(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記無機多孔質基材は、キセロゲル、シリカゲル、モノリス型シリカ、メソ多孔性鉱物およびメソポーラスシリカからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1または2に記載の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、近年になって、上記のCO
2の回収において、MCM−41やSBA−15に代表される均一なメソ孔を有するメソポーラスシリカに、アミン等の吸収剤を担持させた固体吸収材が注目を集めている(例えば、特許文献1〜3および非特許文献1〜4等参照)。このように固定化または含浸されたアミン等の吸収液は、化学吸収液の状態とは異なり、蒸気損失が無視できるという利点がある。また、メソポーラスシリカは水分に対する吸着能がさほど高くないため、水分が共存する環境においてもCO
2吸着能を示し得るという利点もある。
【0007】
かかるアミン吸着材を担持したメソポーラスシリカは、一般的に、化学吸収法で使用されるアミン等の吸収液をメソポーラスシリカに固定化または含浸させることで製造されている。一方で、担持させるアミン吸着材の組成や状態を調製したり、担体であるメソポーラスシリカの細孔径を拡大したりするなどして、CO
2吸着能を高性能化させること等が検討されてもいる(例えば、非特許文献2、3等参照)。
【0008】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、CO
2吸着材として有用な、より高いCO
2吸着能を有するアミノ化合物担持多孔質材とその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を実現するべく、本発明はアミノ化合物担持多孔質材の製造方法を提供する。かかる製造方法は、メソ孔を有する多孔質基材を用意すること、アミノ基を有するアミノ化合物を用意すること、上記アミノ化合物を気相状態とした雰囲気中に上記多孔質基材をさらすことで、少なくとも上記多孔質基材の上記メソ孔の内部に上記アミノ化合物を担持させること、を包含することを特徴としている。
【0010】
かかる構成によると、アミノ化合物は気相状態であるために、分子あるいはクラスターの状態で多孔質基材のメソ孔の内部にまで侵入することができる。したがって、多孔質基材の外表面のみならず、細孔の内部の表面に、より多くのアミノ化合物を担持させることができる。かかるアミノ化合物は、アミノ基を有するために化学的にCO
2を吸収し得るため、多孔質基材に従来よりも多量のCO
2を吸収させることができる。また、アミンは、液体のものが多孔質基材に含浸されているのではないため、アミンの気化による損失を無視することができる。また、基材はゼオライト以外のものを用いることができるため、例えば、水分が共存する環境においても高いCO
2吸着能を維持することができる。
なお、本明細書において、「メソ孔(メソポーラス)」とは、IUPAC分類に基づき、細孔径が2.0nm以上50nm未満の範囲の細孔を意味する。なお、本明細書における細孔径は、窒素ガス吸着法により求められた吸着等温線を密度汎関数(Density Functional Theory:DFT)法により解析することによって求めた値である。
【0011】
ここに開示される製造方法の好ましい一態様において、上記多孔質基材は、シリカを主成分とすることを特徴としている。
かかる構成によると、例えば、多孔質基材として各種のメソポーラスシリカを用いることができる。かかるメポラースシリカは、公知の手法により、例えば、細孔径や粒径等を所望の形態に調整して製造することができる。また、アミノ化合物は、かかる多孔質材料の細孔径や粒径等を所望の形態に左右されることなく、気相状態で多孔質基材のメソ孔の内部にまで導入され得る。したがって、所望の用途に応じて適切な形態のアミノ化合物担持多孔質材を簡便に製造することができる。
【0012】
ここに開示される製造方法の好ましい一態様において、上記アミノ化合物は、アミノオルガノシランであることを特徴としている。
