(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6014722
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月25日
(54)【発明の名称】金属酸化物タイプまたは半導体タイプの物質からなる膜またはウエハをナノ構造化する方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/306 20060101AFI20161011BHJP
G03F 7/20 20060101ALI20161011BHJP
B82Y 30/00 20110101ALI20161011BHJP
B82Y 40/00 20110101ALI20161011BHJP
【FI】
H01L21/306 B
G03F7/20 521
B82Y30/00
B82Y40/00
H01L21/306 D
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-117358(P2015-117358)
(22)【出願日】2015年6月10日
(62)【分割の表示】特願2012-510351(P2012-510351)の分割
【原出願日】2010年5月12日
(65)【公開番号】特開2015-222815(P2015-222815A)
(43)【公開日】2015年12月10日
【審査請求日】2015年6月10日
(31)【優先権主張番号】0902339
(32)【優先日】2009年5月14日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】511274950
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ ドゥ テクノロジー ドゥ トロワイ
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITE DE TECHNOLOGIE DE TROYES
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】ルロンデル,ジル
(72)【発明者】
【氏名】ディヴェイ,ロラン
【審査官】
鈴木 聡一郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開2002−270874(JP,A)
【文献】
特開2008−041853(JP,A)
【文献】
特開平11−243223(JP,A)
【文献】
特開平10−229212(JP,A)
【文献】
特開平04−065815(JP,A)
【文献】
特開平06−230216(JP,A)
【文献】
Michael KOHLER,Etching in Microsystem Technology,ドイツ,WILEY-VCH Verlog GmbH,1999年,p. 342
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B82Y 5/00−99/00
G03F 7/20−7/24
G03F 9/00−9/02
H01L 21/208
H01L 21/306−21/3063
H01L 21/308
H01L 21/312−21/32
H01L 21/368
H01L 21/465−21/467
H01L 21/47−21/475
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
膜状またはウエハ状の物質(2)を水溶液(3)に浸漬させている間に、照明領域(6b)および暗領域(6a)を有する干渉模様(6)を該物質(2)の少なくとも1つの面につけるステップを含む、膜状またはウエハ状の物質(2)をナノ構造化する方法であって、
上記物質が、光吸収作用によって水溶液に溶解可能になる酸化物であり、
上記膜状またはウエハ状の物質(2)のナノ構造化を、該水溶液(3)に接触する該物質(2)の表面で、該照明領域(6a)での光分解によって、および、該干渉模様(6)の暗領域での成長によって行い、
マスクを使用せずに、上記膜状またはウエハ状の物質(2)を直接的にナノ構造化することを特徴とする方法。
【請求項2】
上記物質(2)が非多孔性物質であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
