(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記転写フィルムは、前記外側樹脂層が押出ラミネートにより前記内側樹脂層の両面に積層されたものであり、2つのロールの内少なくとも一方の表面に凹凸が形成されたロールで加圧されて形成されることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の積層フィルム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1・2は、回路基板のプレス工程でクッション材として用いられるものであるため、離型フィルムの被転写層に対する剥離性が高すぎるため十分な接着力が得られない虞がある。また、一般的に、セパレートフィルムは一層の樹脂で形成されるものであり、条件によってはセパレートフィルムが貼り付けられるカバーフィルムに対する形状追従性が低下するため、プリント配線板のグランド用配線パターンが絶縁フィルムから露出した箇所が小径である場合、導電性接着剤層の十分な埋め込み性が得られない問題があった。
【0007】
そこで、本発明は、良好な埋め込み性・加工性を得ることができ、転写フィルムの被転写層に対する接着力を適切に制御することができる積層フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の積層フィルムは、
結晶化された内側樹脂層と、前記内側樹脂層の一方面及び他方面にそれぞれ積層された
結晶化された外側樹脂層とを有し、これら外側樹脂層の少なくとも一方の外側表面に凹凸パターンが形成された転写フィルムと、前記転写フィルムにおける前記凹凸パターンが形成された外側表面に引き剥がし可能に積層され、前記凹凸パターンによる転写パターンが形成された被転写層とを有しており、前記内側樹脂層がポリエチレンテレフタレートにより形成され、前記外側樹脂層がポリブチレンテレフタレートにより形成されていることを特徴とする。
【0009】
上記構成によれば、転写フィルムはポリエチレンテレフタレートにより形成された内側樹脂層の両面に、ポリブチレンテレフタレートにより形成された外側樹脂層が積層されている。これにより、被転写層の形状変化に対する転写フィルムの追従性が向上するため、良好な埋め込み性を得ることができる。また、ポリエチレンテレフタレートにより形成された内側樹脂層が積層されていることで、温度の変化等によって外側樹脂層の外側表面が面方向に膨張・収縮するような場合でも内側樹脂層によって外側樹脂層の変形が軽減される。さらに、外側樹脂層が内側樹脂層の両面に積層されているため、外側樹脂層の外側表面が面方向に膨張・収縮しようとする力を互いに相殺させることができ、転写フィルムの変形がより軽減される。したがって、本発明の積層フィルムを有するシールドフィルムをプリント配線基板に貼りあわせて加熱プレスした際に、積層フィルムの変形に起因する不具合の発生を防止することができる。
さらに、転写フィルムと被転写層との接着面において、凹凸パターンと転写パターンとが形成されることによって、アンカー効果により被転写層に対する転写フィルムの接着力を高め、薬液に浸漬する等の一般的な後工程において転写フィルムが被転写層から剥離することを防止することができ、このような工程において薬液が転写フィルムと被転写層との間に入り込むことを防止することができる。
【0010】
また、本発明の積層フィルムは、前記外側樹脂層に形成された前記凹凸パターンの算術平均粗さ(Ra)が0.2μm〜2.5μmである構成であってもよい。
上記構成によれば、転写フィルムの被転写層に対する接着力が適正なものとなる。
【0011】
また、本発明の積層フィルムは、前記外側樹脂層に形成された前記凹凸パターンの算術平均粗さのばらつきが0.50μm以下である構成であってもよい。
上記構成によれば、0.50μm以下に形成されていることにより、転写フィルムの被転写層に対する接着面の各部における接着力を安定させることができる。
【0012】
また、本発明の積層フィルムにおいて、前記転写フィルムは、前記外側樹脂層が押出ラミネートにより前記内側樹脂層の両面に積層されたものであり、2つのロールの内少なくとも一方の表面に凹凸が形成されたロールで加圧されることにより、外側樹脂層に凹凸を形成してもよい。
上記構成によれば、押出ラミネートにより内側樹脂層の両面に外側樹脂層が積層された積層体が、少なくとも一方のロール面に凹凸が形成された2つのロールで加圧されて形成される。これにより、外側樹脂層における凹凸パターン、及び、凹凸パターンによって形成される被転写層の転写パターンの算術平均粗さのばらつきを軽減し、転写フィルムと被転写層との接着力、剥離力を安定させることができる。また、上記構成によれば、前記積層フィルムをプリント配線板に載置し、加熱・加圧プレスした際、被転写層に対する転写フィルムの接着力が著しく低下する。これにより、転写フィルムを被転写層から剥がす作業が容易となる。
【0013】
また、本発明の積層フィルムにおいて、前記被転写層は、導電性接着剤層と、前記導電性接着剤層上に積層された金属層と、前記金属層上に積層された保護層と、を有するシールドフィルムにおける前記保護層であってもよい。
