(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記内圧調整手段は、前記各伸縮部の内圧をそれぞれ検出する内圧検出手段で検出した内圧が予め設定した内圧に達した場合、予め設定した内圧に達した該伸縮部に連通するエア通路に介装されている切換弁にて該エア通路を遮断させて内圧を保持させる
ことを特徴とする請求項4記載の車両の走行安定装置。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面に基づいて本発明の一実施形態を説明する。
図1、
図2、及び
図3(a)には、セタンタイプの車両1が示されている。この車両1の後部(車体後部)2にトランクルームを開閉する車体パネルとしてのトランクリッド3が設けられており、このトランクリッド3の上面に、リヤスポイラ4が設けられている。尚、符号5は車両1の前部(車体前部)であり、内部にエンジンルームを有している。又、符号6は車体前部5の前端に設けられたフロントバンパである。
【0015】
リヤスポイラ4は、トランクリッド3の車幅方向両側端部に固設されているブラケット4aと、このブラケット4a上に垂立状態で固定されている左右一対の垂直翼4L,4Rと、この両垂直翼4L,4Rの上端に、左右端部を固設する水平翼4bとを有している。
【0016】
図7、
図8に示すように、左右一対の垂直翼4L,4Rは、前縁の曲率が後縁の曲率よりも小さく(大きな半径で)形成された略翼形断面を有しており、前縁LEと後縁TEとを結ぶ翼弦線Lcが車体前後方向に沿って延在されている。尚、以下においては、両垂直翼4L,4Rで共通の構成部分については同一の符号を付して説明を簡略化する。
【0017】
この各垂直翼4L,4Rは、ブラケット4aに下端が固設され、或いはブラケット4aと一体に形成された支柱11を有している。この支柱11は前縁LE側から後縁TE側へ細くなる断面略テーパ状に形成されており、この支柱11に横揚力発生手段としての横揚力発生部12が設けられている。この横揚力発生部12は、支柱11の外周を覆い、垂直翼4L,4Rの外表を形成する表皮13、及び、この表皮13と支柱11の側面との間に形成された空隙部14に介装されている伸縮部としての外側伸縮バッグ15及び内側伸縮バッグ16を有している。又、表皮13、及び伸縮バッグ15,16は、ゴム等の弾性及び伸縮性を有する材料を素材としている。
【0018】
又、この表皮13は、前縁LE側に厚肉領域13aを有し、その後部から後縁TE側にかけて比較的薄い肉厚で形成されている。更に、この表皮13の厚肉領域13a及び後端部13bが支柱11に接着剤などを用いて固定されている。この厚肉領域13aは、走行時に表皮13の前縁LEが前方からの風圧を受けて変形することを防止するためのものであり、従って、この厚肉領域13aは風圧で変形し易い領域に形成されている。尚、この厚肉領域13aに代えて、表皮13の厚肉領域13aに対応する内面に樹脂製等のプロテクタを配設するようにしても良い。
【0019】
又、支柱11の両側面と表皮13の内面との間に形成された空隙部14に介装されている両伸縮バッグ15,16は、その先端側が、表皮13の厚肉領域13aとオーバーラップされている。又、この各伸縮バッグ15,16の上下方向は支柱11の側面に沿って、ブラケット4aと水平翼4bとの間に配設されており、この各伸縮バッグ15,16の支柱11に対向する面が、この支柱11に接着剤等を用いて固着されている。この各伸縮バッグ15,16は密閉性を有し、内部に供給される空気圧にて膨出され、この空気圧を排出することで、自己の弾性復元力にて収縮される。
【0020】
図1、
図7(
図8)に示すように、支柱11には外側伸縮バッグ15と内側伸縮バッグ16とに各々連通するエア通路17,18が形成されており、この各エア通路17,18の上流側が、エアインテーク部36に配設されている各インテークポート37a,37b,38a,38bに個別に連通されている。このエアインテーク部36は、車両1の走行時における自動車外表面の圧力係数Cpの分布曲線(
