【文献】
Chen Y. et al.,Photophysical studies on axially substituted indium and gallium phthalocyanines upon UV-Vis laser irradiation,Solid State Communications,2004年,Vol.131,pp.773-778
【文献】
Zhu R. Y. et al.,Ultrafast dynamics of the excitons in a series of axially and bridged substituted phthalocyanine thin films,Chemical Physics Letters,2004年,Vol.398,pp.308-312
【文献】
Liu Y. et al.,Optical limiting properties of axially substituted indium phthalocyanines in the solid PMMA composite films,Materials Chemistry and Physics,2008年,Vol.107,pp.189-192
【文献】
Owen J. E. et al.,Phthalocyaninoaluminum Compounds,Inorganic Chemistry,1962年,Vol.1, No.2,pp.331-333
【文献】
Kraus G. A. et al.,A Convenient Method for Connecting Aluminum phthalocyanine to Phenols via the Al-O Bond,SYNLETT,1996年,p.726
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
発明の詳細な説明
一局面では、一般構造(I)
の化合物が本明細書に記載され、
式中、Mはアルミニウム、ガリウム、インジウム、またはそれらの組み合わせを含み;「n」は0以上の整数であり; 各R
1は直鎖アルキル基、分岐アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、複素環基、単環式芳香族基、多環式芳香族基、アリール基、アルキルアリール基、アリールアルキル基、アルキレン基、水素、ハロゲン、またはそれらの組み合わせを含み; かつR
2は、約6個以上〜約22個の炭素原子を含む置換されていてもよいアリール含有基を含み、アリール含有基は、置換されている場合は、ハロゲン、酸素、硫黄、窒素、またはそれらの組み合わせを含む1個または複数個の同一のまたは異なるヘテロ原子で、1つまたは複数の位置において置換されていてよい。
【0014】
一局面では、「n」は約0〜約4の範囲である。
【0015】
別の局面では、R
2は、そのすべてが芳香族炭素原子であるとはみなされない約6個以上〜約18個の炭素原子または約6個以上〜約10個の炭素原子を含む置換されていてもよいアリール含有基を含み、アリール含有基は、置換されている場合は、ハロゲン、酸素、硫黄、窒素、またはそれらの組み合わせを含む1個または複数個の同一のまたは異なるヘテロ原子で、1つまたは複数の位置において置換されていてよい。
【0016】
別の局面では、R
2は金属を含まない。
【0017】
別の局面では、R
2は架橋基としてのヘテロ原子を含まない。
【0018】
他の局面では、R
1およびR
2は同一でもまたは異なっていてもよく、かつR
1およびR
2の少なくとも一方は炭化水素、水素、または例えば臭素、塩素、フッ素、もしくはヨウ素などのハロゲン、あるいはそれらの組み合わせを含み得る。
【0019】
さらに別の局面では、R
1およびR
2は同一でもまたは異なっていてもよく、かつR
1およびR
2の少なくとも一方はC
1〜C
20アルキル基、すなわち最大約20個の炭素原子を有する直鎖または分岐炭化水素ラジカル、例えばC
1〜C
10アルキルまたはC
11〜C
20アルキル、あるいはC
1〜C
10アルキル、例えばC
1〜C
3アルキル、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、またはC
4〜C
