特許第6014548号(P6014548)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6014548
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月25日
(54)【発明の名称】燃料電池の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/02 20160101AFI20161011BHJP
   H01M 8/0202 20160101ALI20161011BHJP
   H01M 8/24 20160101ALI20161011BHJP
   H01M 8/10 20160101ALN20161011BHJP
【FI】
   H01M8/02 E
   H01M8/02 B
   H01M8/24 E
   H01M8/02 Z
   !H01M8/10
【請求項の数】3
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-105732(P2013-105732)
(22)【出願日】2013年5月20日
(65)【公開番号】特開2014-132548(P2014-132548A)
(43)【公開日】2014年7月17日
【審査請求日】2015年11月27日
(31)【優先権主張番号】特願2012-268247(P2012-268247)
(32)【優先日】2012年12月7日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【弁理士】
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100149261
【弁理士】
【氏名又は名称】大内 秀治
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【弁理士】
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100169225
【弁理士】
【氏名又は名称】山野 明
(72)【発明者】
【氏名】西山 忠志
(72)【発明者】
【氏名】後藤 修平
(72)【発明者】
【氏名】石田 堅太郎
(72)【発明者】
【氏名】岡部 祐介
【審査官】 高木 康晴
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−115445(JP,A)
【文献】 特開2006−172816(JP,A)
【文献】 特開2007−250208(JP,A)
【文献】 特開2010−232086(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0118888(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/02
H01M 8/24
H01M 8/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解質膜の両側にそれぞれ電極を設けた電解質膜・電極構造体と金属セパレータとが積層されるとともに、前記電解質膜・電極構造体は、外周部に樹脂枠部材が設けられる燃料電池の製造方法であって、
前記金属セパレータと前記樹脂枠部材とを当接させた状態で、前記金属セパレータ、前記樹脂枠部材に当接する接触面とは反対の面からスポット状に加熱することにより、前記樹脂枠部材の一部を溶融して前記金属セパレータと前記樹脂枠部材とを溶着させ、前記金属セパレータと前記電解質膜・電極構造体とが一体化された構造体を製造することを特徴とする燃料電池の製造方法
【請求項2】
請求項1記載の燃料電池の製造方法において、一方の前記金属セパレータと前記樹脂枠部材との間に配置される内側シール部材と、
前記樹脂枠部材を挟んで積層される一方の前記金属セパレータと他方の前記金属セパレータとの間に、且つ、該樹脂枠部材の外方に位置して配置される外側シール部材と、
を設けるとともに、
パレータ面方向に沿って前記内側シール部材と前記外側シール部材との間を、前記スポット状に加熱することを特徴とする燃料電池の製造方法
【請求項3】
請求項1又は2記載の燃料電池の製造方法において、第1の前記金属セパレータ、第1の前記電解質膜・電極構造体、第2の前記金属セパレータ、第2の前記電解質膜・電極構造体及び第3の前記金属セパレータを備えるとともに、
第1の前記金属セパレータと第1の前記電解質膜・電極構造体とが溶着された第1の前記構造体と、
