(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。以下の実施形態では、ハイブリッド自動車(HEV)などに用いられる電池システムを監視する電池システム監視装置に対して、本発明を適用した場合の例を説明する。なお、本発明による電池システム監視装置の適用範囲は、HEVに搭載される電池システムを監視するものに限らない。たとえば、プラグインハイブリッド自動車(PHEV)や電気自動車(EV)、鉄道車両などに搭載される電池システムを監視する装置に対しても、幅広く適用可能である。
【0009】
以下の実施形態では、本発明に係る電池システム監視装置が接続されて制御および監視の対象とする電池システム(組電池)の最小単位として、所定の出力電圧範囲、たとえば3.0〜4.2V(平均出力電圧:3.6V)の出力電圧範囲を有するリチウムイオン電池を想定している。しかし、本発明に係る電池システム監視装置は、リチウムイオン電池以外の蓄電・放電デバイスを用いて構成された電池システムを制御および監視の対象としてもよい。すなわち、SOC(State Of Charge)が高すぎる場合(過充電)や低すぎる場合(過放電)にその使用を制限する必要があれば、どのような蓄電・放電デバイスを用いて電池システムを構成してもよい。以下の説明では、こうした電池システムの構成要素としての蓄電・放電デバイスを、電池セルと総称する。
【0010】
以下の説明では、本発明との比較例として、従来の電池システム監視装置の一例を最初に説明する。
図1は、比較例による電池システム監視装置の構成を示す図である。
図1に示す電池システム監視装置は、組電池であるバッテリ部1と接続されており、集積回路2、電源部3、RCフィルタ4、放電抵抗5、ノイズ対策コンデンサ6およびヒューズ7を有している。
【0011】
バッテリ部1は、n−1個の電池セルが直列に接続された組電池であり、
図1の電池監視システム監視装置が制御および監視の対象とする電池システムとして機能する。バッテリ部1の各電池セルは、n個の電圧計測ラインSL1〜SLnと、電圧計測ラインSL1〜SLnからそれぞれ分岐して設けられたn個のバランシングラインBL1〜BLnにそれぞれ接続されている。また、バッテリ部1において最上位、すなわち最も高電位側に配置されている電池セルの正極側には、主電源ラインMBが抵抗を介して接続されており、バッテリ部1において最下位、すなわち最も低電位側に配置されている電池セルの負極側には、グランドラインGNDが接続されている。なお、
図1では、バッテリ部1においてn−1個の電池セルが直列に接続されている例を示しているが、バッテリ部1を構成する電池セルの個数はこれに限定されない。
【0012】
集積回路2は、電圧計測ラインSL1〜SLn、バランシングラインBL1〜BLn、主電源ラインMBおよびグランドラインGNDと接続されており、電圧計測ラインSL1〜SLnを介してバッテリ部1の各電池セルの電圧を検出する。この集積回路2による各電池セルの電圧検出結果に基づいて、
図1の電池監視システム監視装置は、バッテリ部1を制御および監視するための所定の動作を実行する。たとえば、各電池セルの充電状態(SOC)を推定し、電池セル間で充電状態にばらつきが生じている場合は、バランシングラインBL1〜BLnのうち、放電対象の電池セルに対応するバランシングラインを介して放電電流を流すことにより、各電池セルの充電状態を均一化するためのバランシングを行う。これ以外にも、集積回路2により検出された各電池セルの電圧に基づいて、電池監視システム監視装置は様々な処理や制御を行うことができる。
【0013】
なお、バランシングラインBL1〜BLnのうち互いに隣接するバランシングライン同士の間には、放電電流を安定させるためのコンデンサがそれぞれ接続されている。また、集積回路2の内部において、各電圧計測ラインSL1〜SLnおよび各バランシングラインBL1〜BLnは、ESD保護ダイオードを介して、主電源ラインMBおよびグランドラインGNDとそれぞれ接続されている。
【0014】
電源部3は、バッテリ部1から集積回路2に電源を供給するためのものであり、主電源ラインMBとグランドラインGNDの間に接続されている。この電源部3は、ツェナーダイオードとコンデンサを有しており、これらを用いて、主電源ラインMBに接続されている集積回路2の電源入力端子を過電圧や過電流から保護する。
