよい。これにより、本体部がユーザの身体に押し当てられる等して所定方向と反対方向へ押圧されている状態で操作部に前記所定方向の力が与えられると、操作部が操作され、穿刺部が付勢されることとなり、本体部がユーザの身体から離れており、前記反対方向へ押圧されていない状態で操作部に前記所定方向の力が与えられると、操作部が操作されず、穿刺部が付勢されることが防止される。
【0011】
上記態様において、前記付勢部は、弾性体であってもよい。弾性体には、バネ、ゴム、バルーン又はスポンジといった素材が含まれる。
【0012】
上記態様において、前記穿刺装置は、前記本体部が前記カバー部に対して第1位置から第2位置へ移動されることで、前記付勢部が消勢状態から付勢状態に移行し、前記ロック部が前記付勢部による付勢をロックし、前記ロック部のロックを維持したまま、前記本体部を前記カバー部に対して前記第1位置へ復帰させることが可能であるように構成されていてもよい。これにより、本体部及びカバー部を第1位置と第2位置との間で相対移動させることで、穿刺部を移動させるために操作部を操作可能な状態とすることができる。
【0013】
上記態様において、前記穿刺装置は、前記操作部に対して前記所定方向に力が与えられたときに、前記本体部が前記所定方向への移動を規制されている場合には、前記本体部が前記カバー部に対して前記第1位置に位置したまま、前記ロック部がロックを解除して前記付勢部が前記穿刺部を付勢し、前記本体部が前記所定方向への移動を規制されていない場合には、前記ロック部がロックを解除することなく、前記本体部が前記カバー部に対して前記第1位置から前記第2位置へ移動するように構成されていてもよい。これにより、操作部を操作可能な状態とするために本体部をカバー部に対して移動させる方向を、本体部が前記反対方向へ押圧されていない状態で操作部に前記所定方向の力が与えられたときに本体部がカバー部に対して移動する方向と合致させることができる。
【0015】
上記態様において、前記本体部は、前記カバー部に対する前記所定方向への移動をガイドするガイド部を有していてもよい。これにより、本体部がカバー部に対して前記所定方向以外の方向へ移動することが制限される。
【0016】
上記態様において、前記カバー部は、被験者が把持可能に構成されており、前記操作部は、被験者の前記カバー部を把持した手で操作可能に構成されていてもよい。
【0017】
上記態様において、前記カバー部は、一端に前記開口を有する筒状をなしていてもよい。これにより、カバー部をユーザが把持しやすい形状とすることができる。
【0018】
上記態様において、前記本体部は、一端に前記穿刺部を射出するための開口を有しており、前記操作部は、前記本体部の他端に設けられていてもよい。これにより、ユーザがカバー部を把持した手の親指で操作部を操作することが可能となる。

【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、ユーザの誤操作を防止して、ユーザが意図せずに穿刺部が露出することを防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】カバー部が閉塞状態の穿刺装置の外観構成を示す斜視図。
図2】カバー部が開放状態の穿刺装置の外観構成を示す斜視図。
図3】カバー部を取り外した状態の本体部の外観構成を示す斜視図。
図4】閉塞状態のときの穿刺装置の外観を示す正面図。
図5】閉塞状態のときの穿刺装置の内部を示す正面断面図。
図6図4のA−A線による側面断面図。
図7】開放状態のときの穿刺装置の外観を示す正面図。
図8】開放状態のときの穿刺装置の内部を示す正面断面図。
図9図7のB−B線による側面断面図。
図10】取付部材が付勢状態にある場合にカバー部を閉塞したときの穿刺装置の内部を示す正面断面図。
図11】操作可能状態のときの穿刺装置の内部を示す正面断面図
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の好ましい実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