アミノ化合物は、アミノ基を有するものであればその組成や構造等に特に制限はないが、アミノオルガノシランであることにより多孔質基材と化学的に結合し得るため、環境条件に対しより安定したアミノ化合物担持多孔質材を製造し得るために好ましい。かかるアミノオルガノシランは、多孔質基材の表面に化学的に結合することに加え、さらにその表面に物理的に吸着されることにより、多孔質基材に担持されるものと考えられる。
【0013】
ここに開示される製造方法の好ましい一態様においては、上記アミノ化合物の蒸気圧をA(Pa)としたとき、上記気相状態の雰囲気の圧力をA(Pa)以上50×A(Pa)以下に調整することを特徴としている。
多孔質基材は、アミノ化合物が気相状態となり得る雰囲気中であれば、加圧、常圧(例えば、10
5Pa)あるいは減圧の何れの状態の雰囲気にさらされることでも、アミノ化合物を担持し得る。しかしながら、例えば、気相状態にあるアミノ化合物の状態をより適切に、具体的には、アミノ化合物の気相分子の状態を適切に調整することで、気相状態にあるアミノ化合物の凝集および粗大化を防止し得、より多量のアミノ化合物を多孔質基材に担持させることが可能となり得る。かかるアミノ化合物の気相分子の状態の調整は、厳密には、アミノ化合物の一分子当たりの大きさや平均自由工程等にも関わるために一概には言えないものの、典型的には、上記のとおり、当該雰囲気温度における蒸気圧を基準に考慮することができる。おおよその目安として、例えば、当該アミノ化合物の蒸気圧以上であって、常圧未満の圧力であることが好ましく、典型的には、30Pa以上10000Pa以下程度、例えば、30Pa以上5000Pa以下程度とすることが例示される。
【0014】
他の側面において、本発明が提供するアミノ化合物担持多孔質材は、メソ孔を有する多孔質基材の上記メソ孔の少なくとも一部にアミノ基を有するアミノ化合物が担持されているアミノ化合物担持多孔質材である。そしてかかるアミノ化合物担持多孔質材は、上記多孔質基材の単位重量当たりの上記アミノ化合物の担持量が、0.2g/g以上0.5g/g以下であることを特徴としている。
多孔質基材の単位重量当たりに担持されるアミノ化合物は、従来のアミン担持メソポーラス材料については余り多くないことが知られている。これと比較して、ここに開示されるアミノ化合物担持多孔質材は、より多くのアミノ化合物を担持し得るとともに、より多くのCO
2を吸着し得るものとして実現され得る。
【0015】
ここに開示されるアミノ化合物担持多孔質材の好ましい一態様において、上記多孔質基材の細孔容積の少なくとも20体積%以上はアミノ化合物に占められていることを特徴としている。
かかる構成によると、例えば、より多くの細孔にアミン化合物が充填されたアミノ化合物担持多孔質材が実現され得る。かかるアミノ化合物担持多孔質材は、従来のアミノ化合物を担持した多孔質材に比べて、さらに多くのアミノ化合物を担持し得るとともに、さらに多くのCO
2を吸着し得るものとして実現され得る。
【0016】
ここに開示されるアミノ化合物担持多孔質材の好ましい一態様においては、100℃におけるCO
2吸着量が20mg/g以上であることを特徴としている。
火力発電所や自家用発電設備、各種の工場等から排出されるガスに含まれるCO
2の回収を行う場合、排出ガスの温度は80℃以上の高温となることが考えられる。ここに開示されるアミノ化合物担持多孔質材は、上記の通り80℃を超える高温においてもCO
2吸着量を実現し得るため、例えば、熱交換器等を用いて廃棄ガスを冷却する必要がない点においても好適であり得る。
【0017】
以上の本発明によると、従来のアミノ化合物を担持した多孔質材に比べて、例えば、単位重量当たりのCO
2吸着量がより高められているCO
2吸着能の高いアミノ化合物担持多孔質材が実現され得る。したがって、かかるアミノ化合物担持多孔質材はCO
2吸着材として好適に利用することができ、本発明はCO
2吸着能の高い高性能なCO
2吸着材をも提供する。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項(例えば、アミノ化合物担持多孔質材の製造のための手順、条件等)以外の事項であって本発明の実施に必要な事柄(例えば、原料としてのアミノ化合物およびメソポーラスシリカの製造方法やその形態等の制御方法、ならびに、アミノ化合物担持多孔質材の製造に用いる装置の構成やその使用方法等)は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
