(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第一端面と、第二端面と、前記第一端面から前記第二端面まで延びる複数のセルを区画形成する多孔質の隔壁と、前記第一端面と前記第二端面とを繋ぐ外周面とを有する複数個のハニカムセグメントが、接合材を介して一体的に接合されてなるハニカム構造体であって、
前記複数個のハニカムセグメントの内、前記ハニカム構造体の最外周に位置するハニカムセグメント以外のハニカムセグメントは、
前記第一端面が四角形であり、
前記第二端面が前記第一端面よりも面積が大きい四角形であり、
前記外周面が4つの側面からなり、
前記4つの側面が、平行に対向する2つの側面からなる一対の平行側面と、前記第二端面側から前記第一端面側に向かってその間隔が狭くなって行くように対向する2つの側面からなる一対のテーパー側面とにより構成されており、
前記第一端面に対して垂直方向から見た場合に、前記第一端面の形状を構成する辺であって前記一対のテーパー側面の内の一方の側面と接している辺と、前記第二端面の形状を構成する辺であって前記一対のテーパー側面の内の一方の側面と接している辺との距離をXとし、前記第一端面の形状を構成する辺であって前記一対のテーパー側面の内の他方の側面と接している辺と、前記第二端面の形状を構成する辺であって前記一対のテーパー側面の内の他方の側面と接している辺との距離をZとしたとき、X及びZが共に0.3〜7mmであり、
前記第一端面の面積をS1、前記第二端面の面積をS2としたとき、S1/S2が0.8以上であり、
複数個の前記ハニカムセグメントは、前記ハニカム構造体の端面上において一定の方向に延びる複数の平行な列を構成するよう配置されており、
前記各列を構成する前記ハニカムセグメントは、隣接する前記ハニカムセグメント同士の関係において、それぞれの前記第一端面の向きが逆向きになっているとともに、それぞれの前記一対のテーパー側面の内の一方の側面同士が向かい合った状態となっているハニカム構造体。
隣接する前記列にそれぞれ含まれている、前記第一端面の向きが同一であるハニカムセグメントの位置が、前記列の延びる方向において、ずれた状態になっている請求項1〜3の何れか一項に記載のハニカム構造体。
前記ハニカムセグメントが、所定のセルの前記第一端面側の開口端部及び残余のセルの前記第二端面側の開口端部を目封止する目封止部を有する請求項1〜5の何れか一項に記載のハニカム構造体。
前記ハニカムセグメントが前記接合材を介して一体的に接合された後、外周研削加工が施され、その加工面に外周コート層が形成されている請求項1〜6の何れか一項に記載のハニカム構造体。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジンやGDI(Gasoline Direct Injection)エンジン等のガソリンエンジンの排ガス中には、粒子状物質(パティキュレートマター(PM))が含まれている。このPMは、主にスート(煤)等のカーボン微粒子からなるもので、発がん性が認められていることから、大気中に放出されるのを防止する必要があり、厳しい排出規制が科せられている。
【0003】
このような厳しい排出規制に対応すべく、PM排出量を低減するための多くの研究が行われているが、PM排出量を燃焼技術の改善によって低減するには限界があり、排気系にフィルタを設置することが、現在、唯一の有効なPM排出量の低減手段となっている。
【0004】
PMを捕集するためのフィルタとしては、圧力損失を許容範囲に抑えつつ、高いPM捕集効率を得られることから、ハニカム構造体を用いたウォールフロー型のものが、広く使用されている。ウォールフロー型フィルタに使用されるハニカム構造体は、排ガスの入口側となる入口端面から排ガスの出口側となる出口端面まで延びる複数のセルを区画形成する多孔質の隔壁を有している。このハニカム構造体に、所定のセルの出口端面側の開口端部及び残余のセルの入口端面側の開口端部を目封止する目封止部を設けることにより、高いPM捕集効率を持ったフィルタが得られる。
【0005】
即ち、こうして目封止部を設けたハニカム構造体は、入口端面からセル内に流入した排ガスが、隔壁を透過した後、出口端面からセル外に流出する構造となり、排ガスが隔壁を透過する際に、隔壁が濾過層として機能し、排ガス中に含まれるPMが捕集される。
【0006】
ところで、このようなフィルタを長期間継続して使用するためには、定期的にフィルタに再生処理を施す必要がある。即ち、フィルタ内部に経時的に堆積したPMにより増大した圧力損失を低減させてフィルタ性能を初期状態に戻すため、フィルタ内部に堆積したPMを高温のガスで燃焼させて除去する必要がある。そして、この再生時には、PMの燃焼熱によってフィルタに高い熱応力が発生するため、フィルタが破損することがある。
【0007】
従来、こうしたフィルタの破損を防止するための対策として、フィルタ全体を1つのハニカム構造体として製造するのではなく、複数個のハニカム形状のセグメント(ハニカムセグメント)を接合してフィルタ用のハニカム構造体とすることが提案されている。具体的には、複数個のハニカムセグメント間を、弾性率が低く変形し易い接合材で接合一体化したセグメント構造とすることで、再生時にハニカム構造体に作用する熱応力を分散、緩和して、耐熱衝撃性の向上を図っている。