【0022】
<穿刺装置の構成>
図1及び図2は、本実施の形態に係る穿刺装置の外観構成を示す斜視図である。穿刺装置1は、全体として概略円柱形状をなし、本体部2と、本体部2を覆うカバー部3とを備えている。カバー部3は、本体部2に対して長手方向に摺動可能である。つまり、本体部2とカバー部3とは長手方向に相対的に移動可能であり、カバー部3から本体部2を引き出したり、カバー部3へ本体部2を収容したりすることができるようになっている。図1には、カバー部3に本体部2を完全に収容した状態を示しており、図2には、カバー部3から本体部2が引き出された状態を示している。
【0023】
本体部2は、円筒形をなす基部21を具備している。基部21からは、当該基部21よりも直径が小さい同軸の円筒形の段部22が延設されており、さらに段部22からは、当該段部22よりも直径が小さい同軸の円筒形の射出部23が延設されている。射出部23には射出口23aが設けられており、被験者の皮膚に微細孔を形成するための微細針チップが前記射出口23aから射出されるようになっている。
【0024】
基部21の前記段部22とは反対側からは、基部21よりも直径が小さい同軸の円筒形の内側ハウジング部24が延設されている。内側ハウジング部24の内部には、微細針チップを射出するための機構が収容されている。
【0025】
カバー部3は、基部21と概ね同じ直径の円筒形をなしており、内側ハウジング部24を覆うように本体部2に取り付けられている。カバー部3は、その内径が内側ハウジング部24の外形よりも若干大きく、内側ハウジング部24に対して長手方向に摺動可能である。言い換えれば、本体部2は、カバー部3に対して前記長手方向に移動可能である。内側ハウジング部24がカバー部3によって完全に覆われる状態(図1に示す状態。以下、「閉塞状態」という。)では、カバー部3の一端が基部21に当接する(このときのカバー部3に対する本体部2の位置を、以下「第1位置」という。)。また、閉塞状態から基部21とカバー部3とが離反する方向へカバー部3を本体部2に対して移動させると、内側ハウジング部24の一部が露出される。この状態(以下、「開放状態」という。)を図2に示す。
【0026】
カバー部3は、ユーザが穿刺装置1を使用するときに把持する部分である。カバー部3は、ユーザが把持しやすいように、上述したような円筒形をなしている。また、カバー部3は、標準的な成人が片手で把持しやすいように、その全長が100mm、外径が30mmとされている。なお、カバー部3の形状及び大きさはこれに限られないが、ユーザが片手で把持しやすいものとするため、全長が90mm以上110mm以下の筒状とすることが好ましい。また、カバー部3を円筒形とした場合には、その外径は、10mm以上50mm以下とすることが好ましい。
【0027】
図3は、カバー部3を取り外した状態の本体部2の外観構成を示す斜視図である。本体部2の射出部23側と反対側の端部には、操作部4が設けられている。以下、本体部2の射出部23側を下側、操作部4側を上側として説明する。
【0028】
図3に示すように、内側ハウジング部24には、内側ハウジング部24の長手方向、即ち上下方向に長いスライド孔25が設けられている。図2及び図3に示すように、内側ハウジング部24の内部には、押動部材51が設けられている。押動部材51には、螺子孔51aが設けられており、カバー部3と押動部材51とを接続するための螺子31が、スライド孔25を介して、この螺子孔51aに螺合されている(図2参照)。また、押動部材51には、外側に突出する突起51bが設けられており、突起51bがスライド孔25に挿入されている。つまり、螺子31及び突起51bはスライド孔25に沿って移動可能であり、これによって押動部材51に接続されたカバー部3は、その移動方向が上下方向に規制されている。
【0029】
図4は、閉塞状態のときの穿刺装置の外観を示す正面図であり、図5は、閉塞状態のときの穿刺装置の内部を示す正面断面図である。突起51bは、カバー部3の下端よりも下方に設けられている。つまり、カバー部3が閉塞状態とされているとき、カバー部3の下端は基部21の上端と当接しており、突起51bは基部21の内側に入り込んでいる。
