(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6014574
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月25日
(54)【発明の名称】転炉スラグ中の遊離石灰の定量方法
(51)【国際特許分類】
G01N 33/24 20060101AFI20161011BHJP
【FI】
G01N33/24 A
【請求項の数】2
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-247915(P2013-247915)
(22)【出願日】2013年11月29日
(65)【公開番号】特開2015-105873(P2015-105873A)
(43)【公開日】2015年6月8日
【審査請求日】2015年10月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000253226
【氏名又は名称】濱田重工株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】新日鐵住金株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090697
【弁理士】
【氏名又は名称】中前 富士男
(74)【代理人】
【識別番号】100127155
【弁理士】
【氏名又は名称】来田 義弘
(74)【代理人】
【識別番号】100176142
【弁理士】
【氏名又は名称】清井 洋平
(72)【発明者】
【氏名】高屋 義幸
(72)【発明者】
【氏名】上川 義弘
(72)【発明者】
【氏名】杉谷 領太
(72)【発明者】
【氏名】山本 充
(72)【発明者】
【氏名】真沢 正人
【審査官】
三木 隆
(56)【参考文献】
【文献】
特開2000−111546(JP,A)
【文献】
特開平06−256045(JP,A)
【文献】
特開平07−232940(JP,A)
【文献】
特開平09−141071(JP,A)
【文献】
米国特許第04776088(US,A)
【文献】
特開平9−268308(JP,A)
【文献】
特開2007−217214(JP,A)
【文献】
特開2012−233650(JP,A)
【文献】
水渡英昭,転炉さい中の遊離石灰の影響による風化崩壊,鉄と鋼,1977年,Vol.63 No.14,Page.2316-2325
【文献】
横幕豊一,転炉さい中の遊離石灰によるさい崩壊について,鉄と鋼,1977年,Vol.63 No.11,Page.S419
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/24
G01N 33/20
B09B1/00〜5/00
C21C5/00;5/28〜5/50
JSTPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
転炉スラグに含まれる遊離石灰を未滓化石灰、晶出石灰、及び析出石灰に分類して前記各石灰の含有率を算出する方法であって、
転炉スラグ粒子を含有する試料片を作製する第1の工程と、
前記試料片中の転炉スラグ粒子を第1の倍率で顕微鏡観察して第1の観察視野を撮影する第2の工程と、
前記第2の工程で撮影した前記第1の観察視野の画像に第1の升目幅を有する方眼線を付して、晶出石灰及び/又は析出石灰を含む相が占める升目の数と、未滓化石灰の相が占める升目の数と、前記転炉スラグ粒子が占める升目の数とを測定し、前記各相が前記転炉スラグ粒子に占める面積比率を算出する第3の工程と、
前記晶出石灰及び/又は析出石灰を含む相を、前記第1の倍率より高い倍率を有する第2の倍率で顕微鏡観察して第2の観察視野を撮影する第4の工程と、
前記第4の工程で撮影した前記第2の観察視野の画像に、前記第1の升目幅より目の細かな第2の升目幅を有する方眼線を付して、晶出石灰が占める升目の数と、析出石灰が占める升目の数と、前記第2の観察視野が占める升目の数とを測定し、晶出石灰と析出石灰がそれぞれ前記第2の観察視野に占める面積比率を算出する第5の工程と、
