(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
励磁コイル及び検出コイルを有するフラックスゲート型の磁気素子に印加される定常磁界の強度を、時間分解型の磁気平衡式により検出する際、当該磁気素子の出力から磁界検出を行う磁界検出装置であり、交番信号を生成する励磁信号生成部と、前記励磁コイルに印加する励磁電流の電流方向が切替る際の誘導起電力で前記検出コイルに発生する正又は負電圧の検出信号を検出する検出信号比較部と、正電圧及び負電圧の検出信号間の時間幅を電圧情報に変換する帰還信号変換部と、前記電圧情報から前記磁気素子に印加されている定常磁界をキャンセルする磁界を発生するための帰還信号を生成する帰還信号調整部と、前記帰還信号を磁界強度を示すデータ信号として出力するデータ信号変換部と、前記交番信号から交番電流を生成し、前記交番電流を基に前記励磁コイルに印加する前記励磁電流を生成する励磁信号調整部とを有する磁界検出装置の検査を行うための前記磁気素子の擬似回路としての検査用回路であって、
前記励磁信号調整部の出力に接続され、前記励磁信号調整部の出力する前記励磁電流を強度調整し、前記検出信号の擬似信号として、前記検出信号比較部の入力端子に入力する
交番信号調整部を有することを特徴とする磁界検出装置の検査用回路。
前記励磁信号調整部が、前記交番信号から生成した交番電流に対し、前記検出信号または前記疑似信号による前記帰還信号を重畳して、前記励磁コイルに印加する励磁信号を生成する ことを特徴とする請求項1に記載の磁界検出装置の検査用回路。
前記帰還信号調整部が、前記電圧情報から前記磁気素子に印加されている定常磁界をキャンセルする磁界を発生するための帰還信号を生成し、当該帰還信号を前記帰還コイルに入力する端子を具備する構成となっており、
前記帰還信号調整部の出力をターミネートする帰還信号終端部をさらに有する
ことを特徴とする請求項1に記載の磁界検出装置の検査用回路。
前記励磁信号調整部に対し、定常磁界を擬似した定電流を帰還信号に加算する帰還信号加算部をさらに有することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の磁界検出装置の検査用回路。
前記励磁信号生成部に対し、定常磁界を擬似した定電圧を帰還信号に加算する帰還信号加算部をさらに有することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の磁界検出装置の検査用回路。
励磁コイル及び検出コイルを有するフラックスゲート型の磁気素子に印加される定常磁界の強度を、時間分解型の磁気平衡式により検出する際、当該磁気素子の出力から磁界検出を行う磁界検出方法であり、交番信号を生成する励磁信号生成部と、前記励磁コイルに印加する励磁電流の電流方向が切替る際の誘導起電力で前記検出コイルに発生する正又は負電圧の検出信号を検出する検出信号比較部と、正電圧及び負電圧の検出信号間の時間幅を電圧情報に変換する帰還信号変換部と、前記電圧情報から前記磁気素子に印加されている定常磁界をキャンセルする磁界を発生するための帰還信号を生成する帰還信号調整部と、前記帰還信号を磁界強度を示すデータ信号として出力するデータ信号変換部と、前記交番信号から交番電流を生成し、前記交番電流を基に前記励磁コイルに印加する前記励磁電流を生成する励磁信号調整部とを有する磁界検出装置の検査を行うための前記磁気素子の擬似回路を用いる検査方法であって、
前記励磁信号調整部の出力に接続された交番信号調整部に対して、前記励磁信号調整部の出力する前記励磁電流を供給し、前記交番信号調整部により強度調整し、前記検出信号の擬似信号として、前記検出信号比較部の入力端子に入力する
ことを特徴とする磁界検出装置の検査方法。
【発明を実施するための形態】
【0019】
<第1の実施形態>
第1の実施形態による検査用回路に用いる、FG(フラックスゲート)型の磁気素子を使用した磁気平衡式の磁界検出装置の構成についての説明を行う。
図1は、時間分解型FG方式の磁気素子50(磁界比例式測定)の構成例を示す図である。この
図1が示すように、FG方式の磁気素子は、高透磁率材からなる磁性体コア53の外周面に対し、励磁巻線と検知巻線とが巻かれている。励磁巻線の巻かれている領域は励磁コイル52として励磁信号により駆動され、検知巻線の巻かれている領域は検出コイル51として検出信号を出力する。
【0020】
図2は、時間分解型FG方式の磁気素子50を用いて磁界比例式における磁気検出の原理を説明する波形図である。
図2(a)は、磁気素子50の励磁コイル52に供給される励磁電流を示す図であり、縦軸が励磁電流の電流値を示し、横軸が時間を示している。すなわち、この
図2(a)は、励磁コイル52に供給する三角波電流である励磁信号の電流値の時間変化を示すグラフである。
図2(b)は、磁気素子50の励磁コイル52が磁性体コア51内に発生させる磁界の磁束密度を示す図であり、縦軸が磁束密度を示し、横軸が時間を示している。
図2(c)は、磁気素子50の検出コイル51が誘導起電力により発生するパルスの電圧値を示す図であり、横軸が時間を示している。
【0021】
この
図2(a)において、励磁コイル52に供給された励磁信号は、0Aを境にした正負の交番信号である。また、励磁信号の周期はTであり、磁気素子50に対して磁界が印加されていない場合における電流の流れる方向の変化の間隔、すなわち第1検出信号と第2検出信号との検出される間隔の時間幅はT/2である。ここで、
図2(a)は、定常磁界(Hex)が磁気素子50に印加されたことにより、励磁コイル52に印加される三角波電流信号の電流の流れる向きが変化するタイミングが、印加されている定常磁界の大きさによりずれることを示している。すなわち、この三角波電流信号による検出コイル51に発生する検出信号が、定常磁界(Hex)によってずれることにより、第1検出信号(時間t1)及び第2検出信号(時間t2)の発生タイミングが時間的にずれる。
【0022】
また、
図2(c)は、縦軸が電圧を示し、横軸が時間を示しており、
図2(a)の三角波電流信号による励磁コイル52に流れる電流の方向(電流方向)、すなわち電流の極性(正または負)の変化する際に、誘導起電力によって検出コイル51に生じる検出信号(時間t1の第1検出信号、時間t2の第2検出信号)の時間変化を示すグラフである。この場合、
図2(c)の基準電圧は0Vである。
【0023】
この
図2において、励磁コイルの端子間に励磁電流Idの信号(以下、励磁信号とする)を、一定周期の交番する電流の励磁信号、すなわち
図2(a)に示すように三角波形状の励磁信号(すなわち、三角波電流信号)として印加する。
図2(c)から解るように、第1検出信号の時間t1及び第2検出信号の時間t2間(検出信号間)の時間幅T0と、三角波の周期Tの1/2である時間T/2との差分Td(不図示)が0であれば、磁気素子50に対して定常磁界(Hex)は印加されておらず、差分Tdが正であれば(時間幅Tmの場合)正の定常磁界(Hex>0)が印加されている。
これにより、励磁電流の向きが変化する時間(励磁電流の正負の交番時間帯)において、
図2(c)の場合には、時間t1及び時間t2において、検出コイルが誘導起電力による正負のパルス(ピックアップ信号、すなわち検出信号)を発生し、このパルスの電圧Vp(ピックアップ電圧)を検出信号とする。この検出信号は、三角波電流信号の周期に対応して、連続的に正負の極性の電圧を有するパルスとして、検出コイルの端子間に発生する。
【0024】
磁性体コア53を周回する励磁コイル52及び検出コイル51の各々の作る円筒空間を貫通する定常磁界Hexが、この磁気素子50に印加された場合、励磁コイル52においてこの定常磁界に対応した定常電流が流れる。すなわち、励磁コイル52に印加される励磁信号の励磁電流Idに対して、上述した定常磁界による定常電流がオフセットとして重畳されることになる。
その結果、このオフセットによって、交番する励磁信号による励磁コイル52の駆動状態が変化し、すなわち、励磁電流Idの流れる向きが変化する時間が、定常磁界Hexが印加されている場合と、定常磁界Hexが印加されていない場合とで変化することになる。