上記物質(2)が、紫外線領域に禁制帯エネルギーを有することを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
上記物質(2)が酸化亜鉛を含有することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
上記膜状またはウエハ状の物質(2)のナノ構造化を、pH6〜12の水溶液中で、干渉模様(6)の照明領域(6b)での光分解によって行うことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
上記ナノ構造化によって、ナノメートルサイズの構造を形成することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔技術分野〕
本発明は、一般に、受動光学素子、能動光学素子、または、この種の構造を形成する必要があるその他の任意の素子(センサや電気装置など)を製造するために、大きな表面上で金属酸化物タイプまたは半導体(“SC”;semiconductor)タイプの物質(例えば酸化亜鉛)を膜またはウエハの形態で直接的にナノ構造化する分野に関する。
【0002】
本願においてナノ構造化とは、ナノ構造(すなわち、サブミクロンまたはナノメートルのサイズの構造)の形成につながる構造を形成することを意味する。ただし、当業者が、マイクロメートルのサイズを有する構造を用いて本発明の各種変形を実施しても、本特許の範囲を逸脱するものではないことは理解されるはずである。このようなナノ構造化は、物質の光化学特性の利用に基づいて行われる。これをホログラフィーと組み合わせることによって、物質(膜またはウエハ)を分解および/または合成することが可能になる。
【0003】
本願において直接的なナノ構造化とは、露光および露光に続いて転写が実施される感光性樹脂の分解過程によってナノ構造化することとは異なり、例えば分解によって単一のステップにおいてナノ構造化することを意味する。
【0004】
本願において膜とは、例えばウエハなどの基板または固体物質上の薄膜を意味する。
【0005】
酸化亜鉛は、現在多数の研究(特に酸化亜鉛の発光特性に関連する研究)のテーマである。
【0006】
酸化亜鉛の光学特性を最適化する一つの方法は、酸化亜鉛(ZnO)をナノ構造化することである。
【0007】
その理由は、光学の分野では、ナノ構造化によって、物質からの光の抽出が最適化されるからである。具体的には、有用な光束の増加(放出図(emission diagram)の再分布)、多数の光子の放出(パーセル効果を介した放出率の調整、つまり、光子結晶手法)、振動力の増加および放出位置の制御(量子の閉じ込め)、誘導放出の閾値の低減(レトロアクティブ効果)などがあげられる。
【0008】
これらの放出特性に加えて、酸化亜鉛を接触電極(導電性透明酸化物)、圧電素子、光検出器(UVフォトダイオード)、または、センサとして使用してもかまわない。一例をあげれば、ナノ構造化を、例えば、フォトダイオードまたは光電池の場合には結合効率(反射防止効果、インデックスの調整、吸収の向上)を増大させるために使用してもよく、センサの場合には比表面積を増加させるために使用してもよい。
【0009】
この酸化亜鉛のナノ構造化を実施するためには、複数の手法が知られており、基本的には3つのカテゴリーに分類される。
【0010】
1つ目のカテゴリーは、マスクを用いて間接リソグラフィーを実施し、続いて薄膜状物質へ転写するステップを例えば電子リソグラフィーによって実施し、さらに続いてドライエッチングまたは極小スケールのフォトリソグラフィーのステップを実施する手法をまとめたカテゴリーである。ただし、このリソグラフィー法には、多数の関連ステップを採用することが必要となるマスクを用いるという短所がある。
【0011】
2つ目のカテゴリーは、例えば、合焦イオンビームまたは直接微細スケールの光分解による高解像度リソグラフィーなどの、直接リソグラフィーの手法をまとめたカテゴリーである。1つ目の手法は高解像度の構造を形成することを可能にするが、形成された構造の表面は約100μm×100μmのサイズに制限され、このため、該構造を大きなスケールで製造することは不可能である。
【0012】