晶出石灰と析出石灰がそれぞれ前記第2の観察視野に占める面積比率と、前記晶出石灰及び/又は析出石灰を含む相が前記転炉スラグ粒子に占める面積比率とを掛け合わせて、前記転炉スラグ粒子に対して晶出石灰と析出石灰がそれぞれ占める面積比率を算出する第6の工程とを備えることを特徴とする転炉スラグ中の遊離石灰の定量方法。
【請求項2】
請求項1記載の転炉スラグ中の遊離石灰の定量方法において、前記第1の升目幅が0.3mm〜0.5mm、前記第2の升目幅が10μm〜15μmであることを特徴とする転炉スラグ中の遊離石灰の定量方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転炉スラグの膨張性を評価する方法に係り、特に転炉スラグの膨張要因である遊離石灰の定量方法に関する。
【背景技術】
【0002】
転炉スラグは、転炉を用いた製鋼工程で発生する鉄鋼スラグであり、硬質で高い嵩比重を有することから路盤材等の道路用材料に利用されている。
転炉スラグは、精錬時に添加される生石灰などを由来とする遊離石灰(f-CaO)を含んでいる。遊離石灰は、空気中の水分や雨水などに接触すると、(1)式に示す水和反応を起こし、体積が約2倍に膨張する。
CaO + H
2O → Ca(OH)
2 (1)
従って、遊離石灰を多く含む転炉スラグをそのまま道路用材料として用いると、路面の亀裂や隆起といった問題を引き起こす。そのため、転炉スラグを道路用材料に使用する際は、通常、転炉スラグの蒸気エージング処理などを事前に行なって、遊離石灰の水和反応を完了させている。
【0003】
蒸気エージング処理は、山積み状態のスラグに水蒸気を吹き込んで水和反応を促進させる方法であり、数日で遊離石灰の水和反応が完了する。例えば、特許文献1には、所定粒度に破砕された山積み状態の製鋼スラグに80〜100℃の水蒸気を吹き込み、大気中で48時間以上暴露することで、製鋼スラグ中の遊離石灰の水和反応が促進され、エージング処理を短期間に安定して行うことができると記載されている。
【0004】
しかし、転炉による製鋼工程がバッチ処理であることから、転炉スラグは性状がバラツキやすく、また、精錬条件によって遊離石灰の含有量が大きく変化する。そのため、蒸気エージング処理は、必然的に安全側での操業を余儀なくされており、特許文献1に記載されている48時間曝露より長時間の処理を行っているのが現状である。
【0005】
他方、転炉スラグに含まれている遊離石灰の含有量を迅速に検出できる方法が確立されれば、蒸気エージング処理前に遊離石灰の含有量を把握することにより蒸気エージング処理を最適化することが可能となりコストダウンが期待できる。そのため、転炉スラグに含まれている遊離石灰を定量化する様々な方法がこれまで提案されている。エチレングリコール法は、その中で最も広く知られている方法の一つである。
【0006】
エチレングリコール法では、エチレングリコール試薬を用いて転炉スラグを所定温度で所定時間溶解し、溶解液中のカルシウムの含有率を測定する。溶解液中のカルシウムの含有率の測定には、中和滴定法や原子吸光分析法、導電率測定法が用いられる。注意すべき点として、エチレングリコール試薬へは酸化カルシウム(CaO)のほかに水酸化カルシウム(Ca(OH)
2)も溶解する。水酸化カルシウムの含有率の測定には熱重量分析法が用いられる。非特許文献1には、「鉄鋼スラグ中のf-CaOおよびCa(OH)
2の定量方法(=エチレングリコール法)」及び「鉄鋼スラグ中のCa(OH)
2の定量方法(=熱重量分析法)」に関して、分析精度の向上を目指し、条件の見直しを図った分析法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭61−101441号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】「鉄鋼スラグ中フリーCaOのキャラクタリゼーション技術の標準化」、一般社団法人 日本鉄鋼協会 分析技術部会、平成25年3月、p.88−94
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