【0030】
押動部材51の下端はL字状に屈曲しており、当接部51cが形成されている。また、内側ハウジング部24の内部には、微細針チップ6を取り付けるための取付部材52が配置されており、取付部材52の上方には取付部材52を付勢するための圧縮バネ54が配置されている。
【0031】
図5に示す状態は、取付部材52が圧縮バネ54によって付勢されていない状態(以下、「消勢状態」という。)である。つまり、図5に示す取付部材52の位置は下限位置であり、取付部材52が下限位置にあるとき、圧縮バネ54には負荷が与えられておらず、その長さは自然長となっている。
【0032】
図5に示すように、取付部材52には、2つの突起52a、52bが設けられている。カバー部3が上方に引き上げられて、穿刺装置1が閉塞状態から開放状態へと移行すると、押動部材51の当接部51cが取付部材52の下側の突起52aに当接する。さらにカバー部3が引き上げられることにより、押動部材51によって押されて取付部材52が上方へ移動する。取付部材52が上方へ移動すると、圧縮バネ54の下端が取付部材52により上方へ押されて、圧縮バネ54が圧縮される。これにより、取付部材52が圧縮バネ54により下方に付勢される。
【0033】
また、内側ハウジング部24の内壁には2つのガイド部55が対向して設けられている。図5には、2つのガイド部55のうちの1つのみを示している。2つのガイド部55の間に形成された間隙は上下方向に延びており、取付部材52は、2つのガイド部55に挟まれるように配置されている。かかる2つのガイド部55の間の間隙によって、取付部材52の移動方向が上下方向に規制されている。
【0034】
図5に示すように、取付部材52の上方には、ロック部材53が設けられている。ロック部材53は、前後方向に延びた枢軸53dにより回動可能である。また、ロック部材53には爪部53aが設けられており、自然状態において爪部53aが下側に位置するように、図示しないバネによりロック部材53は付勢される。
【0035】
図6は、図4のA−A線による側面断面図である。図6に示すように、穿刺装置1が閉塞状態のとき、カバー部3の下端と基部21の上端とが当接、又は非常に近接している。この状態のとき、上述したように押動部材51の突起51bは基部21の内側に入り込んでいる。基部21の内側には、凹部21aが設けられており、このときの突起51bは凹部21aに係合している。凹部21aの上側には凸部21bが設けられており、凹部21aに突起51bが係合している状態から、その係合を解除するためには、突起51bが凸部21bを乗り越えて上方へ移動する必要がある。つまり、穿刺装置1を閉塞状態から開放状態へ移行させるためには、突起51bが凸部21bを乗り越える必要がある。本実施の形態では、このために必要な力を3Nとしている。なお、穿刺装置1のカバー部3と本体部2との係合を解除するために必要な力は、3Nに限られないが、2N以上5N未満であることが好ましい。
【0036】
図7は、開放状態のときの穿刺装置の外観を示す正面図であり、図8は、開放状態のときの穿刺装置の内部を示す正面断面図である。また、図9は、図7のB−B線による側面断面図である。本体部2に対してカバー部3が3N以上の力で上方に引き上げられると、凹部21aに係合していた突起51bが凸部21bを乗り越え、カバー部3と本体部2との係合が解除される(図9参照)。さらにカバー部3が上方へ移動されると、カバー部3の下端が基部21の上端から離反し、内側ハウジング部24が露出される(図7参照)。このとき、カバー部3と共に押動部材51が本体部2に対して上方へと移動し、内側ハウジング部24のスライド孔25から突起51bが露出される。上述したように押動部材51の当接部51が取付部材52の下側の突起52aに当接し、そのままカバー部3が引き上げられることによって取付部材52が上方へと移動する。
【0037】