第2の前記金属セパレータと第2の前記電解質膜・電極構造体とが溶着された第2の前記構造体と、
第3の前記金属セパレータと、
積層ることを特徴とする燃料電池の製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解質膜の両側にそれぞれ電極を設けた電解質膜・電極構造体と金属セパレータとが積層されるとともに、前記電解質膜・電極構造体は、外周部に樹脂枠部材が設けられる燃料電池の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、固体高分子型燃料電池は、高分子イオン交換膜からなる固体高分子電解質膜の一面側にアノード電極を、前記固体高分子電解質膜の他面側にカソード電極を、それぞれ配設した電解質膜・電極構造体(MEA)を備えている。電解質膜・電極構造体は、セパレータによって挟持されることにより発電セル(単位セル)を構成している。燃料電池では、通常、数十〜数百の発電セルが積層されて、例えば、車載用燃料電池スタックとして使用されている。
【0003】
燃料電池では、積層されている各発電セルのアノード電極とカソード電極とに、それぞれ反応ガスである燃料ガスと酸化剤ガスとを供給するため、所謂、内部マニホールドを構成する場合が多い。従って、反応ガスのシール性等を確保するために、電解質膜・電極構造体とセパレータとを正確に位置決めして組み立てる必要がある。
【0004】
そこで、例えば、特許文献1に開示されている燃料電池が知られている。この燃料電池では、電解質膜・電極構造体は、一方の電極を構成するガス拡散層が、電解質膜全面を覆って設けられ、他方の電極を構成するガス拡散層が、前記電解質膜よりも小さな平面寸法を有している。そして、セパレータに一体に設けられたシール部材には、一方の電極を構成するガス拡散層及び電解質膜の外周端部を位置決めするための複数の凸状部が互いに離間して設けられている。
【0005】
このため、電解質膜・電極構造体をセパレータの凸状部に係合させるだけで、前記電解質膜・電極構造体を前記セパレータに対して正確且つ容易に位置決めすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4516279号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、比較的高価な固体高分子電解質膜の使用量を削減させるために、前記固体高分子電解質膜を薄膜状に構成することが行われている。その際、薄膜状で強度が低い固体高分子電解質膜を保護するために、樹脂製枠部材を組み込んだ枠付きMEAが採用されている。しかしながら、樹脂製枠部材には、反りが発生し易い。このため、樹脂製枠部材をセパレータの位置決め用凸状部に係合させる際や、燃料電池を積層する際に、電解質膜・電極構造体の位置ずれが発生するという問題がある。
【0008】
本発明は、この種の問題を解決するものであり、簡単且つ経済的な構成で、電解質膜・電極構造体と金属セパレータとを正確且つ容易に位置決めし、相互のずれの発生を可及的に抑制することが可能な燃料電池の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、電解質膜の両側にそれぞれ電極を設けた電解質膜・電極構造体と金属セパレータとが積層されるとともに、前記電解質膜・電極構造体は、外周部に樹脂枠部材が設けられる燃料電池の製造方法に関するものである。
【0010】
この燃料電池の製造方法では、金属セパレータと樹脂枠部材とを当接させた状態で、前記金属セパレータ前記樹脂枠部材に当接する接触面とは反対の面からスポット状に加熱することにより、前記樹脂枠部材の一部を溶融して前記金属セパレータと前記樹脂枠部材とを溶着させ、前記金属セパレータと電解質膜・電極構造体とが一体化された構造体を製造している。
【0011】
また、この燃料電池の製造方法では、一方の金属セパレータと樹脂枠部材との間に配置される内側シール部材と、前記樹脂枠部材を挟んで積層される一方の前記金属セパレータと他方の金属セパレータとの間に、且つ、該樹脂枠部材の外方に位置して配置される外側シール部材と、を設けている。セパレータ面方向に沿って内側シール部材と外側シール部材との間を、スポット状に加熱することが好ましい。
【0012】
