(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6014599
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月25日
(54)【発明の名称】電気自動車の駆動装置
(51)【国際特許分類】
B60K 1/00 20060101AFI20161011BHJP
B60L 9/18 20060101ALI20161011BHJP
B60K 17/16 20060101ALI20161011BHJP
B60K 17/12 20060101ALI20161011BHJP
F16H 57/037 20120101ALI20161011BHJP
F16H 48/00 20120101ALI20161011BHJP
【FI】
B60K1/00
B60L9/18 J
B60K17/16 E
B60K17/12
F16H57/037
F16H48/00
【請求項の数】18
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-543047(P2013-543047)
(86)(22)【出願日】2012年11月9日
(86)【国際出願番号】JP2012079144
(87)【国際公開番号】WO2013069774
(87)【国際公開日】20130516
【審査請求日】2015年10月29日
(31)【優先権主張番号】特願2011-245014(P2011-245014)
(32)【優先日】2011年11月9日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立オートモティブシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100096459
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 剛
(72)【発明者】
【氏名】山本 立行
(72)【発明者】
【氏名】村上 拓也
(72)【発明者】
【氏名】高橋 明
【審査官】
加藤 信秀
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2007/108049(WO,A1)
【文献】
特開2008−301572(JP,A)
【文献】
特開2000−217205(JP,A)
【文献】
特開2007−118808(JP,A)
【文献】
特開2009−248730(JP,A)
【文献】
特開2008−295243(JP,A)
【文献】
特開平08−126125(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 1/00
B60K 17/12
B60K 17/16
B60L 9/18
F16H 48/00
F16H 57/037
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の左右輪の各車軸を駆動するための回転軸を有するモータと、
前記モータに駆動電流を供給するインバータと、
前記インバータを収容するインバータ収納ケースと、
前記回転軸と前記車軸の間に設けられたディファレンシャルギヤと、
前記ディファレンシャルギヤを収容する減速機ケースと、
前記モータおよびインバータの温度を調整するための熱媒体の熱交換を行う熱交換装置と、
を備え、
前記モータのモータケースと一体にインバータ収納ケースが形成されていて、
前記モータと前記インバータとが前記モータケースまたはインバータ収納ケースの内部で電気的に接続され、
前記熱交換装置は前記減速機ケースとモータケースに沿って当該減速機ケースまたはモータケースと一体的に設けられている電気自動車の駆動装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電気自動車の駆動装置において、
前記モータケースは略円筒状のものであって、このモータケースの外周に前記インバータ収納ケースが一体に設けられ、前記モータケースの軸方向の一端側に前記減速機ケースが一体に設けられている電気自動車の駆動装置。
【請求項3】
請求項2に記載の電気自動車の駆動装置において、
前記ディファレンシャルギヤは、当該ディファレンシャルギヤを挟んで左右の車軸が略同一の長さとなるように設けられている電気自動車の駆動装置。