3つ目のカテゴリーは、化学合成、電気化学合成、または、熱合成によって、ナノ構造化された膜に格子状のナノ構造を成長させる(平面上のランダムな構造化)手法をまとめたカテゴリーである。米国特許出願公開第2008/107876号明細書には、特に、酸化亜鉛の微細構造を選択的に成長させる方法について記載されている。この方法は、基板に物質を塗布するステップと、物理エッチング法または化学エッチング法を用いて、所定かつ特定の位置および所定の間隔を有するパターンを該基板上に形成するステップと、熱水合成法または物理蒸着法もしくは化学蒸着法などのさまざまな成長法を用いて、酸化亜鉛の微細構造を、上記パターンが形成されている位置において選択的に成長させるステップとを含む。
【0013】
これらの手法では、化学合成、電気化学合成、または、熱合成を用いることによって、ナノ構造化された大きな面を製造することが可能になるが、面内の構造化はランダムに行われる。この短所は、この手法をマスクリソグラフィー法と組み合わせて大きな表面上に構造を形成することによって、解消することが可能であるが、この場合、マスクを製造するという問題が残る。
【0014】
これらの手法は、いずれも工業的なレベルでは使用されていない。
【0015】
したがって、酸化亜鉛などの物質をナノ構造化することを可能にする、素晴らしい品質の利用可能な構造を形成しつつ大きな表面上で実施でき、単純、直接的、かつ、制御可能な方法が、現在は一切存在しない。なお、この問題はZnOに特有の問題ではない。
【0016】
本発明の目的は、物質の光化学特性および電気化学特性を利用して(例えば酸化亜鉛をホログラフィーと組み合わせて)、この技術的な問題を解消することである。
【0017】
この目的を達成するために、本出願人は、サブミクロンスケール(100nm〜1000nmの、1μm未満のサイズを総称する測定スケール)およびナノメートルスケール(100nm未満のサイズを総称する測定スケール)までナノ構造化された(単層または多層の)膜を、大きな表面上で単純、直接的、かつ、制御された様態で、リソグラフィー用マスクを一切使用せずに得ることを可能にする方法を開発した。
【0018】
したがって、さらに具体的には、本発明の主題は、膜状の物質を水溶液に浸漬させている間に、照明領域および暗領域を有する干渉模様を該物質の少なくとも1つの面につけるステップを含む、膜状の物質をナノ構造化する方法であって、本方法は、
上記物質が、光吸収作用によって水溶液に溶解可能になる無機半導体物質または無機酸化物であり(したがって、この光の波長は該物質の禁制帯より短い)、
上記膜状またはウエハ状の物質のナノ構造化を、該水溶液に接触する該物質の表面で、該照明領域での光分解によって、および/または、該干渉模様の暗領域での成長によって行うことを特徴としている。
【0019】
本発明に係る上記方法において使用される物質は、光吸収作用によって水溶液に溶解可能になる任意のタイプの無機物質または半導体物質を含有する。換言すれば、放射する光の波長は、水性エッチング溶液(好ましくはpH6〜12)に浸漬させた物質中で電荷キャリアの生成を可能にし、該物質の溶解速度の増加を引き起こすような波長である。
【0020】
本願において電荷キャリアとは電子または正孔である。
【0021】
本発明の場合に使用可能な物質の一例としては、特に、酸化亜鉛ZnOがあげられる。
【0022】
酸化亜鉛以外の、例えば、窒化ガリウムGaN、ガリウム砒素GaAs、ガリウム燐GaPなどの物質を使用してもよい。さらに別の、酸化スズや酸化チタンなどの半導体物質を使用してもかまわない。
【0023】
好ましくは、ホログラムを生成し、小さなパターンを生成するために、紫外線(例えば375nm以下)を使用する。これは、狭い禁制帯を有する物質の場合にも同じである。
【0024】
さらに、直接的に構造を形成するプロセスの例である(関与する主要なメカニズムが光分解の場合の直接エッチングについて言及する)ので、上記の処理を受けた表面は、使用するレーザの出力とエッチングする(または、応用する場合には成長を阻害する)ために必要な線量とのマッチングだけに依存するビームの空間的な広がりによってのみ限定される。
【0025】
上記ナノ構造化される物質は、好ましくは酸化亜鉛を含有する。これによって、酸化亜鉛の光化学特性および電気化学特性をホログラフィーと組み合わせて利用することが可能になり、本方法によって得られる構造の品質が改善される。より好ましくは、該ナノ構造物質は酸化亜鉛のみからなる。
【0026】
