(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
平板上に形成された凹凸パタンを、前記第1のレーザ変位センサ及び前記第2のレーザ変位センサの少なくとも一方を用いてY方向に測定し、その後、X方向にレーザスリット光を移動させて、当該用いたレーザ変位センサによって前記凹凸パタンを再度測定することによって、当該用いたレーザ変位センサの基準軸の前記Y方向ズレ量及び/または前記Z方向ズレ量を求めることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の厚み測定装置。
平板上に形成された凹凸パタンを、前記第1のレーザ変位センサ及び前記第2のレーザ変位センサの少なくとも一方を用いてY方向に測定し、その後、X方向にレーザスリット光を移動させて、当該用いたレーザ変位センサによって前記凹凸パタンを再度測定することによって、当該用いたレーザ変位センサの基準軸の前記Y方向ズレ量及び/または前記Z方向ズレ量を求めることを特徴とする請求項8乃至10のいずれかに記載の厚み測定方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前述の従来技術には以下のような問題点がある。
【0009】
ポイントマイクロメータにより金属板の厚さを測定する方法では、金属板の測定領域を複数の小領域に分割した後、各小領域毎に試験者が目視にて最も深い腐食部を判断し、金属板の厚さを測定する作業を繰り返すことにより、複数の腐食深さのデータを収集する。このため、最も深い腐食部を的確に判断するには、測定者に高い熟練度が要求され、また金属板に対する測定点の数が限定されることから、それぞれ腐食深さが異なる腐食部位の発生確率の分布や、一次元的又は二次元的な腐食深さのプロフィールを求めることは実際上、困難である。すなわち、ポイントマイクロメータを用いて手作業で腐食深さを測定した場合には、腐食深さのデータを十分な量収集し、そのデータに基づいて金属板の腐食形態を推定することは困難である。
【0010】
また特許文献1記載の孔食深さ測定装置では、試料台上に固定された金属材料の上面側(測定領域)にレーザ変位計を対向させつつ、このレーザ変位計により金属材料の上面側のみを走査し、金属材料の測定点における厚さを測定している。このため、金属材料に反り、歪み等の変形が生じている場合には、この反りや歪みが生じている部分では、レーザ変位計から金属材料までの距離が局部的に変化し、レーザ変位計の検出精度が大幅に低下してしまう。
【0011】
これに対し、特許文献2記載の金属板の腐食深さ測定装置では、金属板の両面にレーザ変位計を設置し、X−Yステージを格子状に走査しながら、金属板の板厚を検出している。これにより、金属板に反りや歪みが生じている場合であっても、正確に腐食深さを計測することができる。しかしながら、測定領域内の最も深い腐食部を求めるような腐食分布の正確な測定を行う場合には、ステージの移動ピッチを測定分解能に合わせて細かくする必要があるので、ステージの走査回数が増加し、測定に多大な時間を要してしまう。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る厚み測定装置、厚み測定方法及び腐食深さ測定方法は、上記のような課題を解決するために、以下のような特徴を有している。
[1]測定対象の厚みを測定する厚み測定装置であって、
前記測定対象の一面に設けられた測定領域及び、該測定領域とは反対側の面に設けられた対向領域をそれぞれ露出させた状態で、測定対象を保持するホルダと、
前記測定領域に対して第1のレーザスリット光を出射する第1のレーザスリット光出射部、前記測定領域により反射された第1のレーザスリット光を受光する第1のレーザスリット光受光部及び、該第1のレーザスリット光受光部に対応する第1の基準軸が設けられ、該第1の基準軸から前記測定領域における第1のレーザスリット光上の複数の反射位置までの距離を検出する第1のレーザ変位センサと、
前記対向領域に対して第2のレーザスリット光を出射する第2のレーザスリット光出射部、前記対向領域により反射された第2のレーザスリット光を受光する第2のレーザスリット光受光部及び、該第2のレーザスリット光受光部に対応する第2の基準軸が設けられ、該第2の基準軸から前記対向領域における第2のレーザスリット光上の複数の反射位置までの距離を検出する第2のレーザ変位センサと、
前記ホルダを測定対象の厚み方向(Z方向)と直交しレーザスリット光と並行するX方向並びに、前記板厚方向及び前記X方向と直交するY方向に沿って移動させるX−Y移動手段と、
前記X−Y移動手段を駆動制御すると共に、前記第1のレーザ変位センサにより検出された第1の基準軸から第1のレーザスリット光の反射位置までの距離及び、前記第2のレーザ変位センサにより検出された第2の基準軸から第2のレーザスリット光の複数の反射位置までの距離に基づいて、測定対象の厚みを算出する測定制御手段とを備え、
前記第1のレーザスリット光及び前記第2のレーザスリット光は、前記X方向に所定のスリット幅を有し、前記X方向のスリット幅は、前記Y方向のスリット長さよりも大きいことを特徴とする厚み測定装置。
[2]前記測定制御手段は、
前記X−Y移動手段により、前記ホルダを前記Y方向に移動させて測定対象の厚みを算出し、
