特許第6014701号(P6014701)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6014701
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月25日
(54)【発明の名称】芳香族ヨウ素化化合物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 17/12 20060101AFI20161011BHJP
   C07C 25/02 20060101ALI20161011BHJP
   C07C 17/383 20060101ALI20161011BHJP
   C07C 17/392 20060101ALI20161011BHJP
   B01J 29/08 20060101ALI20161011BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20161011BHJP
【FI】
   C07C17/12
   C07C25/02
   C07C17/383
   C07C17/392
   B01J29/08 Z
   !C07B61/00 300
【請求項の数】14
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-54930(P2015-54930)
(22)【出願日】2015年3月18日
(62)【分割の表示】特願2011-540607(P2011-540607)の分割
【原出願日】2009年12月10日
(65)【公開番号】特開2015-155419(P2015-155419A)
(43)【公開日】2015年8月27日
【審査請求日】2015年3月19日
(31)【優先権主張番号】10-2008-0126117
(32)【優先日】2008年12月11日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】510061575
【氏名又は名称】エスケー ケミカルズ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100091096
【弁理士】
【氏名又は名称】平木 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100118773
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 節
(74)【代理人】
【識別番号】100122389
【弁理士】
【氏名又は名称】新井 栄一
(74)【代理人】
【識別番号】100111741
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 夏夫
(74)【代理人】
【識別番号】100169971
【弁理士】
【氏名又は名称】菊田 尚子
(72)【発明者】
【氏名】リー,ジュン−キ
(72)【発明者】
【氏名】キム,ハン−ソク
(72)【発明者】
【氏名】リム,ジェ−ボン
(72)【発明者】
【氏名】チャ,イル−フン
【審査官】 黒川 美陶
(56)【参考文献】
【文献】 特表平01−502824(JP,A)
【文献】 特表平03−503412(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸素雰囲気およびゼオライト触媒の存在下で、非ハロゲン化芳香族化合物、芳香族化合物のモノヨウ素化合物、芳香族化合物のジヨウ素化合物、およびヨウ素をヨウ素化反応させるステップを含み、
前記芳香族化合物のジヨウ素化合物は、全体の供給原料に対して11wt%〜40wt%投入され、
投入される非ハロゲン化芳香族化合物/ヨウ素のモル比が1.52.4であり、
前記反応ステップによって生成された芳香族ヨウ素化化合物のうち、芳香族化合物のジヨウ素化合物および芳香族化合物のトリヨウ素化合物が芳香族化合物のモノヨウ素化合物に転換されるヨウ素転換反応が同時に行われる、
ことを特徴とする芳香族ヨウ素化化合物の製造方法。
【請求項2】
前記非ハロゲン化芳香族化合物は、ベンゼン、ナフタレン、およびビフェニルからなる群より選択されるものであることを特徴とする請求項1に記載の芳香族ヨウ素化化合物の製造方法。
【請求項3】
前記芳香族化合物のモノヨウ素化合物は、モノヨードベンゼン、モノヨードナフタレン、およびモノヨードビフェニルからなる群より選択されるものであることを特徴とする請求項1に記載の芳香族ヨウ素化化合物の製造方法。
【請求項4】