【0008】
このようなセグメント構造のハニカム構造体を用いれば、高い耐熱衝撃性を有するフィルタが得られるが、その一方で、セグメント構造のハニカム構造体に特有の新たな問題が生じる。即ち、セグメント構造のハニカム構造体を用いたフィルタには、その使用時における振動や排ガスの圧力(排圧)によって、ハニカム構造体を構成しているハニカムセグメントに、移動(ずれ)が生じ易いという問題がある。
【0009】
この問題を解消するための手段の1つとして、特許文献1では、ハニカムセグメントの接合面となる外壁の平面度を特定の値とすることにより、ハニカムセグメント間の接合強度を向上させることが提案されている。また、特許文献2では、入口側端面の面積が出口側端面の面積より小さいハニカムセグメントを使用し、入口側端面の接合材の接合幅が、出口側端面の接合材の接合幅よりも大きくなるようにすることで、構造強度を高めることが提案されている。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を具体的な実施形態に基づき説明するが、本発明は、これに限定されて解釈されるものではなく、本発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて、種々の変更、修正、改良を加え得るものである。
【0024】
(1)ハニカム構造体:
図1は、本発明に係るハニカム構造体の実施形態の一例を示す概略斜視図である。
図2は、本発明に係るハニカム構造体の実施形態の一例における端面の一部を示す概略平面図であり、
図3は、本発明に係るハニカム構造体の実施形態の他の一例における端面の一部を示す概略平面図であり、
図4は、
図2のI−I線断面図である。
図5は、本発明に係るハニカム構造体の実施形態の一例において使用されている、ハニカムセグメントの概略斜視図である。
図6は、
図5のd1方向から見た概略平面図であり、
図7は、
図5のd2方向から見た概略平面図であり、
図8は、
図5のd3方向から見た概略平面図であり、
図9は、
図5のII−II線断面図である。
図10は、ハニカムセグメントに目封止部を形成した状態を示す概略断面図である。尚、
図1〜4において、ハニカムセグメントの隔壁部分の描画は、一部のハニカムセグメントを除いて省略してある。尚、本明細書において、「セルの軸方向」とは、「セルの長さ方向」又は「隔壁の延伸方向」を意味する。また、「ハニカムセグメントの軸方向」とは、「ハニカムセグメントの長さ方向」又は「ハニカムセグメントの第一端面及び第二端面に垂直な方向」を意味する。更に、「ハニカム構造体の軸方向」とは、「ハニカム構造体の長さ方向」又は「ハニカム構造体の両端面(入口端面及び出口端面)に垂直な方向」を意味する。
【0025】
本発明に係るハニカム構造体1は、複数個のハニカムセグメント2が、接合材9を介して一体的に接合されたものである。このハニカム構造体1は、その一方の端面が排ガス等の流体の入口側となる入口端面13であり、他方の端面が流体の出口側となる出口端面14である。各ハニカムセグメント2は、第一端面3と、第二端面4と、第一端面3から第二端面4まで延びる複数のセル7を区画形成する多孔質の隔壁8と、第一端面3と第二端面4とを繋ぐ外周面とを有する。
【0026】
本発明においては、ハニカム構造体1を構成する複数個のハニカムセグメント2の内、ハニカム構造体の最外周に位置するハニカムセグメント以外のハニカムセグメントが、特定の条件を満たす形状となっている。具体的には、まず、第一端面3が四角形であり、第二端面4が第一端面3よりも面積が大きい四角形である。但し、第一端面3の面積をS1、第二端面4の面積をS2としたとき、S1/S2が0.8以上という条件を満たす必要が有る。
【0027】
ハニカムセグメント2の外周面は、4つの側面からなる。これら4つの側面は、平行に対向する2つの側面5a,5bからなる一対の平行側面5と、第二端面4側から第一端面3側に向かってその間隔が狭くなって行くように対向する2つの側面6a,6bからなる一対のテーパー側面6とにより構成される。
【0028】
また、
図6のように、第一端面に対して垂直方向から見た場合に、辺3aと辺4aとの距離X、及び、辺3bと辺4bとの距離Zが共に0.3〜7mmである。尚、辺3aは、第一端面3の形状を構成する辺であって、一対のテーパー側面6の内の一方の側面6aと接している辺、言い換えれば、当該側面6aの形状を構成する辺と共有される辺である。辺4aは、第二端面4の形状を構成する辺であって、一対のテーパー側面6の内の一方の側面6aと接している辺、言い換えれば、当該側面6aの形状を構成する辺と共有される辺である。辺3bは、第一端面3の形状を構成する辺であって、一対のテーパー側面6の内の他方の側面6bと接している辺、言い換えれば、当該側面6bの形状を構成する辺と共有される辺である。辺4bは、第二端面4の形状を構成する辺であって、一対のテーパー側面6の内の他方の側面6bと接している辺、言い換えれば、当該側面6bの形状を構成する辺と共有される辺である。
