(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6014703
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月25日
(54)【発明の名称】車両のグレージングパネル切取り用ワイヤ処理装置
(51)【国際特許分類】
B26D 1/547 20060101AFI20161011BHJP
B26D 3/00 20060101ALI20161011BHJP
【FI】
B26D1/547 D
B26D3/00 601A
B26D3/00 603A
B26D1/547 F
B26D1/547 A
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-64359(P2015-64359)
(22)【出願日】2015年3月26日
(62)【分割の表示】特願2012-553408(P2012-553408)の分割
【原出願日】2011年2月16日
(65)【公開番号】特開2015-147296(P2015-147296A)
(43)【公開日】2015年8月20日
【審査請求日】2015年3月30日
(31)【優先権主張番号】1002856.1
(32)【優先日】2010年2月19日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】508325119
【氏名又は名称】ベルロン ハンガリー ケーエフティー − ツーク ブランチ
(74)【代理人】
【識別番号】100064469
【弁理士】
【氏名又は名称】菊池 新一
(74)【代理人】
【識別番号】100099612
【弁理士】
【氏名又は名称】菊池 徹
(72)【発明者】
【氏名】ウイリアム フィンク
【審査官】
矢澤 周一郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−145424(JP,A)
【文献】
特表2007−515334(JP,A)
【文献】
特開2008−094568(JP,A)
【文献】
特開平08−001598(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B26D 1/547
B62D 67/00
B26D 1/46
B26F 3/12
B65H 75/42
B65H 75/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
グレージングパネル切取り作業に用いられるべきカッティングワイヤを分配するディスペンサシステムであって、グレージングパネルに取り付けられるようにし、システムからカッティングワイヤを繰り出すように動作する回転手段を備えたマウント装置を含み、前記回転手段は、カッティングワイヤを繰り出すために加えられることが要求されるトルクを調節するように制御することができ、前記回転手段を操作するために加えられることが要求されるトルクを調節するように動作する可調節ブレーキ手段を更に含んでいるディスペンサシステム。
【請求項2】
請求項1によるディスペンサシステムであって、前記可調節ブレーキ手段は、ブレーキ効果を増加するために締め付けたり、ブレーキ効果を減少するために緩めたりすることができる摩擦ブレーキから成っているディスペンサシステム。
【請求項3】
請求項1又は2によるディスペンサシステムであって、前記回転手段は、前記ワイヤ貯蔵器が連結されるようにした回転器から成っており、且つ前記システムは、前記回転器の回転軸に垂直なインターフェースに係合して回転器を操作するために加えられることが要求されるトルクを調節するように動作する可調節ブレーキ手段を含んでいるディスペンサシステム。
【請求項4】
請求項3によるディスペンサシステムであって、前記可調節ブレーキ手段は、カム・レバー装置によって操作されるディスペンサシステム。
以上