【請求項4】
請求項3に記載の電気自動車の駆動装置において、
前記モータは車両の前後方向において前記車軸よりも前方側に配置されている電気自動車の駆動装置。
【請求項5】
請求項1に記載の電気自動車の駆動装置において、
前記インバータ収納ケースと前記モータケースは一体に形成され、内部に前記インバータを搭載した状態で前記インバータ収納ケースの開口部を閉蓋するカバー部材を有している電気自動車の駆動装置。
【請求項6】
請求項3に記載の電気自動車の駆動装置において、
前記減速機ケースは、
前記モータケースの軸方向の一端側に一体成形され且つ前記ディファレンシャルギヤを収容するための開口部を備えたケース本体と、
内部に前記ディファレンシャルギヤを収容した状態で前記開口部を覆うためのカバー部材と、
から構成されている電気自動車の駆動装置。
【請求項7】
請求項1に記載の電気自動車の駆動装置において、
前記モータケースは、前記回転軸を収容するための開口部を備えるとともに、この開口部を閉蓋するカバー部材を備えている電気自動車の駆動装置。
【請求項8】
請求項2に記載の電気自動車の駆動装置において、
前記モータケースを車両上面から投影したときに前記インバータ収納ケースは車両前後方向において前記モータケースの投影面積に納まる大きさである電気自動車の駆動装置。
【請求項10】
請求項1に記載の電気自動車の駆動装置において、
前記モータケースは略円筒状であって、このモータケースの軸方向の一端側に前記回転軸が突出しているとともに、前記モータケースの他端面に前記インバータ収納ケースが設けられている電気自動車の駆動装置。
【請求項11】
請求項1に記載の電気自動車の駆動装置において、
車両に搭載されたバッテリと、
前記バッテリ電圧を変換するコンバータと、
前記コンバータを収容するコンバータ収納ケースと、
を備え、
前記モータケースは略円筒状であって、このモータケースの軸方向の一端側に前記回転軸が突出しているとともに、前記モータケースの他端面に前記コンバータ収納ケースが設けられている電気自動車の駆動装置。
【請求項13】
請求項1に記載の電気自動車の駆動装置において、
前記熱媒体の加熱および冷却を行う温度調整装置を備え、
この温度調整装置は前記減速機ケースを挟んで前記モータケースと対向する位置に少なくとも当該減速機ケースまたはモータケースと一体的に設けられている電気自動車の駆動装置。
【請求項14】
円筒状のモータケースのほかディファレンシャルギヤを介して車両の車軸を駆動するための回転軸を有するモータと、
前記モータに駆動電流を供給するインバータと、
前記インバータを収容するインバータ収納ケースと、
前記ディファレンシャルギヤを収容する減速機ケースと、
前記モータおよびインバータの温度を調整するための熱媒体の熱交換を行う熱交換装置と、
を備え、
車両搭載時に前記回転軸を水平姿勢としたモータにおけるモータケースの上面側にインバータ収納ケースが配置され、且つ前記モータケースの軸方向の一端側に減速機ケースが配置されるように、前記モータケースとインバータ収納ケースおよび減速機ケースの三者を一体的に形成するとともに、
前記熱交換装置は前記減速機ケースとモータケースに沿って当該減速機ケースまたはモータケースと一体的に設けられ、
前記回転軸よりも車両前方位置にて前記ディファレンシャルギヤを挟んで左右の車軸が略同一の長さとなるように構成し、
前記インバータと前記モータは前記インバータ収納ケースおよびモータケース内で電気的に接続されている電気自動車の駆動装置。
【請求項15】
請求項14に記載の電気自動車の駆動装置において、
前記モータケースを車両上面から投影したときに前記インバータ収納ケースは車両前後方向において前記モータケースの投影面積に収まる大きさである電気自動車の駆動装置。
【請求項16】
回転軸を収容するための開口部を備えたモータケースを主要素とし、ディファレンシャルギヤを介して車両の左右輪の各車軸を駆動するためのモータと、
前記モータに駆動電流を供給するインバータと、
前記インバータを収容するための開口部を備えたインバータ収納ケースと、
前記ディファレンシャルギヤを収容するための開口部を備えた減速機ケースと、
前記各ケースに装着されてそれぞれの開口部を閉蓋するカバー部材と、
前記モータおよびインバータの温度を調整するための熱媒体の熱交換を行う熱交換装置と、
を備え、
前記熱交換装置は前記減速機ケースとモータケースに沿って当該減速機ケースまたはモータケースと一体的に設けられる一方、