さらに、この燃料電池の製造方法では、第1の金属セパレータ、第1の電解質膜・電極構造体、第2の金属セパレータ、第2の電解質膜・電極構造体及び第3の金属セパレータを備えている。第1の金属セパレータと第1の電解質膜・電極構造体とが溶着された第1の構造体と、第2の金属セパレータと第2の電解質膜・電極構造体とが溶着された第2の構造体と、第3の金属セパレータと、積層ることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、金属セパレータと電解質膜・電極構造体とが重ね合わされた状態で、前記金属セパレータ側の加熱部位に対してスポット状に加熱している。これにより、樹脂枠部材の一部が溶融して、金属セパレータと前記樹脂枠部材とが溶着されている。このため、樹脂枠部材に反りが発生していても、前記樹脂枠部材を金属セパレータに確実に固定することができる。
【0014】
従って、簡単且つ経済的な構成で、電解質膜・電極構造体と金属セパレータとを正確且つ容易に位置決めし、相互のずれの発生を可及的に抑制することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の第1の実施形態に係る燃料電池を構成する発電ユニットの要部分解斜視説明図である。
図2】前記発電ユニットの、図1中、II−II線断面説明図である。
図3】前記発電ユニットを構成する第1金属セパレータの正面説明図である。
図4】前記発電ユニットを構成する第2金属セパレータの正面説明図である。
図5】前記発電ユニットを構成する第1電解質膜・電極構造体の一方の面の説明図である。
図6】前記第1電解質膜・電極構造体の他方の面の説明図である。
図7】前記発電ユニットを構成する第2電解質膜・電極構造体の一方の面の説明図である。
図8】前記第2電解質膜・電極構造体の他方の面の説明図である。
図9】加熱装置により前記第1金属セパレータと前記第1電解質膜・電極構造体の第1樹脂枠部材とを溶着する際の説明図である。
図10】本発明の第2の実施形態に係る燃料電池を構成する発電ユニットの要部分解斜視説明図である。
図11】前記発電ユニットの、図10中、XI−XI線断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1及び図2に示すように、本発明の第1の実施形態に係る燃料電池10は、発電ユニット12を備える。複数の発電ユニット12は、水平方向(矢印A方向)又は鉛直方向(矢印C方向)に沿って互いに積層されてスタックを構成する。このスタックは、例えば、図示しない燃料電池電気自動車に搭載される。
【0017】
発電ユニット12は、第1金属セパレータ(第1の金属セパレータ)14、第1電解質膜・電極構造体(第1の電解質膜・電極構造体)16a、第2金属セパレータ(第2の金属セパレータ)18、第2電解質膜・電極構造体(第2の電解質膜・電極構造体)16b及び第3金属セパレータ(第3の金属セパレータ)20を設ける。
【0018】
第1金属セパレータ14、第2金属セパレータ18及び第3金属セパレータ20は、例えば、鋼板、ステンレス鋼板、アルミニウム板、めっき処理鋼板、あるいはその金属表面に防食用の表面処理を施した横長形状の金属板により構成される。第1金属セパレータ14、第2金属セパレータ18及び第3金属セパレータ20は、平面が矩形状を有するとともに、金属製薄板を波形状にプレス加工することにより、断面凹凸形状に成形される。
【0019】
図1に示すように、発電ユニット12の長辺方向(矢印B方向)の一端縁部には、矢印A方向に互いに連通して、酸化剤ガス入口連通孔22a及び燃料ガス出口連通孔24bが設けられる。具体的には、酸化剤ガス入口連通孔22a及び燃料ガス出口連通孔24bは、第1金属セパレータ14、第2金属セパレータ18及び第3金属セパレータ20の長辺方向の一端縁部に設けられる。酸化剤ガス入口連通孔22aは、酸化剤ガス、例えば、酸素含有ガスを供給する一方、燃料ガス出口連通孔24bは、燃料ガス、例えば、水素含有ガスを排出する。
【0020】
発電ユニット12の長辺方向(矢印B方向)の他端縁部には、矢印A方向に互いに連通して、燃料ガスを供給するための燃料ガス入口連通孔24a、及び酸化剤ガスを排出するための酸化剤ガス出口連通孔22bが設けられる。
【0021】
発電ユニット12の短辺方向(矢印C方向)の両端縁部には、酸化剤ガス入口連通孔22a側の一方に、矢印A方向に互いに連通して冷却媒体を供給するための一対の冷却媒体入口連通孔25aが設けられる。発電ユニット12の短辺方向の両端縁部には、燃料ガス入口連通孔24a側の他方に、冷却媒体を排出するための一対の冷却媒体出口連通孔25bが設けられる。
【0022】
発電ユニット12の長辺方向の一端縁部及び他端縁部には、それぞれ矢印C方向の略中央にノック用孔部27a、27bが形成される。ノック用孔部27a、27bには、それぞれ図示しない樹脂製のノックピンが挿入されることにより、発電ユニット12内で第1金属セパレータ14、第2金属セパレータ18及び第3金属セパレータ20間の位置決めを行う。
