(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6014775
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月25日
(54)【発明の名称】ガスタービンエンジンサンプのための圧送オイルドレイン
(51)【国際特許分類】
F01D 25/16 20060101AFI20161011BHJP
F01D 25/20 20060101ALI20161011BHJP
F02C 7/06 20060101ALI20161011BHJP
F02C 7/28 20060101ALI20161011BHJP
【FI】
F01D25/16 E
F01D25/16 J
F01D25/20 B
F02C7/06 D
F02C7/28 Z
【請求項の数】16
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-547459(P2015-547459)
(86)(22)【出願日】2013年12月10日
(65)【公表番号】特表2016-503137(P2016-503137A)
(43)【公表日】2016年2月1日
(86)【国際出願番号】US2013074019
(87)【国際公開番号】WO2014093286
(87)【国際公開日】20140619
【審査請求日】2015年7月31日
(31)【優先権主張番号】61/737,396
(32)【優先日】2012年12月14日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390041542
【氏名又は名称】ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ
(74)【代理人】
【識別番号】100137545
【弁理士】
【氏名又は名称】荒川 聡志
(74)【代理人】
【識別番号】100105588
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 博
(74)【代理人】
【識別番号】100129779
【弁理士】
【氏名又は名称】黒川 俊久
(74)【代理人】
【識別番号】100113974
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 拓人
(72)【発明者】
【氏名】ドゥ,ケビン・マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ジョーンズ,キース・ロイド
【審査官】
瀬戸 康平
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第06330790(US,B1)
【文献】
特開昭62−298625(JP,A)
【文献】
特開昭61−040429(JP,A)
【文献】
特開昭57−086527(JP,A)
【文献】
特開平10−077857(JP,A)
【文献】
実開昭61−142140(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01D 25/00
F01M 11/02,11/06
F02C 7/06, 7/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスタービンエンジンのための圧送オイルドレインであって、
シャフト軸受(37)用のオイルサンプ(48)と、
前記オイルサンプと流れ連通し、故障状態において使用する通路(60)と、
前記通路と大気状態(65)との間の圧力差と、
前記通路の下側位置付近に配置されたドレイン部(62)と、
前記ドレイン部に隣接し、エンジン中心線の極端な姿勢角に等しいかそれよりも大きい予め選択された角度で配置される壁(66)と、
前記ドレイン部の上流側に特徴部(64)と、
を備え、前記特徴部が、前記通路内に延びて前記オイルプールの生成を助け、前記ドレイン部の位置と前記壁によって、前記極端な姿勢角において前記ドレイン部を覆うようなオイルプールの形成が可能となる、圧送オイルドレイン。
【請求項2】
前記特徴部が空気シール又はオイルシールである、請求項1に記載の圧送オイルドレイン。
【請求項3】
前記特徴部が、故障又はオーバーフロー状態の間のオイルの逆流を阻止する、請求項1または2に記載の圧送オイルドレイン。
【請求項4】
前記特徴部が、前記極端な姿勢角において前記ドレイン部よりも垂直方向でより高く配置されている、請求項1乃至3のいずれかに記載の圧送オイルドレイン。
