(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記所定の走行条件が、前記走行コースの走行ライン、前後加速度、および横加速度を規定した走行条件であることを特徴とする請求項1に記載のタイヤの性能評価方法。
前記所定の走行条件が、前記車両を前記走行コースのコーナー進入までに0.8G以上で減速させた後、前記車両をそのまま前記コーナーの前記走行コース中央を0.9G以上の横向き加速度で前記コーナーに合わせて旋回させて走行する走行条件であることを特徴とする請求項2に記載のタイヤの性能評価方法。
前記実車テスト走行を、ドライ路面、かつ路温が10〜50℃の走行コースで行うことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のタイヤの性能評価方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の評価方法では、性能変化有と判定された場合、何が原因なのか具体的に把握できないという問題があった。
【0007】
即ち、タイヤの性能変化は、摩擦によるグリップ力の変化と、撓みによる剛性感の変化とを主な要因としている。しかしながら、実車テスト走行では、性能変化がグリップ力の変化によるものか剛性感の変化によるものかを評価することができなかった。
【0008】
即ち、従来の実車テスト走行では、評価結果がドライバーの感覚による「性能変化の有無」としてトータルに表現されるだけであった。また、OE(オリジナル・エクイップメント:新車販売時に装着されるタイヤ)の評価結果でも真の原因が分からなかった。このため、性能変化有と判定された場合、真の原因に対応した改善か否かは不明のままで設計者の経験に基づいて、例えばトレッドの配合変更によってグリップ力や硬さを調整することが行われていた。
【0009】
また、ドライバーの感覚でタイヤを評価しているため、運転スキルで評価結果が異なる。さらに、評価条件も規定されていなかった。このため、評価精度に疑問を残しながらも、ドライバーのコメントを重視してタイヤ開発が行われていた。
【0010】
このように、従来の評価方法では、性能変化有と判定された場合、性能変化がグリップ力の変化によるものか剛性感の変化によるものかを評価することができなかった。
【0011】
そこで、本発明は、実車テスト走行によるタイヤの性能変化がグリップ力の変化なのか、剛性感の変化なのかを精度良く、客観的に評価することができるタイヤの性能評価方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1に記載の発明は、
タイヤが装着された車両を走行コースで実車テスト走行させることにより、前記タイヤの性能を評価するタイヤの性能評価方法であって、
少なくとも最大横加速度および最大前後加速度を規定した所定の走行条件下で前記車両を走行させて、ラップタイムの変化、操舵に対するYAW応答遅れの変化、および旋回中の操舵角の変化を計測し、
前記計測において、前記ラップタイムの変化が計測された場合には、前記グリップ性能が変化したと評価し、
前記計測において、前記YAW応答遅れの変化、または、前記操舵角の変化が計測された場合には、前記タイヤの剛性感が変化したと評価する
ことを特徴とするタイヤの性能評価方法である。
【0013】
請求項2に記載の発明は、
前記所定の走行条件が、前記走行コースの走行ライン、前後加速度、および横加速度を規定した走行条件であることを特徴とする請求項1に記載のタイヤの性能評価方法である。
【0014】
請求項3に記載の発明は、
前記所定の走行条件が、前記車両を前記走行コースのコーナー進入までに0.8G以上で減速させた後、前記車両をそのまま前記コーナーの前記走行コース中央を0.9G以上の横向き加速度で前記コーナーに合わせて旋回させて走行する走行条件であることを特徴とする請求項2に記載のタイヤの性能評価方法である。
【0015】
請求項4に記載の発明は、
前記実車テスト走行を、ドライ路面、かつ路温が10〜50℃の走行コースで行うことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のタイヤの性能評価方法である。