【0023】
図3に示すように、第1金属セパレータ14の第1電解質膜・電極構造体16aに向かう面14aには、酸化剤ガス入口連通孔22aと酸化剤ガス出口連通孔22bとに連通する第1酸化剤ガス流路26が形成される。
【0024】
第1酸化剤ガス流路26は、矢印B方向に延在する複数の波状流路溝部(直線状流路溝部でもよい)26aを有する。第1酸化剤ガス流路26の入口近傍及び出口近傍には、それぞれ複数の入口エンボス部28a及び出口エンボス部28bが設けられる。
【0025】
入口エンボス部28aと酸化剤ガス入口連通孔22aとの間には、ブリッジ部を構成する複数本の入口連結溝30aが形成される。出口エンボス部28bと酸化剤ガス出口連通孔22bとの間には、ブリッジ部を構成する複数本の出口連結溝30bが形成される。
【0026】
図1に示すように、第1金属セパレータ14の面14bには、一対の冷却媒体入口連通孔25aと一対の冷却媒体出口連通孔25bとに連通する冷却媒体流路32が形成される。冷却媒体流路32は、第1酸化剤ガス流路26の裏面形状と後述する第2燃料ガス流路42の裏面形状とが重なり合って形成される。
【0027】
第2金属セパレータ18の第1電解質膜・電極構造体16aに向かう面18aには、燃料ガス入口連通孔24aと燃料ガス出口連通孔24bとに連通する第1燃料ガス流路34が形成される。第1燃料ガス流路34は、矢印B方向に延在する複数の波状流路溝部(直線状流路溝部でもよい)34aを有する。
【0028】
燃料ガス入口連通孔24aの近傍には、前記燃料ガス入口連通孔24aと第1燃料ガス流路34とを連通する複数の供給流路溝部36aが形成される。複数の供給流路溝部36aは、ブリッジである蓋体37aにより覆われる。燃料ガス出口連通孔24bの近傍には、前記燃料ガス出口連通孔24bと第1燃料ガス流路34とを連通する複数の排出流路溝部36bが形成される。複数の排出流路溝部36bは、ブリッジである蓋体37bにより覆われる。
【0029】
図4に示すように、第2金属セパレータ18の第2電解質膜・電極構造体16bに向かう面18bには、酸化剤ガス入口連通孔22aと酸化剤ガス出口連通孔22bとに連通する第2酸化剤ガス流路38が形成される。第2酸化剤ガス流路38は、矢印B方向に延在する複数の波状流路溝部(直線状流路溝部でもよい)38aを有する。
【0030】
図1に示すように、第3金属セパレータ20の第2電解質膜・電極構造体16bに向かう面20aには、燃料ガス入口連通孔24aと燃料ガス出口連通孔24bとに連通する第2燃料ガス流路42が形成される。第2燃料ガス流路42は、矢印B方向に延在する複数の波状流路溝部(直線状流路溝部でもよい)42aを有する。
【0031】
燃料ガス入口連通孔24aの近傍には、前記燃料ガス入口連通孔24aと第2燃料ガス流路42とを連通する複数の供給流路溝部44aが形成される。複数の供給流路溝部44aは、ブリッジである蓋体45aにより覆われる。燃料ガス出口連通孔24bの近傍には、前記燃料ガス出口連通孔24bと第2燃料ガス流路42とを連通する複数の排出流路溝部44bが形成される。複数の排出流路溝部44bは、ブリッジである蓋体45bにより覆われる。
【0032】
第3金属セパレータ20の面20bには、第2燃料ガス流路42の裏面形状である冷却媒体流路32の一部が形成される。第3金属セパレータ20の面20bには、前記第3金属セパレータ20に隣接する第1金属セパレータ14の面14bが積層されることにより、冷却媒体流路32が一体に設けられる。
【0033】
第1金属セパレータ14の面14a、14bには、この第1金属セパレータ14の外周端縁部を周回して第1シール部材46が一体成形される。第2金属セパレータ18の面18a、18bには、この第2金属セパレータ18の外周端縁部を周回して第2シール部材48が一体成形される。第3金属セパレータ20の面20a、20bには、この第3金属セパレータ20の外周端縁部を周回して第3シール部材50が一体成形される。
【0034】
第1シール部材46、第2シール部材48及び第3シール部材50としては、例えば、EPDM、NBR、フッ素ゴム、シリコーンゴム、フロロシリコーンゴム、ブチルゴム、天然ゴム、スチレンゴム、クロロプレーン又はアクリルゴム等のシール材、クッション材、あるいはパッキン材等の弾性を有するシール材が用いられる。
【0035】
