(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6014774
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月25日
(54)【発明の名称】全方向性二偏波型アンテナ
(51)【国際特許分類】
H01Q 21/24 20060101AFI20161011BHJP
H01Q 5/10 20150101ALI20161011BHJP
H01Q 19/10 20060101ALI20161011BHJP
H01Q 1/52 20060101ALI20161011BHJP
H01Q 5/357 20150101ALI20161011BHJP
H01Q 21/28 20060101ALI20161011BHJP
【FI】
H01Q21/24
H01Q5/10
H01Q19/10
H01Q1/52
H01Q5/357
H01Q21/28
【請求項の数】17
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2015-545682(P2015-545682)
(86)(22)【出願日】2013年11月7日
(65)【公表番号】特表2016-504843(P2016-504843A)
(43)【公表日】2016年2月12日
(86)【国際出願番号】EP2013003355
(87)【国際公開番号】WO2014086452
(87)【国際公開日】20140612
【審査請求日】2015年7月28日
(31)【優先権主張番号】102012023938.6
(32)【優先日】2012年12月6日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】500387342
【氏名又は名称】カトライン−ベルケ・カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100082049
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 敬一
(72)【発明者】
【氏名】シュトッレ・マンフレート
(72)【発明者】
【氏名】ゲットゥル・マクシミリアン
【審査官】
米倉 秀明
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2008/0036674(US,A1)
【文献】
特開平09−284045(JP,A)
【文献】
特開2009−290654(JP,A)
【文献】
特開2011−010081(JP,A)
【文献】
特表2003−502975(JP,A)
【文献】
特表2009−519668(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2012/0280882(US,A1)
【文献】
特開2003−078346(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 21/24
H01Q 1/52
H01Q 5/10
H01Q 5/357
H01Q 19/10
H01Q 21/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心軸(1)周りの周方向に互いに離間して角度変位して分離して、少なくとも3個のセクタアンテナ(5)を配置する全方向性二偏波アンテナにおいて、
各セクタアンテナ(5)は、付属の反射器(11)を備えた少なくとも1個の柱状アンテナ(6)を有し、少なくとも部分的に反射器平面(13’)内に反射器(11)を配置し、反射器(11)の前方に少なくとも1つの二偏波放射器(7,9)を柱状アンテナ(6)内に配置し、
セクタアンテナ(5)に結合された給電装置を有し、
中心軸(1)に沿い互いに変位してセクタアンテナ(5)を配置し、
反射器(11)の各反射器平面(13’)内に軸方向に見て中心軸(1)に沿い交差させてセクタアンテナ(5)の反射器壁(13)を配置し、
中心軸(1)に沿い互いに変位してかつ隣接して配置される2個のセクタアンテナ(5)間に減結合装置を設け、
セクタアンテナ(5)の反射器平面(13')と中心軸(1)との間の間隔を付属の柱状アンテナ(6)の横幅(B)の15%より小さい間隔にして、中心軸(1)に対して平行にかつ間隔を空けて反射器壁(13)又は反射器平面(13')を配置し、
反射器平面(13’)の放射器(7,9)側に中心軸(1)が延伸することを特徴とする全方向性二偏波アンテナ。
【請求項2】
中心軸(1)は、反射器外縁(15,15’)を貫通しかつ中心軸(1)から変位して反射器壁(13)の付属の反射器平面(13')を配置した請求項1に記載の全方向性二偏波アンテナ。
【請求項3】
付属の柱状アンテナ(6)の横幅(B)の10%より小さい間隔をセクタアンテナ(5)の反射器平面(13')と中心軸(1)との間に設けて、反射器壁(13)又は反射器平面(13')を中心軸に対して平行に配置した請求項1又は2に記載の全方向性二偏波アンテナ。
【請求項4】
中心軸(1)は、位相中心を通って延伸するか又は付属の柱状アンテナ(6)の間隙幅(B)の15%より小さい間隔をもって中心軸から離間してセクタアンテナ(5)を配置した請求項1〜3の何れか1項に記載の全方向性二偏波アンテナ。
【請求項5】
対応する反射器(11)の反射器平面(13’)に対して横方向に配置した少なくとも1つの反射器外縁(15,15’)を減結合装置に設けた請求項1〜4の何れか1項に記載の全方向性二偏波アンテナ。
