(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化などの環境問題への対応として、内燃機関用潤滑油に対しても燃費低減効果が求められている。この課題を解決する技術として、エンジン油の粘度指数の向上(粘度指数向上剤の配合によるマルチグレード化)と高温高剪断粘度(以下、HTHS;High
Temperature High Shear Viscosityと表記)の低減が知られている(特許文献1及び2等)。
【0003】
粘度指数向上剤の中で、特にポリアルキル(メタ)アクリレート系粘度指数向上剤を添加した潤滑油は、その他の粘度指数向上剤を添加した場合と比べて粘度指数が高く、かつHTHSを有効に低減できることから、これまでにも該粘度指数向上剤を用いた省燃費型の内燃機関用潤滑油組成物が多く開示されている。(例えば特許文献1〜特許文献3等)
【0004】
しかしながら、一般的にポリアルキル(メタ)アクリレート系粘度指数向上剤は、その他の主要な粘度指数向上剤、例えばエチレン−プロピレン共重合体や、スチレン−イソプレン共重合体などの粘度指数向上剤と比較すると耐コーキング性が顕著に劣るという課題があり、内燃機関の中でもピストンリング溝部やターボチャージャをはじめとする熱負荷の高い部位において特にコーキングを生じやすいことが知られていた。従って、ポリアルキル(メタ)アクリレート系粘度指数向上剤を用いて高粘度指数の潤滑油を得る場合、耐コーキング性能を両立することが課題であった。(例えば、非特許文献1、特許文献4)
【0005】
さらには、ポリアルキル(メタ)アクリレート系粘度指数向上剤を配合した潤滑油組成物は、剪断安定性に劣るという欠点もあり、長期間に渡る使用の中で剪断による粘度低下を起こし、新油当時の油膜保持性能が低下する恐れがあった。(例えば、特許文献5)
このように、ポリアルキル(メタ)アクリレート系粘度指数向上剤を配合し、高い粘度指数を付与した内燃機関用潤滑油組成物においては、耐コーキング性のみならず、剪断安定性の面でも課題を有しており、これらの性能を高いレベルで両立する内燃機関用潤滑油組成物の開発が望まれていた。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(1)基油
本発明の
ディーゼルエンジン用潤滑油組成物は、基油を必須の成分として含み、本発明に使用できる基油としては、鉱油系基油及び合成系基油の中から選ばれる一種以上のものを用いることができる。
【0015】
鉱油系基油としては、例えば原油の潤滑油留分を溶剤精製、水素化精製、水素化分解精製、水素化脱蝋などの精製法を適宜組合せて精製したものが挙げられる。なお、後述の粘度指数が125以上である基油としては、水素化精製油、触媒異性化油などに溶剤脱蝋または水素化脱蝋などの処理を施した高度に精製されたパラフィン系鉱油(高粘度指数鉱油系潤滑油基油)等が挙げられる。
【0016】
合成系潤滑油基油としては、例えば、メタン等の天然ガスを原料として合成されるイソパラフィン、α−オレフィンオリゴマー、ジアルキルジエステル類、ポリオール類、アルキルベンゼン類、ポリグリコール類、フェニルエーテル類などが挙げられる。
【0017】
基油の性状としては、通常内燃機関用潤滑油に用いられるものを適宜使用することができるが、本発明の高い粘度指数と優れた耐コーキング性を発揮する上で、その性状は100℃での動粘度(JIS−K−2283(ASTM D445))が3〜12mm2/s、粘度指数が120以上であることが好ましく、100℃動粘度が3〜8mm2/s、粘度指数が125以上であることがより好ましく、100℃動粘度が3.5〜6.5mm/s、粘度指数が130以上であることが最も好ましい。このような性状の基油は、アメリカ石油協会(API)の基油分類で、グループII基油(硫黄分0.03質量%以下、飽和分90質量%以上、粘度指数80〜120未満の性状を有する基油)とグループIII基油(硫黄分0.03質量%以下、飽和分90質量%以上、粘度指数120以上)を混合して上記性状に合わせたものであってもよいが、グループIII以上に分類される基油を使用することが好ましい。