図3に示すように、第1シール部材46は、第1金属セパレータ14の面14aにおいて、酸化剤ガス入口連通孔22a及び酸化剤ガス出口連通孔22bと、第1酸化剤ガス流路26との外周を取り囲む第1凸状シール部46aを有する。図2に示すように、第1凸状シール部46aは、第1電解質膜・電極構造体16aを挟んで積層される第2金属セパレータ18の第2シール部材48に当接する。第1凸状シール部46aは、後述する第1樹脂枠部材58の外周に位置して配置される外側シール部材を構成する。
【0036】
第1金属セパレータ14の面14aには、第1シール部材46と一体に位置決めリブ46arが形成される。位置決めリブ46arは、第1電解質膜・電極構造体16aと第1金属セパレータ14とを相対的に位置決めする機能を有し、必要に応じて設けられる。
【0037】
第1シール部材46は、図1に示すように、第1金属セパレータ14の面14bにおいて、冷却媒体入口連通孔25a及び冷却媒体出口連通孔25bと冷却媒体流路32との外周を取り囲む第2凸状シール部46bを有する。
【0038】
第2シール部材48は、第2金属セパレータ18の面18aにおいて、第1燃料ガス流路34を囲繞する第1凸状シール部48aを有する。図2に示すように、第1凸状シール部48aは、第2金属セパレータ18に隣接する第1電解質膜・電極構造体16aの第1樹脂枠部材58に当接する内側シール部材を構成する。
【0039】
図4に示すように、第2シール部材48は、面18bにおいて、酸化剤ガス入口連通孔22a及び酸化剤ガス出口連通孔22bと第2酸化剤ガス流路38との外周を取り囲む第2凸状シール部48bを有する。図2に示すように、第2凸状シール部48bは、第2電解質膜・電極構造体16bを挟んで積層される第3金属セパレータ20の第3シール部材50に当接する。第2凸状シール部48bは、後述する第2樹脂枠部材60の外周に位置して配置される外側シール部材を構成する。
【0040】
図2に示すように、面18bには、第2シール部材48と一体に位置決めリブ48brが形成される。位置決めリブ48brは、第2電解質膜・電極構造体16bと第2金属セパレータ18とを相対的に位置決めする機能を有し、必要に応じて設けられる。
【0041】
図1に示すように、第3シール部材50は、第3金属セパレータ20の面20aにおいて、第2燃料ガス流路42を囲繞する第1凸状シール部50aを有する。図2に示すように、第1凸状シール部50aは、第3金属セパレータ20に隣接する第2電解質膜・電極構造体16bの第2樹脂枠部材60に当接する内側シール部材を構成する。
【0042】
第3シール部材50は、第3金属セパレータ20の面20bにおいて、冷却媒体入口連通孔25a及び冷却媒体出口連通孔25bと冷却媒体流路32との外周を取り囲む第2凸状シール部(外側シール部材)50bを有する。
【0043】
図2に示すように、第1電解質膜・電極構造体16a及び第2電解質膜・電極構造体16bは、例えば、パーフルオロスルホン酸の薄膜に水が含浸された固体高分子電解質膜52と、前記固体高分子電解質膜52を挟持するカソード電極54及びアノード電極56とを備える。カソード電極54は、アノード電極56及び固体高分子電解質膜52の平面寸法(表面寸法)よりも小さな平面寸法(表面寸法)を有する段差型MEAを構成している。
【0044】
なお、カソード電極54、アノード電極56及び固体高分子電解質膜52は、同一の平面寸法に設定してもよく、また、前記アノード電極56は、前記カソード電極54及び前記固体高分子電解質膜52の平面寸法よりも小さな平面寸法を有していてもよい。
【0045】
カソード電極54及びアノード電極56は、カーボンペーパ等からなるガス拡散層(図示せず)と、白金合金が表面に担持された多孔質カーボン粒子が前記ガス拡散層の表面に一様に塗布されて形成される電極触媒層(図示せず)とを有する。電極触媒層は、例えば、固体高分子電解質膜52の両面に形成される。
【0046】
第1電解質膜・電極構造体16aは、カソード電極54の終端部外方に位置して固体高分子電解質膜52の外周縁部に第1樹脂枠部材58が、例えば、射出成形等により一体成形される。第2電解質膜・電極構造体16bは、カソード電極54の終端部外方に位置して固体高分子電解質膜52の外周縁部に第2樹脂枠部材60が、例えば、射出成形等により一体成形される。
【0047】
なお、第1樹脂枠部材58及び第2樹脂枠部材60は、別体で成形するとともに、接着剤等で第1電解質膜・電極構造体16a及び第2電解質膜・電極構造体16bに接合してもよい。第1樹脂枠部材58及び第2樹脂枠部材60を構成する樹脂材としては、例えば、汎用プラスチックの他、エンジニアリングプラスチックやスーパーエンジニアリングプラスチック等が採用される。