図1、
図4参照)に基づき、車両1の外表面において、最も高い圧力係数Cpが得られる領域に設けられている。具体的には、車体後部2のリヤウインドウ2aとトランクリッド3との境界部分であって、
図3(a)に示すように車幅方向中央を中心とする左右所定幅の領域に開口されている。
【0021】
又、
図5に示すように、このエアインテーク部36は、トランクリッド3の前端に段差を有して形成されており、
図6に示すように、このエアインテーク部36の後壁部に、各インテークポート37a,37b,38a,38bが開口されている。更に、この各インテークポート37a,37b,38a,38bに金網等のメッシュフィルタ39が装着されており、このメッシュフィルタ39により昆虫や枯れ葉等の進入が防止される。
【0022】
更に、
図9に示すように、左垂直翼4Lに設けられている一対の伸縮バッグ15,16にそれぞれ連通するエア通路17,18には、制御弁としての左外切換弁22a及び左内切換弁22bが各々介装されている。又、右垂直翼4Rに設けられている一対の伸縮バッグ15,16にそれぞれ連通するエア通路17,18には、右外切換弁23a、右内切換弁23bが各々介装されている。
【0023】
この切換弁22a,22b、23a,23bは三方弁であり、エア通路17,18を連通する位置と、伸縮バッグ15,16側のエア通路17,18と排出通路17a,18aと連通する位置と、エア通路17,18を遮断して、伸縮バッグ15,16内に空気圧を保持させる位置とに切換可能にされている。
【0024】
この各切換弁22a,22b、23a,23bの切換タイミングは、
図10に示す伸縮バッグ内圧制御ユニット26で演算される。この伸縮バッグ内圧制御ユニット26は、ROM,RAM等のメモリ及びCPUを有するマイクロコンピュータで構成されており、ROMには制御プログラムや各種固定データが記憶されている。又、この伸縮バッグ内圧制御ユニット26は、各伸縮バッグ15,16の内圧を制御する伸縮バッグ内圧制御部26aを備えている。
【0025】
この伸縮バッグ内圧制御ユニット26の入力側に、フロントバンパ6の左右前部に設けられて左右前方からの風圧を検出する左右風圧センサ31a,31b、車速を検出する車速検出手段としての車速センサ32、左右垂直翼4L,4Rに設けられている各伸縮バッグ15,16に連通するエア通路17,18であって各伸縮バッグ15,16の近傍に臨まされている内圧検出手段としての内圧センサ33a,33b,34a,34bが接続されている。この内圧センサ33a,33b,34a,34bにて左右に設けられている各伸縮バッグ15,16の内圧が各々検出される。
【0026】
又、この伸縮バッグ内圧制御ユニット26の出力側に、各切換弁22a,22b,23a,23bを動作させる、モータ等のアクチュエータを代表とする各駆動部27a,27b,28a,28bが接続されている。
【0027】
伸縮バッグ内圧制御部26aでは、入力されたパラメータに基づいて、左右垂直翼4L,4Rにそれぞれ設けられている各伸縮バッグ15,16の目標圧力を設定し、それに応じて切換弁22a,22b,23a,23bを個別に制御動作させる。
【0028】
例えば、
図3(a)に示すように、走行中の車両1の右側が横風を受けている場合、この横風の一部は、矢印Aで示ように、横風に面している側のサイドパネル(風上側サイドパネル)に沿い、このサイドパネルをガイド面として後方へ流れる。又、横風の他の一部は、矢印Bで示すようにフロントバンパ6やフロントグリルなどの車体前部5に沿い、矢印Cで示すように風上側サイドパネルとは反対側のサイドパネル(風下側サイドパネル)へ流れる。この風下側サイドパネル側へ流れる風は、この風下側サイドパネルがガイド面として機能しないため乱流となる。
【0029】
従って、右前方からの横風を車体が受けると、右風圧センサ31bは横風を直接受けるため実値に近い風圧PRが検出される。一方、左風圧センサ31aは、右方向から車体前部5沿って流れる気流に阻害されるため、実際よりも低い値の風圧PLが検出される。
