特許第6014582号(P6014582)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6014582
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月25日
(54)【発明の名称】微生物検出用センサーの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/34 20060101AFI20161011BHJP
   G01N 33/483 20060101ALI20161011BHJP
   G01N 33/569 20060101ALI20161011BHJP
【FI】
   C12M1/34 B
   G01N33/483 F
   G01N33/569 B
【請求項の数】4
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-503547(P2013-503547)
(86)(22)【出願日】2012年3月6日
(86)【国際出願番号】JP2012055611
(87)【国際公開番号】WO2012121229
(87)【国際公開日】20120913
【審査請求日】2014年10月30日
(31)【優先権主張番号】特願2011-50416(P2011-50416)
(32)【優先日】2011年3月8日
(33)【優先権主張国】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】505127721
【氏名又は名称】公立大学法人大阪府立大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】床波 志保
(72)【発明者】
【氏名】椎木 弘
(72)【発明者】
【氏名】長岡 勉
(72)【発明者】
【氏名】池水 麦平
(72)【発明者】
【氏名】高橋 茉里
【審査官】 鈴木 崇之
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2004/0126814(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0012446(US,A1)
【文献】 特開2009−058232(JP,A)
【文献】 特表2003−524417(JP,A)
【文献】 日本分析化学会年会講演要旨集,2010年 9月,Vol.59th,P.358
【文献】 分析化学討論会講演要旨集,2010年 5月,Vol.71st,P.57
【文献】 フローインジェクション分析講演会講演要旨集,2009年,Vol.48th,P.45-46
【文献】 J. Flow Injection Anal.,2008年,Vol.25, No.1,P.77-79
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/34
G01N 33/483
G01N 33/569
G01N 33/543
CAplus/MEDLINE/BIOSIS/WPIDS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
DWPI(Thomson Innovation)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出用電極と、前記検出用電極上に配置され、微生物の立体構造に相補的な三次元構造の鋳型を備えたポリマー層とを有する検出部を備えた微生物を検出するセンサーの製造方法であって、
検出対象とする微生物の存在下でモノマーを重合して前記微生物を取り込んだ状態の前記ポリマー層を前記検出用電極上に形成する重合工程、
前記ポリマー層に取り込まれた微生物を部分的に破壊する破壊工程、および
前記ポリマー層を過酸化処理して前記ポリマー層から前記微生物を放出する工程、を有する製造方法。
【請求項2】
前記センサーは対電極をさらに備え、
前記重合工程は、前記モノマーの溶液の接触下にある前記検出用電極と前記対電極との間に電圧を印加して、前記モノマーを電解重合する、請求項に記載の製造方法。
【請求項3】
前記過酸化工程は、中性からアルカリ性の範囲内の溶液の接触下にある前記検出用電極と前記対電極との間に電圧を印加して、前記ポリマー層を過酸化処理する、請求項に記載の製造方法。
【請求項4】
