(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6014762
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月25日
(54)【発明の名称】ロボットを使用する、核施設のプールにおけるクラックのシーリング
(51)【国際特許分類】
G21C 19/02 20060101AFI20161011BHJP
B25J 5/00 20060101ALI20161011BHJP
【FI】
G21C19/02 N
B25J5/00 D
【請求項の数】14
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-524836(P2015-524836)
(86)(22)【出願日】2013年7月30日
(65)【公表番号】特表2015-524923(P2015-524923A)
(43)【公表日】2015年8月27日
(86)【国際出願番号】FR2013051841
(87)【国際公開番号】WO2014020280
(87)【国際公開日】20140206
【審査請求日】2015年1月30日
(31)【優先権主張番号】1257424
(32)【優先日】2012年7月31日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】504462489
【氏名又は名称】エレクトリシテ・ドゥ・フランス
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】マルク・クンツ
(72)【発明者】
【氏名】マチュー・ラモンターニュ
【審査官】
後藤 孝平
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭55−148666(JP,A)
【文献】
仏国特許出願公開第02874020(FR,A1)
【文献】
特開平11−079019(JP,A)
【文献】
実開昭62−111544(JP,U)
【文献】
特開2004−323621(JP,A)
【文献】
特開平06−201896(JP,A)
【文献】
特開平04−309890(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21C 19/02
B25J 1/00−21/02
G21C 19/06
G21D 1/00
G21F 9/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
接着テープ(BS)のためのディスペンサ(DIS)を運ぶ移動ロボットを使用して、核施設のプール(Pi)の壁におけるシーム(Fi)をシールするための方法であって、
− 第1吸着システム(V21−V24)及び少なくとも1つの第2吸着システム(V11−V14)を備える複数の吸着システム(V11−V14;V21−V24)の制御部(PC)であって、前記第2吸着システムが、横材(TR)を備えるフレーム(RA1,RA2)の一部であり、前記横材が、前記フレームに移動可能に取り付けられており、前記横材が、前記第1吸着システム(V21−V24)を支持し、前記横材が、前記ディスペンサと機械的に一体であるアーム(Tx)を支持し、前記アームが、前記シームに対して前記ディスペンサの前記接着テープを貼付するために、前記ディスペンサの高さを調節するための垂直シャフトを支持し、前記第1吸着システム(V21−V24)が、前記ディスペンサの位置を調節するために、前記第2吸着システム(V11−V14)に対して移動可能である、制御部(PC)と、
− 前記複数の吸着システムの前記第2吸着システム(V11−V14)に対する前記第1吸着システム(V21−V24)の移動(Ty)を制御するステップと、
が少なくとも提供されることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記横材が、前記フレームの第1方向(Ty)に沿って並進移動可能であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記アーム(Tx)が、前記第1方向と異なる少なくとも第2方向(Tx,Tz)に、前記横材(TR)に対して並進移動するように取り付けられていることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記フレームが、前記第2吸着システムの周辺領域を規定し、前記ディスペンサが、前記ディスペンサが前記第2吸着システムの前記周辺領域の外側に配置されるように、前記フレームに対して取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記第1吸着システム(V21−V24)が、前記複数の吸着システムの前記第2吸着システム(V11−V14)に対して回転(RX)するように取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
請求項1に記載の方法であって、