【請求項6】
単一周波数帯域アンテナ内の中心周波数λに対し又は2種周波数帯域又は複数周波数帯域アンテナ内の低中心周波数に対し、反射器外縁(15,15’,15”)の高さは、0.05λより大きく、かつ、各セクタアンテナ(5)の対応する反射器(11)の反射器平面(13’)に対して、二偏波放射器(7)の高さ(H1)より小さく、かつ/又は二偏波放射器(9)の高さ(H2)よりも小さい請求項5に記載の全方向性二偏波アンテナ。
【請求項7】
反射器(11)の外縁部で各セクタアンテナ(5)を一周して閉鎖し又は中断部を有する反射器外縁(15)を各セクタアンテナ(5)に設け、反射器外縁(15,15’)によりセクタアンテナ(5)を包囲した請求項5又は6に記載の全方向性二偏波アンテナ。
【請求項8】
単一周波数帯域アンテナ、2種周波数帯域アンテナ又は複数周波数帯域アンテナとして各セクタアンテナ(5)を構成した請求項1〜7の何れか1項に記載の全方向性二偏波アンテナ。
【請求項9】
角度180°の逆方向に向く第2のセクタアンテナ(5)を各セクタアンテナ(5)の領域内に設け、共通の反射器(11)、特に共通の反射器平面(13')を有する共通の反射器壁(13)を第2のセクタアンテナに好適に設けた請求項1〜8の何れか1項に記載の全方向性二偏波アンテナ。
【請求項10】
中心軸(1)に沿い互いに変位して柱状アンテナ(6)内に配置された複数の二偏波放射器(7,9)を各セクタアンテナ(5)に設けた請求項1〜9の何れか1項に記載の全方向性二偏波アンテナ。
【請求項11】
セクタアンテナ(5)は、互いに平行に配置された少なくとも2個の柱状アンテナ(6)を有し、柱状アンテナ(6)方向に互いに離隔してかつ各柱状アンテナ内に少なくとも1つの二偏波放射器(7,9)及び好ましくは複数の二偏波放射器(7,9)を配置した請求項1〜10の何れか1項に記載の全方向性二偏波アンテナ。
【請求項12】
セクタアンテナ(5)の各柱状アンテナ(6)内の二偏波放射器(7,9)を同一高さ位置に配置した請求項11に記載の全方向性二偏波アンテナ。
【請求項13】
最低周波数帯域の中心周波数をλとすると、柱状アンテナ(6)の間隔を0.65λと0.75λの間に設定した請求項10〜12の何れか1項に記載の全方向性二偏波アンテナ。
【請求項14】
各セクタアンテナ(5)の少なくとも2個の柱状アンテナ(6)を中心軸(1)に対し対称に配置した請求項10〜13の何れか1項に記載の全方向性二偏波アンテナ。
【請求項15】
セクタアンテナ(5)の各1個の柱状アンテナ(6)を中心軸(1)に対し対称に配置し、径方向、側方向又は中心軸(1)に対して横方向に変位して少なくとも1つの他の柱状アンテナ(6)を配置した請求項10〜13の何れか1項に記載の全方向性二偏波アンテナ。
【請求項16】
単一又は異なる柱状アンテナ(6)内に配置される複数の二偏波放射器(7,9)を多入力・多出力アンテナとして駆動する請求項1〜15の何れか1項に記載の全方向性二偏波アンテナ。
【請求項17】
単一周波数帯域、2種周波数帯域又は複数周波数帯域で二偏波放射器(7,9)を駆動できる請求項1〜16の何れか1項に記載の全方向性二偏波アンテナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の全項に記載する全方向性二(デュアル)偏波型アンテナに関する。
【背景技術】
【0002】
全方向性アンテナ(無指向性放射器)は、例えば特許文献1から公知である。この種の全方向性放射器、即ち無指向性放射器は、例えば、中心軸を中心に互いに角度120°ずつ変位してそれぞれ配置され、軸方向上方から見て三角形断面を形成する3個のアンテナアレイ装置を有する。そのアンテナ構造により、各アンテナアレイは、ほぼ120°のアジマス角度(衛星や飛行機など飛翔体の運動する方位角)領域を作動範囲とする。
【0003】
従来の種々の放射器と放射器装置、例えばダイポール、所謂ベクトルダイポール、パッチ放射器等を該当するアンテナに設けることができる。所謂二偏波ベクトル放射器は、例えば、特許文献2から公知である。
【0004】
角度方向又は円周方向に互いに変位して設けられる3個の各アンテナアレイは、例えば、等間隔でかつ互いに高さ方向に重ねて配置される複数の二偏波放射器装置を有する。適切な給電装置を介して各二偏波放射器に電力が供給される。循環電流を各放射器に供給してもよい。常法通り互いに垂直に配置するほか、水平又は垂直に配置される平面に対し+45°又は−45°の角度領域で傾斜して、2つの偏波平面を配置することが好ましい。
【0005】
また、複数の入出力信号を処理する受信システムの一部として、多入力・多出力(Multi-Input Multi-Output、MIMO)可能に各区分アンテナを構成できる。
【0006】
垂直偏波型アンテナは、例えば、特許文献3からも公知である。垂直偏波型アンテナは、複数のダイポールを備える垂直の細長い支持構造体を有し、ダイポールは、支持構造体に沿い種々の高さに配置されかつ同軸電流供給ケーブルに接続される。前記構造では、各高さ当たり各1個のダイポールが設けられる。ダイポールは、特に前記構造上に相前後して配置される2系列に分割され、共平面上かつ正確に共直線上に取り付けられる。2系列内のダイポールは、互いに逆方向に配置されるので、2群の水平偏波構成部品は、逆向きに配置される。その場合に、2系列のダイポールの位相中心を整合、即ち心合わせできる僅かな間隔を2系列のダイポール間に形成して2群の水平偏波構成部品を配置して、ダイポールへの接地面の作用に基づき、位相を僅かに偏移(移相、シフト)することができる。
