(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
最近、油入変圧器は、浮体式洋上風力発電用として用いられ、高圧(一次側)、低圧(二次側)巻線として平角導線または丸導線で構成された円筒コイルを有する変圧器が開発されている。
また、変圧器の高圧(一次側)、低圧(二次側)を平角導線で構成した円筒コイルは、短絡時の機械的強度を向上させるためにワニス処理を施している。しかし、浮体式洋上風力用変圧器では、波による海面の揺れでコイル端面に応力が掛かり、コイルの絶縁破壊の恐れがある。
また、変圧器の鉄心にはアモルファス鉄心や珪素鋼板の鉄心があるが、アモルファス鉄心を用いて変圧器を製造する場合、変圧器用の鉄心及びコイルを組み立てるときコイルを横倒しにする工程があり、ワニス処理を施しているコイルはその製造工程において、コイル内の絶縁紙を破損する恐れがある。
さらに、変圧器が大容量になると、コイルと鉄心の重量が重くなり、その自重で絶縁紙の表面がワニスで固着されているので、コイル内の絶縁紙に割れが生じて絶縁破壊の恐れがある。
【0003】
また、変圧器の高圧(一次側)、低圧(二次側)巻線を共に平角導線で構成された円筒コイルを有する油入変圧器において、短絡時にコイルに働く機械力は、高圧側巻線及び低圧側巻線間に生じると同時に、コイルの軸方向において高圧側巻線、低圧側巻線の中心高さのずれによってコイル軸方向に働く。
【0004】
従来の油入変圧器は、コイル軸方向で高圧側巻線、低圧側巻線の中心高さを合わせ、コイルをワニス処理して上締金具と下締金具で押さえることで、短絡時のコイル軸方向の機械力を押さえている。
特に、タップ線の立上げ箇所において、コイルの中心高さがずれるため、軸方向に働く短絡時の機械力が増大する。
また、上締金具と下締金具では、タップ・ライン線を回避するために切欠きを設けており、コイルの軸方向の機械力を押さえられないので、ワニスで導線を固着せずに油入変圧器用コイルを製造することは困難であった。
また、特許文献1(特開昭61−51811号公報)には、樹脂モールドコイルを有する変圧器において、製造工程におけるコイルの自重による変形をなくし、短絡時のコイル軸方向の機械的強度を向上させる樹脂モールドコイルが開示されている。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
【0011】
(実施例1)
本発明の実施例1について、
図1A〜
図1Dを用いて説明する。
図1Aは油入変圧器内に納める中身のコイル鉄心組立体の斜視図を示し、
図1Bは
図1Aの一部の鉄心を切り欠いた切欠き部の斜視図を示し、
図1Cは上締金具を、
図1Dは下締金具を示す。
図において、101はコイル、102はタップ・ライン線引出し部、103は鉄心、104Aは上締金具、104Bは下締金具、105A及び105Bは熱硬化性樹脂含浸繊維である。
また、
図1Aは三相五脚巻鉄心変圧器用のコイル鉄心組立体で、コイル101のタップ部102周辺にコイル軸方向に熱硬化性樹脂含浸繊維105Aを巻回し、さらに、コイル101の最外周に水平方向に熱硬化性樹脂含浸繊維105Bを巻回したコイル鉄心組立体の変圧器である中身を示している。また、アモルファス薄帯または珪素鋼板で構成される五脚巻鉄心103に、高圧(一次側)、低圧(二次側)巻線が共に平角導線または円導線を巻回したコイル101と、コイル101の軸方向を締め付けて押さえる上締金具104Aと下締金具104Bから成る油入変圧器のコイル鉄心組立体を示している。
【0012】
上締金具104Aは、その構成を
図1Cに示すようにコ字形状に板材を折り曲げ、長手方向の辺にフランジを設けた構成とし、このフランジ部にコイル101のタップ・ライン線引出し部102の箇所を逃がすための切欠き部を形成する。
また、ここでは上締金具104Aの構成をコ字形状としているが、直方体の箱形状で良い。
同様に、下締金具104Bの構成を
図1Dに示すが、コ字形状に板材を折り曲げ、長手方向の辺にフランジを設けた構成とし、このフランジ部にコイル101のタップ・ライン線引出し部の箇所に対応する部分に切欠き部を形成する。
【0013】
コイル101は、上締金具104Aの切欠きを設けている箇所で、コイル軸方向を機械的に押さえられないタップ・ライン線引出し部102のコイル軸方向に巻回した熱硬化性樹脂含浸繊維105Aから成り、コイル101の最外層の水平方向についても熱硬化性樹脂含浸繊維105Bを巻回する構成である。