【請求項5】
前記ドレイン部が、前記極端な姿勢角において前記特徴部よりも垂直方向でより低く配置されている、請求項1乃至3のいずれかに記載の圧送オイルドレイン。
【請求項6】
ガスタービンエンジンのための圧送オイルドレインであって、
シャフト軸受(37)用のオイルサンプ(48)と、
前記オイルサンプと流れ連通し、故障状態において使用する通路(60)と、
前記通路と大気状態(65)との間の圧力差と、
前記通路の下側位置付近に配置されたドレイン部(62)と、
前記ドレイン部に隣接し、エンジン中心線の極端な姿勢角に等しいかそれよりも大きい予め選択された角度で配置される壁(66)と、
を備え、前記ドレイン部の位置と前記壁によって、前記極端な姿勢角において前記ドレイン部を覆うようなオイルプールの形成が可能となり、
前記オイルプールは、前記圧力差によりオイルを高さ方向で押し上げることを可能にする、圧送オイルドレイン。
【請求項7】
ガスタービンエンジンのための圧送オイルドレインであって、
シャフト軸受(37)用のオイルサンプ(48)と、
前記オイルサンプと流れ連通し、故障状態において使用する通路(60)と、
前記通路と大気状態(65)との間の圧力差と、
前記通路の下側位置付近に配置されたドレイン部(62)と、
前記ドレイン部に隣接し、エンジン中心線の極端な姿勢角に等しいかそれよりも大きい予め選択された角度で配置される壁(66)と、
実質的に一定の断面積の下流側通路と、
を備え、前記ドレイン部の位置と前記壁によって、前記極端な姿勢角において前記ドレイン部を覆うようなオイルプールの形成が可能となり、
前記オイルプールは、前記極端な姿勢角にあるときに前記圧力差によりオイルを前記ドレイン部から前記下流側通路を通って上方に移動させるようにする、
圧送オイルドレイン。
【請求項8】
前記下流側通路と流れ連通した取付具を更に備える、請求項7に記載の圧送オイルドレイン。
【請求項9】
前記オイルプールが前記ドレイン部を浸漬する、請求項7または8に記載の圧送オイルドレイン。
【請求項10】
前記極端な姿勢角が少なくとも30°(度)である、請求項1乃至9のいずれかに記載の圧送オイルドレイン。
【請求項11】
前記通路が前記サンプからのオーバーフローオイルを受け取る、請求項1乃至10のいずれかに記載の圧送オイルドレイン。
【請求項12】
ガスタービンエンジン(10)のための圧送オイルドレインであって、
オイルサンプ(48)及び該オイルサンプと選択的に流れ連通した通路(60、63)と、
前記サンプの一方の端部に位置付けられるオイルシールと、
を備え、前記通路がドレイン部(62)と流れ連通し、前記通路が加圧されて前記通路と環境大気(65)との間に圧力差を生成し、前記ドレイン部が、前記タービンエンジンが極端な姿勢角にて配置されたときに通路特徴部(64)の下方の高さに配置され、前記通路(63)が、前記極端な姿勢角にあるときに上方に延びる、圧送オイルドレイン。
【請求項13】
上方に延びる前記通路が、前記ドレイン部の下流側にある、請求項12に記載の圧送オイルドレイン。
【請求項14】
前記通路特徴部が前記ドレイン部の半径方向内向きに配置される、請求項12または13に記載の圧送オイルドレイン。
【請求項15】
前記通路特徴部がシールである、請求項12乃至14のいずれかに記載の圧送オイルドレイン。
【請求項16】
ガスタービンエンジン(10)のための圧送オイルドレインであって、
オイルサンプ(48)と、
前記オイルサンプにオイルを保持する少なくとも1つのシール(50)と、
前記オイルサンプとオーバーフローで流れ連通し、加圧状態にあるドレイン通路(60)と、
前記ドレイン通路の下側位置に配置されたドレイン部(62)と、
前記ドレイン部に隣接した通路壁及びシール故障時に前記オイルのプールを生成する特徴部(64)と、
を備え、極端な姿勢位置における前記ドレイン部、前記通路、及び前記特徴部の幾何形状によって、前記圧力が前記オイルを前記ドレイン部から該ドレイン部の下流側の通路部分を通じて上方に移動させるようにする、圧送オイルドレイン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示される実施形態は、全体的に、ガスタービンエンジンに関する。より詳細には、本発明の実施形態は、限定ではないが、ガスタービンエンジンサンプのためのドレインに関する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービンエンジンにおいて、典型的なガスタービンエンジンは、一般に、前方端部と後方端部とを有し、これらの間に複数のコア又は推進構成要素が軸方向に続いている。