6アルキル、n-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、1,1-ジメチルエチル、ペンチル、2-メチルブチル、1,1-ジメチルプロピル、1,2-ジメチルプロピル、2,2-ジメチルプロピル、1-エチルプロピル、ヘキシル、2-メチルペンチル、3-メチルペンチル、1,1-ジメチルブチル、1,2-ジメチルブチル、1,3-ジメチルブチル、2,2-ジメチルブチル、2,3-ジメチルブチル、3,3-ジメチルブチル、2-エチルブチル、1,1,2-トリメチルプロピル、1,2,2-トリメチルプロピル、1-エチル-1-メチルプロピル、1-エチル-2-メチルプロピル、またはC
7〜C
10アルキル、例えばヘプチル、オクチル、2-エチルヘキシル、2,4,4-トリメチルペンチル、1,1,3,3-テトラメチルブチル、ノニル、もしくはデシル、および/あるいはそれらの異性体または組み合わせを含み得る。
【0020】
別の局面では、R
1およびR
2は同一でもまたは異なっていてもよく、かつR
1およびR
2の少なくとも一方はC
2〜C
20アルケニル基、すなわち約2個〜約20個の炭素原子および任意の位置における二重結合を有する不飽和の直鎖または分岐炭化水素ラジカル、例えばC
2〜C
10アルケニルまたはC
11〜C
20アルケニル、C
2〜C
10アルケニル、例えばC
2〜C
4アルケニル、例えばエテニル、1-プロペニル、2-プロペニル、1-メチルエテニル、1-ブテニル、2-ブテニル、3-ブテニル、1-メチル-1-プロペニル、2-メチル-1-プロペニル、1-メチル-2-プロペニル、2-メチル-2-プロペニル、またはC
5〜C
6アルケニル、例えば1-ペンテニル、2-ペンテニル、3-ペンテニル、4-ペンテニル、1-メチル-1-ブテニル、2-メチル-1-ブテニル、3-メチル-1-ブテニル、1-メチル-2-ブテニル、2-メチル-2-ブテニル、3-メチル-2-ブテニル、1-メチル-3-ブテニル、2-メチル-3-ブテニル、3-メチル-3-ブテニル、1,1-ジメチル-2-プロペニル、1,2-ジメチル-1-プロペニル、1,2-ジメチル-2-プロペニル、1-エチル-1-プロペニル、1-エチル-2-プロペニル、1-ヘキセニル、2-ヘキセニル、3-ヘキセニル、4-ヘキセニル、5-ヘキセニル、1-メチル-1-ペンテニル、2-メチル-1-ペンテニル、3-メチル-1-ペンテニル、4-メチル-1-ペンテニル、1-メチル-2-ペンテニル、2-メチル-2-ペンテニル、3-メチル-2-ペンテニル、4-メチル-2-ペンテニル、1-メチル-3-ペンテニル、2-メチル-3-ペンテニル、3-メチル-3-ペンテニル、4-メチル-3-ペンテニル、1-メチル-4-ペンテニル、2-メチル-4-ペンテニル、3-メチル-4-ペンテニル、4-メチル-4-ペンテニル、1,1-ジメチル-2-ブテニル、1,1-ジメチル-3-ブテニル、1,2-ジメチル-1-ブテニル、1,2-ジメチル-2-ブテニル、1,2-ジメチル-3-ブテニル、1,3-ジメチル-1-ブテニル、1,3-ジメチル-2-ブテニル、1,3-ジメチル-3-ブテニル、2,2-ジメチル-3-ブテニル、2,3-ジメチル-1-ブテニル、2,3-ジメチル-2-ブテニル、2,3-ジメチル-3-ブテニル、3,3-ジメチル-1-ブテニル、3,3-ジメチル-2-ブテニル、1-エチル-1-ブテニル、1-エチル-2-ブテニル、1-エチル-3-ブテニル、2-エチル-1-ブテニル、2-エチル-2-ブテニル、2-エチル-3-ブテニル、1,1,2-トリメチル-2-プロペニル、1-エチル-1-メチル-2-プロペニル、1-エチル-2-メチル-1-プロペニル、もしくは1-エチル-2-メチル-2-プロペニル、およびまたC
7〜C
10アルケニル、例えばヘプテニル、オクテニル、ノネニル、デセニルの異性体、あるいはそれらの組み合わせを含み得る。
【0021】
さらに別の局面では、R
1およびR
2は同一でもまたは異なっていてもよく、かつR
1およびR
2の少なくとも一方はC
2〜C
20アルキニル基、すなわち約2個〜約20個の炭素原子および任意の位置における三重結合を有する直鎖または分岐炭化水素基、例えばC
2〜C
10アルキニルまたはC
11〜C
20アルキニル、C
2〜C
10アルキニル、例えばC
2〜C
4アルキニル、例えばエチニル、1-プロピニル、2-プロピニル、1-ブチニル、2-ブチニル、3-ブチニル、1-メチル-2-プロピニル、またはC