上記構成の転写フィルムによれば、転写フィルムの変形が防止されるため、シールドフィルムへの積層を容易に行うことができる。さらに、転写フィルムが良好な埋め込み性を有していることにより、プリント配線板の絶縁フィルムのグランド配線パターンの露出箇所に導電性接着剤を埋め込む際に生じる空隙が形成されることを低減し、グランド用配線パターンとの導通低下を軽減することができる。
【0014】
また、本発明の積層フィルムにおいて、前記被転写層は、導電性接着剤層と、前記導電性接着剤層上に積層された保護層と、を有するシールドフィルムにおける前記保護層であってもよい。
上記構成によれば、転写フィルムの変形が防止されるため、シールドフィルムへの積層を容易に行うことができる。さらに、転写フィルムが良好な埋め込み性を有していることにより、絶縁フィルムのグランド配線パターンの露出箇所に導電性接着剤を埋め込む際に生じる空隙が形成されることを低減し、グランド用配線パターンとの導通低下を防止することができる。
【0015】
本発明のシールドプリント配線板は、前記シールドフィルムをプリント配線板に接着したことを特徴とする。
上記構成によれば、前記シールドフィルムをプリント配線板に貼りあわせて加熱プレスした際、前記積層フィルムの変形に起因する不具合の発生を防止することができるとともに、前記転写フィルムを前記保護層から剥がす作業が容易であるシールドプリント配線板が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0018】
(積層フィルム1の構成)
図1に示す積層フィルム1は、内側樹脂層62と、内側樹脂層の一方面及び他方面にそれぞれ積層された外側樹脂層63・63とを有し、これら外側樹脂層63・63の少なくとも一方の外側表面に凹凸パターン61が形成された転写フィルム6と、転写フィルム6における凹凸パターン61が形成された外側表面に引き剥がし可能に積層され、凹凸パターン61による転写パターン71が形成された被転写層7とを有している。また、本実施形態では、転写フィルム6と被転写層7とが離型剤を塗布して形成された離型層6bを介して積層されている。
【0019】
内側樹脂層と外側樹脂層とは、接着剤によって接着されてもよいし、接着剤を用いずに熱融着等によって積層するものであってもよいが、熱融着によって積層した場合には、押出ラミネートにより、内側樹脂層と外側樹脂層との密着が良好な積層フィルムを容易に製造することができる。また、2つの外側樹脂層は、同じ層厚で形成されることが好ましいがこれに限定されない。
【0020】
(転写フィルム6)
図1に示すように、転写フィルム6は、内側樹脂層62の一方面及び他方面に外側樹脂層63・63が夫々積層されている。本実施形態では、内側樹脂層62がPET(ポリエチレンテレフタレート)樹脂で形成され、外側樹脂層63・63がいずれもPBT(ポリブチレンテレフタレート)樹脂で形成されている。ここで、PBT樹脂及びPET樹脂の一般的な物性及び特性の比較を表1に示す。
【0022】
表1に示すように、PBT樹脂及びPET樹脂は、物理的性質・成形特性・機械的性質が非常に似た材料であることがわかる。
従って、内側樹脂層62をPET樹脂で形成し、外側樹脂層63・63をいずれもPBT樹脂で形成することにより、例えば、転写フィルム6に温度変化が生じた場合でも外側樹脂層63・63が同様に収縮・膨張するため、カール等の変形を防止することができる。さらに、外側樹脂層63がPBT樹脂により形成されているため圧力等が付加された場合に形状が変化され易い。即ち、外側樹脂層63は、積層された被転写層の形状変化に追従し易く、良好な埋め込み性を得ることができる。
【0023】
また、内側樹脂層62および外側樹脂層63の樹脂を結晶化させて使用することで、熱収縮率が小さくなるようにして転写フィルム6の変形を軽減することができる。
【0024】
内側樹脂層62の材料としてはPET樹脂が、外側樹脂層63の材料としては、PBT樹脂が好ましいがこれに限定されない。これ以外に、例えば、外側樹脂層63の材料としてポリエチレンナフタレート、ポリイミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ナイロン、ポリカーボネイト、ポリメチルペンテンが挙げられ、内側樹脂層62の材料としてポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリエチレンナフタレート、ポリイミドが挙げられる。 内側樹脂層62の層厚の下限値は6μmが好ましく、8μmがより好ましく、25μmがさらに好ましい。また上限値は50μmが好ましく、38μmがより好ましい。外側樹脂層63の層厚の下限値は6μmが好ましく、8μmがより好ましい。また上限値は30μmが好ましく、20μmがより好ましく、12μmがさらに好ましい。
【0025】
また、
図1に示すように、外側樹脂層63の被転写層7との積層面には、その面全体に複数の凹凸形状からなる凹凸パターン61(凸部61a、凹部61b)が形成されている。
【0026】