空気入口又は吸気口は、エンジンの前方端部にある。後方端部に向かって移動すると、順番に、吸気口の後に、圧縮機、燃焼室、タービン、及びエンジンの後方端部にてノズルが続く。例えば、低圧及び高圧圧縮機並びに高圧及び低圧タービンなど、追加の構成要素をエンジンに含めることができることは当業者であれば容易に理解されるであろう。しかしながら、これは網羅的な記載ではない。エンジンはまた、典型的には、エンジンの中心長手方向軸線を通って軸方向に配置された内部シャフトを有する。内部シャフトは、タービン及び空気圧縮機の両方に接続され、タービンが空気圧縮機に回転入力を提供して圧縮機ブレードを駆動するようにする。
【0003】
作動時には、空気は、圧縮機において加圧され、燃焼器内で燃料と混合されて高温燃焼ガスを発生し、該燃焼ガスは、タービン段を通って下流側に流れる。これらのタービン段は、燃焼ガスからエネルギーを取り出す。最初に、高圧タービンが燃焼器から高温燃焼ガスを受け取り、該高圧タービンは、支持ロータディスクから半径方向外向きに延びる高圧タービンロータブレードの列を通って燃焼ガスを下流側に配向するステータノズル組立体を含む。2段タービンにおいて、第2段タービンステータノズル組立体は、第1段ブレードの下流側に位置付けられ、その後に第2の支持ロータディスクから半径方向外向きに延びる第2段ロータブレードの列が続く。タービンは、燃焼ガスエネルギーを機械エネルギーに変換する。
【0004】
公知のタービンエンジンにおいて、ロータシャフトは通常、後方軸受組立体を利用することにより回転が支持される。これらの軸受組立体は、別個のオイルサンプシステムを使用することにより潤滑及び冷却される。
【0005】
航空機産業にて利用されるガスタービンエンジンは、重量を軽減することが常に望ましい。このような重量軽減により、エンジンが高効率となり、事業社のコスト節減がより効率的になる。また、タービンエンジンの部品点数を削減することが望ましく、これにより製造容易性が向上し、上述の効率上の側面が改善される。特定のエンジン設計では、フレーム部材又はストラット特徴要素を取り除くことによりエンジン重量を低減している。しかしながら、しかしながら、重量低減の目標を達成する一方で、エンジンを通るオイル配送に影響を及ぼす変化もある。
【0006】
より具体的には、極端な姿勢角又は位置(例えば、上昇状態)は、他の場合では重力ドレインによるオイルの流れに影響を及ぼす可能性がある。オイル配管のより長い軸方向に延びる経路が問題となる可能性がある。軸受サンプシールの故障状態では、ドレインは、軸受サンプからオイルが移動され及び除去される。故障が発生して飛行機が極端な姿勢位置にある場合には、ドレイン経路の一部では、経路、管体又は取付具を通じて垂直方向にオイルを移動させることが必要となる場合がある。標高に起因してオイルが上方に移動できないときには、オイルが高温領域にオーバーフローし、タービンエンジンの構成要素の発火又はコーキングを生じる恐れがある。
【0007】
上記のことから分かるように、ガスタービンエンジンに伴うこれら及び他の欠点を克服することが望ましいことになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】日本国特許公開H10−77857号公報
【発明の概要】
【0009】
少なくとも一部の実施形態によれば、加圧空気を利用してオイルを通路に移動させるようにするオイルサンプドレインが提供される。
【0010】
少なくとも一部の実施形態によれば、加圧空気は、航空機エンジンが上昇姿勢状態にあるときにオイルの上向きの高度変化を引き起こす。
【0011】
更に別の実施形態によれば、特徴部が通路において利用されてドレインにてオイルプールを生成し、加圧空気よりオイルをドレインに通して、上向きの高度変化を引き起こすことができるようになる。
【0012】
上記で概説した特徴の全ては、単に例証として理解すべきであり、本発明のより多くの特徴及び対象物が、本明細書の開示から得ることができる。従って、この発明の概要の非限定的な解釈は、本明細書、請求項、これらと共に含まれる図面全体をより詳細に読むことなく理解されるはずである。
【0013】
以下の図において本発明の実施形態が示されている。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図3】低圧タービンサンプハウジング組立体の斜視図。
【
図4】低圧タービンサンプハウジング組立体の底面図。
【