前記検出用電極の前記ポリマー層の形成面に粗面化処理を行なう粗面化工程を有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微生物を検出するためのセンサー、およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、医療産業、食品産業、農業、畜産、養殖、水処理施設などにおいて、微生物検出への関心が高まっている。食品,医薬品,農薬などに存在する汚染微生物は、微量であるにもかかわらず、人の健康に大きく影響しうる。また、病院、老人介護施設における微生物汚染が社会問題化している。さらに、多様な抗菌商品の流通、需要の高まりに見られるように、一般家庭における衛生管理にも関心が高まっている。たとえば、食品加工工場の場合、出荷される食品の抜き取りでの細菌検査や工場内の環境中の細菌検査を実施しているが、培養法による測定の場合、結果が得られるまでに24〜48時間程度要し、出荷するまでの保管コストが高くなる要因となるため、迅速な検出方法が求められている。また、農業分野においても、たとえば水耕栽培の培養液中の細菌数が増加すると発病のリスクが高まる。細菌数を早く把握することで素早く殺菌などの措置が取れるため、迅速な検出方法は有効である。
【0003】
このような状況から、微生物汚染を簡単に検出できる技術の必要性が近年急速に高まっている。また、医療現場においては、感染症の原因の病原菌を速やかに特定する必要があることから、病原菌を迅速かつ高感度で検出できる技術が求められている。微生物の検出・特定方法としては、たとえば、ELISA法、ウェスタンブロッティング法などの方法が存在する。これらは、たとえば、抗体(一次抗体)と、微生物固有のタンパク質とを抗原−抗体反応させた後、さらに標識した二次抗体を抗体(一次抗体)と反応させ二次抗体の化学発光やATPの加水分解反応のモニターにより検出を行なう方法である。
【0004】
また、特許文献1には、分子鋳型を備えたポリマーの電気化学的性質を利用して、微生物由来のアニオン分子(ATP、アミノ酸など)を検出する方法について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−58232号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述の方法はいずれも微生物そのものを検出する方法ではない。また、ELISA法などでは、微生物固有のタンパク質等に対する抗体を作製する必要があり容易ではない。
【0007】
本発明は、迅速かつ簡便で、高感度に微生物を検出できる新規な微生物検出用センサー、およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、検出用電極と、検出用電極上に配置され、検出対象の微生物の立体構造に相補的な三次元構造の鋳型を備えたポリマー層とを有する検出部を備え、当該鋳型への微生物の捕捉状態に基づいて微生物を検出するセンサーである。上記ポリマー層は、検出対象とする微生物の存在下でモノマーを重合して微生物を取り込んだ状態のポリマー層を検出用電極上に形成する重合工程、ポリマー層に取り込まれた微生物を部分的に破壊する破壊工程、およびポリマー層を過酸化処理してポリマー層から微生物を放出する過酸化工程を有する製造方法により形成される。
【0009】
上記センサーの好ましい形態は、対電極をさらに備え、検出部と対電極とを試料溶液に接触させた状態で、検出部の検出用電極と対電極間に交流電圧を印加し、誘電泳動により試料溶液中の微生物を検出部の方向に導くように構成されている。交流電圧の印加時間は、試料溶液中の微生物が検出部の方向に導かれるようであれば、特に限定はない。
【0010】
上記センサーの好ましい形態は、検出部の検出用電極を一方の電極とする水晶振動子をさらに備え、水晶振動子の共振周波数の変化からポリマー層の質量の変化を測定して微生物の捕捉状態を検出する。
【0011】
上記センサーにおいて、上記モノマーは、好ましくは、ピロール、アニリン、チオフェンおよびそれらの誘導体からなる群から選択される。
【0012】
上記センサーにおいて、上記検出用電極の上記ポリマー層の形成面は、好ましくは粗面である。
【0013】
上記センサーにおいて、上記微生物として、全体または表面の電荷が負電荷過剰の状態にある微生物が好ましい。たとえば、上記微生物は細菌であり、この場合、上記破壊工程は溶菌処理を行なう工程である。上記細菌として、たとえば、緑膿菌、アシネトバクター、大腸菌が例示される。
【0014】
また、本発明は、検出用電極と、検出用電極上に配置され、微生物の立体構造に相補的な三次元構造の鋳型を備えたポリマー層とを有する検出部を備えた微生物を検出するセンサーの製造方法であって、検出対象とする微生物の存在下でモノマーを重合して微生物を取り込んだ状態のポリマー層を検出用電極上に形成する重合工程、ポリマー層に取り込まれた微生物を部分的に破壊する破壊工程、およびポリマー層を過酸化処理してポリマー層から微生物を放出する工程、を有する製造方法である。
【0015】
上記製造方法の好ましい形態において、上記センサーは対電極をさらに備え、上記重合工程は、上記モノマーの溶液の接触下にある上記検出用電極と上記対電極との間に電圧を印加して、上記モノマーを電解重合する工程である。
【0016】
上記製造方法の好ましい形態において、上記過酸化工程は、中性からアルカリ性の範囲内の溶液の接触下にある上記検出用電極と上記対電極との間に電圧を印加して、上記ポリマー層を過酸化処理する工程である。