前記芳香族化合物のジヨウ素化合物は、ジヨードベンゼン、ジヨードナフタレン、およびジヨードビフェニルからなる群より選択されるものであることを特徴とする請求項1に記載の芳香族ヨウ素化化合物の製造方法。
【請求項5】
前記芳香族化合物のジヨウ素化合物は、全体の供給原料に対して16wt%〜22wt%投入されるものであることを特徴とする請求項1に記載の芳香族ヨウ素化化合物の製造方法。
【請求項6】
前記反応ステップによって生成された芳香族ヨウ素化化合物は、ジヨードベンゼンを含むものであることを特徴とする請求項1に記載の芳香族ヨウ素化化合物の製造方法。
【請求項7】
前記ジヨードベンゼンは、パラ−ジヨードベンゼンであることを特徴とする請求項に記載の芳香族ヨウ素化化合物の製造方法。
【請求項8】
前記ゼオライト触媒は、Na−13X、Y−type、ZSM5、およびK−13Xからなる群より選択されるものであることを特徴とする請求項1に記載の芳香族ヨウ素化化合物の製造方法。
【請求項9】
前記ゼオライト触媒は、Na−13Xであることを特徴とする請求項に記載の芳香族ヨウ素化化合物の製造方法。
【請求項10】
前記ヨウ素化反応は、230〜350℃の温度で常圧〜5気圧の圧力で行われることを特徴とする請求項1に記載の芳香族ヨウ素化化合物の製造方法。
【請求項11】
前記ヨウ素化反応は、275〜290℃の温度で常圧〜5気圧の圧力で行われることを特徴とする請求項1に記載の芳香族ヨウ素化化合物の製造方法。
【請求項12】
前記ヨウ素化反応ステップを経た生成物の蒸留、結晶化および固液分離を含むステップを経て得られたジヨウ素化合物を再循環させ、ヨウ素化反応させるステップをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の芳香族ヨウ素化化合物の製造方法。
【請求項13】
前記芳香族ヨウ素化化合物の製造方法は、
ヨウ素化反応器(2)から第1蒸留塔(10)に移送された芳香族化合物、そのモノヨウ素化合物、そのジヨウ素化合物、およびヨウ素の反応生成物中、芳香族化合物を分離/除去するステップと、
前記第1蒸留塔(10)の残余物質を第2蒸留塔(12)に移送して、モノヨウ素化合物とヨウ素とを分離するステップと、
前記第2蒸留塔(12)の残余物質を第3蒸留塔(14)に移送して、パラ−ジヨウ素化合物、オルト−ジヨウ素化合物、およびメタ−ジヨウ素化合物からなるジヨウ素混合物を分離した後、結晶化および固液分離器(16)に移送するステップと、
前記結晶化および固液分離器(16)を介して、ジヨウ素混合物から固体状のパラ−ジヨウ素化合物と液体状のパラ−ジヨウ素化合物、オルト−ジヨウ素化合物、およびメタ−ジヨウ素化合物を含む母液を取得するステップと、
前記母液中の一部をヨウ素化反応器(2)で再循環させ、ジヨウ素化合物を再使用するステップとを含むものであることを特徴とする請求項12に記載の芳香族ヨウ素化化合物の製造方法。
【請求項14】
2転換率は、80%以上であることを特徴とする請求項1に記載の芳香族ヨウ素化化合物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、芳香族ヨウ素化化合物の製造方法に関し、ヨウ素化反応およびヨウ素転換反応が同時に起こり、副反応が抑制され、また、工程中の反応温度を安定的に制御することができ、ヨウ素化反応触媒の使用寿命を延長することができるため、不純物の生成を一定に維持することができる芳香族ヨウ素化化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ベンゼンまたはナフタレンのような芳香族化合物に臭素、塩素、ヨウ素などのハロゲンを反応させて芳香族ハロゲン化化合物を製造する技術は、様々な商業的分野でその価値を認められてきた。
【0003】
代表的に、ベンゼンと塩素とを反応させて製造されるパラ−ジ−クロロベンゼン(p−di−chlorobenzene)は、エンジニアリングプラスチックであるポリフェニレンスルフィド(polyphenylene sulfide、PPS)の原料として使用される。パラ−ジ−クロロベンゼンと硫化ナトリウム(sodium sulfide)とを、N−メチルピロリドン(N−methyl pyrrolidone)溶媒下で重合反応させてPPSを製造する技術は、マッカラム工程(Macallum process)として知られており、現在商業的に生産されているほとんどのPPSはこの工程によって作られる。しかし、マッカラム工程によれば、高分子量の重合体を得ることが難しく、硬化(curing)という後工程を経て高分子量の重合体を取得することになるが、この時得られたPPSは、架橋反応などによって壊れやすい(brittle)という欠点を有する。また、重合工程において、反応副生物として塩化ナトリウム(NaCl)のような金属塩が必然的に発生してしまい、商業工程の経済性と高分子の物性に深刻な問題を誘発する。
