特許第6014685号(P6014685)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6014685
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月25日
(54)【発明の名称】電気導体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01B 13/00 20060101AFI20161011BHJP
   C01B 31/02 20060101ALI20161011BHJP
   B32B 9/00 20060101ALI20161011BHJP
   H01B 5/02 20060101ALI20161011BHJP
【FI】
   H01B13/00 501Z
   C01B31/02 101Z
   B32B9/00 A
   H01B5/02 A
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-556563(P2014-556563)
(86)(22)【出願日】2013年1月24日
(65)【公表番号】特表2015-515082(P2015-515082A)
(43)【公表日】2015年5月21日
(86)【国際出願番号】US2013022885
(87)【国際公開番号】WO2013122724
(87)【国際公開日】20130822
【審査請求日】2014年8月29日
(31)【優先権主張番号】13/372,155
(32)【優先日】2012年2月13日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】399132320
【氏名又は名称】タイコ・エレクトロニクス・コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】Tyco Electronics Corporation
(74)【代理人】
【識別番号】100100158
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 睦
(74)【代理人】
【識別番号】100132263
【弁理士】
【氏名又は名称】江間 晴彦
(72)【発明者】
【氏名】メアリー・エリザベス・サリバン・マラービー
(72)【発明者】
【氏名】ロバート・ダニエル・ヒルティ
(72)【発明者】
【氏名】ロドニー・アイバン・マーテンス
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・ミン
(72)【発明者】
【氏名】ジェシカ・ヘンダーソン・ブラウン・ヘモンド
(72)【発明者】
【氏名】リウ・ジョンウェイ
【審査官】 和田 財太
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/105530(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0006425(US,A1)
【文献】 特開2012−025004(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/046323(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 5/02
H01B 13/00
B32B 9/00
C01B 31/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気導体(106)の製造方法であって、
基板層(102)を供する工程;
前記基板層に導電性を有する表面層(104)を堆積させる工程;及び
前記基板層にグラフェン層(130又は150)を堆積させる工程
を含み、
前記グラフェン層が腐食抑制層であり、
表面層(104)を堆積させる前に、基板層(102)に直接グラフェン層(152)を堆積させる、製造方法。
【請求項2】
電気導体(106)の製造方法であって、
基板層(102)を供する工程;
前記基板層に導電性を有する表面層(104)を堆積させる工程;及び
前記基板層にグラフェン層(130又は150)を堆積させる工程
を含み、
前記グラフェン層が腐食抑制層であり、
表面層(104)は、基板層(102)に堆積させる際において孔(120)を有しており、
基板層に表面層を堆積させた後、基板層上の前記孔内にグラフェン層(132)を堆積させる、製造方法。
【請求項3】
電気導体(106)の製造方法であって、
基板層(102)を供する工程;
前記基板層に導電性を有する表面層(104)を堆積させる工程;及び
前記基板層にグラフェン層(130又は150)を堆積させる工程
を含み、
前記グラフェン層が腐食抑制層であり、