【0029】
尚、
図6〜8における、X及びZ以外のハニカムセグメントの寸法に関する符号について説明すると、Lは、第一端面3と第2端面4との距離、即ち、ハニカムセグメント2の長さを示す。Wは、一対の平行側面5を構成する側面5aと側面5bとの距離、即ち、ハニカムセグメント2の厚みを示す。側面5aと側面5bとは平行であるから、このWの値は、第一端面3側でも、第2端面4側でも同一の値となる。Yは、一対の平行側面5と平行な方向における第一端面3の寸法を示す。Vは、一対の平行側面5と平行な方向における第二端面4の寸法を示す。WとYの積が、第一端面3の面積(S1)となり、WとVの積が、第二端面4の面積(S2)となる。
【0030】
本発明においては、前記のようなハニカムセグメント2の形状の特定に加え、ハニカムセグメント2の配置についても、特定の条件を満たす必要がある。具体的には、
図2に示すように、複数個のハニカムセグメント2が、ハニカム構造体の端面上において一定の方向に延びる複数の平行な列11を構成するよう配置される。
【0031】
更に、各列11を構成するハニカムセグメント2は、
図4に示すように、隣接するハニカムセグメント2a,2b同士の関係において、それぞれのハニカムセグメント2a,2bの第一端面3の向きが逆向きになるように配置される。また、それら隣接するハニカムセグメント2a,2b同士の関係において、それぞれのハニカムセグメント2a,2bの一対のテーパー側面の内の一方の側面6a同士が、接合材9を介して向かい合った状態となるように配置される。尚、隣接するハニカムセグメント2a,2b同士の関係において、それぞれのハニカムセグメント2a,2bの第一端面3の向きが逆向きになるように配置されれば、それぞれのハニカムセグメント2a,2bの第二端面4の向きも必然的に逆向きになる。
【0032】
尚、
図2では、隣接する列11a,11b同士の関係において、隣接する列11a,11bにそれぞれ含まれている、第一端面3の向きが同一であるハニカムセグメント2aの位置が、列の延びる方向において、ずれた状態になっている。しかし、本発明のハニカム構造体は、隣接する列11a,11b同士の関係が、
図2のような状態のものに限定されるものではない。即ち、
図3に示す他の実施形態のように、隣接する列11a,11b同士の関係において、隣接する列11a,11bにそれぞれ含まれている、第一端面3の向きが同一であるハニカムセグメント2aの位置が、列の延びる方向において、一致した状態となっていてもよい。
【0033】
本発明のハニカム構造体は、前記のように、ハニカムセグメントの形状や配置が特定の条件を満たすように構成されていることにより、ハニカムセグメントの固定力が高い強固な構造を有する。このため、このハニカム構造体を、ディーゼルエンジンやガソリンエンジン等の排気系に設置されるフィルタに用いても、フィルタ使用時の振動や排圧によるハニカムセグメントの移動(ずれ)が生じ難い。
【0034】
特許文献1に記載されているような従来の一般的なハニカムセグメント(外形が四角柱状のハニカムセグメント)では、対向する一対の側面と、対向する他の一対の側面とが共に平行である。一方、本発明において用いられるハニカムセグメントでは、対向する一対の側面は従来と同様に平行であり、対向する他の一対の側面のみが、第二端面側から第一端面側に向かってその間隔が狭くなって行く。ハニカムセグメントの外形上の差異がこの程度であるにもかかわらず、本発明のハニカム構造体は、従来のハニカム構造体よりも、振動や排圧によるハニカムセグメントの移動(ずれ)が生じ難い。これは、本発明のハニカム構造体では、ハニカムセグメントの一対の側面のみではあるが、ハニカムセグメント同士がくさびのように食い込むことによって相互に移動しにくくなること、及び、ハニカムセグメント間の接合面積の増加によるものと考えられる。
【0035】
また、本発明のハニカム構造体は、特許文献2に記載されたハニカム構造体のように、製造に際し、ハニカム構造体の一方の端面と他方の端面とで接合材の厚さを変化させるような、組み立てを困難にする工程を要しないため、比較的簡単に製造することができる。
【0036】
本発明に用いられるハニカムセグメントにおいて、多孔質の隔壁により区画形成された複数のセルは、第一端面から第二端面まで延びるものである。よって、第一端面と第二端面とでは、それら端面に開口しているセルの数は同一である。但し、前記のとおり、第一端面と第二端面とでは面積が異なるため、通常、一対の平行側面に平行な断面上においては、全てのセルの軸方向が同一方向(平行)とはならない。即ち、
図9に示すように、一対のテーパー側面6から離れた位置にあるセル7の軸方向は、ハニカムセグメント2の軸方向(長さ方向)とほぼ平行であるが、一対のテーパー側面6に近い位置にあるセル7の軸方向は、ハニカムセグメント2の軸方向に対して傾斜している。そして、その傾斜は、一対のテーパー側面6に近いセル7ほど大きくなる。
【0037】