【0004】
そこで、金属塩の生成が根本的に排除され、線状高分子を取得することができる方法として、米国特許第4,746,758号、第4,786,713号、およびその関連特許では、パラ−ジヨードベンゼン(p−diiodobenzene、p−DIB)と硫黄を用いて直接溶融重合させる方法を提案している。
【0005】
また、図1に示すように、米国特許第4,778,938号および第4,746,758号などでは、ゼオライト触媒を用いて、酸素雰囲気下でベンゼンとヨウ素とを反応させることにより、p−DIBを製造する方法を記述している。前記方法によれば、高い転換率と商業的に好まれるパラ−ジヨウ素化合物の選択性が高いだけでなく、反応物質であるベンゼンまたはナフタレンの酸化反応を最少化することができるという。
【0006】
しかし、このようなヨウ素化技術は、局所的で急激な発熱反応によって反応温度を安定的に制御することが難しいという欠点を有する。つまり、ゼオライト触媒を用いて、酸素雰囲気下で芳香族化合物がヨウ素化反応を経る過程において、反応過程中に生成されたヨウ化水素(hydroiodic acid、HI)の酸化反応が必然的に起きるようになるが、前記酸化反応は急激な発熱反応である。このような発熱反応が反応器の中心部位で集中的に起きて反応温度を上昇させ、このように上昇した反応温度下ではHIの酸化反応がより促進され、これにより、ヨウ化水素の酸化反応のみならず、原料の燃焼反応をもたらして暴走反応を引き起こす原因になったりもする。さらに、商用化工程では、生産性を向上させるために、反応器のサイズを大きくする必要がある場合、反応器の直径(内径)を大きく設計する必要があるが、この場合、反応器の温度制御問題はより深化し、重要な設計変数となる。
【0007】
また、このようにして上昇した反応温度条件では、反応物質の燃焼反応が起き、これによって触媒の活性を失わせる炭素堆積物(carbon deposit)のような不純物の生成が増加し、このような不純物は、触媒の活性を失わせて触媒の交替周期を短縮させ得る。また、このように反応温度の制御が難しい場合、投入される原料の流量を十分に増加させることができなくなるが、これは、目的とする生成物であるジヨウ素化合物の生産性の低下をもたらす。
【0008】
したがって、本発明の発明者らは、芳香族ヨウ素化化合物の製造工程中に副反応を効果的に抑制することができ、反応温度を安定的に制御可能であり、これにより、触媒の使用寿命を延長し、ジヨウ素化合物の生成量を増加させることができる方法について研究を重ねている間に、本発明を完成するにいたった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第4,746,758号
【特許文献2】米国特許第4,786,713号
【特許文献3】米国特許第4,778,938号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、副反応を抑制して不純物の生成を一定に維持することにより、目的とするジヨウ素化合物の生成量を増加させることができる芳香族化合物の製造方法を提供するためのものである。
【0011】
また、本発明は、芳香族ヨウ素化化合物の製造工程中に反応温度を安定的に制御することができ、これにより、触媒の使用寿命を延長することができる芳香族ヨウ素化化合物の製造方法を提供するためのものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
そのため、本発明は、酸素雰囲気およびゼオライト触媒の存在下で、非ハロゲン化芳香族化合物、芳香族化合物のモノヨウ素化合物、芳香族化合物のジヨウ素化合物、およびヨウ素をヨウ素化反応させるステップを含む芳香族ヨウ素化化合物の製造方法を提供する。
【0013】
以下、本発明の具体的な実施形態による芳香族ヨウ素化化合物の製造方法について詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】比較例1による芳香族ヨウ素化化合物の製造工程を示す概略図である。
図2】本発明の実施例1〜3による芳香族ヨウ素化化合物の製造工程を示す概略図である。
図3】本発明の他の実施形態による芳香族ヨウ素化化合物の全体的な製造工程と共融状態で存在するジヨウ素化合物を再使用する方法を示す概略図である。