基板層(102)は、ベース基板層(106)及び該ベース基板層に堆積させたバリア基板層(108)を有して成り、
バリア基板層に表面層(104)を堆積させ、
バリア基板層に表面層を堆積させる前に、バリア基板層に直接グラフェン層(152)を堆積させる、製造方法。
【請求項4】
電気導体(106)の製造方法であって、
基板層(102)を供する工程;
前記基板層に導電性を有する表面層(104)を堆積させる工程;及び
前記基板層にグラフェン層(130又は150)を堆積させる工程
を含み、
前記グラフェン層が腐食抑制層であり、
基板層(102)は、ベース基板層(106)及び該ベース基板層に堆積させたバリア基板層(108)を有して成り、
バリア基板層に表面層(104)を堆積させ、ベース基板層にバリア基板層を堆積させる前に、ベース基板層に直接グラフェン層(150)を堆積させる、製造方法。
【請求項5】
電気導体(106)の製造方法であって、
基板層(102)を供する工程;
前記基板層に導電性を有する表面層(104)を堆積させる工程;及び
前記基板層にグラフェン層(130又は150)を堆積させる工程
を含み、
前記グラフェン層が腐食抑制層であり、
基板層(102)は、ベース基板層(106)及び該ベース基板層に堆積させたバリア基板層(108)を有して成り、
バリア基板層に表面層(104)を堆積させ、バリア基板層に表面層を堆積させた後に、バリア基板層及びベース基板層の少なくとも一方に直接グラフェン層(142)を堆積させる、製造方法。
【請求項6】
電気導体(106)の製造方法であって、
基板層(102)を供する工程;
前記基板層に導電性を有する表面層(104)を堆積させる工程;及び
前記基板層にグラフェン層(130又は150)を堆積させる工程
を含み、
前記グラフェン層が腐食抑制層であり、
基板層(102)は、ベース基板層(106)及び該ベース基板層に堆積させたバリア基板層(108)を有して成り、
バリア基板層に表面層(104)を堆積させ、表面層及びバリア基板層によりスタックアップが形成され、スタックアップの層間の界面のいずれか又は全てにグラフェン層(150,152,154)を堆積させる、製造方法。
【請求項7】
電気導体(106)の製造方法であって、
基板層(102)を供する工程;
前記基板層に導電性を有する表面層(104)を堆積させる工程;及び
前記基板層にグラフェン層(130又は150)を堆積させる工程
を含み、
前記グラフェン層が腐食抑制層であり、
前記グラフェン層(140)を堆積させる工程は、基板層(102)を有して成る金属化合物上にグラフェンを容易に成長させるように有機化合物前駆体及び十分な温度の熱を用いる化学蒸着法を用いて電気導体(100)を処理することにより、表面層(104)の孔(120)内にグラフェン・プラグ(142)を堆積させる工程を含む、製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して電気導体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気導体は、コンタクト、端子、ピン、ソケット、針の穴のピン、ミクロ動作ピン、コンプライアントピン、ワイヤー、ケーブル編組、配線、パッド等の多くの形態を有する。そのような電気導体は、電気コネクタ、ケーブル、プリント回路基板等を含む多くの異なるタイプの製品又はデバイスで使用される。電気導体で使用される金属は、腐食、拡散又は他の反応の影響を受けやすく、それら金属の使用が制限され又は保護コーティングが必要とされる。例えば、銅又は銅合金の電気導体が使用される際、そのような導体は腐食の影響を受けやすい。金の表面層が典型的には腐食防止剤として銅に施される。しかしながら、金材及び銅材は拡散し、典型的にはニッケル等の拡散バリアが銅層と金層との間に堆積(又は蒸着又は被着又は付着;deposit)される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ベースメタルの腐食は、導体界面(又はインターフェース;interface)及び信号品位に弊害をもたらす。腐食を軽減するために使用される電流めっき方法は孔だらけの面(又は多孔性面;porous surface)をしばしば残してしまい、それによって、下層表面は酸化及び腐食される。更に、いくつかの表面層は、摩擦、静止摩擦及び他の接触力に関連する問題を有し、導体の用途が制限される。
【0004】
上述の問題及び従来の導体に関連する欠点に対処する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明では、基板層を供する工程、少なくとも部分的に基板層を露出させる孔を有する表面層を基板層上に堆積させる工程、及び当該孔内にグラフェン堆積物(又は蒸着物又は被着物又は付着物;deposits)を形成する工程を含む、電気導体の製造方法が供される。必要に応じて(又は適宜;optionally)、グラフェン堆積物は、当該孔内にのみ形成されてよい。又、グラフェン堆積物は、基板層の任意の露出部に沿って形成されてよい。