図5】低圧タービンサンプハウジング組立体のオイル排出部の側断面図。
【
図6】低圧タービンサンプハウジング組立体のドレインの側断面図。
【
図7】上昇姿勢状態にある低圧タービンサンプハウジングドレインの側面図。
【
図8】低圧タービンサンプドレインの代替の実施形態の側面図。
【
図9】
図8の低圧タービンサンプドレインの後方から前方を見た図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、その1つ又はそれ以上の実施例を図面に示している提供される実施形態について詳細に説明する。各実施例は、例証として提供され、開示される実施形態の限定ではない。実際に、本開示の範囲又は技術的思想から逸脱することなく、種々の修正形態及び変形形態を本実施形態において実施できることは、当業者であれば理解されるであろう。例えば、1つの実施形態の一部として例示され又は説明される特徴は、別の実施形態と共に使用して更に別の実施形態を得ることができる。従って、本発明は、このような修正形態及び変形形態を添付の請求項及びその均等物の範囲内にあるものとして保護することが意図される。
【0016】
図1〜9を参照すると、ガスタービンエンジンのための圧送オイルドレインの種々の実施形態が図示され記載されている。オイルのためのドレイン及び経路は、オイルの貯留を生成してドレインを完全に浸漬するように形成される。この完全な浸漬に起因して、経路内の加圧空気によって、オイルがドレインを通り、次いで高さ方向で上向きにドレインの下流側にある経路、配管、管路、又は同様のものを通って大気に流れるようになる。
【0017】
本明細書で使用される用語「軸方向」又は「軸方向に」とは、エンジンの長手方向軸線に沿った寸法を意味する。「軸方向」又は「軸方向に」と併せて使用される用語「前方」とは、エンジン入口に向かう方向に移動していること、又はある構成要素が別の構成要素と比較してエンジン入口により近接していることを意味する。「軸方向」又は「軸方向に」と併せて使用される用語「後方」とは、エンジンの排気ノズルに向かう方向に移動していること、又はある構成要素が別の構成要素と比較してエンジンの排気ノズルにより近接していることを意味する。
【0018】
本明細書で使用される用語「半径方向」又は「半径方向に」とは、エンジンの長手方向軸線とエンジン外周との間に延びる寸法を意味する。単独で又は用語「半径方向」又は「半径方向に」と併せて使用される用語「近位方向」又は「近位方向に」とは、中心長手方向軸線に向かう方向に移動していること、又はある構成要素が別の構成要素と比較して中心長手方向軸線により近接していることを意味する。単独で又は用語「半径方向」又は「半径方向に」と併せて使用される用語「遠位方向」又は「遠位方向に」とは、エンジン外周に向かう方向に移動していること、又はある構成要素が別の構成要素と比較してエンジン外周により近接していることを意味する。
【0019】
本明細書で使用される用語「横方向」又は「横方向に」とは、軸方向寸法と半径方向寸法の両方に垂直な寸法を意味する。
【0020】
最初に
図1を参照すると、エンジン入口端部12を有するガスタービンエンジン10の概略側断面図が示され、ここで、圧縮機14、燃焼器16、及び多段高圧タービン20によって全体的に定められるプロパルサー13に空気が流入する。全体として、プロパルサー13は、運転中に推力又は出力を提供する。ガスタービン10は、航空機、発電、産業、船舶、又は同様のものに用いることができる。
【0021】
作動時には、空気がエンジン10の空気入口12を通って流入し、少なくとも1つの圧縮段を移動して、ここで空気圧が増大して燃焼器16に送られる。加圧空気が燃料と混合され燃焼して高温の燃焼ガスをもたらし、該燃焼ガスが、燃焼器16から高圧タービン20に向けて流出する。高圧タービン20において、高温燃焼ガスからエネルギーが取り出されてタービンブレードの回転を生じさせ、その結果、シャフト24の回転が生じる。シャフト24は、エンジンの前方に向けて通過し、タービン設計に応じて、1又はそれ以上の圧縮機段14、ターボファン18又は入口ファンブレードの回転を継続させる。ターボファン18は、シャフト28を介して低圧タービン21に接続され、タービンエンジン10に対する推力を生成する。低圧タービン21はまた、更なるエネルギー抽出及び追加の圧縮機段への動力供給に利用することができる。低圧空気を用いて、エンジンの構成要素の冷却を支援することもできる。
【0022】