前記プールの壁に対して前記ディスペンサを移動させるために、交互のステップが命令され、前記交互のステップが、
− 前記第1吸着システムを停止させて前記複数の吸着システムを作動させるステップ(S5)と、
− 所定の方向に、前記第2吸着システムに対して前記第1吸着システムを移動させるステップ(S6)と、
− 前記第2吸着システムを停止させて前記第1吸着システムを作動させるステップ(S2)と、
− 前記所定の方向と反対の方向に、前記第2吸着システムに対して前記第1吸着システムを移動させるステップ(S3)と、
を少なくとも含むことを特徴とする方法。
【請求項7】
前記複数の吸着システムが、流体を逆流させる吸着カップを備えていることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記ディスペンサが、前記壁に対して前記接着テープを押し付けるヘッドを備え、前記ヘッドが、サーボモータを備えていることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記接着テープが、保護フィルムで覆われていることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記保護フィルムが、ステンレス鋼から形成されていることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
シールされる前記シームが、前記プールの内壁を覆うシート(VO)の間の溶接部であり、前記溶接部が、クラックを含む可能性があることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項12】
核施設のプール(Pi)の壁におけるシーム(Fi)をシールするための移動ロボットであって、
前記移動ロボットが、接着テープ(BS)のディスペンサ(DIS)を運び、且つ
− 第1吸着システム(V21−V24)及び少なくとも1つの第2吸着システム(V11−V14)を備える複数の吸着システム(V11−V14;V21−V24)であって、前記第2吸着システムが、横材(TR)を備えるフレーム(RA1,RA2)の一部であり、前記横材が、前記フレームに移動可能に取り付けられており、前記横材が、前記第1吸着システム(V21−V24)を支持し、前記横材が、前記ディスペンサと機械的に一体であるアーム(Tx)を支持し、前記アームが、前記シームに対して前記ディスペンサの前記接着テープを貼付するために、前記ディスペンサの高さを調節するための垂直シャフトを支持し、前記第1吸着システム(V21−V24)が、前記ディスペンサの位置を調節するために、前記第2吸着システム(V11−V14)に対して移動可能である、吸着システム(V11−V14;V21−V24)と、
− 前記複数の吸着システムの前記第2吸着システム(V11−V14)に対して前記第1吸着システム(V21−V24)を移動させるための移動手段と、
を備えていることを特徴とする移動ロボット。
【請求項13】
請求項1から11のいずれか一項に記載の方法を実施するための手段を備えていることを特徴とする請求項12に記載の移動ロボット。
【請求項14】
請求項12又は13に記載の移動ロボットと、前記移動ロボットに含まれる前記複数の吸着システムと前記移動手段とをリモートで制御するための手段(PC)と、を備えている施設。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、核施設のプール壁におけるクラックをシールすることに関する。
【背景技術】
【0002】
上記クラックは、プール壁、特に通常スチールから形成されたライニングの溶接シームで生じる。例えば、上記プールの内壁は、ステンレス鋼のシートで覆われ、シートの縁部は、互いに溶接されている。前記クラックは、多くの場合、これら溶接部で生じる。
【0003】
このようなケースでは、特に特許文献1に開示されるように、接着性ポリマー(例えば、選択された添加剤を有する、エラストマー及び/もしくはシリコーン又は他のもの)から形成された接着テープが、上記クラックが生じたときにこれらクラックにおいて溶接部を覆うために使用される。
【0004】
接着剤は、通常、プール壁と同様の、例えばステンレス鋼のフィルムの形態にある保護コーティングを有している。例えば、テープは、壁のシートの間でシームに沿って貼付され、これにより、(摩耗、腐食などに起因して)シートの間の溶接部に形成したクラックを覆う。このステップは、多くの場合、水でプールが満たされる間に行われ、水は、プールが収容する使用済み核燃料からの放射線によって汚染されている可能性がある。クラックをシールするときに潜水作業員に影響を与えることは望ましくない。ロボットが、欠陥又はクラックを探索且つ感知する事前段階の後に、上述したタイプの接着テープをクラックに貼付するために使用される。
【0005】