【0015】
RCフィルタ4は、電圧計測ラインSL1〜SLnから集積回路2に入力される各電池セルの電圧信号に重畳された高周波ノイズを除去するためのフィルタ回路であり、電圧計測ラインSL1〜SLnの各々に対して設けられた抵抗とコンデンサにより構成されている。このRCフィルタ4は、電圧計測ラインSL1〜SLnにおいて、バランシングラインBL1〜BLnへの分岐点と集積回路2の間にそれぞれ設けられている。
【0016】
放電抵抗5は、バランシング時にバランシングラインBL1〜BLnに流れる放電電流を調整するための抵抗素子であり、バランシングラインBL1〜BLnにそれぞれ設けられている。
【0017】
ノイズ対策コンデンサ6は、電圧計測ラインSL1〜SLnのうち互いに隣接する電圧計測ライン同士の間に生じるノイズを低減するためのものである。このノイズ対策コンデンサ6は、電圧計測ラインSL1〜SLnにおいて、バランシングラインBL1〜BLnへの分岐点とバッテリ部1の各電池セルの間に設けられている。なお、
図1の例では、各電圧計測ラインSL1〜SLnの間にノイズ対策コンデンサ6を2個ずつ直列に設けることで、そのうち1つが短絡しても隣接する電圧計測ラインの間に大電流が流れないようにしているが、ノイズ対策コンデンサ6の個数はこれに限定されるものではない。
【0018】
ヒューズ7は、電圧計測ラインSL1〜SLnに過電流が流れるのを防止するための電流制限素子であり、電圧計測ラインSL1〜SLnの各々とバッテリ部1の各電池セルの間に設けられている。
【0019】
以上説明した比較例による電池システム監視装置では、電圧計測ラインSL1〜SLnの各々に対してヒューズ7が設けられている。そのため、バッテリ部1が多数の電池セルによって構成されている場合は、それに応じて電圧計測ラインの本数も多くなるため、数多くのヒューズ7が必要であり、装置の大型化やコストの増加につながってしまう。
【0020】
そこで、本発明では、以下の第1、第2の各実施形態で説明するような構成を採用することにより、上記のような問題点を解消するようにしている。
【0021】
(第1の実施形態)
図2は、本発明の第1の実施形態による電池システム監視装置の構成を示す図である。
図2に示す電池システム監視装置において、
図1に示した比較例との違いは、ノイズ対策コンデンサ6が設けられていない点と、ヒューズ7に替えてヒューズ7Aおよび7Bを有している点である。
【0022】
ヒューズ7A、7Bは、
図1のヒューズ7と同様の過電流を防止するための電流制限素子であり、主電源ラインMBとグランドラインGNDにそれぞれ設けられている。
【0023】
このように、
図2の電池システム監視装置では、電圧計測ラインSL1〜SLnの各々に対してヒューズを設けずに、主電源ラインMBとグランドラインGNDに対してのみ、ヒューズ7A、7Bが設けられている。したがって、バッテリ部1を構成する電池セルの個数に関わらず、ヒューズ7A、7Bを搭載するためのスペースが一定で済むため、比較例のように装置の大型化を招くことはない。また、ヒューズ7A、7Bの個数は一定であるため、比較例のようにコストの増加につながることもない。
【0024】
加えて、
図2の電池システム監視装置では、
図1のようなノイズ対策コンデンサ6が設けられていないため、比較例と比べてさらなるコスト低減が可能である。なお、本実施形態では、RCフィルタ4により十分にノイズを除去できるものとして、ノイズ対策コンデンサ6を設けないこととしている。しかし、RCフィルタ4だけではノイズ除去が不十分な場合などは、
図1のようにノイズ対策コンデンサ6を設けてもよい。
【0025】
ここで、
図2の電池システム監視装置において短絡故障が生じた場合を考える。
図2の電池システム監視装置において生じ得る最も危険な短絡故障は、電源部3が短絡することで、バッテリ部1の全電池セルの総電圧が主電源ラインMBとグランドラインGNDの間に印加されてしまい、これらを経由して大電流が流れる故障である。しかし、このような短絡故障が生じた場合、ヒューズ7Aまたは7Bのいずれか少なくとも一方が溶断するため、大電流が流れ続けて発熱や発火が生じるのを防ぐことができる。