【0020】
本発明のアミノ化合物担持多孔質材の製造方法は、CO
2に対する化学吸収性を示す各種のアミノ化合物を多孔質基材に導入する方法に係るものであり、以下の(1)〜(3)に示す工程を含むことを特徴としている。
(1)メソ孔を有する多孔質基材を用意すること
(2)アミノ基を有するアミノ化合物を用意すること
(3)アミノ化合物を気相状態とした雰囲気中に多孔質基材をさらすことで、少なくとも多孔質基材のメソ孔の内部にアミノ化合物を担持させること
【0021】
[1.多孔質基材の用意]
まず、アミノ化合物担持多孔質材の基材として、メソ孔を有する多孔質基材を用意する。かかる多孔質基材は、その形態にメソ孔を備えている限り、組成や外形、メソ孔の大きさ(細孔径)やその分布形態等について特に制限はされない。特にこの例に限定されるものではないが、例えば、各種の天然鉱物のように様々な主成分であるシリカ(SiO
2)成分に加えて、様々な元素(例えば、アルミニウム(Al)、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、カルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)、バリウム(Ba)、ホウ素(B)等)が含まれたものであってよいし、例えば、本質的にシリカ(SiO
2)等の単一の構成成分から構成されたものであっても良い。また、均一なメソ孔を備えるもの(細孔径分布がシャープである)であっても良いし、様々な細孔径のメソ孔を含むもの(細孔径分布がブロードである)であっても良い。例えば、メソ孔以外のマイクロ孔(細孔径が2.0nm未満の細孔)や、マクロ孔(細孔径が50nm以上の細孔)を含むものであっても良い。かかる多孔質基材としては、例えば、市販されているメソ孔を有する多孔質材料を用いても良いし、所望の性状のメソ孔を有する多孔質材料を調製して用いても良い。
【0022】
具体的には、かかる多孔質基材としては、例えば、キセロゲル、MB‐300(商品名),MB‐500(商品名),シリカゲル,マイクロビーズシリカゲル等の名称で一般に市販されているシリカゲルや、モノリス型シリカ、ゼオライト等のメソ多孔性鉱物、MCM−41,MCM−48,SBA−12,SBA−15,KIT−6,モノリス等の名称で一般に市販されている各種のメソポーラスシリカ等を用いることが例示される。
【0023】
このようなメソポーラスシリカは、例えば、水溶液中に臨界ミセル濃度以上の濃度の界面活性剤を溶解させ、所定の大きさと構造のミセル粒子を形成させた後、この溶液中にシリカ源を加えてゾルゲル反応を生じさせることで、当該ミセル粒子を鋳型とした形態のシリカゲル(メソポーラスシリカ)として調製することもできる。
かかるメソポーラスシリカは、二酸化ケイ素(シリカ)を主成分として含み、不純物の含有が少なく(本質的に含まれず)、均一で規則的なメソ孔を備える多孔質材料であり得る。また、界面活性剤の種類に応じてメソ孔の細孔径や細孔の分布形態、さらには粒径等を所望のものに調整し得る。このような側面から本発明の多孔質基材として好ましい態様であり得る。
【0024】
なお、特に制限されるものではないが、本発明の多孔質基材としては、細孔径が2nm〜50nm(好ましくは、2nm〜30nm、例えば、2nm〜10nm)程度の範囲にあって、BET法による比表面積が100m
2/g〜10000m
2/g(好ましくは、500m
2/g〜10000m
2/g、例えば1000m
2/g〜5000m
2/g)程度の範囲にあるメソポーラスシリカを用いるのが好ましい。
【0025】
[2.アミノ化合物の用意]
アミノ化合物としては、化学構造においてアミノ基(NH
2−)を備える各種の化合物を特に制限なく考慮することができる。かかるアミノ基が有するCO
2に対する物理的および化学的親和性により、本発明のアミノ化合物担持多孔質材がCO
2に対して強い相互作用、すなわちCO
2吸着性を示し得ることとなる。このようなアミノ化合物としては、例えば、アミノ化合物の一分子に一つのアミノ基を備えるモノアミンタイプのアミノ化合物であっても良いし、アミノ化合物の一分子に2つ以上のアミノ基を備えるポリアミンタイプのアミノ化合物であっても良い。なお、CO
2吸着性に加えて、CO