ガスタービン10は、エンジン軸線26又はシャフト24の周りに軸対称であり、種々のエンジン構成要素がその周りを回転するようになる。軸対称シャフト24は、タービンエンジン前端を通って後端に延び、シャフト構造の長さに沿って軸受によりジャーナル接続されて、エンジン10の中心線26の周りを回転する。シャフト24は、シャフト24の回転とは独立した内部にある低圧タービンシャフト28の回転を可能にするよう中空とすることができる。シャフト28はまた、エンジンの中心軸線26の周りを回転することができる。作動中、シャフトは、タービンのロータ組立体のような、シャフトに接続された他の構造体と共に回転し、発電及び産業又は航空機の使用分野において使用される種々のタイプのタービンに対する出力又は推力を生成する。シャフト24は、これらの軸受によって支持され、該軸受は、高速回転中に部品を冷却するためにオイルサンプ中で作動する。
【0023】
ここで
図2を参照すると、高圧タービン20と低圧タービン21との間の接合部付近のエンジンタービンの側断面図が示されている。低圧タービン21の前端に隣接して、タービン中心フレーム又はタービン中間フレーム40がある。サンプハウジング組立体42は、タービン中心フレーム40の後方に配置される。サンプ組立体42は、中心フレーム40から図で見て後方向の斜め上方に延びる。
【0024】
軸受37と対応する軸受サンプ39とを有する高圧タービン20が示されている。軸受37は、高圧シャフト24(
図1)の回転と、軸受37の冷却をそれぞれ提供する。
【0025】
低圧タービン21は、翼形部34がその上で回転する複数のディスク32を含む。翼形部間には固定ステータ36がある。ディスク32及び翼形部34は、低圧シャフト46と共に回転する。翼形部34は、固定ステータ36が燃焼ガスを転回している間に燃焼ガスからエネルギーを抽出し、各後続の翼形部34においてエネルギーの抽出が最大となる。
【0026】
低圧タービン21用の軸受44が、サンプ組立体42の上端付近で低圧タービンディスク32の上に図示される。軸受は、エンジン10の運転中に低圧シャフト46の回転を可能にする。軸受44は、冷却潤滑を軸受44に提供するようオイルサンプ48内で作動する。
【0027】
上述のように、例示的なタービンエンジンのタービン後方フレーム又はストラットが排除されることで、サンプ48円錐体が前方に延びて、タービン中心フレーム40に対する支持接続部が形成されることになる。結果として、オイル通路として前方に向けられた通路は、オイルを出口フレームストラット40に前方に移動させるようより長くなっている。更に説明するように、エンジンが極端な上昇姿勢位置にあるときに水平方向経路がより長くなっており、これは本明細書で記載される実施形態の構築の1つの理由である。
【0028】
オイルサンプ48は、回転シール52及び固定シール54を有するオイルシール組立体50を含む。シール50の故障又はサンプ48のオーバーフロー状態の間、一部のオイルは、目的とする機能と相反して、オイルシール組立体50を通過して、通路60内に移動する可能性がある。通路60は、その下端部付近にドレイン62を有し、図示されている。通路60及びドレイン62は、エンジンから出てフレームストラット40を通って大気にまで延びた配管又は他の通路と流れ連通している。通路60、ドレイン62、及び下流側通路63は、取付具70と流れ連通している。
【0029】
また、特徴部64が、オイルシール組立体50の下流側の通路60に配置される。本発明の例示の実施形態における特徴部64は、回転シール及び固定シールとの空気シールである。しかしながら、他の特徴部を異なる機能を有して利用してもよい。本発明の実施形態の特徴部64は、軸受オイルサンプ48付近を通る冷却空気の漏洩物が、タービンを通って移動する高温の空気と混合するのを阻止する。シール64はまた、オイルがエンジンのタービン側部を通過して発火するのを阻止する。特徴部64はまた、通路60内の故障又はオーバーフロー状態の間にオイルの逆流を阻止し、オイルがドレイン62において貯留されるようにする。更に説明するように、オイルがドレイン62において貯留されるときには、航空機が極端な上昇状態にあるときに、圧力差を利用してオイルをドレイン通路63に通して上方に移動させるようにすることができる。
【0030】
ここで
図3を参照すると、サンプ組立体42が斜視図で示されている。組立体42は、第1の又は前方端部45と、第2の又は後方端部47とを含む。多段タービンのようなコア構成要素が、組立体42の中空内部及びそこに配置されるサンプ48を通過する。組立体42の内部には、取付具70との流れ連通を提供するドレインアパーチャ62が示されている。取付具72は、オイルをサンプ48に循環させる排出システムと流れ連通している。取付具70は、上述のドレイン62と流れ連通しており、オーバーフロー又は故障状態の間、オイルサンプシール50が漏洩している状況で利用される。取付具70により、ドレイン62が作動状態の間に