(転写フィルム6:製造方法)
ここで、転写フィルム6の製造方法について説明する。転写フィルム6は、外側樹脂層63が押出ラミネートにより内側樹脂層62の両面に積層されたものであり、少なくとも一方の表面に凹凸が形成された2つのロールで加圧されて形成される。
具体的に、先ず、温度280℃〜290℃に設定した押出機(吐出幅1300mm)によりPET樹脂を押出して内側樹脂層62をフィルム状に形成し、ロールに巻き取る。そして、
図2に示すように、PET樹脂を巻き取った内側樹脂層用ロール21をサプライにして、フィルム状に形成された内側樹脂層62を算術平均粗さが0.2μm〜2.5μmに形成されたエンボスロール23とキャスティングロール24との間に供給する。一方、温度220℃〜260℃に設定した2つのフィルム押出機22・22(有効押出し幅1300mm)によりPBTを押出するとともに、押出したフィルム状の外側樹脂層63・63を、それぞれが内側樹脂層62の一方面と他方面とに積層されるように、エンボスロール23とキャスティングロール24との間に供給する。内側樹脂層62及び外側樹脂層63・63の積層体はエンボスロール23とキャスティングロール24との間で加圧されると共に、エンボスロール23側に積層された外側樹脂層63の外表面には算術平均粗さが0.2μm〜2.5μmの凹凸パターン61が形成されることになる。このようにして、内側樹脂層62(PET樹脂)の両面に外側樹脂層63・63(PBT)をラミネートした転写フィルム6を形成するとともに、転写フィルム6に凹凸パターン61を形成することができる。このように形成された転写フィルム6は転写フィルム用ロール25に巻き取られて保管等される。外側樹脂層63は1台のフィルム押出機22で1層ずつ積層するようにしてもよい。
尚、
図2において、冷却用のロール等を省略しており、押出した後の樹脂の冷却やフィルム状樹脂の端部の成型等は適宜行われる。
また、上記製造方法は、材料、設計などにより適宜変更される場合がある。
【0027】
凹凸パターン61は、外側樹脂層63の外側表面全面に形成されることが好ましいがこれに限定されない。また、凹凸パターン61の態様は限定されず、例えば、所定のパターンが繰り返し形成されるものであってもよいし、凹凸がランダムに形成されるものであってもよい。また、2つの外側樹脂層63・63の両方に凹凸パターン61を形成する場合は、2つのエンボスロール23でラミネート加工することとしてもよい。
なお、凹凸パターン形成について製造ロットの凹凸形状のばらつきを少なくするには、サンドブラスト加工、ケミカルマットコートよりも、エンボスロールに形成された凹凸形状により所定の形状が継続して形成できるエンボスロール加工が好ましい。また、エンボスロール加工された転写フィルムを用いたシールドフィルムをプリント配線板に載置し、加熱・加圧プレスしてシールドプリント配線板を作製した際、被転写層に対する転写フィルムの接着力が大きく低下する。これにより、転写フィルムを被転写層から剥がす作業が容易となる。
【0028】
(被転写層7)
図3に示すように、本実施形態では、被転写層7は、導電性接着剤層8aと、導電性接着剤層8a上に積層された金属層8bと、金属層8b上に積層された保護層と、を有するシールドフィルムにおける保護層である。即ち、被転写層7は、カバーフィルムや絶縁樹脂のコーティング層からなる保護層である。
カバーフィルムを構成する材料としては、ポリエステル、ポリベンツイミダゾール、アラミド、ポリイミド、ポリイミドアミド、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエチレンナフタレート(PEN)などが挙げられる。
あまり耐熱性を要求されない場合は、安価なポリエステルフィルムが好ましく、難燃性が要求される場合においては、ポリフェニレンサルファイドフィルム、さらに耐熱性が要求される場合にはアラミドフィルムやポリイミドフィルムが好ましい。
絶縁樹脂は、絶縁性を有する樹脂であればよく、例えば、熱硬化性樹脂又は紫外線硬化性樹脂などが挙げられる。熱硬化性樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、シリコン樹脂、アクリル変性シリコン樹脂などが挙げられる。紫外線硬化性樹脂としては、例えば、エポキシアクリレート樹脂、ポリエステルアクリレート樹脂、及びそれらのメタクリレート変性品などが挙げられる。尚、硬化形態としては、熱硬化、紫外線硬化、電子線硬化などどれでもよく、硬化するものであればよい。
尚、外側樹脂層63は、無色透明であることによる剥離忘れ防止の観点から、顔料(例えば、白等)を樹脂溶融時に添加することにより、着色が行われることが好ましい。
また、被転写層7の厚みの下限は、1μmが好ましく、3μmがより好ましく、5μmがさらに好ましい。また、被転写層の厚みの上限は、15μmが好ましく、10μmが好ましく、7μmがさらに好ましい。 また、被転写層7は、シールドフィルムの保護層に限定されず、カバーフィルム、アンチグレアフィルム等フィルムに使用することができる。
【0029】