前記測定領域の前記X方向の長さが、前記第1若しくは第2のレーザ変位センサの前記スリット幅よりも大きい場合には、さらに、前記ホルダをX方向に移動させた後、前記ホルダをY方向に移動させることを繰り返し、前記測定対象の厚みを算出することを特徴とする[1]に記載の厚み測定装置。
[3]前記第1の基準軸及び前記第2の基準軸の少なくとも一方と、前記X−Y移動手段のX方行移動軸とのY方向ズレ量を求め、
求めた前記Y方向ズレ量に基づいて、算出した前記測定対象の厚みを補正する補正手段を備えたことを特徴とする[2]に記載の厚み測定装置。
[4]前記第1の基準軸及び前記第2の基準軸の少なくとも一方と、前記X−Y移動手段のX方行移動軸とのZ方向ズレ量を求め、
求めた前記Z方向ズレ量に基づいて、算出した前記測定対象の厚みを補正する補正手段を備えたことを特徴とする[2]または[3]に記載の厚み測定装置。
[5]平板上に形成された凹凸パタンを、前記第1のレーザ変位センサ及び前記第2のレーザ変位センサの少なくとも一方を用いてY方向に測定し、その後、X方向にレーザスリット光を移動させて、当該用いたレーザ変位センサによって前記凹凸パタンを再度測定することによって、当該用いたレーザ変位センサの基準軸の前記Y方向ズレ量及び/または前記Z方向ズレ量を求めることを特徴とする[3]または[4]に記載の厚み測定装置。
[6]前記凹凸パタンは、直交する格子状であることを特徴とする[5]に記載の厚み測定装置。
[7]前記測定対象は金属板であり、前記測定領域は前記金属板の片面に設けられていることを特徴とする[1]乃至[6]のいずれかに記載の厚み測定装置。
[8]前記測定対象は腐食生成物が除去された金属板であり、前記測定領域は前記金属板の腐食生成物が除去された側の面に設けられていることを特徴とする[1]乃至[6]のいずれかに記載の厚み測定装置。
[9]測定対象の厚みを測定する厚み測定方法であって、
前記測定対象の一面に設けられた測定領域及び、該測定領域とは反対側の面に設けられた対向領域をそれぞれ露出させた状態で、前記測定対象の厚み方向(Z方向)と直交しレーザスリット光と並行するX方向並びに、前記板厚方向及び前記X方向と直交するY方向に沿って移動させて、
前記測定領域に対して、前記X方向に所定のスリット幅を有し、前記X方向のスリット幅が、前記Y方向のスリット長さよりも大きい第1のレーザスリット光を出射し、前記測定領域により反射された第1のレーザスリット光を第1のレーザスリット光受光部により受光して、該第1のレーザスリット光受光部に対応する第1の基準軸から前記測定領域における第1のレーザスリット光上の複数の反射位置までの距離を検出し、
前記対向領域に対して、前記X方向に所定のスリット幅を有し、前記X方向のスリット幅が、前記Y方向のスリット長さよりも大きい第2のレーザスリット光を出射し、前記対向領域により反射された第2のレーザスリット光を第2のレーザスリット光受光部により受光して、該第2のレーザスリット光受光部に対応する第2の基準軸から前記対向領域における第2のレーザスリット光上の複数の反射位置までの距離を検出し、
前記第1のレーザ変位センサにより検出された第1の基準軸から第1のレーザスリット光上の複数の反射位置までの距離及び、前記第2のレーザ変位センサにより検出された第2の基準軸から第2のレーザスリット光上の複数の反射位置までの距離に基づいて、前記測定対象の厚みを算出することを特徴とする厚み測定方法。
[10]前記測定対象を前記Y方向に移動させて前記測定対象の厚みを算出し、
前記測定領域の前記X方向の長さが、前記第1若しくは第2のレーザ変位センサの前記スリット幅よりも大きい場合には、さらに、前記ホルダをX方向に移動させた後、前記ホルダをY方向に移動させることを繰り返し、前記測定対象の厚みを算出することを特徴とする[8]に記載の厚み測定方法。
[11]前記第1の基準軸及び前記第2の基準軸の少なくとも一方と、前記X−Y移動手段のX方行移動軸とのY方向ズレ量を求め、
求めた前記Y方向ズレ量に基づいて、算出した前記測定対象の厚みを補正することを特徴とする[10]に記載の厚み測定方法。
[12]前記第1の基準軸及び前記第2の基準軸の少なくとも一方と、前記X−Y移動手段のX方行移動軸とのZ方向ズレ量を求め、
求めた前記Z方向ズレ量に基づいて、算出した前記測定対象の厚みを補正することを特徴とする[10]または[11]に記載の厚み測定方法。
[13]平板上に形成された凹凸パタンを、前記第1のレーザ変位センサ及び前記第2のレーザ変位センサの少なくとも一方を用いてY方向に測定し、その後、X方向にレーザスリット光を移動させて、当該用いたレーザ変位センサによって前記凹凸パタンを再度測定することによって、当該用いたレーザ変位センサの基準軸の前記Y方向ズレ量及び/または前記Z方向ズレ量を求めることを特徴とする[11]または[12]に記載の厚み測定方法。
[14]前記凹凸パタンは、直交する格子状であることを特徴とする[13]に記載の厚み測定方法。
[15]前記測定対象は金属板であり、前記測定領域は金属板片面に設けられていることを特徴とする[9]乃至[14]のいずれかに記載の厚み測定方法。
[16]前記測定対象は腐食生成物が除去された金属板であり、前記測定領域は金属板の腐食生成物が除去された側の面に設けられていることを特徴とする[9]乃至[14]のいずれかに記載の厚み測定方法。