【0025】
このとき、
図2(c)に示すように、定常磁界Hexが印加されていない(Hex=0)場合に比較し、励磁コイル52の発生する磁界と同様の方向の定常磁界Hexが印加されている(Hex>0)場合、励磁電流Idの流れる向きの変化するタイミングにおいて時間t1が遅くなり、時間t2が早くなる(時間TmがT/2より短くなる)。一方、定常磁界Hexが印加されていない場合に比較し、励磁コイルの発生する磁界と反対の方向の定常磁界Hexが印加されている(Hex<0)場合、励磁電流Idの流れる向きの変化するタイミングにおいて時間t1が早くなり、時間t2が遅くなる(時間TpがT/2より長くなる)。
【0026】
これにより、この励磁電流Idの流れる方向の変わるタイミングに応じて変化する、磁性体コア内における磁束密度φの変化も、励磁電流Idに重畳される定常電流に対応して変化することになる。
そして、磁束の方向が変化した際、検出コイル51に対して誘導起電力が発生し、たとえば、励磁電流Idが正から負に変化するタイミングにおいて検出信号が負電圧のパルスとして発生する。一方、励磁電流Idが負から正に変化するタイミングにおいて検出信号が正電圧のパルスとして発生する。
【0027】
したがって、FG型の磁気素子から、定常磁界Hexの印加されていない場合の検出信号の出力されるタイミングと、定常磁界Hexが印加されている場合の検出信号の出力されるタイミングとを比較することにより、定常磁界Hexの大きさを間接的に測定することができる。すなわち、定常磁界Hexが印加された場合、駆動用コイルに特定の定常電流が流れるため、励磁信号に一定のオフセットが重畳し、負電圧及び正電圧のパルス状の検出信号の時間間隔が変化する。
したがって、FG型の磁気素子を用いた磁気検出装置は、負電圧及び正電圧のパルス状の検出信号の発生する時間間隔を測定することにより、外部から印加された定常磁界Hexの強度を測定している。
【0028】
ここで、励磁コイル52に印加する励磁電流Idの最大値を、磁性体コアの飽和磁束密度以上となる磁界が発生する値に設定する。これにより、外部磁界値と磁性体コア内の磁化状態が1状態となり、該磁化状態に起因するヒステリシスの発生を抑制することができる。その結果、磁気素子の測定磁界範囲は、励磁信号の一周期の時間と、定常磁界Hexを印加することによるオフセットとしての定常電流の電流値に対応した時間変化(以下、励磁効率とする)とから決定される。
すなわち、時間t0から時間t3までが、励磁信号の一周期であり、この周期幅は時間Tである。定常磁界Hexが印加されていない場合(Hex=0)、負電圧の検出信号(以下、第1検出信号とする)が出力される時間t1から、正の電圧の検出信号(以下、第2検出信号とする)が検出される時間t2までの時間は、励磁信号の半周期となるため、時間T/2となる。
【0029】
また、定常磁界Hexが印加されている場合、この第1検出信号が出力されてから第2検出信号が検出されるまでの時間幅(以下、計測時間幅)が時間T/2に対して変化する。ここで、
図1に示すように、定常磁界Hexの磁束方向が実線の矢印の方向の場合(Hex>0)、励磁コイルの生成する磁束方向と同一方向のため、時間幅Tmが時間T/2より短いものとなり(T0>Tm)、一方、定常磁界Hexの磁束方向が破線の矢印の方向の場合(Hex<0)、励磁コイルの生成する磁束方向と逆方向のため、時間幅Tpが時間T/2より長くなる(Tp>T0)。ここで、T0=T/2である。
【0030】
次に、
図3は、時間分解型FG方式の磁気素子(磁界平衡式測定)の構成例を示す図である。この
図3が示すように、磁界平衡式測定におけるFG方式の磁気素子60は、
図1の磁気素子50と異なり、高透磁率材からなる磁性体コア63の外周面に対し、励磁巻線と検知巻線とに加えて、フィードバック(以下、FB)巻線が巻かれている。励磁巻線の巻かれている領域は励磁コイル62として励磁信号により駆動され、検知巻線の巻かれている領域は検出コイル61として検出信号を出力し、フィードバック巻線の巻かれている領域はFB(帰還)コイル64としてFB信号により駆動される。
【0031】
次に、
図4は、時間分解型FG方式の磁気素子を用いて磁界平衡式測定における磁気検出の原理を説明する波形図である。
図4(a)は、磁気素子の励磁コイル62に供給される励磁電流を示し、縦軸が励磁電流の電流値を示し、横軸が時間を示している。励磁電流は、基準電流値0A(ゼロアンペア)を境にした正負の交番信号である。
図4(b)は、磁気素子60のFBコイル64に印加する電流であるFB信号(すなわち帰還信号)を示し、縦軸がFB信号の電流値を示し、横軸が時間を示している。
図4(c)は、磁気素子60の検出コイル61が誘導起電力によりパルスとして発生する検出信号の電圧値を示し、横軸が時間を示している。
【0032】
また、定常磁界Hexが印加されている場合、検出信号として、第1検出信号が出力されてから第2検出信号が検出されるまでの時間幅(以下、計測時間幅)が時間T/2に対して変化する。ここで、
図3に示すように、定常磁界Hexの磁束方向が実線の矢印の方向の場合(Hex>0)、励磁コイルの生成する磁束方向と同一方向のため、時間幅Tmが時間T/2より短いものとなり(T0>Tm)、一方、定常磁界Hexの磁束方向が破線の矢印の方向の場合(Hex<0)、励磁コイルの生成する磁束方向と逆方向のため、時間幅Tpが時間T/2より長くなる(Tp>T0)。ここで、T0=T/2である。
【0033】
この
図4に示すように、磁界平衡式測定の場合、磁気素子60に印加される定常磁界Hex(磁性体コア63内を通過する定常磁界)を打ち消す磁界を、上記FBコイル64により発生させる。そして、定常磁界Hexを打ち消す磁界をFBコイル64に発生させる際の電流値から、磁気素子60に印加されている定常磁界Hexを測定している。
磁界平衡式においては、磁性体コア63内における定常磁界Hexを打ち消すための磁界を発生するコイルとして、励磁コイル62及び検出コイル61に加えて、上記FBコイル64が磁気素子60に設けられている。
以下、本明細書においては、FB信号を印加して磁性体コア63内の定常磁界Hexを打ち消すことで磁界の測定を行う方式を、FBコイルFB制御として説明する。
【0034】
また、磁界平衡式測定の場合、すでに説明した磁界比例式と同様に、励磁コイル62に印加される励磁信号の正負の交番時間帯に、検出コイル61において発生するパルスの時間間隔を測定する。そして、測定した負電圧の検出信号が出力される時間t1から、正の電圧の検出信号が検出される時間t2までの時間が、T/2となるように、FBコイル64に対してFB信号を印加する。
例えば、
図4(c)において、時間t1と時間t2との時間幅が、T/2より広くなると、
図4(a)に示すように負の方向の定常磁界Hexが印加され、実質的に励磁信号の曲線が曲線L0から曲線L2へと変化したこととなる。このため、励磁信号の曲線L2を、時間t1と時間t2との時間幅を、T/2となる曲線L0の位置に戻すため、FBコイル64に対して
図4(b)における線FB2の電流値のFB信号を印加する。
【0035】
一方、
図4(c)において、時間t1と時間t2との時間幅が、T/2より狭くなると、
図4(a)に示すように正の方向の定常磁界Hexが印加され、実質的に励磁信号の曲線が曲線L0から曲線L1へと変化したこととなる。このため、励磁信号の曲線L1を曲線L0の位置に戻すため、FBコイルに対して
図4(b)における線FB1の電流値のFB信号を印加する。
そして、時間t1と時間t2との時間幅が、T/2となるようにFBコイルに印加したFB信号の電流値から、磁気素子に印加される定常磁界の強度を求めることになる。
【0036】
次に、
図5は、本実施形態における検査用回路10を用いる検査対象となる、
図3の磁気素子60を使用したFBコイルFB制御による磁界検出装置200の構成例を示すブロック図である。
図5において、磁気素子60は、検出コイル61、励磁コイル62、FBコイル64から構成されている。