【0018】
本発明の
ディーゼルエンジン用潤滑油組成物に用いられる基油は、%CPが72〜90、%CNが10〜28、%CAが2.0以下であることが好ましく、%CPが75〜88、%CNが12〜25、%CAが0.5以下であることがさらに好ましい。%CPを72以上、%CNを28以下、%CAを2.0以下とすることで、高い酸化安定性と優れた粘度特性を得やすい傾向にある。また、%CPを90以下、%CNを10以上とすることで、各種添加剤の溶解性を確保でき、さらに優れた低温粘度特性を両立できるため好ましい。なお、ここでいう%CP、%CN、%CAとはASTM D3238に規定の「n−d−m環分析法」に基づいて求めることができ、それぞれ、パラフィン炭素数、ナフテン炭素数、芳香族炭素数の全炭素数に対する百分率のことを意味する。
【0019】
本発明の
ディーゼルエンジン用潤滑油組成物に用いられる基油は、JIS K 2256「アニリン点試験方法」において110℃〜130℃であることが好ましい。アニリン点を110℃以上とすることで、優れた粘度特性を得やすいため好ましい。さらにアニリン点を130℃以下とすることで、添加剤の溶解性を確保しやすい傾向にあるため好ましい。また、シール材料適合性を確保する観点からも、アニリン点を適切な範囲にする必要があり、この観点からも110℃〜130℃であることが好ましい。
本発明の
ディーゼルエンジン用潤滑油組成物に用いられる基油は、蒸発性を考慮し、JASO等の規格への適合性の観点から、Noack蒸発量については15質量%以下であることが好ましい。なお、ここでいうNoack蒸発量とは、ASTM D 5800に準拠して測定された基油の蒸発損失量(質量%)を意味する。
【0020】
(2)粘度指数向上剤
本発明の
ディーゼルエンジン用潤滑油組成物は、粘度指数向上剤として特定構造を有する櫛形ポリマーを必須の成分として含有する。ここで、櫛型ポリマーとは、ポリマー主鎖に対して複数の伸長した側鎖を櫛状に有するポリマーを表す一般的な総称である。
【0021】
本発明に用いることができる櫛形ポリマーは、重量平均分子量が200,000以上であり、ポリオレフィンマクロモノマーに基づく繰り返し単位と、炭素数1〜30のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートに基づく繰り返し単位およびスチレン系モノマーに基づく繰り返し単位とを主鎖に含む櫛形ポリマーであり、高分子量のポリオレフィンマクロモノマー部分が主鎖から伸長し、櫛状の構造を示すものである。
【0022】
本発明の櫛形ポリマーを構成するポリオレフィンマクロモノマーのポリオレフィンとしては、炭素数2〜10のアルケンや、炭素数4〜10程度のアルカジエンの重合体を挙げることができる。炭素数2〜10のアルケンとしては、エチレン、プロピレン、ノルマルブテン、イソブテンなどが使用できる。炭素数4〜10のアルカジエンとしては、ブタジエン、イソプレンなどが使用できる。ポリオレフィンマクロモノマーのポリオレフィン基に不飽和結合がある場合は不飽和結合の除去を目的として、最終的に水素化処理されることが好ましい。本発明においては、これらのオレフィンの中で好適な例としてはポリブタジエン、ポリイソプレンであり、最も好適なものはポリブタジエンである。
【0023】
ポリオレフィンマクロモノマーは、ポリオレフィン由来の繰り返し単位を、ポリオレフィンマクロモノマー全質量に対して、好ましくは70質量%以上含有し、より好ましくは90質量%以上含有する。ポリオレフィンマクロモノマーは、その構造中に先述のポリオレフィン以外のモノマー、例えば、アルキル(メタ)アクリレートやスチレン系モノマー等に由来する構造を含有してもよいが、これらはポリオレフィンマクロモノマーの全質量に対して、好ましくは30質量%以下であり、より好ましくは15質量%以下である。
【0024】
本発明のポリオレフィンマクロモノマーの数平均分子量(Mn)は、1,000〜10,000、好ましくは1,500〜8,500、より好ましくは2,000〜7,000、最も好ましくは3,000〜6,000の範囲にある。