転炉スラグに含まれている遊離石灰は、その生成挙動から、以下の3種類に大きく分類される。
(a)未滓化石灰:精錬時に添加される生石灰の一部が未溶解状態でスラグに残存した遊離石灰である。褐色の粒子状を呈しており目視で確認できる。
(b)晶出石灰:精錬時に一旦溶融し、スラグが冷却されて各種鉱物が生成する過程の末期に余剰分の石灰として生成する遊離石灰である。各種鉱物相が生成する過程の末期に生成するため、他の鉱物相の隙間を埋めるような形状である。
(c)析出石灰:高塩基度の溶融スラグが冷却する過程において、1700℃〜1400℃域で生成した長柱形のトリカルシウムシリケイト(3CaO−SiO
2)が1300℃以下で分解したときにダイカルシウムシリケイト(2CaO−SiO
2)と共に生成する遊離石灰である。長柱形の鉱物相内に縞状に生成する。
【0010】
これら3種類の遊離石灰は、転炉スラグ中の存在箇所や存在形態から、転炉スラグの水和膨張に及ぼす影響がそれぞれ異なる。例えば、晶出石灰と析出石灰は結晶同士の間や結晶の内部に存在していることから含有量次第で転炉スラグの膨張へ寄与し、長期的な膨張挙動を示す。
従って、転炉スラグの膨張挙動を正確に把握するためには、転炉スラグに含まれている未滓化石灰、晶出石灰、及び析出石灰がそれぞれどの程度含まれているか把握することが重要となる。
【0011】
しかしながら、先に挙げたエチレングリコール法は、未滓化石灰、晶出石灰、及び析出石灰を区別せずに合算値として処理するため、転炉スラグの膨張挙動を正確に把握することが難しい。例えば、酸化カルシウムの値が同じ転炉スラグであっても、一方は未滓化石灰が主体であり、もう一方は晶出石灰と析出石灰が主体であれば、両者は異なる膨張挙動を示す。
【0012】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、転炉スラグの膨張挙動を正確に評価して蒸気エージング処理の最適化を図るため、転炉スラグに含まれている未滓化石灰、晶出石灰、及び析出石灰の各含有率を把握することが可能な、転炉スラグ中の遊離石灰の定量方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、本発明は、転炉スラグに含まれる遊離石灰を未滓化石灰、晶出石灰、及び析出石灰に分類して前記各石灰の含有率を算出する方法であって、以下の工程を備えている。
(1)転炉スラグ粒子を含有する試料片を作製する。
(2)前記試料片中の転炉スラグ粒子を第1の倍率で顕微鏡観察して第1の観察視野を撮影する。
(3)前記第2の工程で撮影した前記第1の観察視野の画像に第1の升目幅を有する方眼線を付して、晶出石灰及び/又は析出石灰を含む相が占める升目の数と、未滓化石灰の相が占める升目の数と、前記転炉スラグ粒子が占める升目の数とを測定し、前記各相が前記転炉スラグ粒子に占める面積比率(含有率)を算出する。
(4)前記晶出石灰及び/又は析出石灰を含む相を、前記第1の倍率より高い倍率を有する第2の倍率で顕微鏡観察して第2の観察視野を撮影する。
(5)前記第4の工程で撮影した前記第2の観察視野の画像に、前記第1の升目幅より目の細かな第2の升目幅を有する方眼線を付して、晶出石灰が占める升目の数と、析出石灰が占める升目の数と、前記第2の観察視野が占める升目の数とを測定し、晶出石灰と析出石灰がそれぞれ前記第2の観察視野に占める面積比率を算出する。
(6)晶出石灰と析出石灰がそれぞれ前記第2の観察視野に占める面積比率と、前記晶出石灰及び/又は析出石灰を含む相が前記転炉スラグ粒子に占める面積比率とを掛け合わせて、前記転炉スラグ粒子に対して晶出石灰と析出石灰がそれぞれ占める面積比率(含有率)を算出する。
【0014】
本発明は、転炉スラグ粒子の観察視野画像に目の粗い升目幅を有する方眼線を付して各相の面積比率を算出する前工程と、晶出石灰及び/又は析出石灰を含む相に目の細かな升目幅を有する方眼線を付して晶出石灰と析出石灰の面積比率を算出する後工程とから大略構成される。
