特許第6014610号(P6014610)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6014610航空機エンジンのためのメンテナンス作業の予知
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6014610
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月25日
(54)【発明の名称】航空機エンジンのためのメンテナンス作業の予知
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/00 20120101AFI20161011BHJP
【FI】
   G06Q10/00 300
【請求項の数】11
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-554927(P2013-554927)
(86)(22)【出願日】2012年2月16日
(65)【公表番号】特表2014-506706(P2014-506706A)
(43)【公表日】2014年3月17日
(86)【国際出願番号】FR2012050338
(87)【国際公開番号】WO2012114021
(87)【国際公開日】20120830
【審査請求日】2015年2月3日
(31)【優先権主張番号】1151543
(32)【優先日】2011年2月25日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】505277691
【氏名又は名称】スネクマ
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ドライユ,ギヨーム
(72)【発明者】
【氏名】オウテイエ,ジヤン−フイリツプ
(72)【発明者】
【氏名】ジヤンドロノー,エリツク
【審査官】 梅岡 信幸
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2007/0088584(US,A1)
【文献】 特開2006−146928(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象とする航空機エンジンに対するメンテナンス作業を予測する方法であって、
対象とする航空機エンジンに関連づけられた1組の故障モデルに対するシミュレーションを用いて、1組の故障モデルの故障モデルごとに、故障時の対象とするエンジンの年齢に対応する故障年齢を決定するステップであって、前記各故障モデルが、所与の故障に対応し、飛行サイクルに関して表現された時間の関数として、累積された故障確率の法則により表される、ステップと、
前記1組の故障モデルの前記故障モデルの1つを選択することによって、最小故障年齢を有する適切な故障モデルを選択するステップと、
適切な故障モデルに対応する適切な第1の規則モジュールを決定するステップであって、適切な第1の規則モジュールが飛行サイクルに関して表現された対象となる航空機エンジンの年齢の関数として複数の作業範囲を定義する、ステップと、
適切な第1の規則モジュールの複数の作業範囲から、最小故障年齢と関連付けられる適切な最小作業範囲を選択するステップと、
適切な最小作業範囲からおよび次のメンテナンス作業の前に必要な飛行サイクル数から対象とする航空機エンジンに対して行われる必要な最終メンテナンス作業範囲を決定するステップと
を備える、方法。
【請求項2】
前記故障年齢を決定するステップが、1組のパラメータの入力に基づき、1組のパラメータが、以下のパラメータを、すなわち、故障年齢、最後の工場送り以来の、対象とするエンジンの作動期間、工場送りのランク、対象とするエンジンの複数の寿命制限部品(LLP)ごとの潜在的な余寿命、および対象とするエンジンの再製制約条件を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の規則モジュールが、以前に初期化段階の間に定義された1組の第1の規則モジュールの中から選択され、前記第1の規則モジュールの各々は、決定された故障モデルおよび決定された工場送りのランクに関連づけられる、請求項に記載の方法。
【請求項4】
前記1組のパラメータが、対象とするエンジンに対するメンテナンス作業が行われた後に修正される、請求項に記載の方法。
【請求項5】