2の脱離性を考慮すると、アミノ化合物としては、CO
2の分離回収技術の分野において通常使用されているアミノ化合物を好ましく用いることができる。かかるアミノ化合物としては、一例として、モノアミンあるいは3〜5のアミノ基を備えるポリアミンであることが好ましく、さらには、モノアミンであることがより好ましい例として示される。
【0026】
また、他の側面から、アミノ化合物としては、アミノオルガノシランを用いることも好ましい例として挙げられる。シランカップリング剤等として知られているオルガノシランの有機鎖にアミノ基を導入した化合物であって、例えばアミノ基を一分子中に一つ導入したアミノオルガノシランの分子構造は、下記の一般式(1)により表すことができる。
H
2N−R−Si(OR’)
3 ・・・(1)
なお、式(1)中、Rは任意のアルキル基、ビニル基、グリシドオキシプロピル基等の官能基であり、R’は同一または異種のアルキル基であり得る。
より具体的には、例えば、(3−アミノプロピル)トリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノ−プロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノ−プロピルメチルジメトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシランおよびN−(n−ブチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン等が好ましい例として示される。
【0027】
以上のアミノ化合物としては、典型的には、例えば、重量平均分子量Mwが50〜750000g/mol程度の各種のものを好適に使用することができる。重量平均分子量が小さすぎると、CO
2吸着性および脱離性が十分に得られない可能性があるために好ましくない。また、重量平均分子量が大きすぎると、多孔質基材のメソ孔の内部にアミノ化合物が侵入し難くなる可能性があるために好ましくない。特に制限されるものではないが、かかるアミノ化合物としては、重量平均分子量がおおよそ100〜1000g/mol程度であるものを好ましく用いることができる。
【0028】
[3.アミノ化合物の気相状態での担持]
その後、上記で用意したアミノ化合物を気相状態とした雰囲気中に、多孔質基材をさらすことで、少なくとも多孔質基材のメソ孔の内部にアミノ化合物を担持させる。すなわち、多孔質基材へのアミノ化合物の担持は、気相状態のアミノ化合物に多孔質基材を晒すことにより実現することができる。
アミノ化合物は、比較的蒸気圧の低いものが多く、例えば、代表的には、20℃における蒸気圧がおおよそ10Pa〜30Pa程度であることが例示される。したがって、アミノ化合物は、例えば常温常圧(典型的には25℃、10
5Pa)で容易に気化し得るものが多い。かかる常温常圧(典型的には25℃、10
5Pa)で気相状態にあるアミノ化合物については、例えば特別な手段を施すことなく、そのまま多孔質基材をかかる雰囲気中にさらすようにすればよい。また、例えば常温常圧(典型的には25℃、10
5Pa)で固体状態のものについては、加熱または加圧する等の適切な手段により、気相状態とすることができる。そして、かかる気相状態の雰囲気中に多孔質基材をさらすようにすればよい。
【0029】
かかるアルミノオルガノシランは、アミノ基の中心に電子の豊富なN原子が配置しており、ヒドロキシル基または他のアミン等の水素供与基との水素結合相互作用に関与し得る。例えば、アルミノオルガノシランをシリカゲル等と混合することで、最初に、シリカゲルの表面のヒロドキシル基に対してアミノ基が水素結合し、アルミノオルガノシランの吸着が生じる。かかる吸着の後、アミノ基は、シリカゲル側の分子とシリカゲル表面のシラノール基との縮合反応において触媒作用を示す。このように、シリカゲルの表面のシロキサン結合が水(H
2O)の無い状況でも形成され得る。他のシランの場合は、シロキサン結合の形成に、エトキシ基あるいは反応混合物へのアミンの添加といった加水分解が必要となる。このように、アルミノオルガノシランは、無機物と結合し得るR’基と、CO
2と反応し得るアミノ基とを備え持つ点で、多孔質基材との強固な結合を実現し得るために好ましい。
【0030】