また、鉄心103にアモルファス薄帯を採用した場合、
図1Bの部分拡大斜視図に示すように、鉄心103、コイル101間のコイル軸方向において、珪素鋼板に比べ約20μmの薄帯を積層しているため、アモルファス鉄心は変形し易く、コイル101上で鉄心103が重なる箇所にコイル101の軸方向に熱硬化性樹脂含浸繊維105Aを巻回する。
【0014】
次に、熱硬化性樹脂含浸繊維について説明する。熱硬化性樹脂含浸繊維として、一般にガラスバインドテープを用いる。ガラスバインドテープは、エポキシ樹脂を用いたバインドテープで、その特徴は熱処理後の硬化物の強度が優れており、接着力が高く、耐熱性もあるという点である。また、基材はガラステープで、引張強度も大きい特徴を有している。硬化するためには、一般に150℃×15時間掛けて樹脂を硬化させる。
【0015】
(実施例2)
次に、本発明の実施例2について、
図2A及び
図2Bを用いて説明する。
図2は、三相三脚巻鉄心を用い、コイル201のタップ部202周辺で、コイル軸方向に熱硬化性樹脂含浸繊維205Aを巻回し、さらにコイル201の最外層の水平方向に熱硬化性樹脂含浸繊維205Bを巻回したコイル鉄心組立体の斜視図を示す。
図2Aにおいて、201はコイル、202はタップ・ライン線引出し部、203は鉄心で、203Aは外鉄心、203Bは内鉄心を示し、204Aは上締金具、204Bは下締金具、205Aはコイル軸方向に巻回する熱硬化性樹脂含浸繊維、205Bはコイルの最外層に巻回する熱硬化性樹脂含浸繊維である。
また、
図2において、アモルファス薄帯または珪素鋼板で構成される三脚巻鉄心203に、高圧(一次側)、低圧(二次側)巻線が共に平角導線または丸導線を巻回したコイル201と、コイル201の軸方向を締め付け押さえる上締金具204Aと下締金具204Bから成る油入変圧器のコイル鉄心組立体を示している。
【0016】
コイル201は、上締金具204Aの切欠きを設けている箇所で、コイル軸方向を機械的に押さえられないタップ・ライン線引出し部202のコイル軸方向に巻回した熱硬化性樹脂含浸繊維205Aを巻回し、さらに、コイル201の最外層の水平方向にも熱硬化性樹脂含浸繊維205Bを巻回する。
また、鉄心203にアモルファス薄帯を採用する場合、
図2Bに示すように、鉄心203、コイル201間にコイル201の軸方向において、珪素鋼板に比べ薄いアモルファス薄帯を積層しているため、アモルファス鉄心は変形し易く、コイル201上に鉄心203が重なる箇所についてもコイル201の軸方向に熱硬化性樹脂含浸繊維205Aを巻回する。
【0017】
(実施例3)
次に、本発明の実施例3について
図3A及び
図3Bを用いて説明する。
図3Aは、三相三脚積鉄心を用い、コイル301のタップ部302周辺で、コイル軸方向に熱硬化性樹脂含浸繊維305Aを巻回し、さらに、コイル301の最外層の水平方向に熱硬化性樹脂含浸繊維305Bを巻回したコイル鉄心組立体の斜視図を示す。
図3において、301はコイル、302はタップ・ライン線引出し部、303は積鉄心、304Aは上締金具、304Bは下締金具、305Aはタップ部302周辺の熱硬化性樹脂含浸繊維、305Bはコイル最外層の水平方向の熱硬化性樹脂含浸繊維である。
【0018】
図3において、珪素鋼板で構成される三脚積鉄心303に、高圧(一次側)及び低圧(二次側)巻線が共に平角導線または丸導線を巻回したコイル301と、コイル軸方向を締め付け押さえる上締金具304Aと下締金具304Bから油入変圧器のコイル鉄心組立体を示している。
また、コイル301は、上締金具304Aの切欠きを設けている箇所で、コイル軸方向を機械的に押さえられないタップ・ライン線引出し部302のコイル軸方向に巻回した熱硬化性樹脂含浸繊維305Aを巻回し、さらに、コイル301の最外層の水平方向にも熱硬化性樹脂含浸繊維305Bを巻回している。
(実施例4)
次に、コイルに熱硬化性樹脂含浸繊維をタップ部周辺に巻回する場合について、
図4を用いて説明する。
図4において、
図4(a)はコイル401のタップ部402の周辺に熱硬化性樹脂含浸繊維405Aをコイル軸方向に巻回する斜視図を示し、
図4(b)は熱硬化性樹脂含浸繊維405Aのテープを示し、
図4(c)はコイル401のタップ部401の部分拡大斜視図を示し、
図4(d)は
図4(c)の部分拡大斜視図を示す。