【0017】
上記製造方法の好ましい形態は、上記検出用電極のポリマー層の形成面に粗面化処理を行なう粗面化工程を有する。
【発明の効果】
【0018】
本発明のセンサーによると、迅速かつ簡便で、高感度に微生物を検出することが可能である。また、本発明のセンサーの製造方法によると、迅速かつ簡便で、高感度に微生物を検出することができるセンサーが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明にかかるセンサーのポリマー層の好ましい作製工程を模式的に示し、(a)は重合工程前、(b)重合工程後、(c)は破壊工程後、(d)は過酸化工程後の断面図である。
図2】本発明のセンサーにおいて、鋳型へ標的微生物が捕捉される様子の概略を示す模式図であり、(a)は標的微生物である場合、(b)は標的微生物でない場合を示す図である。
図3】本発明にかかるQCMセンサーの概略構成を示す模式図である。
図4】緑膿菌の電子顕微鏡写真である。
図5】アシネトバクターの電子顕微鏡写真である。
図6】実施例1の重合工程後のポリピロール層表面の電子顕微鏡写真を示す図である。
図7】実施例1の重合工程における時間と電流の関係、および時間と水晶振動子の共振周波数の関係を示すグラフである。
図8】実施例1の時間と質量変化の関係を示すグラフである。
図9】実施例1の溶菌工程および過酸化工程後の過酸化ポリピロール層表面の電子顕微鏡写真である。
図10】実施例1から溶菌条件を変更させた場合の、溶菌工程および過酸化工程後の過酸化ポリピロール層表面の電子顕微鏡写真である。
図11】実施例1の過酸化工程における時間と電流の関係、および時間と水晶振動子の共振周波数の関係を示すグラフである。
図12】実施例1のセンサーを用いた微生物検出時の交流電圧印加時間と水晶振動子の共振周波数の関係を示すグラフである。
図13】実施例2の重合工程後のポリピロール層表面の電子顕微鏡写真を示す図である。
図14】実施例2の重合工程における時間と電流の関係、および時間と水晶振動子の共振周波数の関係を示すグラフである。
図15】実施例2の溶菌工程および過酸化工程後の過酸化ポリピロール層表面の電子顕微鏡写真である。
図16】実施例2の過酸化工程における時間と電流の関係、および時間と水晶振動子の共振周波数の関係を示すグラフである。
図17】実施例2のセンサーを用いた微生物検出時の交流電圧印加時間と水晶振動子の共振周波数の関係を示すグラフである。
図18】実施例3のセンサーを用いた微生物検出時の交流電圧印加時間と水晶振動子の共振周波数の関係を示すグラフである。
図19】実施例4のセンサーを用いた微生物検出時の交流電圧印加時間と水晶振動子の共振周波数の関係を示すグラフである。
図20】実施例5のセンサーに、緑膿菌を含む試料溶液を添加した検出実験における交流電圧印加時間と水晶振動子の共振周波数の関係を示すグラフである。
図21】実施例5のセンサーに、大腸菌を含む試料溶液を添加した検出実験における交流電圧印加時間と水晶振動子の共振周波数の関係を示すグラフである。
図22】実施例5のセンサーに、アシネトバクターを含む試料溶液を添加した検出実験における交流電圧印加時間と水晶振動子の共振周波数の関係を示すグラフである。
図23】実施例5のセンサーに、セラチア菌を含む試料溶液を添加した検出実験における交流電圧印加時間と水晶振動子の共振周波数の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明のセンサーは、検出用電極と、検出用電極上に配置され、微生物の立体構造に相補的な三次元構造の鋳型を備えたポリマー層とを有する検出部を備え、鋳型への微生物の捕捉状態に基づいて微生物を検出するものである。
【0021】
本発明のセンサーのポリマー層は、検出対象とする微生物(以下、「標的微生物」ともいう)の存在下でモノマーを重合して微生物を取り込んだ状態のポリマー層を検出用電極上に形成する重合工程と、ポリマー層に取り込まれた微生物を部分的に破壊する破壊工程と、ポリマー層を過酸化処理してポリマー層から微生物を放出する過酸化工程とを有する製造方法により形成される。
【0022】
以下、図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態を説明する。
[センサーにおけるポリマー層の作製]
図1は、本発明にかかるセンサーのポリマー層の好ましい作製工程を模式的に示す断面図である。図1では、モノマーとしてピロールを用いる場合の実施形態を示す。まず、図1(a)に示すように、検出用電極11に接触する環境下に、微生物13およびピロールを含む溶液12を準備する。重合工程(St1)では、検出用電極11を陽極とし、対電極(不図示)を陰極とする電気分解を行い、ピロールの酸化的重合反応により、検出用電極11上にポリピロール(図1(b)中「PPy」は、ポリピロールの略である)からなるポリマー層14を形成する。形成されたポリマー層14には、微生物13が取り込まれる。ピロールは、重合工程で検出用電極11に電子を放出するためにそれ自体は陽電荷を有し、この陽電荷を補償するために、全体または表面の電荷が負電荷過剰の状態にある微生物13がポリマー層14中に取り込まれると考えられる。