[17][16]に記載の厚み測定方法により測定した金属板の厚さ測定値と腐食前における金属板厚さとの差を腐食深さとして算出することを特徴とする腐食深さ測定方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る金属板の厚み測定装置、厚み測定方法及び腐食深さ測定方法によれば、短時間に複数点の厚みが得られるようになるので、効率的な測定が可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施形態に係る厚み測定装置、厚み測定方法及び腐食深さ測定方法について、図面を参照して説明する。本発明は、種々の測定対象の厚みを測定する装置及び方法に適用することができる。測定対象は、塊状物であっても板状物であってもよいが、測定対象を板状物とすれば、精度の高い測定を行うことができる。板状物の測定対象としては、有機物、無機物、または有機無機複合物からなる金属板、プラスチック板、紙板とすることができる。
【0016】
以下では、説明のため、本発明を、金属板の板厚を測定する厚み測定装置及び方法に適用した例について説明する。
【0017】
図1〜
図3には、本発明の実施形態に係る厚み測定装置の一例である板厚測定装置が示されている。この板厚測定装置10は、腐食した金属板120に対して、腐食生成物が除去された金属板120の厚さを測定するためのものである。測定した板厚から金属板120の腐食深さを求めることができる。
【0018】
図1に示されるように、板厚測定装置10には、装置の高さ方向(矢印H方向)に沿った下端部にベースフレーム14が設けられると共に、このベースフレーム14から上方へ延出する支持フレーム16が設けられている。支持フレーム16は、
図1に示されるように、下端部が装置の奥行方向(矢印D方向)に沿ってベースフレーム14の後端側に固定されている。
【0019】
図1に示されるように、ベースフレーム14上には、支持フレーム16の手前側にテーブル基台18が固定されている。このテーブル基台18上には、後述するホルダ62を所定のX方向及びY方向に沿って移動させるためのX−Y移動機構20が取り付けられている。X−Y移動機構20には、その下端側にY移動ステージ24が配置されると共に、Y移動ステージ24の上側にX移動ステージ22が配置されている。
【0020】
図1及び
図2に示されるように、Y移動ステージ24はブラケット26を介してテーブル基台18上に固定されている。このY移動ステージ24には、ステッピングモータ28及び、このステッピングモータ28に連結されたスクリュー軸30が設けられている。ブラケット26上には一対の軸受板32、34が固定されており、これら一対の軸受板32、34は、スクリュー軸30の先端部及び後端部をそれぞれ軸支している。また一対の軸受板32、34間には一対のガイドロッド36が掛け渡されている。
【0021】
Y移動ステージ24は、リニアキャリア38及び、一対のガイドロッド36の外周側にそれぞれ嵌挿される筒状のリニアベアリング40を備えている。リニアキャリア38には、Y方向へ貫通するねじ穴(図示省略)が穿設されており、このねじ穴には、スクリュー軸30が相対的に回動可能に捩じ込まれている。これにより、スクリュー軸30が回転すると、リニアキャリア38がY方向に沿ってスクリュー軸30の回転方向に対応する方向へ、その回転量に対応する距離だけ移動する。
【0022】
図2に示されるように、Y移動ステージ24には、リニアキャリア38及びステージプレート42(
図1参照)が配置されており、リニアキャリア38及び一対のリニアベアリング40は、それぞれステージプレート42(
図1参照)の下面側に固定されている。ステージプレート42は、一対のガイドロッド36及び、一対のリニアベアリング40によりY方向に沿って直線移動するように案内される。
【0023】
図1及び
図2に示されるように、Y移動ステージ24のステージプレート42上には、プレート状のブラケット44を介してX移動ステージ22が配置されている。X移動ステージ22は、ブラケット44を介してステージプレート42上に固定されたステッピングモータ46及び、このステッピングモータ46に連結されたスクリュー軸48を備えている。ここで、スクリュー軸48の軸心はX方向と一致している。またブラケット44上には一対の軸受板50、52が固定されており、これら一対の軸受板50、52は、スクリュー軸48の先端部及び後端部をそれぞれ軸支している。また、これら一対の軸受板50、52の間には、
図2に示されるように、一対のガイドロッド54が掛け渡されている。
【0024】
図1に示されるように、X移動ステージ22は、スクリュー軸48の外周側に配置されるリニアキャリア56及び、一対のガイドロッド54の外周側にそれぞれスライド可能に嵌挿される筒状のリニアベアリング58を備えている。リニアキャリア56には、X方向へ貫通するねじ穴(図示省略)が穿設されており、このねじ穴には、スクリュー軸48が相対的に回動可能に捩じ込まれている。これにより、スクリュー軸48が回転すると、リニアキャリア56がX方向に沿ってスクリュー軸48の回転方向に対応する方向へ、その回転量に対応する距離だけ移動する。
【0025】
X移動ステージ22には、リニアキャリア56及び一対のリニアベアリング58の上側にステージプレート60が配置されており、リニアキャリア56及び一対のリニアベアリング58は、それぞれステージプレート60の下面側に固定されている。ステージプレート60は、一対のガイドロッド54及びリニアベアリング58によりX方向に沿って直線移動するように案内される。