図2に示すようにオイルを大気65に排出することが可能となる。
【0031】
図4を参照すると、サンプ組立体42の底面図が示される。通路60は、取付具70につながっている下流側ドレイン通路63と共に描かれている。この図は、ドレイン62の下流側の通路又は経路の水平方向長さを描いている。水平姿勢又は下降姿勢では、オイルは、オイルシール組立体50(
図2)にて故障又はオーバーフロー状態で重力送給により通路60を通って流れることになる。しかしながら、上昇状態では、オイルシール組立体50を通過するオイルは、重力送給により排出することができない。このことは、大気に排出する前に上昇状態で通路63が上向きの垂直方向距離を延びていることに起因する。この向きでは重力送給は不可能である。
【0032】
ここで
図5を参照すると、後方軸受サンプ48とサンプ組立体42の関連する部分の詳細な断面図が示されている。軸受44は、サンプ48内に示され、回転シール52並びに低圧シャフト46及び低圧ディスク(
図2)などの関連の構成要素及び接続される翼形部36の回転を可能にする。オイルシール組立体50は、サンプ48内に配置されるオイルを貯留し、通常の運転状態でオイルが通路60内に移動するのを阻止する。しかしながら、運転中、サンプシール50の故障経路のうちの1つは、回転シール部分52と固定シール部分54との間にある。従って、故障状態において、オイルシール50は、オイルを通路60内に逃がすのを可能にすることができる。ドレイン62は、通路60の下側部分に配置される。通路63は、
図3及び4に示すように軸方向前方に転回して、組立体42の前方端部に向かって取付具70に延びている。
図5の断面図において、サンプのドレインはまた、排出管路72(
図3)として図示され、これは、オイルサンプ48からオイルを循環させる一次手段である
ここで
図6を参照すると、再度、取付具72及び関連の排出構成要素が取り除かれるように通路60を通る断面図で組立体42が示される。通路は、壁66により形成されて、角度θで延びる。本発明の実施形態の設計によれば、壁の角度は少なくとも約30°であり、例えば、約40°とすることができる。この角度は、エンジン10の試験を行う極端な姿勢位置によって定められる。極端な姿勢位置は、エンジン軸線26の軸方向中心線の上昇角度である。この上昇の極端な姿勢角又は位置では、壁66は水平方向の傾斜面以上である。加えて、この位置では、ドレイン62は、依然として特徴部64の真下に垂直方向に配置される。通路63はまた、一定の断面積とすることができる。故障状態では、オイルは、オイルシール50を越えて漏洩することになる。故障状態は、排出システムの故障によりシール組立体5おのオーバーフローが生じるか又はシール50が故障し、ドレイン通路60内へのオイルの通過が可能となったときに生じる可能性がある。次いで、オイルは、特徴部64(例えば、図示の空気シール)を越えてドレイン62に移動する。ドレイン62を越えると、通路63は、サンプ組立体42内で水平方向前方に転回する。しかしながら、極端な姿勢角又は位置では、通路63は、垂直方向上向きに転回するので、オイルを大気に重力送給することはできない。
【0033】
図7に示すように、エンジンは、極端な姿勢状態まで回転している。このような極端な上昇姿勢では、オイルは、通路60、ドレイン62、及び幾らか垂直方向上向きに延びる通路63を通過しなくてはならない。通路60と大気との間の圧力差を利用するために、ドレイン62及びその後の通路63は、空気が通過可能であってはならず、そうでなければ、オイルを極端な上昇姿勢の間に通路63を通って上向きに送り込めないことになる。オイルは、ドレイン62の上方の区域に貯留され、空気圧力がオイルをバイパスしてドレイン62の下流側の通路60を通って流出しないように、ドレインを完全に覆う必要がある。オイルは、一般に、ドレイン62付近の水平ラインOで描かれている。従って、通路60の幾何学的形状は、極端な姿勢角又は位置においてオイルがドレインを完全に覆うように設計される。これが生じると、通路60内の空気圧は、ドレイン62を通って、下流側の通路63を通り取付具70に上向きにオイルを送り込む。冷却空気と通路60及び大気64との間の圧力差により、オイルが通路63から外の大気に押し出される。しかしながら、この設計では、オイルがドレインアパーチャ62を完全に覆っていることが必要とされ且つ維持される。