【0023】
次に、破壊工程(St2)において、図1(c)に示すように、ポリマー層14に取り込まれた微生物13の一部を破壊する破壊工程を行なう。破壊工程は、たとえば、分解酵素の添加、温度調整、超音波処理、オゾン処理、残留塩素の存在、バクテリオファージ処理により行なうことができる。破壊工程は、微生物13が細菌である場合は、リゾチームなどの分解酵素を用いた溶菌処理(以下、溶菌処理による破壊工程を「溶菌工程」ともいう)により行なうことができる。かかる破壊工程により、微生物13の形状が変化し、微生物13がポリマー層14から放出されやすくなる。
【0024】
その後、過酸化工程(St3)において、ポリマー層14を過酸化する。ポリマー層14を構成するポリピロールが過酸化されると過酸化ポリピロール(図1(d)中「Oppy」は、過酸化ポリピロールの略である)となり電気的に中性となるため、微生物13がポリマー層14から放出される。ポリマー層14中の微生物13が存在した領域は、微生物13の立体構造に相補的な三次元構造を有する鋳型15となる。この過酸化工程(St3)は、ポリマー層14の硬化をも引き起こし、微生物13の鋳型15を安定化させる。過酸化工程(St3)は、溶液12を中性からアルカリ性の範囲内に調製して、検出用電極11と対電極(不図示)間に電圧を印加することにより行なうことが好ましい。このように形成された鋳型15を備えたポリマー層14と、検出用電極11との積層体が、本発明のセンサーにおける検出部17を構成する。
【0025】
形成される鋳型の三次元構造は、過酸化反応の溶液組成、過酸化反応を引き起こすための電圧に依存して変動し得る。一般に、過酸化反応が徐々に進行するような条件下では、検出対象の微生物13により緊密な三次元構造を有する鋳型が形成される。
【0026】
検出対象の微生物13としては、全体または表面の電荷が負電荷過剰の状態にある微生物であれば特に限定されることはなく、大腸菌のEscherichia属、緑膿菌などのPseudomonas属、Acinetobacter calocoaceticusなどのAcinetobacter属を始め、Serratia属、Klebsiella属、Enterobacter属、Citrobacter属、Burkholderia属、Sphingomonas属、Chromobacterium属、Salmonella属、Vibrio属、Legionella属、Campylobacter属、Yersinia属、Proteus属、Neisseria属、Staphylococcus属、Streptococcus属、Enterococcus属、Clostridium属、Corynebacterium属、Listeria属、Bacillus属、Mycobacterium属、Chlamydia属、Rickettsia属、Haemophilus属の細菌が例示される。また、ウイルスとしては、A型肝炎ウィルス、アデノウィルス、ロタウィルス、ノロウィルスが、真菌としてはカンジダが、原虫としてはクリプトスポリジウムが例示される。微生物の全体または表面の電荷は、pHなどの溶液12の水質により変化する。たとえば、微生物の表面にはカルボキシル基、アミノ基、リン酸基などの種々の官能基があるが、それらの官能基を含む表面はpHが高くなると負に帯電する。そのため、鋳型を形成する際や測定する際に、負電荷過剰の状態にするために、たとえば、溶液12をアルカリ性にするなどしても良い。
【0027】
図1においては、モノマーとしてピロールを用い、ポリマー層としてポリピロール層を形成する場合について説明したが、ポリマー層の原料となるモノマーとしてはピロールに限定されることはなく、他には、アニリン、チオフェン、それらの誘導体等が例示される。
【0028】
検出用電極11の材料は特に限定されることはなく、金電極、金とクロムとの多層電極、金とチタンとの多層電極、銀電極、銀とクロムとの多層電極、銀とチタンとの多層電極、鉛電極、白金電極、カーボン電極等が例示される。検出用電極11のポリマー層14が形成される面には、粗面化処理が施されていることが好ましい。検出用電極11のポリマー層14が形成される面が粗面であることにより、ポリマー層14との密着性が向上し、また電極の表面積が拡大するという効果がある。たとえば、検出用電極11として金電極を用いた場合、金電極表面にプラズマエッチングを施し、その後金ナノ粒子を固定することにより粗面化処理する粗面化工程を行なうことができる。
【0029】
[鋳型への標的微生物の捕捉]