なお、本発明で表記する重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)は、装置 :Shodex GPC−101、カラム :Shodex GPC LF−804×3本、検出器
:示差屈折検出器(40℃)、移動相 :THF、流量 :1ml/min、試料濃度 :約1.0mass/vol% THF、注入量 :100μlによって測定された、ポリスチレン換算値を意味するものとする。
【0025】
上述のポリオレフィンマクロモノマーは、ラジカル重合性を付与するための官能基を有する。この官能基は好ましくはポリオレフィンマクロモノマー末端部に1つ含まれ、これによってポリオレフィンマクロモノマーに唯一つの重合部位を与え、特定の低分子量のモノマーとの共重合により櫛形構造を得ることができる。ラジカル重合性官能基として、(メタ)アクリロイル基を付与したものを好ましく使用でき、メタクリロイル基が特に好ましい。
(メタ)アクリロイル基を付与する一般的な方法としては、例えば、末端をヒドロキシル基あるいはアミノ基にて官能化されたポリオレフィンを、メチル(メタ)アクリレートあるいはエチル(メタ)アクリレートを用いてエステル交換あるいはアミノ分解することによって得ることができる。これらヒドロキシル基あるいはアミノ基で官能化されたポリオレフィンは、公知の方法で製造することができるほか、市場から製品として入手することもできる。
【0026】
ポリオレフィンマクロモノマーに由来する構造単位の櫛形ポリマー全質量に対する比率としては、10〜40質量%の範囲であることが好ましく、より好ましくは15〜35質量%、さらに好ましくは17〜32質量%、最も好ましくは20〜30質量%である。
【0027】
本発明に使用できる櫛形ポリマーは、上述したポリオレフィンマクロモノマーと、特定の低分子量のモノマーとをラジカル重合で共重合することによって得られる。低分子モノマーとしては、炭素数1〜30のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート、スチレン系モノマー、およびこれらの混合物から得られるモノマーを使用することができる。
【0028】
アルキル(メタ)アクリレートのアルキル基の炭素数は1〜30の範囲内にあることが必要であり、好ましくは炭素数1〜20であり、より好ましくは1〜16であり、最も好ましくは1〜14である。上記範囲内の炭素数を有するアルキル(メタ)アクリレートは単一であってもよいし、異なるアルキル基を有するものを組み合わせて使用することもできるが、炭素数1〜10のアルキル(メタ)アクリレートおよび、炭素数11〜30のアルキルメタアクリレートを混合することが好適である。また、炭素数1〜30のアルキル(メタ)アクリレートモノマーに由来する構造単位の比率は、櫛形ポリマーの総質量に対して、50質量%以上であることが好ましく、より好ましくは60質量%以上、最も好ましくは70質量%以上である。
【0029】
本発明に使用できる櫛形ポリマーに含有されるスチレン系モノマーとしては、スチレン、α―メチルスチレン、α―エチルスチレンなどを挙げることができるが、この中でスチレンが好適である。なお、これらスチレン系モノマーは単一種であってもよいし、複数種が混合されてもよい。スチレン系モノマーに由来する構造単位の比率としては、櫛形ポリマー全質量に対して0.5〜20質量%であることが好ましく、より好ましくは0.5〜15質量%であり、最も好ましくは1.0〜10質量%である。
【0030】
本発明に使用できる櫛形ポリマーは上述のモノマーに由来する構造単位に加え、その他の種類のモノマーに由来する構造単位を構造中に含有することができる。その他の種類のモノマーに由来する構造単位の櫛形ポリマー全質量に占める好適な比率は、20質量%以下であり、より好ましくは10質量%以下であり、最も好ましくは5質量%以下である。この中には、アミノ基やヒドロキシル基などの官能基や、イミダゾール基、モルホリン基等の窒素含有複素環構造を有するアルキル(メタ)アクリレート、所謂「分散型」アルキル(メタ)アクリレート構造を包含する。