また、被転写層7は、単層構造に限定されるものではなく、複数層構造であってもよい。例えば、耐摩耗性・耐ブロッキング性に優れた樹脂からなる転写フィルム6側のハード層とクッション性に優れた樹脂からなるソフト層とを順次コーティングすることによって形成した2層構造であってもよい。
【0030】
本実施形態では、被転写層7は、転写フィルム6の片面(外側樹脂層63のうち凹凸パターン61が形成された面)に離型層6bをコーティングした後、被転写層7に用いる樹脂をコーティングすることによって形成される。これにより、転写フィルム6に被転写層7が剥離可能に積層された状態で、転写フィルム6の凹凸パターン61が被転写層7に転写されて転写パターン71(頂部71a、底部71b)が形成される。即ち、凹凸パターン61の凸部61aによって転写パターン71の底部71bが形成され、凹凸パターン61の凹部61bによって転写パターン71の頂部71aが形成される(
図1参照)。
より具体的に説明すると、転写フィルム6に被転写層7が剥離可能に積層された状態において、凹凸パターン61の凸部61aが転写パターン71の底部71bと係合し、凹凸パターン61の凹部61bが転写パターン71の頂部71aと係合する。この結果、アンカー効果により被転写層7に対する転写フィルム6の接着力を高め、薬液に浸漬する等の一般的な後工程において転写フィルム6が被転写層7から剥離することを防止することができ、このような工程において薬液が転写フィルム6と被転写層7との間に入り込むことを防止することができる。
尚、転写フィルム6が剥がされた後の被転写層7の転写パターン71が設けられた面の算術平均粗さは、0.2μm〜2.5μmとするのがよく、更には、0.5μm〜1.7μmが好ましい。0.2μmより小さくなると、被転写層に対する転写フィルムの接着力が小さくなりすぎて、薬液に浸漬する等の一般的な後工程において、転写フィルムが被転写層から剥離する場合がある。2.5μmより大きくなると、転写フィルムを被転写層から剥がす際に、過剰に大きな接着力によって、被転写層自体が破れてしまうことがある。さらに、転写フィルム6が剥がされた後の被転写層7の転写パターン71が設けられた面の算術平均粗さのばらつきは0.50μm以下となる構成であってもよい。算術平均粗さのばらつきが0.50μm以下となることにより、転写フィルム6と被転写層7の接着面の各部における接着力を安定させることができる。
また、転写フィルム6の片面に被転写層7を成層する方法としては、コーティングが好ましいが、コーティング以外の層形成方法としてラミネート、押し出し、ディッピングなどを用いてもよい。
【0031】
(離型層6b)
離型層6bは、転写フィルム6が被転写層7に対して剥離性を有するものであれば、特に限定されるものではなく、シリコン系、非シリコン系の離型剤を用いることができる。また、離型層6bの厚みの最大値は、転写フィルム6における凹凸パターン61の高さよりも小さいことが好ましい。凹凸がある転写フィルム6に離型剤をコーティングすると、凹凸パターン61における各凹部に離型剤がたまり、転写フィルム6に自然に離型剤が分散した形となる。すなわち、被転写層7を積層する過程で自然に離型剤が分散されて転写フィルム6の表面に略均一に配置された状態にすることができる。これにより、被転写層7に対する転写フィルム6の接着力を、転写フィルム6を被転写層7から引き剥がす際に、過剰に大きな接着力によって被転写層7自体が破れてしまわない程度に抑制することができる。このように、転写フィルム6の被転写層7に対する接着力を適度にコントロールすることができるため、過剰に大きな接着力や小さな接着力で接着することによる不具合を防止することができる。
また、転写フィルム6を被転写層7から剥がす際の転写フィルム6の被転写層7に対する剥離強度は、加熱・加圧前の状態で1N/50mm〜20N/50mmとするのがよい。剥離強度の値が1N/50mmより小さい値であると、薬液に浸漬した場合に転写フィルム6が被転写層7から剥がれてしまい、一方、剥離強度の値が20N/50mmより大きい値であると、セパレートフィルム(転写フィルム6)の被転写層7に対する接着力が強すぎて、転写フィルム6を剥す際に被転写層7まで剥してしまい被転写層7が破れてしまうからである。また、シールドフィルムをプリント配線板に貼り付けるための加熱プレスを行った後の被転写層7に対する剥離強度は、0.2N/50mm〜3.0N/50mmとするのがよく、更には、0.2N/50mm〜1.0N/50mmとするのが好ましい。剥離強度の値が0.2N/50mmより小さい値であると、加熱プレス後に転写フィルム6が被転写層7から自然に剥がれてしまうことがあり、一方、剥離強度の値が3.0N/50mmより大きい値であると、人又は製造装置が被転写層から転写フィルムを剥す際の作業性が悪くなってしまう。
また、本実施形態では、転写フィルム6と被転写層7とは、離型層6bを介して積層されるものであるがこれに限定されず、離形性のある樹脂を介して積層してもよい。または、離型剤を介さずに積層されてもよい。離型性のある樹脂や離型剤を介さない場合、外側樹脂層の何れかを離型剤を添加した材料により形成してもよい。
【0032】