図2は、鋳型へ標的微生物が捕捉される様子の概略を示す模式図である。図2(a)は試料溶液中の微生物13aが標的微生物である場合を示し、図2(b)は試料溶液中の微生物13bが標的微生物でない場合を示す。図2(a),(b)に示すように、まず、ポリマー層14と検出用電極11とからなる検出部17と、対電極16とに接触する環境下に、試料溶液を準備する。そして、検出用電極11と対電極16間との間に交流電圧を印加し、誘電泳動により試料溶液中の微生物を検出部17の方向に移動させる。なお、微生物が誘電泳動により検出用電極11の方に向かって移動するように、対電極16の構成、印加電圧の調整、試料溶液の調製を行なう。微生物が検出用電極11の方向に移動すると、鋳型15の三次元構造と相補的な立体構造の微生物13aは鋳型15内に捕捉されるが(図2(a))、鋳型15と相補的でない微生物13bは鋳型15内に捕捉されない(図2(b))。また、微生物以外の、たとえば、泥、鉄さびといった濁質が水に含まれていた場合であっても、それらも鋳型15と三次元的形状、荷電状態等が異なり相補的でないため、捕捉されない。そのため、標的微生物と他の濁質の識別が可能である。微生物と他の濁質との分離は、誘電泳動によっても可能である(微生物を電極に集めるが他の濁質は集めないような条件で誘電泳動を行うことができる)が、誘電泳動で微生物と他の濁質を分離するためには、水の導電率などの水質の変化に応じて、周波数などの誘電泳動の条件を変える必要がある。本発明のセンサの場合、対象物の形状で識別できるため、水質の影響を受けにくい。
【0030】
[標的微生物の検出]
微生物13aが鋳型15内に捕捉されると、ポリマー層14および検出用電極11からなる積層体に、たとえば、質量変化、導電特性変化、電気容量変化、光反射率変化、温度変化等が生じる。本発明のセンサーにおいては、このような変化を検出して、微生物の鋳型15への捕捉状態を検出する。そして、捕捉状態に基づいて標的微生物の検出が可能となる。このような検出により、標的微生物の迅速かつ高感度の検出が達成され得る。質量変化の検出方法の具体例として、水晶振動子の共振周波数の変化を検出する検出方法が挙げられる。以下、本発明のセンサーの好ましい一例である、水晶振動子マイクロバランス(QCM)センサーについ説明する。
【0031】
(QCMセンサー)
図3は、QCMセンサーの概略構成を示す模式図である。QCMセンサー33は、溶液を保持するセル27と、セル27の底部に配置された水晶振動子32と、発振回路22と、周波数カウンタを有するコントローラ21とを備える。水晶振動子32は、図1に示した工程により作製された検出部17と、水晶片24と、対電極(第2対電極)23とが順に積層されてなる。QCMセンサー33は、さらに、試料溶液31内に浸漬される対電極(第1対電極)16と、参照電極30とを備え、検出部17の検出用電極11と対電極16とに接続された交流電源29を備える。
【0032】
まず、セル27内に試料溶液31を添加する。そして、交流電源29により検出用電極11と対電極16との間に交流電圧を印加することによって、試料溶液31内に含まれる微生物が誘電泳動により検出部17の方向に移動させる。これと同時に、発振回路22により検出用電極11と対電極23との間に交流電圧を印加し、水晶片24を振動させる。ポリマー層14の鋳型15に微生物が捕捉されると、検出部17の質量に変化が生じ、水晶片24の共振周波数が変化する。コントローラ21内の周波数カウンタは、発振回路22からの信号を受けて、共振周波数値を測定する。共振周波数値の変化から微生物の捕捉状態が検出される。
【0033】
図3に示すQCMセンサー33を用いて、検出用電極11表面の粗面化処理、および図1に示した工程にしたがって、検出用電極11上にポリマー層を形成することができる。これらの場合は、検出用電極11、水晶片24、対電極23がこの順で積層された水晶振動子をセル27の底部に配置し、交流電源29に代えて直流電源を接続して行なう。QCMセンサー33を用いたポリマー層の形成においては、ポリマー層形成時に併せて水晶振動子の共振周波数変化をモニターすることにより、ポリマー層の形成の進行状況を確認することができる。検出対象の微生物が複数種類存在する場合には、それぞれの本発明にかかる鋳型を個々に形成して、それらを組合せることにより、或いは単一の鋳型の中に複数の微生物に対応した鋳型が同時に形成されることにより、同時に複数種類の微生物を検出することも可能である。
【0034】
本発明のセンサーによると、たとえば、数分〜数10分で細菌を検出することも可能であり、培養法と比較してはるかに迅速に検出することができる。また、蛍光染色に必要な染色試薬や、ATPで菌数を測定するのに必要なATP抽出試薬などを使用せずに検出することができるため、浄水器、ウォーターサーバーあるいは自動製氷装置などの機器への組み込みや自動化が容易である。また、水質検査、食品検査での細菌検査ツールとして、浄水場や、飲料品・食品工場での利用が可能である。更に具体的には、貯水タンクや配管経路などの装置内の細菌を自動的に検知し、ユーザーに報知したり、自動的に殺菌・洗浄などの対策をしたりすることができる。また、浄水場での上水の配管ラインに装置として組み込んで配水される水の細菌を検知することも可能である。