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のグレージングパネル(glazing panel)切取り技術用のワイヤ処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両のウインドガラス(ウインド遮蔽板)の如き車両のグレージングパネルは、グレージングパネルの周縁とフレームとの周りに連続的なビード状で施されるポリウレタンの如き接着材によって支持フレームに接着されるのが典型的である。
【0003】
ワイヤ切取り技術は、グレージングパネルを(交換その他の目的で)取り外すために、以前から提案され用いられている。これらの典型的な技術は、例えば、EP−A−0093283号、カナダ特許明細書第2034221号、米国特許第6616800号、ドイツ特許第4012207号及びPCT公報WO2006/030212号、WO86/030212号、WO86/07017号及びWO98/58779号に開示されている。
【0004】
現在考案されている改善された技術及び装置は、カッテイングワイヤを分配するディスペンサ・ユニットを有することによってフロントガラスを切取るのに役立ち、このディスペンサは、グレージングパネルに取り付け、切取り処理中、グレージングパネルに取り付けられたまま、カッティングワイヤをディスペンサから繰り出すことができるようにする手段を有する。ワイヤ巻取ユニットは、1つ以上の巻取スプールを含み、典型的には、フロントガラスに取り付けられる。この巻取ユニットは、幾つかの取り付け位置の間でフロントガラスの周りを移動して、これらの異なる取付け位置でそれぞれ別個の切取りが行われる。
【0005】
ディスペンサ・ユニットが最初にフロントガラス上にセットされる際、カッティングワイヤは、グレージングパネルの周りでループ状にされ、また、ディスペンサから繰り出されたワイヤの自由端は、巻取ユニットの巻取スプールに接続される。
【0006】
典型的には、巻取ユニットの巻取スプールは、ワイヤを巻取り、それによってボンド材料をカットするように操作され、その間、カッティングワイヤは、ボンド材料のスリップ切断を行うために、ディスペンサ・ユニットから繰り出される。
【0007】
第1の面によれば、本発明は、グレージングパネルの切取り方法に用いられるべきカッティングワイヤを分配するディスペンサシステムであって、
グレージングパネルに取り付けられ、ワイヤ貯蔵器をドッキングするドッキングステーションを備えているマウント装置と
ワイヤを分配するためにドッキングステーションに取り付けられて前記ドッキングステーションから取り外し可能であるワイヤ貯蔵器と
を備えたディスペンサシステムを提供するものである。
【0008】
それに代えて、本発明は、グレージングパネル切取り方法に用いられるべきカッティングワイヤを分配するディスペンサシステムであって、グレージングパネルに取り付けられ、ワイヤ貯蔵器を取り外し可能にドッキングするドッキングステーションを備えているマウント装置から成るディスペンサシステムを提供することが考えられる。
【0009】
このドッキングステーションは、ワイヤ貯蔵器からカッティングワイヤを繰り出すように動作する回転手段を備えているのが有益である。
【0010】
この回転手段は、この回転手段を操作するために加えられることが要求されるトルクを調節するように制御することができる。この目的のために、この回転手段を操作するために加えられることが要求されるトルクを調節するように操作するのが好ましい可調節制動手段が設けられている。
【0011】
1つの実施例では、この可調節制動手段は、ブレーキ効果を増大させるように締め付けることができ、又はブレーキ効果を減少するように緩めることができる摩擦ブレーキから成っているのが好ましい。
【0012】
回転手段は、ワイヤ貯蔵器がドッキングされて取り外し可能な係合状態で結合されるようにした回転器から成っているのが好ましい。
【0013】
好ましい実施例では、ドックキング係合状態にあるとき、貯蔵器のスプールが回転器と共に回転するように結合されている。
【0014】
ある実施例では、貯蔵器は、ドッキングされて取り外し可能な係合状態に回転器に適合する中心孔を有するのが好ましい。
【0015】
