【文献】
Andrew M. Maiden , John M. Rodenburg,An improved ptychographical phase retrieval algorithm for diffractive imaging,Ultramicroscopy,2009年,Vol. 109 No. 10,pp. 1256-1262
【文献】
Manuel Guizar-Sicairos, James R. Fienup,Phase retrieval with Fourier-weighted projections,J. Opt. Soc. Am. A,2008年 1月,Vol. 25, No. 3,pp. 701-709
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記対象物の少なくともある領域の少なくとも一つの特性を示す物体関数と、前記対象物又は前記開口への入射放射の少なくとも一つの特性を示すプローブ関数と、の少なくとも一つを推定する工程と、
前記物体関数および前記プローブ関数に基づいて、前記少なくとも一つの検出器の平面での波面を推定する工程と、
を更に備える、
請求項1から6のいずれかに記載の方法。
前記拡張させる工程は、拡散器を前記放射と相互に影響し合うよう配置する工程を含み、それによって、前記少なくとも一つの検出器の開口を超えて散乱された放射を拡張する、
請求項16に記載の方法。
【発明の概要】
【0007】
本発明の態様によると、添付の請求の範囲に記載の方法及び装置を提供する。
【0008】
本発明の態様によると、対象物のある領域の画像を構築するための画像データを提供する方法が提供され、放射源から対象物に対して入射放射を提供する工程と、少なくとも一つの検出器によって、対象物によって散乱される放射の一部を検出する工程と、前記検出された放射に応じて反復処理により画像データを提供する工程と、を備える方法であり、前記反復処理は、前記検出器の平面での散乱された放射の波面を推定する工程と、検出された放射に基づいて波面の一部を更新する工程と、推定された波面の一部を実質的に変化させないでおく工程と、対象物によって散乱され、検出器によって検出されない放射の一部に対応する、波面の一部を一つ以上の値に設定し、更新された波面に基づいて画像データを提供する工程と、を備える。
【0009】
前記検出工程は任意で、第一及び第二の位置における前記入射放射又は開口を使用して、前記対象物によって散乱される放射の一部を検出する工程を備える。前記開口又は入射放射の更なる位置が利用されてもよい。
【0010】
実質的に変化されない推定された波面の部分は、必要に応じて、一つ以上の値に設定される波面の部分よりも相対的に大きくしてもよい。相対的に大きいとは、少なくとも同じ大きさか、幾つかの実施態様において、所定倍数より大きい。所定倍数とは、少なくとも2倍の大きさか、少なくとも4倍の大きさである。即ち、一つ以上の値に設定される推定された波面のエリアは、更新されるエリアの50%、25%、10%、5%又は1%未満であってもよい。
【0011】
検出された放射に基づいて更新される部分は、波面全体のおよそ5〜15%であってもよい。実質的に変化されない推定された波面の部分は、波面全体のおよそ85〜95%であってもよい。一つ以上の値に設定される波面の部分は、波面全体のおよそ5〜0.5%であってもよい。一例として、更新される領域は、波面全体の6%であってもよく、変化させないでおく領域は、93%であってもよく、一つ以上の値に設定される領域は、およそ1%であってもよいが、当然ながら他の値を選択してもよい。
【0012】
一つ以上の値は、所定の値、又は一つ以上の関数により決定される値を含んでもよい。
【0013】
対象物によって散乱され、かつ、検出器によって検出されない放射の一部に対応する、前記波面の一部は、前記波面の少なくとも一部の周辺領域であってもよい。周辺領域は、波面に複数の画素を拡張する。複数の画素とは、1、2、8又は16画素であってもよい。複数とは、16画素未満である。
【0014】
本発明の別の態様によると、対象物のある領域の画像を構築するための画像データを提供する方法が提供され、対象物に放射源から入射放射を提供する工程と、少なくとも一つの検出器によって、第一及び第二の位置における入射放射又は目標後方の開口を使用して、対象物によって散乱される放射の一部を検出する工程と、検出された放射に応じて反復処理により画像データを提供する工程と、を備える方法であり、前記反復処理において、画像データは、対象物によって散乱され、かつ、検出器によって検出されない放射の一部に対応して提供される。
【0015】