本発明において、上記ナノ構造化される膜状の物質は、ウエハなどの基板(特に、シリコンタイプもしくはサファイアタイプの単結晶性基板、または、ガラスタイプもしくはシリカタイプのガラス質基板)上に積層される薄膜(単層または多層)、または、固体物質上に積層される薄膜(単層または多層)の形態を有する。
【0027】
上記膜状の物質は、例えば、感光性ウエハ(特に酸化亜鉛製の感光性ウエハ)の形態であってもよく、または、複数の薄層を基板上に連続して積層することによって得られ、後にエッチングされる単層膜または多層膜の形態を有していてもよい。
【0028】
上記膜は、好ましくは、溶解または成長のどの現象も、(浸漬によって)水溶液に接触している膜またはウエハの単数または複数の面において起きるように、非多孔性の膜である。
【0029】
干渉模様を生成するために、ホログラフィー装置を使用してもよい。ホログラフィー装置は当業者にとって周知であり、
・まず、水溶液に浸漬させた状態で、光の一部が、ナノ構造化される膜またはウエハの面に向かって回折するように対象物を照射し、
・次に、基準として作用しながら上記回折光と干渉するように、鏡を照らす光源を備えている。
【0030】
これにより、上記照射された対象物によってパラメータ化可能な干渉模様を得ることができる。
【0031】
単純な例を1つ挙げると、鏡を対象物として用いればよい。これにより、光路差の調節後に、1次元(1D)の干渉模様が、この場合であれば、暗い干渉縞と照明された干渉縞とが交互に配列された形態で得られる。
【0032】
ここでは、干渉模様の生成に任意の手法を用いてもかまわない。どの手法を使用しても、露光回数またはビーム本数を増加させることによって、ナノ構造をさらに複雑にすることができる(例えば、正方格子を作るには4つのビームを干渉させればよい)。
【0033】
これにより、平面(1D)格子、正方格子、六方格子、または、さらに高い対称性(例えば5次や12次)を有する格子を生成することも可能である。後者の格子は、さらに、放出図(emission diagram)を均質化する。
【0034】
この場合、膜を構成する物質のナノ構造化は、干渉模様の照明領域での光分解によって、または、同じ干渉模様の暗領域での成長によって起きる(ただし、使用する溶液は異なる)。
【0035】
本発明の第1の変形例によれば、上記ナノ構造化は、局所的なエッチングによって達成される。上記膜を、好ましくはpH6〜12の水溶液に浸漬させる。ナノ構造化は、干渉模様における照明領域での光分解によって起こる。
【0036】
本発明の第2の変形例によれば、上記ナノ構造化は、局所的な成長によって達成される。上記膜を、物質の成長を可能にする溶液に浸漬させる。ナノ構造化は、照明領域での成長の阻害によって起きる。
【0037】
第1の変形例では、エッチングが照明領域においてより迅速に進行する。また、第2の変形例では、成長が暗領域においてより迅速に進行する。
【0038】
したがって、水溶液に浸漬した物質の表面上に(上記干渉模様からなる)光のパターンを形成することによって、該パターンに対応するトポロジーが、物質において直接的な光分解(この場合には、エッチングが照明領域においてより迅速に進行する)および/または成長(この場合には、結晶化が暗領域においてより迅速に進行する)によって生成される。
【0039】
光分解の場合、3種類のキャリアの濃度が低ければ低いほど、光分解がより選択的になる(この場合のキャリアは光子の吸収によってのみ生成され、その密度は干渉模様の局所的な強度に大きく左右される)。
【0040】
また、上記溶解(光分解)は、化学的に起きても、電気化学的に(Ag/AgCl基準電極に対し通常+1Vの電圧を印可することによって)起きてもかまわない。これにより、溶解力(光分解力)は大幅に増加し、10倍以上増加する場合もある。
【0041】
本発明に係る方法を繰り返し実施してもかまわない。つまり、積層、次にフォトエッチング、再度積層、さらに再度フォトエッチングといった具合に繰り返してもかまわない。これによって、複数のナノ構造化された層からなる積層構造を形成することができるようになる。
【0042】
多数の応用分野(具体的には照明、表示、および、センサの技術に関連する応用分野)が、大きな表面上でナノ構造を形成することに関連している。これは、このようなナノ構造化が、サブミクロン(つまり1μm未満)またはナノメートルのスケールの構造を形成する1つの場合であり、同時に、単純で、迅速で、大量生産との互換性を有するからである。
【0043】
本発明は、さらに、上述のように本発明に係る形成方法にしたがって得られるナノ構造化された被覆物を有する膜またはウエハにも関する。