【0034】
加えて、特徴部64は、極端な姿勢角又は位置においてドレインアパーチャ62の垂直方向上方に配置される。特徴部(例えば、シール)は、その主要機能を実施するだけでなく、オイルがドレイン62から離れて後方に流動するのを阻止するのに役立つ。オイルのこのような逆流はまた、ドレイン62の浸漬を妨げることになる。ドレインの浸漬により、空気圧力によってオイルが重力に抗して通路63を通過できるようになる。このことはまた、ドレイン62を覆うオイルの貯留を助け、圧力によってオイルが通路60を上方に通って大気に押し出されるのを可能にする。
【0035】
次に
図8を参照すると、軸受サンプの断面図が示されている。この図は、壁66に沿った通路60及びドレイン62を通るオイルの送給に関する改良された図を示す。故障又はオーバーフロー状態において、オイルは、通路60を通って移動し、エンジン10が極端な姿勢角にあるときにドレイン62の周りで貯留し又はドレイン62を浸漬する。しかしながら、依然として特徴部64は、貯留の生成を助け、極端な状態においてドレイン62の上方にある。ドレイン62が浸漬されると、オイルはドレイン通路63を通って上方に強制移動される。しかしながら、
図8に示すように、オイルは通路63を通って移動し、この通路は、極端な姿勢状態において上方に向けられている。
【0036】
次に
図9を参照すると、後方から前方を見たときの組立体42の断面図が示されている。この図は、組立体42を通る円周方向のオイルの移動を示している。チャンネル67が組立体42を貫通して延びて、下流側通路63の一部を定める。チャンネルは、取付具70(
図3)に向かうオイルの移動を可能にする。
【0037】
一部の実施形態によれば、ガスタービンエンジンのための圧送オイルドレインは、シャフト軸受用のオイルサンプと、オイルサンプと流れ連通し、故障状態において使用する通路と、通路と大気状態との間の圧力差と、通路の下側位置付近に配置されたドレイン部と、ドレイン部に隣接し且つエンジン中心線の極端な姿勢角に等しいかそれよりも大きい予め選択された角度で配置される壁と、を含む。圧送オイルドレインは更に、ドレイン部の上流側に特徴部を更に備えることができる。特徴部は、例えば、空気シール又はオイルとすることができる。特徴部は、極端な姿勢角においてドレイン部よりも垂直方向でより高く配置することができる。通路は、サンプからのオーバーフローオイルを受け取る。上記圧送オイルドレインでは、ドレイン部の位置によって、ドレイン部を覆うようなオイルプールの形成が可能となる。オイルプールは、圧力差によりオイルを高さ方向で押し上げることを可能にする。圧送オイルドレインは更に、ドレイン部の下流側にあるドレイン通路を備え、該ドレイン通路は実質的に一定の断面積である。
【0038】
別の実施形態によれば、ガスタービンエンジンのための圧送オイルドレインは、オイルサンプと、少なくとも1つのシールと、オイルサンプと流れ連通した加圧状態にあるドレイン通路と、ドレイン通路の下側位置に配置されたドレイン部と、ドレイン部に隣接しシール故障時にオイルのプールを生成する通路壁と、を備え、極端な姿勢位置におけるドレイン部及び通路の幾何形状によって、圧力がオイルをドレイン部から該ドレイン部の下流側の通路を通じて上方に移動させるようにする。この圧送オイルドレインにおいて、通路壁は、極端な姿勢角に等しいかそれよりも大きい角度で配置される。この圧送オイルドレインにおいて、極端な姿勢角は少なくとも30°(度)である。この圧送オイルドレインにおいて、ドレインは、極端な姿勢角において通路特徴部よりも垂直方向でより低く配置されている。圧送オイルドレインは更に、ドレインを完全に覆うオイルのプールを備える。この圧送オイルドレインにおいて、圧力により、オイルがドレインを通って移動する。この圧送オイルドレインにおいて、特徴部は、通路壁から延びている。この圧送オイルドレインにおいて、特徴部は、オイルシール又は空気シールである。この圧送オイルドレインにおいて、特徴部は、極端な姿勢角においてドレイン部の上方に配置されている。
【0039】
更に別の実施形態によれば、ガスタービンエンジンのための圧送オイルドレインは、オイルサンプ及び該オイルサンプと選択的に流れ連通した通路と、サンプの一方の端部に位置付けられるオイルシールと、を備え、通路がドレイン部と流れ連通し、通路は、加圧されて通路と環境大気との間に圧力差を生成し、ドレイン部が、タービンエンジンが極端な姿勢角にて配置されたときに通路特徴部の下方の高さに配置され、通路は、極端な姿勢角にあるときに上方に延びる。