必要に応じて、その方法は、対象物に対して第一の位置における入射放射又は目標後方の開口を使用して、対象物によって散乱される放射の強度を検出する工程と、対象物に対して少なくとも一つのより遠い位置に、前記入射放射又は目標後方の開口を再配置する工程と、その後、その少なくとも一つのより遠い位置における入射放射又は目標後方の開口を使用して、対象物によって散乱される放射の強度を検出する工程と、を備えてもよい。
【0016】
必要に応じて、その方法は、対象物の領域の少なくとも一つの特性を示す物体関数を推定し、及び/又は対象物又は目標後方の開口での入射放射の少なくとも一つの特性を示すプローブ関数を推定する工程と、物体関数及び/又はプローブ関数のそれぞれを繰り返し再推定する工程と、を備えてもよい。
【0017】
必要に応じて、その方法は、推定した物体関数と推定したプローブ関数とを掛け合わせることによって、出射波動関数を提供する工程と、出射波動関数を伝播させて、期待散乱パターンの推定値を提供する工程と、対象物によって散乱されたる放射の検出された強度により、前記期待散乱パターンの少なくとも一つの特性を修正する工程と、を備えてもよい。
【0018】
必要に応じて、その方法は、修正した期待散乱パターンを逆伝播させることによって、更新された出射波動関数を提供する工程を備えてもよい。
【0019】
必要に応じて、その方法は、推定されたプローブ関数を伝播させて、検出器の測定平面内の推定散乱パターンを提供する工程を備え、伝播オペレータΤが、物体の平面と測定平面との間の伝播を適切にシミュレーションする。Τは、フーリエ変換又はフレネル変換であってもよい。
【0020】
必要に応じて、その方法は、プローブ関数の動的推定値及び/又は物体関数の動的推定値を各反復と同時に更新する工程を備えてもよい。
【0021】
必要に応じて、その方法は、事前にシミュレーションしたプローブ関数として、プローブ関数の初期推定値を提供する工程を更に備えてもよい。プローブ関数の初期推定値は、プローブ関数のランダムな近似により提供されてもよい。
【0022】
必要に応じて、対象物は、少なくとも部分的に入射放射に透明であり、前記対象物によって散乱された放射の強度を検出する工程は、対象物によって伝達された放射の強度を検出する工程を備えてもよい。
【0023】
必要に応じて、前記対象物は、少なくとも部分的に入射放射に反射してもよく、対象物によって散乱される放射の強度を検出する工程は、対象物によって反射された放射の強度を検出する工程を備えてもよい。
【0024】
本発明の更に別の態様によると、対象物のある領域の画像を構築するための画像データを提供する装置が提供され、前記対象物によって散乱される放射の強度を検出する少なくとも一つの検出器と、前記検出された放射物体に応じて、第一及び第二の位置での入射放射又は開口を使用して、反復処理により画像データを提供するよう配置される処理手段と、を備え、そこで、前記反復処理において、画像データは、対象物によって散乱され、かつ、検出器によって検出されない放射の一部に対応して提供される。
【0025】
本発明の更に別の態様によると、コンピュータプログラムが提供され、コンピュータによって実行されたとき、このコンピュータプログラムは、対象物のある領域の画像を構築するための画像データを提供する方法を実行し、その方法は、対象物に放射源から入射放射を提供する工程と、少なくとも一つの検出器によって、第一及び第二の位置での前記入射放射又は開口を使用して、前記対象物によって散乱される放射の一部を検出する工程と、検出された放射に応じた反復処理により画像データを提供する工程と、を備え、前記反復処理において、対象物によって散乱され、かつ、検出器によって検出されない放射の一部に対応して、画像データが提供される。このコンピュータプログラムは、コンピュータ可読媒体に保存される。
【0026】
本発明の更に別の態様によると、コンピュータプログラムが提供され、コンピュータによって実行されたとき、このコンピュータプログラムは、本発明の態様に係る、対象物のある領域の画像を構築するための画像データを提供する方法を実行する。
【0027】
本発明の実施形態によれば、解像度が向上した画像データが提供される。本発明の幾つかの実施形態によれば、画像データを決定する方法の収束率が向上する。本発明の幾つかの実施形態によれば、画像データに存在するノイズが減少する。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1は、本発明の実施形態に係る装置100を示す図である。本装置は、物体の少なくともある領域の画像を生成するために使用され得る、物体の画像データを提供するのに好適であるが、これに限定されない。
【0030】
装置100は、拡散器10、開口20、一対のレンズ30a、30b、及び入射放射を検出するための放射検出器50を備える。
【0031】
放射源は、