【0035】
上述のセンサーにおけるポリマー層は、センサーの構成要素以外にも、微生物の立体構造に相補的な三次元構造の鋳型を有することを利用した微生物捕捉装置、微生物形状認識装置、微生物追跡装置、また、多孔質体であることを利用した触媒担体などに用いることも可能である。
【実施例】
【0036】
以下、本発明を実施例によって説明する。以下の実施例は、本発明を例示するものであって、本発明を制限するものではない。
【0037】
以下の実施例において、ポリマー層の作製は電気化学測定システム(Model842B、ALS社製)を用いて行ない、検出用電極には金電極(水晶振動子の一方の電極11に対応)、参照電極にはAg/AgCl(飽和KCl)、対電極(第1対電極)にはPt棒(直径1mm、長さ4cm、(株)ニラコ製)を用いた。下記において、電位はこの参照電極の電位に対する値を記載している。また、両方の面に金電極が設けられた水晶振動子(電極面積0.196cm、基本振動周波数9MHz、ATカット、角型、(株)セイコー・イージーアンドジー製)を用いた。
【0038】
実施例1,4では検出対象の微生物として、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa、ゼータ電位:−33.87mV)を用い、実施例2ではアシネトバクター(Acinetobactor calcoaceticus、ゼータ電位:−28.14mV)、実施例3では大腸菌(Escherichia coli)、実施例5では緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、大腸菌(Escherichia coli)、アシネトバクター(Acinetobactor calcoaceticus)、セラチア菌(Serratia marcescens)用いた。図4図5はそれぞれ緑膿菌、アシネトバクターの電子顕微鏡写真を示す。図4図5に示す顕微鏡写真から、緑膿菌の形状は俵形であり、アシネトバクターの形状はそれよりも球状に近い形状であることがわかる。
【0039】
[実施例1]
<センサーの作製>
(金電極の粗面化工程)
金電極の表面に、過酸化ポリピロール層との密着性向上のため以下の手順にしたがい水晶振動子積層体の金電極表面の粗面化処理を行なった。
1.プラズマエッチング装置(SEDE/meiwa fosis)により、金電極表面に30秒間エッチングを行なった。
2.水晶振動子を、図3に示すようなQCMセンサー33のセル27の底部に設置した。その後、30nmのクエン酸保護金ナノ粒子(0.0574wt%)を含んだ溶液500μLをセル27に添加し、室温で24時間放置した。
3.金電極を純水で洗浄後、臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム溶液(0.1M)9mL、四塩化金酸(0.01M)250μL、NaOH(0.1M)50μL、アスコルビン酸(0.1M)50μLを混合して出来た溶液(成長液)500μLをセル27に添加し、室温で24時間静置した。
4.セル27内の溶液を除去し、金電極を超純水で洗浄した。
【0040】
(微生物の鋳型を備えた過酸化ポリピロール層の作製)
以下の手順に従って金電極上に過酸化ポリピロール層を作製した。
1.緑膿菌、リン酸緩衝液(0.2M、pH2.56)を含む0.1Mのピロール水溶液を調製して修飾溶液とした。
2.上記で粗面化処理を施した金電極が配置されているQCMセンサー33のセル27内に、修飾溶液を添加し、修飾溶液内に第1対電極および参照電極を差し込んだ。
3.修飾溶液中において定電位電解(+0.975V、90秒間)することで金電極上にポリピロールを析出させ、ポリピロール層を作製した(重合工程)。重合工程においては、水晶振動子の共振周波数のモニターも行なった。
4.作製したポリピロール層にリゾチーム(10mg/mL)を滴下し、120分間振盪し、その後非イオン性界面活性剤(商品名:triton)の10%溶液を添加し、80分間振盪した(溶菌工程)。
5.超純水で数回のポリピロール層の洗浄を行った後、セル27内に0.1MのNaOH溶液を添加し、定電位+975mVを120秒間印加して過酸化処理を施し過酸化ポリピロール層を得た(過酸化工程)。過酸化工程においては、水晶振動子の共振周波数のモニターも行なった。
【0041】
(結果)
図6は、重合工程後のポリピロール層表面の電子顕微鏡写真を示す。ポリピロール層の表面に緑膿菌が取り込まれた様子が観察された。図7は、重合工程における時間と電流の関係、および時間と水晶振動子の共振周波数の関係を示すグラフである。定電位電解開始時点の時間を0秒とする。また、図8は、図7に示した共振周波数の変化量から水晶振動子の質量変化量を算出し、時間と質量変化の関係を示すグラフである。これらのグラフから、電解時間に比例して水晶振動子表面の質量が増加し、90秒間で十分な質量変化、すなわち十分なポリピロール層の重合が達成されることがわかる。