前記故障モデルが、エンジンの数、各エンジンの作動環境、各エンジンの型式、各エンジンの作動条件、各エンジンをメンテナンスする場所、および各エンジンが作業場に入ってから各エンジンが作業場から出るまでの期間に関するデータを含む、全エンジンに関する作業経験の解析から得られる、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
対象とする航空機エンジンに対するメンテナンス作業を予測するシステムであって、
対象とする航空機エンジンに関連づけられた1組の故障モデルに対するシミュレーションを用いて、1組の故障モデルの故障モデルごとに、故障時の対象とするエンジンの年齢に対応する故障年齢を決定することであって、前記各故障モデルが、所与の故障に対応し、飛行サイクルに関して表現された時間の関数として、累積された故障確率の法則により表され、
前記1組の故障モデルの前記故障モデルの1つを選択することによって、適切な故障モデルが最小故障年齢を有する適切な故障モデルを選択し、
適切な故障モデルに対応する適切な第1の規則モジュールを決定することであって、適切な第1の規則モジュールが飛行サイクルに関して表現された対象となる航空機エンジンの年齢の関数として複数の作業範囲を定義し、
適切な第1の規則モジュールの複数の作業範囲から、最小故障年齢と関連付けられる適切な最小作業範囲を選択し、
適切な最小作業範囲からおよび次のメンテナンス作業の前に必要な飛行サイクル数から対象とする航空機エンジンに対して行われる必要な最終メンテナンス作業範囲を決定する
ように構成された処理回路を備える、システム。
【請求項7】
コンピュータによって実行されると、コンピュータに、
対象とする航空機エンジンに関連づけられた1組の故障モデルに対するシミュレーションを用いて、1組の故障モデルの故障モデルごとに、故障時の対象とするエンジンの年齢に対応する故障年齢を決定するステップであって、前記各故障モデルが、所与の故障に対応し、飛行サイクルに関して表現された時間の関数として、累積された故障確率の法則により表される、ステップと、
前記1組の故障モデルの前記故障モデルの1つを選択することによって、適切な故障モデルが最小故障年齢を有する適切な故障モデルを選択するステップと、
適切な故障モデルに対応する適切な第1の規則モジュールを決定するステップであって、適切な第1の規則モジュールが飛行サイクルに関して表現された対象となる航空機エンジンの年齢の関数として複数の作業範囲を定義する、ステップと、
適切な第1の規則モジュールの複数の作業範囲から、最小故障年齢と関連付けられる適切な最小作業範囲を選択するステップと、
適切な最小作業範囲からおよび次のメンテナンス作業の前に必要な飛行サイクル数から対象とする航空機エンジンに対して行われる必要な最終メンテナンス作業範囲を決定するステップと
を備える方法を行わせるコンピュータ読み取り可能な命令を格納する非一時的なコンピュータ読み取り可能な記憶媒体
【請求項8】
最小故障年齢は、故障時に対象とする航空機エンジンの予測された年齢を定義する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
最小故障年齢は、工場送りの日付を示し、必要な最終メンテナンス作業範囲を決定するステップは、工場送りの日付で行われるべき作業範囲を示す、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
適切な故障モデルを選択するステップは、前記1組の故障モデルに対応する1組の故障年齢の中から最小故障年齢を有する適切な故障モデルを選択することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
1組の故障モデルの各故障モデルは、対象とする航空機エンジンの故障の異なる原因に対応する、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、航空機エンジンのメンテナンスの分野に関する。詳細には、本発明は、航空機エンジンに対するメンテナンス作業を予想または予測するための方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、他のパラメータを考慮することなく、故障の原因に直接応じてエンジンに対する作業が行われる。たとえば、油漏れが検出された場合、油回路などに対して処置がとられる。
【0003】
しかしながら、航空機エンジンに対するメンテナンス作業は、長いダウンタイム、ならびに高い部品費および人件費を必要とする場合がある。
【0004】
このとき、メンテナンス作業を最適化および計画するために、作業場で修理作業員により蓄積された故障原因に関する作業経験が、ワイブル(Weibull)則に基づき、統計的故障曲線を突き止めるために使用される。現時点で使用される道具は、ワイブルの統計的故障曲線に基づき作業範囲を系統的に割り当てることからなる。