図1には示していないが、拡散器10に当たって最終的には対象物40のある領域を照らす放射60の源である。放射という用語は、広く解釈すべきであることを理解されたい。放射という用語は、各種の波面を含む。放射には、放射源からのエネルギーが含まれる。これには、X線、電子などの放射粒子を含む電磁放射が含まれる。他の種類の放射として、音波等の音響放射が含まれる。このような放射は、波動関数Ψ(r)によって表すことができる。この波動関数は、当業者には明らかなように、実部と虚部を含む。これは、波動関数の絶対値(modulus)と位相とによって表すことができる。Ψ(r)*は、Ψ(r)の複素共役であって、Ψ(r)Ψ(r)*=|Ψ(r)|
2であり、ここで、|Ψ(r)|
2が波動関数に関して測定される強度である。
【0032】
拡散器10は、ある範囲の位相勾配を放射60に導入するため、即ち、放射の位相を無作為にするために設けられる。拡散器10は、多くの材料から形成可能である。幾つかの実施形態では、拡散器10が、一以上の層のプラスチック膜によって形成される。単層のプラスチック膜は、弱い拡散器として使用可能である一方、二層以上はより強い拡散器を形成するよう使用可能である。以下に述べるように、拡散器10は、検出器50の範囲を超えて回折パターンを拡大させるのに役立つ。従って、対象物40と検出器50と間の距離zは、拡散器10の強度に応じたものとすればよい。例えば、弱い拡散器の場合には、z=86mmの距離を利用し、一方、より強い拡散器の場合には、z=94.4mmの距離を利用すればよいが、当然のことながら、これらは単なる例示的な距離である。
図1を参照して説明される実施形態において、拡散器10は、プローブ20の手前、即ち、プローブより先に照らされるように配置される。ただし、拡散器10を別の代替的な位置に配置してもよく、例えば、後続の、即ちプローブ20の下流であって、プローブ20のすぐ近隣又は更に下流等に配置してもよい。
【0033】
装置100に拡散器10を含めることにより、結果として得られる回折パターンのダイナミックレンジが減少することにもなる。大半の検出器のダイナミックレンジは限定されているので、回折パターンのダイナミックレンジが減少することにより、決定される回折パターンについてのより忠実な表現が可能となる。更に、試料40に入射する放射が全ての回折角に対して、より均等に広がると、画像データを提供する際に必要な入射束を減少でき、これにより対象物40に損傷を与える可能性を減少させることができる。
【0034】
任意の伝達関数を有する任意の種類の拡散器10を使用可能である。当業者には明らかなように、拡散器は、使用される放射の特性及び所望の拡散効果に応じて選択する。例えば、可視光の場合には、拡散器は、すりガラスを備えてもよい。
【0035】
当然ながら、拡散器10を含まない本発明の実施形態も想定可能である。
【0036】
図1に示した実施形態において、一対のレンズ30a、30bと開口20とが、対象物40のある領域を照らすよう配置されるプローブを形成する。
図1に示したレンズ30a、30bは、4f構造に配置される。当然のことながら、本発明の実施形態は、一対のレンズ30a、30bを含まず、たった一つのレンズを含むか、又は別の配置の一つ以上のレンズを含むものを想定することもできる。
【0037】
対象物40に入射する照明光は、照明関数を形成するプローブ関数P(r)を表す。P(r)は、物体40の平面で計算されるこのような波動場の複素定常値(complex stationary value)である。
【0038】
当然のことながら、目標40上で弱収束(又は実際には強収束)の照明ではなく、非収束の放射を、目標後方の開口と共に使用可能である。本実施形態において、開口は対象物の後方に配置されているため、これにより調査する目標のある領域が選択される。開口は、「サポート」を画定するようマスク内に形成される。サポートとは、ある関数のゼロではないエリアのことである。言い換えれば、サポートの外部では、関数はゼロとなる。サポートの外側では、マスクは、放射の透過を阻止する。開口という用語は、放射の局所的な透過関数を説明している。このことは、0と1との間の絶対値を有する二次元の複素変数によって表される。一例として、透過率が変化する物理的な開口領域を有するマスクが挙げられる。
【0039】
従って、入射放射は、対象物40の上流側に当たり、そして、伝達されるにつれて対象物40によって散乱される。対象物40は、入射放射に対して少なくとも部分的に透明であるべきである。対象物40は、何らかの繰り返し構造を有していても有していなくてもよい。或いは、散乱パターンが反射された放射に基づいて計測される場合には、対象物40は、全体的又は部分的に反射性のものであってもよい。
【0040】