磁界検出装置200は、磁気素子制御部201とクロック信号生成部202とクロック信号調整部203とから構成されている。
クロック信号生成部202は、周期Tのクロックを生成して、クロック信号調整部203に対して出力する。
クロック信号調整部203は、供給されるクロックの信号レベルを調整して、調整されたクロックを磁気素子制御部201へ出力する。
【0037】
磁気素子制御部201は、検出信号増幅部2012、検出信号比較部2013、帰還信号調整部2014、帰還信号変換部2015、データ信号変換部2016、励磁信号調整部2017、励磁信号生成部2018を備えている。
励磁信号生成部2018は、クロック信号調整部203から供給されるクロックから、
図4(a)に示す励磁信号としての三角波信号を生成する。
励磁信号調整部2017は、励磁信号生成部2018から供給される三角波信号の電圧レベルを調整して、励磁信号として励磁コイル62に対して供給する。
【0038】
励磁コイル62は、三角波に対応した磁界を、磁気素子300の磁性体コア内に生成する。
検出コイル61は、磁性体コア内における励磁信号の正負の交番時間帯に、パルスを発生する。
検出信号増幅部2012は、検出コイルから供給されるパルスの電圧レベルを増幅し、検出信号として検出信号比較部2013へ出力する。
検出信号比較部2013は、パルス(検出信号)の時間t1と時間t2との時間幅を示す時間波形を、T/2との差分を求めるための出力波形として、帰還信号変換部2015へ出力する。
帰還信号変換部2015は、検出信号比較部2013から供給される出力波形から、FBコイルに供給するFB信号の電流値を求める。
【0039】
ここで、帰還信号変換部2015は、T/2と出力波形の示す時間との差分を求め、内部記憶部に予め書き込まれて記憶されているFB信号値テーブルから、差分に対応する電流値を読み出してFB信号の電流値を求める。FB信号値テーブルは、上記差分と磁性体コア内における定常磁界を打ち消す電流値(デジタル値)との対応を示すテーブルである。
帰還信号調整部2014は、帰還信号変換部2015から供給されるFB信号の電流値を、D/A(Digital/Analog)変換して、生成されたFB信号としての電流を、FBコイルに対して出力する。また、帰還信号調整部2014は、帰還信号変換部2015から供給されるFB信号の電流値を、データ信号変換部2016へ出力する。データ信号変換部2016は、帰還信号調整部2014から供給される電圧(帰還信号)を、予め設定された増幅度により増幅し、出力端子からデータ信号として出力する。
【0040】
帰還信号調整部2014は、供給されるFB信号の電流値から、磁性体コア内において打ち消した定常磁界の強度、すなわち磁気素子60に印加されている定常磁界Hexの強度を求める。ここで、帰還信号調整部2014は、内部記憶部に予め書き込まれて記憶されている電流値磁界テーブルから、FB信号の電流値に対応する磁界強度を読み出して、磁気素子60に印加されている磁界の強度を求める。電流値磁界テーブルは、上記FB信号の電流値と印加された定常磁界Hexの強度との対応を示すテーブルである。以上、FB信号量をFB信号値テーブルを用いた演算処理により決定する手法を示したが、FB信号は電流制御で生成されるため、電圧電流変換回路に用いるオペアンプ等の基準電位により、FB信号量を決定する手法でもよい。
【0041】
上述した時間分解型FG方式の磁気素子を用いて磁界比例式における磁気検出を行う場合、磁気素子60の磁性体コアの材料と構造とに起因するコイルに印加する電流あたりの発生磁界量(以下、励磁効率とする)と、励磁信号の強度とにより、測定可能な磁界範囲が決定される。
一方、時間分解型FG方式の磁気素子を用いて磁界平衡式における磁気検出を行う場合、磁気素子60に対して印加される定常磁界Hexによらず、一定の時間間隔(T/2)で検出信号が出力されるように、磁性体コア内の磁界を平衡状態として維持している。このため、磁気素子60全体の電源電圧により制限、すなわちFB信号の電流値が供給可能な範囲で磁界の測定が行える。
【0042】
また、時間分解型FG方式の磁気素子を用いて磁界比例式における磁気検出を行う場合、検出信号の出力される時間間隔が磁界に応じて変化するため、磁気素子60の特性が、磁気感度の線形性に、直接に反映することになる。
一方、時間分解型FG方式の磁気素子を用いて磁界平衡式における磁気検出を行う場合、フィードバック収束した状態では、正負の検出信号の時間間隔と検出信号の波形が変化しないため、検出信号の波形と、検出信号の発生する時間間隔の定常性とが維持され易い。
そのため、測定対象として、数百A(アンペア)程度の電流により発生する磁界を全測定電流範囲において線形性を維持した状態で測定する電流センサ等に磁気素子に適用する場合、従来、磁界比例式に比較して、磁界平衡式における磁気検出が主に用いられている。
【0043】
次に、
図6は、
図5における磁界検出装置200の検出信号比較部2013が出力する出力波形を示す図である。この
図6において、
図6(a)は、磁気素子の励磁コイル62に供給される励磁電流(励磁信号)を示し、縦軸が励磁電流を示し、横軸が時間を示している。励磁電流は、基準電流値0A(ゼロアンペア)を境にした正負の交番信号である。
図6(b)は、検出信号比較部2013に供給される検出信号を示し、縦軸が電圧値を示し、横軸が時間を示している。
図6(c)は、検出信号比較部2013が出力する時間t1と時間t2との間の時間幅を示す出力波形を示し、縦軸が出力波形の「H」レベルあるいは「L」レベルの電圧レベルを示し、横軸が時間を示している。この
図6(c)において、出力波形は、時間t1から時間t2まで「H」レベルの信号であり、その前後の時間が「L」レベルとなっている。
【0044】
図6(a)は
図4における励磁信号と同様であり、
図6(b)は
図4における検出信号と同様である。この
図6(b)の検出信号が、検出信号増幅部2012から検出信号比較部2013に供給される。また、
図6(c)は、検出信号比較部2013が検出信号により生成し、帰還信号変換部2015へ供給する出力波形を示している。
図6(c)から判るように、例えば、検出信号比較部2013の出力する出力波形は、時間t1と時間t2との時間幅を示している。帰還信号変換部2015は、この出力波形から、FBコイル64に供給するFB信号の電流値を求める。また、
図6(c)は、フィードバックが行われ、出力波形がT/2となっているFB収束状態を示している。
【0045】
次に、図面を参照して、本発明の第1の実施形態について説明する。
図7は、本発明の第1の実施形態による検査用回路を用いた磁界検出装置の検査の概要を説明する図である。この
図7における磁界検出装置200は、
図5の磁界検出装置200と同一である。本実施形態による検査用回路10は、交番信号調整部11、帰還信号終端部12及び帰還信号加算部13とを備えている。
【0046】
交番信号調整部11は、励磁信号調整部2017が出力する励磁信号が入力されると、この励磁信号の電圧値を電圧電流変換し、変換結果の電流信号を予め設定された電流値値に増幅し、疑似検出信号として検出信号増幅部2012に出力する。ここで、予め設定された電圧値とは、この検査対象の磁界検出装置200に磁気素子60を接続して、実際の測定において出力される検出信号の電圧値を測定する実験によって求められた値である。そして、励磁信号調整部2017が出力する励磁信号の電流値を測定しておき、この電流値が測定されている検出信号の電圧値となる電圧電流変換及び増幅処理が行われるように、交番信号調整部11を構成する。例えば、交番信号調整部11は、励磁信号(すなわち励磁電流)を検出信号の電圧値とする電圧降下を発生させる抵抗値を有する抵抗として構成しても良い。
【0047】
すなわち、検出信号増幅部2012の2つの入力端子の各々を、励磁信号調整部2017の2つの出力それぞれに対して2つの配線により接続し、この配線間の各々に抵抗の両端をそれぞれ接続した構成とする。これにより、この交番信号調整部11は、励磁信号調整部2017から供給される励磁信号である励磁電流を、実際の検出信号を疑似した疑似検出信号として検出信号増幅部2012に対して出力する。