ドッキングステーションとワイヤ貯蔵器とは、ワイヤ貯蔵器がドッキングステーションにドッキングされる際に係合するようにしたそれぞれの補完係合ドッキング構成部を備えているのが有益である。
【0016】
好ましい実施例では、係合ドッキング構成部は、貯蔵器がドッキングステーションに着脱せしめられるが、ドッキング状態にあるとき、貯蔵器とドッキングステーションとが共に一致して回転するように結合されているのを確実にするようになっている。
【0017】
可調節制動手段が用いられる場合には、これは、カム・レバー装置によって操作されるのが有益である。
【0018】
好ましい実施例では、グレージングパネル上に固定するマウント手段は、吸着マウントから成っている。
【0019】
上記に替わる面によれば、本発明は、グレージングパネル切取り方法に用いられるべきカッティングワイヤを分配するディスペンサシステムであって、グレージングパネルに取り付けられるようにし、システムからカッティングワイヤを繰り出すように動作する回転手段を備えたマウント装置を含み、前記回転手段は、カッティングワイヤを繰り出すために加えられることが要求されるトルクを調節するように制御することができるディスペンサシステムを提供するものである。
【0020】
好ましい実施例では、このシステムは、回転手段を操作するために加えられることが要求されるトルクを調節するように動作する可調節ブレーキ手段を含んでいる。
【0021】
この可調節ブレーキ手段は、ブレーキ効果を増加するために締め付けたり、ブレーキ効果を減少するために緩めたりすることができる摩擦ブレーキから成っていてもよい。
【0022】
回転手段は、ワイヤ貯蔵器が連結されるようにした回転器から成っており、システムは、この回転器(好ましくは回転器の回転軸に垂直なインターフェース)に係合して回転器を操作するために加えられることが要求されるトルクを調節するように動作する可調節ブレーキ手段を含んでいる。
【0023】
更に他の面によれば、本発明は、分配用カッティングワイヤを蓄えるワイヤ貯蔵器を備え、前記ワイヤ貯蔵器は、
環状基部と前記基部から上向きに延びるアーチ状直立外壁とを有し、前記アーチ状直立外壁は、この外壁内にギャップが形成されるようにこの外壁の終端縁間で前記環状基部の周りを延びている環状ハウジングと、
前記環状ハウジングのアーチ状直立外壁の内部に入れ子式に収納される環状スプール本体部材を含み、
前記環状ハウジングと前記環状スプール本体部材とは、これらの間の相対回転が容易に行われるように相互に保持されている
ワイヤ貯蔵器を提供するものである。
【0024】
この貯蔵器の内筒壁は、前記環状スプール本体の内筒壁によって形成されているのが好ましい。
【0025】
好ましい実施例では、環状のスプール本体部材は、スプール本体がハウジングとの入れ子式の係合から外れるのを防止するが、環状ハウジングと環状スプール本体との相対回転を許す構成部(好ましくはスナップ嵌め構成部)によって環状ハウジングのアーチ状直立外壁内に入れ子式に収納されている。
【0026】
好ましい実施例では、貯蔵器の内筒壁(好ましくはスプール本体の内筒壁)は、ワイヤ貯蔵器がカッティングワイヤを繰り出したり引きこんだりするように動作する回転手段に回転結合されるようにする構成部を備えている。
【0027】
本発明は、例示的にのみであるが、添付図面を参照して特定の実施例において以下に記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明による代表的な切取りシステムの巻取ユニットの概略平面図である。
【
図4】切取り技術を順に示す更に次の概略図である。
【
図5】本発明によるワイヤ貯蔵器の概略斜視図である。
【
図6】本発明によるワイヤ貯蔵器の概略斜視図である。
【
図7】本発明によるワイヤ貯蔵器の概略斜視図である。
【
図8】本発明によるワイヤ貯蔵器の概略斜視図である。
【
図9】本発明によるワイヤディスペンサシステムの概略斜視図である。
【
図10】本発明によるワイヤディスペンサシステムの平面図である。
【
図11】本発明によるワイヤディスペンサシステムの断面図である。
【