【0048】
図1及び図5に示すように、第1樹脂枠部材58のカソード電極54側の面には、酸化剤ガス入口連通孔22aと第1酸化剤ガス流路26の入口側との間に位置して入口バッファ部62aが設けられる。第1樹脂枠部材58の面には、酸化剤ガス出口連通孔22bと第1酸化剤ガス流路26の出口側との間に位置して、出口バッファ部62bが設けられる。入口バッファ部62a及び出口バッファ部62bは、複数本のライン状凸部及びエンボス部を有する。以下に説明するバッファ部は、同様に構成される。
【0049】
図6に示すように、第1樹脂枠部材58のアノード電極56側の面には、燃料ガス入口連通孔24aと第1燃料ガス流路34との間に位置して入口バッファ部68aが設けられる。第1樹脂枠部材58の面には、燃料ガス出口連通孔24bと第1燃料ガス流路34との間に位置して、出口バッファ部68bが設けられる。第1樹脂枠部材58の矢印B方向両端部には、ノックピンを通過させるための切り欠き部70a、70bが形成される。
【0050】
図1及び図7に示すように、第2電解質膜・電極構造体16bに設けられる第2樹脂枠部材60は、カソード電極54側の面に、酸化剤ガス入口連通孔22aと第2酸化剤ガス流路38との間に位置して入口バッファ部74aが設けられる。第2樹脂枠部材60の面には、酸化剤ガス出口連通孔22bと第2酸化剤ガス流路38との間に位置して、出口バッファ部74bが形成される。
【0051】
第2樹脂枠部材60のアノード電極56側の面には、図8に示すように、燃料ガス入口連通孔24aと第2燃料ガス流路42との間に位置して入口バッファ部80aが設けられる。第2樹脂枠部材60の面には、燃料ガス出口連通孔24bと第2燃料ガス流路42との間に位置して、出口バッファ部80bが設けられる。第2樹脂枠部材60の矢印B方向両端部には、ノックピンを通過させるための切り欠き部81a、81bが形成される。
【0052】
発電ユニット12同士が互いに積層されることにより、一方の発電ユニット12を構成する第1金属セパレータ14と、他方の発電ユニット12を構成する第3金属セパレータ20との間には、冷却媒体流路32が形成される。
【0053】
第1の実施形態では、発電ユニット12は、第1構造体(第1の構造体)82と、第2構造体(第2の構造体)84と、第3金属セパレータ20とが積層されて構成される。第1構造体82は、第1金属セパレータ14と第1電解質膜・電極構造体16aとが溶着されており、第2構造体84は、第2金属セパレータ18と第2電解質膜・電極構造体16bとが溶着されている。
【0054】
このように構成される発電ユニット12を製造する作業について、以下に説明する。
【0055】
図9に示すように、第1金属セパレータ14と第1電解質膜・電極構造体16aとは、加熱装置90により溶着される。加熱装置90は、基台部92と電気ヒータで加熱された加熱棒体94とを備える。基台部92は、第1樹脂枠部材58との当接面が平坦な形状を有する。加熱棒体94は、第1金属セパレータ14との当接面が平坦な形状を有することが好ましいが、例えば、先端が滑らかなR形状を有していてもよい。基台部92の当接部の表面積は、加熱棒体94の当接部の表面積よりも大きい。
【0056】
なお、加熱装置90に代えて、例えば、レーザ加熱装置(図示せず)等の種々の加熱装置でスポット的に第1金属セパレータ14を直接加熱してもよい。
【0057】
基台部92上には、第1電解質膜・電極構造体16aの第1樹脂枠部材58が載置されるとともに、前記第1樹脂枠部材58上には、第1金属セパレータ14が載置される。第1金属セパレータ14は、位置決めリブ46arにより第1電解質膜・電極構造体16aに対して位置決めされる。第1金属セパレータ14側の接合箇所には、予めスポット的に粗面化処理が施されることが好ましい。接合強度の向上が図られるからである。また、第1金属セパレータ14の全周に亘って第1酸化剤ガス流路26を囲繞する平坦部が形成される。なお、第2金属セパレータ18でも、同様である。
【0058】
そして、加熱棒体94は、所定の温度に加熱された状態で、第1金属セパレータ14の第1樹脂枠部材58に当接する接触面(面14a)とは反対の面14bに対して、すなわち、加熱部位96aに対して所定の加圧力で押圧される。このため、第1金属セパレータ14を介して第1樹脂枠部材58が加熱され、前記第1樹脂枠部材58の一部が溶融する。次いで、加熱棒体94の温度を低下させることにより、溶融部位が固化し、溶着部位98aが形成される。