【0042】
図9は、溶菌工程および過酸化工程後の過酸化ポリピロール層表面の電子顕微鏡写真を示す。過酸化ポリピロール層の表面に緑膿菌が観察されず、したがって過酸化ポリピロール層の表面から緑膿菌が放出されたことがわかる。図10は、上記実施例1とは、溶菌工程におけるリゾチームを滴下した後の振盪時間、および非イオン性界面活性剤を添加した後の振盪時間の条件を変更して作製した過酸化ポリピロール層表面の電子顕微鏡写真を示す。図10(a)は、リゾチームを滴下した後の振盪時間が30分で非イオン性界面活性剤を添加した後の振盪時間が20分とした場合、図10(b)は、リゾチームを滴下した後の振盪時間を60分、非イオン性界面活性剤を添加した後の振盪時間を40分とした場合、図10(c)はリゾチームを滴下した後の振盪時間が90分で非イオン性界面活性剤を添加した後の振盪時間が60分とした場合の電子顕微鏡写真を示す。図10(a)〜(c)から、これらの条件においては緑膿菌の放出が十分ではなく、したがって実施例1の溶菌工程の条件が好適な条件であることがわかる。
【0043】
図11は、過酸化工程における時間と電流の関係、および時間と水晶振動子の共振周波数の関係を示すグラフである。過酸化工程における定電位印加時点の時間を0秒とする。電流値は時間とともに低下し過酸化処理が進行していることがわかる。また、共振周波数は増加し、電極表面の質量が低下していることがわかる。これは、緑膿菌が放出されたことによるものであると理解される。
【0044】
<微生物の検出>
(検出実験)
上述のようにして作製した、緑膿菌鋳型を有する過酸化ポリピロール層が表面に形成された水晶振動子をセルの底部に備えたQCMセンサーを用いて微生物の検出を行なった。セル内に微生物を含む試料溶液を添加した。その後、金電極と第1対電極間に交流電圧を印加し、誘電泳動により微生物を過酸化ポリピロール層の表面へ濃縮させた。波形発生装置(7075、日置電機(株)製)により、交流電圧(波形:正弦波、電圧:2Vpp、周波数:10MHz)を発生させた。さらに増幅器(HAS4101,(株)エヌエフ回路設計ブッロク製)で電圧を10倍に増幅し、20Vppとして印加した。また、電圧印加時の水晶振動子の共振周波数をモニタリングした。
【0045】
(結果)
図12は、交流電圧印加時間と水晶振動子の共振周波数の関係を示すグラフである。図12に示す結果から、緑膿菌を含む試料溶液を添加した検出実験では、共振周波数が大きく減少することが分かった。共振周波数の減少は水晶振動子表面の質量の増加を意味しており、緑膿菌に誘電泳動力が作用し過酸化ポリピロール層の鋳型に取り込まれることで水晶振動子表面の質量が増加したものと考えられる。一方、形状の異なるアシネトバクターに対してはブランクと同様にほとんど変化が見られなかった。よって、鋳型の形状とは異なるアシネトバクターは緑膿菌ほど容易に過酸化ポリピロール層に取り込まれていないと考えられ、センサーは細菌の種類を高精度に認識していると判断できる。
【0046】
[実施例2]
<センサーの作製>
実施例1の緑膿菌に代えて、アシネトバクターを用いた点以外は、実施例1と同様に金電極の粗面化工程を行ない、さらに上述の重合工程、溶菌工程、過酸化工程を行なった。
【0047】
(結果)
図13は、重合工程後のポリピロール層表面の電子顕微鏡写真を示す。ポリピロール層の表面にアシネトバクターが取り込まれた様子が観察された。図14は、重合工程における時間と電流の関係、および時間と水晶振動子の共振周波数の関係を示すグラフである。定電位電解開始時点の時間を0秒とする。このグラフから、電解時間に比例して水晶振動子表面の質量が増加したことがわかる。
【0048】
図15は、溶菌工程および過酸化工程後の過酸化ポリピロール層表面の電子顕微鏡写真を示す。過酸化ポリピロール層の表面にアシネトバクターが観察されず、したがって過酸化ポリピロール層の表面からアシネトバクターが放出されたことがわかる。
【0049】
図16は、過酸化工程における時間と電流の関係、および時間と水晶振動子の共振周波数の関係を示すグラフである。過酸化工程における定電位印加時点の時間を0秒とする。電流値は時間とともに低下し過酸化処理が進行していることがわかる。また、共振周波数は増加し、電極表面の質量が低下していることがわかる。これは、アシネトバクターが放出されたことによるものであると理解される。
【0050】
<微生物の検出>
(検出実験)
上述のようにして作製した、アシネトバクター鋳型を有する過酸化ポリピロール層が表面に形成された水晶振動子をセルの底部に備えたQCMセンサーを用いて微生物の検出を行なった。実験条件は、実施例1と同様とした。
【0051】
(結果)