【0030】
伸縮バッグ内圧制御部26aでは、両風圧センサ31a,31bで検出した風圧PL,PRの差圧ΔPfから、車両1が受ける横風の強さ、及び風向を推定する。この場合、フロントバンパ6の前面であって、左右風圧センサ31a,31bの間に、他の風圧センサを、所定間隔を開けて1或いは複数配設することで、車両1が受ける横風の向き(風向)を各風圧センサの検出値に基づいてより精密に推定することができる。尚、この両風圧センサ31a,31bが、本発明の風向検出手段を構成している。勿論、この両風圧センサ31a,31bに代えて、風向センサを設け、風向を直接検出するようにしても良い。
【0031】
そして、この差圧ΔPfと車速センサ32で検出した車速SPとに基づいて、車体前部5に作用する回頭モーメントを調べ、この回頭モーメントに応じてリヤスポイラ4の左右垂直翼4L,4Rに設けられている横揚力発生部12の各伸縮バッグ15,16を所定に伸縮させて、車体前部5に作用する回頭モーメントを抑制する横揚力(車幅方向へ作用する揚力)を発生させる。
【0032】
上述した伸縮バッグ内圧制御部26aで実行される左右の各伸縮バッグ15,16の制御動作は、具体的には、
図11に示す伸縮バッグ内圧制御ルーチンに従って処理される。
【0033】
車両1が走行すると、
図3に示すように前方からの走行風が、ルーフ表面を経てリヤウインドウ2a表面を通り、トランクリッド3の方向へ流れる。
図1、
図4に示すように、そのときの圧力係数Cpは、リヤウインドウ2aを通過する際に次第に上昇し、リヤウインドウ2aとトランクリッド3との境界部付近で最大値CMAXを示す。本実施形態では、圧力係数Cpが最大値CMAXを示す領域に、エアインテーク部36を設けており、各伸縮バッグ15,16は、走行により発生する空気圧で膨出させるようにしている。
【0034】
図11に示す伸縮バッグ内圧制御ルーチンが起動すると、先ず、ステップS1で、各センサ31a,31b,32,33a,33b,34a,34bで検出したバラメータを読込み、続く、ステップS2で、前部右風圧PRと前部左風圧PLとの差圧ΔPf(PR−PL)を求める。尚、本実施形態では、
図3(b)に示すように、車両の前後方向の長さを、重心を0として車体後部2側の車体長BLをプラス(+)、車体前部5側の車体長BLをマイナス(−)とし、車体前部5を左回頭させようとするヨーモーメントCYMをプラス(+)、右回頭させようとするヨーモーメントCYMをマイナス(−)で表す。
【0035】
従って、この差圧ΔPfがブラス(+)の場合((PR-PL)>0)、車体前部5は横風により左回頭方向へのヨーモーメントCYMが作用し、マイナス(−)の場合((PR-PL)<0)、右回頭方向へのヨーモーメントCYMが作用することが解る。又、ΔPf=0の場合、すなわち、両風圧センサ31a,31bで検出した風圧PR,PLがほぼ等しい場合は、正面から風を受けていることになる。
【0036】
その後、ステップS3へ進み、車速SPと差圧ΔPfとに基づき、車体前部5に作用する回頭モーメントを、予め設定されている回頭モーメントマップ(図示せず)を参照して推定する。従って、このステップS3での処理が回頭モーメント推定手段として機能する。
【0037】
次いで、ステップS4へ進み、推定した回頭モーメントに基づき左右垂直翼4L,4Rに設けられている各伸縮バッグ15,16の目標内圧を目標内圧マップ(図示せず)を参照して設定する。この目標内圧マップには、回頭モーメントを効率良く抑制することのできる横揚力を得るための目標内圧が予め実験などから求めて設定されている。例えば、
図7、
図8には、目標内圧をLEVEL1〜3の三段階で設定する態様が示されている。尚、LEVEL0は自己の弾性による復元力で収縮している状態を示している。
【0038】
図7、
図8に示す態様の場合、例えば、
図3(a)に示すように、車両1が右前方からの横風を受けた場合、車両1には左回りのヨーモーメントCYMが発生するため、伸縮バッグ内圧制御部26aは、左右垂直翼4L,4Rに対し、右回り(時計回り方向)の横揚力FLを発生させるべく、