【0048】
帰還信号終端部12は、帰還信号調整部2014からの出力をターミネートしており、かつ励磁信号調整部2017に対して帰還信号をフィードバックし、磁界検出装置200におけるフィードバックループを形成している。ここで、帰還信号終端部12は、例えば、この検査対象の磁界検出装置200に接続される磁気素子60のFBコイル64と同一あるいは同様の抵抗値を有する抵抗を用いる。
すなわち、帰還信号終端部12は、帰還信号調整部2014が出力する帰還信号を、励磁信号調整部2017に対して供給している。これにより、励磁信号調整部2017は、疑似検出信号が平衡状態となるように、励磁信号に帰還信号を重畳させた後、実際に交番信号調整部11に対して供給する励磁信号として出力する。
【0049】
帰還信号加算部13は、帰還信号調整部2014から供給される帰還信号の電流に対して、所定の直流電流を加算して、加算結果の合成電流を調整帰還信号として励磁信号調整部2017に対して供給する。この所定の直流電流の数値は、磁気素子60に対して定常磁界Hexが印加された際に、励磁信号に重畳される定常電流を擬似する疑似定常電流の電流値である。また、帰還信号加算部13は、外部からの制御により、磁界検出装置200の測定可能な磁界範囲に対応した電流値の範囲にて線形的に変化させることができる。
【0050】
次に、
図8は、交番信号調整部11が励磁信号調整部2017から供給される励磁信号の増幅処理または減衰処理を行い、疑似検出信号として検出信号増幅部2012への出力を説明する図である。
図8(a)は、磁気素子の励磁コイル62に供給される励磁電流(励磁信号)を示し、縦軸が励磁電流を示し、横軸が時間を示している。励磁電流は、基準電流値0A(ゼロアンペア)を境にした正否の交番信号である。
図8(b)は、検出信号比較部2013に供給される擬似検出信号を示し、縦軸が電圧値を示し、横軸が時間を示している。
図8(c)は、検出信号比較部2013が出力する時間t1と時間t2との間の時間幅を示す出力波形を示し、縦軸が出力波形の「H」レベルあるいは「L」レベルの電圧レベルを示し、横軸が時間を示している。この
図8(c)において、出力波形は、時間t1から時間t2まで「H」レベルの信号であり、その前後の時間が「L」レベルとなっている。
【0051】
また、
図8(a)は、
図6(a)の励磁信号と同様の信号である。
図8(b)は、交番信号調整部11が励磁信号調整部2017から供給される励磁信号を、電流電圧変換及び増幅処理を行って生成した疑似検出信号を示す図である。
図8(c)は、検出信号比較部2013が疑似検出信号から生成した出力波形を示す図である。
図7に戻り、検出信号比較部2013は、検出信号が供給されたときと同様に、疑似検出信号が増幅された検出信号の電圧値と、予め定められた閾値電圧値とを比較し、時間t1と時間t2とを検出し、この時間t1と時間t2との時間幅を示す
図6(b)の出力波形を生成する。
【0052】
上述した検査用回路10を接続して、帰還信号加算部13により定常電流を加算させない場合、すなわち帰還信号のみを励磁信号調整部2017に供給している場合、磁界検出装置200に対して磁気素子60を接続し、ゼロ磁界の環境に置いたときと同様の状態となる。この場合、データ信号が、ゼロ磁界の理想とする基準値(例えば0)とずれた数値であれば、この数値は、磁界検出装置200の内部回路である磁気素子制御部201によって発生するオフセット成分である。
したがって、この定常電流を加算させない状態で、データ信号を測定することにより、磁気素子制御部201におけるオフセット値が予め設定された誤差範囲内にあるか否かを検出することができ、この誤差範囲内にあれば正常であり、誤差範囲を外れていれば不良であるとする、磁界検出装置200の出荷時等における良品検査を行うことができる。
【0053】
また、上述した検査用回路10を接続して、帰還信号加算部13により定常電流を加算した場合、すなわち定常磁界Hexに対応する定常電流を帰還信号に加算して供給する場合、磁界検出装置200に対して磁気素子60を接続し、上記定常電流に対応する定常磁界の環境に置いたときと同様の状態となる。
そして、検査対象の磁界検出装置200における測定可能な磁界強度の範囲に対応させ、定常電流の電流値を変化させ、その際のデータ信号を測定することにより、磁界強度とデータ信号の数値との線形性の検査を行うことができる。
【0054】
すなわち、帰還信号に対して所定の定常磁界に対応する電流あるいは電圧を加算することにより、
図8(a)に示す曲線L0(ゼロ磁界)が任意の定常磁界となり曲線L1あるいは曲線L2に変化し、
図8(b)に示す擬似検出信号も曲線LL0(ゼロ磁界)が
図8(a)に示す曲線L1及び曲線L2の各々の変化に対応し、曲線LL1、曲線LL2に変化する。したがって、帰還信号に所定の定常磁界に対応する電流あるいは電圧を加算することにより、定常磁界が印加された状態の擬似検出信号を生成することができる。
したがって、帰還信号加算部13により定常電流を線形的に変化させ、この変化に対応させてデータ信号の電圧値を測定することにより、データ信号が線形的に変化しているか、あるいは定常電流とデータ信号の電圧値との対応関係を示す直線の傾きが正常化か否か(定常電流に対応する磁界強度を正確に測定しているか否か)を正確に判定することができる。
【0055】
次に、
図9は、磁界検出装置200の励磁信号調整部2017が励磁信号生成部2018の出力する三角波信号から励磁信号を差動信号により生成する場合におけるフィードバック(FB)信号を電流による加算を説明する図である。
図9において、励磁信号調整部2017は、励磁信号生成部2018からの三角波信号と、この三角波信号の反転信号との差分により励磁信号を生成し、出力端子から出力する。
【0056】
励磁信号調整部2017は、増幅回路20171と、反転回路20172と、抵抗20173と、増幅回路20174と、差動増幅回路20175を備えている。抵抗500は、励磁コイル62に対応、すなわち交番信号調整部11を構成する抵抗である。ここで、抵抗20173は抵抗値がRである。差動増幅回路20175は、抵抗20173により、電圧信号の励磁信号を電流信号の励磁信号に変換する電圧電流変換を行っている。
この
図9に示す回路構成の励磁信号調整部2017の場合、FB信号の帰還電流(定常電流が付加された場合も同様)を、差動増幅回路20175の(−)入力端子に供給する。これにより、本実施形態における検査用回路10を用いた、磁界検出装置200の磁気平衡方式におけるフィードバックループを形成する。
【0057】
次に、
図10は、磁界検出装置200の励磁信号調整部2017が励磁信号生成部2018の出力する三角波信号から励磁信号をシングルエンド信号により生成する場合におけるフィードバック(FB)信号を電流による加算を説明する図である。
図10において、
図9と同様に、励磁信号調整部2017は、励磁信号生成部2018からの三角波信号と、基準電圧Vrefとの差分により励磁信号を生成し、出力端子から出力する。
【0058】
励磁信号調整部2017は、抵抗20176と差動増幅回路20177とを備えている。抵抗500は、励磁コイル62に対応、すなわち交番信号調整部11を構成する抵抗である。ここで抵抗20176は抵抗値がRである。差動増幅回路20177は、抵抗20176により、電圧信号の励磁信号を電流信号の励磁信号に変換する電圧電流変換を行っている。
この
図10に示す回路構成の励磁信号調整部2017の場合、FB信号を、差動増幅回路20177の(−)入力端子に供給する。これにより、本実施形態における検査用回路10を用いた、磁界検出装置200の磁気平衡方式におけるフィードバックループを形成する。抵抗20176は、電圧信号である三角波信号を三角波電流信号に変換し、差動増幅回路20177の(−)入力端子に供給する。
【0059】