図12】同図(A)(B)は、それぞれ本発明によるワイヤディスペンサシステムの一部の概略断面図及び平面図である。
【
図13】本発明によるワイヤ貯蔵器が装填された本発明によるワイヤディスペンサシステムの概略斜視図である。
【
図14】本発明によるワイヤ貯蔵器が装填された本発明によるワイヤディスペンサシステムの平面図である。
【
図15】本発明によるワイヤ貯蔵器が装填された本発明によるワイヤディスペンサシステムの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図面、先ずは、
図1乃至
図4を参照すると、特に、フロントガラスの如き車両に接合されたグレージングパネルを切取るのに用いられる切取りシステムが示されている。この切取りシステムは、巻取ユニット1と、ワイヤディスペンサユニット2とから成っている。
【0030】
巻取ユニット1は、この巻取ユニットがフロントガラスに取外自在に固定されることができる1対の取外自在な吸盤マウント10、11を含んでいる。吸盤マウントは、硬質プラスチックカップ12とその下方の可撓性ゴム製スカート薄膜13とから成っている。それぞれの起動/解放レバー14によって安定した吸着が行われたり解放されたりすることができる。このような吸着マウントは、フロントガラスの交換、補修技術で一般に使用されている。吸盤マウント10、11は、これらのマウント10、11が共にフロントガラスの湾曲にも拘わらずフロントガラスと良好に係合して据え付けすることができるのを確保するために、巻取ユニットの支持ブラケット15に枢動自在に/傾斜可能に取り付けられている。支持ブラケット15の主体は、横並びの関係にして1対の吊り下げ式巻取スプール4、5を保持している。これらのスプールは、巻取ユニットに設けられたベアリング16、17に支持される軸線方向の巻取軸に接続されている。これらのスプール4、5は、手巻取器による手動か、電動巻取工具又はウインチ工具の如き機械的起動器かによって軸線方向に回転駆動される。
【0031】
駆動ボス18は、雄ドライバー工具を受け入れる雌ソケット(角孔)19を備えている。巻取スプールの外方には、低摩擦プラスチック材料のワイヤ案内プーリーホイール8、9がそれぞれ位置している。これらのプーリーホイールは、それぞれの回転軸線に対して回転可能に取り付けられる。後に述べるように、カッティングワイヤがプーリーを横切って接線上を引かれると、案内プーリーが回転する。巻取スプール4、5は、それぞれのラチェット機構によって一方向のみ(各々反対の方向)回転するように保持される。各ラチェット機構は、それぞれ、先に締め付けられたワイヤが緩められるか巻きほぐされる(逆巻き)のを可能にするラチェット・オーバーライドを含んでいる。
【0032】
巻取ユニット1は、
図2に示されるようなステアリングハンドルより上のグレージングパネル3の表面で車両の内部に固定される。ディスペンサ・スプール2としても作動するワイヤ貯蔵器は、グレージングパネル3の外面に固定され、ワイヤ41は、コーナーAで始まってコーナーBC及びDへと進んでグレージングパネルの外周縁の周りにまとわれる。次いで、このワイヤは、フロントガラスの最下端縁付近を(DからAに向けて)通過し、ワイヤの自由端は、コーナーAでPUボンドビードに形成された孔を通って引かれてこの自由端が巻取スプール5に取り付けられる。接着テープパッチ6は、ワイヤの上でフロントガラスに固定される。ディスペンサ・スプール2は、吸盤マウント2aと内部ワイヤディスペンサカートリッジとを含み、このカートリッジは、ワイヤに所望の大きさのテンションが掛けられた時に、ワイヤをディスペンサ・スプールから繰り出すように自由に回転することができる。接着テープパッチは、スプールからワイヤを繰り出すのに抵抗を与えるのに用いられる。典型的には、抵抗又は摩擦付与装置である他のブレーキを粘着性パッチ6に加えて又は代わりに用いることができる。
【0033】