なお、本発明の方法におけるより好ましい態様においては、かかる気相状態のアミノ化合物の雰囲気における圧力を、当該雰囲気温度における蒸気圧をA(Pa)としたとき、A(Pa)以上50×A(Pa)以下に調整することが好ましい。例えば、上記のとおり、代表的なアミノ化合物における蒸気圧が30Pa程度であることを考慮すると、雰囲気圧は、20℃において、30Pa以上10000Pa以下程度、例えば、30Pa以上5000Pa以下程度とするのが好適である。なお、例えば、減圧雰囲気を容易に準備できる環境にあるならば、20℃における雰囲気圧は、例えば、30Pa以上1200Pa以下程度とするのが好ましく、500Pa以上1200Pa以下程度とするのがより好ましく、さらには、例えば、1000Pa以上1200Pa以下程度とするのが好ましい。
【0031】
このようにアミノ化合物を気相状態で含む雰囲気の圧力を調整することで、気相状態にあるアミノ化合物の分子同士が凝集するのを防ぐことができ、アミノ化合物を単一の分子あるいはこれに近い(典型的には、2分子〜10分子程度のクラスターであり得る。)状態で、多孔質基材のメソ孔の内部に導入することができる。すなわち会合または凝集により粗大化したアミノ化合物分子(クラスターであり得る。)がメソ孔の内部に侵入できなくなったり、メソ孔のより浅い壁面に接触して吸着したりするのを防ぎ、より小さな分子の状態でメソ孔のより深部にまで到達させて、基材の壁面に吸着させるようにしている。
したがって、本発明の方法によると、例えば、液体状態で含浸させる場合よりもはるかに多くのアミノ化合物分子を、メソ孔のより深部にまで、多量に導入することが可能となる。また、単に常温で気化した状態で、複数の分子が会合あるいは凝集した状態であり得るアミノ化合物の気相雰囲気中に多孔質基材をさらした場合に比べても、より多くのアミノ化合物分子をメソ孔のより深部にまで多量に導入することが可能となる。
【0032】
以上のことから、本発明においてアミノ化合物は、蒸気圧が10000Pa以下程度(例えば、5000Pa以下程度、さらには1200Pa以下程度)のものであると、かかる態様の効果がより顕著に得られるために好ましい。もしくは、かかる雰囲気の圧力は、より好ましくは、2×A(Pa)以上30×A(Pa)以下、例えば、5×A(Pa)以上20×A(Pa)以下に調整することができる。かかる温度は、用いるアミノ化合物の種類によって異なるために一概には言えないものの、おおよその目安として、例えば、当該アミノ化合物の蒸気圧以上であって、常圧未満の圧力とすることができ、典型的には、1.0kPa以上100kPa以下程度、例えば、10kPa以上100kPa以下とすることが例示される。
【0033】
以上の本発明の製造方法によると、例えば、具体的には、多孔質基材の単位重量当たりのアミノ化合物の担持量を、0.2g/g以上(典型的には、0.2g/g以上0.7g/g以下、より好ましくは0.2g/g以上0.5g/g以下、例えば0.25g/g以上0.35mg/g以下)とすることが可能となる。このようなアミノ化合物の担持量は、例えば、多孔質基材として代表的なメソポーラスシリカであるMCM−41を用い、アミノ化合物として(3−アミノプロピル)トリエトキシシランを用いた場合、その細孔容積の少なくとも20体積%以上(好ましくは22体積%以上、例えば、24体積%以上)がアミノ化合物に占められている態様であり得る。また、このようなアミノ化合物担持多孔質材については、例えば、25℃におけるCO
2吸着量が47mg/g以上であり得る。かかるCO
2吸着量は、よりメソ孔が拡大された多孔質基材、すなわち、アミノ化合物をメソ孔のより深部にまで導入しやすい構造を有する多孔質基材に対して、同一のアミノ化合物を液体状態で含浸させることにより得られるCO
2吸着材に比べて、約2倍もの高いCO
2吸着能であり得る。
【0034】
このように、多孔質基材にアミノ化合物を担持させる際のアミノ化合物の分子状態を適切に制御することで、よりCO
2吸着能の高いCO
2吸着材が実現される。
以下、本発明に関する実施例を説明するが、本発明を以下の実施例に示すものに限定することを意図したものではない。
【0035】
<実施例1>
メソポーラス材料として、アルミナ成分を3%以下の割合で含むMCM−41(シグマアルドリッチ社製、アルミノケイ酸,メソ構造MCM−41、製品番号643653;以下、単にMCM‐41と表記する。)を用いた。このメソポーラス材料の物性を確認したところ、BET法による比表面積が939m