上述したように、本実施形態によれば、上記検査用回路10を用いることにより、磁界検出装置200のゼロ磁界におけるオフセット電圧と、測定可能な磁界範囲における磁界強度に対する出力データの線形性を、周囲の磁界の影響を受けることなく、高価な磁界発生装置を使用することなく、かつ磁気素子60の物性特性の影響を受けることなく、高い精度でかつ容易に行うことができる。また、本実施形態によれば、励磁信号調整部にFB信号を印加しているため、電流加算型のEXコイルFB制御と同等のFB制御系となる。したがって、励磁信号のオフセットの温度特性に起因した、オフセット出力の温度特性を評価する回路として適している。
【0060】
<第2の実施形態>
図面を参照して、本発明の第2の実施形態について説明する。
図11は、本発明の第2の実施形態による検査用回路を用いた磁界検出装置の検査の概要を説明する図である。この
図11における磁界検出装置200は、
図5の第1の実施形態による磁界検出装置200と同一である。本実施形態による検査用回路10は、交番信号調整部11、帰還信号終端部12及び帰還信号加算部13とを備えている。
第2の実施形態は、帰還信号終端部12からの帰還信号を励磁信号調整部2017に供給する第1の実施形態と異なり、帰還信号終端部12からの帰還信号を励磁信号生成部2018の出力に加算する。他の構成及び動作については第1の実施形態と同様であるため、構成の説明を省略する。
【0061】
図12は、磁界検出装置200の励磁信号調整部2017が励磁信号生成部2018が出力する三角波信号から励磁信号を差動信号により生成する場合におけるフィードバック(FB)信号を電圧による加算を説明する図である。
図12において、励磁信号調整部2017は、励磁信号生成部2018からのFB信号が重畳された三角波信号と、この三角波信号の反転信号との差分により励磁信号を生成し、出力端子から出力する。
【0062】
励磁信号調整部2017は、増幅回路20171と、反転回路20172と、抵抗20173と、増幅回路20174と、差動増幅回路20175を備えている。抵抗500は、励磁コイル62に対応、すなわち交番信号調整部11を構成する抵抗である。
この
図12に示す回路構成の励磁信号調整部2017の場合、FB信号の帰還電圧(定常電圧が付加された場合も同様)を、三角波信号及び三角波信号の反転信号のいずれか、あるいは各々に供給して加算する。これにより、本実施形態における検査用回路10を用いた、磁界検出装置200の磁気平衡方式におけるフィードバックループを形成する。
【0063】
上述した構成によって、第1の実施形態と同様に、
図6(b)に示す検出信号に代えて、
図8(b)に示す擬似検出信号を、検出信号比較部2013に供給することが可能となる。そして、
図6(c)に示す出力波形と同等の
図8(c)に示す出力波形を得ることができ、磁界検出装置200の内部回路である磁気素子制御部201の特性の検査を行うことができる。
【0064】
次に、
図13は、磁界検出装置200の励磁信号生成部2018が出力する三角波信号から励磁信号をシングルエンド信号により生成する場合におけるフィードバック(FB)信号を電圧による加算を説明する図である。
図13において、
図12と同様に、励磁信号調整部2017は、励磁信号生成部2018からのFB信号が重畳した三角波信号と、基準電圧Vrefとの差分により励磁信号を生成し、出力端子から出力する。
【0065】
励磁信号調整部2017は、抵抗20176と差動増幅回路20177とを備えている。抵抗500は、励磁コイル62に対応、すなわち交番信号調整部11を構成する抵抗である。
この
図13に示す回路構成の励磁信号調整部2017の場合、FB信号を、三角波信号に重畳させ、励磁信号調整部2017の差動増幅回路20177の(−)入力端子に供給する。これにより、本実施形態における検査用回路10を用いた、磁界検出装置200の磁気平衡方式におけるフィードバックループを形成する。抵抗20176は、電圧信号である三角波信号を三角波電流信号に変換し、差動増幅回路20177の(−)入力端子に供給する。
【0066】
上述したように、本実施形態によれば、第1の実施形態と同様に、上記検査用回路10を用いることにより、磁界検出装置200のゼロ磁界におけるオフセット電圧と、測定可能な磁界範囲における磁界強度に対する出力データの線形性の測定を、周囲の磁界の影響を受けることなく、高価な磁界発生装置を使用することなく、かつ磁気素子60の物性特性の影響を受けることなく、高い精度でかつ容易に行うことができる。また、本実施形態の場合は、励磁信号生成部にFB信号を印加しているため、第1の実施形態1と比較して、FB信号量の増加に伴う消費電流の増加を抑制することができる。なお、
図13の差動増幅回路20177の(+)入力端子にVrefの代わりにFB信号を印加することでも、前記と同様の測定が可能である。
【0067】
<第3の実施形態>
以下、図面を参照して、本発明の第3の実施形態を説明する。
図14は、本実施形態における後述する検査用回路10を用いる検査対象となる、
図1の磁気素子50を使用したEXコイルFB制御による磁界検出装置100の構成例を示すブロック図である。
本実施形態による検査対象となる磁界検出装置100は、検出コイル51及び励磁コイル52からなるフラックスゲート型の磁気素子50に印加される定常磁界の強度を、時間分解型の磁気平衡式により検出する際、励磁コイル52に対して印加する励磁信号を制御する。
磁気素子制御部101は、検出信号増幅部1011、検出信号比較部1012、帰還信号調整部1013、帰還信号変換部1014、データ信号変換部1015、励磁信号調整部1016及び励磁信号生成部1017を備えている。
【0068】
クロック信号生成部102は、所定の周期のクロック信号を生成する発振器から構成され、生成したクロック信号をクロック信号調整部103に対して出力する。
クロック信号調整部103は、供給されるクロック信号の信号レベルを増幅したり、クロック信号の周期の変更などの処理を行い、処理結果のクロック信号を励磁信号生成部1017に対して出力する。
【0069】
磁気素子制御部101において、励磁信号生成部1017は、クロック信号調整部103から供給されるクロック信号に基づいて、交番信号、例えば0Vを基準電位として交番する交番電圧信号としての三角波信号を生成する。
励磁信号調整部1016は、励磁信号生成部1017の生成した三角波信号を所定の増幅率にて増幅し、三角波電流信号を生成して、励磁コイル52対して印加する。
また、励磁信号調整部1016は、励磁コイル52に対して印加する三角波電流信号である励磁信号を、三角波信号に対して帰還電流If(FB信号)を加えて生成する。
【0070】
図14に戻り、検出信号増幅部1011は、磁気素子50の検出コイル51の両端の電圧を、予め設定された増幅度によって増幅する。
検出信号比較部1012は、検出信号増幅部1011から供給される増幅された検出信号の電圧値と、予め定められた閾値電圧値とを比較し、第1検出信号及び第2検出信号(検出信号、
図2(c)参照)を検出する。
ここで、
図2(c)に示すように、第1検出信号は、負極性(負電圧)のパルスであり、励磁コイル52に対して印加される電流の極性が正(正電流)から負(負電流)に変化する電圧領域で誘導起電力により発生する。一方、第2検出信号は、正極性(正電圧)のパルスであり、励磁コイル52に対して印加される電流の極性が負(負電流)から正(正電流)に変化する電流領域で誘導起電力により発生する。
【0071】
帰還信号変換部1014は、検出信号比較部1012が検出した差分Tdに対応した電圧情報(後述する帰還信号の電圧を決める情報)を生成し、帰還信号調整部1013に対して測定データとして出力する。
帰還信号調整部1013は、帰還信号変換部1014から供給される電圧情報に対応した電圧を発生し、この電圧を帰還信号として、励磁信号調整部1016及びデータ信号変換部1015に対して供給する。
データ信号変換部1015は、帰還信号調整部1013から供給される電圧(帰還信号)を、予め設定された増幅度により増幅し、出力端子からデータ信号として出力する。
【0072】