【0016】
請求項5に記載の発明は、
前記実車テスト走行を外気温が10〜30℃で行うことを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載のタイヤの性能評価方法である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、実車テスト走行によるタイヤの性能変化がグリップ力の変化なのか、剛性感の変化なのかを精度良く、客観的に評価することができるタイヤの性能評価方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、実施の形態に基づいて本発明を説明する。
【0019】
1.本発明に係るタイヤの性能評価方法の概要
最初に、本発明に係るタイヤの性能評価方法について、その概要を説明する。
【0020】
前記したように、従来のタイヤの性能評価方法においては、タイヤの走行性能の変化を総合的な官能評価で行っていたため、このタイヤの走行性能の変化が、摩擦によるグリップ力の変化と撓みによる剛性感の変化のいずれの要因により発生しているのか、要因毎に、精度高く把握することができず、客観的な評価ができなかった。
【0021】
このような従来方法に対して、本発明は、タイヤの走行性能の変化を上記した要因毎に、精度高く把握することにより、客観的に評価することを可能にしている点に大きな特徴がある。
【0022】
即ち、本発明者は、所定の走行条件の下、サーキットを実車走行したとき、グリップ力の変化はラップタイムの変化として現われ、剛性感の変化はYAW応答の遅れ(操舵に対する車両の回転の遅れ)および旋回中の操舵角の変化として現れることを見出した。そして、これらラップタイム、YAW応答の遅れ、操舵角は、容易に定量化することができるため、現れた変化を精度高く、客観的に評価することができる。
【0023】
(1)グリップ力の変化
タイヤは走行時、路面温度や摩擦によりタイヤ温度が上昇してタイヤ内圧が上昇するため、コーナーリングパワー(CP)や剛性が変化することが避けられず、その影響によって、走り難くなり、タイヤの走行性能が変化する。
【0024】
しかし、本発明者が種々検討を行ったところ、最大横加速度および最大前後加速度で、タイヤの最大グリップ力を引き出すように走行させた場合、グリップ力の変化をラップタイムの変化から、精度高く客観的に、捉え得ることが分かった。
【0025】
一方、タイヤのグリップ力は、タイヤ設計時のトレッド配合に影響されることが分かっている。
【0026】
以上より、ラップタイムの変化を知ることによりグリップ力が変化していることを精度高く客観的に知ることができ、さらに、このグリップ力の変化の発生を抑制するためには、トレッド配合の改善を検討すればよいことが分かる。
【0027】
(2)剛性感の変化
また、最大横加速度および前後加速度のタイヤグリップ限界で走行させた場合、剛性感の変化を、YAW応答の遅れの変化と旋回中の操舵角の変化から、精度高く客観的に、捉え得ることが分かった。
【0028】
一方、YAW応答の遅れは、内圧変化に伴う接地面、形状の変化に影響され、タイヤ設計時のブレーカ回りと関係していることが分かっている。また、操舵角は、SW(サイドウォール)構造(特にビード回りの剛性)に影響されることが分かっている。
【0029】
以上より、YAW応答の遅れの変化を知ることにより剛性感が変化していることを精度高く客観的に知ることができ、さらに、このYAW応答の遅れの変化を抑制するためには、ブレーカ回りの改善を検討すればよいことが分かる。同様に、操舵角の変化を知ることにより剛性感が変化していることを精度高く客観的に知ることができ、さらに、この操舵角の変化を抑制するためには、SW構造の改善を検討すればよいことが分かる。
【0030】
なお、このタイヤの性能評価に際して、上記したラップタイムの変化、YAW応答の遅れの変化、操舵角の変化が混在している場合には、各々の改善策を組み合わせて検討すればよい。
【0031】
その一例として、仕様が異なるA〜D仕様のタイヤにおける評価結果と、その評価結果に基づき検討する必要がある改善策の例を表1に示す。
【0033】