【0031】
上記詳述したモノマーからなる櫛形ポリマーの重量平均分子量(Mw)は、本発明の優れた粘度指数向上効果を発現するために、200,000以上であることが必要であり、好ましくは250,000〜800,000であり、より好ましくは300,000〜600,000であり、最も好ましくは400,000〜500,000である。
【0032】
本発明の
ディーゼルエンジン用潤滑油組成物における櫛形ポリマーの好ましい添加量は、組成物全質量基準で、0.1〜10質量%であり、より好ましくは0.5〜8質量%であり、最も好ましくは1〜5質量%である。上記の好ましい範囲よりも添加量が少なすぎると、本発明の粘度指数向上効果が期待できない。逆に添加量が多すぎる場合、必要以上に潤滑油の粘度が増大することで省燃費性能が得られない恐れがあるほか、製造コストも上昇するために好ましくない。
【0033】
本発明においては上述した櫛形ポリマーを必須の成分として含むが、目的に応じてその他公知の粘度指数向上剤を組み合わせて使用することもできる。その他の粘度指数向上剤としては、通常内燃機関用潤滑油に用いられるポリアルキル(メタ)アクリレート類、オレフィンコポリマー類、ポリイソブチレン類、ポリアルキルスチレン類、スチレン−ブタジエン水素化共重合体類、スチレン−イソプレン水素化共重合体類、スチレン−無水マレイン酸エステル共重合体類、及びそれらに分散基を含有するもの等、公知の各種粘度指数向上剤を組み合わせて使用することができる。なお、スチレン−ブタジエン水素化共重合体類は、スチレン−ブタジエン共重合体類を水素化して、残存している二重結合を飽和結合に変えたものを云い、スチレン−イソプレン水素化共重合体類は、スチレン−イソプレン共重合体類を水素化して、残存している二重結合を飽和結合に変えたものを云う。
【0034】
ポリアルキル(メタ)アクリレート類、オレフィンコポリマー類、ポリイソブチレン類、ポリアルキルスチレン類、スチレン−ブタジエン水素化共重合体類、スチレン−イソプレン水素化共重合体類、スチレン−無水マレイン酸エステル共重合体類、及びそれらに分散基を含有するもの等の公知の各種粘度指数向上剤を1種単独又は2種又は3種以上を組み合わせて用いればよい。しかしながら、これらポリマーを必要以上に添加することは本発明の高い粘度指数および、優れた耐コーキング性と剪断安定性を低下させる恐れがあるため、その添加量は潤滑油組成物全量に対して5質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましく、1.5質量%以下であることがさらに好ましく、0.5質量%以下であることが最も好ましい。
【0035】
(3)コハク酸イミド系分散剤
本発明の コハク酸イミド系分散剤としては、下記一般式(1)又は一般式(2)で表されるコハク酸イミドが使用できる。
また、下記一般式(1)又は一般式(2)で表されるコハク酸イミドをホウ素化合物で変性させた、ホウ素変性コハク酸イミドが使用できる。ホウ素変性コハク酸イミドを得るためのホウ素化合物としては、ホウ酸、ホウ酸無水物、ハロゲン化ホウ素、ホウ酸エステル、ホウ酸アミド、酸化ホウ素などが例示でき、ホウ酸が好ましいものとして例示できる。
【0037】
(上記一般式(1)又は一般式(2)において、R
1およびR
3はいずれも数平均分子量800〜2500(ポリスチレン換算)のアルキル基またはアルケニル基、R
2は炭素数2〜5のアルキレン基、nは1〜10の整数である。)
【0038】
本発明の優れた耐コーキング性を得る上で、上記一般式(1)又は一般式(2)のコハク酸イミドと、同コハク酸イミドをホウ素変性したものとを併用して使用することが好ましい。
【0039】
上記一般式(1)又は一般式(2)のコハク酸イミド系分散剤の好ましい配合量は、組成物全量に対し、窒素量換算で100〜1,000質量ppm、好ましくは200〜800質量ppm