【0006】
必要に応じて、グラフェン堆積物を形成する工程には、基板層を有して成る金属化合物上にグラフェンを容易に成長させるように有機化合物前駆体と十分な温度の熱を用いる化学蒸着(CVD)法(又はプロセス又は処理;process)を用いて電気導体を処理する工程が含まれていてよい。化学蒸着法では、露出させた基板層上でグラフェンの成長を促進する温度で、メタンが使用されてよい。グラフェン堆積物を形成する工程は、表面層に比べ基板層にグラフェンの成長をさせ易くする状況に電気導体を付する工程を含んでいてよい。グラフェン堆積物を形成する工程は、基板層と、孔を横断して広がっている表面層との間にグラフェン層を堆積させる工程を含んでいてよい。
【0007】
本発明は、添付の図面を参照しながら例示の実施形態により説明される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、例示的な実施形態に従い形成された電気導体の一部の断面図である。
図2図2は、グラフェンバリアを有した電気導体の一部の断面図である。
図3図3は、グラフェンバリアを有した電気導体の一部の断面図である。
図4図4は、グラフェンバリアを有する電気導体を示している。
図5図5は、グラフェンバリアを有する電気導体を示している。
図6図6は、グラフェンバリアを有する電気導体を示している。
図7図7は、電気導体の例示的な製造方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、例示的な実施形態に従い形成された電気導体100の一部の断面図である。電気導体100は、コンタクト、端子、ピン、ソケット、針状のピン、ミクロ動作ピン、コンプライアントピン、ワイヤー、ケーブル編組、配線、パッド等の任意のタイプの電気導体であってよい。電気導体100は、電気コネクタ、ケーブル、プリント回路基板等の一部を形成してよい。
【0010】
例示的な実施形態では、電気導体100は、一体となってワークピース105を規定する、基板層102と表面層104を有する多層構造体である。ワークピース105は処理されて、ワークピース105の選択層及び/又は選択した位置にグラフェンが形成され、それによって、電気導体の性能が高められる。表面層104は、基板層102に耐食性を有した電気導電層を供する。例えば、表面層104は、金、銀、スズ、パラジウム、ニッケル、パラジウム−ニッケル、白金等の金属化合物を含んでいてよい。表面層104は、概して薄層である。表面層104は、めっき等の既知の方法により基板層102に堆積させてよい。必要に応じて、表面層104は、下層の基板層102に直接堆積させてよい。又、1つ以上の他の層、例えばグラフェン層が、表面層104と基板層102との間に供されてよい。
【0011】
基板層102は多層構造体である。図示した実施形態では、基板層102は、ベース基板層106及びベース基板層106に堆積させたバリア基板層108を有して成る。必要に応じて、ベース基板層106及び/又はバリア基板層108は、多層構造体であってよい。表面層104及び基板層102は、スタックアップ層を一体的に規定する。グラフェンは、電気導体の性能を高めるために、スタックアップ層間の任意の若しくは全ての界面、及び/又はスタックアップ層の選択箇所で供されてよい。
【0012】
例示的な実施形態では、ベース基板層106は、電気導電性を有しており、銅又は銅合金等の金属化合物を含んでいてよい。ベース基板層106のための他の金属化合物としては、ニッケル、ニッケル合金、鋼、鋼合金、アルミニウム、アルミニウム合金、パラジウム−ニッケル、スズ、スズ合金、コバルト、カーボン、グラファイト、グラフェン、カーボン系布(又は織物;fabric)又は他の導電材料が挙げられる。バリア基板層108は、電気導電性を有しており、ニッケル又はニッケル合金等の金属化合物を含んでいてよい。バリア基板層108のための他の金属化合物としては、銅、金、銀、コバルト、タングステン、白金、パラジウム、若しくはこれら金属の合金等の他の金属又は導電性材料が挙げられる。例えば、ベース基板層106と表面層104とが、銅と金又は拡散問題を有する他の金属化合物とである場合、バリア基板層108により、ベース基板層106と表面層104との間に拡散バリアが供される。バリア基板層108は、耐摩耗性を改善する相対的に薄くてよい、表面層104の機械的支持体(又はバッキング;backing)を供する。バリア基板層108は、表面層104に存在する孔の影響を低減する。バリア基板層108は、めっき等の任意の既知の方法によりベース基板層106に堆積させてよい。必要に応じて、バリア基板層108は、下方のベース基板層106に直接堆積させてよい。又、1つ以上の他の層、例えばグラフェン層が、バリア基板層108とベース基板層106との間に供されてよい。
