特許第6014541号(P6014541)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6014541
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月25日
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 11/00 20060101AFI20161011BHJP
   B60C 11/03 20060101ALI20161011BHJP
【FI】
   B60C11/00 B
   B60C11/03 100C
   B60C11/03 C
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-91584(P2013-91584)
(22)【出願日】2013年4月24日
(65)【公開番号】特開2014-213684(P2014-213684A)
(43)【公開日】2014年11月17日
【審査請求日】2016年3月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】大北 洋平
【審査官】 岩本 昌大
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−001081(JP,A)
【文献】 特開2001−088513(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッドを構成する外層と、
前記外層のタイヤ径方向内側に重なって前記トレッドを構成し、前記外層よりも摩耗進展が速い内層と、
前記外層と前記内層との境界を構成し、タイヤ軸方向から見たタイヤ径方向断面において、タイヤ径方向に振幅を有する波形状とされた界面と、
を有する空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記界面は、タイヤ軸方向には平坦である請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記トレッドには、タイヤ周方向に延びる複数の周方向溝が形成され、
前記界面は、前記周方向溝の溝底よりもタイヤ径方向外側に位置している請求項1又は請求項2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
トレッドを構成する外層と、
前記外層のタイヤ径方向内側に重なって前記トレッドを構成し、前記外層とは異なる摩耗特性を有する内層と、
前記外層と前記内層との境界を構成し、タイヤ軸方向から見たタイヤ径方向断面において、タイヤ径方向に振幅を有する波形状とされた界面と、を有し、
タイヤ回転方向が指定され、
タイヤ軸方向から見たタイヤ周方向断面において、前記界面が、タイヤ回転方向前方側に位置する前辺とタイヤ回転方向後方側に位置する後辺とがタイヤ径方向外側の頂点で交わる三角波形状を有し、前記前辺の長さが、前記後辺の長さよりも長く形成されてい空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
空気入りタイヤのトレッドが、異なる配合からなる少なくとも2以上の層を有し、径方向外側に位置する最外層(A)とその内側に位置する内層(B)が相互に入り組み、その界面(P)が、タイヤ幅方向断面においてジグザグ形状又は波型形状となっている構造が開示されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平1−278804号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、タイヤのトレッドが摩耗すると、該トレッドのゴムゲージが薄くなるため、ベルト等の構造部材が表層に近づく。このような状況でタイヤが路面上の異物を踏んだ場合、トレッドの非摩耗時に比べて、構造部材までの異物の貫通が容易になると考えられる。
【0005】
また、更生タイヤの場合、異物が構造部材まで貫通すると、台タイヤの損傷によりトレッドのゴムを更生できなくなり、廃棄されることとなる。これは、環境保護の観点から望ましくない。
【0006】
更に、トレッドの摩耗末期は、一般的にゴムの摩耗進展が遅いため、結果としてトレッドのゴムゲージが薄い状態で使用される時間が長くなってしまう。
【0007】
本発明は、上記事実を考慮して、トレッドの摩耗変動をコントロールできるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明は、トレッドを構成する外層と、前記外層のタイヤ径方向内側に重なって前記トレッドを構成し、前記外層よりも摩耗進展が速い摩耗特性を有する内層と、前記外層と前記内層との境界を構成し、タイヤ軸方向から見たタイヤ径方向断面において、タイヤ径方向に振幅を有する波形状とされた界面と、を有している。
【0009】