ロボットは、例えば、プールの底部での移動ロボットを有するように構成することができ、移動ロボットは、プールの垂直壁上の高いクラックに届かせるための多関節アームを支持する。しかしながら、このようなプールは、深く、通常、約14メートルの深さに達する。クラック上にテープを配置するときに、角度のずれは、それが小さいとしても許容できない位置決め誤差を発生させやすい。特に、極めて小さい位置決め誤差の許容範囲が望まれる。テープは、約40mmの幅を有し、クラックが覆われる可能性がある溶接部は、最大で約6mmの幅である。さらに、テープに対する位置決め誤差の許容範囲は、溶接部を越える接着剤が少なくとも15mmであることに対応し、テープの中心と溶接部の中心との間で許容された2mmの位置決め誤差の許容範囲を残すことが要求される。従って、位置決め誤差の許容範囲は、14mmの長さの多関節アームに対して2mmである。要求される角度精度は、0.008度であり、これは、(特にアームの固有の機械的複雑性に起因して)実際には、不可能でないにしても達成することが困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】仏国特許発明第2874020号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、状況を改善する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このために、本発明は、核施設のプールの壁におけるシーム(このシームはクラックを有しても有していなくてもよい)をシールするための方法を提案する。特に、この方法は、保護材料(例えば、ステンレス鋼)でコーティングされた接着テープのディスペンサを運ぶ移動ロボットを使用する。方法では、
− 複数の吸着システムの制御部であって、ディスペンサが、第1吸着システムと機械的に一体である、制御部と、
− 前記複数の吸着システムの他のシステムに対する第1システムの移動を制御するステップと、
が少なくとも提供される。
【0009】
従って、前記複数の吸着システムは、例えば吸着カップの吸着によってプールの垂直壁上にロボット組立体を保持することを可能にし、ディスペンサが取り付けられる第1吸着システムは、他の吸着カップに対して移動することができ、これにより、クラック、又はより広く、シールされるシームに対するディスペンサ、従ってテープの位置を調節する。
【0010】
従って、テープを連続的に且つ大きい長さに沿ってほどくことが可能となる。その結果、例えば(通常、上述した全体で14メートルの)2つのシートの間の溶接部でシーム全体を覆うことが可能となり、これは、このシームがクラックを示す可能性があるためであるが、これらクラックの実際の存在及び正確な場所に関して気にすることがない。
【0011】
さらに、欠陥感知/探索段階は、もはや必要がない。この感知は、通常、(放射線からオペレータを保護する問題を引き起こす)手動で行われる。さらに、それは、不正確且つ制限されたままである。90μmよりも小さい開口部を作り出す貫通クラックは、感知されない。本明細書において、用語“貫通クラック”は、クラックが、流体密封でないシートの外側に開口部を形成するものを意味すると理解される。
【0012】
この感知段階は、通常、すでに極めて厳しい機能停止スケジュールで数日の介入を必要とする。
【0013】
さらに、クラックの形成は、局所線量に依存しない疲労プロセスの一部である。従って、貫通クラックの欠陥の場所又は数を予測することができない。
【0014】
本発明は、すべてのアクセス可能な溶接部をシールすることによって、これら制限を克服し、感知−探索段階を選択的にする。
【0015】
上記の制御ステップは、制御ステーションからリモートで行われ、制御ステーションは、例えば、ロボットに取り付けられたカメラから画像を受信する。
【0016】
一実施形態では、1つ以上の吸着システムを備えるフレームと、フレームに移動可能に取り付けられ且つ第1吸着システム及びディスペンサを支持する横材と、が設けられている。
【0017】
この実施形態では、横材は、フレームの第1方向に沿って並進移動可能である。
【0018】
この実施形態では、横材は、ディスペンサと機械的に一体であるアームを支持してもよく、このアームは、第1方向と異なる少なくとも第2方向に、横材に対して並進移動するように取り付けられてもよい。このような一実施形態は、例えば、シールされる壁と平行な平面において移動することを保証し、前記2つの方向は、この平面を規定している。当然ながら、このアームは、ディスペンサヘッドの高さを調節するための垂直シャフトを支持し、従って、シールされるシームに対して届くテープを貼付してもよい。
【0019】
一実施形態では、ディスペンサは、フレームの外側に配置されてもよく、このことは、狭い範囲(濾過/照明/はしご設備で乱雑になった範囲)へ、又はより広く、プレートが隅肉溶接である場合のような平坦でない外形にわたって、ディスペンサのより良好なアクセス性をもたらす。このために、このような配置に適している可撓性を有し且つステンレス鋼フィルムでコーティングされたエラストマーを備えるテープの構造だけでも、それ自体が有利である。
【0020】