従って、物体40との相互作用の後の放射の出射波動関数として波が形成される。O(r)は、二次元の複素物体/試料関数を表しており、O(r)内の各点が複素数と関連しており、rは二次元座標を示す。O(r)は、平面波によって照らされた物体から発する出射波を物理的に表すものと仮定する。例えば、電子散乱の場合、O(r)は、対象となる物体を通過した結果として入射波に導入される位相及び振幅の変化を表すことになる。開口20は、分析する物体の出射波動関数の一部を選択するプローブ関数P(r)(又は透過関数)を提供する。当然のことながら、開口を選択するのではなく、透過回折格子やその他のこのようなフィルタ関数を物体関数の下流側に配置してもよい。プローブ関数P(r−R)は、照明波又は開口が位置Rにある場合の照明波又は開口透過関数である。プローブ関数は、プローブによってそれに入射する完全平面波に導入された絶対値及び位相の変化を表す絶対値及び位相によって与えられる複素数を備えた複素関数として表せる。更に当然のことながら、プローブ、試料関数は共に、三次元の複素関数、P(s)及びO(s)であってもよく、P(s)及びO(s)での各点が複素数と関連しており、sは三次元座標を示す。
【0041】
出射波動関数
ψ(r,R)は、物体40を出射する際の放射の出射波動関数である。この出射波
ψ(r,R)は、回折面において回折パターン
Ψ(u)を形成する。ここで、rは、実空間でのベクトル座標であり、uは、回折空間でのベクトル座標である。
【0042】
当然ながら、散乱放射が検出される回折面が試料40に近い方へと移動した場合には、フーリエ回折パターンではなくフレネル回折パターンが検出されるであろう。このような場合、出射波
ψ(r,R)から回折パターン
Ψ(u)への伝播関数は、フーリエ変換ではなくフレネル変換となる。更に当然ながら、この出射波
ψ(r,R)から回折パターン
Ψ(u)への伝播関数を、別の変換を用いてシミュレーションしてもよい。
【0043】
光を照射する又はプローブする対象の対象物40の領域を選択するため、開口20及びレンズ30a,30bは、物体40に対するプローブ関数の動きを可能にするx/y移動ステージ上に搭載しておく。しかし、当然のことながら、プローブ関数に対して物体40を移動させてもよい。プローブ関数は、格子状に配置された位置の中で移動ステージにより移動可能である。グリッドは、20×20の位置を備えるが、位置の数は他の数が使用されてもよく、更にx及びy方向でグリッドの位置の数が等しくなくてもよい。各グリッド位置の場所にランダムなオフセット量を導入してもよい。例えば、グリッド位置のピッチが30μmである場合には、オフセット量を±5μmとする。これにより、当業者には明らかなように、「ラスタグリッドパソロジー(raster grid pathology)」に関連する問題を回避するのに有利である。
【0044】
検出器50は、CCDカメラ等の好適な記録装置である。検出器50により、回折面内の回折パターンの検出が可能となる。検出器は、例えばCCDにおいて、アレイ状の検出素子を備えてもよい。
【0045】
本発明の実施形態において、
図1及び2に示すように、装置100は、回折面内の検出器50の開口を超えて散乱放射45が広がるように配置される。
図1には、検出器50を垂直方向に超えて散乱放射45が広がる様子が示されているが、
図2に示すように、放射は、検出器50を更に水平方向にも超えて、又は代わりに水平方向に超えて広がってもよい。当然のことながら、散乱放射の一部は、検出器50によって検出されない。
【0046】
図2は、回折面内の散乱放射45の広がり及び検出器50の開口を示す概略図である。
図2では、検出器50の開口を超えた散乱放射45の広がりを点線の矢印で示している。散乱放射45と検出器50とが正方形の断面を有するものとして図示されているが、これは単に例示の目的で示したものであり、円形、矩形、又は規則的ではない形状等のその他の断面を想定可能である。更に、検出器50の周辺を超えて放射が広がらない場合も考慮に入れる。例えば、検出器50に、放射の強度を記録しない中心領域を備えてもよい。これにより、検出器50は、散乱放射の一部に対応する回折パターンだけを記録する。散乱放射の一部の強度は、検出器50により記録されない。本発明の実施形態により、記録されない放射に対応して画像データが生成可能となる。
【0047】
図3は、本発明の実施形態に係る方法を示す図である。
図3に示した方法は、プローブ及び物体関数の推定値の両方を同時に、ステップごとに更新する工程を含む。ただし、当然ながら、例えば、WO2005/106531に開示された方法及び装置のように、本発明の実施形態において、物体関数のみを更新し、既知のプローブ関数を用いてもよい。更に、本発明の別の実施形態において、既知の物体関数を使用し、プローブ関数を決定する方法としてもよい。更に当然ながら、物体関数及び/又はプローブ関数を別の方法で更新してもよい。
【0048】