図17は、交流電圧印加時間と水晶振動子の共振周波数の関係を示すグラフである。図17に示す結果から、アシネトバクターを含む試料溶液を添加した検出実験では、共振周波数が大きく減少することが分かった。共振周波数の減少は水晶振動子表面の質量の増加を意味しており、アシネトバクターに誘電泳動力が作用し過酸化ポリピロール層の鋳型に取り込まれることで水晶振動子表面の質量が増加したものと考えられる。一方、形状の異なる緑膿菌に対してはブランクと同様にほとんど変化が見られなかった。よって、鋳型の形状とは異なる緑膿菌はアシネトバクターほど容易に過酸化ポリピロール層に取り込まれていないと考えられ、センサーは細菌の種類を高精度に認識していると判断できる。
【0052】
[実施例3]
<センサーの作製>
実施例1の緑膿菌に代えて、大腸菌を用いた点以外は、実施例1と同様に金電極の粗面化工程を行ない、さらに上述の重合工程、溶菌工程、過酸化工程を行なった。
【0053】
<微生物の検出>
(検出実験)
上述のようにして作製した、大腸菌鋳型を有する過酸化ポリピロール層が表面に形成された水晶振動子をセルの底部に備えたQCMセンサーを用いて微生物の検出を行なった。測定サンプルとしては、緑膿菌・大腸菌・アシネトバクターのそれぞれの溶液を用いた。
【0054】
(結果)
図18は、交流電圧印加時間と水晶振動子の共振周波数の関係を示すグラフである。図18に示す結果から、大腸菌を含む試料溶液を添加した検出実験では、共振周波数が大きく減少することが分かった。共振周波数の減少は水晶振動子表面の質量の増加を意味しており、大腸菌に誘電泳動力が作用し過酸化ポリピロール層の鋳型に取り込まれることで水晶振動子表面の質量が増加したものと考えられる。一方、形状の異なる緑膿菌やアシネトバクターに対してはブランクと同様にほとんど変化が見られなかった。よって、鋳型の形状とは異なる緑膿菌やアシネトバクターは大腸菌ほど容易に過酸化ポリピロール層に取り込まれていないと考えられ、センサーは細菌の種類を高精度に認識していると判断できる。
【0055】
[実施例4]
<センサーの作製>
緑膿菌を用いて、実施例1と同様に金電極の粗面化工程を行ない、さらに上述の重合工程、溶菌工程、過酸化工程を行なった。
【0056】
<微生物の検出>
(検出実験)
上述のようにして作製した、緑膿菌鋳型を有する過酸化ポリピロール層が表面に形成された水晶振動子をセルの底部に備えたQCMセンサーを用いて微生物の検出を行なった。測定サンプルとしては、緑膿菌・大腸菌・アシネトバクター・セラチア菌の各溶液を混合した溶液(a)と、大腸菌・アシネトバクター・セラチア菌の各溶液を混合した溶液(b)の2種類を用いた。
【0057】
(結果)
図19は、交流電圧印加時間と水晶振動子の共振周波数の関係を示すグラフである。図19に示す結果から、緑膿菌を含む試料溶液を添加した検出実験では、共振周波数が大きく減少することが分かった。共振周波数の減少は水晶振動子表面の質量の増加を意味しており、緑膿菌に誘電泳動力が作用し過酸化ポリピロール層の鋳型に取り込まれることで水晶振動子表面の質量が増加したものと考えられる。一方、形状の異なる大腸菌やアシネトバクターやセラチア菌に対してはブランク(c)と同様にほとんど変化が見られなかった。よって、鋳型の形状とは異なる大腸菌やアシネトバクターやセラチア菌は緑膿菌ほど容易に過酸化ポリピロール層に取り込まれていないと考えられ、センサーは細菌の種類を高精度に認識していると判断できる。
【0058】
[実施例5]
<センサーの作製>
緑膿菌、大腸菌、アシネトバクター、及びセラチア菌の全てを含む修飾溶液を用いて、実施例1と同様に金電極の粗面化工程を行ない、さらに上述の重合工程、溶菌工程、過酸化工程を行なった。
【0059】
<微生物の検出>
(検出実験)
上述のようにして作製した、4種類の微生物を含む鋳型を有する過酸化ポリピロール層が表面に形成された水晶振動子をセルの底部に備えたQCMセンサーを用いて微生物の検出を行なった。測定サンプルとしては、緑膿菌、大腸菌、アシネトバクター、セラチア菌をそれぞれを含む4種類の溶液を用いた。
【0060】
(結果)
図20図23は、交流電圧印加時間と水晶振動子の共振周波数の関係を示すグラフである。図20図23は、緑膿菌、大腸菌、アシネトバクター、セラチア菌をそれぞれを含む試料溶液を添加した検出実験における結果を示し、いずれの試料溶液を添加した場合であっても共振周波数が大きく減少することが分かった。これより、複数種の微生物の鋳型を有するセンサーによって、複数種の微生物が検出されていると判断できる。
【符号の説明】
【0061】
11 検出用電極、12 溶液、13 微生物、14 ポリマー層、15 鋳型、16 対電極(第1対電極)、17 検出部、21 コントローラ、22 発振回路、23 対電極(第2対電極)、24 水晶片、27 セル、29 交流電源、30 参照電極、31 試料溶液、32 水晶振動子、33 QCMセンサー。
図1
図2
図3
図7
図8
図11
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図10
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