2/g、細孔径が2〜3nmの範囲にあり、空隙率は約72%であった。
【0036】
アミノ化合物としては、(3−アミノプロピル)トリエトキシシラン(シグマアルドリッチ社製、H
2N(CH
2)
3Si(OC
2H
5)
3、純度98%超過、製品番号A3648;以下、APTSと表記する。)を用いた。このAPTSのメーカー公表による物性は、平均分子量221.47g/mol、大気圧下での沸点217℃、25℃における密度0.946g/mlであり、蒸気圧は約13kPa(150℃)である。本実施形態において、このアミノ基含有物質は、1分子構造内にアミノ基が1つだけ含まれるモノアミノタイプの前駆体である。
【0037】
下記の2通りの方法により、APTSをMCM−41に導入(グラフト)した。
<例1>
一つ目は本発明の方法であって、まずオートクレーブ内に10gのAPTSを配置し、少し離した位置に0.74gのMCM−41を配置した。その後、オートクレーブを密閉し、内部の空気を25℃で約130hPaまで排気してオートクレーブ内の雰囲気をAPTSの蒸気で満たした。その後、オートクレーブ内を150℃に20時間保つことで、MCM−41の内部にまでAPTSを堆積させた。このようにして得られたサンプルをV1とした。
【0038】
<例2>
二つ目の方法は、非特許文献1および2に示されたVrancknらの手法(溶液含浸法)によるものである。すなわち、まず、室温で1.25gのAPTSを40gのトルエンに混合することで、3質量%のアミン−トルエン溶液を調製した。これに、0.5gのMCM−41を加え、スターラーで7時間の攪拌を行った。その後、この溶液を遠心分離にかけて粉末状のサンプル(MCM−41)を溶液から回収し、真空オーブン内で、60℃で15時間、引き続き150℃で27時間の条件で乾燥させた。このようにして得られたサンプルをL1とした。
<参考>
また、比較のために、非特許文献3のGorjiらにより報告された文献値を参考のために用いた。以下、本明細書における文献値とは、非特許文献3に記載された値であることを意味する。
【0039】
[窒素吸着特性]
上記で用意したサンプルV1およびL1と、出発材料であるMCM−41とについて、窒素温度77Kにおいて窒素ガス分子(N
2)を指標としたガス吸着法により、窒素吸着特性の評価を行った。なお、試験は、高精度ガス/蒸気吸着量測定装置(日本ベル株式会社製、BELSORP−max)により行い、吸着ガスとしては高純度N
2ガスを使用した。その結果、得られた窒素吸着等温線を
図1に示した。また、各サンプルの77Kにおける窒素分子の吸着量の測定結果と、その結果から算出した各サンプルの細孔容積(自由体積)とを表1に示した。なお、表1の吸着量については、標準状態に換算した吸着窒素の体積(cc(STP))を示している。
【0040】
図1に示されるように、MCM−41は、IUPAC分類によるIV型の吸着特性を示し、2〜50nmのメソポアの存在を示す結果が得られた。また、N
2吸着量も3つのサンプルの中で最も多い700cc/gという結果であった。これに対し、従来法によりAPTSを導入したサンプルL1は、高圧領域のメソ孔でのN
2吸着量が350cc/gと著しく減少し、II型に近い吸着特性を示す結果となった。すなわち、サンプルL1は、MCM−41のメソ孔がほぼ消失したことを示唆する結果となった。また、サンプルV1については、高圧領域でごく僅かなN
2吸着が確認できる程度で、N
2吸着量は0cc/gと、窒素分子に対する吸着性が殆どないことがわかった。すなわち、サンプルV1は、MCM−41の吸着に寄与するメソ孔およびマクロ孔のいずれもがほぼ消失したことを示す結果となった。
【0042】
さらに、サンプルV1およびL1と、出発材料であるMCM−41とについて、比表面積を吸着等温線に基づきBET法で算出し、非特許文献3の文献値との比較を行った。その結果を表2に示した。なお、表2には、出発材料であるMCM−41の比表面積を基材比表面積とし、サンプルV1およびL1の比表面積をAPTS導入後比表面積として示した。