図4】本発明の実施例1〜3および比較例1による反応工程の反応器の長さに応じた反応器の温度分布を比較したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の一実施形態による芳香族ヨウ素化化合物の製造方法は、酸素雰囲気およびゼオライト触媒の存在下で、非ハロゲン化芳香族化合物、芳香族化合物のモノヨウ素化合物、芳香族化合物のジヨウ素化合物、およびヨウ素をヨウ素化反応させるステップを含む。
【0016】
本発明において、「ヨウ素化反応」とは、ベンゼン、ナフタレン、ビフェニルなどのような非ハロゲン化芳香族化合物、そのモノヨウ素化合物、およびそのジヨウ素化合物と、ヨウ素分子とを反応させて、芳香族化合物に含まれている水素原子をヨウ素原子に置換する反応を含む。また、本発明において、「ヨウ素転換反応」とは、多価のヨウ素化合物(ジ、トリヨウ素化合物)を非ハロゲン化芳香族化合物と反応させて、多価のヨウ素化合物(ジ、トリヨウ素化合物)に含まれているヨウ素原子を水素原子に置換する反応を含む。
【0017】
また、本発明において、「非ハロゲン化芳香族化合物」とは、ベンゼン、ナフタレン、およびビフェニルなどの芳香族化合物の水素原子がいずれか1つでもハロゲンに置換されていないものを指し示し、「芳香族化合物のモノヨウ素化合物」または「モノヨウ素化合物」とは、前記非ハロゲン化芳香族化合物で1個の水素原子がヨウ素原子に置換されたものを指し示し、その例として「モノヨードベンゼン」などがあり、「芳香族化合物のジヨウ素化合物」または「ジヨウ素化合物」とは、前記非ハロゲン化芳香族化合物で2個の水素原子がヨウ素原子に置換されたものを指し示し、その例として「ジヨードベンゼン」などがあり、前記ジヨウ素化合物は、パラ(p−)、オルト(o−)、メタ(m−)の3種の異性体が存在する。また、本発明で製造しようとする「芳香族ヨウ素化化合物」は、非ハロゲン化芳香族化合物の水素原子1個以上がヨウ素化されたものを総称するもので、モノヨウ素化合物、ジヨウ素化合物、およびトリヨウ素化合物を含む概念である。
【0018】
前記の実施形態による芳香族ヨウ素化化合物の製造方法において、反応物質中に芳香族化合物のジヨウ素化合物を投入することにより、ヨウ素化反応およびヨウ素転換反応が同時に起き、副反応を抑制することができる。また、ジヨウ素化合物を投入することにより、工程中の反応温度を安定的に制御することができ、これにより、触媒の使用寿命を延長し、副反応を抑制することにより、ジヨウ素化合物の生成率を高めることができる。
【0019】
つまり、本発明の前記実施形態による方法によれば、酸素雰囲気およびゼオライト触媒の雰囲気下で、非ハロゲン化芳香族化合物のヨウ素化反応とヨウ素転換反応が並行する。反応原料は、触媒に吸着した後、ヨウ素化反応を行ってヨウ素化化合物の形態を作ると同時に、反応器に投入されるジヨウ素化合物の濃度が高くなると、ジヨウ素化合物およびトリヨウ素化合物がモノヨウ素化合物に転換されるヨウ素転換反応が起きる。投入されるジヨウ素化合物が一定濃度以上になると、副反応で生成される副生物が一定に維持されることが分かるが、これは、ゼオライト触媒の存在下で、ヨウ素化反応とヨウ素転換反応が同時に起きることを意味する。
【0020】
一方、反応中において酸素の存在は欠かせない。ヨウ素化反応中に生成されるヨウ化水素は、再びヨウ素分子(iodine)へと酸化させて、反応に使用されるようにしなければならない。したがって、酸素が存在しなかったり、その含有量がヨウ化水素に比べて少ない場合、ヨウ化水素が酸化反応中に発生する水と共沸混合物を形成し、精製工程に悪影響を及ぼすだけでなく、強力な酸化作用によって装置の深刻な腐食をもたらすようになる。したがって、反応に用いられるヨウ素分子のモル数だけまたはそれ以上の酸素が要求される。
【0021】
一つの具体的な実施形態による芳香族ヨウ素化化合物の製造工程については、図2に簡単に示すとおりである。この時、図2に示す背圧調整器(back pressure regulator)4は、ヨウ素化反応の圧力を調整して加圧反応を可能にし、サンプル処理システム(sample handling system)6は、後工程における分析器の保護のために気体中に含まれている蒸気を除去し、ガス分析器8は、気体に含まれている二酸化炭素の濃度を測定する役割を果たす。この時、ヨウ素化反応器2は、好ましくは、反応器の周りをオイルジャケットが囲む構造に設計され得るが、オイルジャケットには、反応温度を所定の温度範囲に維持するためにオイルが充填され、ヨウ素化反応によって生成した反応熱をオイルが一部吸収し、前記オイルは、オイルジャケットの上部に循環されて回収される過程により、ヨウ素化反応器2の反応温度を維持することができる。