スプール5を巻き取ってカッティングをコーナーAから側縁に沿って上方に移動し、コーナーBを回るようにスプール5を巻き取ることによって取外しが開始される。切取り中、丈夫であるか大きなPU粘着性ビードから過度の抵抗が生じる場合、ワイヤは、ディスペンサ・スプール2からまきほぐされ、「スリップ・カッティング」と称することができる状態でPU接着剤を越えてスリップし、スライスする。フロントガラス上に取り付けられたスプール・ディスペンサを用いると、この「スリップ・カッティング」は、ワイヤ41の他方の自由端を事前にカッティングすることなく、切取り処理の早い時期に生じることができる。一旦カッティングワイヤ41がコーナーBのまわりを移動すると、巻取ユニット1は、フロントガラスを横切って反対側に移動せしめられ、
図3に示される状態でフロントガラスに再固定される。巻取ユニット1の位置を変える前に、巻取スプール5のラチェットが解放されると、このスプールが位置変えされるようにグレージングパネルを横切って移動される際に、ワイヤをスプール5から巻きほどくことができる。その後、このラチェットが再結合してスプール5は、もう一度、ワイヤを巻き込むように動作する。
【0034】
切取りが上縁に沿ってほとんど完了すると、巻取ユニットは90度回転し、
図4に示されるように再固定される。その後、切取りが進行して切取り位置がコーナーCの周りを通過する。次いで、接着テープ6が外され、巻取スプールに達して巻きつけられるように、十分なワイヤがディスペンサ・スプール2から繰り出される。その後、ワイヤの測定された長さがディスペンサ・スプールからカットされ、フロントガラスの既に解放されたコーナーをこじ開けて小さなギャップを形成するか、自由端をコーナーAでPUボンド材料に予め形成された孔に通すことによって、切断自由端を車両内に引き入れる。その後、ワイヤ4の自由端は、(プーリー8を通して)スプール4に接続される。次いで、巻取スプール4がワイヤを巻き込むように動作し、このようにして下縁に沿って切取りを行う。
【0035】
本発明によるワイヤ貯蔵/ディスペンサ装置50は、
図5乃至
図10に示され、上記した貯蔵/ディスペンサより優れた利点を有する。
【0036】
図5に示される貯蔵/ディスペンサ装置50は、環状の外スリーブ又はハウジング51を含み、このハウジングは、それに着座するようにワイヤが巻かれるスプール本体52を収納している。スプール本体52と外スリーブハウジング51とは、相対的に回転するように組み立てられる。スプール本体は、
図7に分離して示されている。スリーブハウジング51は、
図6に最も明瞭に示され、環状基部53と、直立外壁54とを有することが解り、外壁54は、装置50の周面のまわりの大部分に亘って延びているが、壁54がない周面開口を形成する終端直立縁55、56を備えている。内周直立リップ57がスリーブ51の中心空洞58の全周を延びている。周面直立壁54の上リム59に向けて、壁54の上部内径方向の内面61と壁54の下部内径方向の内面62との間に肩部60がある。内面61は、内面62の外径方向に間隔をあけている。一連のクリップ突肉部63は、壁の上部内径方向の内面の周りに間隔をあけて設けられている。ストッパータブ64は、壁54の外面から外径方向に突き出て設けられている。
【0037】
図7に示されるように、ワイヤ・スプール本体52は、上面64と、上面64の直下の上部フランジ66とを有し、この上部フランジ66は、外径方向に延びている。この物体52は、また、下部フランジ65と、ワイヤが巻かれる凹んだ環状壁67とを有する。装置50を組み立てるために、スプール本体52は、スリーブ51の基部53に乗っかるまで、スリーブ51の下方に押し込まれる。このようにスリーブとスプールとを組み立てる際に、クリップ突肉部が変形してスプール52の上部フランジ66の上方に確実にスナップ嵌めされる。このようにして、スプール本体52は、スリーブに対して拘束状態に保持されるが、これらの2つの部品の間では相対的な回転が許される。ワイヤ・スプール52は、後に述べるように、マウント装置75の回転キャプスタン装置90上に設けられた構成部上に配置するために、相対する内周壁にへこみ70、71を備えている。巻取突出部73は、ワイヤ・スプール52の上面64に設けられていてスリーブ51に対してスプール本体52を手動で巻取ることができるようにしている。凹んだ環状壁67は、ワイヤ挿入孔72を備えており、このワイヤ挿入孔は、角度をつけてこの壁67を完全に延びていてワイヤの端部がスプール本体52に対して挿入され固定されることができるようにしている。上面64は、挿入孔を上方から見ることができるように監視孔76を備えている。