ロック部材53の爪部53aの下側には、傾斜部53bが設けられている。取付部材52が内側ハウジング部24の内部で上方へと移動すると、取付部材52とロック部材53とが近接し、取付部材52の上側の突起52bがロック部材53の傾斜部53bに当接する。さらに取付部材52の上昇が継続すると、突起52bによって傾斜部53bが押されて、ロック部材53が付勢力に抗して枢軸53dを中心に回動する。これにより突起52bが傾斜部53bを乗り越えると、ロック部材53が付勢力によって反対方向に回動し、自然状態に復帰する。これにより、突起52bがロック部材53の爪部53aに係合する(図8参照)。
【0038】
図7に示すように、カバー部3と押動部材51とを接続する螺子31がスライド孔25の上端近傍に位置するまで、カバー部3が本体部2に対して上方へ移動されると(このときのカバー部3に対する本体部2の位置を、以下「第2位置」という。)、上記のようにして取付部材52の突起52bがロック部材53の爪部53aに係合する。このとき、取付部材52が圧縮バネ54によって付勢された状態(以下、「付勢状態」という。)となっている。
【0039】
上記のように取付部材52が付勢状態にある場合には、本体部2は第1位置と第2位置との間で移動可能となっている。図10は、取付部材52が付勢状態にある場合にカバー部3を閉塞したときの穿刺装置1の内部を示す正面断面図である。取付部材52が付勢され、且つ、ロック部材53によりロックされている付勢状態のときに、本体部2が第2位置から上方へ移動されると、押動部材51の当接部51cが取付部材52の突起52aから離反し、突起52aに対して下方へ移動する(突起52aが当接部51cに対して上方へ移動する)。つまり、取付部材52が付勢状態とされたまま、カバー部3が閉じられる。
【0040】
また、このときスライド孔25によって押動部材51及びカバー部3の移動方向が上下方向に規制されているため、本体部2はカバー部3に対して正確に上方へと移動される。さらに本体部2が上方へ移動されることによって、押動部材51の突起51bが基部21の内側に設けられた凸部21bを乗り越え、凹部21aに係合して、本体部2が第1位置に到達する。このようにして、図8に示す状態から図10に示す状態へと遷移する。
【0041】
取付部材52が付勢状態にあり、しかも、本体部2が第1位置にある場合、穿刺装置1はユーザにより操作可能な操作可能状態にある。この操作可能状態では、操作部4が下方に操作されると、ロック部材53によるロックが解除され、圧縮バネ54の付勢力によって取付部材52が駆動され、微細針チップ6が下方へ射出される。図11は、操作可能状態のときの穿刺装置の内部を示す正面断面図である。
【0042】
操作部4は上下方向に移動可能に内側ハウジング部25に取り付けられている。また、操作部4の下方の位置には、横方向に延びた支持板56が内側ハウジング部25の内壁に固定されている。操作部4の下部には、縦長の板状部41が設けられており、この板状部41が支持板56の下方まで延びている。
【0043】
板状部41には突起42が設けられている。また、ロック部材53の板状部41との対向面には、傾斜部53cが設けられている。当該ロック部材53の傾斜部53cは、板状部41の突起42と当接している。操作部4は、突起42と傾斜部53cを介して、ロック部53を付勢するバネによって上方に付勢され、通常は本体部2から突出した状態を維持するようになっている。また、操作部4が下方に押し下げられると、板状部41が支持板56に対して下方へ移動し、突起42によって傾斜部53cが押し下げられ、ロック部材53が付勢力に抗して枢軸53dを中心に回動する。
【0044】
本実施の形態では、操作部4を下方に操作するために必要な力、即ち、操作部4をロック部53の付勢力に抗して押し下げるために必要な力を6Nとしている。なお、操作部4を下方に操作するために必要な力は、6Nに限られないが、少なくとも穿刺装置1のカバー部3と本体部2との係合を解除するために必要な力(本実施の形態では3N)よりも大きいことが必要であり、5N以上10N以下であることが好ましい。
【0045】