【0026】
また、集積回路2の内部に設けられているESD保護ダイオードのいずれかが短絡故障した場合、当該ESD保護ダイオードに対応する電圧計測ラインまたはバランシングラインと、主電源ラインMBまたはグランドラインGNDとを経由して、大電流が流れる可能性がある。しかし、このような短絡故障が生じた場合にも、ヒューズ7Aまたは7Bのいずれか一方が溶断するため、大電流が流れ続けて発熱や発火が生じるのを防ぐことができる。
【0027】
なお、バランシングラインBL1〜BLnのうち互いに隣接するバランシングライン同士の間に設けられたコンデンサが短絡故障した場合、当該バランシングラインを経由して電流が流れる。しかし、この電流は、前述のバランシング時に流れる放電電流と同じであるため、発熱や発火が生じるようなことはない。
【0028】
以上説明したように、本発明の第1の実施形態による電池システム監視装置によれば、比較例のような問題点を解消しつつ、短絡故障による発熱や発火を効果的に防止することができる。
【0029】
なお、以上説明した第1の実施形態では、主電源ラインMBとグランドラインGNDにヒューズ7A、7Bをそれぞれ設けることとしたが、これらのうちいずれか一方のみを設けてもよい。その場合、前述したような電源部3の短絡故障による大電流については確実に防止できるが、ESD保護ダイオードの短絡故障による大電流については防止できない場合がある。しかし、このようにしても、比較例のような問題点を解消しつつ、短絡故障による発熱や発火の発生をある程度は防止することができる。すなわち、本発明による電池システム監視装置では、主電源ラインMBおよびグランドラインGNDのいずれか少なくとも一方に、電流制限素子としてのヒューズ7A、7Bを設けることができる。
【0030】
以上説明した本発明の第1の実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
【0031】
(1)電池システム監視装置は、複数の電池セルを直列に接続した組電池であるバッテリ部1と接続されて各電池セルの状態を監視する。この電池システム監視装置は、電池セルとそれぞれ接続される電圧計測ラインSL1〜SLnと、電圧計測ラインSL1〜SLnと接続され、電圧計測ラインSL1〜SLnを介して各電池セルの電圧を検出する集積回路2と、バッテリ部1において最上位の電池セルの正極側に接続される主電源ラインMBと、バッテリ部1において最下位の電池セルの負極側に接続されるグランドラインGNDと、バッテリ部1から集積回路2に電源を供給するために主電源ラインMBとグランドラインGNDの間に接続された電源部3と、主電源ラインMBおよびグランドラインGNDのいずれか少なくとも一方に設けられた電流制限素子としてのヒューズ7A、7Bとを備える。このようにしたので、多数のヒューズを設けることなく、バッテリ部1と電圧検出を行う集積回路2との間に過電流が流れるのを防止することができる。
【0032】
(2)電池システム監視装置では、主電源ラインMBおよびグランドラインGNDの両方にヒューズ7A、7Bを設けることができる。このようにすれば、電源部3の短絡故障や集積回路2の内部に設けられたESD保護ダイオードの短絡故障により大電流が流れることで、発熱や発火が生じるのを効果的に防止することができる。
【0033】
(3)電池システム監視装置は、電圧計測ラインSL1〜SLnからそれぞれ分岐して設けられたバランシングラインBL1〜BLnと、抵抗とコンデンサにより構成され、電圧計測ラインSL1〜SLnにおいてバランシングラインBL1〜BLnへの分岐点と集積回路2の間にそれぞれ設けられたRCフィルタ4と、バランシングラインBL1〜BLnにそれぞれ設けられた放電抵抗5とをさらに備える。この電池システム監視装置には、電圧計測ラインSL1〜SLnの上記分岐点と電池セルの間において、互いに隣接する電圧計測ラインSL1〜SLn同士の間に生じるノイズを低減するためのノイズ対策コンデンサ6が設けられていない。そのため、さらなるコスト低減を実現することができる。
【0034】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