【0005】
同じ平均的作業範囲がすべての故障原因に対して割り当てられるということが、エンジンの特異性または履歴を考慮することを不可能にしている。
【0006】
このことが、メンテナンス作業の予測に関して精度が足りない原因となり、このとき、工場送りから持ち帰られた直後に故障する可能性がある、エンジンの不完全なメンテナンスを誘発する可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、上述の欠点がどれもない、航空機エンジンに対するメンテナンス作業の正確な予測を行うことである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、対象とする航空機エンジンに対するメンテナンス作業を予測する方法であって、
前記対象とするエンジンに適合された1組の故障モデルを比較して、故障時の前記エンジンの年齢を定義する故障年齢を有する適切な故障モデルを選択するステップと、
前記対象とするエンジンと関係がある1組のパラメータの関数として、前記対象とするエンジンに対する作業範囲に関する決定規則を前記適切な故障モデルと関連づけるステップと、
前記決定規則の関数として、前記対象とするエンジンに対して行われる、必要なメンテナンス作業範囲を決定するステップと
を備える方法に関する。
【0009】
したがって、方法は、故障原因および故障原因の影響の完全な表現を考慮して、一方のエンジンを他方のエンジンと区別し、はるかにより詳細な方法で各エンジンに特有の技術的作業範囲を関連づける。これにより、より高い精度でメンテナンス作業の予知および計画が可能になる。
【0010】
有利には、前記1組のパラメータは、以下のパラメータを、すなわち、故障年齢、最後の工場送り以来の、前記対象とするエンジンの作動期間、工場送りのランク、前記対象とするエンジンの複数の寿命制限部品(LLP)ごとの潜在的な余寿命、および前記エンジンの再製制約条件を備える。
【0011】
本発明の一実施形態によれば、前記決定規則は、前記エンジンの作動時間に対して複数の作業範囲を定義する第1の規則モジュールを備え、適切な作業範囲が、前記適切な故障モデルに関連する前記故障年齢の関数として前記複数の作業範囲の中から選択される。
【0012】
前記第1の規則モジュールは、以前に初期化段階の間に定義された1組の第1の規則モジュールの中から選択され、前記第1の規則モジュールの各々は、決定された故障モデル、および決定された工場送りのランクに関連づけられる。
【0013】
有利には、前記決定規則は、前記第1の規則モジュールの作業範囲とメンテナンス作業の間の関係を定義する第2の規則モジュールを備え、前記必要なメンテナンス作業範囲は、前記適切な作業範囲、前記エンジンの再製制約条件、および前記対象とするエンジンの複数の寿命制限部品(LLP)ごとの潜在的な余寿命の関数として決定される。
【0014】
有利には、前記1組のパラメータは、前記対象とするエンジンに対するメンテナンス作業が行われた後に修正される。
【0015】
前記故障モデルは、エンジンの数、各エンジンの作動環境、各エンジンの型式、各エンジンの作動条件、各エンジンをメンテナンスする場所、各エンジンが作業場に入ってから各エンジンが作業場から出るまでの期間を含むデータを備える、全エンジンに関する作業経験の解析から得られる。
【0016】
本発明はまた、処理手段により実行されたときに、上記特徴に基づく予測方法を実現するためのコード命令を備えるコンピュータプログラムに関する。
【0017】
本発明はまた、対象とする航空機エンジンに対するメンテナンス作業を予測するシステムであって、
前記対象とするエンジンに適合された1組の故障モデルを比較して、故障時の前記エンジンの年齢を定義する故障年齢を有する適切な故障モデルを選択するための処理手段と、
前記対象とするエンジンと関係がある1組のパラメータの関数として、前記対象とするエンジンに対する作業範囲に関する決定規則を前記適切な故障モデルと関連づけるための処理手段と、
前記決定規則の関数として、前記対象とするエンジンに対して適用される、必要なメンテナンス作業範囲を決定するための処理手段と
を備えるシステムに関する。
【0018】
本発明によるシステムおよび方法の他の特徴および利点が、添付図面を参照して、参考のためではあるが限定せずに示す以下の説明を読むと、より明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明に従って、航空機エンジンに対するメンテナンス作業を予測するために使用されることができるシステムまたは方法で使用されるハードウェア手段を図式的に示す。