【0007】
その他、単偏波でのみ放射又は受信するが、多入力・多出力(MIMO)不能な垂直偏波型無指向性放射器も知られている。例えば、3個又は4個の板状反射・放射素子(パネル)を有する垂直偏波型無指向性放射器は、無指向性放射線図(ダイアグラム)を目的としてアンテナ塔を中心に同一平面内で相互に接続される。互いに回転して複数の平面を接続して、より良好な無指向性を得ることもできる。そのとき、小周波数領域でのみ良好な無指向放射特性を達成できるに過ぎない(幾何学的配置の位相による消失が生じる)。
【0008】
多周波数帯域(マルチ区分)アンテナは、例えば特許文献4からも知られている。水平面内で異なる指向作用を生ずる多数の導体(エレメント)アンテナを使用して、所望の方向に唯一の無線ビームを放射することができる。垂直平面内に配置される各導体アンテナの少なくとも1つは、他の導体アンテナの高さとは異なる高さに配置される。セクタアンテナの垂直軸に対して、導体アンテナは、非対称に配置される。
従来の全方向性アンテナは、米国特許第6369774号に開示される。この公報は、例えば、X軸に沿って重なりかつ離隔する領域内に3個のダイポールアンテナをそれぞれ配置し、各ダイポールアンテナは、自体単独で考えて反射器として作用するアンテナを開示する。
X軸に沿って互いに離間して3個のダイポールアンテナを配置し、また、高インピーダンスの第1の媒体により各ダイポールアンテナを包囲して、更に、第1の媒体より低いインピーダンスを有する第2の媒体により高インピーダンスの媒体により各ダイポールを包囲して、各アンテナ相互の減結合を確実に達成することができる。
他の実施の形態では、角度120°離間しかつX軸に沿い互いに離間して3個のパッチ放射器を配置したセクタアンテナが設けられる。
また、ベクトルダイポールを有する個別放射器は、国際公開第WO2008/017386A1号公報から公知である。この個別放射器は、特別にかつ上方から見て矩形に形成された反射器の前方に取り付けられ、反射器の4個の全側縁は、反射器外縁により包囲され、反射器外縁は、反射器平面に対して横方向に、特に垂直にかつ放射方向に突出する。
更に、前記公報は、重ねて配置した各反射器領域内に必要な進路誘導型(ベクトル)放射器を配置し、各放射器と同様に、進路誘導型放射器の反射器外縁により各放射器外縁の周囲を全4側縁で包囲する単柱状アンテナを開示する。この構造では、反射器外縁は、無線ビーム成形に用いられる。
基本概念を形成する全方向性アンテナは、欧州特許出願公開第0802579A2号公報から公知である。この公報は、軸方向に重ねてかつ例えば互いに角度120°変位して配置した3個の反射器平面を有するアンテナを示す。3個の反射器平面は、軸方向上方から見て、中心軸に沿いかつ中心軸内で交差する。反射器平面の前方に必要な放射器が配置される。反射器の前方で放射器の周囲に延伸する反射器外縁で形成される部分内に取り付けられる二偏波放射器としてこの反射器を使用できる。
前記公報は、それぞれ1対の互いに平行に延びる反射器平面も記述し、その場合に、一対の反射器平面の各々は、異なるアジマス角度で方向づけされかつ中心軸に沿い互いに軸方向に変位する。これが、互いに間隔を空けて平行に延伸する2個の反射器の対向する側に、適切な放射器を配置できる、可能性を拓く。この場合に、中心軸は、一対の反射器の互いに平行に延伸する2つの各反射器平面間を通過する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開第WO2011/120090A号公報
【特許文献2】欧州特許第1057224B1号公報
【特許文献3】独国特許出願公開第60019412T2号公報
【特許文献4】独国特許出願公開第69734172T2号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、極力小さい組立体積と、従来より改良された無指向性放射特性とを有する全方向性二偏波アンテナ又は集合アンテナを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に記載する必須構成要件の特徴を有する本発明により、前記課題を解決する。本発明の好適な実施の形態を下位請求項に記載する。
【0012】
アンテナアレイを同一の高さに配置する基本概念の従来技術とは異なり、本発明の解決手段は、互いに角度120°変位してかつ特に垂直取付方向に互いに変位して放射する複数、例えば3個のセクタアンテナ装置を設けることを特徴とする。即ち、(基本概念を形成する従来技術とは異なり)放射方向に対して逆に又は交差して各セクタアンテナを中心軸又は取付軸に取り付けて、上方から見て種々のセクタアンテナ上に均等に位相中心を最終的に配置することができる。位相中心は、受信領域から見て電磁アンテナ放射を送信すると認められるアンテナの電子的基準点である。
【0013】
従って、全セクタアンテナの基準点は同一であるから、無指向性放射特性を明らかに改善することができる。
【0014】
中央の垂直軸又は取付軸付近に全セクタアンテナを配置するので、全体に減少した直径−全高は、特に垂直方向に大きいが−を備えるアンテナ装置が得られる。本発明の技術的範囲内では、装置全体の直径は、従来のアンテナよりも極めて小さいので、装置全体の視覚的影響も小さい。また、本発明の解決手段では、風負荷も減少する。