、より好ましくは300〜600質量ppmである。さらにホウ素変性コハク酸イミドをホウ素量換算で100〜800質量ppm、好ましくは120〜600質量ppm、より好ましくは150〜400質量ppmの量で配合することが望ましい。上記の好ましい配合量になるよう、上記一般式(1)又は一般式(2)のコハク酸イミドを1種以上と、ホウ素変性コハク酸イミド1種以上とを併用することが好ましい。特にホウ素含有量を上記の好ましい範囲とすることによって、本発明の耐コーキング性能のより一層の向上が期待できる。
【0040】
(4)ジアルキルジチオリン酸亜鉛
本発明のエンジン油は、摩耗防止性能の観点から、ジアルキルジチオリン酸亜鉛を配合することが好ましい。ジアルキルジチオリン酸亜鉛のアルキル基は第一級であっても第二級であってもよく、炭素数3〜12のアルキル基を有するジアルキルジチオリン酸亜鉛を含有することが好ましい。
上記ジアルキルジチオリン酸亜鉛の好ましい配合量は、組成物全量に対し、リン量換算で0.01〜0.2質量%であり、より好ましい配合量はエンジン油組成物全量に対し、リン量換算で0.03〜0.14質量%である。
【0041】
(5)金属型清浄剤
金属型清浄剤としてアルカリ土類金属サリシレート、アルカリ土類金属スルホネート又はアルカリ土類金属フェネートの3種の成分を単独で用いてもよいし、必要に応じて2種又は3種を混合して用いてもよい。また、これらの3種の各成分は、それぞれ1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。アルカリ土類金属としてはカルシウムが最も好適である。これら金属型清浄剤の配合量は、潤滑油組成物全量基準で、アルカリ土類金属量として0.05〜0.4質量%であり、好ましくは0.15〜0.3質量%である。金属型清浄剤の配合がこれら範囲よりも少ない場合、十分な酸中和性や清浄性が得られず、逆にこれよりも多い場合、排ガス後処理装置に悪影響を及ぼす可能性がありいずれも好ましくない。
【0042】
(6)酸化防止剤
本発明のエンジン油には、フェノール系、アミン系、または有機モリブデン系の酸化防止剤を単独で用いてもよいし、必要に応じて2種以上を混合して用いてもよい。また、これらの3種の各成分は、それぞれ1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。フェノール系の酸化防止剤としては2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾールなどのアルキルフェノール類、4,4’−メチレンビス−(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)などのビスフェノール類、n−オクタデシル−3−(4’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェノール)プロピオネートなどのフェノール系化合物がある。アミン系の酸化防止剤としてはナフチルアミン類やジアルキルジフェニルアミン類などの芳香族アミン化合物がある。そして、有機モリブデン系酸化防止剤としてはモリブデン酸アミンなど有機モリブデン化合物がある。
【0043】
酸化防止剤の好ましい配合量は、潤滑油組成物全量基準で、0.05〜5.0質量%であり、より好ましい配合量は0.5〜3.0質量%である。配合量はこれより少なすぎると十分な効果が期待できず、また、多すぎても添加量に見合った効果は期待できない。
【0044】
(7)摩擦調整剤