図2】本発明に従って、所与の航空機エンジンに対するメンテナンス作業を予測する方法を示す。
図3図2でメンテナンス作業を予測する方法の特定の一実施形態を示す。
図4】本発明による、複数の作業範囲を定義する第1の規則モデルの一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の原理は、全エンジンの故障履歴を最大限に活用して、将来のメンテナンス作業を非常に正確に予測することにある。したがって、エンジンに対する作業範囲は、故障原因に最も大きな影響を及ぼすパラメータを考慮することにより、監督なしできわめて詳細に演繹されることができる。
【0021】
図1は、本発明に従って、航空機エンジンに対するメンテナンス作業を予測するためのシステムまたは方法で使用される装置手段の一例を示す。
【0022】
作業場3でエンジン1の工場送りの間に、修理作業員が、故障原因および作業範囲に関する経験を蓄積する。航空機エンジンに対して行われるメンテナンス作業が予測されることができるように、予測システム5は、この作業経験を使用して、故障モデルを構築する。
【0023】
より詳細には、予測システム5は、通常、入力手段9、処理手段11、記憶手段13、および出力手段15を備えるコンピュータシステム7を備える。記憶手段13は、本発明による予測方法の使用に適合されたコード命令を含むコンピュータプログラムを備えることができることに留意されたい。このコンピュータプログラムは、記憶手段13、ならびに入力手段9および出力手段15を利用して、処理手段11により実行されてもよい。
【0024】
さまざまな作業場3からの作業経験から得られたさまざまなデータが、全エンジン一式に対するデータベース17を作成するために記憶手段13に記憶される。エンジンに関する情報を追加するために、エンジンに関する他のデータも同じくデータベース17に記録される。
【0025】
したがって、データベース17は、エンジン1に関して時間をかけて収集された複数の測定値およびデータを備える。これらのデータは、各エンジンに関する異なる故障原因および作業範囲、処理されたまたは処理される予定のエンジンの数、各エンジンの作動環境、各エンジンの型式および識別子、各エンジンの作動条件、各エンジンをメンテナンスする場所、各エンジンが工場に入ってから各エンジンが出るまでの期間などを含む。
【0026】
本発明による方法は、全エンジン一式の挙動をモデル化することができ、データベース17に記録された全エンジンに関する異なる入力データの関数として、異なるエンジンに対するエンジン取り外し回数および作業範囲の予測を作り出す。この方法はまた、エンジンの技術的履歴を管理し、作業場3での異なるエンジン1に対する取り外し計画、作業範囲、および工場送りの日付を決定する際に、エンジンの経年変化を考慮する。
【0027】
より詳細には、処理手段11は、故障原因を時間の関数としてモデル化する統計的故障モデルを決定するために、データベース17に記録されたデータを使用するように構成される。より詳細には、処理手段11は、適合された1組の故障モデルを各エンジン型式およびその用途と関連づける。各故障モデルは、蓄積された故障確率曲線の形で時間の関数として(たとえば、図2および図3を参照のこと)表現されることができる。
【0028】
有利には、故障モデルは、エンジン1の部品の寿命または故障をモデル化するのに非常に適したワイブル則に基づいてもよい。ワイブル分布の確率密度f(t;β、η、γ)が、以下の形で表現されてもよい:
【数1】
【0029】
この法則は、3つのパラメータ、すなわち、形状パラメータβ、スケールパラメータη、および位置決めパラメータγを考慮するので、非常に融通がきく。
【0030】
このとき、ワイブル則の分布関数または故障の確率は、以下のように定義される:
【数2】
【0031】
この法則の融通性のために、大多数の故障記録が、ワイブル分布により満足のいくように説明されることができる。これは、詳細には、ワイブル則が、他の確率法則の挙動を再現することができるということにより説明される。たとえば、β=1である場合、ワイブル則は、指数分布と同等であり、β=2である場合、レイリー分布と同等であり、3<β<4である場合、正規分布と同等であり、β→∞である場合、ディラック型分布と同等である。いくつかの他の事例では、ワイブルの法則はまた、二項法則およびポアソンの法則を再現する。
【0032】