5〜C
7アルキニル、例えば1-ペンチニル、2-ペンチニル、3-ペンチニル、4-ペンチニル、1-メチル-2-ブチニル、1-メチル-3-ブチニル、2-メチル-3-ブチニル、3-メチル-1-ブチニル、1,1-ジメチル-2-プロピニル、1-エチル-2-プロピニル、1-ヘキシニル、2-ヘキシニル、3-ヘキシニル、4-ヘキシニル、5-ヘキシニル、1-メチル-2-ペンチニル、1-メチル-3-ペンチニル、1-メチル-4-ペンチニル、2-メチル-3-ペンチニル、2-メチル-4-ペンチニル、3-メチル-1-ペンチニル、3-メチル-4-ペンチニル、4-メチル-1-ペンチニル、4-メチル-2-ペンチニル、1,1-ジメチル-2-ブチニル、1,1-ジメチル-3-ブチニル、1,2-ジメチル-3-ブチニル、2,2-ジメチル-3-ブチニル、3,3-ジメチル-1-ブチニル、1-エチル-2-ブチニル、1-エチル-3-ブチニル、2-エチル-3-ブチニル、もしくは1-エチル-1-メチル-2-プロピニル、およびC
7〜C
10アルキニル、例えばヘプチニル、オクチニル、ノニニル、デシニルの異性体、あるいはそれらの組み合わせを含み得る。
【0022】
別の局面では、R
1およびR
2は同一でもまたは異なっていてもよく、かつR
1およびR
2の少なくとも一方はC
3〜C
18シクロアルキル基、すなわち約3〜約18の炭素環員を有する単環式飽和炭化水素基、またはC
3〜C
8シクロアルキル、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、もしくはシクロオクチル、および飽和もしくは不飽和環系、例えばノルボルニルもしくはノルベンジルを含み得る。さらに別の局面では、R
1および/またはR
2は、当業者が適切と見なすであろう、異性体または鏡像異性体の混合物を含む他の異性体および鏡像異性体より独立して選択される基で置換されていてもよい。
【0023】
別の局面では、R
1およびR
2は同一でもまたは異なっていてもよく、かつR
1およびR
2の少なくとも一方は複素環、例えば、酸素原子、窒素原子、および/または硫黄原子と場合によっては複数の環とを有する、5〜12員、5〜9員、5〜6員の環系、例えばフリル、チオフェニル、ピリル、ピリジル、インドリル、ベンゾオキサゾリル、ジオキソリル、ジオキシル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾチアゾリル、ジメチルピリジル、メチルキノリル、ジメチルピリル、メトキシフリル、ジメトキシピリジル、ジフルオロピリジル、メチルチオフェニル、イソプロピルチオフェニル、またはtert-ブチルチオフェニルを含み得る。さらに、R
1および/またはR
2は、環窒素原子を介して結合しておりかつ1個もしくは2個のさらなる窒素原子または1個のさらなる酸素原子もしくは硫黄原子を含み得る、5員または6員飽和含窒素環系を含み得る。別の局面では、R
1および/またはR
2はC
2〜C
17ヘテロシクロアルキル、例えばアジリジニル、オキシラニル、チイラニル、アゼチジニル、オキセタニル、チエタニル、ピロリジニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロチオフェニル、ピペリジニル、テトラヒドロ-2H-ピラニル、テトラヒドロ-2H-チオピラニル、アゼパニル、オキセパニル、チエパニル、アゾカニル、オキソカニル、チオカニル、イミダゾリジニル、ピラゾリジニル、オキサゾリジニル、ピペラジニル、テトラヒドロピリミジニル、テトラヒドロピリダジニル、オキサジナニル、モルホリニル、ジアゼパニル、チオモルホリニル、およびピロロ[3,4-c]ピロリルより選択され得る。
【0024】
一局面では、R
1はC
1〜C
20アルコキシ基、すなわち酸素原子(--O--)を介して結合した、約1個〜約20個の炭素原子を有する直鎖または分岐アルキル基(上記指定の通り)、例えばC
1〜C
10アルコキシもしくはC
11〜C
20アルコキシ、C
1〜C
10アルキルオキシ、またはC
1〜C
3アルコキシ、例えばメトキシ、エトキシ、プロポキシを含む。
【0025】
別の局面では、R
1はアリールオキシ含有基、例えば、酸素原子(--O--)を介して結合した単環式〜三環式の芳香環系(上記の通り)、あるいは単環式〜二環式または単環式の芳香環系を含む。