先ず、転炉スラグ粒子を撮影した低倍率の観察視野画像に目の粗い升目幅を有する方眼線を付して、晶出石灰及び/又は析出石灰を含む相と未滓化石灰の相がそれぞれ転炉スラグ粒子に占める面積比率を算出する。次いで、晶出石灰及び/又は析出石灰を含む相を撮影した高倍率の観察視野画像に目の細かな升目幅を有する方眼線を付して、転炉スラグ粒子に対して晶出石灰と析出石灰がそれぞれ占める面積比率を算出する。
【0015】
本発明では、未滓化石灰と、未滓化石灰に比べて鉱物相の大きさが小さな晶出石灰及び析出石灰とを効率的に測定するため、顕微鏡観察時の倍率は低倍率(第1の倍率)と高倍率(第2の倍率)の2種類としている。各倍率は、使用する顕微鏡の解像度にもよるが、第1の倍率は50倍程度、第2の倍率は200倍程度が適している。
【0016】
また、本発明に係る転炉スラグ中の遊離石灰の定量方法では、前記第1の升目幅が0.3mm〜0.5mm、前記第2の升目幅が10μm〜15μmであることを好適とする。
【0017】
第1の倍率を50倍程度とした場合、第1の升目幅が0.3mm未満であると、相に含まれる升目の数が多くなり過ぎて測定が煩雑となる一方、第1の升目幅が0.5mm超であると、升目が粗すぎて各相の実形状との誤差が大きくなり過ぎる。
また、第2の倍率を200倍程度とした場合、第2の升目幅が10μm未満であると、晶出石灰及び析出石灰に含まれる升目の数が多くなり過ぎて測定が煩雑となる一方、第2の升目幅が15μm超であると、升目が粗すぎて晶出石灰及び析出石灰の実形状との誤差が大きくなり過ぎる。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る転炉スラグ中の遊離石灰の定量方法によれば、転炉スラグに含まれている未滓化石灰、晶出石灰、及び析出石灰の各含有率を検出することができるので、転炉スラグの膨張挙動を正確に評価して蒸気エージング処理の最適化を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の一実施の形態に係る転炉スラグ中の遊離石灰の定量方法の手順を示すフローチャートである。
【
図4】(A)は試料片中の転炉スラグ粒子を第1の倍率で撮影した画像の模式図、(B)は当該画像に0.3mm〜0.5mmの升目幅を有する方眼線を付した画像の模式図である。
【
図5】(A)は晶出石灰及び/又は析出石灰を含む相を第2の倍率で撮影した観察視野画像の模式図、(B)は当該観察視野画像に10μm〜15μmの升目幅を有する方眼線を付した画像の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態について説明し、本発明の理解に供する。
【0021】
図1のフローチャートを参照しながら、本発明の一実施の形態に係る転炉スラグ中の遊離石灰の定量方法の手順について説明する。
【0022】
[STEP−1]
転炉スラグ粒子を含有する試料片を作製する(ST1)。試料片の作成手順は以下の通りである。
(1)粒径5mm〜30mm程度の転炉スラグ粒子10を切断する(
図2参照)。
(2)切断された転炉スラグ粒子10と樹脂11(例えばエポキシ樹脂)を真空容器に入れて真空引きし、転炉スラグ粒子10に樹脂11を含浸させる。
(3)樹脂11が染み込んだ転炉スラグ粒子10を円筒状の型13の中に入れ、樹脂11を型13の中に流し込む(
図2参照)。その際、転炉スラグ粒子10の切断面が下側になるように、型13内に転炉スラグ粒子10を配置する。
(4)常温硬化させた試料片12を型13から取り外す。
(5)試料片12の顕微鏡観察面(転炉スラグ粒子10の切断面側の面)を、研磨紙で粗研磨した後、ダイアモンドペーストで仕上げ研磨する。試料片12の顕微鏡観察面を
図3に示す。
【0023】
[STEP−2]
試料片中の転炉スラグ粒子10を第1の倍率(例えば50倍)で顕微鏡観察して観察視野(第1の観察視野)を撮影する(ST2)。その際、転炉スラグ粒子10の全景が観察視野に含まれるようにする。
[STEP−3]
第1の倍率で撮影した観察視野画像をパーソナルコンピュータに取り込み、画像編集ソフトウェア上で、0.3mm〜0.5mm四方(第1の升目幅)の方眼15を観察視野画像に重ねる(