明らかに、時間をかけていくつかの故障モードを有するエンジン1の構成要素については、ワイブル則は、構成要素の年齢の関数として異なるパラメータで定義されてもよい。たとえば、始めに、構成要素の故障率が、低下している場合があり(β<1)、「初期故障」を表す。換言すれば、壊れやすい構成要素が、非常に早い時期にすぐに故障し、欠陥のある構成要素が除去された後の故障率低下を引き起こす。このとき、故障率は、構成要素の有用な有効期間の間を通して固定されたまま(β=1)である。最後に、故障率は、自然な摩耗段階の間、増加し始める(β>1)。このとき、3つの故障モードは、連続したバスタブ形状の曲線を形成する。
【0033】
亀裂などのなんらかの非線形現象を受ける構成要素については、他の統計法則が使用されることができることに留意されたい。このタイプの現象に対して、より該当する対数正規型分布が使用されることができる。
【0034】
図2は、所与の航空機エンジンに対するメンテナンス作業を予測するための、本発明による方法を示す。
【0035】
ステップE10は、データ、パラメータ、および入力変数の初期化と関係がある。これらの入力は、エンジン型式、エンジンの作動環境、エンジンの作動条件、このエンジンに適合された故障モデルなどを備える。
【0036】
入力はまた、起こりそうな故障原因と作業範囲の間の関連に最も大きな影響を及ぼすパラメータP1、P2、…、Pi、ならびにエンジン1に対する作業範囲に関する1組の決定規則Rを備える。
【0037】
1組の影響力の大きいパラメータP1、P2、…、Piは、エンジンの年齢、およびエンジンの再製制約条件に関するパラメータを備える。
【0038】
さらに、決定規則Rは、異なる故障モデルおよびすべてのパラメータの関数として作り上げられた論理的規則であってもよい。
【0039】
ステップE20で、処理手段11は、記憶手段13から、監視下にあるエンジン1に適合されたすべての故障モデルM1、M2、M3、…、Mnを使用することができる。故障モデルの各々は、たとえば時間で、または翼下のエンジンのサイクル数として表現された時間の関数として、0〜100%の間の、蓄積した故障の確率の法則により表される。サイクルがすべての飛行段階(離陸、飛行、および着陸)に対応することに留意されたい。これらの故障モデルM1、M2、M3、…、Mnは、出力手段15の一部を形成する画面上に表示されてもよい。
【0040】
ステップE30で、処理手段11は、エンジン1が故障時に有する年齢を定義する故障年齢Tを有する適切な故障モデルMiを選択するために、すべての故障モデルM1、M2、M3、…、Mnを比較するように構成される。
【0041】
有利には、適切なモデルは、すべての故障モデルM1、M2、M3、…、Mnに対してモンテ・カルロ・シミュレーションを使用して選択される。モンテ・カルロ・シミュレーションは、ワイブル則タイプの故障モデルM1、M2、M3、…、Mnの確率分布に対応する確率論的入力から決定論的出力を決定することができる。大数の法則のために、モンテ・カルロ・シミュレーションは、事象の決定論的発生数をこの事象の発生確率と関連づけることができる。
【0042】
この場合、エンジン1の構成要素の正常作動に対する確率分布H(t)は、次式により、時間t後の故障の確率の関数(または分布関数)F(t)として表現されてもよい:
【数3】
ここで、Pは、時間t後の故障の確率に対応する、モンテ・カルロ・シミュレーションにより引き出される0〜1の間の乱数である。
【0043】
したがって、故障時のエンジンの年齢に対応する時間tは、次式により得られる:
【数4】
【0044】
処理手段11は、1組の故障モデルM1、M2、M3、…、Mnごとにこの計算を行い、したがって、1組の故障年齢{t、t、…、t}を生成する。
【0045】
処理手段11は、この1組の故障年齢の中から適切な故障年齢、およびこの年齢に対応する故障モデルを選択するように構成される。たとえば、適切な故障年齢は、最小年齢
【数5】
に対応してもよい。この適切な故障年齢Tは、工場送りの日付を示すことができることに留意されたい。
【0046】
ステップE40で、処理手段11は、このエンジン1に対する1組のパラメータP1、P2、…、Piの関数として、エンジン1に対する作業範囲決定規則Rを適切な故障モデルMiと関連づけるように構成される。
【0047】
有利には、影響力の大きい1組のパラメータは、エンジン再製制約条件、ならびに故障時のエンジンの年齢、エンジンの最後の工場送り以来の時間または作動サイクルで表現されたエンジンの技術的履歴(または作動期間)、作業場3でのエンジンの工場送りの回数に対応するランクまたはSV(Shop Visit、工場送り)インデックス、およびエンジン1の複数の寿命制限部品(LLP)ごとの潜在的な余寿命を含むエンジンの年齢に関するパラメータを備える。
