(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
近年、USB(Universal Serial Bus)は、例えばPC(Personal Computer)などのホストコンピューター(以下、USBホストともいう)と、マウス、キーボード、スキャナー、プリンターなどの周辺機器(以下、USBデバイスともいう)とを接続するために用いられるようになってきた。
【0003】
また、近年、ホストコンピューターのみならず、周辺機器においても電力消費量を低減させるために、低消費電力となる省電力モードを持つ機器が増えてきた。
【0004】
しかし、USBで接続された周辺機器では、一定時間ごとにホストコンピューターからステータス応答要求が出され、周辺機器はそのステータス応答要求に応えなければならないため、長く省電力モードにいることが出来なかった。
【0005】
この問題を解消して、長く省電力モードに留まるために、例えば特許文献1に開示されている技術が開発された。特許文献1に開示されている技術では、プリンターが省電力モードに移行できる状態になると、プリンターからホストコンピューターに省電力モードに移行可能であることを伝達する。するとホストコンピューターは、プリンターが接続されたUSBポートのみをサスペンド状態にして、これ以後プリンターに対し、ステータス応答要求を出さない。
【0006】
プリンターはUSBポートがサスペンド状態になることでステータス応答要求をホストから受信することが無くなり、省電力モードに移行して、そのモードを長く継続することが出来るようになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1の技術では、プリンターの接続されたUSBポートがサスペンド状態になっており、プリンターが省電力モードになっている状態において、ホストコンピューターが印刷を実行する必要が発生すると、ホストコンピューターは、プリンターの接続されたUSBポートのサスペンド状態を解除する。USBポートのサスペンド状態が解除されステータス応答要求の送信が再開されることにより、プリンターも省電力モードから通常電力モードに復帰し、要求された印刷を行うことが出来る。
【0009】
このように、特許文献1の技術では、USBホスト側において発生したイベントをトリガーとして、USBポートのサスペンド状態を解除し、USBデバイスを通常電力モードに復帰させることは出来た。
【0010】
しかし、USB3.0以前のUSB規格では、省電力モードにあるUSBデバイスにおいて、USBホスト側からのUSBケーブルを経由した指示以外の、ユーザーによる何らかの操作(例えば操作パネルのボタン押下)など、USBデバイスを省電力モードから通常電力モードに復帰させるイベントが発生した場合、そのイベントをトリガーとして、USBデバイスが通常電力モードに復帰したことをUSBホスト側に通知することは出来なかった。
【0011】
なお、USB3.0の規格からは、周辺機器などのUSBデバイスからUSBホストに対し、通信を開始することが出来るように規定された。しかし、まだ市場の大半の周辺機器ではUSB2.0しか実装されていない。また、今後も低価格の周辺機器では、USB2.0のみを実装することも考えられる。そのため、USBデバイス側から通信を開始できない、USB3.0以前のUSB規格のみを実装するUSBデバイスにおいても、USBデバイスにおいて発生したイベントをUSBホスト側に通知する機能は重要である。
【0012】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、USB2.0までのUSB接続において、ホスト側からのステータス応答要求の受信を前提とせずに、USBデバイス側からホスト側にイベントの発生を通知できる電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る電子機器は、ホストとの接続に用いるUSB信号線を介して前記ホストと通信する送受信部と、前記通信の速度の指定を前記ホストに検知させるために、前記USB信号線を所定電位にプルアップするプルアップ抵抗と、前記プルアップの設定および解除を行うスイッチと、前記ホストから受信したステータス応答要求に対し、前記ホストにステータス応答を送信する通常電力モードと、前記通常電力モードにおいて、省電力モードに移行可能な場合に、前記ステータス応答要求に対して前記省電力モードに移行可能である旨を応答し、前記応答を受信した前記ホストが前記ステータス応答要求を送信しなくなった後に移行する省電力モードとを切り替え可能であり、前記省電力モードにおいて、自機器内での特定のイベントに起因して前記通常電力モードに移行したとき、前記スイッチを用いて前記プルアップの設定を解除して前記ホストに前記接続が切断されたと認識させ、前記解除したプルアップを再度設定して前記ホストに再度前記接続が行われたと認識させることにより、前記ホストに前記ステータス応答要求の送信を再開させる制御部とを備える。