本実施形態においては、FB信号である帰還信号の電圧を生成する構成として、デジタル値を用いた演算によるデジタル処理で行う構成と、アナログ値を用いた演算によるアナログ処理で行う構成とのいずれでも、磁界検出装置100を構成することができる。以下、デジタル処理で帰還信号の電圧を生成する構成とアナログ処理で帰還電圧を生成する構成とを順番に説明する。以下の説明は、第1の実施形態及び第2の実施形態に対しても同様である。
【0073】
・デジタル処理で帰還信号の電圧を生成する構成
検出信号比較部1012は、第1検出信号から第2検出信号までの時間幅を計測し、この時間幅Tw(Tp、Tmなど)と三角波の周期Tの半分の時間、すなわちT/2との差分Td(=Tw−(T/2))を求め、帰還信号変換部1014に対して出力する。
帰還信号変換部1014は、検出信号比較部1012から時間情報である差分Tdが供給されると、この差分Tdから、FB信号としての帰還信号の電圧を生成する電圧情報を生成する。
ここで、帰還信号変換部1014には、差分Tdとこの差分Tdに対応したデジタル値の電圧情報との対応を示す時間電圧情報テーブルが内部の記憶部に予め書き込まれて記憶されている。
【0074】
そして、帰還信号変換部1014は、この内部の記憶部に記憶されている時間電圧情報テーブルから、供給される差分Tdに対応する電圧情報を読み出し、帰還信号調整部1013に対して出力する。例えば、電圧情報は、帰還信号の電圧値を示すデジタル値のデータである。また、電圧情報は、差分Tdの極性が付され、すなわち差分Tdが正の場合に正の極性を有し、差分Tdが負の場合に負の極性を有している。したがって、磁気素子50に対して、正の極性の定常磁界Hexが印加されている場合、励磁信号調整部1016は、三角波電圧信号から生成される駆動電流Iに対して負の極性の帰還電流Ifを帰還信号として重畳し、一方、負の極性の定常磁界Hexが印加されている場合、三角波電圧信号から生成される駆動電流Iに対して正の極性の帰還電流Ifを帰還信号として重畳する。
【0075】
帰還信号調整部1013は、帰還信号変換部1014から供給される電圧情報に基づき、電圧情報の示す電圧値の帰還信号を生成し、FB信号として励磁信号調整部1016に対して出力する。
ここで、帰還信号調整部1013は、電圧情報がデジタル値であるので、例えば内部にD/A変換器を備え、供給されるデジタル値である電圧情報をD/A変換器に入力して直流電圧を得て、帰還信号として励磁信号調整部1016に対して出力する。
励磁信号調整部1016は、帰還信号調整部1013から供給されるFB信号である帰還信号から生成した帰還電流Ifと、調整信号生成部1100から供給されるオフセット電流Iaとを、三角波電圧信号から内部で生成した駆動電流Iに対して重畳させ、三角波電流信号として励磁コイル52に対して印加する。
【0076】
また、三角波電流信号(励磁電流)に帰還電流Ifが重畳されている場合、検出信号比較部1012が検出する第1検出信号及び第2検出信号の時間間隔はT/2近傍にある。
このため、検出信号比較部1012は、すでに三角波電流信号に帰還電流Ifが重畳されている場合、出力する時間情報が、T/2とするに必要な帰還電流Ifと現在印加している帰還電流Ifとの差分の電流値を示している。したがって、検出信号比較部1012は、励磁信号が印加されている場合、上述した差分の電流値を示す時間情報として差分Tdを帰還信号変換部1014に対して出力する。
【0077】
また、帰還信号変換部1014は、差分の電流値を示す時間情報である差分Tdが供給されると、すでに述べたように、この差分Tdに対応する電流値を生成するための電圧情報を、内部の記憶部に記憶されている時間電圧情報テーブルから読み出し、帰還信号調整部1013に対して出力する。
また、帰還信号調整部1013は、内部に記憶部を有し、この記憶部に電圧情報が積算されて記憶され、この積算された電圧情報を用いて、励磁信号調整部1016に対して出力する帰還信号の電圧の生成を行い、励磁信号調整部1016に対して出力する。
ここで、帰還信号調整部1013は、差分Tdに対応する電圧情報が予め設定された設定電圧範囲内に含まれるか否かの判定を行う。
【0078】
そして、帰還信号調整部1013は、この設定電圧範囲内に電圧情報が含まれていない場合、磁気素子50に対して印加されている定常磁界をキャンセルする際に、印加しても磁界が変化しない、すなわちキャンセルに影響がない電圧と判定する。
すなわち、帰還信号調整部1013は、磁界強度を変化させる際の制御の精度の誤差となり、ほぼ第1検出信号及び第2検出信号の時間幅がT/2であると判定する。このとき、帰還信号調整部1013は、この誤差範囲とされた電圧情報を、内部の記憶部の直前までの時間情報に積算せず、破棄する。
【0079】
データ信号変換部1015は、帰還信号調整部1013から供給される電圧情報を、予め設定された増幅度により増幅し、外部に対して出力する。
このデータ信号変換部1015における増幅度は、予め線形的に測定可能な範囲の帰還信号の電圧値の範囲のみをデータ信号として出力する値に設定されている。すなわち、この増幅度は、定常磁界をキャンセルする磁界と、この磁界を発生する電圧値の帰還信号とが線形性を保つ範囲のみが増幅された電圧となり、範囲外の電圧を飽和させて一定電圧とするものである。すなわち、データ信号変換部1015は、帰還信号の電圧値とこの電圧値によって生成される磁界強度が線形性を有する帰還信号の電圧範囲外の帰還信号の電圧値が飽和する予め設定された増幅率により、帰還信号を増幅して出力する。
【0080】
したがって、このデータ信号は、定常磁界をキャンセルする磁界の強度を求める磁界電圧、すなわち定常磁界の強度を示すものである。外部にある磁界強度検出装置(不図示)は、このデータ信号が示す磁界電圧の電圧値を磁界の強度に変換して、変換した磁界の強度を出力する。
ここで、磁界強度検出装置には、磁界電圧の電圧値と、この磁界電圧の電圧値に対応する磁界の強度との対応を示す磁界強度テーブルが、内部の記憶部に予め書き込まれて記憶されている。
磁界強度検出装置は、磁界検出装置100から供給される、データ信号の示す磁界電圧の電圧値に対応する磁界強度を、磁界強度テーブルから読み出し、定常磁界(Hex)の強度の数値とし、例えば、自身に設けられた表示部に表示する。本発明は、磁界検出装置100と上述した図示しない磁界強度検出装置とにより、磁気検出装置を構成する。
【0081】
・アナログ処理で帰還信号の電圧を生成する構成
検出信号比較部1012は、検出信号増幅部出力の第1検出信号の立ち上がり部と第2検出信号の立ち上がり部とを検知し、帰還信号変換部1014に対して出力する。
帰還信号変換部1014は、第1検出信号及び第2検出信号の出力される周期(時間t1と時間t2との間隔、すなわち時間幅)に基づき、電圧情報としてのデューティ比を有するパルスを生成し、このパルスを電圧情報として帰還信号調整部1013に対して出力する。
【0082】
すなわち、帰還信号変換部1014は、電圧情報として、上記時間幅から帰還信号の電圧値を示すデューティ比を求め、この帰還信号の電圧値を示すデューティ比の矩形波を帰還信号調整部1013に対して出力する。
帰還信号調整部1013は、情報が矩形波信号で示されている場合、デューティ比に対応した直流電圧をPWM(Pulse Width Modulation)回路等により発生し、帰還信号として出力する。
【0083】
例えば、第1検出信号から第2検出信号までの時間幅が、第2検出信号から第1検出信号までの時間幅に対して長い場合、定常磁界が負である必要がある。このため、帰還信号調整部1013は、定常磁界をキャンセルする正の磁界を発生させる直流電圧の帰還信号を発生する。
一方、第2検出信号から第1検出信号までの時間幅が、第1検出信号から第2検出信号までの時間幅に対して長い場合、定常磁界が正であるため、帰還信号調整部1013は、定常磁界をキャンセルする負の磁界を発生させる直流電圧の帰還信号を発生する。
【0084】
すなわち、帰還信号調整部1013は、電圧情報であるパルスが供給されると、このパルスのデューティ比に対応した電圧値の帰還信号を生成し、生成した帰還信号を励磁信号調整部1016に対して出力する。