ハニカムセグメントの軸方向がハニカム構造体の軸方向と同一である場合、ハニカム構造体の軸方向に沿って流れる排ガスは、その軸方向がハニカムセグメントの軸方向に対して傾斜しているセルを区画形成する隔壁と接触し易くなる。このため、本発明のハニカム構造体をフィルタに用いると、PMの捕集効率が向上する。また、ハニカム構造体の最外周に位置するハニカムセグメントにおいて、その軸方向が、ハニカムセグメントの軸方向に対して傾斜した一部のセルの内、その傾斜の度合いが大きいものは、外周の研削加工によって排ガスが殆ど流れ込まないデッドチャンネルとなる。そして、そのデッドチャンネルとなったセルにより、保温効果が生じ、フィルタを再生する際の加熱効率が向上する。
【0038】
本発明においては、前記のとおり、第一端面3の面積をS1、第二端面4の面積をS2としたとき、S1/S2が0.8以上である。S1/S2が0.8未満であると、セルの断面積の減少によって、ハニカム構造体の圧力損失が増大し、エンジンの排気系に設置されるPM捕集フィルタとして用いた場合に、エンジンの出力低下を招くことがある。尚、圧力損失の増大抑制の観点から、S1/S2は、0.82以上であることが好ましく、0.89以上であることが特に好ましい。但し、本発明においては、第二端面4の面積が第一端面3の面積よりも大きいことから、S1/S2が1以上となることはない。
【0039】
また、本発明においては、前記のとおり、第一端面3に対して垂直方向から見た場合に、
図6に示す距離X及び距離Zが共に0.3〜7mmである。距離X及び/又は距離Zが0.3mm未満では、振動や排圧によるハニカムセグメントの移動を十分に抑制することができないことがある。また、距離X及び/又は距離Zが7mmを超えると、セルの断面積が減少するために、及び、排ガスが流れる方向の変化が大きくなるために、ハニカム構造体の圧力損失が増大し、エンジンの排気系に設置されるPM捕集フィルタとして用いた場合に、エンジンの出力低下を招くことがある。尚、振動や排圧によるハニカムセグメントの移動の抑制、及び圧力損失の増大抑制の観点から、距離X及び距離Zは、共に0.3〜5mmであることが好ましく、0.5〜3mmであることが特に好ましい。また、距離Xと距離Zとは、同一の値であってもよいし、異なる値であってもよい。
【0040】
本発明においては、ハニカムセグメント2の長さ方向に直交する断面の角部が、半径0.1〜5mmの円弧状に形成されていることが好ましい。このように、角部が円弧状に形成されていると、角部への応力集中を抑制することができ、ハニカムセグメント2が破損し難くなる。
【0041】
本発明において、ハニカムセグメント2の材質は、コージェライト、炭化珪素、ムライト、アルミニウムチタネート、ゼオライト、バナジウム及びアルミナからなる群より選択される少なくとも一種を主成分とするものであることが好ましい。ここで、「主成分」とは、全体の中の50質量%を超える成分を意味する。
【0042】
ハニカムセグメント2の隔壁8の平均細孔径は、5〜100μmであることが好ましく、8〜50μmであることが特に好ましい。隔壁8の平均細孔径が5μm未満では、ハニカム構造体の圧力損失が増大し、エンジンの排気系に設置されるPM捕集フィルタとして用いた場合に、エンジンの出力低下を招くことがある。また、隔壁8の平均細孔径が100μmを超えると、十分な強度が得られないことがある。尚、ここで言う「平均細孔径」は、水銀ポロシメータによって測定された値である。
【0043】
ハニカムセグメント2の隔壁8の気孔率は、30〜80%であることが好ましく、35〜75%であることが特に好ましい。隔壁8の気孔率が30%未満では、ハニカム構造体の圧力損失が増大し、エンジンの排気系に設置されるPM捕集フィルタとして用いた場合に、エンジンの出力低下を招くことがある。また、隔壁8の気孔率が80%を超えると、十分な強度が得られないことがある。尚、ここで言う「気孔率」は、水銀ポロシメータによって測定された値である。
【0044】
ハニカムセグメント2の隔壁8の厚さは、40〜600μmであることが好ましく、100〜400μmであることが特に好ましい。隔壁8の厚さが40μm未満であると、十分な強度が得られないことがある。また、隔壁8の厚さが600μmを超えると、ハニカム構造体の圧力損失が増大し、エンジンの排気系に設置されるPM捕集フィルタとして用いた場合に、エンジンの出力低下を招くことがある。
【0045】
本発明において、複数個のハニカムセグメント2を一体的に接合している接合材9の厚さは、0.05〜3.0mmであることが好ましい。接合材9の材質は、特に制限されないが、例えば、炭化珪素、アルミナ、窒化珪素等のセラミック粒子や無機繊維が、コロイダルシリカ、コロイダルアルミナにより結合されたものを好適例として挙げることができる。このような材質の接合材は、ハニカム構造体に熱応力が生じた際に、その熱応力を効果的に緩和することができる。
【0046】
本発明のハニカム構造体1の形状(外形)は、特に限定されず、例えば、円柱状、楕円柱状、多角柱状等の形状とすることができる。尚、本発明のハニカム構造体においては、所望の形状を得るために、複数個のハニカムセグメントを接合材で接合した後、外周研削加工を施すことが好ましい。この外周研削加工により、加工後のハニカム構造体の最外周に位置するハニカムセグメントは、それ以外のハニカムセグメント(以下、「完全セグメント」と言う場合がある。)とは異なる形状を呈するようになる。即ち、ハニカム構造体の最外周に位置するハニカムセグメントは、外周研削加工により、その一部が除去されるため、完全ハニカムセグメントから、その除去された部分を欠いた形状となる。外周研削加工後の加工面(ハニカム構造体の外周面)は、セルが露出した状態になっているので、