【0015】
本発明の技術的範囲内では、中心軸に沿い互いに変位して隣接して配置される2つのセクタアンテナ間に減結合装置を設けるので、セクタアンテナを更に改良できる。付属の反射器の反射器平面に対し横方向に配置される反射器外縁で減結合装置を構成することが好ましい。減結合装置を反射器外縁に設けるこの種の反射器は、例えば、独国特許出願公開第10316787A1号公報により公知である。この種の反射器は、側方の縦外縁と、隣り合う放射器装置間に延伸する横外縁とをそれぞれ有する少なくとも2個の反射器ユニット備えかつ反射器全体にユニット化できる通常の単柱状移動型無線アンテナである。
【0016】
本発明の好適な実施の形態では、垂直中心軸が全反射器平面を通過するか又は反射器平面と垂直中心軸との間隔は、従来の間隔よりも極めて小さく、各セクタアンテナの少なくとも1個の反射器平面は、中心軸付近に配置される。即ち、セクタアンテナの該当する反射器装置の反射器平面の中央領域を通常位相中心に少なくとも近似するとみなせる。
【0017】
従って、本発明の技術的範囲内では、平面図上装置全体の位相中心を各アンテナの位相中心と同一とみなせる利点がある。それにより、装置全体の群因子(グループファクタ)は、周波数に依存せず、無指向性放射特性図が極端に広周波数帯域となる(従って、2種周波数帯域アンテナにも適する)。装置全体の同心性は、各アンテナの半波幅のみに依存する。
【0018】
本発明の好適な実施の形態では、更に、個別放射器又は指向性アンテナの最適化減結合構造が得られる。例えば、全体的に又は部分的に一周する反射器外縁を各反射器平面に対して横方向に配置し、垂直に重ねて配置した各セクタアンテナ間に形成される反射器外縁に減結合構造を設けることができる。
【0019】
また、本発明の技術的範囲内では、全方向性単一周波数帯域アンテナのみならず、例えば全方向性2種周波数帯域(デュアルバンド)アンテナ又は更に複数(多)周波数帯域アンテナ、更に二(デュアル)偏波アンテナ又はサイクル偏波アンテナで送信及び/又は受信できる全方向複数周波数帯域アンテナも、実現することができる。
【0020】
例えば、例えば欧州特許第1082728B1号公報及び欧州特許第1470615B1号公報から既知の所謂ダイポール放射器形式、ベクトル放射器形式又はパッチ放射器形式の適切な放射器と放射器装置を使用して、本発明の全方向性二(デュアル)偏波型アンテナを実現することが好ましい。特に、最後の引用文献は、支柱付傘形状で大型の二偏波放射器と、中心に配置される小型の高周波数帯域領域用二偏波放射器を示す。
【0021】
本発明の好適な実施の形態と進展した形態では、例えば、セクタアンテナを設ける箇所に逆方向又は交差方向に放射する同一の反射器平面の他のセクタアンテナを使用して、専有空間を低減しつつ放射器数を増加することもできる。従って、逆方向又は交差方向に放射するほぼ2倍のセクタアンテナを各取付位置に設けることができる。
【0022】
通常垂直に重なる配列で又は別法として通常のアンテナと同様に、複数の単一周波数帯域放射器、2種周波数帯域放射器又は多数周波数帯域放射器又は放射器装置を各柱状アンテナ内に配置することもできる。その場合に、中心軸周りに周方向に変位して、重ねて配置される複数の放射器を有する各柱状アンテナを異なるアジマス角度で配置することができる。前記の通り、各反射器平面に関して(従って180°変位して)逆方向又は交差方向に放射器装置を配置して、放射器数を倍にすることができる。
【0023】
例えば、必要な放射器装置を有する2個の柱状アンテナを使用するとき、コラムアンテナの位相中心に配置される共通の平面又は位相中心に少なくとも近似的に配置される共通の平面を、中心軸を通過して又は中心軸の近傍に配置することが好ましい。
【0024】
しかしながら、本発明の進展した形態では、前記実施の形態とは異なり、放射器装置の同一高さ位置に垂直中心軸に対して径方向外側に変位して更に1個又は2倍数の他のセクタアンテナを設けることもできる。換言すれば、この種、例えば、2支柱アンテナ装置(セクタアンテナ等の)では、アンテナ装置の各中心軸に対して正確に又は極力正確に放射器の位相中心を接近させて、放射器を一方の支柱内に配置でき、例えば、第2の柱状アンテナ内に配置される放射器装置を中心軸に対して径方向、即ち側方向に変位して配置し、従って、2個の支柱は、中心軸に対して対称ではない。これにより、垂直中心軸に対して径方向に離れて他のセクタアンテナを配置するときも、他の利点を提供することができる。それにより、位相中心は非同一であるが、広周波数帯域で作動可能な放射特性図の極力最良の無指向性を有する高多入力・多出力(MIMO)態様の多支柱型(マルチコラム)アンテナを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
本発明の他の利点、詳細及び特徴は、下記に説明する実施の形態から明らかとなろう。
【0026】
【
図1】全方向性二偏波複数周波数帯域で作動可能なアンテナの本発明の第1の実施の形態を示す斜視図
【
図4a】逆方向に配置された2個のセクタアンテナを有し、対称平面内に配置される共通の反射器を各セクタアンテナに設けたアンテナ(セクタアンテナ装置)の変形実施の形態を示す斜視図
【
図5】単一周波数帯域内で電波を放射しかつ/又は受信する3個のセクタアンテナを有するアンテナ(無指向性放射器)の