包括的な一実施形態では、第1吸着システムは、他の吸着システムに対して回転するように取り付けられてもよく、このことは、ロボットの移動方向を変更すること、又は例えば壁のシームにわたって経路を正確に調節することを可能にする。
【0021】
一実施形態では、プールの壁に対してディスペンサを移動させるために、交互のステップが命令され、交互のステップが、
− 第1吸着システムを停止させて吸着システムを作動させるステップと、
− 所定の方向に、他の吸着システムに対して第1吸着システムを移動させるステップと、
− 他の吸着システムを停止させて第1吸着システムを作動させるステップと、
− 所定の方向と反対の方向に、他の吸着システムに対して第1吸着システムを移動させるステップと、
を少なくとも含む。
【0022】
一実施形態では、吸着システムは、例えばリモートで制御されて流体を逆流させる吸着カップを備えている。このような一実施形態は、例えば、プールの壁に対するディスペンサの迅速な移動を命令することを可能にする。
【0023】
一実施形態では、ディスペンサが、壁に対してテープを押し付けるヘッドを備える場合、前記ヘッドは、サーボモータを備えてもよい。このような一実施形態は、例えば、テープ貼付中の最適な接触を保証することを可能にする。代替案は、
図3を参照して以下で説明されるように、例えば、少なくとも2つの部分に分割され且つディスペンサのヘッド端部において2つのバネに取り付けられたローラの周囲にテープを巻き付けることである。テープが可撓性を有する場合、その結果、テープは縁部の外形又は平坦でない表面をたどることができる。
【0024】
本発明は、上記の本発明を実施するための手段を備えるロボット、より具体的に、使用済み燃料プールの壁におけるクラックをシールするための移動ロボットであって、接着テープディスペンサを運び、且つ
− 複数の吸着システムであって、ディスペンサが、第1吸着システムと機械的に一体である、吸着システムと、
− 前記複数の吸着システムの他のシステムに対して第1システムを移動させるための移動手段と、
を備えるロボットにも関する。
【0025】
ロボットは、(任意の裏地の間の)すべてのシームの修理に対して大気環境に適合して稼働することができ、従って、感知−探索段階だけでなく(例えば、原子炉建屋のコンクリート壁をシールする内側金属裏地上での保守作業のための)足場の建設も回避することに留意されたい。
【0026】
本発明は、上記のロボットと、吸着システムとロボットに含まれるモータ手段とをリモートで制御するための手段と、を備える施設にも関する。
【0027】
前記吸着システムの手段によりプールの垂直壁にわたって移動するためのロボットのシステムによって、ロボットは、本発明の意味における施設の制御ステーションによってリモートで制御されるが、現場で自立することを可能にすることが理解されるであろう。しかしながら、ロボットの移動は、極めて正確に制御され、且つ、通例、クラック、又はより広く、シールされるシームに対してディスペンサのヘッドを極めて正確に位置決めすることを可能にする。さらに、有利な一実施形態では、長い貼付長さに起因するドリフトを回避するために、ロボットは、テープを損傷させることなく貼付中に再整列するためのシステムを備えてもよい。この再整列は、位置決めモータの増大が、好ましくは回転が0.01°且つ並進が0.25mmであるので、ロボットの精密な位置決めによって可能とされる。
【0028】
本発明の他の特徴及び利点は、以下で説明される例示的であり非限定的な実施形態及び添付の図面を参照することで明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】接着シーリングテープで覆われるクラックを有するプールを概略的に図示する。
【
図4】移動手段が吸着カップシステムに基づいている、ディスペンサの移動手段と一体的なプラットフォームに設置されたディスペンサを図示する。
【
図5A】上記吸着カップシステムを使用するディスペンサの移動手段を概略的に表す。
【
図5B】上記移動手段のさまざまな自由度を概略的に示す。
【
図5C】
図5Aの移動手段を使用する移動方法のさまざまなステップを示す。
【
図6】ディスペンサが、吸着カップシステムを運ぶ機械的フレームに対してオフセットされた、別の一実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0030】
まず、本発明の意味におけるロボットを有利に使用するための1つの可能な状況を説明するために、
図1を参照する。ここで、例えば使用済み燃料を貯蔵するための核施設の(符号Piで示される)プールは、クラックFiの発生が起こることがある。通常、プールのスチール壁の間、例えばステンレス鋼のシートVOの間で溶接がなされる。
図1の例では、これらシートは、プールの内壁上に取り付けられたステンレス鋼プレートからなる。
【0031】
一般的に、シートの劣化としてクラックが現れると、この溶接部でシートの劣化が始まっていることが観測される。通常、クラックは、