ここで、加熱・加圧前の状態での転写フィルム6の被転写層7に対する剥離強度は、以下のように測定したものである。具体的に、
図7に示すように、プレス前(加熱・加圧前)のシールドフィルム10の導電性接着剤層8aの面に両面テープを張り付け、その両面テープの片面を、試験機(PALMEK製 PFT-50S 剥離強度テスター)の台座に張り合わせてシールドフィルム10を固定する。そして、シールドフィルム10の転写フィルム6の端部を試験機のチャック(図示省略)にセットし、転写フィルム6の被転写層7に対する剥離強度を測定する。ここで、剥離条件としては、
図7に示すように、剥離角度を170°とし、チャックによる転写フィルム6の剥離速度を1000mm/minとしている。そして、試験回数としては5回行い、各回で得られた剥離強度値の最大値と最小値を剥離強度の値として算出する。
【0033】
(シールドフレキシブルプリント配線板100)
図3は、ベースフィルム2上に形成され、信号回路3aとグランド回路3bからなるプリント回路3のうちグランド回路3bの少なくとも一部(非絶縁部)3cを除いて絶縁フィルム4により被覆してなる基体フィルム5上に、シールドフィルム10を載置し、プレス機等によって層方向へ加熱しつつ加圧している状態を示す説明図である。
【0034】
ここで、ベースフィルム2とプリント回路3との接合は、接着剤によって接着しても良いし、接着剤を用いない、所謂、無接着剤型銅張積層板と接合しても良い。また、絶縁フィルム4は、接着剤を用いて可撓性絶縁フィルムを張り合わせても良いし、感光性絶縁樹脂の塗工、乾燥、露光、現像、熱処理などの一連の手法によって形成しても良い。また、更には、基体フィルム5は、ベースフィルムの一方の面にのみプリント回路を有する片面型FPC、ベースフィルムの両面にプリント回路を有する両面型FPC、この様なFPC(フレキシブルプリント配線板)が複数層積層された多層型FPC、多層部品搭載部とケーブル部を有するフレクスボード(登録商標)や、多層部を構成する部材を硬質なものとしたフレックスリジッド基板、或いは、テープキャリアパッケージの為のTABテープ等を適宜採用して実施することができる。
【0035】
シールドフィルム10は、転写フィルム6と、シールドフィルム本体9とを備える。シールドフィルム本体9は、転写フィルム6上にコーティングすることによって形成された被転写層7と、被転写層7の転写フィルム6に接する面と反対の面に金属層8bを介して設けられた接着剤層8aとを有する。ここでは、導電性接着剤からなる接着剤層8aと金属層8bとで電磁波シールド層8が形成される。この電磁波シールド層8において、加熱により軟かくなった接着剤層8aに圧力が加わると、接着剤が絶縁除去部4aに矢印のように流れ込み、グランド回路3bと導通する(
図3参照)。このように、本実施形態では基体フィルム5(プリント配線板)のグランド回路3bに、導電性接着剤層8aが接続されている構成であるがこれに限定されず、必ずしも導電性接着剤層がプリント配線板のグランドに接続されている必要はない。
【0036】
接着剤層8aの上述のような変形が生じると、
図4に示すように、金属層8bに対して接着剤層8aの変形に追従する方向へ力が加わり、金属層8bが変形する。そして、被転写層7、凹凸パターン61が形成された外側樹脂層63、内側樹脂層62、最外層の外側樹脂層63の順に同様の方向へ力が加わり変形が生じることになる。このとき、被転写層7と外側樹脂層63とが接着されているため、被転写層7の変形に起因する力が、外側樹脂層63へ良好に伝達される。また、外側樹脂層63がポリブチレンテレフタレート、内側樹脂層62がポリエチレンテレフタレートにより形成されているため、被転写層7の変形に対して外側樹脂層63が良好な追従性を呈することができる。これにより、転写フィルム6及び被転写層7からなる積層体全体が、接着剤層8aの変形に追従することができるため、接着剤層8aの絶縁除去部4aへ流れ込む方向への変形を阻害しない。即ち、転写フィルム6及び被転写層7を用いることによって、絶縁除去部4aにおいて接着剤層8aとの空隙ができることを防止することができ、埋め込み性を向上することができる。
そして、接着剤層8aがグランド回路3bの非絶縁部3c及び絶縁フィルム4と十分に接着してシールドフレキシブルプリント配線板100を形成した後、シールドフィルム10の転写フィルム6を離型層6b(
図1参照)とともに剥離すると、被転写層7の表面に転写パターン71が設けられた、
図5に示すシールドFPC101が得られる。
【0037】
ベースフィルム2、絶縁フィルム4を構成する材料は、例えば、ポリエステル、ポリベンツイミダゾール、ポリイミド、ポリイミドアミド、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、エポキシ等の樹脂が挙げられる。あまり耐熱性を要求されない場合は、安価なポリエステルフィルムが好ましく、難燃性が要求される場合においては、ポリフェニレンサルファイドフィルム、さらに耐熱性が要求される場合にはポリイミドフィルムが好ましい。
【0038】