操作部4が下方に操作されて、板状部41が下方へ移動すると、板状部41はロック部材53の上部に対向する。さらに操作部4の下降が継続すると、突起42によって傾斜部53cが押されて、ロック部材53が付勢力に抗して枢軸53dを中心に回動する。これによりロック部材53の爪部53aと取付部材52の突起52bとの係合が解除され、微細針チップ6が取り付けられた取付部材52が圧縮バネ54によって下方に付勢され、微細針チップ6が射出される。
【0046】
<穿刺装置の動作>
以下、穿刺装置1の動作について説明する。まず、被験者は、射出口23aから微細針チップ6を取付部材52に取り付ける。
【0047】
次に被験者は、消勢状態にある穿刺装置1を付勢状態へ移行させる。つまり、被験者は穿刺装置1のカバー部3を片手(例えば、右手)で把持し、他方の手(例えば、左手)で本体部2の基部21を掴んで、閉塞状態のカバー部3を基部21から引き離すようにカバー部3と基部21とを相対移動させる。これにより、本体部2が第1位置から第2位置へと移動する。
【0048】
本体部2が第1位置から第2位置へと移動する間、押動部材51が内側ハウジング部24の内部で上方へ移動し、当接部51cが取付部材52の突起52aに当接し、取付部材52が押動部材51によって押されて上方へ移動する。これにより圧縮バネ54が圧縮され、取付部材52が圧縮バネ54の付勢力に抗してさらに引き上げられる。取付部材52の上側の突起52bがロック部材53の傾斜部53bに当接し、突起52bによって傾斜部53bが押されて、ロック部材53が枢軸53dを中心に回動する。突起52bが傾斜部53bを乗り越えると、ロック部材53が自然状態に復帰し、突起52bがロック部材53の爪部53aに係合する。これにより、取付部材52が付勢状態となる。
【0049】
次に被験者は、付勢状態とした穿刺装置1のカバー部3を閉じるように移動させ、本体部2をカバー部3に対して第2位置から第1位置へと移動させる。つまり、被験者は、一方の手で把持したカバー部3と、他方の手で掴んだ基部21を近接するように移動させ、カバー部3の下端と基部21の上端とが当接又は非常に近接する。これにより、穿刺装置1が操作可能状態となる。
【0050】
穿刺装置1が操作可能状態となると、被験者は片手(例えば、右手)でカバー部3を把持し、穿刺装置1の下端、即ち、射出部23の射出口23aが設けられている端部を被験者の身体(例えば、左腕)に押し当てる。これにより、穿刺装置1の本体部2が上方、即ち取付部材52(微細針チップ6)が圧縮バネ54により付勢されている方向の反対方向へ押圧され、本体部2の下方への移動が規制される。
【0051】
上記のようにして、本体部2が上方へ押圧されている状態で、被験者はカバー部3を把持している手の親指で操作部4を下方に操作する。操作部4に下向きの力が与えられると、この力が支持板56を介して本体部2に伝達される。つまり、本体部2に下向きの力、即ち、カバー部3から離反する方向の力が作用する。しかし、このとき本体部2が被験者の身体に押し当てられているので、上記の下向きの力の反力が生じ、本体部2がカバー部3に対して相対的に移動することはなく、第1位置にとどまる。
【0052】
上述したように、操作部4の操作に必要な力は6Nである。したがって、操作部4に6N以上の下向きの力が与えられると、ロック部材53が枢軸53dを中心として回動される。これにより、ロック部材53のロックが解除され、圧縮バネ54の付勢力によって取付部材52が駆動され、微細針チップ6が下方へ射出される。微細針チップ6の下面(皮膚に対向する面。以下、「微細孔形成面」という。)からは、複数の微細針が突出している。この微細針チップ6の微細孔形成面が被験者の皮膚に当接(衝突)し、被験者の皮膚に複数の微細孔が形成される。
【0053】
次に、操作可能状態の穿刺装置1が、その下端を被験者の身体に押し当てられていない状態、即ち、本体部2の下方への移動が規制されていない状態において、操作部4に下向きの力が与えられた場合の穿刺装置1の動作について説明する。穿刺装置1の本体部2が上方に押圧されていない状態で、被験者が操作部4を操作しようとしたり、被験者が意図せずに操作部4に触れてしまったりして、操作部4に下向きの力が与えられると、この力が支持板56を介して本体部2に伝達される。つまり、本体部2に下向きの力、即ち、カバー部3から離反する方向の力が作用する。