図2に示されるような、多くの場合連続的であるストリップの形態にある接着テープBSによって覆われる。テープは、特に、例えばステンレス鋼からなる保護フィルムINで覆われた接着性ポリマーEL(例えばエラストマー)を備えている。有利には、上記テープ構造は、以下で説明されるように、特に縁部又は平坦でない範囲に貼付するための良好な可撓性をテープに与える。
【0032】
図3を参照すると、接着テープBSは、テープBSを支持するローラROの周囲に巻き付けられ、ローラROは、ディスペンサDISに含まれるリングギア及びピニオン機構MEによって駆動される。特に、ディスペンサのヘッド端部において個別のバネに取り付けられた少なくとも2つのハーフローラROを設け、これにより、角張った縁部にわたって、又は表面の間で高さが異なる2つの表面上にテープを貼付することを可能にすることは、有利である。互いに対して自由である1つのハーフローラにより、その結果、ヘッドは、テープ貼付中の外形変化に対処することができる。
【0033】
さらに又は高機能の変形例では、ディスペンサのヘッドは、特定の外形に対して受けた抵抗に基づいてヘッドの高さを変更するサーボモータを備えてもよい。
【0034】
ディスペンサDISのヘッドが、プールの狭い範囲、例えば流体を搬送するパイプもしくははしごの段の下の範囲又は他の範囲に適合されることが理解される。
【0035】
特に、本発明の状況では、接着テープは、特に薄く(数ミリメートル)、従って可撓性を有する。従って、テープを上記の状況下(狭い範囲、角張った縁部など)で貼付し、且つ長い距離にわたって貼付することが可能である。
【0036】
さらに、ロボットが、プールの垂直壁にわたって移動でき、これが、壁上の所定の位置に対してディスペンサヘッドを極めて正確に位置決めしてなされるので、極めて長い溶接部に沿ってテープを広げることが、可能である。有利なことに、上記実施形態は、貫通クラックを含む欠陥を感知する従来の段階を取り除くことによって、使用済み燃料プールでの修理作業を短縮させる。現在、使用済み燃料プールの修理は、事前の感知段階を必要とする。欠陥が感知されると、欠陥がシールされるのみである。通例、欠陥は、ACFM(交流電磁場測定)方法によって感知され、電流は、溶接部に沿ってプローブによって流され、その後、生成された磁場の分析が、貫通クラック(シートの厚さを貫通して延在するクラック)の寸法及び場所に変換する。
図3に図示される実施形態は、この感知段階を取り除く。これは、この実施形態が、テープの極度の薄さ及びテープ貼付の自動化に起因して可能とされる、極めて長い距離に沿って修理テープを貼付することを提案するためであり、このように、テープ貼付の自動化は、貫通クラックがあるか否か知る必要がなく溶接部の全長を覆う。すべてのアクセス可能な溶接部がこの材料に覆われると、感知段階は不要になる。そして、実際には、テープの寿命は、プール壁の保守計画に影響を与えることができる。例えば、テープの寿命のオーダーは、10年である。従って、保守は、10年ごとに計画される。
【0037】
有利には、前方カメラC1及び後方カメラC2が、(
図3において符号PCで示される)リモート制御ステーションからディスペンサの移動を制御するため、且つシールされるクラックに、又はより広く、覆われるシームにディスペンサヘッドを接近させるために、ディスペンサDISに取り付けられている。さらに、(
図4において符号LAで示される)レーザー源が、シームに対するディスペンサの位置を最適に微調整するために設けられている。
【0038】
図4を参照すると、ディスペンサDISは、(
図5Aにおいて符号SOで示される)プラットフォームに取り付けられ、前記プラットフォームは、吸着カップV11,V12,V13,V21,V22を有する移動システムと機械的に一体である。この移動システムは、
図5Aでよりはっきりと見ることができ、
図5Aでは、プラットフォームSOが、吸着カップの第1セットV21,V22,V23,V24を支持する横材TRと機械的に一体である。この横材TRは、2つのレールRA1及びRA2の間で並進してスライドすることができ、前記レール自体は、吸着カップの第2セットV11,V12,V13及びV14を支持している。第1セット又は第2セットの吸着カップは、制御ステーションPCによって制御される特徴を有し、制御ステーションは、“吸着カップ”効果を作り出すために表面上での吸着カップの水の吸引を作動させるか、又は吸着カップが前記表面から離れるように吸着カップを停止させる。
【0039】
これから、1つの吸着カップシステムの他のものに対する可能な移動を説明するために、
図5Bを参照する。示される例では、吸着カップの第1システムV21からV24は、(高さ方向に)並進移動可能であるシャフトT’z1に固定されている。示される実施形態では、このシャフトは、(破線が接続部を示す)ディスペンサDISを支持している。さらに、このシャフトT’z1は、軸Tyに沿って長手方向に並進移動可能である横材TRと一体である。ディスペンサ自体は、軸Txに沿って横方向に且つそれ自体の軸Tzに沿って高さ方向に並進移動することができる。シャフトT’z1は、吸着カップの第1システムを吸着カップの第2システムに対して角度方向に方向づけるために回転方向RZにさらに移動することができる。さらに、吸着カップの第2システムV11からV14は、全く必須ではない高機能の実施形態では、シャフトT’z2に沿って高さ方向に並進可能に駆動される。