接着剤層8aは、接着性樹脂として、ポリスチレン系、酢酸ビニル系、ポリエステル系、ポリエチレン系、ポリプロピレン系、ポリアミド系、ゴム系、アクリル系などの熱可塑性樹脂や、フェノール系、エポキシ系、ウレタン系、メラミン系、アルキッド系などの熱硬化性樹脂で構成されている。また、これら接着性樹脂に金属、カーボン等の導電性フィラーを混合し、導電性を持たせた導電性接着剤を使用することもできる。このように、導電性接着剤を使用することで確実にグランド回路3bと金属層8bとを電気的に接続できる。また、導電性接着剤として、導電性フィラーの量を少なくした異方導電性接着剤を使用してもよい。このように、導電性接着剤として異方導電性接着剤を使用すると、等方導電性接着剤よりも薄膜になり、導電性フィラーの量が少ないため、可撓性の優れたものにすることができる。また、導電性接着剤として、等方導電性接着剤を使用することもできる。このように、導電性接着剤として、等方導電性接着剤を使用すると、等方導電性接着剤による導電性接着剤層を設けるだけで、グランド回路3b等に対するグランド接続を可能とするとともに電磁波シールド効果を持たせることができる。また、耐熱性が特に要求されない場合は、保管条件等に制約を受けないポリエステル系の熱可塑性樹脂が望ましく、耐熱性もしくはより優れた可撓性が要求される場合においては、電磁波シールド層8を形成した後の信頼性の高いエポキシ系の熱硬化性樹脂が望ましい。また、接着剤層8aには、常温で粘着性を有する導電性粘着剤を用いてもよい。
【0039】
また、上記実施形態では、電磁波シールド層8として、金属層8b及び接着剤層8aを使用しているが、上記のように接着剤層8aとして等方導電性接着剤を使用した場合、金属層8bを省いた構成にしてもよい。
【0040】
導電性フィラーとしては、カーボン、銀、銅、ニッケル、ハンダ、アルミ及び銅粉に銀メッキを施した銀コート銅フィラー、さらには樹脂ボールやガラスビーズ等に金属メッキを施したフィラー又はこれらのフィラーの混合体が用いられる。銀は高価であり、銅は耐熱の信頼性に欠け、アルミは耐湿の信頼性に欠け、さらにハンダは十分な導電性を得ることが困難であることから、比較的安価で優れた導電性を有し、さらに信頼性の高い銀コート銅フィラー又はニッケルを用いるのが好ましい。
【0041】
金属フィラー等の導電性フィラーの接着性樹脂への配合割合は、フィラーの形状等にも左右されるが、銀コート銅フィラーの場合は、接着性樹脂100重量部に対して10〜400重量部とするのが好ましく、さらに好ましくは20〜150重量部とするのがよい。400重量部を超えると、グランド回路(銅箔)3bへの接着力が低下し、シールドFPC101の可撓性が悪くなる。また、10重量部を下回ると導電性が著しく低下する。また、ニッケルフィラーの場合は、接着性樹脂100重量部に対して40〜400重量部とするのが好ましく、さらに好ましくは100〜350重量部とするのがよい。400重量部を超えると、グランド回路(銅箔)3bへの接着力が低下し、シールドFPC101の可撓性が悪くなる。また、40重量部を下回ると導電性が著しく低下する。金属フィラー等の導電性フィラーの形状は、球状、針状、繊維状、フレーク状、樹枝状のいずれであってもよい。
【0042】
接着剤層8aの厚さは、前述のように、金属フィラー等の導電性フィラーを混合した場合は、これらフィラーの分だけ厚くなり、20±5μm程度となる。また、導電性フィラーを混合しない場合は、1μm〜10μmである。このため、電磁波シールド層8を薄くすることが可能となり、薄いシールドFPC101とすることができる。
【0043】
金属層8bを形成する金属材料としては、アルミニウム、銅、銀、金などを挙げることができる。金属材料は、求められるシールド特性に応じて適宜選択すればよいが、銅は大気に触れると酸化しやすいという問題があり、金は高価であることから、安価なアルミニウム又は信頼性の高い銀が好ましい。膜厚は、求められるシールド特性と可撓性に応じて適宜選択されるが、一般に0.01〜1.0μmとするのが好ましい。0.01μmを下回るとシールド効果が不十分となり、逆に1.0μmを超えると可撓性が悪くなる。金属層8bの形成方法としては、真空蒸着、スパッタリング、CVD法、MO(メタルオーガニック)、メッキなどがあるが、量産性を考慮すれば真空蒸着が望ましく、安価で安定した金属薄膜を得ることができる。また、金属層は、金属薄膜に限られず、金属箔を用いてもよい。金属箔の場合は、金属箔の厚みの下限は、2μmが好ましく、6μmがより好ましい。また、金属箔の厚みの上限は、18μmが好ましく、12μmがより好ましい。
【0044】
以上、本発明の実施形態を説明したが、具体例を例示したに過ぎず、特に本発明を限定するものではなく、具体的構成などは、適宜設計変更可能である。また、発明の実施形態に記載された、作用及び効果は、本発明から生じる最も好適な作用及び効果を列挙したに過ぎず、本発明による作用及び効果は、本発明の実施形態に記載されたものに限定されるものではない。
【実施例】
【0045】
次に、本実施形態に係る積層フィルムの実施例と比較例とを用いて、本発明を具体的に説明する。
実施例としては、