【0019】
図4(a)において、401はコイル、402Aは一次側タップ端子、402Bは二次側タップ端子、405Aは熱硬化性樹脂含浸繊維で、コイル401の一次側タップ部付近及び二次側タップ部付近に熱硬化性樹脂含浸繊維405Aをコイル軸方向に一括して巻回する。
【0020】
図4(c)において、402Cはタップ端子を配置する箇所で、405Bはコイル端面側で熱硬化性樹脂含浸繊維のテープ405Aを丸めて冷却ダクト406の縁の上に配置し、コイル内側ではテープを拡げて貼り付ける。
【0021】
図4(c)において、コイル401のタップ部402にコイル軸方向に巻回する熱硬化性樹脂含浸繊維405Aのテープは、コイル401の側面では拡げた形状でテープの粘着部を貼り付けて巻回し、コイル401上部の端面では熱硬化性樹脂含浸繊維405Aのテープを丸めた形状405Bとし、コイル401の内側では拡げた形状で内側面に貼り付けて巻回する。
コイル401の端面で、熱硬化性樹脂含浸繊維405Aのテープを丸めた形状405Bにする理由は、コイル内に配置した冷却ダクト406を塞がないようにするためである。
コイル内の冷却ダクトは、コイルの一方の端面から他方の端面まで通しで空間を有し、変圧器内の絶縁油が通過する油道で、コイルから発生する熱を冷却するための孔である。
従って、この冷却ダクトは塞がないように形成する。また、コイル端面に熱硬化性樹脂含浸繊維405Aのテープを拡げて貼り付けて取り付けると、凹凸があり真っ平ではないので空気がテープ内に閉じ込められる可能性がある。
【0022】
熱硬化性樹脂含浸繊維405Aのテープ内に空気が閉じ込められた状態で、鉄心を装着しコイル鉄心組立体を油入変圧器内に納め、絶縁油を充填し変圧器を動作させた場合、コイル近傍の空気により絶縁破壊が生じる恐れがある。
従って、コイル端面には空気を閉じ込めない構成にすることが必要である。
【0023】
(実施例5)
次に、コイルの一層毎に熱硬化性樹脂含浸繊維のテープを巻回する構成について、
図5を用いて説明する。
図5において、
図5(a)はコイルの一層目に熱硬化性樹脂含浸繊維505Aのテープを巻回した斜視図を示し、
図5(b)及び(c)はコイル501のタップ部にテープ505Aを巻回した部分拡大斜視図を示す。
【0024】
図5(a)において、501はコイル、502Bはタップ端子、505Aは熱硬化性樹脂含浸繊維で、コイル501の1層目にコイル軸方向に熱硬化性樹脂含浸繊維505Aのテープを一括して巻回している。また、熱硬化性樹脂含浸繊維505Aを巻回するコイルの場所は、タップ部を設ける箇所である。
【0025】
図5(b)において、コイル501のタップ部を設けた箇所で、1層毎にテープ505Aをコイルの軸方向に巻回する。また、コイル501の側面側はテープを拡げた形状で貼り付け、端面部も拡げた形状で貼り付け、さらに、コイル内側の側面部も拡げた形状で貼り付けて設置し巻回する。
【0026】
図5(c)において、506は冷却ダクトで、コイル1層毎に熱硬化性樹脂含浸繊維のテープ505Aを、等間隔に並んだ冷却ダクト506を通して折り曲げて貼り付けて配置する。
【0027】
(実施例6)
次に、コイル1層毎で2ターン以上の一部に熱硬化性樹脂含浸繊維を巻回する構成について、
図6を用いて説明する。
図6は、コイル1層でタップ部部分の2ターン以上、図においては5ターンを纏めて熱硬化性樹脂含浸繊維605Aのテープで巻回したコイル601の斜視図を示す。
図6において、601はコイル、602Bはタップ端子、605Aは熱硬化性樹脂含浸繊維で、コイル1層でタップ部の5ターン610を纏めて、テープ605Aを巻回した構成である。また、コイルの外側面は熱硬化性樹脂含浸繊維のテープを拡げて貼り付けて巻回しており、コイルの端面もテープを貼り付けて、内側の側面も拡げて貼り付けて巻回している。
そして、
図6に示したコイル1層の外周に2層目のコイルを巻回し、1層目と同様に2層目のコイルにおいて、タップ部で5ターンをまとめて熱硬化性樹脂含浸繊維のテープ605Aを貼り付けて巻回する。これを繰り返してコイル全体を製造する。
図6において、コイル601のタップ部周辺は、タップ・ライン線引き出し部があるために上締金具及び下締金具で押さえることができないため、タップ部付近の数ターンのコイルを熱硬化性樹脂含浸繊維のテープ605Aで巻回する構成としている。
【0028】
(実施例7)