本発明のエンジン油組成物は、境界潤滑域の摩擦低減効果のために摩擦調整剤を配合することによって省燃費性能を向上させることができる。摩擦調整剤としては、有機モリブデン化合物や無灰型摩擦調整剤が知られる。有機モリブデン化合物としては、例えば、モリブテンジチオホスフェート、モリブデンジチオカーバメート、モリブテン酸アミン化合物、モリブデン長鎖脂肪族アミン化合物などがある。上記モリブデン化合物の配合量は、エンジン油中の金属モリブデン濃度として100質量ppm以上、1,200質量ppm以下であることが望ましい。また、無灰型摩擦調整剤としては、長鎖脂肪族アミン、長鎖脂肪酸エステル、長鎖脂肪族アルコール、脂肪族アミンと脂肪酸のアミド化合物、及び脂肪族ポリグリセリルエーテル類などが知られている。無灰型摩擦調整剤の好ましい含有量は、潤滑油組成物全量基準で、好ましくは500質量ppm〜5質量%であり、より好ましくは1,000質量ppm〜4質量%であり、さらに好ましくは3,000質量ppm〜3質量%である。なお、本発明において、上記有機モリブデン化合物と無灰型摩擦調整剤は、単独で使用してもよいし、必要に応じて複数を組み合わせて使用してもよい。
【0045】
(8)その他の添加剤
本発明のエンジン油組成物には、必要に応じてさらに各種添加剤を配合することができる。具体的には、金属不活性化剤、さび止め剤、流動点降下剤、泡消剤など、内燃機関用潤滑油としての性能を付与するのに効果的な添加剤を、必要に応じて適宜配合することができる。
【0046】
(9)調製方法
本発明のエンジン油の調製方法は、基油、必要に応じて添加する上記の各種添加剤を適宜混合すればよく、その混合順序は特に限定されるものではない。
【0047】
(10)組成物の性状
本発明の
ディーゼルエンジン用潤滑油組成物の粘度指数は200〜300の範囲内であることが必要であり、より好ましくは220〜280、特に好ましくは230〜270の範囲内にあることが必要である。また、その40℃における動粘度(JIS−K−2283(ASTM D445))は、通常は10〜70mm
2/sであればよく、好ましくは20〜60mm
2/sであり、より好ましくは30〜55mm
2/sである。また、100℃での動粘度(JIS−K−2283(ASTM D445))は、通常は5.6〜12.5mm
2/sであればよく、好ましくは8.5〜11.5mm
2/sであり、より好ましくは9.3〜11.0mm
2/sである。
本発明の組成物は、SAE J300に規定されるSAE粘度グレードの内、特に0W−30または5W−30において特に高い粘度指数による燃費低減効果が期待できる。調合時の粘度調整に際しては、これらのSAE粘度グレードに適合するよう、その配合量を調整することが望ましい。
【0048】
(11)用途
本発明の
ディーゼルエンジン用潤滑油組成物は、種々
のディーゼルエンジン機関用に適し、特に高い耐コーキング性を要求され、過度な低粘度が困難なディーゼルエンジン機関において好適に使用することができる。
【実施例】
【0049】
次に、本発明を実施例と比較例によりさらに詳細に説明するが、これらの例によっては何ら限定されるものではない。
【0050】
下記表1の組成のエンジン油を調製し、以下の評価方法により評価を実施した。
なお、各実施例及び比較例で用いた基油および添加剤は下記の通りである。
【0051】
<使用した基油と添加剤>
(1)基油
水素化分解系鉱油(API分類:グループIII)。
100℃動粘度:4.1mm
2/s、粘度指数:134、
%CA:0、 %CN:14、 %CP:86、アニリン点119℃、
硫黄分0.003%以下、窒素分0.0010%以下、
NOACK蒸発量13%
【0052】
(2)粘度指数向上剤
粘度指数向上剤A:
メタクリロイル基が付与された数平均分子量(Mn)が5,000の水素化ポリブタジエン系マクロモノマー:25.5質量%、炭素数4の直鎖アルキル基を有するアルキルメタクリレート:59質量%、炭素数12および14のアルキル基を有するアルキルメタクリレート混合物:14質量%、スチレン:1.5質量%のモノマー混合物をラジカル共重合して得られる、メタクリロイル基が付与された水素化ポリブタジエン系マクロモノマーに基づく繰り返し単位、炭素数4の直鎖アルキル基を有するアルキルメタクリレートに基づく繰り返し単位、炭素数12および14のアルキル基を有するアルキルメタクリレートに基づく繰り返し単位、及びスチレンに基づく繰り返し単位を主鎖に含み、側鎖の水素化ポリブタジエン系マクロモノマーにはアルキルメタクリレート及びスチレンに由来する構造単位が0質量%含まれる櫛形ポリマー。
重量平均分子量(Mw)=402,800。