【0044】
最後に、本発明のもう1つの主題は、ナノ構造化された三次元被覆膜である。このような膜の場合、エッチング深さは局所的な光強度に依存する。例えば、露光回数Nに応じて、0回、1回、...、N回露光された領域が発生することになる。この結果、zについて高さの差が生じる。
【0045】
本発明のその他の効果や特徴は、添付の図面を参照すれば、以下の記載から明らかになるであろう。なお、以下の記載はあくまでも例示にすぎないのであって、本発明を限定するものではない。
【0046】
図1は、第1の実施形態による、本発明に係るナノ構造化方法の各種ステップについて図示する一連の図を示している。
【0047】
図2は、
図1に示す本発明に係る方法の実施形態によって干渉模様を生成するステップにおける、物質の概略的な斜視図を示している。
【0048】
図3は、第2の実施形態による、本発明に係るナノ構造化方法の2つのステップについて図示する2つの一連の概略的な斜視図を示している。このナノ構造化方法は、特に、周期性を有する付加的なトポロジーを形成するステップを備えている。
【0049】
図4は、第3の実施形態による、本発明に係るナノ構造化方法の2つのステップについて図示する2つの一連の概略的な斜視図を示している。このナノ構造化方法には、干渉模様の照明領域での光分解メカニズムと、暗領域での成長メカニズムとが関与している。
【0050】
図1〜
図4に示される同一の部材には、同一の参照記号を付す。
【0051】
〔本発明にかかる方法の第1の実施形態(
図1および
図2を参照)〕
図1(および
図2)は、第1の実施形態による、本発明に係るナノ構造化方法の各種ステップを概略的に示している。
【0052】
・A)酸化亜鉛ZnOの膜2を基板1上に形成する。ZnOは、ZnOの禁制帯より短い波長の光の光吸収作用によって水溶液に溶解可能になるという適性を有していることが知られている。これにより、酸化亜鉛の膜に電荷キャリアを生成することができるため、水溶液中での該膜の溶解速度を上昇させることができる。
【0053】
・B1)物質の化学エッチング効果が発揮できるpHの水溶液3に、酸化亜鉛の膜2を浸漬させる。酸化亜鉛の場合には、好ましくはpH6〜12である(これにより、暗領域での直接的な溶解(光分解)が最小化される)。また、この浸漬は、少なくとも上記膜2の(基板1に接触していない)面が完全に水溶液3に浸漬するように実施される。
【0054】
・B2)浸漬させている間に、照明領域6aおよび暗領域6bを有する干渉模様6を上記膜2の少なくとも1つの面につける。
【0055】
・C)これにより、ZnOの膜2が、水溶液3に接触する膜2の表面で、干渉模様(6)の照明領域(6a)での光分解によってナノ構造化される。
【0056】
ステップB1(酸化亜鉛の膜2の水溶液3への浸漬)についてさらに具体的に述べると、酸化亜鉛の溶解を可能にするpHの水溶液2が使用される。
【0057】
適切な水溶液の一例としては、次式で表わされるものがあげられる。
【0058】
NaCl(0.1M) + NaOH(0.1M) + HCl(0.1M)
ここでは、塩化水素HClがpHの調節を可能にする。
【0059】
その他の水溶液を使用してもよい。特に、酸(HCl、HNO
3、H
3PO
4)を用いた化学エッチング、酸性塩(FeCl
3・6H
20)を用いた化学エッチング、または、塩化鉄の溶液(FeCl
3・6H
2O、FeCl
3・6H
2O(0.8mmol) + 100mlのH
2O(8mM))を用いた化学エッチングを使用してもよい。
【0060】
ステップB2(酸化亜鉛の膜2の少なくとも1つの面への干渉模様6をつける)についてさらに具体的に述べると、以下の過程が実施される。
【0061】
・膜2の表面2a(水溶液3に浸漬させる)に光ビーム7aおよび7bを照射する。この光ビーム7aおよび7bは、
図2に示すように、干渉縞6a(照明領域に対応する)および6b(暗領域に対応する)からなる1次元の干渉模様6をこの表面2aに生成するように構成される。
【0062】
・この干渉模様6を生成するために、ホログラフィー装置を使用してもよい。ホログラフィー装置は、まず、光の一部が表面2aに向かって回折する(光ビーム7b)ように対象物(単純例では特に鏡)を照らし、次に、基準として作用する上記回折光と(光ビーム7aによって)干渉するように、鏡を照らす光源を備えている。
【0063】