図1とは別の実施の形態を示す斜視図
【
図8】中央方向から互いに変位して配置されかつ単柱状セクタアンテナ当たり2個の放射器を有する
図5〜
図7とは別の実施の形態を示す斜視図
【
図11】セクタアンテナ当たり2個の柱状アンテナを有し、中央で互いに重ねて配置された各柱状アンテナに各2つの放射器を設けた
図8とは別の実施の形態を示す斜視図
【
図14】
図11に示す実施の形態の2個の柱状アンテナを中心軸から横方向に変位して配置した実施の形態の斜視図
【
図17】先行実施の形態とは異なり、各高さ領域内に中心軸周りに互いに180°変位して共通の反射器壁上に2個の放射器を取り付けた複数のセクタアンテナを有する無指向性放射器の実施の形態を示す斜視図
【
図20】放射方向に僅かな変位量だけ中心軸1から各セクタアンテナを離間して配置した
図6に示す実施の形態とは異なる変形実施の形態を示す軸方向平面図
【
図21】
図6及び
図20とは異なり、反射器の背後側ではなくセクタアンテナの放射器側でかつ反射器壁に平行に延伸する中心軸に対して、僅かな側方の径方向変位をもって各セクタアンテナを配置した別の変形実施の形態の軸方向平面図
【
図22】同一の高さにかつ互いに角度120°離間して3個のセクタアンテナを配置した従来のアンテナ装置を示す図式的な平面図
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1〜
図3に示す本発明の第1の実施の形態を以下説明する。
【0028】
本明細書では、取付軸又は取付線とも称する垂直中心軸1を
図1に一点鎖線で示す。
【0029】
図示の実施の形態では、電波(無線)を放射し又は受信する3個のセクタアンテナ5は、アジマス方向(衛星や飛行機など飛翔体の運動する方向)に、周方向に互いに角度120°ずつ離間してかつ高さ方向に互いに重ねて配置される。
【0030】
図1に示すように、同一の高さではなく(
図22に示す従来の構造とは異なり)、垂直中心軸1又は取付線1方向に互いに変位して、3個のセクタアンテナ5が配置される。
【0031】
電波を放射し又は受信する目的で、柱状アンテナ(アンテナコラム)6内に配置される各セクタアンテナ5は、例えば、より高い第1の周波数帯域(高帯域)用の二偏波放射器7と、より低い周波数帯域(低帯域)用の他の二偏波放射器9とを有する。
【0032】
高周波数帯域用のベクトル放射器は、例えば、欧州特許第1057224B4号公報又は独国特許出願公開第19860121A1号公報に開示される構造を基本的に備える。
【0033】
高周波数帯域用の二偏波放射器(本明細書では、「ベクトルダイポール」ともいう)は、例えば、所謂対称支柱付の傘形ダイポールの内部に配置され、傘形ダイポールも同様に二偏波放射器として構成され、大きいアンテナ寸法により低周波数帯域内の送信と受信に適する。この種の放射器は、例えば欧州特許第1470615B1号公報から基本的に公知である。
【0034】
図1の正面側の付属する各反射器11を垂直に見ると、2個の放射器7と9は、同一位置に取り付けられ、図示の実施の形態では、反射器11は、反射器平面13’内に配置されかつ放射器7、9の背後に取り付けられる反射器壁13を有し、放射器7、9の周囲に反射器外縁15が一周して配置される。反射器11全体の一部としてかつ放射器7、9を一周する境界として、反射器平面13’に対して横方向、図示の実施の形態では垂直に反射器外縁15を設けることが好ましい。下方又は上方に隣接するセクタアンテナ5に対して各セクタアンテナ5を最適に減結合(反射器11間の回路結合を減少)する最適減結合化されるアンテナ構造を反射器外縁15により実現できる。
【0035】
また、該当するセクタアンテナ5の反射器平面13’に対して横方向、好適には垂直方向に配置される少なくとも1つの反射器外縁15’を減結合される反射器構造に設け、反射器外縁15’は、隣接する2個のセクタアンテナ5間に配置される。反射器11の横に突出する反射器外縁15’は、接続線である中心軸1に対して横方向かつ特に直角に延伸して、特に隣接するセクタアンテナ5に対する減結合に役立つ。
【0036】
また、図示の実施の形態では、背後の反射器壁13に対して平行にかつ一定距離離間させて、中間反射器17を中間反射器平面17’内に配置でき、中間反射器平面17’は、低周波数領域用の二偏波放射器9’よりも小さい寸法で設計され、中間反射器17に形成される中央開口部17a内の中心に又は均衡を保つ位置に、中央開口部17aに対し電気的、電気化学的に接触せずに対応するベクトル放射器7を配置することができる。
【0037】
図1の斜視図に示す実施の形態に設けられる3個のセクタアンテナ5は、垂直中心軸1周りに互いに角度120°離間してそれぞれ配置される。全アンテナ構造は、原則的に同一であるが、勿論互いに異なる構造でもよい。
【0038】
図示の実施の形態では、1列の単柱状(シングルコラム)のセクタアンテナ形式で構成される各セクタアンテナ5、即ち対応する各アンテナシステム5は、高周波数帯域と低周波数帯域で電磁波(電波、無線)を伝送する単一の対応する放射器装置を有する。後述の通り、共通の柱状アンテナ(アンテナコラム)6内に垂直方向に2個又はそれ以上のセクタアンテナをセクタアンテナ配列状態(アレイ)に組み立てることもできる。また、側方、径方向又は水平に延伸する取付方向に配置した他のアンテナシステム又はセクタアンテナを設けることもできる。
【0039】