表1に示すように、各変化を客観的に把握することにより、各変化に対応した改善策を、極めて容易に示すことができる。なお、表1において、ラップタイムの変化は5ラップタイムにおける変化で示している。
【0034】
(3)効果
以上のように、本発明によれば、タイヤの走行性能に影響を与えるグリップ力と剛性感について、これらの要因がラップタイム、YAW応答の遅れ、操舵角にあることが分かり、そして、容易に定量化することができるラップタイム、YAW応答の遅れ、操舵角に基づいて、ラップタイムの変化、YAW応答の遅れの変化、操舵角の変化のそれぞれを、精度高く客観的に評価している。このため、タイヤの走行性能について、精度が高い評価を評価者によるバラツキなく客観的に行うことができる。
【0035】
そして、精度高く客観的に得られた各評価に基づいて、それぞれの改善策について素速く対応することが可能となるため、タイヤ開発に要する時間を短縮することができる。
【0036】
2.本実施の形態
本実施の形態に係るタイヤの性能評価方法では、性能変化の現象を1ラップ毎の全てのコーナーで評価する。また、ラップ毎の平均性能を把握して、ラップ毎で性能差が見られるかどうかを評価する。
【0037】
具体的には、ラップタイム、YAW応答遅れおよび操舵角の3項目の測定値に基づいて総合的に解析することにより、性能変化、具体的にはグリップ力の変化、剛性感の変化を定量的に精度良く客観的に評価する。
【0038】
(1)グリップ力の変化について
上記したようにグリップ力の変化は、ラップタイムの変化として精度高く客観的に捉えることができる。具体的には、このような所定の走行条件下で、ラップタイムの変化があったときに、グリップ力の変化がありと評価する。
【0039】
なお、ラップタイムの変化の有無を判断する基準は、使用するサーキットコースなどに応じて統計的なデータに基づいて決定される。
【0040】
(2)剛性感の変化について
上記したように剛性感の変化は、YAW応答遅れと操舵角を定量的に計測することにより、その変化を客観的に捉えることができる。そして、これらの項目の1つ以上の変化があったとき、剛性感の変化があったと評価する。
【0041】
具体的には、YAW応答遅れの変化は、官能評価点であっても定量的に評価できるように例えば1〜10点の点数評価を行う。これにより、その変化を精度高く客観的に捉えることができる。特に点数基準で評価した場合、異なったドライバーが評価した場合であっても点数の差異が極めて小さくなるため好ましく、YAW応答遅れが1点以上変化した場合にYAW応答遅れが変化ありと判断する。
【0042】
また、操舵角の変化は、定量的に求められた操舵角に基づいて判断基準を経験的に予め決めておき、操舵角の変化がこの判断基準の角度以上のとき操舵角の変化があったと判断する。具体的な操舵角の変化の判断基準は例えば30度に設定する。30度に設定することにより、精度よく剛性感を評価することができる。
【0043】
(3)改善策について
上記したように各変化の有無に対応した改善策を実施することにより、グリップ力の変化や剛性感の変化が抑制されたタイヤを短期間で開発することができる。
【0044】
このように、本実施の形態では、従来のドライバーの官能評価では特定できなかった性能変化の要因を精度高く客観的に特定できるようになった。また、これにより、タイヤ開発において改善ポイントが絞られて、開発のスピードが向上した。
【0045】
(4)実車テスト走行
本実施の形態の実車テスト走行は、サーキットを使用する。そして、タイヤを装着させた車両を少なくとも最大横加速度および最大前後加速度を規定した所定の走行条件下で、最大グリップ力で所定のラップ数繰り返し走行させる。タイヤを装着させた車両を所定のラップ数繰り返し走行させることにより精度よくグリップ力の変化および剛性感の変化を客観的に評価することができる。
【0046】
さらに、所定の走行条件として、走行コースの走行ライン、前後加速度、および横加速度を予め規定しておく。また、実車テスト走行に使用するサーキット毎にラップタイムの上限を規定しておく。規定された走行条件に従って実車テスト走行することにより、精度よくかつ客観的にグリップ力の変化および剛性感の変化を評価することができる。
【0047】