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、本発明によれば、USB2.0までのUSB接続において、ホスト側からのステータス応答要求の受信を前提とせずに、USBデバイス側からホスト側にイベントの発生を通知できる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。なお、以下の説明では、特に断らない限り、USB2.0を前提としている。但し、USB3.0以降のUSB規格においても用いることは出来る。
【0017】
また、USBデバイス側が省電力モードになっている場合は、USBポートがサスペンド状態になっており、ホスト側からステータス応答要求は送信されないものとする。
【0018】
[電子機器の構成]
まず、本発明の一実施形態にかかる電子機器の構成を説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る電子機器10の構成図である。
【0019】
電子機器10は、ホストコンピューターの周辺機器であり、ホストコンピューターとUSBにより接続される。電子機器10は、例えばプリンターなどである。電子機器10は、送受信部11、スイッチ12、プルアップ抵抗13、および制御部14を備えている。
【0020】
また、電子機器10は、信号線D+および信号線D−を含んだUSBケーブル21によりホストコンピューターと接続される。
【0021】
送受信部11は、USB規格に基づき、ホスト側と信号線D+、D−を用いて信号の遣り取りを行う。
【0022】
プルアップ抵抗13は、信号線D+またはD−をプルアップすることにより、ホスト側に、電子機器10が用いる転送速度を通知する。なお、
図1では、信号線D+をプルアップ抵抗13によりプルアップし、ホスト側に、電子機器10が、「フルスピード」または「ハイスピード」での通信が可能であることを通知する構成となっている。しかし、この構成に限らず、信号線D−をプルアップ抵抗13によりプルアップする構成でもよい。
【0023】
スイッチ12は、プルアップされる信号線D+またはD−と、プルアップ抵抗13とに、直列に介挿され、信号線D+またはD−のプルアップの設定および解除を行う。設定および解除の指示は、制御部14から出される。
【0024】
制御部14は、電子機器10全体の制御や、送受信部11を介したホストとの通信、プルアップの設定および解除を行う。なお、電子機器10全体の制御には、電子機器10の省電力モードおよび通常電力モードへの切り替えも含まれる。
【0025】
以上、本発明の一実施形態にかかる電子機器の構成を説明した。
【0026】
[ホストコンピューターの構成]
次に、ホストコンピューターの構成について簡単に説明する。ホストコンピューターとしては、一般的なPC(Personal Computer)などを用いることが出来るため、構成の詳細については説明を省略する。
【0027】
但し、本発明の一実施形態にかかる電子機器10とUSB接続されるホストコンピューターでは、通常は、電子機器10に対してステータス応答要求を送るが、ステータス応答要求に対する応答として、電子機器10側から省電力状態へ移行可能な旨が応答された場合にはステータス応答要求の送信を止めるという構成上の特徴がある。
【0028】
以上、ホストコンピューターの構成について簡単に説明した。
【0029】
[省電力モードへの移行の流れ]
次に、電子機器10が通常電力モードから省電力モードに移行するまでの、ホストコンピューターおよび電子機器10における処理の流れについて説明する。
図2は、電子機器10が通常電力モードから省電力モードに移行するまでの、ホストコンピューターおよび電子機器10における処理の流れについて説明するためのフローチャートである。なお、図および以下の説明では、ホストコンピューターをUSBホスト、電子機器10をUSBデバイスと呼んでいる。