【0040】
構造及び方法に関する上述の記載は、説明の目的で提示されている。この説明は、本発明を網羅すること、又は本発明を開示された厳密なステップ及び/又は形態に限定することを意図したものではなく、上述の教示に照らして多くの修正形態及び変形形態が実施可能であることは明らかである。本明細書で記載される特徴要素は、どのようにも組み合わせることができる。本明細書で記載される方法のステップは、物理的に実施可能なあらゆる順序で実施することができる。オイルドレインの特定の形態を例証及び説明してきたが、これに限定されるものではなく、添付の請求項によってのみ限定されることは理解される。
【0041】
本発明の複数の実施形態を本明細書で説明し例示してきたが、当業者であれば、本明細書で記載される機能を実施し及び/又は本明細書で記載される結果及び/又は利点のうちの1又はそれ以上を得るために他の様々な手段及び/又は構造が想定され、このような変形及び/又は修正形態の各々は、本明細書で記載される実施形態の範囲内にあるとみなされる。より一般的には、本明細書で記載される全てのパラメータ、寸法、材料、及び構成は例証を意味しており、実際のパラメータ、寸法、材料、及び構成は、本発明の教示が利用される1又は複数の特定の用途によって決まることになることは当業者には容易に理解されるであろう。当業者であれば、単に通常の実験を利用して本明細書に記載される本発明の特定の実施形態に対する多くの均等物を認識又は確認することができるであろう。従って、上記の実施形態は単に例証として提示されており、本発明の実施形態は、添付の特許請求の範囲及びその均等物の範囲内で、具体的に記載され特許請求されたものとは別の方法で実施できることを理解すべきである。本開示の発明の実施形態は、本明細書に記載される個々の特徴、システム、製品、材料、キット及び/又は方法に向けられている。これに加えて、このような特徴、システム、製品、材料、キット及び/又は方法が互いに矛盾していない場合、2つ以上のこのような特徴、システム、製品、材料、キット及び/又は方法の何れかの組み合わせは、本開示の発明の範囲内に含まれる。
【0042】
最良の形態を含む実施例を用いて実施形態を開示し、更に、あらゆる当業者があらゆるデバイス又はシステムを実施及び利用すること及びあらゆる包含の方法を実施することを含む、本発明の装置及び/又は方法を実施することを可能にする。これらの実施例は、網羅的なものではなく、或いは、開示された厳密なステップ及び/又は形態に本開示を限定することを意図するものではなく、上述の教示に照らして多くの修正形態及び変形形態が実施可能である。本明細書で記載される特徴要素は、どのようにも組み合わせることができる。本明細書で記載される方法のステップは、物理的に実施可能なあらゆる順序で実施することができる。
【0043】
本明細書で定義され使用される全ての定義は、辞書の定義、引用により組み込まれる文献における定義、及び/又は定義される用語の通常の意味に対して規定していると理解すべきである。本明細書及び特許請求の範囲において使用される不定冠詞「a」及び「an」は、明示的にそうでないことを示していない限り、「少なくとも1つ」を意味するものと理解されたい。本明細書及び特許請求の範囲において使用される表現「及び/又は」は、そのように結合された要素の「何れか又は両方」、すなわちある場合では結合的に存在し、他の場合では選言的に存在する要素を意味するものと理解すべきである。
【0044】
また、そうでないと明確に示されていない限り、1つよりも多いステップ又は行為を含む請求項に記載される何れの方法においても、本方法のステップ又は行為の順番は、方法のステップ又は行為が記載される順番に必ずしも限定されない点を理解されたい。
【0045】
請求項並びに上述の明細書において、「備える」、「含む」、「担持する」、「有する」、「包含する」、「伴う」、「保持する」、「〜から構成される」などの全ての移行句は、オープンエンドであり、すなわちこれらを含むが限定されないことを意味するものと理解すべきである。「〜からなる」、「〜から基本的になる」という移行句のみが、それぞれクローズド又はセミクローズドの移行句とすべきである。
【符号の説明】
【0046】
10 ガスタービンエンジン
12 エンジン入口端部
14 圧縮機
16 燃焼器
18 ターボファン
20 高圧タービン
21 低圧タービン
24 シャフト
26 エンジン軸線
37 シャフト軸受
48 オイルサンプ
60 通路
62 ドレイン
65 大気
66 壁