【0022】
前記ジヨウ素化合物は、製造または購入して単一物質として使用することもできるが、非ハロゲン化芳香族化合物、そのジヨウ素化合物、そのモノヨウ素化合物、およびヨウ素の反応生成物を、複数ステップの蒸留と結晶化および固液分離して得られた3種の異性体、つまり、パラ(p−)、オルト(o−)、メタ(m−)からなるジヨウ素化合物を分離精製して再使用する方法がより効率的である。
【0023】
一方、前記実施形態による製造方法に用いられる非ハロゲン化芳香族化合物は、目的とする芳香族ヨウ素化化合物によって決定され、限定されることはないが、好ましくは、ベンゼン、ナフタレン、およびビフェニルからなる群より選択可能である。したがって、この時、反応物である芳香族化合物のモノヨウ素化合物は、好ましくは、モノヨードベンゼン、モノヨードナフタレン、モノヨードビフェニルからなる群より選択可能である。また、芳香族化合物のジヨウ素化合物も、好ましくは、ジヨードベンゼン、ジヨードナフタレン、およびジヨードビフェニルからなる群より選択可能である。
【0024】
この時、反応条件下において、芳香族/ヨウ素(芳香族/I)のモル比は、使用された非ハロゲン化芳香族化合物とヨウ素のモル比を示すものであって、ジヨウ素化合物を製造しようとする時、非ハロゲン化芳香族化合物は、ヨウ素分子(ヨウ素原子2個)1モルと反応しなければならない。この時、芳香族/ヨウ素のモル比は、下記式1のように定義する。
【数1】
【0025】
本発明の前記実施形態による芳香族ヨウ素化化合物の製造方法において、供給原料中の芳香族/ヨウ素の比率が、1以上を満足する限りその構成に制限はない。ヨウ素の量が多いほど、多価の芳香族ヨウ素化(multi−iodinated aromatic)化合物の生成率が高くなるのに対し、ヨウ素の転換率は低下し得る。しかし、ヨウ素の転換率を高めるために、ヨウ素に対する非ハロゲン化芳香族化合物の比率を高めると、ヨウ素の転換率は増加することができるが、ジヨウ素化合物の生産性が低下するため、目的とするところに応じて適切にその比率を調整して反応を実施することが好ましい。これにより、前記芳香族化合物/ヨウ素のモル比は、0.8〜3.0、好ましくは1.5〜2.4の比率で供給することがより好ましい。
【0026】
一方、本発明において、投入されるジヨウ素化合物の濃度が高いほど、生成される副生物の組成が一定に維持され、反応温度条件も安定して運転され、ヨウ素転換率も高くなる。好ましくは、ジヨウ素化合物は、全体の供給原料に対して7wt%〜45wt%、好ましくは11wt%〜40wt%投入可能である。ジヨウ素化合物の投入量が全体の供給原料に対して7wt%未満の場合、ジヨウ素化合物の投入に応じた反応温度の制御、副反応の抑制、およびヨウ素転換率の増加効果などがわずかであり得る。他方、ジヨウ素化合物の投入量が45wt%を超える場合、ジヨウ素化合物の投入に応じた効果などが一定に表れ、過多投入に応じた効果がわずかであり、反応器の温度が低下するという問題が発生し、エネルギー効率性が低下することもある。
【0027】
前記実施形態により製造しようとする芳香族ヨウ素化化合物は、限定されることはないが、好ましくは、ジヨードベンゼンであり得る。より好ましくは、商業的価値が高いパラ−ジヨードベンゼンであり得る。
【0028】
一方、前記実施形態による芳香族ヨウ素化化合物の製造方法は、ゼオライト触媒の下で行われるが、前記ゼオライト触媒は、アルカリおよびアルカリ土類金属のケイ酸アルミニウム水和物であって、その具体的な結晶構造および組成について特別な限定なく使用可能であるが、好ましくは、Na−13X、Y−type、ZSM5、およびK−13Xからなる群より選択可能である。より好ましくは、Na−13Xが選択可能であり、Na−13Xは、ジヨウ素化合物の生産性を増加させる。
【0029】
本発明の前記実施形態による芳香族ヨウ素化化合物の製造方法の反応温度に応じた芳香族化合物のヨウ素化反応特性を調べた結果、反応温度が高いほど、反応物質(芳香族化合物およびヨウ素)の転換率は高くなるのに対し、商業的に最も高い価値評価を受けるパラ−ジヨウ素化合物の生成量が低下する結果を得ることができた。反応圧力も広範囲で実施することができ、反応圧力が上昇するほど、ヨウ素化反応の効率は増大することが分かる。このような点を考慮して、ヨウ素化反応は、230〜350℃の温度で常圧〜5気圧の圧力で行うことが可能である。前記ヨウ素化反応は、好ましくは260〜310℃、より好ましくは280〜300℃の温度で常圧〜5気圧の圧力で行うことが可能である。このように一定の反応温度範囲を維持できることにより、高い水準で反応物質(芳香族化合物およびヨウ素)の転換率を維持すると同時に、ジヨウ素化合物の生成量も効果的に上昇させることができる。