請求項1に記載の空気入りタイヤでは、トレッドの摩耗過程において、まず外層が露出し、外層の摩耗が進むと内層が露出し始め、接地面に外層と内層が混在した摩耗状態となる。更にトレッドの摩耗が進むと外層がなくなり、内層のみが露出した状態となる。互いに配合が異なる2種類のゴムを、このように段階的に摩耗させることにより、トレッドの摩耗変動をコントロールすることができる。
また、内層の摩耗進展が外層よりも速いので、トレッドの外層が摩耗して内層が露出し始めるとトレッドの摩耗進展速度が上がり、内層のみが露出した状態になると更に摩耗進展速度が上がる。このため、トレッドのゴムゲージが薄い状態での使用時間を短くして、タイヤの交換を促進することができる。
【0010】
請求項2に記載の空気入りタイヤでは、界面がタイヤ軸方向に平坦であるので、タイヤ軸方向での偏摩耗を抑制することができる。
【0012】
請求項に記載の空気入りタイヤでは、界面が周方向溝の溝底よりもタイヤ径方向外側に位置しているので、トレッドの摩耗過程において、周方向溝が残存している間に外層がなくなり、内層のみが露出した状態となる。このため、周方向溝の残溝深さが少なくなった状態での使用時間を短くすることができる。
【0013】
請求項に記載の空気入りタイヤでは、タイヤ回転方向が指定され、タイヤ軸方向から見たタイヤ周方向断面において、前記界面が、タイヤ回転方向前方側に位置する前辺とタイヤ回転方向後方側に位置する後辺とがタイヤ径方向外側の頂点で交わる三角波形状を有し、前記前辺の長さが、前記後辺の長さよりも長く形成されている。従って、接地面に外層と内層が混在する摩耗状態でかつ所定のタイヤ回転方向でトレッドが接地するときに、該内層が路面から受ける力が緩和される。このため、内層の摩耗進展が速くなり過ぎることを抑制し、トレッドの摩耗変動をより適切にコントロールすることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る空気入りタイヤによれば、トレッドの摩耗変動をコントロールすることができる、という優れた効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】タイヤ回転軸を含む面で切断した航空機用空気入りタイヤを示す断面図である。
図2】トレッド付近をタイヤ周方向及びタイヤ軸方向に切断した状態を示す斜視図である。
図3】トレッドをタイヤ周方向に切断した状態を示す拡大断面図である。
図4】トレッドをタイヤ周方向に切断して、三角波状の界面を示す拡大断面図である。
図5】トレッドをタイヤ周方向に切断して、正弦波状の界面を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づき説明する。図面において、矢印R方向はタイヤ径方向を示し、矢印W方向はタイヤ軸方向を示す。タイヤ回転軸(図示せず)から遠のく方向を「タイヤ径方向外側」といい、タイヤ回転軸に近づく方向を「タイヤ径方向内側」いう。
【0017】
図1において、空気入りタイヤ10は、例えば航空機用やトラック、バス用の空気入りラジアルタイヤであり、一対のビード部(図示せず)間に跨るカーカスプライ12と、ベルト層14と、保護層16と、トレッド18とを有している。
【0018】
ベルト層14は、カーカスプライ12のクラウン部12Aのタイヤ半径方向外側に設けられている。図2に示されるように、ベルト層14は、例えば6層の主ベルト層(図示せず)と、1層の副ベルト層(図示せず)とで構成されている。主ベルト層の各層は、タイヤ周方向に螺旋状に巻かれたコードを含んで構成されている。このコードは、有機繊維(例えば、芳香族ポリアミド)で構成されている。副ベルト層は、タイヤ赤道面CLに対して、例えば2〜25°の角度で傾斜し、タイヤ軸方向端部で反対方向に傾斜するように同一面内で屈曲してタイヤ周方向にジグザグ状に延びる複数本のコードを含んで構成されている。このコードは、有機繊維(例えば、脂肪族ポリアミド)で構成されている。
【0019】
保護層16は、ベルト層14のタイヤ半径方向外側に設けられている。この保護層16は、タイヤ周方向に波状に延びる複数本の波状コード(図示せず)を、互いに平行に並べてゴムコーティングしたものである。波状コードは、有機繊維(例えば、脂肪族ポリアミド)で構成されている。
【0020】
トレッド18は、保護層16のタイヤ半径方向外側に設けられている。トレッド18には、タイヤ周方向に延びる複数の周方向溝の一例たる、例えば4本の周方向溝24,26が形成されており、該周方向溝24,26によって、リブ30,32,34が区画形成されている。リブ30は、タイヤ赤道面CLの両側の周方向溝24によって区画され、タイヤ赤道面CLを含むタイヤ軸方向の中央部に位置している。リブ32は、周方向溝24,26によって区画され、中央部のリブ30より幅狭となっている。リブ34は、周方向溝26によって区画され、該周方向溝26のタイヤ軸方向外側に位置している。リブ32,34は、タイヤ赤道面CLの両側に夫々形成されている。なお、周方向溝の数は、6本であってもよい。この場合、リブの数も更に増加する。
【0021】
更に、本実施形態に係る空気入りタイヤ10は、外層36と、内層38と、界面40と、を有している。
【0022】