図7に示すよう、左垂直翼4Lの内側伸縮バッグ16と右垂直翼4Rの外側伸縮バッグ15との目標圧力を共にLEVEL0とし、一方、左垂直翼4Lの外側伸縮バッグ15と右垂直翼4Rの内側伸縮バッグ16との目標圧力を、回頭モーメントに応じて共にLEVEL1〜3の何れかで設定する。
【0039】
又、逆に、車体前部5が左前方から横風を受けた場合、車両1には右回りのヨーモーメントCYMが発生するため、伸縮バッグ内圧制御部26aは左右垂直翼4L,4Rに対し、左回り(反時計回り方向)の横揚力FLを発生させるべく、
図8に示すよう、左垂直翼4Lの外側伸縮バッグ15と右垂直翼4Rの内側伸縮バッグ16との目標圧力を共にLEVEL0とし、一方、左垂直翼4Lの内側伸縮バッグ16と右垂直翼4Rの外側伸縮バッグ15との目標圧力を、回頭モーメントに応じて共にLEVEL1〜3の何れかで設定する。
【0040】
その後、ステップS5へ進むと、左右垂直翼4L,4Rに設けられている各伸縮バッグ15,16の目標内圧に対応する各切換弁22a,22b,23a,23bの動作を制御してルーチンを抜ける。尚、このステップS4,S5での処理が、本発明の内圧調整手段に対応している。
【0041】
このステップS5で実行する各切換弁22a,22b,23a,23bの制御動作は、先ず、内圧センサ33a,33b,34a,34bで検出した、左右垂直翼4L,4Rの各伸縮バッグ15,16の内圧を読込み、次いで、左右垂直翼4L,4Rの各伸縮バッグ15,16に設定されている目標内圧に応じて、各切換弁22a,22b,23a,23bを動作させて、各伸縮バッグ15,16の内圧を調整する。
【0042】
すなわち、例えば、車体前部5が右前方から横風を受けて左回頭(反時計回り方向)のヨーモーメントCYMが作用した場合、
図7に示すように、左垂直翼4Lの外側伸縮バッグ15と右垂直翼4Rの内側伸縮バッグ16とが回頭モーメントに応じて、共にLEVEL1〜3の何れかの目標内圧で設定し、又、左垂直翼4Lの内側伸縮バッグ16と右垂直翼4Rの外側伸縮バッグ15とを共にLEVEL0に設定する。
【0043】
従って、伸縮バッグ内圧制御部26aは、
図9に示すように、左垂直翼4Lの内側伸縮バッグ16に連通するエア通路18に介装されている切換弁22bと、右垂直翼4Rの外側伸縮バッグ15に連通するエア通路17に介装されている切換弁23aを動作させて、内側伸縮バッグ16を排出通路18aに連通させ、又、外側伸縮バッグ15を排出通路17aに連通させる。一方、左垂直翼4Lの外側伸縮バッグ15に連通するエア通路17に介装されている切換弁22aと、右垂直翼4Rの内側伸縮バッグ16に連通するエア通路18に介装されている切換弁23bを動作させて、この外側伸縮バッグ15と内側伸縮バッグ16とを、インテークポート37a,38bに連通させる。
【0044】
すると、左垂直翼4Lの内側伸縮バッグ16と右垂直翼4Rの外側伸縮バッグ15とが共に自己の弾性により収縮する。一方、左垂直翼4Lの外側伸縮バッグ15と右垂直翼4Rの内側伸縮バッグ16に対しては、エアインテーク部36に開口されているインテークポート37a,38bから取り込まれた空気圧が流入される。その結果、左垂直翼4Lは外側伸縮バッグ15に押圧されて表皮13が流線形状に膨出され、内側伸縮バッグ16は平坦に近い流線形状となり、外側伸縮バッグ15を流れる気流の流速が、内側伸縮バッグ16を流れる気流の流速よりも速くなるため、内側から外側へ向かう横揚力が発生する。又、右垂直翼4Rは内側伸縮バッグ16に押圧されて表皮13が流線形状に膨出され、内側伸縮バッグ16は平坦に近い流線形状となり、内側伸縮バッグ16を流れる気流の流速が、外側伸縮バッグ15を流れる気流の流速よりも速くなるため、外側から内側へ向かう横揚力が発生する。その結果、車体後部2には各垂直翼4L,4Rで発生する横揚力を加算した値の横揚力FLが発生し、左回頭モーメントが抑制される。
【0045】
一方、車体前部5が左前方から横風を受けて右回頭(時計回り方向)のヨーモーメントCYMが作用した場合、