【0026】
図2に示されるように、板厚測定装置10は、X移動ステージ22のステージプレート60上にねじ64により締結固定されるプレート状のホルダ62を備えている。ホルダ62には、その基端側に矩形状の連結プレート72が形成されると共に、装置の奥行方向に沿って連結プレート72から後端側へ延出するホルダプレート74が一体的に形成されている。
【0027】
ホルダプレート74には、その基端部に装置の幅方向へ延在する支持部66が形成されると共に、この支持部66の両端部からそれぞれ延出する一対の支持アーム部68が一体的に形成されている。ホルダプレート74には、一対の支持アーム部68間に矩形状の窓部70が形成されている。
【0028】
図2及び
図3に示されるように、ホルダ62のホルダプレート74上には、略長方形の金属板120が載置可能とされている。金属板120は、その厚さ方向(
図6の矢印T方向)に沿って一方の面が被測定面121とされ、この被測定面121の反対側の面が裏側面124とされている。金属板120には、被測定面121における例えば中央部に略長方形の測定領域130(
図8)が設定されている。金属板120は、その裏側面124におけるX方向及びY方向に沿って測定領域130(
図8)と一致する領域が対向領域(図示省略)とされている。金属板120は、被測定面121が上方へ向くようにホルダプレート74上に載置される。
【0029】
図1に示されるように、板厚測定装置10は、支持フレーム16にそれぞれ配置される一対のレーザ変位センサ76、78を備えている。これら一対のレーザ変位センサ76、78は、
図5(A)に示されるように、レーザ光を出射する半導体レーザ80、この半導体レーザ80の駆動回路82を内蔵しており、半導体レーザ80から出射されたレーザ光Bを、投光レンズ83を通してスリット状に広げ測定対象物128(本実施形態では、金属板120)へ照射する。レーザスリット光の向きはスリット光幅方向がX移動ステージ軸と平行になっている。またレーザ変位センサ76、78は、2次元受光素子84及び、2次元受光素子出力信号の信号処理回路86を内蔵しており、2次元受光素子84には、測定対象物から反射されたレーザスリット光Bが受光レンズ88を通して入射する。
【0030】
ここで、2次元受光素子84は、受光レンズ88を通して測定対象物128から反射されたレーザスリット光Bを受光し、受光レンズ88により受光素子面にスリット光パタンを結像する。2次元受光素子はたとえばCCD(Charge Coupled Device)素子で構成されておりレーザスリット光パタンの信号を信号処理回路86に伝達する。信号処理回路86はスリット光長手方向(CCD素子上のu方向(
図5(B)))の各位置でのスリット光位置に応じて、測定対象上のスリット光が当たっている位置でのZ方向位置信号を出力する。
【0031】
レーザ変位センサ76、78では、そのレーザスリット光Bの出射側の端面が基準面90とされており、測定対象物上のレーザ反射光が受光素子の中央に観察されレーザ変位センサの出力が”0”となる測定対象物上までの距離が基準長SLとなり、レーザスリットの幅方向に出力”0”点を結んだものが基準軸となる。換言すれば、レーザ変位センサ76、78は、それぞれの基準軸から、測定対象におけるレーザスリット光上の複数の反射位置までの距離を検出する。
【0032】
これにより、
図5(A)に示されるように、基準面90から測定対象物128までの間隔が基準長SLに対してSL
1又はSL
2に変化すると、2次元受光素子84に対するスリット光の入射位置も変位すると共に、2次元受光素子84から出力される位置信号の出力値も変化するので、位置検出信号の基準値に対する変化量に基づいて、スリット光上各点の基準面90から測定対象物128までの距離を求めることができる。
【0033】
本発明では、レーザ変位センサ76、78のレーザスリット光Bは、X方向に所定のスリット幅WLを有し、このX方向のスリット幅WLは、Y方向のスリット長さよりも大きいことを特徴としている。これにより、Y方向への走査回数を削減し、測定時間を削減することができる。スリット幅WLは、後述する測定領域130に予め設定される測定点136のX方向の間隔の少なくとも2倍以上とすることが好ましい。スリット幅WLは、後述する測定領域130に予め設定される測定点136のX方向の間隔の少なくとも2倍以上とすれば、さらに優れた測定時間の削減効果が得られる。具体的には、スリット幅WL(スリットのX方向の大きさ)は、1mm以上とし、スリット長さ(スリットのY方向の大きさ)は、数μm〜数百μm(1μm〜900μm)とすることが特に好ましい。
【0034】
なお、半導体レーザ80から出射されるレーザスリット光Bの線幅(Y方向のスリット長さ)は1μm〜900μmと十分に細いものになっており、測定対象物128上におけるレーザスリット光Bの反射パタンBSも極細なスリット状のパタンになる。このことから、レーザ変位センサ76、78は、その基準面90から測定対象物128におけるレーザスリット光Bの各反射点BSまでの距離を精度よく測定することが可能となる。
【0035】
なお、レーザ光の波長は青色を使用しているが、赤色、近赤外レーザ等でも測定可能である。