【0013】
バリア基板層108は、ベース基板層106を露出させる孔110を含んでいてよい。孔110は、堆積工程(又は蒸着工程又は付着工程;depositing process)の間に形成される。例えば、孔110は、ベース基板層106の三重点又は粒界で形成されてよい。孔110はベース基板層106を露出させている。ベース基板層106が露出されたままである場合、ベース基板層106の腐食を招くかもしれない。孔110は、ベース基板層106を露出させる底部112、及び、バリア基板層108の底部112から上部116まで延在する側部114を有する(ここで、上部と底部は、電気導体の特定の方向に対して相対的であり、より一般的には各々内部と外部を構成しているものである)。側部114は孔110内で露出されている。孔110は、図1にて長方形として図示されているが、孔110は任意の形状を有していてよいことは認識されよう。例えば、側部114は、非平面形状であってよく、不規則な形状であってよい。
【0014】
表面層104は、基板層102を露出させる孔120を含んでいてよい。孔120は、堆積工程の間に形成される。例えば、孔120は孔110に形成されてよい。孔120は、基板層102を露出させている。基板層102が露出されたままである場合、基板層102の腐食を招くかもしれない。孔120は、表面層104と基板層102との間の界面に沿って開口底部122を有している。孔120は、表面層104の底部122から上部126まで延在する側部124を有している。側部124は、孔120内で露出されている。
【0015】
図2は、腐食を抑制するためのグラフェンバリア130を有した電気導体100の一部の断面図である。グラフェンバリア130は、電気導電性を有してよい。グラフェンバリア130は基板層102に堆積させる。図示した実施形態では、グラフェンバリア130は、ベース基板層106(例えば、銅層)の腐食を抑制するためにベース基板層106(例えば、銅層)に供される。例示的な実施形態では、グラフェンバリア130は、ベース基板層106の露出部にて成長する。例えば、電気導体100は、選択した箇所に(例えば、露出させたベース基板層106に)グラフェンバリア130が成長するように処理される。グラフェンバリア130は、符号132により概して示されるグラフェン堆積物を構成している。グラフェン堆積物132は、孔110、120を塞いでいる。グラフェン堆積物132は、孔120の下方にある孔110の底部112を覆っている。グラフェン堆積物132は、孔のための栓(又はプラグ;plug)を構成してよく、又、以下本明細書ではプラグ132と呼んでよい。
【0016】
例示的な実施形態では、グラフェンバリア130は、約800℃の高温でガス状のメタン等の有機化合物の存在下で化学蒸着(CVD)プロセスの間に形成されてよい。又、堆積のメカニズムは、蒸気雰囲気内での電子ビーム、マイクロ波又は他の方法を含む。レーザ堆積(;laser depositon)、プラズマ堆積(;plasma depositon)又は他の技術若しくはプロセス等の他の方法(又はプロセス;process)がグラフェンバリア130を堆積させるために使用されてよい。必要に応じて、グラフェンバリア130は、ベース基板層106に1原子層の厚みであってよい。又、グラフェンバリア130は、より厚くてよい。グラフェンバリア130は耐食性を供する。
【0017】
グラフェンバリア130は、ベース基板層106露出部にのみ堆積されてよい。例えば、ベース基板層106の金属化合物は、バリア基板層108又は表面層104等の他の層と比べて、ベース基板層106との界面でグラフェンの成長を促進するためにCVDプロセス(又は他のプロセス)の間に触媒として使用されてよい。必要に応じて、他の金属化合物を伴う界面とは対照的にそのような界面でグラフェン成長を促進するために、CVDプロセスを制御してよい。例えば、使用される有機化合物若しくはガス前駆体の種類、使用されるガス前駆体の圧力、ガス前駆体の流速、処理温度、又は他のファクターにより、他の金属と比べてある金属でのグラフェンの成長が促進されてよい。グラフェンバリア130自体は、電気導体100全てのブランケット被覆又は電気導体100の特定層とは対照的に電気導体100に選択的に堆積されてよい。
【0018】