【0040】
これから、
図5Bに示されるような上記システムを移動させ且つ使用するための機構を説明するために、
図5を参照する。
【0041】
第1ステップS1では、吸着カップの第1システムは、シャフトT’z1に沿う下向きの並進によって下げられる。同時に、ステップS2では、吸着カップの第1システムV21からV24が、作動され、そして、吸着カップの第2システムV11からV14が、停止される。その結果、吸着カップV21からV24は、プールの(例えば垂直)壁の表面に接着する一方で、吸着カップの第2システムV11からV14は、前記表面から離れる。ステップS3では、第1システムが壁に固定されているので、長手方向における軸Tyに沿う並進が、吸着カップの第1システムV21からV24に対して、またプールの壁に対して吸着カップのシステムV11からV14を“前進させる”ために命令される。その後、ステップS4では、ステップS1及びS2の逆の機構が実行され:吸着カップの第2システムV11からV14が、ステップS4で下げられ、吸着カップV11からV14が、吸着カップの第1システムV21からV24が停止される間、作動される。通例、ロボット装置は、ステップS3において実行される軸Tyに沿う並進によって前進させられ;ステップS6において、吸着カップの第1システムV21からV24を、ステップS3の次の繰り返しで実行される将来の並進のために可能な限り大きい移動範囲を提供する初期位置に導いたままとなるだけであることが理解されるであろう。
【0042】
移動ロボットの移動は、ロボットによって運ばれたカメラを使用して(検査T7)、シームに接近させるためにリモートで制御される。ロボットの移動は、シームから適切な距離に到達する(検査T7を出る矢印OK)まで継続する(検査T7を出る矢印KO)。ロボットが十分近くなると、ステップS8では、ディスペンサDISの角度位置が、回転Rzによって調節され、且つプール壁の平面内でのディスペンサDISの正確な位置が、軸Tx及びTyに沿う並進によって正確に調節され、これにより、ディスペンサを厳密にシームの軸内に配置する。その後、ステップS9では、ディスペンサヘッドがシームの上方に調節されると、ディスペンサは、シームに対してテープを強制的に貼付することを開始するために軸Tzに沿って並進して下げられる。続いて、ロボットは、(Tyに沿って並進)移動し、ディスペンサは、連続的なステップS1からS6で上述されたように、角度方向Rzに且つプール壁の平面Tx,Ty内で(必要であれば高さ方向Tzにも)移動されることができる。
【0043】
さらに、ロボットの吸着システムの吸着カップは、例えば、シリンダに取り付けられ且つ1つ以上の連続キャビティから水を排出可能なピストンの形態で実施することができ、吸着カップにおける正確に調節可能な接着を可能にする。上述したように、有利には、各吸着カップに対するある程度の高さ方向の並進Tzは、壁が明らかに平坦でない場合に、平面内でのロボットの安定性を提供することができる。
【0044】
従って、最初にロボットを(通常、プールが収容する液体の表面に近い)プールの側縁部に利用し、その後、ロボットが壁に接着し且つシームに到達するまで壁に対して移動するようにロボットをシームに向かって進ませることが可能になる。
【0045】
ディスペンサDISが、吸着カップの第1システムV21からV24を支持するシャフトT’z1と一体である、この実施形態の一例が説明されたが、当然ながら、他の実施形態が可能である。例えば、ディスペンサは、このシャフトと一体的ではなく、横並進の軸(破線によって示される接続部を無視して、
図5Bにおいて表される)Txと平行なシャフトと一体であってもよい。このような実施形態は、
図5Cを参照して説明されたものと同様の移動を提供するが、レールRA1及びRA2によって規定される範囲の外側に横方向にディスペンサをオフセットすることを可能にする。
図6は、この変形例を示し:ディスペンサDISは、吸着カップV11からV14を運ぶフレームの外側にあり、このことは、レールRA1又はRA2によって干渉されることなくクラックに直接的にアクセスすることを可能にする。
【0046】
より広く、当然ながら、本発明は、上述した例示的な実施形態に限定されず;本発明は、他の変形例に及ぶ。
【0047】
従って、極めてシンプルな実施形態では、ロボットを移動させるための全体的なシステムが最小で2つの吸着装置に基づいてもよいことが理解される。実際には、本発明の意味における移動ロボットを移動させるために1つの吸着装置が他のものに対して並進移動することは、十分である。
【符号の説明】
【0048】
BS 接着テープ、DIS ディスペンサ、Fi シーム、PC 制御部、Pi プール、RA1,RA2 フレーム、RX 回転、TR 横材、Tx,Tz 第2方向、Ty 第1方向、V11−V14 第2吸着システム、V21−V24 第1吸着システム