図8に示すように、左垂直翼4Lの内側伸縮バッグ16と右垂直翼4Rの外側伸縮バッグ16とが回頭モーメントに応じて共にLEVEL1〜3の何れかの目標内圧で設定し、又、左垂直翼4Lの外側伸縮バッグ15と右垂直翼4Rの内側伸縮バッグ16とを共にLEVEL0に設定する。
【0046】
従って、伸縮バッグ内圧制御部26aは、左垂直翼4Lの外側伸縮バッグ15に連通するエア通路17に介装されている切換弁22aと、右垂直翼4Rの内側伸縮バッグ16に連通するエア通路18に介装されている切換弁23bを動作させて、外側伸縮バッグ15を排出通路17aに連通させ、又、内側伸縮バッグ16を排出通路18aに連通させる。一方、左垂直翼4Lの内側伸縮バッグ16に連通するエア通路18に介装されている切換弁22bと、右垂直翼4Rの外側伸縮バッグ15に連通するエア通路17に介装されている切換弁23aを動作させて、この内側伸縮バッグ16と外側伸縮バッグ15とを、インテークポート37b,38aに連通させる。
【0047】
すると、左垂直翼4Lの外側伸縮バッグ15と右垂直翼4Rの内側伸縮バッグ16とが共に自己の弾性により収縮する。一方、左垂直翼4Lの内側伸縮バッグ16と右垂直翼4Rの外側伸縮バッグ15に対しては、エアインテーク部36に開口されているインテークポート37b,38aから取り込まれた空気圧が流入される。その結果、左垂直翼4Lは内側伸縮バッグ16に押圧されて表皮13が流線形状に膨出され、外側伸縮バッグ15は平坦に近い流線形状となり、内側伸縮バッグ16を流れる気流の流速が、外側伸縮バッグ15を流れる気流の流速よりも速くなるため、外側から内側へ向かう横揚力が発生する。
【0048】
又、右垂直翼4Rは外側伸縮バッグ15に押圧されて表皮13が流線形状に膨出され、内側伸縮バッグ16は平坦に近い流線形状となり、外側伸縮バッグ15を流れる気流の流速が、内側伸縮バッグ16を流れる気流の流速よりも速くなるため、内側から外側へ向かう横揚力が発生する。その結果、車体後部2には各垂直翼4L,4Rで発生する横揚力を加算した値の横揚力FLが発生し、右回頭モーメントが抑制される。
【0049】
そして、各内圧センサ33a,33b,34a,34bで検出した内圧が、各目標内圧に達した場合、各切換弁22a,22b,23a,23bにて各エア通路17,18を遮断させて、左右垂直翼4L,4Rに設けられている各伸縮バッグ15,16の内圧を保持させる。
【0050】
このように、本実施形態では、車体前部5に、横風により回頭モーメント(ヨーモーメントCYM)が発生した場合、左右垂直翼4L,4Rにて回頭モーメントとは逆方向に作用する横揚力FL(左右垂直翼4L,4Rで発生した横揚力の合算値、
図3(b)のハッチング部分)により、回頭モーメントが抑制され、安定した直進走行性能を得ることができる。
【0051】
又、各伸縮バック15,16は車体に発生する圧力を取り入れて膨出させるようにしているため、従来のような機械的なリンク機構や、ポンプ等の圧送機を用いる必要が無く、構造の簡素化を実現することができる。又、回頭モーメントに対抗する横揚力を発生させることで、回頭モーメントを抑制するようにしたので、空気抵抗を大幅に増加させることがなく、燃費を改善することができる。
【0052】
更に、エアインテーク部36を、圧力係数Cpの最大値CMAXの発生するリヤウインドウ2aとトランクリッド3との境界付近設けたため、左右垂直翼4L,4Rに比較的近い位置となり、エアインテーク部36の空気圧を大幅に減衰させることなく各伸縮バッグ15,16へ伝達させることができる。そのため、各伸縮バッグ15,16を応答性良く膨出させることができる。
【0053】
又、本実施形態による横揚力発生部12は、表皮13と各伸縮バッグ15,16との二重構造をなしているが、表皮13を前縁LEと後縁TEとで左右に区画し、左右の表皮13の内側に形成されている空隙部14に空気を送り込んで直接伸縮させるようにしても良い。この場合、左右に区画された表皮13が本発明の伸縮部となる。