図示の実施の形態では、各反射器平面13’の中央又は各反射器壁13の中央に垂直中心軸1が配置される。これにより、通常付属の反射器平面13’及び各セクタアンテナ5の反射器壁13の中央の軸方向上方から見て垂直中心軸1上又はその近似位置に、各セクタアンテナ5の位相中心を確実に配置して、従来より格段に改善された全方向性放射・受信特性図(特性パターン)を得ることができる。
【0040】
図4は、図示の実施の形態により2種の各周波数帯域内で駆動できる二重の個別放射器、即ち二重セクタアンテナを示す。本実施の形態では、反射器壁13を有する反射器11は、二重セクタアンテナ5に設けられ、反射器壁13は、図面平面の上下に延伸する共通の反射器平面13’内にかつ二重セクタアンテナ5の中央に共通に配置される。換言すると、本実施の形態では、互いに角度180°離間し又は変位して、反射器平面13’に対し対称に2個のセクタアンテナ5が配置される。その場合に、(先行実施の形態と同様に)互いに角度180°回動して取り付けられて異なる構造の二重セクタアンテナ5も実現でき、各セクタアンテナ5は、大きい寸法で設計(例えば、支柱付の傘形に形成)される低周波数帯域用の二偏波放射器9と、本来の反射器平面13'から離間して二偏波放射器9の中央に配置される反射器17(
図4に図示しないが、同様に反射器平面17’内に付加的に設けられる反射器も)とを備える他の同様の二偏波ベクトル放射器7を具備することができる。
【0041】
互いに角度180°変位して配置される二重セクタアンテナ5を備える図示の構造を
図1に示す3個の各セクタアンテナに適用でき、
図1の各セクタアンテナに適用すれば、均等高さの軸方向構造に形成されるアンテナ装置の同一直径上に、合計6個の放射器が収容される。それにより、無指向性放射特性図を改善できるのみならず、多入力・多出力(MIMO)構造も実現される。
【0042】
次に、
図1〜
図3の実施の形態に基本的に類似する構造の
図5〜
図7に示す実施の形態を詳述するが、(2種周波数帯域アンテナ用の二偏波放射器7又は9を使用する全方向性無指向性放射器を示す)
図1〜
図3とは異なり、単一の周波数帯域内でのみ送信又は受信できる点で相違する。例えば、独国特許第102004057774B4号公報に開示される高周波数帯域に使用するベクトル放射器又はベクトルダイポールを
図5〜
図7に示す。中心軸に沿って上方からの平面図、特に
図6と
図7に示すように、中心軸1に沿い垂直方向に互いに重ねて配置した図示の3個全てのセクタアンテナ5は、互いに角度120°で変位して配置される。この種の無指向性放射器を
図5〜
図7のように基本的に配置して、所望の各周波数帯域内で特に2種偏波で送信及び/又は受信を行うことができる。また、図示の二偏波ベクトルダイポールの代わりに、例えば、パッチ放射器等の他の適切な放射器装置を使用することができる。
【0043】
前記実施の形態を変形した
図8〜
図10は、単一の柱状アンテナ6を各セクタアンテナ5に設け、垂直中心軸線に沿って互いに離間して配置した2個の二偏波放射器7又は9を各柱状アンテナ6内に設けた実施の形態を示す。放射及び/又は受信すべき通常選択されるアンテナ周波数帯域により放射器7と9間の間隔が決定される。該当する周波数帯域の中央駆動周波数をλとすると、放射器7と9間の間隔は、λ/2からλの間の値、例えば通常0.7乃至0.75λである。本実施の形態は、取付方向、即ち通常垂直中心軸1方向に互いに重ねて各セクタアンテナ5を配置した少なくとも2個の二偏波放射器を有する単一周波数帯域用の全方向性無指向性二偏波放射器を示す。換言すると、垂直中心軸1に沿って互いに重ねて3個、4個等、必要な数の放射器を配置する構造に原理を拡張できる。また、
図9と
図10に示す他の実施の形態では、中心軸1周りに互いに角度変位させて各セクタアンテナを配置することができる。
【0044】
図8〜
図10の実施の形態は、中心軸1に沿い重ねて配置した複数の二偏波放射器を有する単一周波数帯域アンテナをも示す。本実施の形態でも、二偏波2種周波数帯域(デュアルバンド)アンテナ又は二偏波3種周波数帯域(トリバンド)アンテナ又は一般に、二偏波複数周波数帯域(マルチバンド)アンテナとして各セクタアンテナを構成することができる。例えば、欧州特許第1082782B1号公報(国際公開第WO99/062139A1号公報に相当)から基本的に公知のように、例えば2種(又はそれ以上)の周波数帯域内で各セクタアンテナ5内の放射器を放射させるとき、駆動波長により各放射器間で異なる放射器間隔が通常選択される。これは、例えば、
図1又は
図8の実施の形態に準拠して、中心軸1に沿って離間する低周波数帯域用の2個の二偏波放射器9と、同一取付方向に変位して配置されて高周波数帯域用の3個の二偏波放射器7とを各セクタアンテナ5に設け、例えば、低周波数帯域(例えば900MHzバンド)に比較して2倍の周波数の高周波数帯域(例えば1800MHzバンド)では、低周波数帯域用の2個の二偏波放射器9の中央の中心位置に高周波数帯域用の2個の二偏波放射器7を取付け(
図1に示す)、低周波数帯域放射器と高周波数帯域放射器の中心間に高周波数帯域用の第3の二偏波放射器7を配置することができる。
【0045】
次に、基本的に互いに角度120°離間して配置されかつ他の全実施の形態と同様に、中心軸1に沿って垂直方向に互いに変位する3個のセクタアンテナ5を示す更に変形した
図11〜