希釈油を除く有効成分量は28.5質量%。
【0053】
粘度指数向上剤B:
ポリアルキルメタクリレート。重量平均分子量(Mw)=440,000、希釈油除く有効成分量は19.7質量%。
粘度指数向上剤C:
エチレン−プロピレンコポリマー。重量平均分子量(Mw)=182,600、希釈油除く有効成分量は12.0%。
【0054】
(6)分散剤
分散剤A:
アルケニルコハク酸イミド、ビスタイプ、重量平均分子量(Mw)=7,370、窒素含有量=1.1質量%、ホウ素を含有しない。
分散剤B:
ホウ素変性アルケニルコハク酸イミド、ビスタイプ、重量平均分子量(Mw)=4,380、窒素含有量=1.4質量%、ホウ素含有量=0.5質量%。
【0055】
(7)金属型清浄剤
清浄剤A:
カルシウムサリシレート、塩基価=170mgKOH/g。
清浄剤B:
カルシウムフェネート、塩基価=255mgKOH/g。
なお、ここでいう塩基価とはJIS−K−2501−6に従って測定された値である。
【0056】
(8)ジアルキルジチオリン酸亜鉛
分子中に炭素数が3のセカンダリータイプのアルキル基と炭素数4および5のプライマリータイプのアルキル基を有するジアルキルジチオリン酸亜鉛(セカンダリータイプのアルキル基の割合:30質量%)。
(9)その他添加剤(以下の添加剤を含む)
・フェノール系酸化防止剤(イソオクチル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)
・流動点降下剤
・泡消剤(シリコーン)
【0057】
<評価方法>
実施例および比較例における評価試験法は以下の通りである。
【0058】
・動粘度
JIS K 2283(ASTM D445)に従い40℃および100℃での動粘度を測定した。
【0059】
・粘度指数
JIS K 2283(ASTM D2270)に従い算出した。
【0060】
・HTHS(高温高剪断粘度)
ASTM D4683に従って、温度150℃・せん断速度1×10
6/sにおける高温高剪断粘度を測定した。
【0061】
・剪断安定性試験
ディーゼルインジェクター法(ASTM D6278)に従って、剪断安定性の試験を実施した。剪断試験後の新油に対する粘度低下率%を算出した。
【0062】
・耐コーキング性試験
パネルコーキング試験法(Fed−791B)に従い、コーキング重量の測定を実施した。油温100℃、試験片パネル温度300℃に設定し、スプラッシュ15秒間、その後45秒間停止、のサイクルを3時間繰り返した後、試験片パネルに付着したデポジット量(mg)を測定した。
【0063】
・燃費試験
エンジン油の省燃費性能を、日本国内メーカー製造の4,600ccのディーゼルエンジンを用いた台上燃費試験により評価した。運転条件は国土交通省10・15モードを参考にして設定した。表1に示す結果は、SAE粘度グレードで10W−30に分類される市販ディーゼルエンジン油を基準としたときの燃費改善率(%)を示したものである。
【0064】
【表1】
【0065】
(注1)括弧内の数値は希釈油を除く有効成分量の質量%を表す
なお、表中において、基油の含有量は残部と表示しているが、残部とは、基油以外の成分の含有量の合計と基油の含有量の合計が100質量%になるように調整されていることを示すものであって、100質量%から基油以外の成分の含有量の合計を引いた残部であることを意味する。
【0066】
以上の実施例から明らかなように、本発明の実施例1はポリアルキル(メタ)アクリレート系粘度指数向上剤を用いた比較例1〜3と比べても、顕著に高い粘度指数を有し、実際の燃費試験においても優れた省燃費性能を示すことが分かる。さらに、高い粘度指数であるにも関わらず、エチレン−プロピレンコポリマー系粘度指数向上剤を用いた比較例4と同等のコーキングを示したに過ぎず、かつ剪断安定性試験においても最も優れた剪断安定性を示した。上記の結果から、本発明の内燃機関用潤滑油組成物は、高い粘度指数を有することによる優れた省燃費性能を有しながら、優れた耐コーキング性と剪断安定性をも両立する潤滑油組成物であることが分かる。