図1に示すように、その加工面に外周コート層10を形成することが好ましい。外周コート層10の形成材料には、接合材の形成材料と同じ材料を用いることが好ましい。
【0047】
本発明においては、ハニカムセグメントのセル形状(セルの軸方向に直交する断面におけるセルの形状)も、特に限定されないが、四角形、六角形、八角形等の多角形あるいはそれらを組み合わせたもの、例えば四角形と六角形を組み合わせたもの等が好ましい。
【0048】
本発明のハニカム構造体をPM捕集フィルタに用いる場合には、
図10に示すように、各ハニカムセグメント2における所定のセル7aの第一端面3側の開口端部及び残余のセル7bの第二端面4側の開口端部を目封止する目封止部12を形成することが好ましい。このように、ハニカムセグメント2の各セル7の一方の開口端部を目封止部12にて目封止することにより、ハニカム構造体は、高いPM捕集効率を持ったウォールフロー型フィルタとなる。このウォールフロー型フィルタにおいては、ハニカム構造体の入口端面からセル内に流入した排ガスが、隔壁を透過した後、出口端面からセル外に流出する。そして、排ガスが隔壁を透過する際に、隔壁が濾過層として機能し、排ガス中に含まれるPMが捕集される。尚、目封止部12は、第一端面3と第二端面4とが、それぞれ、目封止部12によって開口端部が目封止されたセル7と、目封止部12によって開口端部が目封止されていないセル7とにより、市松模様を呈するような配置となるように形成されることが好ましい。
【0049】
目封止部12の材質は、ハニカムセグメント2の材質として好ましいとされた材質であることが好ましい。目封止部12の材質とハニカムセグメント2の材質とは、同じ材質であってもよいし、異なる材質であってもよい。
【0050】
(2)ハニカム構造体の製造方法:
本発明に係るハニカム構造体の製造方法の一例について説明する。まず、ハニカムセグメントを作製するために、セラミック原料を含有する成形原料を作製する。成形原料に含有されるセラミック原料としては、コージェライト化原料、コージェライト、炭化珪素、珪素−炭化珪素系複合材料、ムライト、チタン酸アルミニウム、ゼオライト、バナジウムからなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。尚、コージェライト化原料とは、シリカが42〜56質量%、アルミナが30〜45質量%、マグネシアが12〜16質量%の範囲に入る化学組成となるように配合されたセラミック原料である。コージェライト化原料は、焼成されることにより、コージェライトとなる。
【0051】
成形原料は、前記のようなセラミック原料に、分散媒、有機バインダ、無機バインダ、造孔材、界面活性剤等を混合して調製することが好ましい。各原料の組成比は、特に限定されず、作製しようとするハニカム構造体の構造、材質等に合わせた組成比とすることが好ましい。
【0052】
次に、成形原料を混練して坏土を形成する。成形原料を混練して坏土を形成する方法には、特に制限はない。好適な方法としては、例えば、ニーダー、真空土練機等を用いる方法を挙げることができる。
【0053】
次いで、坏土を押出成形してハニカム成形体を作製する。ここで、押出成形するハニカム成形体は、両端面が合同な四角形である四角柱状の外形を有するものである。続いて、このハニカム成形体が乾燥する前に、ハニカム成形体の対向する一対の側面を、平面を有する2枚の抑え板を用いて挟み込み、その一対の側面の間隔が、一方の端面側から他方の端面側に向かって狭くなって行くように加圧変形させる。この加圧変形により、一方の端面(最終的に第一端面となる端面)の面積が、他方の端面(最終的に第二端面となる端面)の面積よりも小さいハニカム成形体が得られる。乾燥前のハニカム成形体は、軟弱であるため、前記のような抑え板を用いて容易に加圧変形させることができる。この時、加圧変形させない方の対向する他の一対の側面を2枚の平板で挟むように保持すると、変形させない方の対向する他の一対の側面の平面状態をより良好に保つことができるので好ましい。
【0054】
こうして加圧変形させた後、ハニカム成形体を乾燥する。乾燥方法は、特に限定されるものではない。好適な乾燥方法としては、例えば、熱風乾燥、マイクロ波乾燥、誘電乾燥、減圧乾燥、真空乾燥、凍結乾燥等を挙げることができる。これらの内でも、誘電乾燥、マイクロ波乾燥又は熱風乾燥を単独で又は組合せて行うことが好ましい。
【0055】