【0030】
一方、すでに上述したように、反応原料として用いられる芳香族化合物のジヨウ素化合物は、本発明の実施形態によって得られた反応生成物を分離精製して得た共融組成のジヨウ素化合物を使用することができる。つまり、本発明の他の実施形態による芳香族ヨウ素化化合物の製造方法は、前記ヨウ素化反応ステップを経た生成物を、蒸留、結晶化および固液分離を含むステップを経て得られたジヨウ素化合物を再循環させ、ヨウ素化反応させるステップをさらに含むことができる。このような再循環ステップをさらに含むことにより、反応生成物中のジヨウ素化合物を再使用することができるため、反応工程全体の生産性を向上させることができる。
【0031】
この時、ジヨウ素化合物を再使用する方法は、ヨウ素化反応器2から第1蒸留塔10に移送された芳香族化合物、そのモノヨウ素化合物、そのジヨウ素化合物、およびヨウ素の反応生成物中、芳香族化合物を分離/除去するステップと、前記第1蒸留塔10の残余物質を第2蒸留塔12に移送して、モノヨウ素化合物とヨウ素とを分離するステップと、前記第2蒸留塔12の残余物質を第3蒸留塔14に移送して、パラ−ジヨウ素化合物、オルト−ジヨウ素化合物、およびメタ−ジヨウ素化合物からなるジヨウ素混合物を分離した後、結晶化および固液分離器16に移送するステップと、前記結晶化および固液分離器16を介して、ジヨウ素混合物から固体状のパラ−ジヨウ素化合物と液体状のパラ−ジヨウ素化合物、オルト−ジヨウ素化合物、およびメタ−ジヨウ素化合物を含む母液を取得するステップと、前記母液中の一部をヨウ素化反応器2に再循環させ、ジヨウ素化合物を再使用するステップとを含むことができる。
【0032】
前記実施形態の一つの例として、ベンゼン、ヨウ素、モノヨードベンゼン、およびジヨードベンゼンを反応原料にした全体の工程および共融状態で存在するジヨウ素化合物の再使用方法は、図3に示すとおりである。このような実施形態によりジヨウ素化合物を再使用する場合、生成物として得られる全体のジヨウ素化合物の質量比率も高く、再使用による経済的な効果および生産性の増大効果がさらに増大することができる。
【0033】
このような芳香族ヨウ素化化合物の製造方法は、ヨウ素化反応とヨウ素転換反応が同時に起こり、副反応が抑制される効果があり、また、反応温度が芳香族ヨウ素化化合物の製造工程中に前記範囲内で一定に維持され、これにより、反応物質の燃焼反応による炭素堆積物のような不純物の生成反応が抑制され、触媒の交替周期が短縮されることを防止することができ、これにより、副反応の抑制による不純物の生成量を一定に制御することができる。特に、本発明にかかる芳香族ヨウ素化化合物の製造方法は、好ましくはI転換率が80%以上、より好ましくは83%以上、さらに好ましくは85%以上になり得る。また、芳香族ヨウ素化化合物の製造方法は、好ましくはDIB転換率、つまり、全体のDIB生成量が40wt%以上、より好ましくは41wt%以上、さらに好ましくは43wt%以上になり得る。
【0034】
一方、本発明にかかる芳香族ヨウ素化化合物の製造方法は、ヨウ素化反応およびヨウ素転換反応が同時に起こり、副反応を抑制することができ、また、工程中の反応温度を安定的に制御することができるため、ヨウ素化反応触媒の使用寿命を延長することができ、副反応を抑制して不純物の生成を一定に維持することができるため、ジヨウ素化合物の生産に幅広く使用可能である。
【0035】
以下、本発明の具体的な実施例により、発明の作用および効果をより詳細に説明する。ただし、このような実施例は、発明の例示として提示されたものに過ぎず、これによって発明の権利範囲が定められるのではない。
【実施例】
【0036】
まず、本発明の有用性を立証するために、後述する比較例1および実施例1〜3で使われる用語の概念について説明する。特に、反応生成物および反応工程の効率性を調べるための用語の概念を定義する。
【0037】
ヨウ素(I)の転換率(%)
ヨウ素(I)の転換率は、投入されたヨウ素の量から反応器の出口に出るヨウ素の量を引いた後、これを投入されたヨウ素の量で割った後、その比率をパーセント(%)で表したものである。
【0038】
ベンゼンの転換率(%)
ベンゼンの転換率も、投入されたベンゼンの量から反応器の出口に出るベンゼンの量を引いた後、これを投入されたベンゼンの量で割った後、その比率をパーセント(%)で表したものである。