図4参照)。そして、0.3mm〜0.5mm四方の方眼15を重ねた観察視野画像について、転炉スラグ粒子10に含まれる各鉱物相の特徴を踏まえ、以下に示す5種類の相に分類する(ST3)。
【0024】
(a)晶出石灰と析出石灰を含まない相:マグネシオウスタイトやダイカルシウムシリケイトなどの膨張性の無い鉱物相が明瞭に出ており、晶出石灰及び析出石灰を含んでいない。MgO系介在物やメタルを含んでいてもよく、膨張性は無い。
(b)晶出石灰及び/又は析出石灰を含む相:マグネシオウスタイトやダイカルシウムシリケイトなどの膨張性の無い鉱物相と共に、晶出石灰及び/又は析出石灰が含まれている。晶出石灰と析出石灰の濃度次第では転炉スラグの膨張性に寄与する。
(c)結晶が不明瞭な相:急冷によって結晶が十分に成長せず固化した相である。鉱物同士の境界が不鮮明で、デンドライト成長(初晶)も見られる。膨張性は無い。
(d)未滓化石灰の相:未溶解のまま残存した未滓化石灰の相である。室内放置により速やかに水和反応が進む。膨張性を有している。
(e)気孔の相:転炉スラグ内の気孔である。
【0025】
第1の倍率で撮影した転炉スラグ粒子10の画像を
図4(A)に、当該画像に0.3mm〜0.5mmの升目幅を有する方眼線を付した画像を
図4(B)に示す。図中の符号20は晶出石灰及び/又は析出石灰を含む相、符号21は未滓化石灰の相、符号22は晶出石灰と析出石灰を含まない相である。なお、この転炉スラグ粒子10は、結晶が不明瞭な相と気孔の相を含んでいない。
【0026】
[STEP−4]
晶出石灰及び/又は析出石灰を含む相20が占める升目の数と、未滓化石灰の相21が占める升目の数と、転炉スラグ粒子10が占める升目の数とを測定し、各相が転炉スラグ粒子10に占める面積比率(含有率)を算出する(ST4)。
【0027】
[STEP−5]
晶出石灰及び/又は析出石灰を含む相20を、第1の倍率より高い倍率を有する第2の倍率(例えば200倍)で顕微鏡観察して観察視野(第2の観察視野)を撮影する(ST5)。撮影視野数は、晶出石灰及び/又は析出石灰を含む相20が観察された転炉スラグ粒子10一個につき10視野程度とする。晶出石灰及び/又は析出石灰を含む相20を第2の倍率で撮影した観察視野画像を
図5(A)に示す。同図において、符号25は晶出石灰、符号26は析出石灰、符号27はマグネシオウスタイトやダイカルシウムシリケイトなどの鉱物相である。
【0028】
[STEP−6]
第2の倍率で撮影した全観察視野画像をパーソナルコンピュータに取り込み、画像編集ソフトウェア上で、各観察視野画像に10μm〜15μm四方(第2の升目幅)の方眼16を重ねる(
図5(B)参照)。そして、10μm〜15μm四方の方眼16を重ねた各観察視野画像について、晶出石灰25が占める升目の数と、析出石灰26が占める升目の数と、観察視野が占める升目の数とを測定し、晶出石灰25と析出石灰26がそれぞれ観察視野に占める面積比率を求め、各観察視野について得られた面積比率の平均値を算出する(ST6)。
【0029】
[STEP−7]
晶出石灰25と析出石灰26がそれぞれ観察視野に占める面積比率と、晶出石灰及び/又は析出石灰を含む相20が転炉スラグ粒子10に占める面積比率とを掛け合わせて、転炉スラグ粒子10に対して晶出石灰25と析出石灰26がそれぞれ占める面積比率(含有率)を算出する(ST7)。
【0030】
本実施の形態に係る転炉スラグ中の遊離石灰の定量方法によれば、転炉スラグに含まれている遊離石灰を未滓化石灰、晶出石灰、及び析出石灰に分類して各石灰の含有率を検出することができるので、転炉スラグの膨張挙動を正確に評価して蒸気エージング処理の最適化を図ることが可能となる。
例えば、未滓化石灰を一定量以上含んでいる転炉スラグは、蒸気エージング処理の対象外、もしくは蒸気エージング期間を短縮し、晶出石灰や析出石灰を多く含んでいる転炉スラグは、長期的な膨張を示す可能性を見極めたうえで、膨張性が高いものは道路用材料として使用しない、即ち、蒸気エージング処理を行わないといった判断を事前に下すことが可能となる。
【0031】