次に、乾燥後のハニカム成形体(ハニカム乾燥体)を焼成して、ハニカムセグメントを作製する。尚、この焼成(本焼成)の前に、バインダ等を除去するため、仮焼(脱脂)を行うことが好ましい。仮焼の条件は、特に限定されるものではなく、有機物(有機バインダ、界面活性剤、造孔材等)を除去することができるような条件あればよい。一般に、有機バインダの燃焼温度は100〜300℃程度、造孔材の燃焼温度は200〜800℃程度である。そのため、仮焼の条件としては、酸化雰囲気において、200〜1000℃程度で、3〜100時間程度加熱することが好ましい。ハニカム成形体を焼成(本焼成)する条件(温度、時間、雰囲気等)は、成形原料の種類により異なるため、その種類に応じて適当な条件を選択すればよい。例えば、コージェライト化原料を使用している場合には、焼成温度は、1410〜1440℃が好ましい。また、焼成時間は、最高温度でのキープ時間として、4〜8時間が好ましい。仮焼、本焼成を行う装置は、特に限定されない。好適な装置としては、例えば、電気炉、ガス炉等を挙げることができる。
【0056】
目封止部を備えるハニカム構造体を作製する場合には、焼成後、ハニカムセグメントに目封止部を形成する。目封止部は、所定のセルの一方の端面(第一端面)側の開口端部及び残余のセルの他方の端面(第二端面)側の開口端部を目封止するように形成する。この目封止部の形成には、従来公知の方法を用いることができる。具体的な方法の一例としては、まず、前記のような方法で作製したハニカムセグメントの端面にシートを貼り付ける。次いで、このシートの、目封止部を形成しようとするセルに対応した位置に穴を開ける。次に、このシートを貼り付けたままの状態で、目封止部の形成材料をスラリー化した目封止用スラリーに、ハニカムセグメントの端面を浸漬し、シートに開けた孔を通じて、目封止しようとするセルの開口端部内に目封止用スラリーを充填する。こうして充填した目封止用スラリーを乾燥した後、焼成して硬化させることにより、目封止部が形成される。目封止部の形成材料には、ハニカムセグメントの形成材料と同じ材料を用いることが好ましい。尚、目封止部の形成は、ハニカム成形体の乾燥後、仮焼後あるいは焼成(本焼成)後の段階の何れの段階で行ってもよい。
【0057】
次に、得られた各ハニカムセグメントの側面に、スラリー状の接合材を塗布し、その接合材により、ハニカムセグメントの側面同士が接合されるように、複数個のハニカムセグメントを組み合わせる。この組み合わせに際しては、複数個のハニカムセグメントが、一定の方向に延びる複数の平行な列を構成するように配置する。また、各列を構成するハニカムセグメントが、隣接するハニカムセグメント同士の関係において、それぞれの第一端面の向きが逆向きになるとともに、それぞれの一対のテーパー側面の内の一方の側面同士が向かい合った状態となるように配置する。複数個のハニカムセグメントをこのように組み合わせ、接合材を加熱乾燥させることにより、複数個のハニカムセグメントが接合材を介して接合一体化されたハニカム構造体が得られる。
【0058】
接合材としては、例えば、無機繊維、コロイダルシリカ、粘土、セラミック粒子等の無機原料に、有機バインダ、発泡樹脂、分散剤等の添加材と水とを加えて混練し、スラリー状としたものが、好適に使用できる。接合材をハニカムセグメントの側面に塗布する方法は、特に限定されず、刷毛塗り等の方法を用いることができる。
【0059】
複数個のハニカムセグメントを接合材によって接合した後、必要に応じて、得られたハニカム構造体の外周部分に研削加工を施し、円柱状等の所望の形状とする。この場合、研削加工後の外周部分(加工面)に、外周コート層を形成することが好ましい。
【0060】
外周コート層は、研削加工後のハニカム構造体の加工面に、外周コート材を塗布することにより形成される。外周コート材としては、無機繊維、コロイダルシリカ、粘土、セラミック粒子等の無機原料機バインダ、発泡樹脂、分散剤等の添加材と水とを加えて混練し、スラリー状としたものが好適に使用できる。外周コート材をハニカム構造体の加工面に塗布する方法は、特に限定されない。好適な方法としては、例えば、研削加工後のハニカム構造体をろくろ上で回転させながら、その加工面に、外周コート材をゴムヘラなどでコーティングする方法を挙げることができる。
【実施例】
【0061】
以下、本発明を実施例に基づいて更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0062】
(実施例1〜40及び比較例1〜18)
SiC粉末80質量部と、金属Si粉末20質量部とを混合してセラミック原料を得た。得られたセラミック原料に、造孔材、バインダ、界面活性剤、及び水を加えて、成形原料を作製し、それを混練して坏土を得た。造孔材としては澱粉を用いた。また、バインダとしては、メチルセルロース及びヒドロキシプロポキシルメチルセルロースを用いた。界面活性剤としては、ラウリン酸ナトリウムを用いた。各原料の添加量は、セラミック原料100質量部に対して、造孔材5質量部、メチルセルロース3質量部、ヒドロキシプロポキシルメチルセルロース3質量部、界面活性剤1質量部、水32質量部とした。
【0063】
得られた坏土を、ハニカム成形体成形用口金を用いて押出成形し、両端面が合同な四角形である四角柱状の外形を有するハニカム成形体を得た。そして、このハニカム成形体が乾燥する前に、得られたハニカム成形体の対向する一対の側面を、平面を有する2枚の抑え板を用いて挟み込み、その一対の側面の間隔が一方の端面(第二端面)側から他方の端面(第一端面)側に向かって狭くなって行くように加圧変形させた。この時、前記一方の端面(第二端面)の寸法が変化しないように加圧変形させた。その後、ハニカム成形体をマイクロ波及び熱風で乾燥してハニカム乾燥体を得た。