【0036】
図3に示されるように、一対のレーザ変位センサ76、78のうち、一方のレーザ変位センサ76は、支持フレーム16によりホルダ62の上側に支持され、他方のレーザ変位センサ78は、支持フレーム16によりホルダ62の下側に支持されており、レーザ変位センサ76から出射されるレーザスリット光B1の光軸とレーザ変位センサ78から出射されるレーザスリット光B2の光軸とは一致している。
なお、レーザマーカー79により、X方向測定開始位置が目視確認できる。
【0037】
ここで、レーザ変位センサ76は、ホルダ62上に載置された金属板120の被測定面121の位置(高さ)を基準として予めキャリブレーションが行われ、レーザ変位センサ78は、ホルダ62上に載置された金属板120の裏側面124の位置(高さ)を基準として予めキャリブレーションが行われる。但し、このキャリブレーションは、腐食する前の金属板120と同一の厚さを有するダミーの金属板(標準試験片)を用いて行われる。なお、この標準試験片に加え、これとは厚さが異なる標準試験片を用いて多点でキャリブレーションを行うようにしても良い。
【0038】
次に、
図13を参照しつつ、上記キャリブレーションの実行方法及び一対のレーザ変位センサ76、78を用いて腐食後の金属板120の厚さを測定する方法について詳細に説明する。
【0039】
図13に示されるように、レーザ変位センサ76から金属板120までの距離LZ
1、レーザ変位センサ78から金属板120までの距離LZ
2、金属板120の板厚をT、レーザ変位センサ76の基準面90からレーザ変位センサ78の基準面90までの距離をセンサ間隔SDとすると、下記(1)式が成り立つ。
SD=LZ
1+LZ
2+T ・・・ (1)
従って、板厚Tは下記(2)式で与えられる。
T=SD−(LZ
1+LZ
2) ・・・ (2)
【0040】
ここで、センサ間隔SDは未知であるので、既知の板厚(=T0)を有する標準試験片120Tを用意し、この標準試験片120Tの板厚Tをレーザ変位センサ76、78により測定する(板厚の「較正」)。このとき、レーザ変位センサ76の出力から得られた標準試験片120Tまでの測定距離LZ
10、レーザ変位センサ78の出力から得られた標準試験片120Tまでの測定距離LZ
20とすると、下記(3)式が成り立つ。
SD=LZ
10+LZ
20+T
0 ・・・(3)
上記(3)式を(2)式に代入することにより、測定対象となる金属板120の厚さ測定値MTは、下記(4)式で与えられる。
MT=T
0+(LZ
10+LZ
20)−(LZ
1+LZ
2) ・・・ (4)
【0041】
図4には、本発明の実施形態に係る板厚測定装置における制御機構の構成がブロック図により示されている。制御機構92は、ワークステーション、パーソナルコンピュータ等により構成された制御装置本体94、表示制御部96を介して制御装置本体94に接続されたディスプレイ装置98及び、データ入出力部100を介して制御装置本体94に接続された外部記憶装置102を備えている。制御装置本体94では、測定制御手段104が汎用的な電子機器、予めインストールされた専用プログラム等により実現されている。
【0042】
制御装置本体94には、測定制御手段104にそれぞれ接続される入出力ポート106及びRS232Cボード108が設けられている。ここで、出力ポート106には、センサコントローラ110及びセンサコントローラ112がそれぞれ接続されている。またRS232Cボード108には、ステージコントローラ114が接続されている。センサコントローラ110はレーザ変位センサ76に接続されており、レーザ変位センサ76から出力されたレーザスリット光上の各位置での変位検出信号S1を数値データとして入出力ポート106に出力する。
【0043】
また、センサコントローラ112はレーザ変位センサ78に接続されており、レーザスリット光上の各位置での変位検出信号S2を数値データとして入出力ポート106に出力する。
入出力ポート106に入力された数値データは測定制御手段104へ出力する。
【0044】
ステージコントローラ114は、X−Y移動機構20におけるステッピングモータ28及びステッピングモータ46にそれぞれ接続されており、RS232Cボード108を介して測定制御手段104から入力する制御情報に従って、ステッピングモータ28又はステッピングモータ46に対して所定数の駆動パルスを所定の周期で出力する。これにより、ステッピングモータ28、46は、ステージコントローラ114から入力する駆動パルスの極性に対応する方向へ、駆動パルス数に比例する回転量だけ回転する。このとき、ステッピングモータ28、46の回転速度は入力する駆動パルスの周期により制御される。
【0045】
測定制御手段104は、補正手段1041を有している。ここで、
図5(B)に示すように、レーザ変位センサ76、78のレーザスリット光の基準軸l
1(X軸)と、X−Y移動機構のX方行移動軸l
2にはズレが生じる。そのため、補正手段1041では、レーザ変位センサ76、78のレーザスリット光の基準軸とX−Y移動機構20のX方行移動軸とのY方向ズレ量及びZ方向ズレ量を求め、レーザ変位センサ76、78のY方向ズレ量、Z方向ズレ量に基づいて、算出した金属板120の板厚を補正している。
【0046】