【0038】
ワイヤを分配するために、貯蔵/ディスペンサ装置50が取り付けられるマウント装置75は、
図9乃至
図11に最もよく示されている。このマウント装置は、取外自在な吸盤マウント77から成っていてマウント装置をフロントガラスに取外し自在に固定することができるようにしている。この吸盤マウント77は、硬質プラスチックカップ82とその下方の可撓性ゴム・スカート薄膜83とから成っている。起動/解放レバー84は、安定した吸着が行われたり、解放されたりすることができるようにしている。前に述べたように、この吸着マウントは、フロントガラスの交換や補修作業で一般に使用されている。レバー84が下降又は係合する位置にあるとき、このレバー84によって占められる位置とは反対側のマウント装置75の位置には、モールド部86があり、このモールド部は、回転キャプスタン90が取り付けられる取付けプラットフォーム89用の固定ボルト88を受け入れている。この取付けプラットフォーム89は、フランジ周面89aを有し、このフランジ周面は、ほぼ円筒形であって静止ブッシュ92の外筒周面に中心孔91によってプラットフォーム89に対して回転自在に取り付けられた回転キャプスタン90より外方に延びている。起動/解放レバー94は、ピン固定部93の周り枢動し、この枢動で静止ブッシュ92の軸線孔に受け入れられた中心ステムチューブ95aを有する反動キャップ(リアクションキャップ)95に対してカム動作する。このカム動作は、反動キャップ95を下方へ押す傾向がある。ステムチューブ95aの下端は、圧縮ばね97に衝合して反動キャップ95とステムと下向きの力と移動とに対抗している。
【0039】
従って、反動キャップは、ばね97によって均衡位置へ上向きに有効に付勢される。レバーがその起動位置(
図11に示される位置)に移動すると、反動キャップ95とステム95aとは、下方へ移動し、ばねは、圧縮されるようになる。下端99aのねじが切ってある軸線ロッド99は、プラットフォーム89に設けられた受けボス100のねじ孔に受け入れられている。(直立位置に配向されている際にレバーによって)軸線ロッド99を縦軸線の周りを回転させることによって、反動キャップ95とステムチューブ95aとは、回転キャプスタン90の上面90aに対して上下動する。適合しているか圧縮性であるディスク103(例えば、フェルトディスク)は、反動キャップ95の下側に取り付けられている。
【0040】
レバーがその起動位置(
図11に示される位置)に移動すると、反動キャップ95とステム95aとは、下方に移動し、ばねは、圧縮されるようになる。軸線ロッド99の縦軸線の周りを回転する結果として回転キャプスタン90の上面90aに対して反動キャップ95とステムチューブ95aが上下動する程度にもよるが、(ブレーキディスクとして有効に働く)圧縮ディスク103は、回転キャプスタン90の上面90aから離れるか回転キャプスタン90の上面90aに係合するように押し付けてキャプスタン90のプラットフォーム89上での回転に対してブレーキとして作用するようにしている。このようにして、ディスペンサ装置は、ワイヤから繰り出している間に作用するブレーキ力に関して容易に調整することができるブレーキ機構を含む。達成されたブレーキ掛けの程度は、軸線ロッドが時計回り、反時計回りの方向で回転する程度に依存することになる。極端な場合には、圧縮ディスク103と回転キャプスタン90の上面90aとの間の摩擦的な係合がないことがあり、この場合には、回転キャプスタンは自由に回転することができる。また、他の極端な場合には、圧縮ディスク103と回転キャプスタン90の上面90aの間が最大に係合することがあり、この場合には、回転キャプスタンは、回転することが全く妨げられる。これら両極端の間では、キャプスタンを回転するのに必要なトルクは、軸線ロッド99の位置によって変化する。その結果、キャプスタンに作用するブレーキを微細に調節することができる。