【0064】
次いで、このハニカム乾燥体の各セルの一方の開口端部に、目封止部を形成した。目封止部の形成は、開口端部に目封止部が形成されたセルと、開口端部に目封止部が形成されていないセルとによって、ハニカム乾燥体の各端面が、市松模様を呈するように行った。目封止部の形成方法としては、まず、ハニカム乾燥体の端面にシートを貼り付け、このシートの、目封止部を形成しようとするセルに対応した位置に穴を開けた。続いて、このシートを貼り付けたままの状態で、目封止部の形成材料をスラリー化した目封止用スラリーに、ハニカム乾燥体の端面を浸漬し、シートに開けた孔を通じて、目封止しようとするセルの開口端部内に目封止用スラリーを充填した。尚、目封止部の形成材料には、前記成形原料と同じものを用いた。
【0065】
こうして、セルの開口端部内に充填した目封止用スラリーを乾燥した後、このハニカム乾燥体を、大気雰囲気にて約400℃で仮焼(脱脂)した。その後、Ar不活性雰囲気にて約1450℃で焼成して、
図6〜8に示すL,V,W,X,Y,Zの値及び、第一端面の面積S1と第二端面の面積S2との面積比(S1/S2)の値が、表1〜3に示す値となるようなハニカムセグメントを得た。尚、これらのハニカムセグメントは、気孔率が45%、平均細孔径が10μmであり、第二端面におけるセル数は62個/cm
2、第二端面における隔壁の厚さは0.15mmであった。
【0066】
続いて、アルミナ粉に、シリカファイバー、有機バインダ及び水を添加してスラリー状の接合材を得た。この接合材を、ハニカムセグメントの側面に厚さ約1mmとなるように塗布し、この接合材によって、ハニカムセグメントの側面同士が接合されるように、複数個のハニカムセグメントを組み合わせた。この組み合わせに際しては、
図2又は
図3に示すように、複数個のハニカムセグメント2が、一定の方向に延びる複数の平行な列11を構成するよう配置した。更に、各列11を構成するハニカムセグメント2が、
図4に示すように、隣接するハニカムセグメント2a,2b同士の関係において、それぞれの第一端面3の向きが逆向きになるとともに、それぞれの一対のテーパー側面の内の一方の側面6a同士が向かい合った状態となるように配置した。尚、実施例1〜30及び比較例1〜14は、
図3に示すように、隣接する列11a,11bにそれぞれ含まれている、第一端面3の向きが同一であるハニカムセグメント2aの位置が、列の延びる方向において、一致するように配置した。また、実施例31〜40及び比較例15〜18は、
図2に示すように、隣接する列11a,11bにそれぞれ含まれている、第一端面3の向きが同一であるハニカムセグメント2aの位置が、列の延びる方向において、第一端面3または第二端面4の大きさの1/2ずつずれた状態となるように配置した。そして、適宜、外部より圧力を加えるなどして、ハニカムセグメント同士を圧着させながら、120℃で2時間乾燥させてハニカム構造体を得た。
【0067】
次いで、このハニカム構造体の外形が、直径210mmの円柱状になるように、その外周を研削加工した。研削加工後、その加工面に接合材と同じ組成の外周コート材を0.5mmの厚さで塗布し、700℃で2時間乾燥硬化させて外周コート層を形成し、実施例1〜40及び比較例1〜18及び後述する比較例19のハニカム構造体を得た。
【0068】
(比較例19(評価の基準となるハニカム構造体))
ハニカム成形体の加圧変形を行わず、二対の対向する2つの側面が共に平行で、第一端面の寸法と第二端面の寸法とを同一のままにした以外は、実施例1〜40及び比較例1〜18と同様の方法で比較例19のハニカム構造体を得た。ハニカム成形体の加圧変形を行っていないため、得られたハニカム構造体は、全てのセルの軸方向がハニカムセグメントの軸方向と同一である。尚、この比較例19のハニカム構造体は、単一のハニカム構造体ではなく、その第二端面の寸法が、実施例1〜40及び比較例1〜18のそれぞれのハニカム構造体を構成するハニカムセグメントの第二端面の寸法(V及びWの値)と同一になるように作製されたハニカムセグメントを用いて構成された複数のハニカム構造体である。そして、この比較例19のハニカム構造体は、後述する「加熱振動試験」、「圧力損失」及び「PM排出個数」において評価の基準となるハニカム構造体である。即ち、実施例1〜40及び比較例1〜18のハニカム構造体の評価を行う際に、それら各ハニカム構造体を構成するセグメントの第二端面の寸法と同一の寸法の第二端面を有するハニカムセグメントを用いて構成された比較例19のハニカム構造体が、当該評価の基準となる。
【0069】
(評価)
実施例1〜40及び比較例1〜19のハニカム構造体について、下記の方法で、加熱振動試験、圧力損失の測定及びPM排出個数の測定を行った。そして、その試験結果又は測定結果に基づいて、A,B,C,Dの4段階評価を行い、評価結果を表1〜3に示した。
【0070】
[加熱振動試験]