図1に示す構成のような、転写フィルム6と、外側樹脂層63の一方に積層される被転写層7を有したシールドフィルム本体9と、を備えるシールドフィルム10を用いた。
実施例に用いた転写フィルム6は、層厚が合計57±3μmになるように、押出しラミネート加工により成膜されたものを用いた。また、凹凸パターン61は、算術平均粗さRaが0.35μmであるものを用いた。また、転写フィルム6は、引張強度TD(横方向)またはMD(縦方向)が共に220〜225MPaであるものを用いた。また、転写フィルム6は、170℃×10分の熱処理後の収縮率試験結果が、TDが0%、MDが0.7%の収縮率であるものを用いた。
【0046】
具体的に、実施例で用いた転写フィルム6の製造方法について説明する。外側樹脂層63・63には、ウィンテックポリマー社製のPBT樹脂(商品名「ジュラネックス(商標登録)」)を用いた。内側樹脂層62には、ユニチカ社製の層厚の25μmのPET樹脂(商品名「エンブレット(商標登録)」)を用いた。
先ず、
図2に示すように、内側樹脂層用ロール21に巻回された上記2軸延伸PETフィルムは、転写フィルム用ロール25に案内されている。一方、フィルム押出機22・22にはいずれも上記PBT樹脂が投入され、235±5℃に設定した押出機中で溶融混練調整される。そして、PBT樹脂は、フィルム押出機22・22のTダイ(フラットな押出し口)(有効押出し幅1300mm)から、樹脂厚さが約16±3μmとなるように、上記PET樹脂の両面に押し出される。
このように、PET樹脂の両面にPBT樹脂が押し出された転写フィルム6を、回転するエンボスロール23、及び、キャスティングロール24で受け、フィルム成膜した。このとき、エンボスロール23、及び、キャスティングロール24は、130±3℃に温度調節した。また、エンボスロール23、及び、キャスティングロール24は、ロール径を500mm、周速を20m/分とした。フィルム成膜後の転写フィルム6は、10℃/秒の速度で徐冷して非晶性から結晶性にした後に転写フィルム用ロール25で巻き取った。
【0047】
このように製造した転写フィルム6を1200mm幅に成形したものを実施例の転写フィルムとして用いた。
また、比較例は、転写フィルムとして、1200mm幅のサンドブラスト加工をした層厚50μmのPETフィルムを用いた。
【0048】
図6に示すように、上記のような実施例及び比較例の転写フィルム206に対して、約0.6μmの離型層(図示せず)を介して、層厚5〜7μmの被転写層207、層厚が約0.1μmの金属薄膜である金属層208b、層厚が約16μmの導電性接着剤層208aからなるシールドフィルム本体209を積層して、シールドフィルム210を製造した。
尚、被転写層207は、転写フィルム206によって転写パターンが転写される側に透明の樹脂層を設け、この透明の樹脂層に黒色の樹脂層を積層した二層構造のものを用いた。
【0049】
(実施例の転写フィルムの評価)
この製造工程において、実施例の転写フィルムにカールや収縮は発生せずハンドリング性が良好であった。また、転写フィルムの一方面(外側樹脂層)は、凹凸パターンが形成されている(マット加工されている)ため、転写フィルムのすべりが良く、コーティング巻きの仕上がり状態を向上させることができた。
【0050】
(埋め込み性の評価)
図6に示すように、基体フィルム205は、層厚25μmのポリイミド製のベースフィルム202上に、層厚55μmの銅箔のプリント回路203を十分な間隔を空けて2つ積層し、夫々に層厚50μmのポリイミド製の絶縁フィルム204を積層したものである。尚、十分な間隔とは、シールドフィルム210を加熱プレスした際に、導電性接着剤層208aがこの隙間213に流入しても、導電性接着剤層208aがプリント回路203に達しない程度に開けられた間隔である。また、各絶縁フィルム204には、夫々プリント回路203の一部を露出させるように絶縁除去部(貫通孔)204aが形成されている。この絶縁除去部204aの径が、0.5mm、0.8mm、及び、1.0mmである場合について、実施例及び比較例のシールドフィルムを加熱プレスを行った後、2つのプリント回路203間の抵抗値を3回ずつ測定した結果を表2に示す。
【0051】
【表2】
【0052】
表2に示すように、実施例は、絶縁除去部204aの径がいずれの場合においても、比較例よりも接続抵抗値が低くなっており、プリント回路間が導通され易くなっている。即ち、実施例の方が、比較例よりも多くの導電性接着剤層208aが絶縁除去部204aへ流入してプリント回路203に達していることで抵抗値を低下させており、良好な埋め込み性が得られることがわかった。
【0053】
(表面粗さの評価)
図6に示す、実施例、比較例のシールドフィルム210を用いる。それぞれの試験片は、長さ200mm、幅50mmの長方形状のものを使用する。
比較例、実施例における表面粗さ(Ra(μm))は、超深度形状測定顕微鏡VX−8550(KEYENCE)により測定した。測定条件は、JIS B0601(1994)に準拠し、対物レンズ20倍、厚み方向の測定ピッチは0.2μmとした。