別の実施形態では、他の種類の金属と比べて、1種類よりも多い金属にグラフェンが成長することを促進するためにCVDプロセスを制御してよい。例えば、金ではなく銅及びニッケルにグラフェンが成長することを促進するためにCVDプロセスを制御することで、孔110内のバリア基板層108及びベース基板層106の露出部はグラフェンにより覆われるが、表面層104はグラフェンにより覆われないようにしてよい。そのような実施形態は、図3でより詳細に示される。
【0019】
図3は、腐食を抑制するためのグラフェンバリア140を有した電気導体100の一部の断面図である。グラフェンバリア140は電気導電性を有していてよい。グラフェンバリア140は、基板層102に堆積される。図示した実施形態では、グラフェンバリア140は、腐食を抑制するためにベース基板層106及び/又はバリア基板層108に供される。グラフェンバリア140は、ベース基板層106及びバリア基板層108の露出部にて成長する。例えば、選択した箇所にグラフェンバリア140を成長させるため、バリア基板層108に沿って孔110の側部114及び孔120の底部122にグラフェンバリア140を成長させる。グラフェンバリア140は、符号142により概して示されるグラフェン堆積物を構成する。グラフェン堆積物142は孔110を塞いでいる。グラフェン堆積物142は、孔110の底部112を覆っている。グラフェン堆積物142は、(図2に示される)グラフェン堆積物132と同様の方法で形成されてよい。必要に応じて、グラフェン堆積物142は、孔110及び/又は120を完全に満たしていてよい。グラフェン堆積物142は、孔のための栓を構成してよく、以下本明細書では栓(又はプラグ;plug)と呼んでよい。
【0020】
別の実施形態では、電気導体100は、グラフェン堆積物132若しくは142を有することに加えて又はグラフェン堆積物132若しくは142を有することに代えて、1つ以上の層の全面を覆うグラフェン層を含んでいてよい。図4は、ベース基板層106とバリア基板層108との間にあり、ベース基板層106に堆積させたグラフェン層150を有する電気導体100を示している。図5は、バリア基板層108と表面層104との間にあり、バリア基板層108に堆積させたグラフェン層152を有する電気導体100を示している。図6は、表面層104に堆積させたグラフェン層154を有する電気導体を示している。グラフェン層150、152、154は、グラフェンバリアを規定している。必要に応じて、電気導体100は、グラフェン層150及び152、グラフェン層150及び154、グラフェン層152及び154、又はグラフェン層150、152及び154等の1つよりも多いグラフェン層を含んでいてよい。
【0021】
例示的な実施形態では、グラフェン層150、152、154は、ベース基板層106、バリア基板層108及び表面層104の各々の上面を完全に覆っている。バリア基板層108内の孔110は、グラフェン層150を露出させている。表面層104内の孔120は、グラフェン層150及び/又は152を露出させている。グラフェン層154は、孔120及び/又は110を覆っている。グラフェン層の露出部は、酸素原子がベース基板層106の金属化合物と相互作用することを抑制するため、ベース基板層106と大気との間にバリアを供することにより、電気導体100の腐食バリアとして作用する。
【0022】
例示的な実施形態では、グラフェン層150、152は、ベース基板層106と表面層104との間の拡散を抑止するための拡散バリアとして作用する。必要に応じて、グラフェン層150は、バリア基板層108に取って代わってよく、ベース基板層106と表面層104との間の拡散バリアとして作用する。
【0023】
例示的な実施形態では、グラフェン層154は、電気導体100の最外層である。グラフェン層154により、電気導体100の最外面における摩擦が減じられてよく、それによって電気導体100の嵌め合わせをし易くしてよい。グラフェン層154は、表面層104の静止摩擦を減じてよい。表面層104の静止摩擦の低減により、摩擦及び/又は冷間溶接の問題を有し、例えば金層である最外層を有する電気導体100にこれまで適さなかった領域又はデバイスにおいて、当該電気導体100を使用できるかもしれない。例えば、微小電気機械システム(MEMS)スイッチでは、金層が電気導体の最外層である場合に静止摩擦の問題が生じる。表面層104をグラフェン層154で被覆することにより、電気導体100の静止摩擦が減じられ、当該電気導体をMEMSスイッチでの使用に適したものとする。
【0024】
グラフェン層152、154は、孔110、120を各々覆う。必要に応じて、グラフェン層152、154は、孔110及び/又は120を少なくとも部分的に満たしてよい。グラフェン層152、154は、孔110及び/又は120を少なくとも部分的に塞ぐグラフェン堆積物を規定してよい。
【0025】