ここで、励磁信号調整部1016は、すでに第1の実施形態で説明した励磁信号調整部2017と同様に、
図9あるいは
図10の構成となっている。
図9の場合、励磁信号調整部1016は、増幅回路20171と、反転回路20172と、抵抗20173と、増幅回路20174と、差動増幅回路20175を備えている。抵抗500は、励磁コイル62に対応、すなわち交番信号調整部21を構成する抵抗である。励磁信号調整部1016は、励磁信号生成部2018からの三角波信号と、この三角波信号の反転信号との差分により励磁信号を生成し、出力端子から励磁コイル62へ出力する。
【0085】
一方、
図10の場合、励磁信号調整部1016は、抵抗20176と差動増幅回路20177とを備えている。抵抗500は、励磁コイル62に対応、すなわち交番信号調整部11を構成する抵抗である。また、励磁信号調整部1016は、励磁信号生成部1017からの三角波信号と、基準電圧Vrefとの差分により励磁信号を生成し、出力端子から励磁コイル62へ出力する。
【0086】
上述したように、励磁信号調整部1026へ供給される帰還電流Ifは、外部磁界(定常磁界Hex)と比例関係となる。そして、帰還信号に対応する帰還電流Ifとして駆動電流I(三角波電流信号)に重畳させ、励磁コイル62に印加することで、この帰還電流Ifによる磁界が発生し、磁気素子50内の磁性体コアに印加される磁界が一定になるように(第1検出信号及び第2検出信号の時間幅がT/2で一定となるように)調整する。結果として、外部の定常磁界に依存せず、第1検出信号と第2検出信号の時間間隔を一定に保持することができる。
【0087】
励磁信号調整部1016は、デジタル処理の場合と同様に、帰還信号調整部1013から供給される帰還信号を、制御回路内部で生成した三角波電圧信号に重畳させ、この帰還信号が重畳された三角波電圧信号を励磁信号として励磁コイル52に対して印加する。
データ信号変換部1015の動作は、アナログ値を増幅する以外、デジタル処理と同様であるため、説明を省略する。
【0088】
次に、図面を参照して、本発明の第3の実施形態について説明する。
図15は、本発明の第3の実施形態による検査用回路を用いた磁界検出装置の検査の概要を説明する図である。この
図15における磁界検出装置100は、
図14の磁界検出装置100と同一である。本実施形態による検査用回路20は、交番信号調整部21及び帰還信号加算部22とを備えている。
【0089】
交番信号調整部21は、第1の実施形態の交番信号調整部11と同様に、励磁信号調整部1016が出力する励磁信号が入力されると、この励磁信号の電流値を電流電圧変換し、変換結果の電圧信号を予め設定された電圧値に増幅し、疑似検出信号として検出信号増幅部1011に出力する。ここで、予め設定された電圧値とは、この検査対象の磁界検出装置100に磁気素子50を接続して、実際の測定において出力される検出信号の電圧値を測定する実験によって求められた値である。そして、励磁信号調整部1016が出力する励磁信号の電流値を測定しておき、この電流値が測定されている検出信号の電圧値となる電流電圧変換及び増幅処理が行われるように、交番信号調整部21を構成する。例えば、交番信号調整部21は、励磁信号(すなわち励磁電流)を検出信号の電圧値とする電圧降下を発生させる抵抗値を有する抵抗として構成しても良い。
【0090】
すなわち、検出信号増幅部1011の2つの入力端子の各々を、励磁信号調整部1016の2つの出力それぞれに対して2つの配線により接続し、この配線間の各々に抵抗の両端をそれぞれ接続した構成とする。これにより、この交番信号調整部21は、励磁信号調整部1016から供給される励磁信号である励磁電流を、実際の検出信号を疑似した疑似検出信号として検出信号増幅部1011に対して出力する。
【0091】
帰還信号加算部22は、帰還信号調整部1013から供給される帰還信号の電流に対して、所定の直流電流を加算して、加算結果の合成電流を調整帰還信号として励磁信号調整部1016に対して供給する。この所定の直流電流の数値は、第1の実施形態と同様に、磁気素子50に対して定常磁界Hexが印加された際に、励磁信号に重畳される定常電流を擬似する疑似定常電流の電流値値である。また、帰還信号加算部22は、外部からの制御により、磁界検出装置100の測定可能な磁界範囲に対応した電流値の範囲にて線形的に変化させる。
【0092】
上述した構成により、すでに第1の実施形態で説明したように、
図8(b)に示す擬似検出信号が検出信号増幅部1011に対して供給され、
図8(c)に示す時間t1と時間t2との間の時間幅を示す出力波形が検出信号比較部1012から、帰還信号変換部1014に対して出力される。
第3の実施形態の場合、フィードバックループが磁界検出装置100の内部回路である磁気素子制御部101の内部にて形成されているため、第1の実施形態及び第2の実施形態と異なり、帰還信号終端部12に対応する構成を設ける必要がない。
【0093】
上述した検査用回路20を接続して、帰還信号加算部22により定常電流を加算させない場合、すなわち帰還信号のみが励磁信号調整部1016に供給されてている場合、磁界検出装置100に対して磁気素子50を接続し、ゼロ磁界の環境に置いたときと同様の状態となる。この場合、第1の実施形態と同様に、データ信号が、ゼロ磁界の理想とする基準値(例えば0)とずれた数値であれば、この数値は、磁界検出装置100の内部回路である磁気素子制御部101によって発生するオフセット成分である。
したがって、この定常電流を加算させない状態で、データ信号を測定することにより、磁気素子制御部101におけるオフセット値が予め設定された誤差範囲内にあるか否かを検出することができ、この誤差範囲内にあれば正常であり、誤差範囲を外れていれば不良であるとする、磁界検出装置100の出荷時等における良品検査を行うことができる。
【0094】
また、上述した検査用回路20を接続して、帰還信号加算部22により定常電流を加算した場合、すなわち定常磁界Hexに対応する定常電流を帰還信号に加算して供給している場合、磁界検出装置100に対して磁気素子50を接続し、上記定常電流に対応する定常磁界の環境に置いたときと同様の状態となる。
そして、第1の実施形態と同様に、検査対象の磁界検出装置100における測定可能な磁界強度の範囲に対応させ、定常電流の電流値を変化させ、その際のデータ信号を測定することにより、磁界強度とデータ信号の数値との線形性の検査を行うことができる。
【0095】
したがって、帰還信号加算部22により定常電流を線形的に変化させ、この変化に対応させてデータ信号の電圧値を測定することにより、データ信号が線形的に変化しているか、あるいは定常電流とデータ信号の電圧値との対応関係を示す直線の傾きが正常化か否か(定常電流に対応する磁界強度を正確に測定しているか否か)を性格に判定することができる。
【0096】
すなわち、上述した構成によって、第1の実施形態と同様に、
図6(b)に示す検出信号に代えて、
図8(b)に示す擬似検出信号を、検出信号比較部1012に供給することが可能となる。そして、
図6(c)に示す出力波形と同等の
図8(c)に示す、検出信号比較部1012が出力する出力波形を得ることができ、磁界検出装置100の内部回路である磁気素子制御部101の特性の検査を行うことができる。
【0097】
次に、第1の実施形態と同様に、磁界検出装置100の励磁信号調整部1016が
図9に示す励磁信号生成部1017からの三角波信号により励磁信号を生成する場合において、フィードバック(FB)信号を電流により加算する場合を説明する。
図9において、励磁信号調整部1016は、励磁信号生成部1017からの三角波信号と、この三角波信号の反転信号との差分により励磁信号を生成し、出力端子から出力する。
【0098】
励磁信号調整部1016は、第1の実施形態と同様に、増幅回路20171と、反転回路20172と、抵抗20173と、増幅回路20174と、差動増幅回路20175を備えている。抵抗500は、励磁コイル52に対応、すなわち交番信号調整部21を構成する抵抗である。
この