ハニカム構造体の外周に、非熱膨張性セラミックマットを巻き、ステンレス(SUS430)製のキャニング用缶体に押し込んでキャニング構造体とした後、加熱振動試験を行った。試験条件は、入口ガス温度を950℃、振動加速度を50G、振動周波数を200Hzとし、200時間連続して、キャニング構造体に加熱した排ガスを流入させながら、ハニカム構造体の軸方向に振動を与えた。この試験の評価基準は、以下のとおりである。
A:加熱振動試験後、缶体を解体して取り出したハニカム構造体の何れのハニカムセグメントにも移動が認められず、かつ、ハニカム構造体の周囲を手で強く(5kg程度の力で)押しても、ハニカムセグメントが移動しない。
B:加熱振動試験後、缶体を解体して取り出したハニカム構造体の何れのハニカムセグメントにも移動が認められないが、ハニカム構造体の周囲を手で強く(5kg程度の力で)押すと、ハニカムセグメントが移動する。
C:加熱振動試験後、ハニカム構造体の少なくとも1つのハニカムセグメントに移動が認められるが、最も大きく移動していたハニカムセグメントの移動量が0.5mm以下である。
D:加熱振動試験後、ハニカム構造体の少なくとも1つのハニカムセグメントに移動が認められ、最も大きく移動していたハニカムセグメントの移動量が0.5mmを超える。
【0071】
尚、この加熱振動試験の評価において、評価がA〜Cであるものは、振動や排圧によるハニカムセグメントの移動を効果的に抑制でき、フィルタとしての通常の使用において問題が無いものであるといえる。一方、評価がDであるものは、振動や排圧によるハニカムセグメントの移動を十分に抑制することができず、フィルタとしての通常の使用において問題が生じる可能性が有る。
【0072】
[圧力損失]
ハニカム構造体に、大気圧(1atm)、室温(20℃)の空気を12m
3/分で流して、圧力損失を測定した。この測定結果に基づいて、圧力損失の評価を行った。評価基準は、以下のとおりである。
A:比較例19のハニカム構造体の圧力損失を100%としたときの相対的な圧力損失が、102%以下である。
B:比較例19のハニカム構造体の圧力損失を100%としたときの相対的な圧力損失が、102%を超え、104%以下である。
C:比較例19のハニカム構造体の圧力損失を100%としたときの相対的な圧力損失が、104%を超え、106%以下である。
D:比較例19のハニカム構造体の圧力損失を100%としたときの相対的な圧力損失が、106%を超える。
【0073】
尚、この圧力損失の評価において、評価がA〜Cであるものは、エンジン性能への影響が小さく、フィルタとしての通常の使用において問題が無いものであるといえる。一方、評価がDであるものは、エンジン性能への影響が無視できないほど圧力損失が大きく、フィルタとしての使用には適さない。
【0074】
[PM排出個数]
ハニカム構造体の外周を非熱膨張性セラミックマットで巻き、ステンレス製のキャニング用缶体に押し込んでキャニング構造体とした後、排気量2.0Lの4気筒ディーゼルエンジン車のエンジン排気マニホルドの出口側に設置した。そして、このディーゼルエンジン車を、シャーシダイナモ上でNEDC(New European Driving Cycle)モードで走行させた際のPM排出個数(個/km)を測定した。この測定結果に基づいて、PM排出個数の評価を行った。評価基準は、以下のとおりである。
A:比較例19のハニカム構造体のPM排出個数と比較して、PM排出個数が30%以上減少している。
B:比較例19のハニカム構造体のPM排出個数と比較して、PM排出個数が10%以上、30%未満の範囲で減少している。
C:比較例19のハニカム構造体のPM排出個数と比較して、PM排出個数が同等であるか、10%未満であるが減少している。
D:比較例19のハニカム構造体のPM排出個数と比較して、PM排出個数が増加している。
【0075】
尚、このPM排出個数の評価において、評価がA〜Cであるものは、PM捕集性能が良好であり、フィルタとしての通常の使用において問題が無いものであるといえる。一方、評価がDであるものは、PM捕集性能が低く、フィルタとしての使用には適さない。
【0076】
【表1】
【0077】
【表2】
【0078】
【表3】
【0079】
(考察)
表1〜3に示すとおり、本発明の実施例である実施例1〜40のハニカム構造体は、振動や排圧によるハニカムセグメントの移動が効果的に抑制されているとともに、圧力損失やPM捕集性能もフィルタとしての通常の使用において問題が無いものであった。一方、X又はZが0.3mm未満のハニカムセグメントを用いた比較例1,2,4,15のハニカム構造体は、振動や排圧によるハニカムセグメントの移動を十分に抑制することができず、フィルタとしての通常の使用において問題が生じる可能性が有る。更に、X及びZが0.3mm未満のハニカムセグメントを用いた比較例11のハニカム構造体は、振動や排圧によるハニカムセグメントの移動を十分に抑制することができないだけでなく、PM捕集性能も低く、フィルタとしての使用には適さないものであった。また、Zが7mmを超えている、及び/又は、S1/S2が0.8未満である比較例3,5〜10,12〜14,16〜18は、エンジン性能への影響が無視できないほど圧力損失が大きく、フィルタとしての使用には適さないものであった。