図7は、電気導体100等の電気導体の例示的な製造方法を示すフローチャートである。当該製造方法には、ベース基板層106等のベース基板層を供する工程200が含まれる。ベース基板層は、銅層又は銅合金層であってよい。
【0026】
必要に応じて、当該製造方法には、ベース基板層にグラフェン層150等のグラフェン層を形成する工程202が含まれてよい。グラフェン層は、CVDプロセス又は別のプロセスにより形成されてよい。グラフェン層は、ベース基板層を完全に覆ってよく、又はベース基板層の一部を選択的に覆ってよい。グラフェン層は、ベース基板層に1つ以上のグラフェン層を成長させ、又は堆積させることにより形成されてもよい。ベース基板層は、ベース基板層においてグラフェンの選択的な成長を促進させるための触媒として作用してよい。
【0027】
当該製造方法には、ベース基板層にバリア基板層108等のバリア基板層を堆積させる工程204が含まれる。バリア基板層は、ベース基板層に直接堆積させてよい。又は、バリア基板層とベース基板層との間に、1つ以上のグラフェン層等の他の層を積層してよい。バリア基板層は、メッキにより又はバリア基板層をベース基板層に適用する他の既知の方法により堆積させてよい。
【0028】
必要に応じて、当該製造方法には、グラフェン層152等のグラフェン層をバリア基板層に形成する工程206が含まれてよい。グラフェン層は、CVDプロセス又は別のプロセスにより形成されてよい。グラフェン層は、バリア基板層を完全に覆ってよく、又はバリア基板層の一部を選択的に覆ってよい。グラフェン層は、バリア基板層内の任意の孔を覆ってよい。グラフェン層は、バリア基板層内の任意の孔を少なくとも部分的に満たしてよい。グラフェン層は、バリア基板層に1つ以上のグラフェン層を成長させ、又は堆積させることにより形成されてもよい。バリア基板層は、バリア基板層においてグラフェンの成長を促進させるための触媒として作用してよい。
【0029】
当該製造方法には、バリア基板層に表面層104等の表面層を堆積させる工程208が含まれる。表面層は、表面層に直接堆積させてよい。又は、バリア基板層と表面層との間に、1つ以上のグラフェン層152等の他の層を積層させてよい。表面層は、メッキ又はバリア基板層に表面層を他の既知の方法により堆積させてよい。
【0030】
必要に応じて、当該製造方法には、グラフェン層154等のグラフェン層を表面層に形成する工程210が含まれてよい。グラフェン層は、CVDプロセス又は別のプロセスにより形成してよい。グラフェン層は、表面層を完全に覆ってよく、又は表面層の一部を選択的に覆ってよい。グラフェン層は、表面層内の任意の孔を覆ってよい。グラフェン層は、表面層内の任意の孔を少なくとも部分的に満たしてよい。グラフェン層は、表面層に1つ以上のグラフェン層を成長させることにより形成されてもよい。表面層は、表面層においてグラフェンの成長を促進させるための触媒として作用してよい。
【0031】
当該製造方法には、バリア基板層内の孔に、及び/又は、表面層内の孔に、グラフェン堆積物132及び/又は142等のグラフェン堆積物を形成する工程212が含まれる。グラフェン堆積物は、CVDプロセス又は別のプロセスにより形成されてよい。例えば、電気導体の様々な層により規定されるワークピースは、選択したエリアでグラフェンを形成するために処理される。グラフェン堆積物は、バリア基板層の露出させた金属及び/又はバリア基板層内の孔内のベース基板層に形成されてよい。グラフェン堆積物は、ベース基板層の露出部及び/又はバリア基板層内の孔の側部を完全に覆ってよい。グラフェン堆積物は、バリア基板層内の任意の孔を少なくとも部分的に満たしてよい。グラフェン堆積物は、基板層の露出させた金属に1つ以上のグラフェン層を成長させることにより形成してよい。基板層の露出させた金属は、表面層の露出させた金属と比べて基板層の露出させた金属にてグラフェンの成長を促進するための触媒として作用してよい。
【0032】
例示的な実施形態では、層又は堆積物のグラフェンは、約800℃のような高温でガス状のメタン等の有機化合物の存在下で、CVDプロセスの間に形成される。例えば、露出させた特定の金属をグラフェンの成長を促進するための触媒として使用することにより、グラフェンの成長の位置を制御してよい。例えば、孔内に露出させた金属は、露出させた金属を有していない他の層と比べて、その界面でグラフェン成長を促進するための触媒として使用されてよい。使用される有機化合物若しくはガス前駆体の種類、使用されるガス前駆体の圧力、ガス前駆体の流速、処理温度、又は他のファクターにより、他の金属と比べてある金属でのグラフェンの成長が促進されてよい。
図1
図2
図3
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図5
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図7