図9に示す回路構成の励磁信号調整部2017の場合、FB信号を、差動増幅回路20175の(−)入力端子に供給する。
【0099】
次に、第1の実施形態と同様に、磁界検出装置100の励磁信号調整部1016が
図10に示す励磁信号生成部1017からの三角波信号により励磁信号を生成する場合において、フィードバック(FB)信号を電流により加算する場合を説明する。
図10において、
図9と同様に、励磁信号調整部1016は、励磁信号生成部1017からの三角波信号と、基準電圧Vrefとの差分により励磁信号を生成し、出力端子から出力する。
【0100】
励磁信号調整部1016は、抵抗20176と差動増幅回路20177とを備えている。抵抗500は、励磁コイル62に対応、すなわち交番信号調整部21を構成する抵抗である。
この
図10に示す回路構成の励磁信号調整部1016の場合、FB信号の帰還電流(定常電流が付加された場合も同様)を、差動増幅回路20177の(−)入力端子に供給する。抵抗20176は、電圧信号である三角波信号を三角波電流信号に変換し、差動増幅回路20177の(−)入力端子に供給する。
【0101】
上述したように、本実施形態によれば、第1の実施形態と同様に、上記検査用回路を用いることにより、磁界検出装置100のゼロ磁界におけるオフセット電圧と、検出可能な磁界範囲における磁界強度に対する出力データの線形性の測定を、周囲の磁界の影響を受けることなく、高価な磁界発生装置を使用することなく、かつ磁気素子50の物性特性の影響を受けることなく、高い精度でかつ容易に行うことができる。本実施形態によれば、FB信号は、制御回路内で帰還信号調整部から励磁信号調整部に印加されているため、制御回路の外部の帰還信号加算部から制御回路に入力する信号には、FB信号は含まれない。したがって、実施例1、2と比較して、出力データの線形性評価に適している。
【0102】
<第4の実施形態>
図面を参照して、本発明の第4の実施形態について説明する。
図16は、第4の実施形態による検査用回路20を用いた検査対象となる磁界検出装置の構成例を示す図である。この
図16に示す検査対象となる磁界検出装置100Aは、第3の実施形態における磁気素子制御部101の磁界検出装置100と異なり、磁気素子制御部101Aにおいて、帰還信号調整部1013が励磁信号生成部1017Aに対して帰還信号を電圧信号として出力する。他の構成については、第4の実施形態と同様であり、同様の構成については同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0103】
次に、
図17は、本発明の第4の実施形態による検査用回路を用いた磁界検出装置の検査の概要を説明する図である。この
図17における磁界検出装置100Aは、
図16に示す磁界検出装置100Aと同様である。本実施形態による検査用回路20は、第3の実施形態で説明したように、交番信号調整部21及び帰還信号加算部22とを備えている。
第4の実施形態は、帰還信号調整部1013からの帰還信号を励磁信号調整部1016に供給する第3の実施形態と異なり、帰還信号調整部1013からの帰還信号を電圧信号として励磁信号生成部1017の出力に加算する。他の構成及び動作については第3の実施形態と同様であるため、構成の説明を省略する。
【0104】
次に、第2の実施形態と同様に、磁界検出装置100Aの励磁信号調整部1016が
図12に示す励磁信号生成部1017からの三角波信号により励磁信号を生成する場合におけるフィードバック(FB)信号を電圧により加算する場合を説明する。
図12において、励磁信号調整部1016は、励磁信号生成部1017からのFB信号が重畳された三角波信号と、この三角波信号の反転信号との差分により励磁信号を生成し、出力端子から出力する。
【0105】
励磁信号調整部1016は、増幅回路20171と、反転回路20172と、抵抗20173と、増幅回路20174と、差動増幅回路20175を備えている。抵抗500は、励磁コイル52に対応、すなわち交番信号調整部21を構成する抵抗である。
この
図12に示す回路構成の励磁信号調整部2017の場合、FB信号の帰還電圧(定常電圧が付加された場合も同様)を、三角波信号及び三角波信号の反転信号のいずれか、あるいは各々に供給して加算する。
【0106】
すなわち、上述した構成によって、第1の実施形態と同様に、
図6(b)に示す検出信号に代えて、
図8(b)に示す擬似検出信号を、検出信号比較部1012に供給することが可能となる。そして、
図6(c)に示す出力波形と同等の
図8(c)に示す、検出信号比較部1012が出力する出力波形を得ることができ、磁界検出装置100Aの内部回路である磁気素子制御部101Aの特性の検査を行うことができる。
【0107】
次に、第2の実施形態と同様に、磁界検出装置100Aの励磁信号生成部1017Aが生成する三角波信号から生成する場合における帰還信号を電圧により加算する場合を説明する。
図13において、
図12と同様に、励磁信号調整部1016は、励磁信号生成部1017AからのFB信号が重畳した三角波信号と、基準電圧Vrefとの差分により励磁信号を生成し、出力端子から出力する。
【0108】
励磁信号調整部2017は、抵抗20176と差動増幅回路20177とを備えている。抵抗500は、励磁コイル52に対応、すなわち交番信号調整部21を構成する抵抗である。また、本実施形態によれば、実施例3と異なり、FB信号が励磁信号生成部に印加されるため、実施例3と比較して、FB信号量の増加に伴う消費電流の増加を抑制することができる。
この
図13に示す回路構成の励磁信号調整部2017の場合、FB信号を、三角波信号に重畳させ、励磁信号調整部2017の差動増幅回路20177の(−)入力端子に供給する。これにより、本実施形態における検査用回路10を用いた、磁界検出装置200の磁気平衡式におけるフィードバックループを形成する。抵抗20176は、電圧信号である三角波信号を三角波電流信号に変換し、差動増幅回路20177の(−)入力端子に供給する。
【0109】
上述したように、本実施形態によれば、第3の実施形態と同様に、上記検査用回路20を用いることにより、磁界検出装置101Aのゼロ磁界におけるオフセット電圧と、測定可能な磁界範囲における定常磁界の磁場強度及び出力される出力データの電圧間の線形性との測定を、周囲の磁界の影響を受けることなく、高価な磁界発生装置を使用することなく、かつ磁気素子50の物性特性の影響を受けることなく、高い精度でかつ容易に行うことができる。また、本実施形態によれば、実施例3と異なり、FB信号が励磁信号生成部に印加されるため、第3の実施形態と比較して、FB信号量の増加に伴う消費電流の増加を抑制することができる。なお、第2の実施形態と同様に、
図13の差動増幅回路20177の(+)入力端子にVrefの代わりにFB信号を印加することでも、前記と同様の測定が可能である。
【0110】
ところで、第1の実施形態及び第2の実施形態では、帰還信号加算部の出力信号として、FB信号と任意信号の双方を、同時に、励磁信号調整部、または、励磁信号生成部に印加する手法を説明したが、FB信号を励磁信号調整部に、任意信号を励磁信号生成部に印加する手法でもよい。また、FB信号を励磁信号生成部に、任意信号を励磁信号調整部に印加する手法でもよい。また、第3の実施形態及び第4の実施形態においても、上述した第1の実施形態及び第2の実施形態と同様である。また、第1の実施形態から第4の実施形態では、ゼロ磁界における出力信号のオフセット、及び仕様における検出可能範囲における磁界の変化に対する線形性の検査に用いる検査回路と検査方法を説明したが、検出可能範囲以上の大きな磁界が印加された場合の出力信号の挙動を評価することも可能である。さらに、第1の実施形態から第4の実施形態に示した、FB信号に換算する定常電流または定常電圧の代わりに、任意の交流信号を印加することにより、交流成分の外部磁界に対する応答性を模擬した検査を実現することも可能である。
【0111】
以上、この発明の実施形態を図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。