【0048】
ステップE50で、処理手段11は、これらの決定規則Rの関数として、エンジン1に対して行われる、必要なメンテナンスのための作業範囲(Wf)を決定するように構成される。
【0049】
したがって、処理手段11は、ステップE30で決定された適切な故障年齢Tにより示される工場送りのときに、最も現実的で可能な作業範囲を計画するために、最も起こりそうな故障原因(換言すれば、適切な故障モード)と、エンジンの履歴、再製制約条件、およびエンジンの工場送りのランクを含むことができる影響力の大きいパラメータとの間を関係させる。
【0050】
図3は、図2のメンテナンス作業予測方法の特定の一実施形態を示す。
【0051】
ステップE11は、図2のステップE10のように、データ、パラメータP1、…、Pi、および入力変数の初期化と関係がある。より詳細には、この例によれば、エンジン1に対する作業範囲に関する1組の決定規則Rは、1組の第1の規則モジュールR1および1組の第2の規則モジュールR2を備える。
【0052】
1組の第1の規則モジュールR1は、これらの第1のモジュールの各々が、決定された故障モデル、および作業場3での工場送りに対する決定されたSVランクと関連づけられるように定義される。
【0053】
図4は、エンジン作動時間に対する複数のレベルL1、L2、L3、または作業範囲を定義する第1の規則モジュールの一例を示す。換言すれば、第1の規則モジュールR1は、異なる作業範囲に対して、作業範囲を選択するための「臨界翼下時間」を含む。異なる作業範囲は、低圧コンプレッサLP、高圧コンプレッサHP、燃焼室、高圧タービンTHP、低圧タービンTBPなどに関係する場合がある。たとえば、排気ガス温度(EGT)マージンが、エンジン・コア・ガス・ジェネレータ(換言すれば、高圧コンプレッサHP、燃焼室、および高圧タービンTHPからなる組立体)に対して処置をとることにより再生される場合がある。
【0054】
図4の例は、エンジン1の翼下時間tの関数として、所与の故障原因Xにより必要とされる作業範囲の性質を示す3つのレベルを示す。このグラフは、0〜2000サイクルの間の、軽微なSV(工場送り)と呼ばれる第1のレベルL1、2000〜5000サイクルの間の、中間のSVと呼ばれる第2のレベルL2、および5000サイクルを超える翼下時間に対する重要なSVと呼ばれる第3のレベルL3を示す。軽微なSVレベルが、縮小された作業範囲を有する工場送りに対応し、中間のSVレベルが、エンジン・コア・ガス・ジェネレータに対する作業範囲に対応し、重要なSVレベルが、エンジン「コア」および低圧タービンTBPを包含する作業範囲に対応する。
【0055】
たとえば、第1の規則モジュールR1は、「カード」と呼ばれるcsv(comma−separated value)フォーマットのファイルを使用する、コンマで区切られた値の形式の表形式データに対応してもよい。したがって、図4のランク1の工場送りに対して、カードが以下のように構築されてもよい。
【0056】
−カード日付;レベル;原因X;レベル1;ランク1;エンジン型式;エンジン定格(換言すれば、エンジンにより出力されるスラストの関数としてのエンジンの下位型式);0;2000;軽微なSV。
【0057】
−カード日付;レベル;原因X;レベル2;ランク1;エンジン型式;エンジン定格;2000;5000;中間のSV。
【0058】
−カード日付;レベル;原因X;レベル3;ランク1;エンジン型式;エンジン定格;5000;50000;重要なSV。
【0059】
各レベルL1、L2、L3の下限および上限が、各エンジン型式の環境に関して、各エンジン型式に対して定義される。有利には、これらの限界は、作業場3で行われる作業範囲での作業経験の関数として修正または調節される。
【0060】
さらに、すべての第2の規則モジュールR2は、第1のモジュールR1のレベルL1、L2、L3ごとに、エンジン1の再製制約条件の関数として最終作業範囲を定義する。換言すれば、各第1の規則モジュールR1に対して、第1の規則モジュールの作業範囲と最終メンテナンス作業の間の関係を定義する第2の規則モジュールR2が存在する。第2の規則モジュールR2はまた、csvフォーマットのファイルまたはカードを使用して作成されてもよい。
【0061】
図3のステップE20およびE30は、図2を参照して説明されたステップに類似する。
【0062】
したがって、ステップE20で、処理手段11は、エンジン1に適合された1組の故障モデルM1、M2、M3、…、Mnを有する。
【0063】