Y方向ズレ量及びZ方向ズレ量を求めるタイミングは、金属板120の板厚を測定する前であっても、後であってもよい。本説明では、金属板120の板厚を測定する前に、予めY方向ズレ量及びZ方向ズレ量を求めるものとする。なお、精度上問題なければ、補正手段1041によって、レーザ変位センサ76及び78のY方向ズレ量、若しくは、レーザ変位センサ76及び78のZ方向ズレ量のいずれかを求め、求めたズレ量に基づいて算出した金属板120の板厚を補正するようにしてもよい。また、予めレーザ変位センサ76と78の基準軸をほぼ一致するように配しておき、補正手段1041によって、レーザ変位センサ76、78のいずれか一方のみのY方向ズレ量及びZ方向ズレ量を用いて、金属板120の板厚を補正するようにしてもよい。
【0047】
次に、板厚測定装置10による金属板120に対する板厚の測定作業について説明する。
【0048】
金属板120としては、例えば
図6(A)に示されるように、長方形の鋼板などの腐食した試験片が用いられる。この試験片を、
図6(B)に示すように、端面及び裏面を粘着テープ122などでシールして、露出した部分を腐食領域123とする。腐食領域123の全体又はその一部が測定領域130となる。
【0049】
ただし、金属板120としては、
図6(A)に示す形状に限定されない。例えば、自動車や家電製品の実部品、自動車や家電製品の部品を模擬し加工した試験片などでもよく、塗装が施されていてもよい。
【0050】
また、本発明の板厚測定装置10は表裏を有する1枚の金属板120の板厚を測定するものである。したがって、複数の金属片を接合してなる部品や試験片の場合、その接合部を解体し、1枚の金属板として測定する。また金属板120の測定領域130は平坦面とすることが好ましい。
【0051】
上記した金属板120は自動車や家電製品の実際の使用環境に暴露してもよいし、腐食試験に供してもよい。
【0052】
腐食試験では、外部環境から隔離され、所定の試験温度に調整された調整室内で、金属板120に対し、塩水の吹付け、放置、乾燥等の複数の工程からなる単位サイクルを所定回数(例えば、30、60又は90サイクル)繰返す腐食促進試験を行い、実環境よりも腐食の進行を早める。これにより、金属板120の腐食領域123には、
図7(A)に示されるように、測定領域130を含む領域に腐食生成物134が生成される。このとき、腐食生成物134が生成した部分では元の金属素材の一部が腐食生成物134に変化することから、腐食生成物134の生成量に対応する深さの腐食部126が形成される。
【0053】
腐食試験の完了後又は実際の使用環境に暴露された後に、金属板120に対する腐食深さ測定を行う際には、先ず、
図7(B)に示されるように、金属板120の腐食領域123に発生した腐食生成物134を除去し、腐食領域123に形成された腐食部126を露出させる。これにより、板厚測定装置10により金属板120に対して腐食後の板厚の測定を行う準備が完了し、この測定準備が完了した金属板120をホルダ62上に載置し、所定の測定位置(
図2参照)に位置調整する。
【0054】
図8に示されるように、金属板120には、測定領域130に予め複数個の測定点136が設定される。これらの測定点136を設定する際には、先ず、測定領域130内に測定開始点136S及び測定完了点136Eをそれぞれ設定する。測定完了点136Eは測定領域130をX軸方向にレーザスリット光B1の幅WLで複数回領域SCnに分割して測定し、測定領域130全域を測定可能となる位置とする。この後、測定ピッチPTを設定することにより、複数の測定点136が設定される。測定ピッチPTは、0.5mm以下とすることが好ましい。さらに好ましくは、測定ピッチPTは、0.3mm以下とすることが好ましい。
【0055】
具体的には、測定者が、ディスプレイ装置98やキーボード(図示省略)等を介して、測定領域130に予め設定された原点Oに対する測定開始点136Sの相対的な座標位置及び、測定完了点136Eの相対的な座標位置並びに、測定ピッチPTの長さをそれぞれ測定制御手段104に入力することにより、測定制御手段104により複数の測定点136が自動的に設定される。
【0056】
次に、
図9に示されるフローチャートを参照しつつ、測定制御手段104による金属板120に対する板厚の測定制御について説明する。
【0057】
ステップS01にて、測定制御手段104は、測定開始点136Sの座標位置、測定完了点136Eの座標位置並びに、測定ピッチPTに基づいて、測定領域130に複数の測定点136を設定すると共に、対向領域にX方向及びY方向に沿って測定点136と一致する複数の対向点を設定する。
【0058】
測定制御手段104は、ディスプレイ装置98やキーボード(図示省略)等を介して測定開始命令が入力すると(ステップS02)、ステップS03にて、レーザ変位センサ76から出射されるレーザスリット光B1(反射点BS1)が測定開始点136Sと一致するように、X−Y移動機構20によりホルダをX方向又はY方向に沿って移動させる。このとき、レーザ変位センサ78から出射されるレーザスリット光B2(反射点BS2)は、測定開始点136Sと一致する対向点に位置する。
【0059】
ステップS04にて、測定制御手段104は、レーザスリット光B1が走査エリアSC1上をトレースするように、X−Y移動機構20によりホルダ62を−Y方向(