この方法では、J個の回折強度の集合s(j)、又は、検出器50によって記録された回折パターンI
j(u)を利用する。ここで、I
j(u)=|Ψ
j(u)|
2は、検出器50に入射する波面の絶対値の平方である。この方法の各繰り返し内において、検出器50によって測定されるJ個の回折パターンの各々に対して、プローブ及び物体関数の推定値が更新される。J個の測定強度それぞれを考慮する順番を選択する。この順番は、数字の順番、即ち、j=1,2,3…Jであってもよい。この場合、回折パターンs(j)で開始して、s(J)まで進むと、プローブP
1(r)...P
J(r)及び物体O
1(r)...O
J(r)の更新推定値が生成される。ただし、回折パターンをラスター形式で(一行の各パターンを連続してかつ各行を連続して)考慮すると、本方法の間に特にプローブ関数推定値の変動(drifting)に関連した問題が発生する場合がある。従って、幾つかの実施形態において、回折パターンは、ランダム又は疑似ランダムな順番に考慮される。なお、説明の目的で、集合s(j)について連続する順に考慮する。
【0049】
本方法の第1(k=1)の反復に先立って、初期プローブP
0(r)311関数及び物体O
0(r)312関数が選択される。初期プローブ及び物体関数311,312は、初期推測値等の所定の初期値、即ち事前に計算した近似値やランダムな分布であってもよく、又は別の初期測定値又は事前の計算に基づくものであってもよい。これらの関数は、幾つかの標本点でシミュレーションされて、行列で表される。このような行列は、コンピュータ又はその他の処理装置によって保存及び操作することができる。適切に、標本点は等間隔とし、矩形状配列を形成するとよい。
【0050】
ステップ320では、現在の物体関数とプローブ関数とを乗ずることにより、出射波
ψj(r)が決定される。本方法の第1(k=1)の反復の際、第1のプローブ位置s(1)については、初期プローブ関数P
0(r)と物体関数O
0(r)とを掛け合わせて、第1の出射波
ψ1(r)を決定する。本方法の以降の反復に際し、現在選択している、即ち、O
j(r)P
j(r)を掛け合わせて、現在の出射波
ψj(r)を決定する。
【0051】
ステップ330では、出射波
ψj(r)が検出器50の測定平面に伝播される。この伝播により、検出器50の平面での波面の推定値Ψ
j(u)が生成される。数式1に示すように、出射波は、適切な変換Tにより測定平面に伝播される。幾つかの実施形態において、変換Tは、フーリエ変換であってもよいが、別の実施形態では、フレネル自由空間プロパゲータ(Fresnel free space propagator)であってもよい。本方法の特定の用途に適した別の変換が使用されることを想定してもよい。
【0053】
ステップ340では、検出器50の平面での波面Ψ
j(u)の一部が、測定された回折パターンI
s(j)(u)に基づいて更新される。引用文献で説明されているように、Ψ
j(u)は複素数値であるので、数式2のように表される。
【0055】
幾つかの実施形態において、検出器50の平面での波面Ψ
j(u)は、cM(cNの画素に渡って広がるものと考慮される。なお、cは定数値であり、例えば、cは4に等しく、中心のM(N画素が検出器50のエリアに対応する。波面のこの中心領域の絶対値を数式3により置換できる。
【0057】
一方、残りの画素又は行列位置の少なくとも幾つかの値は、変更せずにおく。即ち、残りの行列位置又は画素の少なくとも幾つかの値は、「フロート」(float)状態としておく。
【0058】
幾つかの実施形態において、ステップ350は、Ψ
j(u)内の所定の画素の値にテーパリング関数(tapering function)を乗じる工程を備える。幾つかの実施形態では、このテーパリング関数によって、回折パターンΨ
j(u)の周辺領域の値を設定することになる。この値は、0等の所定の値であり、以下に説明するように、一つ以上の別の値を想定してもよい。幾つかの実施形態において、フーリエの繰り返し(repeats)が回折パターン内に侵入することによってもたらされる画像データに導入されるノイズを、テーパリング関数によって防ぐことができる。
【0059】
図4aは、概して400として示す回折パターンΨ
j(u)を説明する図である。回折パターンの中心領域410を、測定された回折パターンを参照して上述のように更新される。更新された領域410を囲む領域420はフロートさせてもよく、即ち、これらの値は更新されない。フローティング領域を囲む更に周辺の領域430は、一つ以上の所定の値、又は所定の関数により決定された値を有するよう設定することによって、固定(clamp)されている。幾つかの実施形態において、これらの値は、0と1との間の値であり、即ち、領域430の外周を0に設定し、一方、内側に広がる画素値を0と1との間の値、即ち、内側に向かって1に近づくように設定する。これらの値は、所定の関数に応じて1に近づいてもよい。画素値は、一方向に、即ち、線形的又は非線形的に連続的に増加するよう1に近づいていく。0および1の値が使用されてきたが、当然のことながらこれらは単なる例示に過ぎない。