【0059】
図1に示すように、第1金属セパレータ14の面14bには、上記の加熱部位96aが所定の複数の位置に設けられる。これにより、第1金属セパレータ14と第1樹脂枠部材58との間には、図5に示すように、所定の複数の位置に溶着部位98aが形成される。特に、入口バッファ部62aの近傍及び出口バッファ部62bの近傍に、溶着部位98aが設けられる。このため、第1金属セパレータ14と第1電解質膜・電極構造体16aとは、互いに正確に位置決めされた状態で、一体化される。
【0060】
一方、第2金属セパレータ18と第2電解質膜・電極構造体16bとは、上記と同様に、溶着される。図1に示すように、第2金属セパレータ18の面18aには、所定の複数の位置に加熱部位96bが設けられる。これにより、第2金属セパレータ18と第2電解質膜・電極構造体16bとの間には、図7に示すように、所定の複数の位置に溶着部位98bが形成される。特に、入口バッファ部74aの近傍及び出口バッファ部74bの近傍に、溶着部位98bが設けられる。従って、第2金属セパレータ18と第2電解質膜・電極構造体16bとは、互いに正確に位置決めされた状態で、一体化される。
【0061】
この場合、第1の実施形態では、第1金属セパレータ14と第1電解質膜・電極構造体16aとが、重ね合わされた状態で、面14b側から所定の複数の加熱部位96aに対してスポット状に加熱している。このため、第1樹脂枠部材58が加熱溶融され、所定の複数の位置に溶着部位98aが形成される。従って、第1金属セパレータ14と第1電解質膜・電極構造体16aとは、互いに正確に位置決めされた状態で、一体化されて第1構造体82が得られる。
【0062】
このため、特に反りが発生し易い第1樹脂枠部材58が用いられても、前記第1樹脂枠部材58を第1金属セパレータ14に確実に固定することができる。従って、簡単且つ経済的な構成で、第1電解質膜・電極構造体16aと第1金属セパレータ14とを正確且つ容易に位置決めし、相互のずれの発生を可及的に抑制することが可能になるという効果が得られる。
【0063】
一方、第2金属セパレータ18と第2電解質膜・電極構造体16bとは、上記と同様に、互いに正確に位置決めされた状態で、一体化されて第2構造体84が得られる。これにより、簡単且つ経済的な構成で、第2電解質膜・電極構造体16bと第2金属セパレータ18とを正確且つ容易に位置決めし、相互のずれの発生を可及的に抑制することが可能になる。
【0064】
さらに、発電ユニット12は、第1構造体82、第2構造体84及び第3金属セパレータ20から構成されている。このため、ノック用孔部27a、27bに挿入されるノックピン(図示せず)を用いて、第1構造体82、第2構造体84及び第3金属セパレータ20を積層するだけで、発電ユニット12の組み立て作業が遂行される。従って、発電ユニット12内及び複数の前記発電ユニット12同士の位置決めが容易且つ効率的に遂行されるという利点がある。
【0065】
このように構成される燃料電池10の動作について、以下に説明する。
【0066】
先ず、図1に示すように、酸化剤ガス入口連通孔22aに酸素含有ガス等の酸化剤ガスが供給されるとともに、燃料ガス入口連通孔24aに水素含有ガス等の燃料ガスが供給される。さらに、冷却媒体入口連通孔25aに純水やエチレングリコール、オイル等の冷却媒体が供給される。
【0067】
このため、酸化剤ガスは、一部が酸化剤ガス入口連通孔22aから入口バッファ部62aを通って第1金属セパレータ14の第1酸化剤ガス流路26に供給される。酸化剤ガスは、他の一部が入口バッファ部74aを通って第2金属セパレータ18の第2酸化剤ガス流路38に導入される。
【0068】
酸化剤ガスは、図1図3及び図4に示すように、第1酸化剤ガス流路26に沿って矢印B方向(水平方向)に移動し、第1電解質膜・電極構造体16aのカソード電極54に供給される。また、酸化剤ガスは、第2酸化剤ガス流路38に沿って矢印B方向に移動し、第2電解質膜・電極構造体16bのカソード電極54に供給される。
【0069】
一方、燃料ガスは、図1に示すように、燃料ガス入口連通孔24aから供給流路溝部36a、44aに導入される。供給流路溝部36aでは、燃料ガスが、入口バッファ部68aを通って第2金属セパレータ18の第1燃料ガス流路34に供給される。供給流路溝部44aでは、燃料ガスが、入口バッファ部80aを通って第3金属セパレータ20の第2燃料ガス流路42に供給される。
【0070】