次に、コイルの巻始めと巻終わりで、短絡時に電磁機械力の大きい箇所に熱硬化性樹脂含浸繊維のテープを巻回する構成について、
図7を用いて説明する。
図7において、
図7の左図はコイルの巻始めの斜視図で、
図7の右図はコイルの巻終りの斜視図を示し、701はコイル、702Aは一次側タップ端子、702Bは二次側タップ端子、705Aは熱硬化性樹脂含浸繊維で、タップ部を配置した箇所に部分的に熱硬化性樹脂含浸繊維705Aのテープを巻回する。
図7の左図において、タップ端子702Bは一次側タップ端子で、702Aは一次側タップ端子を表わし、二次側タップ端子で巻き始めのタップ周辺のコイルを数ターンまとめて、熱硬化性樹脂含浸繊維のテープ705Aで、層ごとに巻回する。
図においては、コイルを5ターンまとめて巻回している。
また、
図7の右図は、二次側のタップ端子で、巻き終わりのタップ部周辺のコイルを数ターン(図では5ターン)纏めて層ごとに熱硬化性樹脂含浸繊維のテープ705Aを巻回している。
【0029】
(実施例8)
次に、コイルに熱硬化性樹脂含浸繊維を巻回する方法について、
図8を用いて説明する。
図8は、コイルに熱硬化性樹脂含浸繊維をテープに巻回するステップを示すコイルの一部の拡大斜視図である。
図8において、
図8(a)は冷却ダクトを配置した斜視図、
図8(b)はテープを冷却ダクトの間に設置した斜視図、
図8(c)はテープを立てた状態で平角導線や丸導線のコイルを水平方向に巻いた状態の斜視図で、
図8(d)は巻回したコイル面に絶縁紙を巻いて、その上に冷却ダクトを配置した斜視図で、
図8(e)は立てた状態の熱硬化性樹脂含浸繊維のテープを折り曲げた構成の斜視図を示す。
【0030】
図8(a)〜(e)において、810は絶縁材、820は角材、830は角材820で形成される空間、805Aは熱硬化性樹脂含浸繊維のテープである。
図8(a)において、コイルの内側に絶縁材810でベースとなる円筒形を形成し、その円筒形のベースの外周に等間隔に耐油性の木材などの角材820を配置する。
そして、この隣り合う角材820で空間を形成し、この空間830に絶縁油を通過させ、コイルの冷却を行う冷却ダクト830を形成する。
【0031】
次に、
図8(b)に示すように、角材820の空間に熱硬化性樹脂含浸繊維のテープ805Aを絶縁材810に貼り付ける。テープ805Aは折り返して貼り付けるため、一方の側のテープは保持した状態にしておく。
次に、
図8(c)において、コイル801を水平方向に巻回して、一層目を形成する。コイルは平角導線や丸導線を用い、そして
図8(d)に示すように、シート状の絶縁材811をコイル801の上に巻いて、さらにその上に角材820を等間隔に配置する。
また、等間隔に設置した角材820で空間830を形成し、冷却ダクト830を形成する。
そして次に、
図8(e)に示すように、角材820で形成した空間830に折り返して貼り付ける一歩の側の熱硬化性樹脂含浸繊維のテープ805Aを貼り付ける。
このように、熱硬化性樹脂含浸繊維のテープ805Aでコイル801を挟む形状で貼り付ける構成としている。
上記の
図8(a)から
図8(e)の製造工程を繰り返してコイル全体を組み立てる。
【0032】
次に本発明のコイル鉄心組立体を納めた油入変圧器について説明する。
図9はコイル鉄心組立体を納めた油入変圧器を示し、
図9において、900は油入変圧器本体のタンク、910はタンク周辺に設けた冷却用リブ、920は波リブの上下に溶接して固定した溶接線で、波リブ910に強度を持たせ、変形するのを防止する。930は高圧側端子(一次側端子)で、発電所から送電された高電圧の電源を接続する端子で、タップ・ライン線引出し部102,202,302と接続され、940は低圧側端子(二次側端子)で、変圧器で一般に降圧した電圧を負荷側に送るために接続する端子で、タップ・ライン線引出し部402B,502B602Bと接続される。
【0033】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置換ることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加、削除、置換をすることが可能である。
【0034】
例えば、隣り合わせのコイル同士を熱硬化性樹脂含浸繊維で巻回し固定する可能であり、熱硬化性樹脂含浸繊維の巻回数を部分的に追加、削除をすることが可能である。