また、参考のため、表2に文献値を併せて示した。文献値の基材比表面積とは、非特許文献3の表1に示される細孔径を拡張させたMCM−41(PE−MCM−41)の比表面積であり、APTS導入後比表面積の欄には、このPE−MCM−41に55質量%ポリエチレンイミン(PEI)を含浸させたもの(PE−MCM−41(55))の比表面積値を示した。
表2に示されるように、本発明の手法によりMCM−41にAPTSを導入すると、比表面積が著しく減少することが確認された。このことから、サンプルV1の吸着等温線に示されるように、本発明の方法によるとMCM−41のメソ孔を消失させるように、細孔の奥深くにまでAPTSが充填されることが予想される。本発明の方法による比表面積の低減割合は、従来法に比較して10倍、近年の高レベルなジャーナルに発表された文献値に比較しても約6倍という、高い割合であった。
【0044】
[熱重量分析]
上記で用意したサンプルV1およびL1と、出発材料であるMCM−41とについて、空気雰囲気中で、昇温速度を5℃/分とし、600℃まで加熱する条件により、熱重量分析を行った。サンプルL1については、加熱前のサンプルの質量を基準として、0.28g/gの減量が確認された。一方のサンプルV1については、0.27g/gであった。すなわち、サンプルV1およびL1には、かかる減量に相当するAPTSが導入されており、その量はほぼ同量であることが確認できた。そして、上記の通りサンプルV1はメソ孔がほぼ消失されていることから、サンプルV1に導入されたAPTSは基材の表面近傍(すなわち、主としてマクロ孔部分)ではなく、細孔(メソ孔)内部にまで入り込んでいることが推察された。
また、表1に示されるように、基材であるMCM−41の細孔容積が約0.98cc/gであることから、この実施形態で得られたサンプルV1の場合は、細孔容積の約25%程度がAPTSで充填されたと見積もることができた。
【0045】
[二酸化炭素吸着特性1]
上記で得られたサンプルV1およびL1について、二酸化炭素(CO
2)を指標としたガス吸着法により、CO
2吸着特性の評価を行った。試験は、150℃で脱気したサンプルに対し、50℃と100℃との2通りの条件で行った。なお、試験は、高精度ガス/蒸気ガス吸着量測定装置(日本ベル株式会社製、BELSORP−max)により行い、吸着ガスとしては高純度CO
2ガスを使用した。その結果得られたCO
2吸着等温線のうち、100℃で試験したものを
図2に示した。
また、
図2の吸着等温線から各サンプルのCO
2吸着量を算出して下記の表3に示した。なお、CO
2吸着量は、CO
2のモル体積と分子量とを用い、サンプルのcc(STP)/gからmg/gに換算した値を示した。
【0047】
表3に示されるように、50℃において、サンプルV1はサンプルL1に比べて約1.2倍のCO
2吸着能を示すものの、
図2および表3に示されるように、100℃においては約3倍もの高いCO
2吸着能を示すことが確認された。
【0048】
[二酸化炭素吸着特性2]
上記で得られたサンプルV1について、25℃、50℃および100℃の3通りの温度条件で、二酸化炭素(CO
2)を指標としたガス吸着法により、CO
2吸着特性の評価を行った。その結果から得たCO
2吸着等温線を基に、CO
2吸着量を算出した。その結果を、下記表4に示した。なお、表4には、参考のため文献値も示した。
【0050】
なお、表4に示したCO
2吸着量は、まず、等温吸着線からサンプルV1の単位質量当たりのCO
2吸着体積(cc(STO)/g)を算出し、これをCO
2のモル体積およびモル分子量を用いてCO
2吸着質量(mg/g)へと換算し、次いで、上記の熱重量分析の結果から150℃以上の範囲の減量に基づき算出された導入アミン質量で除すことにより、サンプルV1に含有されるアミン化合物の単位質量当たりのCO
2吸着量(mg/g−アミン)へと換算したものである。
また、PE−MCM−41(55)についてのアミン化合物の単位質量当たりのCO
2吸着量は、非特許文献3に示されるデータから約0.53(mg/g−アミン)であると概算される。これは、一般的なMCM−41が上記表1に示されるように0.98cc/gの細孔容積(自由体積)を有するのに対して、PE−MCM−41が2.44cc/gの細孔容積を有していることから、見積もった値である。
本発明により得られたサンプルV1は、25℃および50℃でのアミン化合物の単位質量当たりのCO
2吸着量が文献値に比べて約2倍と高く、非常に優れたCO