前記インバータと前記モータは前記インバータ収納ケースおよびモータケース内でバスバーを介して電気的に接続されている電気自動車の駆動装置。
【請求項17】
請求項16に記載の電気自動車の駆動装置において、
前記回転軸と前記各車軸の間にディファレンシャルギヤが設けられていて、
前記モータケースは略円筒状であって、このモータケースの外周に前記インバータ収納ケースが一体的に設けられ、前記モータケースの軸方向の一端側に減速機ケースが設けられている電気自動車の駆動装置。
【請求項18】
請求項17に記載の電気自動車の駆動装置において、
前記ディファレンシャルギヤは、当該ディファレンシャルギヤを挟んで前記左右の車軸が略同一の長さとなるようにその軸心が前記モータケースの軸方向に沿って延在するように設けられている電気自動車の駆動装置。
【請求項19】
請求項18に記載の電気自動車の駆動装置において、
前記モータは前記車軸よりも車両の前後方向に対して前方に配置されるように構成されている電気自動車の駆動装置。
【請求項20】
請求項19に記載の電気自動車の駆動装置において、
前記モータケースを車両上面から投影したときに前記インバータ収納ケースは車両前後方向において前記モータケースの投影面積に収まる大きさである電気自動車の駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気自動車の電動パワートレーンを構成することになる駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の電気自動車の駆動装置として、特許文献1に記載されているように、車両のモータルーム内に、モータユニット、インバータおよびコンバータ等を特定の位置関係をもって配置し、モータユニットとインバータとを三相交流ハーネスにて接続したのものが知られている。なお、上記三相交流ハーネスは、弾性を有したカバーにより覆われて、外部に対して絶縁および保護されているとされている。
【0003】
しかしながら、モータユニットとインバータとの関係についてみた場合、外部に露出するハーネスでの接続が必須であるため、スペース効率の悪化とともに部品点数および組付工数が増加することとなって好ましくない。また、車両衝突時の安全性を考慮した場合には、必要に応じて上記カバーにプロテクタを併用する必要があり、さらなる部品点数の増加等を招くことなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−20625号公報
【発明の概要】
【0005】
本発明は、このような課題に着目してなされたものであり、少なくともモータとインバータとの間での外部に露出するハーネス接続を廃止した構造を提供するものである。
【0006】
かかる目的を達成するため、本発明の電気自動車の駆動装置では、ケースの一体化をもってモータとインバータとの集約化を図り、両者をケース内にて相互に電気的に接続する構造とした。
【0007】
本発明によれば、モータとインバータとの接続をケース内接続とすることで、少なくともモータとインバータとの間での外部に露出するハーネス接続を廃止できるため、スペース効率の改善とともに部品点数および組付工数を削減して、コストの低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】電気自動車における電動パワートレーンのレイアウトを示す全体的な説明図。
【
図2】本発明に係る駆動装置の第1の形態を示す図で、
図1のモータルーム内における電動パワートレーンの拡大斜視図。
【
図3】
図2に示した電動パワートレーンを別の方向から見た要部斜視図。
【
図4】
図2,3のに示したモータパワーユニット単独での拡大斜視図。
【
図5】
図4に示したモータパワーユニットを別の方向から見た斜視図。
【
図6】
図4,5に示したモータパワーユニットにおけるケース類のみの分解斜視図。
【
図7】
図4,5に示したモータパワーユニットの内部構造を含む分解斜視図。
【
図8】
図4に示したモータパワーユニット透視図的な斜視図。
【
図9】
図8に示したモータパワーユニットにおける減速機の内部構造を示す平面説明図。
【
図11】本発明に係る駆動装置の第2の形態を示す斜視図。
【
図12】本発明に係る駆動装置の第3の形態を示す斜視図。
【
図13】本発明に係る駆動装置の第4の形態を示す斜視図。