【0039】
ジヨードベンゼンの生成量(全体のDIB、wt%)
ヨウ素化反応によって生成されるヨウ素化ベンゼンの種類は、ヨウ素原子1個と反応したモノヨードベンゼン(mono−iodobenzene、MIB)、ヨウ素原子2個と反応したジヨードベンゼン(di−iodobenzene、DIB)、ヨウ素原子3個と反応したトリヨードベンゼン(tri−iodobenzene、TIB)に分けられるが、ジヨードベンゼンとトリヨードベンゼンは、それぞれ3種の異性体を有することができる。つまり、ジヨードベンゼンとしては、パラ(p−)、オルト(o−)、メタ(m−)ジヨードベンゼンの3種の異性体がヨウ素化反応によって生成される。
【0040】
ここで、ジヨードベンゼンの生成量合計(Totoal diiodobenzene、Total DIB)とは、生成物に含まれているパラ(p−)、オルト(o−)、メタ(m−)ジヨードベンゼンの重量パーセント(weight percentage)の合計を指すものであって、これを下記式2で表した。
【数2】
【0041】
比較例1
図1に示す装置を用いて、Na−13Xタイプのゼオライト触媒の存在下で、ヨウ素化反応器2にジヨードベンゼンを添加することなく、ベンゼン(111.2g/hr)、ヨウ素(73.15g/hr)、モノヨードベンゼン(527.4g/hr)、および酸素を原料として用いてヨウ素化反応を行った。この時、注入される非ハロゲン化芳香族化合物/ヨウ素のモル比が1.93となるようにした。
【0042】
まず、ヨウ素と酸素はともに、予熱器を経て、約200℃まで予熱して反応器に投入し、ベンゼンとモノヨードベンゼンは、他の投入ラインを介して、蒸発器を経て蒸気状態に転換した後、同じく、約200℃まで予熱して反応器に投入した。反応温度を、反応器のオイルジャケットに入るオイルの温度を調整して制御し、反応器の中央部の温度が280℃に維持されるようにした。一方、反応器内の温度は、すべての部分で一定に維持されてはいなかった。反応器上部の温度は、約320℃付近まで上昇し、所望する実験温度より過度に高くなり、流体の流れ方向にいくほど、反応温度が約240℃まで低くなった。
【0043】
特に、反応器内の温度分布を知るために、反応器の中央部に温度感知装置(サーモウェル又は熱電対)を設け、反応器の上/中/下部の温度を固定的に観察する一方、上下に動くことができる熱電対を用いて、反応器内において最も高い温度を示す地点を周期的に観察した。このような観察の結果、反応器の中心で測定した反応器の長さに応じた温度分布グラフは、図4に示すとおりである。
【0044】
前記ヨウ素化反応は、常圧の条件で連続工程によって実施し、反応条件に到達して24時間経過した後、試料の採取と分析を実施した。この時、各実験条件と分析結果は、下記の表1に示すとおりである。
【0045】
実施例1
図2に示す装置を用いて、比較例1と同一の条件により、Na−13Xタイプのゼオライト触媒の存在下でヨウ素化反応を実施するにあたり、ベンゼン(102.4g/hr)、ヨウ素(66.9g/hr)、モノヨードベンゼン(483.8g/hr)を投入した。さらに、ジヨードベンゼン(65.9g/hr)を投入し、全体の供給原料(Feed)組成中のジヨードベンゼンは9%(wt%)となった。この時、注入される非ハロゲン化芳香族化合物/ヨウ素のモル比が1.93となるようにした。ここで使用したジヨードベンゼンは、単一物質ではなく、3種(パラ、オルト、メタ)の異性体からなるジヨードベンゼンを結晶化させた後、固液分離して、液体として存在するジヨードベンゼン混合物(パラ、オルト、メタ)を使用した。
【0046】
また、比較例1に記載の方法と同様に、反応器の中心で測定した反応器の長さに応じた温度分布グラフは、図4に示しており、前記反応条件およびこれに応じた生成物に対するデータは、表1に示したとおりである。
【0047】
特に、反応器内の温度は、すべての部分でほぼ均一に維持され、反応器上部の温度は、約310℃以下で所望する実験温度に近接して維持され、流体の流れ方向にも260℃以上で維持された。
【0048】
実施例2
図2に示す装置を用いて、比較例1と同一の条件により、Na−13Xタイプのゼオライト触媒の存在下でヨウ素化反応を実施するにあたり、ベンゼン(98.1g/hr)、ヨウ素(47.8g/hr)、モノヨードベンゼン(458.7g/hr)を投入した。さらに、ジヨードベンゼン(115.1g/hr)を投入し、全体の供給原料(Feed)組成中のジヨードベンゼンは16%(wt%)となった。この時、注入される非ハロゲン化芳香族化合物/ヨウ素のモル比が1.93となるようにした。