具体的には、サーキットのコーナー進入までに0.8G以上で減速し、そのままコーナーのコースの中央を0.9G以上の横向き加速度でコーナーに合わせて旋回するように走行させると、グリップ力の変化や剛性感の変化を精度高く評価でき、好ましい。
【0048】
また、サーキットの路面をドライ路面とし、路面温度10〜50℃で実車テスト走行を行った場合、路面温度の影響を小さくできるため、タイヤ性能を精度良く評価することができるため好ましい。
【0049】
また、車両の走行性能が安定していると、車両の性能の影響を受けにくくなり、純粋にタイヤそのものの性能を評価できるため、車両としては、ノーマル(無改造)な車両で走行距離2000km以上の慣らし走行が完了し、ブレーキパッドが60%以上残っている車両を用いることが好ましい。
【0050】
外気温が30℃を超えると走行時における車両の熱変化が大きくなり、適切な評価結果を得られないため、10〜30℃の外気温下で行うことが好ましい。
【0051】
(5)計測方法
走行中、車両に計測装置を積載し、ラップタイム、YAW応答遅れ、操舵角を計測し、ラップ毎の変化を調べる。具体的には、ラップタイムはタイム計測器を用いて計測し、YAW応答遅れはドライバーの官能で評価し、操舵角はハンドルに操舵角の目印を用いて計測する。なお、ドライバーの官能で評価したYAW応答遅れは、官能評価点数(10点法)を用いて計測装置に入力する。そして、この計測装置は、計測した値を時系列にまとめることや、有意差判断等を行う。
【0052】
なお、具体的なサーキットとしては例えば岡山国際サーキットと仙台ハイランドサーキットとが使用できる。
【0053】
そして、岡山国際サーキットでは1‘50“以内のラップタイムで走行させ、仙台ハイランドサーキットでは2‘15“以内のラップタイムで走行させる。そして、これを例えば5ラップ繰り返して行う。
【0054】
そして、サーキットのコーナー進入までに0.8G以上で減速し、そのままコーナーのコースの中央を0.9G以上の横向き加速度でコーナーに合わせて旋回するように走行させる。
【0055】
このとき、岡山国際サーキットの場合はラップタイムの変化量が0.5秒を超えるとラップタイムに変化があったと判定し、仙台ハイランドサーキットの場合はラップタイムの変化量が0.6秒を超えるとラップタイムに変化があったと判定する。
【0056】
操舵角の判断基準は岡山国際サーキット、仙台ハイランドサーキット共に30度に設定する。
【実施例】
【0057】
以下、実施例により、本発明をより具体的に説明する。
【0058】
1.実車テスト走行
仕様1、仕様2、仕様3のタイヤを用意し、以下の条件で実車テスト走行を行った。
場所 :岡山国際サーキット
路面 :DRY路面、路温17℃
外気温 :20℃
ラップ数 :5ラップ
走行方法 :実施の形態で規定した走行方法であり、ラップタイムにして
1‘50“以内
車種 :GTR 11Y(日産自動車社製)
走行距離 :12km
ブレーキパッドの残り:90%
被験タイヤ内圧 :200kpa
【0059】
2.評価方法
(1)ラップタイム
5ラップのラップタイムの差が0〜0.5秒以内の場合を変化無し、0.5秒を超える場合を変化有りと判断した。
【0060】
(2)YAW応答性
官能評価点(10点基準)で評価し、1点差以内(許容レベル)を変化無し、1点を超える場合を変化有りと判断した。
【0061】
(3)操舵角の変化量
平均操舵角が30度以上の場合に変化有りと判断し、30度未満の場合に変化無しと判断した。
【0062】
3.評価結果
評価結果を表2に示すと共に、それぞれに改善策を立て、実施した、その実施結果を表2にまとめて示す。
【0063】
【表2】
【0064】
表2より、いずれの仕様のタイヤについても、それぞれ充分な改善効果が得られたことが分かる。これは、タイヤの性能変化がグリップ力の変化なのか、剛性感の変化なのかを精度良く、客観的に評価し、評価結果に基づいてそれぞれに適切な改善策を講じたためである。
【0065】
以上、本発明を実施の形態に基づいて説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではない。本発明と同一および均等の範囲内において、上記の実施の形態に対して種々の変更を加えることができる。