【
図14】本発明に係る駆動装置の第5の形態を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1以下の図面は本発明に係る電気自動車の駆動装置を実施するためのより具体的な第1の形態を示し、特に
図1は電動パワートレイン全体のレイアウトの概略を示し、
図2,3は車体前部のモータルームR内での主要な構成要素の配置を示している。さらに
図4〜10は
図2,3におけるモータパワーユニット4の詳細を示している。
【0010】
図1に示すように、電気自動車の車体1のフロアには走行用バッテリとして例えばリチウムイオンバッテリ2が搭載されているとともに、車体後部には商用電源あるいは急速充電システムを電源とする車載充電器3が搭載されていて、さらに車体1の前部のモータルームR内には図示しないDC/DCコンバータとともにモータパワーユニット4が搭載されている。なお、上記リチウムイオンバッテリ2の電力系および充電電力系を高圧電力系とするならば、この高圧電力系よりも低圧の例えば12V電力系のために図示しない別の12Vバッテリも搭載されている。
【0011】
図2,3は
図1の要部の詳細を示していて、車体1の前部のモータルームR内には当該モータルームRの骨格をなす強度部材としての左右一対のサイドメンバー5が車両前方に向かって伸びていて、その下側に略矩形フレーム状のサスペンションメンバー6が配置されている。サスペンションメンバー6は例えば四箇所のインシュレータ7を介して左右のサイドメンバー5に結合・支持されている。サスペンションメンバー6には左右で独立したトランスバースリンク8が付帯していて、そのトランスバースリンク8に図示しないアクスルとともに左右の車輪(前輪)9が支持されている。
【0012】
サスペンションメンバー6には複数の防振マウント10等を介してモータパワーユニット4が搭載されている。このモータパワーユニット4は、後述するように原動機であるモータ11とインバータ12(
図7参照)およびファイナルドライブユニットである減速機(終減速機)13の三者を集約して実質的にこれら三者を一体化して一ユニット化したもので、このモータパワーユニット4の減速機13から延びる左右の車軸としてのドライブシャフト14が各車輪9に接続されている。
【0013】
これにより、
図3から明らかなように、ドライブシャフト14よりも車両前方側にモータパワーユニット4が位置しているとともに、モータパワーユニット4の減速機13から延びる左右のドライブシャフト14がその減速機13をはさんで左右で共にほぼ同じ長さとなるように、当該減速機14を含むモータパワーユニット4が車幅方向の所定位置に配置されている。
【0014】
図4は
図2,3に示したモータパワーユニット4単独での斜視図を示し、
図5は
図4のモータパワーユニット4を別の方向から見た斜視図を示している。また、
図6は上記モータパワーユニット4におけるモータケース15のみの要部分解図を示し、
図7は上記モータパワーユニット4の分解図を示している。さらに、
図8は上記モータパワーユニット4の透視図を示している。
【0015】
このモータパワーユニット4は、モータ11と後述するインバータ12および減速機13の三者を集約して、実質的にこれら三者を一体化して一ユニット化したものであることは先に述べた。
図4,5および
図6に示すように、モータ11のモータケース15は略円筒状のものとして形成されていて、そのモータケース15の略円筒状の胴部外周面の上方側には矩形ボックス状をなすインバータ収納ケース16が一体的に延長形成されていて、このインバータ収納ケース16に後述するインバータ12が収容される。また、略円筒状のモータケース15の軸方向の一端には減速機13の減速機ケース17が一体に延長形成されていて、この減速機ケース17には後述するディファレンシャルケース30やディファレンシャルギヤ31を含む減速歯車列が収容される。
【0016】
ここで、
図4,5のほか
図7にも示すように、モータケース15とインバータ収納ケース16は互いに共有するカバー部材としての着脱可能なエンドカバー18を有しているとともに、インバータ収納ケース16はエンドカバー18とは別に独立したカバー部材として着脱可能な矩形状の上面カバー19を有している。また、減速機ケース17は、