外層36は、トレッド18を構成するゴムである。この外層36は、例えばトレッド18のタイヤ径方向の最外層とされている。なお、外層36の配置はこれに限られるものではなく、最外層(図示せず)のタイヤ径方向内側に外層36が配置されていてもよい。換言すれば、外層36のタイヤ径方向外側に更に他の層が存在していてもよい。
【0023】
内層38は、外層36のタイヤ径方向内側に重なってトレッド18を構成するゴムであり、外層36とは異なる摩耗特性を有している。具体的には、内層38は、外層36よりも摩耗進展が速い配合とされている。
【0024】
図2において、界面40は、外層36と内層38との境界を構成し、タイヤ軸方向から見たタイヤ径方向断面において、タイヤ径方向に振幅を有する波形状とされている。一方、界面40は、タイヤ軸方向には平坦である。平坦には、直線的なものの他、全体的に緩やかに湾曲しているものも含まれる。この界面40は、周方向溝24,26の溝底24A,26Aよりもタイヤ径方向外側に位置している。界面40の全体が溝底24A,26Aよりもタイヤ径方向外側に位置することが望ましいが、界面40の一部が溝底24A,26Aよりもタイヤ径方向外側に位置する構成であってもよい。
【0025】
図3に示されるように、タイヤ軸方向から見たタイヤ周方向断面において、界面40は、タイヤ回転方向前方側に位置する前辺40Aとタイヤ回転方向後方側に位置する後辺40Bとがタイヤ径方向外側の頂点40Cで交わる三角波形状を有している。空気入りタイヤ10のタイヤ回転方向が、矢印F方向に指定されているとすると、前辺40Aの長さは、後辺40Bの長さよりも長く形成されていることが望ましい。換言すれば、タイヤ周方向の接線Cと前辺40Aとがなす鋭角側の角度θAは、タイヤ周方向の接線Cと後辺40Bとがなす鋭角側の角度θBよりも小さく設定されている。
【0026】
図4に示されるように、界面40の波形状は、θA=θBとなる三角波であってもよい。また、図5に示されるように、界面40の波形状は、正弦波等の円弧波状であってもよい。更に、図示は省略するが、界面40の波形状は、鋸刃状、矩形波状、ジグザグ状、折れ線状等であってもよい。また、種々の波形状を、タイヤ周方向において適宜組み合わせてもよい。
【0027】
界面40の頂点40Cは、タイヤ軸方向に連続して稜線(図示せず)を形成している。この稜線は、タイヤ軸方向と平行に限られず、タイヤ軸方向に対して傾斜していてもよい。
【0028】
(作用)
本実施形態は、上記のように構成されており、以下その作用について説明する。図1図2において、本実施形態に係る空気入りタイヤ10では、外層36がトレッド18の最外層であるので、未使用時から該外層36が接地面に露出した状態となっている。トレッド18の摩耗過程において、界面40に達するまで外層36の摩耗が進むと、内層38が露出し始める。このとき、接地面に外層36と内層38が混在した摩耗状態となる。内層38の摩耗進展は外層36よりも速いので、内層38が露出し始めるとトレッド18の摩耗進展速度が上がる。
【0029】
更にトレッド18の摩耗が進むと、接地面での内層38の割合が次第に増加して行き、やがて外層36がなくなる。これにより、接地面に内層38のみが露出した状態となるため、更に摩耗進展速度が上がる。このため、トレッド18のゴムゲージが薄い状態での使用時間を短くして、タイヤの交換を促進することができる。
【0030】
本実施形態では、界面40が周方向溝24,26の溝底24A,26Aよりもタイヤ径方向外側に位置しているので、トレッド18の摩耗過程において、周方向溝24,26が残存している間に外層36がなくなり、内層38のみが露出した状態となる。このため、周方向溝24の残溝深さが少なくなった状態での使用時間を短くすることができる。本実施形態では、上記のように、互いに配合が異なる2種類のゴムを、このように段階的に摩耗させることにより、トレッド18の摩耗変動をコントロールすることができる。
【0031】
また本実施形態では、図3に示されるように、界面40の波形状が、所定のタイヤ回転方向(矢印F方向)に対応しており、具体的には、前辺40Aの長さが後辺40Bの長さよりも長く形成されている。従って、接地面に外層36と内層38が混在する摩耗状態でトレッド18が接地するときに、該内層38が路面から受ける力が緩和される。このため、内層38の摩耗進展が速くなり過ぎることを抑制し、トレッド18の摩耗変動をより適切にコントロールすることができる。
【0032】
更に本実施形態では、界面40がタイヤ軸方向に平坦であるので、タイヤ軸方向での偏摩耗を抑制することができる。
【0033】
[他の実施形態]
界面40がタイヤ軸方向に平坦であるものとしたが、これに限られず、起伏が存在していてもよい。また、内層38は、外層26よりも摩耗進展が速いものとしたが、摩耗進展の速さの関係はこれに限られない。
【符号の説明】
【0034】
10 空気入りタイヤ、24 周方向溝、24A 溝底、24 周方向溝、26 周方向溝、26A 溝底、36 外層、38 内層、40 界面、40A 前辺、40B 後辺、40C 頂点
図1
図2
図3
図4
図5