図8)に沿って移動させる。ステップS05〜S06にて、補正手段1041は、レーザスリット光B1のX軸とのズレ、及びX−YステージのY軸とX軸のズレをX軸方向の各点について補正しつつ測定ピッチPTに対応する周期で、位置検出信号S1及び位置検出信号S2に基づいて距離LZ
1及び距離LZ
2をそれぞれ判断する。
【0060】
レーザ変位センサとX軸とのズレ補正は、レーザスリット光がX軸とほとんど平行に近い状態に設定されていることから次のように行う。
【0061】
図14(A)は、レーザスリット光BとX−Y移動機構20のX軸とのY方向ズレを示す図である。前述のように、レーザ変位センサ76、78のレーザスリット光の基準軸l
1(X軸)と、X−Y移動機構20のX方行移動軸l
2にはズレが生じる。そのため、領域SC1と領域SC2で検出されるレーザスリット光Bを並べて表示した場合には、並べられた2つのレーザスリット光Bの境界に、Y軸方向にズレ量DYが発生する。
【0062】
予めX軸とレーザスリット光の幅をWLその両端間でのズレ量DYを求めることで、レーザスリット光幅方向位置xでのY軸方向ズレ量dyが(5)式により求められる。
【0063】
dy = DY×x/WL ・・・ (5)
補正手段1041は、この原理を用いて、位置検出信号のずれ量を補正し、板厚の補正を行う。
【0064】
図14(B)は、レーザスリット光BとX−Y移動機構20のX軸とのZ方向ズレを示す図である。Y方向のズレと同様に、レーザ変位センサ76、78のレーザスリット光の基準軸l
1(X軸)と、X−Y移動機構20のX方行移動軸l
2にはズレが生じるため、領域SC1と領域SC2で検出されるレーザスリット光Bを並べて表示した場合には、並べられた2つのレーザスリット光Bの境界に、Z軸方向にもズレ量DZが発生する。
【0065】
予めX軸とレーザスリット光の幅をWLその両端間でのズレ量DZを求めることで、レーザスリット光幅方向位置xでのZ軸方向ズレ量dzが(6)式により求められる。
【0066】
dz = DZ×x/WL ・・・ (6)
補正手段1041は、この原理を用いて、位置検出信号のずれ量を補正し、板厚の補正を行う。また、X−YステージのY軸とX軸のズレは、
図13に示す予め求めたY軸とX軸の直交からのズレをX軸の長さWRの位置でのズレ量DRとすると、X軸位置xでのY軸方向ズレ量dy2は(7)式で求めることができる。
【0067】
dy2 = DR×x/WR ・・・ (7)
補正手段1041は、X軸の各位置で位置検出信号に上記ずれ量を補正する。
【0068】
ステップS07にて、補正手段1041は、レーザスリット光B1がY軸方向の位置が測定完了点136Eと同じ位置に達すると、X−Y移動機構は走査を一旦停止し、測定開始点136SのY方向位置まで戻り、X軸位置が測定完了点136Eに達していない場合には、ステップS09にてレーザスリット光幅だけX軸位置を136E側に移動し、操作エリアSC2を走査エリアSC1同様に測定する。
【0069】
ステップS08にて、測定制御手段104はレーザスリット光B1が測定完了点136Eに達したことを判断し、X−Y移動機構20によりホルダ62を停止させ、金属板120に対する板厚の測定作業を完了させる(ステップS10)。
【0070】
ステップS11にて、測定制御手段104は、前述した(3)式に従ってセンサ間距離SDを算出し、ステップS12にて、測定制御手段104は、前述した(4)式に従って金属板120の厚さ測定値MTを算出する。その厚さ測定値MTを測定点136の座標位置と関連付けて一時記憶用の内部メモリ(図示省略)により記憶する。
【0071】
次に、レーザ変位計の基準軸とX−Y移動機構のX方向移動軸とのズレ量の測定方法、及び、X−Y移動機構のX軸とY軸との直交からのズレの測定方法を説明する。
【0072】
図15(A)に示す基準板140はレーザ変位計の基準軸とX−Y移動機構のX方向移動軸とのズレ量DYの測定用であり、平板上に凹状の複数の線が直交する格子パタンが作成されている。なお、ズレ量を測定するための平板の凹凸パタンは、格子パタンに限られず、四角、円、三角など種々の凹凸パタンとしてもよい。
【0073】
本板厚測定装置で、レーザ変位計の基準軸とX−Y移動機構のX方向移動軸のズレ補正、及びX−Y移動機構のX軸とY軸との直交からのズレ補正の補正量“0”の状態で、SC1、SC2の2つ以上の領域で測定し、位置検出信号S1から基準板までの距離LZ
1の距離を求め、測定制御手段104でこれを距離分布画像142として作成し、表示制御部96を介してディスプレイ装置98に表示する。
【0074】
図15(B)に示すように、距離分布画像142からSC1、SC2の境界部での格子状パタンの段差DYを求めこれをレーザ変位計の基準軸とX−Y移動機構のX方向移動軸とのY方向ズレ量とすることができる。
【0075】
図16に示すレーザ変位センサの基準軸とX−Y移動機構のX方向移動軸とのズレ量DYを補正した基準板の距離分布画像144、またはレーザ変位センサの基準軸とX−Y移動機構のX方向移動軸とのY軸方向のズレのない状態で測定した基準板の距離分布画像144の任意の断面A−A’からSC1、SC2の境界部での形状の段差DZを求め、これをレーザ変位センサの基準軸とX−Y移動機構のX方向移動軸とのZ方向ズレ量とすることができる。
【0076】
基準板の表裏面に同一パタンを製作しておけば、表裏面のズレ量が同時に測定可能である。
【0077】