たとえば、第1の故障モデルM1が、排気ガス温度EGTと関係がある故障原因に関し、第2の故障モデルM2が、コアに対する故障原因に関し、第3の故障モデルM3が、TBPに対する故障原因に関し、第nの故障モデルMnが、ファンに対する故障原因に関する。
【0064】
次いで、ステップE30で、処理手段11は、エンジン1に適合されたすべての故障モデルM1、M2、M3、…、Mnを比較して、エンジン1が故障時に有する年齢Tを有する適切な故障モデルMiを選択する。
【0065】
前の例を参照すると、適切なモデルMiは、故障モデルM1、M2、M3、…、Mnと、コアに対する第2の故障モデルM2での20kサイクル、TBPに対する第3の故障モデルM3での25kサイクル、およびファンに対する第nの故障モデルMnでの30kサイクルの初期LLPの可能性とを比較した後に選択された、18kサイクルでのEGTに対する第1の故障モデルM1であると仮定する。
【0066】
ステップE41およびE42で、処理手段11は、エンジンに関する1組のパラメータP1、…、Piの関数として、第1および第2の規則モジュールを組み入れる決定規則を、適切な故障モデルMiと関連づけるように構成される。
【0067】
より詳細には、ステップE41で、処理手段11は、エンジン1の作動時間に対して複数の作業範囲L1、L2、L3を定義する第1の規則モジュールR1を、適切な故障モデルMiと関連づける。
【0068】
次いで、処理手段11は、ステップE30で選択された適切な故障モデルMiに関連する故障年齢Tの関数として複数の作業範囲L1、L2、L3の中から適切なレベルを選択する。この第1の規則モジュールR1は、メンテナンス作業の最小作業範囲を提供することができる。
【0069】
前の例では、18kサイクルでのEGT故障に関する適切な故障モデルM1は、「コア」での最小作業に対する中間のSVに関連する第1の規則モジュールR1の第2のレベルL2ある。
【0070】
ステップE42で、処理手段11は、適切な故障モデルMiに関連する第1の規則モジュールR1の作業範囲L1、L2、L3と、対応するメンテナンス作業の間の関係を定義する第2の規則モジュールR2を選択する。
【0071】
第2の規則モジュールR2により、処理手段11は、必要なメンテナンス作業範囲を、ステップE41で選択された適切なレベルL2、エンジン再製制約条件、およびエンジン1の各寿命制限部品LLPの潜在的な余寿命の関数として決定することを可能にする。
【0072】
たとえば、原因Xおよび工場送りランク1に対する第2の規則モジュールR2について、カードが以下のように構成されていてもよい:
原因Xの番号;原因X;レベル1;LLPの必要性(Yes/No);ファンのLLPの必要性(Yes/No);コアのLLPの必要性(Yes/No);TBPのLLPの必要性(Yes/No);最終作業範囲コード;組み合わせ作業範囲(Yes/No);最終作業範囲。
【0073】
上述の例で、エンジン1の再製制約条件が、工場送りの間、LLPに対して8kサイクルであると仮定する。換言すれば、エンジン1は、工場を離れた後、少なくとも8000サイクルの間良好な条件にあるように、再構築されなければならない。残っている潜在能力が、コアに対して2000サイクル、TBPに対して7000サイクル、およびファンに対して12000サイクルであると仮定する。したがって、コアのLLPおよびTBPのLLPは、すべてのLLPが8000サイクルより大きな潜在能力を有するように、置換されなければならない。したがって、初期コア作業範囲をコア+TBPに増大させる、コアおよびTBPのLLPが必要である。
【0074】
したがって、これらの第1および第2の決定モジュールにより、処理手段11は、以前に決定された適切な故障年齢Tにより与えられる、作業場3での工場送りの間に、エンジン1に対して行われる、必要なメンテナンス作業範囲Wf(最終作業範囲)を決定する。
【0075】
有利には、1組のパラメータは、対象とするエンジンに対するメンテナンス作業が完了した後に修正される。これにより、この作業範囲の結果を考慮して、次の作業範囲をより正確に決定することが可能になる。
【0076】
最適なメンテナンス作業を予知するとき、以下のパラメータ、すなわち、故障年齢、工場送りのランク、エンジンの寿命制限部品LLPごとの潜在的な余寿命、およびエンジン再製制約条件すべてを考慮することが有利であることに留意されたい。明らかに、本発明による方法は、より多くのパラメータで、またはこれらのパラメータの一部だけで、同様に上手く作動する。たとえば、工場送りのランクに対応するパラメータは、無視されてもよい。
図1
図2
図3
図4