燃料ガスは、第1燃料ガス流路34に沿って矢印B方向に移動し、第1電解質膜・電極構造体16aのアノード電極56に供給される。また、燃料ガスは、第2燃料ガス流路42に沿って矢印B方向に移動し、第2電解質膜・電極構造体16bのアノード電極56に供給される。
【0071】
従って、第1電解質膜・電極構造体16a及び第2電解質膜・電極構造体16bでは、各カソード電極54に供給される酸化剤ガスと、各アノード電極56に供給される燃料ガスとが、電極触媒層内で電気化学反応により消費されて発電が行われる。
【0072】
次いで、第1電解質膜・電極構造体16a及び第2電解質膜・電極構造体16bの各カソード電極54に供給されて消費された酸化剤ガスは、出口バッファ部62b、74bを通って酸化剤ガス出口連通孔22bに排出される。第1電解質膜・電極構造体16a及び第2電解質膜・電極構造体16bのアノード電極56に供給されて消費された燃料ガスは、出口バッファ部68b、80bを通って燃料ガス出口連通孔24bに排出される。
【0073】
一方、左右一対の冷却媒体入口連通孔25aに供給された冷却媒体は、図1に示すように、冷却媒体流路32に導入される。冷却媒体は、各冷却媒体入口連通孔25aから冷却媒体流路32に供給され、一旦矢印C方向内方に沿って流動した後、矢印B方向に移動して第1電解質膜・電極構造体16a及び第2電解質膜・電極構造体16bを冷却する。この冷却媒体は、矢印C方向外方に移動した後、一対の冷却媒体出口連通孔25bに排出される。
【0074】
図10及び図11に示すように、本発明の第2の実施形態に係る燃料電池100は、発電ユニット102を備える。複数の発電ユニット102は、水平方向(矢印A方向)又は鉛直方向(矢印C方向)に沿って互いに積層されてスタックを構成する。
【0075】
発電ユニット102は、第1構造体(第1の構造体)104と、第2構造体(第2の構造体)106と、第3金属セパレータ20とが積層されて構成される。第1構造体104は、第1金属セパレータ14と第1電解質膜・電極構造体16aとが溶着されており、第2構造体106は、第2金属セパレータ18と第2電解質膜・電極構造体16bとが溶着されている。
【0076】
第1金属セパレータ14の面14bには、加熱部位108aが所定の複数の位置に設けられる。図11に示すように、加熱部位108aは、セパレータ面方向(矢印B方向)に沿って内側シール部材である第1凸状シール部48aと外側シール部材である第1凸状シール部46aとの間に設けられる。
【0077】
図10に示すように、第2金属セパレータ18の面18aには、加熱部位108bが所定の複数の位置に設けられる。加熱部位108bは、図11に示すように、セパレータ面方向(矢印B方向)に沿って内側シール部材である第1凸状シール部50aと外側シール部材である第2凸状シール部48bとの間に設けられる。
【0078】
第1金属セパレータ14と第1樹脂枠部材58との間には、所定の複数の位置(加熱部位108aに対応する位置)に溶着部位110aが形成される。第2金属セパレータ18と第2電解質膜・電極構造体16bとの間には、所定の複数の位置(加熱部位108bに対応する位置)に溶着部位110bが形成される。
【0079】
このように構成される第2の実施形態では、図11に示すように、加熱部位108aが、セパレータ面方向に沿って第1凸状シール部48aと第1凸状シール部46aとの間に設けられている。このため、例えば、溶着部位110aに損傷が発生しても、第1凸状シール部48aが第1樹脂枠部材58に当接している。従って、損傷した溶着部位110aからの反応ガスのクロスリークを可及的に阻止することができる。さらに、上記の第1の実施形態と同様の効果が得られる。
【符号の説明】
【0080】
10、100…燃料電池 12、102…発電ユニット
14、18、20…金属セパレータ 16a、16b…電解質膜・電極構造体
22a…酸化剤ガス入口連通孔 22b…酸化剤ガス出口連通孔
24a…燃料ガス入口連通孔 24b…燃料ガス出口連通孔
25a…冷却媒体入口連通孔 25b…冷却媒体出口連通孔
26、38…酸化剤ガス流路 30a…入口連結溝
30b…出口連結溝 32…冷却媒体流路
34、42…燃料ガス流路 36a…供給流路溝部
36b…排出流路溝部 46、48、50…シール部材
52…固体高分子電解質膜 54…カソード電極
56…アノード電極 58、60…樹脂枠部材
82、84、104、106…構造体
90…加熱装置 92…基台部
94…加熱棒体
96a、96b、108a、108b…加熱部位
98a、98b、110a、110b…溶着部位
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11