図4bは、外周領域が値0を有するように設定された、回折パターンΨ
j(u)の線A−Aに沿った断面図である。フローティング領域420は、単一の一定値を有するものとして例示されており、即ち、全ての画素が1等の同じ値に設定されているが、これは単なる例示に過ぎない。
【0060】
固定領域430の幅は、画像データの解像度を犠牲にしてノイズを減らすよう選択してもよい。幾つかの実施形態において、領域430は、一画素分内側に広げる。即ち、境界領域430は一画素幅であってもよい。しかし、別の実施形態では、領域430は、8又は16画素幅等、一画素幅より大きくてもよい。
【0061】
ステップ360において、回折パターンΨ
j(u)は、物体40の平面に戻るよう逆に伝播される。この逆伝播は、ステップ330で用いた変換を逆にすることにより行なわれる。幾つかの実施形態において、ステップ360で使用された変換は、逆フーリエ変換であるが、先に説明したように他の変換を用いてもよい。逆変換は、数式4に従って行なわれる。
【0063】
ステップ370,375では、プローブ関数及び物体関数が更新される。この更新によって、改善後のプローブP
j+1(r)及び物体推量O
j+1(r)が得られる。この更新は、援用した文献WO201/064051に記載されるように行ってもよく、別の任意の方法で行ってもよい。WO201/064051に記載されるように、物体関数は、数式5に従って更新され、プローブ関数は、数式6に従って更新される。
【0065】
パラメータαは、物体推量の変化率を調節する。この値が高いと、更新後の物体推量が不安定となりうるので、0と2との間に調整する。本発明の実施形態によれば、プローブ関数は、物体関数とほとんど同じ方法で再構築される。プローブ関数推量が、物体推量の更新と同時に実行されるとよい。(当然のことながら、プローブ関数は、必要に応じて、物体関数の更新の頻度よりも、多く更新しても少なく更新してもよい)。
【0067】
このような更新関数の結果、プローブ関数用の動的推定値が生成される。パラメータβは、プローブ推量の変化率を調節する。この値が高いと、更新後のプローブ推量が不安定となりうるので、0と2との間に調整する。
【0068】
ステップ380では、現在の反復に関して全てのプローブ位置が処理されたかどうかが判断される。即ち、幾つかの実施形態において、j=Jかどうかが判断される。現在のプローブ位置が現在の反復の最終プローブ位置でない場合には、次のプローブ位置が選択される。次のプローブ位置は、ステップ385において、j=j+1とすることにより選択される。現在のプローブ位置が現在の反復の最終プローブ位置であれば、ステップ390に進む。
【0069】
ステップ390で、チェック条件を満たすかどうかが判断される。幾つかの実施形態において、チェック条件は、現在の反復番号kがk=100等の所定の値であるかどうかを判断するものであり、所定の反復回数が行われたかどうかを判断するものである。このチェックは、計算的に簡単であるが、画像データの精度は考慮されていない。従って、幾つかの実施形態において、チェック条件により、回折パターンの現在の推定値を、検出器50によって記録されたものと比較する。この比較は、数式7のような二乗誤差の総和(sum squared error:SSE)を考慮して行う。
【0071】
なお、Nは、波動関数を表す配列内の画素数である。本方法は、SSEが一つ以上の所定の基準、例えば所定の値を下回ることを満たす場合に終了する。
【0072】
所定の基準が満たされない場合には、次の反復(k=k+1)に備えてステップ395に進み、プローブ位置をリセット、即ち、j=1等の最初のプローブ位置を再度選択する。
【0073】
上述したように、各反復の間に複数のプローブ位置が考慮される。各プローブ位置は、物体O(r)の画像を表す行列内の画素に必ずしも正確に対応していないかもしれない。例えば、プローブは、画像O(r)を表す行列の正確な画素位置に対応する距離を、常に移動するとは限らず、画素位置の中間の位置に移動する場合がある。画像O(r)を表す行列の画素ピッチは、1.5μmであるが、一方プローブ位置は、例えば0.1μmまで抑えた低い解像度で移動し、±5μmのランダムオフセットで30μmのグリッド位置間を移動するよう配置されている。従って、当然のことながら、画像O(r)を表す行列の画素位置の中間の位置にプローブが移動する場合がある。推定回折パターンと検出器50によって測定されたものとの収束状態を改善するために、以下に説明するように、本発明の幾つかの実施形態は、プローブ位置のサブピクセルシフトを補償する機能を備えている。