【0030】
まず、USBホストの制御部がステータス応答要求をUSBデバイスへ送信する(ステップS1)。
【0031】
次に、USBデバイスの制御部14が送受信部11を介してステータス応答要求を受信する(ステップS2)。
【0032】
次に、USBデバイスが省電力モードへ移行可能である場合、USBデバイスの制御部14は、送受信部11を介して、USBホストに対して、省電力モードへ移行可能である旨を送信する(ステップS3)。なお、ここでいう省電力モードへ移行可能である状態とは、例えばUSBデバイスがプリンターである場合、所定の一定時間に亘り印刷ジョブやユーザーによる操作などが発生していない状態のことである。
【0033】
次に、USBホストの制御部が、USBデバイスが省電力モードへ移行可能である旨を受信する(ステップS4)。
【0034】
次に、USBホストの制御部が、USBデバイスへのステータス応答要求の送信を停止する(ステップS5)。
【0035】
次に、USBデバイスの制御部14が、USBホストからのステータス応答要求の受信が無くなってステータス応答を返す必要が無くなったことにより、省電力モードへ移行する(ステップS6)。
【0036】
以上、電子機器10が通常電力モードから省電力モードに移行するまでの、ホストコンピューターおよび電子機器10における処理の流れについて説明した。
【0037】
[ステータス応答要求の送信再開までの流れ]
次に、ホストコンピューター(USBホスト)が電子機器10(USBデバイス)に対し、ステータス応答要求の送信を再開するまでの処理の流れについて説明する。
図3は、ホストコンピューター(USBホスト)が電子機器10(USBデバイス)に対し、ステータス応答要求の送信を再開するまでの処理の流れについて説明するためのフローチャートである。
【0038】
まず、前提として、USBホストがUSBデバイスへのステータス応答の送信を停止中であり(ステップS10)、USBデバイスが省電力モードにあるものとする。
【0039】
まず、USBデバイスにおいて、USBデバイスを省電力モードから通常電力モードへ復帰させるイベントが発生したとする(ステップS11)。なお、ここでいうイベントとは、例えばUSBデバイスがプリンターである場合、ユーザーによる操作パネルの操作や、USB接続以外のLAN接続などにより接続されたPCからの印刷要求の受信などである。
【0040】
次に、USBデバイスの制御部14は、USBデバイスを省電力モードから通常電力モードに復帰させる(ステップS12)。
【0041】
次に、USBデバイスの制御部14は、USBデバイスが通常電力モードに復帰したことをUSBホストに通知するために、現在、信号線D+またはD−に設定されているプルアップを、スイッチ12をオフすることにより、解除する(ステップS13)。
【0042】
次に、USBホストの制御部は、信号線の電位が下がったことを検知し、USBデバイスとのUSB接続が切断されたと認識する(ステップS14)。
【0043】
次に、USBデバイスの制御部14は、スイッチ12を再びオンにすることにより、信号線に対し、再度プルアップを設定する(ステップS15)。
【0044】
次に、USBホストの制御部は、信号線がプルアップされたことを検知し、新たにUSB接続がなされたと認識する(ステップS16)。
【0045】
次に、USBホストの制御部は、新たにUSBケーブルが接続された場合と同じ接続処理を、USBデバイスの制御部14との間で行う(ステップS17およびステップS18)。
【0046】
接続処理が完了すると、次に、USBホストの制御部は、USBデバイスに対し、ステータス応答要求の送信を再開する(ステップS19)。
【0047】
次に、USBデバイスがステータス応答要求を受信する(ステップS20)。
【0048】
次に、USBデバイスの制御部14は、USBデバイスのステータスに関する情報を収集し、ステータス応答としてUSBホストに送信する(ステップS21)。
【0049】
次に、USBホストの制御部が、ステータス応答をUSBデバイスから受信する(ステップS22)。
【0050】
以上、ホストコンピューター(USBホスト)が電子機器10(USBデバイス)に対し、ステータス応答要求の送信を再開するまでの処理の流れについて説明した。
【0051】
[補足事項]
その他、本発明は、上述の実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。