図13の実施の形態について詳述する。先行実施の形態とは異なり、図示の全方向性無指向性放射器は、単一の柱状アンテナ6内のみに配置されず、2個の各柱状アンテナ6内に配置される二偏波放射器を有する3個のセクタアンテナ5を備える。また、前記先行実施の形態と基本的に同様に、好ましくは垂直中心軸1方向に互いに変位して少なくとも1個又は複数個の単一周波数帯域(モノバンド)放射器、2種周波数帯域(デュアルバンド)放射器又は一般的に複数周波数帯域(マルチバンド)放射器を各柱状アンテナ内に配置することができる。
【0046】
その場合に、各セクタアンテナ5の2個の各柱状アンテナ6に対し、同一の反射器平面13’内に反射器11の反射器壁13が配置される。各支柱(コラム)装置に設けられる対応する反射器外縁15は、中心軸1に対して横方向に配置される反射器外縁15’を含み、柱状アンテナに属する全放射器7、9の周囲に配置される反射器外縁15は、隣り合うセクタアンテナに対し減結合を形成できる。例えば、
図8又は
図11とは異なり、各柱状アンテナ6内の各放射器7又は9間に横方向に延びる反射器外縁を必要に応じて更に設けることができる。
【0047】
図11に示す変形実施の形態では、2個の柱状アンテナ6間にも中央軸方向1に延びるアンテナ外縁15”が設けられる。
【0048】
各柱状アンテナ6を通る中心長手軸間の間隔は、通常の間隔、例えば、中心駆動周波数に関するλ/2とλ間に相当する。適切値は、場合により0.65λから0.75λの間、例えば、0.7λである[単一周波数帯域(モノバンド)アンテナでは中心駆動周波数に対応し;2種周波数帯域(デュアルバンド)アンテナでは、λに基準量より低い周波数の中心周波数が利用される]。
【0049】
前記実施の形態では、垂直の各対称平面(反射器平面13’に対して垂直な)に対して2個の柱状アンテナ6を配置するので、2個の柱状アンテナ6間の正確な分離箇所又は結合箇所で、垂直中心軸1は、反射器平面13’を通過する。即ち、隣り合う柱状アンテナ6間の各垂直対称軸1は、付属の反射器平面13’に対して平行(並行)に延伸する。それにより、全方向性二偏波アンテナ全体から見て、セクタアンテナ5(2個の柱状アンテナ6内に放射器を有する)の位相中心を中心軸1内に配置し又は少なくとも近似的に中心軸1付近に配置したものとみなすことができる。
【0050】
図14〜
図16は、2個の柱状アンテナ6と、各柱状アンテナ6内に設けられる単一又は複数の放射器7,9とをそれぞれ有する3個のセクタアンテナ5を備え、
図1〜
図10に示す実施の形態と同様に、中心軸1に沿って垂直方向に重なりかつ互いに変位して3個のセクタアンテナ5を配置し、3個のセクタアンテナ5の垂直方向の3個の対称平面(各反射器平面13'に対して垂直に)を中心軸1内で交差させて柱状アンテナ6を配置した全方向性無指向性放射器の実施の形態を示す。各第2の柱状アンテナ6は、中心軸1に対して非対称にそれぞれ側方の径方向外側に変位するので、上方から見た
図15と
図16では、
図12及び
図13とはセクタアンテナ5の配置が異なる。本実施の形態でも、先行実施の形態と同様に、少なくとも1個の付加的な他の柱状アンテナ6内に放射器7,9を配置して、側方又は径方向に変位する少なくとも1個の付加的な放射器7,9を確実に設けることができる。
図11〜
図13に示す実施の形態では、
図14〜
図16の実施の形態と同様に、図示の少なくとも2個の柱状アンテナを有する各セクタアンテナ5を横方向、即ち中心軸1に対して垂直にかつ異なる位置に配置でき、必ずしも
図11〜
図13及び
図14〜
図16に示す位置のみに配置する必要はない。中心軸に対して垂直の種々の調節位置での他の異なる任意の相対位置にセクタアンテナ5を配置できる。しかしながら、少なくとも単一又は少なくとも2個の柱状アンテナを有する該当するセクタアンテナを上方から見て、常に1個、2個又は複(多)数個の柱状アンテナを有するセクタアンテナ5に対して重なる位置に中心軸1を配置することが、効果的である。
【0051】
全く同様に、例えば、他の領域内での中間位置等の中心軸1に対し水平方向の異なる位置に2個の柱状アンテナ6を配置することもできる。
【0052】
セクタアンテナ当たり複数の放射器を使用する前記実施の形態では、特に2柱状(2コラム)又は複数柱状(マルチコラム)のアンテナ配列状態(アンテナアレイ)を使用するときも、特に全方向性無指向性放射器の多入力・多出力(MIMO)性能(適応性)を実現し又は更に拡張しかつ改良できる。その場合に、改良される多入力・多出力(MIMO)性能は、極力最良の無指向性の放射特性図を確実に実現する。
【0053】
図4は、反射器11及び反射器壁13を有する必要な放射器構造体をほぼ左右対称(鏡像状)に両側に設けて、セクタアンテナの各位置で放射器数を2倍に増加できるセクタアンテナ5を示す。
図4について説明した基本構造のセクタアンテナ増加原理を全実施の形態で実現できる。
図8〜
図10に示す実施の形態の原理に相当し、
図4について説明した基本的概念を実現できる特殊性を有する実施の形態を
図17〜
図19について説明する。本実施の形態では、3箇所の各高さ領域にて角度180°方向に変位して互いに逆方向に向くほぼ2倍のセクタアンテナ5を設け、1個、2個又は3個以上の柱状アンテナ内に単一又は複数の単一周波数帯域放射器又は多周波数帯域放射器を設ける2倍数の放射器装置が得られるが、二偏波放射器又は環状偏波放射器を使用するとき、常に柱状アンテナ内に前記放射器を設けることができる。
【0054】