【0074】
プローブ関数P
j(r)のサブピクセルシフト補償機能を備えるためには、現在のプローブおよび物体関数を掛け合わせるステップ320において出射波動関数推定値
ψj(r)を決定する前に、プローブ関数のサブピクセルシフトを考慮する。幾つかの実施形態において、現在のプローブ関数P
j(r)の変換に線形位相ランプ(linear phase ramp)φ
j(u)が加えられる。この変換は、プローブ関数のフーリエ変換であってもよい。
【0075】
幾つかの実施形態において、線形位相ランプφ
j(u)は、数式8によって物体O(r)を表す行列の最も近い画素位置からのプローブ関数の距離を考慮することによって決定される。
【0077】
ここで、cは、一定値であり、例えば、cは、4に等しい値とし、M及びNは、矩形検出器50内の画素の行と列の数をそれぞれ表す。u=[u,v]は、uとvの成分を有する2次元ベクトルである。s(x,j)は、物体O(r)を表す行列の最も近い画素位置からのx方向におけるプローブ関数の距離を表し、s(y,j)は、物体O(r)を表す行列の最も近い画素位置からのy方向におけるプローブ関数の距離を表す。
【0078】
位相ランプの追加に続いて、結果として得られたプローブ関数を逆変換し、現在の物体関数と掛け合わせて、現在の出射波
ψj(r)を得る。
【0079】
検出器のサブピクセルシフトを補償する実施形態において、物体関数の更新は、数式9により実行される。
【0081】
また、ステップ370におけるプローブ関数の更新は、数式10により実行される。
【0083】
プローブ関数の更新に続いて、先に適用されたのと同じ方法で、更新後のプローブ関数の変換に、共役線形位相ランプ−φ
j(u)が適用される。幾つかの実施形態において、共役位相ランプの適用と次のプローブ位置への次のサブピクセルシフトの適用とを組み合わせて、プローブ関数の過度な変換を防止してもよい。
【0084】
図5は、プローブのサブピクセルシフトを考慮したことによる影響を示す図である。
図5(a)は、プローブのサブピクセルシフトを行わずに、WO2010/064051に開示されたePIE法を150回反復した結果の画像データから得られた画像を示す。
図5(b)は、プローブのサブピクセルシフトの影響を含む、本発明の実施形態に係る、ePIE法を150回反復した同一の対象物の画像データから得られた画像を示す。サブピクセルシフトの影響を含めることによって、画像データ内のプローブノイズが減少し、画像データの解像度が上がることが観察できる。画像に示されるスケールバーの長さは、100μmである。
【0085】
図6は、本発明の実施形態により得られる画像データの解像度が向上する様子を示す。
図6(a)は、
図5に示された画像を作成するために使用された回折パターンの中心領域に基づいた画像データから得られた画像である。
図6(a)は、WO2010/064051に開示されたePIE法により得られたものである。最も細かく分解された要素は、グループ5のエレメント2であり、36ラインペア/mm(lp/mm)の解像度を有するが、これは使用する検出器の空間周波数の範囲(33 lp/mm)に一致している。
図6(b)は、回折パターンの外挿領域を比較するエラーメトリック(error metric)を示す図であり、即ち、数式11を用いて記録された回折パターンの強度と検出器の外側とを比較している。
【0087】
ここで、S(u)は、回折パターンの外挿領域では1であり、拘束された境界上で測定データが使用されたエリアでは0である。
【0088】
図6(c)は、高空間周波数制限をせずに、即ち、境界領域を固定せずに、且つプローブのサブピクセルシフトをせずに、本発明の実施形態により得られた画像データに基づく画像を示す。対応するエラーメトリックを、
図6(b)に丸印で示す。
【0089】
図6(d)は、高空間周波数制限をせずに、即ち、境界領域を固定せずに、しかし、プローブのサブピクセルシフトを行って、本発明の実施形態により得られた画像データに基づく画像である。対応するエラーメトリックを、
図6(b)に四角印で示す。
【0090】
図6(e)は、高空間周波数制限を行って、即ち、境界領域を固定して、しかし、プローブのサブピクセルシフトを行わずに、本発明の実施形態により得られた画像データに基づく画像である。対応するエラーメトリックを、
図6(b)に三角印で示す。
【0091】
図6(f)は、高空間周波数制限と、プローブのサブピクセルシフトとの両方を行って、本発明の実施形態により得られた画像データに基づく画像である。対応するエラーメトリックを、
図6(b)に×印で示す。
【0092】
本発明の全ての実施形態において、それぞれの方法を1000回反復して行い、
図6(c)〜(f)の基となる画像データを得た。