【0054】
このとき、押動部材51の突起51bと基部21との係合の解除に必要な力が3Nであり、操作部4の操作に必要な力が6Nであるため、操作部4に3N以上の下向きの力が加わると、操作部4が操作されることなく、突起51bと基部21との係合が解除される。これにより、本体部2がカバー部3に対して第1位置から第2位置へと移動し、穿刺装置1が開放状態となる。このとき、操作部4が操作されないため、微細針チップ6が射出されることはない。つまり、本実施の形態に係る穿刺装置1によれば、穿刺装置1の下端が被験者の身体等に押し当てられていない状態で、誤操作等により操作部4に下向きの力が与えられても、穿刺装置1の微細針チップ6を射出する機構が作動することなく、本体部2とカバー部3とが引き離される。したがって、ユーザが意図せずに微細針チップ6が射出されることが防止される。
【0055】
(その他の実施の形態)
なお、上述した実施の形態においては、操作部4を穿刺装置1の射出口23aの反対側端部に設ける構成としたが、これに限定されるものではない。本体部2はカバー部3から離反する方向と同一方向に操作可能であればよく、操作部が設けられる位置は問わない。例えば、カバー部3の側面等に操作部を設けることも可能である。
【0056】
また、上述した実施の形態においては、取付部材52及びこれに取り付けられる微細針チップ6の駆動源を圧縮バネ54とした構成について述べたが、これに限定されるものではない。ゴム、引っ張りバネ、空気バネ等の圧縮バネ以外の弾性体を取付部材52及び微細針チップ6の駆動源とすることも可能である。また、弾性体ではなく、空圧シリンダー又はモータ等の動力発生装置を取付部材52及び微細針チップ6の駆動源とし、操作部4の操作に応じて動力発生装置に駆動力を発生させ、取付部材52及び微細針チップ6を駆動する構成とすることも可能である。
【0057】
また、上述した実施の形態においては、カバー部3と本体部2との係合の解除に必要な力を3Nとし、操作部4の操作に必要な力を6Nとして説明したが、これに限定されるものではない。しかし、操作部4の操作に必要な力と、カバー部3と本体部2との係合の解除に必要な力との差は1N以上6N以下であることが好ましい。このように、操作部4の操作に必要な力と、カバー部3と本体部2との係合の解除に必要な力との差を1N以上としておくことで、操作可能状態の穿刺装置1の本体部2が上方に押圧されていない状態において、操作部4に下向きの力が与えられた場合に、確実に穿刺装置1の微細針チップ6を射出する機構を作動させることなく、本体部2とカバー部3とを引き離させることが可能となる。また、操作部4の操作に必要な力と、カバー部3と本体部2との係合の解除に必要な力との差を6N以下としておくことで、操作部4の操作に必要な力と、カバー部3と本体部2との係合の解除に必要な力とが極端に相違することによる取り扱いの困難を防止することが可能となる。
【0058】
また、上述した実施の形態においては、微細針チップ6にて被験者の皮膚を穿刺する構成を説明したが、これに限定されるものではない。従来の針状の穿刺部を取り付けて穿刺する構成でも可能である。
【0059】
また、上述した実施の形態においては、被験者が単独で操作する実施形態を説明したが、これに限定されるものではない。別の操作者が被験者に対して、穿刺装置を操作する場合であってもよい。
【符号の説明】
【0060】
1 穿刺装置
2 本体部
21 基部
23 射出部
23a 射出口
24 内側ハウジング部
25 スライド孔
3 カバー部
31 螺子
4 操作部
51 押動部材
51b 突起
51c 当接部
52 取付部材
52a,52b 突起
53 ロック部材
53a 爪部
53b 傾斜部
54 圧縮バネ
57 引っ張りバネ
6 微細針チップ
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