図6に示すように、モータケース15と一体に形成された減速機ケース17と対をなすカバー部材としての着脱可能なカバー20を有していて、後述するように減速機ケース17内にディファレンシャルケース30やディファレンシャルギヤ31を含む減速歯車列等が収容された後に当該減速機ケース17と対をなす着脱可能なカバー20をもって閉蓋される。
【0017】
図7,8に示すように、モータ11は例えば永久磁石埋め込み型の3相同期モータであって、モータケース15に、固定子であるステータ21のほか、回転軸22を有する回転子としてのロータ23を挿入した上でエンドカバー18で閉蓋し、ロータ23を図示外のベアリングにて回転可能に両持ち支持することで構成される。ロータ23の回転軸22は減速機ケース17側に突出して、後述するように減速機13側の入力軸または入力ギヤと連結される。
【0018】
円筒状のモータケース15の胴部外周面の上方側には、先に述べたインバータ収納ケース16となるべき三辺の側壁部16aがモータケース15側から延長するようにして一体的に直立形成されているとともに、三辺の側壁部16aの内周側には平坦な棚状の台座部24が一体に形成されている。また、
図4,5のほか
図7,8にも示すように、モータケース15の端面が後から着脱可能なエンドカバー18にて閉蓋されることで、そのエンドカバー18の延長部18aが上記三辺の側壁部16aと整合・合致し、もってエンドカバー18の延長部18aは矩形ボックス状をなすインバータ収納ケース16の一部を形成することになる。このインバータ収納ケース16には当該インバータ収納ケース16よりも一回り小さな矩形ボックス状のインバータ12が収納され、上記台座部24に着座させた上で図示外のボルト等にて堅固に固定される。
【0019】
インバータ12は、周知のように、
図1のリチウムイオンバッテリ2からの直流電力を交流電力に変換し、モータ11を駆動する。直流電力を交流電力に変換する際、交流電力の周波数および電圧を可変できる自由度を有する。また、車両の減速時にはモータ11を発電機として使用することで、車輪9の回転により発生する運動エネルギー(交流電力)を電気エネルギー(直流電力)に変換し、図示外のDC/DCコンバータを経由してリチウムイオンバッテリ2に充電する機能を有する。
【0020】
他方、上記DC/DCコンバータは、リチウムイオンバッテリ2の高電圧の直流電流をそれよりも低い電流、例えば12V直流電流に降圧し、12V電源系システムへ電源供給するとともに、12Vバッテリへの充電を行う。また、上位システムからの信号により出力電圧を変化させ、車両状態に最適な電圧を供給する機能を有する。
【0021】
そして、
図7のほか
図8に示すように、ステータ21側の3相分のコイルエンドの引き出し線にはそれぞれにバスバー(端子板)25が付帯していることから、これらのステータ21側のバスバー25がインバータ12側の端子部12aにビス26等にて接続される。
【0022】
こうしてインバータ収納ケース16にインバータ12を収納した上でボルト等にて固定し、さらにステータ21側のコイルエンドとインバータ12側の端子部12aとの接続を終えたならば、先にも述べたようにモータケース15の端面をエンドカバー18にて閉蓋するとともに、このインバータ収納ケース16の上面開口部に着脱可能な上面カバー19を装着することで、インバータ12を収納しているインバータ収納ケース16が閉蓋されて外部から遮蔽される。
【0023】
すなわち、インバータ12はモータ11から独立したものでありながらも外部に露出することなく実質的にモータケース15の中に内蔵されており、同時にインバータ12はモータケース15またはインバータ収納ケース16の内部においてモータ11と結線されていることから、少なくともインバータ12とモータ11とを結線しているハーネスの類が外部に露出することはなくなる。
【0024】
図9,10は上記減速機13の内部構造の一例を模式的に示している。
【0025】
同図に示すように、減速機ケース17には、モータ11の回転軸22からの回転出力を入力とする入力ギヤ27のほか、変速ギヤ28,29と、ディファレンシャルケース30、および当該ディファレンシャルケース30の外周に一体的に装着されたファイナルギヤとしてのディファレンシャルギヤ31等が収容配置されている。さらに、ディファレンシャルケース31には、周知のように図示しない一対のサイドギヤとこのサイドギヤに噛み合う同じく一対のピニオンメートギヤが収容されていて、このサイドギヤの回転出力が左右のドライブシャフト14(