【0041】
回転キャプスタン75は、相対する周壁部分に戻り止め106、107を備え、これらの戻り止めは、ワイヤ貯蔵器50がプラットフォームのフランジ89aに乗るように下降してドッキングしてキャプスタンの外面の周りにぴったりと据えつけられると、このワイヤ・スプール52の相対する内周壁上でへこみ70、71に整合して係合するようになっている。これらの係合へこみは、いったん係合すると、スプール52がキャプスタン75に対して回転が有効にロックされるので、(先に述べたブレーキ機構によって回転が有効に禁止されていない限り)キャプスタンとスプール52とが一緒に回転するように、戻り止め106、107と協働するように形成されている。注目すべきことであるが、ハウジング51は、キャプスタンやスプール本体52と一緒に回転しないので、壁54の縁55、56の間の分配用ギャップが位置保持されるのを確実にする。
【0042】
しかし、戻り止め106、107とへこみとの間の係合は、比較的小さな手動力をかけられて貯蔵器50がドッキング位置からキャプスタン90と離れて上方に持ち上げられるようになっている。このため、係合構成部(戻り止め106、107又はへこみ70、71のいずれか)は、キャプスタン90とスプール52との周壁に対して上下に延びる直線部であるのが好ましい。これらのへこみ70、71は、スロット又は溝から成っているのが好ましい。キャプスタン90も貯蔵ディスペンサ装置50のワイヤ孔72を通って延びるワイヤの端部分に適合する凹部105を含んでいる。
【0043】
貯蔵/ディスペンサ装置50にワイヤが装填され、マウント75に固定されると、ワイヤは、貯蔵/ディスペンサ装置50から引き出すことができ、
図2乃至
図4に関連して述べたワイヤ貯蔵ディスペンサ装置2と同様の方法で使用することができる。
【0044】
しかし、
図2乃至
図4に関連して記載した貯蔵ディスペンサ装置よりも優れた幾つかの利点がこの発明によって実現される。
【0045】
第1に、ワイヤ貯蔵器50は、マウント75から容易に便宜に取り外すことができる。このようにすると、ワイヤがスプール本体52に巻かれたままで、フロントガラスの既に解放されたコーナーをこじ開けてギャップを形成し、このギャップを通してスプールを通過することによって、貯蔵器をフロントガラスの1側から他側に通過せしめることができる。その後、切断前に、必要な長さのワイヤがスプール52から繰り出される。
【0046】
第2に、この可調整ブレーキ機構は、ワイヤ分配が正確に制御されるのを確実にするように切取り方法が適合されるのを確実にする。例えば、フロントガラスの周囲のまわりにワイヤを設定する際に、それ以上のワイヤが貯蔵/ディスペンサ装置から引き出されるのを防ぐことが望ましい場合がある。このような場合には、最大のブレーキ力をかけることができる。他の場合には、ワイヤが自由に分配されることができるのが望ましく、従って、ブレーキ装置は完全に解放される。例えば、スリップ切断時の作業中の他の場合には、ある程度のトルク抵抗が必要であり、本発明の装置は、スリップ切断のために掛けられるトルク抵抗を容易に調節して作業者によって望まれるレベルに設定することができる。
【0047】
環状外スリーブを有し、ワイヤが巻かれる相対回転可能なスプール52を受け入れてその中に着座する貯蔵/ディスペンサ装置50を設けることも有利である。これは、貯蔵器50のワイヤ分配や装填を制御された方法で行うことができ、いわゆる「バードネスティング」(鳥の巣造り)の発生を防止する。「バードネスティング」は、スプールのワイヤばねの拘束が弱くなされた巻コイルが制御なく形成され、その後、絡まって、キンクが発生する虞があったり、使用が困難になったりする場合に発生する。
【0048】
本発明は、複雑すぎるシステム装置を用いることなく、又は初期設定に続く重要な装置の再構成の必要がなく、ワイヤ切取りシステムの利点を有する。この技術は、比較的経験が浅かったり最少の複雑性の初期設定事務に続く体力が比較的なかったりする作業者によって使用することができる。