【0049】
また、比較例1に記載の方法と同様に、反応器の中心で測定した反応器の長さに応じた温度分布グラフは、図4に示しており、前記反応条件およびこれに応じた生成物に対するデータは、表1に示したとおりである。
【0050】
特に、反応器内の温度は、すべての部分でほぼ均一に維持され、反応器上部の温度は、約300℃以下で所望する実験温度に近接して維持され、流体の流れ方向にも275℃以上で維持された。
【0051】
実施例3
図2に示す装置を用いて、比較例1と同一の条件により、Na−13Xタイプのゼオライト触媒の存在下でヨウ素化反応を実施するにあたり、ベンゼン(91.3g/hr)、ヨウ素(47.87g/hr)、モノヨードベンゼン(422.7g/hr)を投入した。さらに、ジヨードベンゼン(162.2g/hr)を投入し、全体の供給原料(Feed)組成中のジヨードベンゼンは22%(wt%)となった。この時、注入される非ハロゲン化芳香族化合物/ヨウ素のモル比が1.93となるようにした。
【0052】
また、比較例1に記載の方法と同様に、反応器の中心で測定した反応器の長さに応じた温度分布グラフは、図4に示しており、前記反応条件およびこれに応じた生成物に対するデータは、表1に示したとおりである。
【0053】
特に、反応器内の温度は、すべての部分でほぼ均一に維持され、反応器上部の温度は、約300℃以下で所望する実験温度に近接して維持され、流体の流れ方向にも275℃以上で維持された。
【表1】
【0054】
前記表1から分かるように、投入条件において比較例1と実施例1〜3を比較してみると、投入されるジヨードベンゼンの量を増加させても、一定の組成でそれ以上の生成物のパラ、オルト、メタ−ジヨードベンゼンとトリヨードベンゼンの組成が変化することなく、一定の組成で収められることがわかる。これは、ヨウ素化反応触媒の存在下でヨウ素化反応と同時に、ジヨードベンゼンとトリヨードベンゼンのモノヨードベンゼンへのヨウ素転換反応が起きることを意味する。つまり、ヨウ素化反応およびヨウ素転換反応が同時に起こる場合、副反応の生成が抑制されることが分かった。
【0055】
実施例1〜3による生成物の組成において、パラ−ジヨードベンゼンの重量%がジヨードベンゼンを投入しない比較例1と比較すると、約2%程度低いものの、前述したように、比較例1による方法により、製造時の反応温度を制御するのには相当な困難があった。特に、図4に示すように、比較例1による場合、反応の長さに応じて反応中心部の温度分布に大差が出ることが分かるが、これは、反応が活発に起きる地域が反応器の一定部分に限定され、触媒層全体を効率的に使用することができないことを意味する。これに対し、実施例1〜3による方法の場合、反応器の長さに応じた温度変化が激しくなく、これは、反応器の内部に充填された触媒層全体を効率的に使用していることを意味する。
【0056】
つまり、比較例1による場合、反応が活発に起きる地域が反応器の一定部分に限定され、一定部分の触媒のみを主に使用するため、前記部分の触媒の非活性化が急速に起きるようになり、これにより、全体の触媒層のうち、有用な反応触媒層の長さは減少する。また、反応器の一定部分の温度が上昇すると、反応成分中の一部が炭化して触媒の活性を急激に低下させ、触媒の寿命が短くなるという問題がある。
【0057】
これに対し、実施例1から実施例3にいくほど、反応温度を安定的に制御することができ、副反応生成量も一定に維持することができた。特に、I転換率をみると、比較例1に比べてジヨードベンゼンの投入量が増加するほど高くなることが分かる。これは、反応後の精製工程において、蒸留カラムを安定的に運転するのに寄与する。
【0058】
したがって、このような実験の結果から確認できるように、本発明の実施例1〜3により芳香族ヨウ素化化合物の製造時、ジヨウ素化合物を反応物に追加供給してヨウ素化反応を行う場合、ヨウ素化反応とともに、ヨウ素転換反応が同時に起こり、副反応の生成が抑制され、反応温度の制御が容易であることにより、触媒の使用寿命を延長することができる。また、これにより、ジヨウ素化合物の大量生産に適合し、さらに産業的利用価値が高いパラ−ジヨウ素化合物も大量生産することができるため、ジヨウ素化合物、特に、パラ−ジヨウ素化合物の製造に幅広く使用可能である。
【符号の説明】
【0059】
2:ヨウ素化反応器
4:背圧調整器
6:サンプル処理システム
8:ガス分析器
10:第1蒸留塔
12:第2蒸留塔
14:第3蒸留塔
16:結晶化および固液分離器
図1
図2
図3
図4