図3は、本発明の第2の実施形態による電池システム監視装置の構成を示す図である。
図3に示す電池システム監視装置において、
図2に示した第1の実施形態との違いは、ヒューズ7Aが設けられていない点と、ヒューズ7Bの溶断を検出するための溶断検出回路8が設けられている点である。
【0035】
溶断検出回路8は、一端が所定の基準電圧を出力する電圧源に接続されていると共に、中間点がヒューズ7Bおよび電源部3に接続されたプルアップ抵抗を有している。このプルアップ抵抗の他端は、プルアップ抵抗の電圧値を測定するための集積回路2の入力端子に接続されている。すなわち、溶断検出回路8は、プルアップ抵抗と集積回路2により構成されている。
【0036】
ヒューズ7Bが溶断されていない場合、集積回路2には、ヒューズ7Bを介して接続されたグランド電位が入力される。一方、ヒューズ7Bが溶断されると、グランド電位とは異なる電圧が集積回路2に入力される。この電圧は、電源部3が短絡故障されている場合とされていない場合とで、以下のように変化する。
【0037】
電源部3が短絡故障されずにヒューズ7Bが溶断された場合、プルアップ抵抗の中間点はいずれの電位からも断絶された状態となるため、電圧源からの基準電圧がプルアップ抵抗を介して集積回路2に入力される。したがって、この電圧源からの基準電圧を集積回路2で検出することにより、溶断検出回路8においてヒューズ7Bの溶断を検出することができる。
【0038】
電源部3が短絡故障されてヒューズ7Bが溶断された場合、プルアップ抵抗の中間点には、電源部3および主電源ラインMBを介して、バッテリ部1の最上位の電池セルからの電圧が印加される。この中間点への印加電圧がプルアップ抵抗により分圧された基準電圧を上回る場合、当該印加電圧がプルアップ抵抗を介して集積回路2に入力される。したがって、この中間点への印加電圧を集積回路2で検出することにより、溶断検出回路8においてヒューズ7Bの溶断を検出することができる。
【0039】
以上説明した本発明の第2の実施形態によれば、電池システム監視装置は、電流制限素子であるヒューズ7Bの溶断を検出する溶断検出回路8をさらに備える。そのため、過電流が流れてヒューズ7Bが溶断した場合に、これを確実に検知することができる。
【0040】
上記の溶断検出回路8は、所定の基準電圧を出力する電圧源に接続されると共に、ヒューズ7Bおよび電源部3に接続されたプルアップ抵抗を有している。この溶断検出回路8は、電源部3が短絡されていない場合は、プルアップ抵抗を介して基準電圧を検出することにより、ヒューズ7Bの溶断を検出する。また、電源部3が短絡された場合は、電源部3およびプルアップ抵抗を介して最上位の電池セルの電圧を検出することにより、ヒューズ7Bの溶断を検出する。このようにしたので、電源部3が短絡されていない場合と短絡された場合とで、それぞれ確実にヒューズ7Bの溶断を検出することができる。
【0041】
なお、以上説明した第2の実施形態では、グランドラインGNDのみにヒューズ7Bを設けて、このヒューズ7Bの溶断を溶断検出回路8により検出することとした。しかし、前述の第1の実施形態と同様に、主電源ラインMBにもヒューズ7Aを設けて、このヒューズ7Bの溶断を検出するための溶断検出回路をさらに設けてもよい。その場合、当該溶断検出回路は、
図3の溶断検出回路8と同様に、プルアップ抵抗と集積回路2を用いて構成することができる。具体的には、電源部3が短絡故障されずにヒューズ7Aが溶断された場合は、プルアップ抵抗を介して電圧源からの基準電圧を集積回路2で検出することにより、ヒューズ7Aの溶断を検出する。一方、電源部3が短絡故障されてヒューズ7Aが溶断された場合は、バッテリ部1の最下位の電池セルから電源部3およびグランドラインGNDを介してプルアップ抵抗の中間点に印加される電圧を、プルアップ抵抗を介して集積回路2で検出することにより、ヒューズ7Aの溶断を検出する。このようにすれば、主電源ラインMBおよびグランドラインGNDの両方にヒューズ7A、7Bを設けた場合においても、それぞれの溶断を確実に検出することができる。
【0042】
以上説明した各実施形態や変形例はあくまで一例であり、発明の特徴が損なわれない限り、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。