図6(b)から判るように、高空間周波数制限と、プローブのサブピクセルシフトとの両方を行うことによって、誤差が発散しない。いずれの場合にも、画像データの解像度は、
図6(a)に示したものより改善されている。例示的な画像データにおける解像度の上昇は、約2.24であり、36から80.6 lm/mmである。高空間周波数制限もサブピクセルシフトも行わない
図6(c)から分かるように、フーリエの繰り返しによって、かなりのノイズが存在している。同程度のノイズが、サブピクセルシフトを行う
図5(d)にも存在しているが、サブピクセルシフトにより画像の鮮明さは向上している。
図5(e)、(f)には、回折パターンの境界を拘束することにより、ノイズが大きく減少する様子が示されており、
図6(f)では、ノイズが減少し、鮮明さが向上している。
【0093】
図7は、本発明の実施形態に係る装置700を示す。装置700は、物体の画像データを決定するために配置される。幾つかの実施形態において、画像データは、物体の可視画像を生成するために使用される。可視画像は、例えば、表示装置に出力される。
【0094】
装置700は、装置に当たる放射の強度を検出するための検出器710を備える。検出器710は、
図1に示される検出器50に相当し、対象物によって散乱された放射によって形成される回折パターンを記録するよう配置される。検出器は、複数の検出素子を備えてもよく、各検出素子は、検出素子に当たった放射の強度を示す信号を出力可能である。検出器は、CCD装置、又は同等のものである。検出器710は、処理装置720と通信可能に連結しており、処理装置720は、検出器710によって検出された放射の強度に基づいて画像データを決定するよう配置される。処理装置720は、メモリ730とCPU等のデータ処理装置740とを備える。
図7には、一つのメモリを備える処理装置720を示しているが、処理装置720は二つ以上のメモリを備えてもよい。更に、処理装置720は、一つのデータ処理装置を備えるものとして図示されているが、複数のデータ処理装置740を備えてもよく、各データ処理装置は、一つ以上の処理コアを備える。メモリ730は、複数のプローブ位置に対応する測定された放射強度データI
s(j)(u)を保存するよう配置される。データ処理装置740は、
図3に示し、上述したような、本発明の実施形態に係る方法を実現する。データ処理装置は、決定した画像データをメモリ730に保存する。
【0095】
当然のことながら、本願発明の実施形態は、ハードウェア、ソフトウェア、または、ハードウェア及びソフトウェアの組み合わせの形態において実現され得る。かかるソフトウェアのいずれもが、消去可能であるか若しくは書き換え可能であるかにかかわらず、例えば、ROM等の記憶装置等の揮発性又は不揮発性の記憶装置の形態で記憶されるか、例えば、RAM、メモリチップ、デバイス又は集積回路等のメモリの形態で記憶されるか又は、例えば、CD、DVD、磁気ディスク若しくは磁気テープ等の光学又は磁気可読媒体において記憶される。当然のことながら、記憶装置及び記憶媒体は、プログラム又は複数のプログラムを記憶するのに適した機械可読記憶装置の実施形態であり、当該プログラムが実行されると、本発明の実施形態が実現される。従って、実施形態は、先のいずれかの請求項に記載されたシステム又は方法を実現するコードを含むプログラムと、かかるプログラムを記憶する機械読込可能な記憶装置とを提供する。更に、本発明の実施形態は、有線接続若しくは無線接続において伝達される通信信号等の任意の媒体を介して電子的に伝達され、実施形態はこれを適切に包含し得る。
【0096】
(添付した特許請求の範囲、要約、及び図面のすべてを含む)本明細書で開示された特徴のすべて、及び/又は、開示された任意の方法又は処理のステップのすべてが、かかる特徴及び/又はステップのうち少なくともいくつかが互いに排他的である組み合わせを除く、任意の組み合わせで組み合わされ得る。
【0097】
(添付した特許請求の範囲、要約、及び図面のすべてを含む)本明細書で開示された各々の特徴が、特に明記しない限り、同一、同等、又は類似の目的に有益である代替的特徴によって置換されてもよい。従って、特に明記しない限り、開示された各特徴は、包括的な一連の均等又は類似の特徴の一例である。
【0098】
本発明は、前述のいかなる実施形態の詳細にも限定されない。本発明は、(添付した特許請求の範囲、要約、及び図面のすべてを含む)本明細書で開示された特徴の任意の新規なもの、又は任意の新規な組合せに、又は、開示された任意の方法及び処理のステップの、任意の新規なもの、又は任意の新規な組合せに及ぶ。特許請求の範囲は、上記の実施形態のみに及ぶだけでなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内の任意の実施形態にも及ぶものと、解釈されるべきである。