2吸着能を有していることが確認された。また、かかるCO
2吸着能は、100℃の高温においても文献値に比べて明らかに高いことがわかった。
【0051】
上記に示されるように、サンプルV1とL1とにおけるAPTS導入量はほぼ同等であるにもかかわらず、CO
2の吸着能には大きな差が見られることが確認された。またサンプルV1のCO
2の吸着能は、常温から100℃の高温に至るまで、公知の文献値と比較しても非常に優れたものである。ここに開示されるアミノ化合物担持多孔質材のかかる特異なCO
2吸着能は、基材であるMCM−41に導入されたアミノ化合物が細孔の表面近傍ではなく、細孔の奥深くにまで含浸されていることが推察される。
このことから、本発明により得られたサンプルV1等をCO
2吸着材として用いることで、常温近傍ではもちろんのこと、約100℃近傍迄もの広い範囲で、高効率なCO
2の回収等を行うことが可能なことが示された。
【0052】
<実施例2>
アミノ化合物としてモノエタノールアミン(シグマアルドリッチ社製、製品番号398136,Monoethanolamine:MEA,C
2H
7NO,以下、MEAと表記する。)を用いた。このMEAのメーカー公表による物性は、平均分子量61.08g/mol、13hPaでの沸点69〜70℃、蒸気圧は約0.3hPa(20℃)、25℃における蒸気密度2.11g/mlである。そして、上記の実施例1の例1と同様の手法で、かかるアミノ化合物をMCM−41に導入(グラウト)した。ただし、オートクレーブ内の温度は20℃とし、蒸気圧は約30Paとした。また、オートクレーブ内での保持時間(導入時間)は100分とした。その他の条件は上記例1と同様とした。このようにして得られたサンプルをV2とした。
【0053】
また、比較のために、上記の実施例1の例2と同様の手法(溶液含浸法)で、MEAをMCM−41に導入(グラウト)した。ただし、トルエンとメタノールの等モル混合物からなる溶媒を用いてMEAを溶解させることで含浸溶液を調製し、その他の条件は上記例2と同様とした。このようにして得られたサンプルをL2とした。
【0054】
<実施例3>
アミノ化合物としてポリエチレンイミン(シグマアルドリッチ社製、製品番号181978,Polyethyleneimine:PEI,以下、PEIと表記する。)を用いた。このPEIのメーカー公表による物性は、平均分子量Mw〜75万、蒸気圧は約9mmHg(20℃)である。そして、上記の実施例1の例1と同様の手法で、かかるアミノ化合物をMCM−41に導入(グラウト)した。ただし、オートクレーブ内の温度は20℃とし、蒸気圧は約1.2kPaとした。また、オートクレーブ内での保持時間(導入時間)は10分とした。その他の条件は上記例1と同様とした。このようにして得られたサンプルをV3とした。
また、比較のために、上記の実施例1の例2と同様の手法(溶液含浸法)および条件で、PEIをMCM−41に導入(グラウト)した。このようにして得られたサンプルをL3とした。
【0055】
上記で用意したサンプルV2,V3,L2およびL3に対し、上記実施例1と同様に、CO
2吸着特性の評価を行った。なお、CO
2吸着試験は、150℃で脱気した各サンプルに対し、50℃の条件で高精度ガス/蒸気ガス吸着量測定装置(日本ベル株式会社製、BELSORP−max)を用いて行った。その結果、得られたCO
2吸着等温線から各サンプルのCO
2吸着量を算出して下記の表5に示した。なお、CO
2吸着量は、CO
2のモル体積と分子量とを用い、サンプルのcc(STP)/gからmg/gに換算した値を示した。
【0057】
表5に示されるように、いずれのアミノ化合物も、ここに開示される方法によってメソ孔を有する多孔質基材に導入(グラウト)することができることが確認された。すなわち、いずれのアミノ化合物についてもアミノ化合物担持多孔質材を製造し得ることが示された。また、ここに開示される方法によると、例えば、公知の溶液含浸法と比較して、CO
2吸着能に優れたアミノ化合物担持多孔質材を製造することができることが確認できた。これらのことから、この製造方法によって製造されるアミノ化合物担持多孔質材は、例えば、CO
2吸着材として有用である。
以上、本発明を好適な実施形態により説明してきたが、こうした記述は限定事項ではなく、種々の改変が可能であることは勿論である。