・これにより、光路差の調節後に1次元(1D)の干渉模様6が得られる。
【0064】
ZnO膜2のナノ構造化C)についてさらに具体的に述べると、このナノ構造は、干渉模様6の照明領域6aにおいて光分解(またはエッチング)によって生成される。換言すれば、干渉模様6のパターンに対応するトポロジーが、水溶液に浸漬した酸化亜鉛の膜2の表面上に生成される。このトポロジーは、ZnOを、干渉模様6の照明領域6bにおいて浸漬しているその表面2aで直接エッチングすることによって生成される(このエッチングは、露光ステップが不要なので直接エッチングである)。
【0065】
エッチング速度については、40mW/cm
2の照明の下で、毎分1平方メートル当たり40ミリグラム(mg/m
2min)の速度に到達することが可能である。照明がない場合には、この速度は10mg/m
2min未満になり、これでも当然溶解は発生するが、相対的には遅い。
【0066】
最後に、本発明に係る方法の第1の実施形態は、光ビーム7aおよび7bが干渉模様6を生成することによって実施される酸化亜鉛の膜2の直接エッチングからなる。これにより、使用するレーザの出力とエッチングするために必要な線量とのマッチングだけに依存するビームの空間的な広がりによってのみ、膜2の表面2aの処理をZnに限定することが可能になる。このようにして、マスクの使用は完全に不要になり、大量生産を実現する方法への道が開ける。
【0067】
〔本発明にかかる方法の第2の実施形態(
図3を参照)〕
本方法は、上述した本発明の第1の実施形態に係る方法に類似している(
図1および
図2を参照)が、第1の実施形態に係る方法にさらなるステップB’を追加される。
【0068】
この追加ステップは、周期性を有するもう1つのナノ構造8を、第1の実施形態において形成したナノ構造と同一方法で形成することからなる。ただし、第1の実施形とはサンプルを90°回転させてナノ構造8を形成する。
【0069】
このようにして、二次元構造物を形成するように構成された2つのナノ構造6および8が得られる。
【0070】
〔本発明にかかる方法の第3の実施形態(
図4を参照)〕
この方法は、上述した本発明にかかる第1の実施形態に係る方法に類似している。異なる点は、酸化亜鉛の膜のナノ構造化が、干渉模様6の照明領域6aでの光分解と暗領域6bでの成長との両方によって起きる点である。
【0071】
本発明に係る方法の本第3の実施形態では、(結晶化による)成長反応と、酸化亜鉛の溶解(光分解)とが競合する。酸化亜鉛の結晶の成長を(干渉模様6のレベルにおいて)可能にするためには、光分解との比較において結晶化反応をわずかに有利に作用させることが必要である。これは、溶液が亜鉛3を含有していれば可能である。
【0072】
同一条件下であっても、照明によって局所的に反応を反転させることが可能である。照明を受けた結晶は、光によって生成した電荷キャリアが存在するので、比較的高い溶解度を有する。これにより、結晶の成長を照明下で限定または阻害することができるようになる。
【0073】
このような成長メカニズムと溶解メカニズムとの間の競合が関与する本第3の実施形態の場合、このナノ構造化を実施するために、上記2つの化学的方法および電気化学的方法が可能である。
【0075】
・化学的方法の場合:硝酸亜鉛(0.025M)およびジエチレントリアミンを含有する水溶液中で、照明下において熱水成長
・電気化学的方法(陽極酸化)の場合:ZnCl
2(5mM)およびKCl(0.1M)の80mlの電解質溶液、pH7(光分解)。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【
図1】第1の実施形態による、本発明に係るナノ構造化方法の各種ステップについて図示する一連の図を示している。
【
図2】
図1に示す本発明に係る方法の実施形態によって干渉模様を生成するステップにおける、物質の概略的な斜視図を示している。
【
図3】第2の実施形態による、本発明に係るナノ構造化方法の2つのステップについて図示する2つの一連の概略的な斜視図を示している。このナノ構造化方法は、特に、周期性を有する付加的なトポロジーを形成するステップを備えている。
【
図4】第3の実施形態による、本発明に係るナノ構造化方法の2つのステップについて図示する2つの一連の概略的な斜視図を示している。このナノ構造化方法には、干渉模様の照明領域での光分解メカニズムと、暗領域での成長メカニズムとが関与している。