なお、一対のレーザ変位センサ76、78の各基準軸(第1の基準軸と第2の基準軸)は、事前に一致させるように配しておくことが好ましい。
【0078】
以上説明した本実施形態に係る板厚測定装置10では、測定制御手段104が、測定領域130における複数の測定点136がレーザスリット光B1の反射点BS1を順次通過し、かつ対向領域における対向点がレーザスリット光B2の反射点BS2を順次通過するように、X−Y移動機構20により金属板120を保持したホルダ62をY方向及びX方向に沿って移動させることにより、レーザ変位センサ76により複数の測定点136までの距離LZ
1を順次検出でき、かつレーザ変位センサ78により対向点までの距離LZ
2を順次検出できるので、レーザ変位センサ76により検出された複数の測定点までの距離及び、レーザ変位センサ78により検出された複数の対向点までの距離LZ
2に基づいて、複数の測定点136における金属板120の厚さ測定値MTをそれぞれ求めることができる。
【0079】
このとき、前述した(4)式により金属板120の厚さ測定値MTを算出できるので、金属板120に反り、歪み等の変形が生じていても、測定点136における金属板120に対する厚さの測定精度が変形の影響により低下しない。従って、測定点136における金属板120の厚さを十分に高い精度で測定ができる。
【0080】
この厚さ測定値MTを、腐食前の金属板120の厚さ測定値と比較すれば、測定点における金属板120の腐食深さを高い精度で求めることができる。なお、腐食前の金属板120の厚さは、腐食試験後サンプルの腐食していない箇所(シール部)をマイクロメーターで測定してもよい。
【0081】
図10に示されるフローチャートを参照しつつ、測定制御手段104による金属板120に対する腐食深さの測定制御について説明する。
【0082】
図10のフローチャートでは
図9のフローチャートに従い、ステップS01〜ステップS12により、金属板120の厚さ測定値MTを算出する。
【0083】
ステップS14にて、測定制御手段104は、厚さ測定値MTと腐食試験前における金属板120の厚さTとの差を腐食深さ測定値MCとして算出し、その腐食深さ測定値MCを測定点136の座標位置と関連付けて一時記憶用の内部メモリ(図示省略)により記憶する。
【0084】
測定制御手段104は、全ての測定点136についての腐食深さ測定値MCを算出し、これらを記憶したあと、ステップS15にて、全ての測定点136についての腐食深さ測定値MC及び、それらに対応する座標位置を、金属板120に付された固有の識別コードに関連付けて外部記憶装置102に格納する。
【0085】
また、板厚測定装置10では、腐食後の金属板120に対して要求される腐食深さ測定値についての情報量に応じて、測定領域130に対して測定開始点136S、測定完了点136E及び測定ピッチPTを適宜設定するだけで、要求される腐食深さ測定値についての情報量を満足させるように、金属板120に対する厚さ測定作業を自動的に行えるので、金属板120に予め設定された複数の測定点136に対する腐食深さの測定作業を効率的に行える。
【0086】
さらに、本装置では、レーザスリット光Bは、X方向に所定のスリット幅WLを有しているため、スリット幅WLに2点以上の測定点を含めるように測定することで、従来のように測定点毎に計測する方法に比べ、非常に短時間で測定が完了する。
【0087】
なお、上記の説明では、三角測量の原理を用いて腐食深さを測定する装置及び方法について説明したが、本発明は、このような装置及び方法に限られるものではない。例えば、共焦点法などの種々の計測方法を利用することができる。
【実施例】
【0088】
図11には、腐食生成物が除去された腐食試験材を測定したときの板厚分布の3次元マップの表示例を示す。
図11の(A)は、材質Aからなる腐食試験材の測定例、(B)は、材質Bからなる腐食試験材の測定例である。
図6に示す長方形の鋼板からなる試験材の端面及び裏面を粘着テープなどでシールして、露出した部分に対し、塩水の吹付け、放置、乾燥等の複数の工程からなる単位サイクルを繰返す腐食促進試験を行った。腐食促進試験後の腐食試験材について、シールを剥がし且つ腐食生成物を除去し、洗浄した腐食試験材を以下の条件で測定を行った。
【0089】
腐食促進試験前の試験材のサイズは幅70mm×長さ150mm×板厚3.0mmであり、測定領域は幅30mm×長さ100mmである。レーザスリットの仕様は、スリット幅WL(X方向の大きさ)は15mm、スリット長さ(スリットのY方向の大きさ)は45μmである。測定ピッチPTは0.1mmであり、このときの測定時間は約40秒であり、特許第5200855号のレーザスポット方式の計測(約40分)に比べ大幅な測定時間の短縮を実現した。
【0090】
図12には、上記の腐食試験材の測定例で得られた板厚分布データと試験前の試験片の板厚から前記腐食促進試験による腐食深さ分布を示す。横軸に腐食深さを、縦軸に発生確率を示しており、
図12(A)は材質Aの結果、(B)は材質Bの結果であり、実線は30サイクルの腐食試験を行った結果、破線は60サイクルの腐食試験を行った結果、一点鎖線は90サイクルの腐食試験を行った結果をそれぞれ示している。
【0091】
図12から材質Aの鋼板は局部腐食形態をとる傾向にあり、材質Bの鋼板は均一腐食形態をとる傾向にあることが推定された。