図3参照)の回転駆動力として当該ドライブシャフト14に伝達されることになる。
【0026】
ここで、
図1および
図3に示したように、モータパワーユニット4の車載状態下では、車両前後方向においてドライブシャフト14よりも前方側にモータパワーユニット4が位置し、同時にモータ11(モータケース15)の上方側にインバータ12(インバータ収納ケース16)が位置していることになる。この場合において、
図4および
図8から明らかなように、モータケース15と実質的に一体に形成されたインバータ収納ケース16は、モータパワーユニット4を上面から見た場合に、少なくとも車両前後方向においてモータケース15の投影面積内に納まる大きさに形成されている。また、減速機ケース17はモータケース15をその軸方向一端側に延長するようにこれと直列的且つ一体に形成されているとともに、この減速機ケース17の出力軸線、すなわち
図9,10におけるディファレンシャルケース30の軸線はモータ11の回転軸22と平行となっている。
【0027】
以上のように本実施の形態によれば、モータ11とインバータ12および減速機13の各ケース15,16,17の一体化をもってそれら三者の集約化を図るとともに、モータ11とインバータ12との接続をいわゆるケース内接続とすることで、少なくともモータ11とインバータ12との間での外部に露出するハーネス接続を廃止できることになる。そのため、スペース効率の改善とともに部品点数および組付工数を削減して、コストの低減を図ることができるようになる。
【0028】
図11以下の図面は、いずれも本発明に係る電気自動車の駆動装置を実施するためのモータパワーユニット4の他の形態を示している。
【0029】
図11の第2の形態では、略円筒状のモータケース45を含んでなるモータ41の軸心方向の一端側に、
図6と同様に減速機ケース17とカバー20とを含んでなる減速機43を配置するとともに、モータ41の軸心方向の他端側に、
図7と同様にインバータ12を内蔵したボックス状のインバータ収納ケース46を配置したものである。なお、インバータ収納ケース46には
図7に示した上面カバー19と同等のカバーが付帯することになる。この場合において、先に
図6に示したものと同様に、少なくともモータケース45とインバータ収納ケース46および減速機ケース17の三者の一体化を図るものとする。
【0030】
図12の第3の形態では、モータ41の胴部外周側に
図7と同様にインバータ12を内蔵したインバータ収納ケース46を配置するとともに、モータ41の軸心方向の一端側に減速機43を、モータ41の軸心方向の他端側に図示外のDC/DCコンバータを内蔵したコンバータ収納ケース50をそれぞれ配置したものである。この場合においても、
図7に示したものと同様に、少なくともモータケース45とインバータ収納ケース46および減速機ケース17の三者は一体化するものとし、さらにこれらに加えてコンバータ収納ケース50までも一体化を図るものとする。
【0031】
図13の第4の形態では、
図12と同様に、モータ41の胴部外周側にインバータ収納ケース46を配置するとともに、モータ41の軸心方向の一端側に減速機43を、モータ41の軸心方向の他端側に図示外のDC/DCコンバータを内蔵したコンバータ収納ケース50をそれぞれ配置した上で、さらに、減速機30の上に、少なくともモータ41およびインバータの温度を調整するための熱媒体の熱交換を行う熱交換装置たる熱交換器51を配置したものである。
【0032】
より具体的には、熱交換器51の外郭である少なくとも最も外側のケース51aは、上記減速機ケース17の長手方向に沿うかたちで、且つモータケース45およびインバータ収納ケース46の一方の端面のそれぞれに沿うかたちで、当該減速機ケース17,モータケース45およびインバータ収納ケース46と一体的に設けられている。この熱交換器51は、例えば減速機43の内部に収容されている潤滑油を冷却するための手段として使用されるほか、モータ41およびインバータ収納ケース46に収容されているインバータを強制冷却するための冷却水その他の冷却媒体を冷却するための手段として使用される。
【0033】
図14の第5の実施の形態では、