以上、本発明の一実施の形態について説明してきたが、本発明は何ら上記した実施の形態に記載の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されている事項の範囲内で考えられるその他の実施の形態や変形例も含むものである。
【実施例】
【0032】
転炉スラグ粒子には、転炉から排滓されて受滓鍋で運搬され、放流場で冷却された後、地金回収及び粒度調整を行うプラント(処理量:約1000ton、処理時間:約5時間)から排出されたものを使用した。その際、サンプルに偏りがないようにするため、1時間おきに5kg〜10kgのサンプルを5回採取した。採取した転炉スラグ粒子の粒径は5mm〜30mmである。
【0033】
JIS Z8815「ふるい分け試験方法通則」に則り、採取した転炉スラグ粒子を円すい四分法にて縮分し、1回のサンプル採取につき1個の試料片を作製した。試料片の直径は32mm、試料片1個当たり転炉スラグ粒子を4粒埋め込んだ(
図3参照)。
【0034】
試料片の転炉スラグ粒子を50倍の倍率で顕微鏡観察して観察視野を撮影した。撮影範囲は転炉スラグ粒子の全景とした。次いで、撮影した観察視野画像をパーソナルコンピュータに取り込み、画像編集ソフトウェア上で、撮影した観察視野画像に0.5mm四方の方眼を重ね、前述した5つの相に分類した。
そして、分類した各相について升目の数を測定し、各相の面積比率を算出した。その結果を表1に示す。表中の個数は升目の数を示している。
【0035】
【表1】
【0036】
同表に示すように、本試験に採用した転炉スラグ粒子は、0.5mm四方の升目が全体で7255個あり、晶出石灰と析出石灰を含まない相、晶出石灰及び/又は析出石灰を含む相、結晶が不明瞭な相、未滓化石灰の相、気孔の相の升目数は順に、346個、3658個、2615個、65個、571個、面積比率は順に、4.77%、50.4%、36.0%、0.90%、7.87%であった。
【0037】
次に、晶出石灰及び/又は析出石灰を含む相を200倍の倍率で顕微鏡観察して観察視野を撮影した。撮影視野数は、晶出石灰及び/又は析出石灰を含む相を含む転炉スラグ粒子一個につき約10視野とした。次いで、撮影した全観察視野画像をパーソナルコンピュータに取り込み、画像編集ソフトウェア上で、撮影した各観察視野画像に13μm四方の方眼を重ね、晶出石灰と析出石灰の各面積比率を13μm四方の升目の数から求め、得られた晶出石灰と析出石灰の各面積比率について10視野の平均値を算出した。
そして、その平均値と、50倍画像より得られた晶出石灰及び/又は析出石灰を含む相の面積比率とを掛け合わせ、転炉スラグ粒子に対する晶出石灰と析出石灰の各面積比率を算出した。算出結果を表2に示す。なお、同表において、晶出石灰及び析出石灰の左側の列は、晶出石灰と析出石灰がそれぞれ観察視野に占める面積比率を表し、右側の列は、晶出石灰及び/又は析出石灰を含む相の升目の数に左側の列の面積比率を掛けて、0.5mm四方の方眼当たりの晶出石灰と析出石灰の升目数に換算したものである。
【0038】
【表2】
【0039】
同表に示すように、20個の転炉スラグ粒子のうちの10個に晶出石灰及び/又は析出石灰が確認され、0.5mm四方の方眼換算で、晶出石灰の升目数が134個、析出石灰の升目数が389個、転炉スラグ粒子に対する面積比率は、晶出石灰が1.86%、析出石灰が5.34%となった。
【0040】
以上の操作より、転炉スラグに含まれる未滓化石灰と晶出石灰と析出石灰を面積比率でそれぞれ定量化した。本実施例より得られた各鉱物相の面積比率は、晶出石灰と析出石灰を含まない相が4.8%、晶出石灰及び/又は析出石灰を含む相が50.4%で、うち晶出石灰が1.86%、析出石灰が5.34%となり、結晶が不明瞭な相が36.0%、未滓化石灰の相が0.90%、気孔の相が7.87%であった。
【符号の説明】
【0041】
10:転炉スラグ粒子、11:樹脂、12:試料片、13:型、15、16:方眼、20:晶出石灰及び/又は析出石灰を含む相、21:未滓化石灰の相、22:晶出石灰と析出石灰を含まない相、25:晶出石灰、26:析出石灰、27:鉱物相