前記のように、少なくとも中心軸1に沿い通常垂直にかつ互いに連続して配置される全コラムアンテナの位相中心を中心軸1内に一致させ又は少なくとも中心軸1の近傍に配置した基本的アンテナ構造が設けられる。その場合、反射器壁13の反射器平面13’内に位相中心が通常配置される。上方から見て、中心軸1に沿い反射器11と反射器壁13とが少なくとも部分的に重なりかつ交差して、中心軸1周りに各セクタアンテナの反射器11が通常配置される。従来の無指向性放射アンテナ装置は、上方から見て三角形断面の放射器9を垂直に積み重ねる(二等辺三角形の辺に反射器平面を配置した)構造を有するが、何れにしても、位相中心と中心軸1との間隔は、従来の無指向性放射アンテナ装置の各反射器平面13’、反射器壁13及び中心軸xと位相中心との間の通常の間隔より小さく、その間隔の半分より大きいことが明らかに好ましい。
【0055】
従って、本発明の技術的範囲内では、各柱状アンテナ6の横幅(コラム幅)Bの15%より小さく、特に10%、8%、6%、5%、4%、3%、2%より小さく、かつ特に1%よりも小さい中心軸1からの径方向距離(間隔)で、反射器壁13又は各反射器平面13’を配置すること好ましい(
図1、
図8又は
図11)。
【0056】
前記実施の形態は、各セクタアンテナ5の反射器11の反射器壁13の各反射器平面13’ 内に中心軸1を配置する構造を全て備える。しかしながら、中心軸から離間する径方向間隔をもって変位して各セクタアンテナの反射器11と反射器壁を配置してもよく、それにより、中心軸からの離間間隔が過度に大きくなければ、尚本発明に基づく利点を常に実現することができる。従って、柱状アンテナ6の横幅Bの15%より小さく、特に10%、8%、6%、5%、4%、3%、2%よりも小さく、かつ特に1%より小さい中心軸からの反射器壁13又は各反射器平面13’の離間間隔が好ましい。
【0057】
前記主旨により、中心軸1からの小さい径方向変位で配置した各反射器平面13’の配置状態を
図20に示す。この種の配置形式では、特に、異なる高さ位置に配置した3個のセクタアンテナ間に上方から見て自由空間が形成され、例えば、中心軸1によって貫通されるアンテナ塔を自由空間内に配置する構造が得られる。
【0058】
図21は、負方向に変位して配置した各セクタアンテナを示す。反射器壁13の関連する反射器平面13’は、反射器外縁を貫通する中心軸1から変位して配置される。換言すると、反射器平面13’の放射器7及び/又は放射器9側に中心軸1が配置される(
図20の実施の形態では、放射器7/9とは逆の反射器壁13の背面側に中心軸1が延伸する)。
【0059】
本発明を十分に理解するため、中心軸周りに角度120°離間してかつ同一の高さ位置に3個のセクタアンテナ5を配置する従来のアンテナの軸方向平面を
図22に示す。中心軸1から大きな間隔で反射器壁を配置する
図22の構造では、セクタアンテナ及び特にその反射器11又は反射器壁13は、上方から見て重ならず又は交差もしない。
【0060】
各放射器5又は指向性アンテナ5、即ち単一又は複数のセクタアンテナ5の最適減結合化構造を実現するため、反射器壁13又は反射器11全体の反射器平面13’に対し、反射器外縁15又は15’は、横方向かつ垂直に延伸する。モノバンド放射器の中心周波数をλとすると、0.05λよりも大きい反射器外縁高さRを反射器外縁15又は15’に付与することが好ましい。2種周波数帯域(デュアルバンド)放射器装置又は多種周波数帯域(マルチバンド)放射器装置では、λは、最低周波数帯域の中心周波数である。反射器平面13’に対する反射器11の側壁又は側外縁15、15’の高さ又は幅Rは、通常反射器平面13’からの放射器7の高さ又は幅H1より高くなくかつ反射器平面13’からの放射器9の高さH2より高くてもいけない(
図4)。
【0061】
換言すれば、図示の実施の形態では、反射器外縁15,15’と15”の反射器外縁高さRは、
図2又は
図4から明らかなように、低い周波数帯域用の二偏波又は垂直偏波のダイポール放射器又はベクトル放射器9の高さ又は幅H2よりも小さくかつより高い周波数帯域用の更に高く形成される二偏波又は垂直偏波のダイポール放射器又はベクトル放射器7の高さH1よりも更に低い。
【0062】
前記実施の形態では、各給電システムの詳細な説明を省略する。互いに垂直の2種偏波平面に対しかつ単一又は複数の周波数帯域に対し、同軸ケーブルを介して対応する放射器とアンテナに通常個別に給電される。同様に、共通に給電される電力周波数を分割若しくは分岐し又は集約若しくは重ねる電力結合器/電力分配器も、使用することができる。その意味では、既知の解決法を参考にして、同様にセクタアンテナ5の多入力・多出力(MIMO)駆動を実現することができよう。
【0063】
また、給電ネットワークを介して、前記無指向性放射器に属しかつ専ら偏波で放射又は受信するセクタアンテナ(送受信領域を扇型に区切るアンテナ)を相互に接続できる[本明細書は、扇型送受信(セクタ)駆動には該当しない]ことを付言する。セクタアンテナに対し、互いに垂直の二偏波平面内で送信及び/又は受信する放射器を設けるとき、給電ネットワークを介して、共通の偏波平面(例えば、水平に対し+45°又は−45°方向)内で駆動する全放射器を相互に接続することができる。
【符号の説明】
【0064】
(1)・・中心軸、 (5)・・セクタアンテナ、 (6)・・柱状アンテナ、 (7,9)・・二偏波放射器、 (11)・・反射器、 (13)・・反射器壁、 (13’)・・反射器平面、 (15,15’,15”)・・反射器外縁、