図13の構造を前提として、減速機43および熱交換器51に隣接してヒートポンプその他の温度調整装置52を設けたものである。具体的には、温度調整装置52は減速機43を挟んでモータ41と対向する位置にあって、温度調整装置52の外郭である少なくとも最も外側のケース52aは、減速機ケース17および熱交換器51のケース51aのうち少なくともいずれか一つとともにモータケース45と一体的に設けられている。この温度調整装置52は、上記熱交換器51での熱媒体(冷却媒体)との熱交換温度を調整するべくその熱交換媒体を冷却または加熱する機能を有するものである。
【0034】
その結果、特に
図12〜14に示した第3〜第5の形態では、モータ41、インバータおよび減速機43に加えて、DC/DCコンバータや熱交換器51さらには温度調整装置52までも一体化することができる故に、レイアウト的に高密度実装を実現できて、スペース的に一段と有利となる。
【0035】
ここで、上記各実施の形態から把握できる発明特定事項とともにその効果を列挙すれば、下記(1)〜(7)の通りのものとなる。
【0036】
(1)請求項8に記載の発明では、前記モータケース15を車両上面から投影したときに前記インバータ収納ケース16は車両前後方向において前記モータケース15の投影面積に納まる大きさのものとした。
【0037】
この構造によれば、例えばモータ11に車両前後方向から外力が作用した場合に、電子機器であるインバータ12を外力から保護することができる。
【0038】
(2)請求項9に記載の発明では、前記モータ41およびインバータ12の温度を調整するための熱媒体の熱交換を行う熱交換装置51を備えていて、この熱交換装置51は、前記減速機ケース17と前記モータケース45に沿って当該減速機ケース17またはモータケース45と一体的に設けられている構造のものとした。
【0039】
この構造によれば、熱交換装置51までもが減速機ケース17またはモータケース45と一体的に形成されていることにより、レイアウト的に高密度実装を実現できて、スペース的に有利となる。
【0040】
(3)請求項10に記載の発明では、前記モータケース45は略円筒状であって、このモータケース45の軸方向の一端側に前記回転軸22が突出しているとともに、前記モータケース45の他端面に前記インバータ収納ケース46が設けられている構造のものとした。
【0041】
この構造によれば、レイアウト的に高密度実装を実現できて、スペース的に有利となる。
【0042】
(4)請求項11に記載の発明では、車両に搭載されたバッテリ2と、前記バッテリ電圧を変換するコンバータと、前記コンバータを収容するコンバータ収納ケース50と、を備えていて、前記モータケース45は略円筒状であって、このモータケース45の軸方向の一端側に前記回転軸22が突出しているとともに、前記モータケース45の他端面に前記コンバータ収納ケース50が設けられている構造のものとした。
【0043】
この構造によれば、上記(3)と同様に、レイアウト的に高密度実装を実現できて、スペース的に有利となる。
【0044】
(5)請求項12に記載の発明では、前記回転軸22と前記車軸14の間に設けられたディファレンシャルギヤ31と、前記ディファレンシャルギヤ31を収容する減速機ケース17と、前記モータ41およびインバータ12の温度を調整するための熱媒体の熱交換を行う熱交換装置51と、を備えていて、この熱交換装置51は前記減速機ケース17とモータケース45に沿って当該減速機ケース17またはモータケース45と一体的に設けられている構造のものとした。
【0045】
この構造によれば、熱交換装置51までも含んだモータパワーユニット4全体の一層の小型化を図ることができる。
【0046】
(6)請求項13に記載の発明では、前記熱媒体の加熱および冷却を行う温度調整装置52を備えていて、この温度調整装置52は前記減速機ケース17を挟んで前記モータケース45と対向する位置に少なくとも当該減速機ケース17またはモータケース45と一体的に設けられている構造のものとした。
【0047】
この構造によれば、温度調整装置52までも含んだモータパワーユニット4全体の一層の小型化を図ることができる。
【0048】
(7)請求項17に記載の発明では、前記回転軸22と前記各車軸14の間にディファレンシャルギヤ31が設けられていて、前記モータケース15は略円筒状であって、このモータケース15の外周に前記インバータ収納ケース16が一体的に設けられ、前記モータケース15の軸方向の一端側に減速機ケース17が設けられている構造のものとした。
【0049】
この構造によれば、レイアウト的に高密度実装を実現できて、スペース的に有利となる。