具体的には、シールドフィルム210をリールに巻きとった後、流れ方向(MD方向)の3箇所(スタート部、1000m(中間部)、2000m(最終部))から、それぞれ5試験片(n=5)を採取し(計15試験片)、超深度形状測定顕微鏡VX−8550(KEYENCE)により算術平均粗さ(Ra)を測定した。測定値として、前記流れ方向の各箇所における5試験片の平均値、最大値、最小値を得た。また、前記15試験片の最大値と最小値の差を算術平均粗さのばらつきとした。結果を表3に示す。
【0054】
【表3】
【0055】
実施例の算術平均粗さのばらつき(0.38μm、0.31μm、0.35μm)は、比較例(085.μm、0.73μm、0.73μm)よりも大幅に小さい。この理由はエンボスロールによる加工においては、ロールに形成された凹凸パターンが転写フィルム6の外側樹脂層63に繰り返し形成されるので、凹凸パターンが一定になるためと考えられる。このため、実施例は、サンドブラスト加工を用いた比較例より、転写フィルム6と被転写層7との接着面の各部における接着力、剥離力を安定させることができる。
【0056】
(加熱前の剥離性の評価)
加熱プレス前の状態での転写フィルム6の被転写層7に対する剥離強度は、以下のように測定したものである。具体的に、
図6に示す比較例および実施例のシールドフィルム210から幅50mm×長さ200mmの試験片をサンプリングし、この試験片をシールドフィルム10とし、
図7に示すように、シールドフィルム10の導電性接着剤層8aの面に両面テープを張り付け、その両面テープの片面を、試験機(PALMEK製 PFT-50S 剥離強度テスター)の台座に張り合わせてシールドフィルム10を固定する。そして、シールドフィルム10の転写フィルム6の端部を試験機のチャックにセットし、転写フィルム6の被転写層7に対する剥離強度を測定する。ここで、剥離条件としては、
図7に示すように、剥離角度を170°とし、チャックによる転写フィルム6の剥離速度を1000mm/minとしている。そして、試験回数としては、比較例および実施例についてそれぞれ5回行い、各回について、最大値と最小値を算出した。結果を表4に示す。
また、剥離性の評価基準は、次の通りである。具体的に、加熱プレス前において、薬液に浸漬した際の転写フィルムの剥れを確認した(剥れなし:〇、剥れあり:×)。また、加熱プレス前において、転写フィルム6を被転写層7から剥離した際に被転写層7に破れがあるかを確認した(破れなし:〇、破れあり:×)。また、加熱プレス後において、転写フィルム6に破れがあるかを確認した(破れなし:〇、破れあり:×)。また、加熱プレス後における転写フィルム6を被転写層7から剥離する際の作業性を確認した(良好:◎、普通:〇、悪い:×)。
【0057】
【表4】
【0058】
(加熱後の剥離性の評価)
一方、加熱プレス後の状態での転写フィルム6の被転写層7に対する剥離強度は、以下のように測定したものである。比較例、実施例に係るシールドフィルム210の導電性接着剤層208aの面を、ポリイミド面と銅箔面とを有する銅張積層板のポリイミド面側にプレス機により熱圧着する。この際のプレス機での熱圧着条件としては、圧力が2〜5MPa、温度が140〜180℃、時間は3〜60分が好ましい。本測定では、設定温度を170℃とし、0.5MPaで60secの間荷重し、その後、3.0MPaで180secの間荷重することで熱圧着をしている。
そして、シールドフィルム210を熱圧着した銅張積層板の銅箔面側に両面テープを貼り付け、その両面テープの片面を
図7に示すように、試験機台(PALMEK製 PFT-50S 剥離強度テスター)に貼り合わせてシールドフィルム210を固定する。あとは上記プレス前の剥離強度測定で説明した試験方法と同じように剥離強度の値を算出する。
【0059】
表4に示すように、加熱プレス後の状態において、5回の剥離試験の中で実施例の最大値、最小値はそれぞれ、0.88N/50mmと0.29N/50mmであり、比較例の最大値、最小値はそれぞれ、2.94N/50mmと1.37N/50mmであり、実施例の方が比較例よりもばらつきが小さい。これにより、加熱プレス後において、転写フィルムを被転写層から剥す際に作業性の良いものとなる。
また、表4に示すように、実施例と比較例の剥離力を比較した場合、加熱プレス前は、実施例と比較例の間に大きな差は認められないが(実施例の加熱プレス前:最大値5.34N/50mm、最小値3.78N/50mm、比較例の加熱プレス前:最大値5.88N/50mm、最小値3.92N/50mm)、加熱プレス後は、実施例の方が比較例よりも剥離力は著しく小さい(実施例の加熱プレス後:最大値0.88N/50mm、最小値0.29N/50mm、比較例の加熱プレス後:最大値2.94N/50mm、最小値:1.37N/50mm)。具体的には、剥離力の最大値に着目した場合、比較例は加熱プレス後に、剥離力が約1/2に低下しているのに対し、実施例は、約1/6にまで低下している。これにより、実施例は、加熱プレス前には被転写層に対する転写フィルムの接着力が高いことで、薬液に浸漬する等の一般的な後工程において剥離することを防止し、加熱プレス後は接着力を著しく低下させて転写フィルムを剥がす際の作業性を向上させることができる。