【0026】
別の局面では、R
1およびR
2は同一でもまたは異なっていてもよく、かつR
1およびR
2の少なくとも一方はアリールアルキル基、例えば、C
1〜C
20アルキレン基を介して結合した単環式〜三環式の芳香環系(上記指定の通り)、単環式〜二環式または単環式の芳香環系を含み得る。
【0027】
別の局面では、R
1および/またはR
2はC
1〜C
20アルキレン基、例えば約1個〜約20個の炭素原子を有する直鎖または分岐炭化水素ラジカル、例えばC
1〜C
10アルキレンまたはC
11〜C
20アルキレン、C
2〜C
10アルキレン、例えばメチレン、ジメチレン、トリメチレン、テトラメチレン、ペンタメチレン、もしくはヘキサメチレンを含む。
【0028】
別の局面では、R
1および/またはR
2はアリール基、例えば、約6以上〜約22の炭素環員を含む単環式〜三環式の芳香環系、例えばフェニル、ナフチル、もしくはアントラセニル、単環式〜二環式または単環式の芳香環系を含む。
【0029】
なおさらなる局面では、R
2は、約6以上〜約22の炭素環員、約6以上かつ約18の炭素環員、または約6以上〜約10の炭素環員を含む単環式〜三環式の芳香環系を含み、すべての炭素が必ずしも芳香族であるわけではなく、かつ環系は任意の1つまたは複数の位置において1個または複数個のヘテロ原子で置換されていてもよい。別の局面では、そのようなヘテロ原子は、存在する場合は、ハロゲン、酸素、硫黄、窒素、またはそれらの組み合わせを含み得る。さらなる局面では、ヘテロ原子は存在し、かつ塩素、フッ素、臭素、ヨウ素、またはそれらの組み合わせを含む。
【0030】
一局面では、R
2は、約6以上〜約22の炭素環員、約6以上かつ約18の炭素環員、または約6以上〜約10の炭素環員を含む単環式〜三環式の芳香環系を含み、すべての炭素が必ずしも芳香族であるわけではなく、かつ環系は任意の1つまたは複数の位置において1個または複数個のハロゲンで置換されていてもよい。一局面では、環系はすべての環位置において1個または複数個のハロゲンで置換されていてもよい。別の局面では、ハロゲンは塩素を含まない。別の局面では、ハロゲンはフッ素、塩素、臭素、ヨウ素、またはそれらの組み合わせを含み得る。単一の塩素が所与の環系上に存在するなおさらなる局面では、環系はパラ位では置換されていない。ハロゲンが塩素を含むなおさらなる局面では、環系は1つまたは複数のオルト位で置換されている。特定の理論に拘束されることは望まないが、置換されたR
2は金属の周りの電子雲に影響を与えるほど高度に電気陰性であり得ると考えられる。
【0031】
別の局面では、炭化水素基のいずれかは、同一のまたは異なる置換部分によって、例えば、含窒素基、例えばアミノおよび/またはニトロ; 含硫黄基、例えばチオール、スルホキシド、スルフェート、および/またはクロロスルフェート; ヒドロキシル基; 含ケイ素基、例えば、置換基が炭化水素である三置換シラン; ハロゲン、例えば臭素、塩素、フッ素、および/またはヨウ素; ならびに/あるいは、約3個〜約15個の原子を例えば有しかつ窒素、硫黄、ケイ素、および酸素より例えば選択される元素を含むヘテロ原子部分、例えばチオフェン-2-イル、チオフェン-3-イル、ピリジン-2-イル、ピリジン-3-イル、ピリジン-4-イル、フラン-2-イル、フラン-3-イルなどによって、任意の位置において1回、2回、またはそれ以上置換されていてもよい。例示的な置換炭化水素基としては例えば3-ヒドロキシヘキサン-1,6,-ジイル; 2-メチル-ベンゼン-1,4,-ジイル; および2,5-ジメチルベンゼン-1,4,ジイルが挙げられる。
【0032】
A. 合成方法
本明細書に記載の一般構造を有する化合物を作製するための方法が本明細書に記載される。一局面では、本明細書に記載の化合物を調製するための方法は以下の工程を含むことができる: (a) ハロゲン-金属結合含有R
1置換フタロシアニン前駆体を含む化合物を提供する工程であって、ハロゲンが塩素、臭素、ヨウ素、フッ素、またはそれらの組み合わせを含み、かつ各R
1が直鎖アルキル基、分岐アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、複素環基、単環式芳香族基、多環式芳香族基、アリール基、アルキルアリール基、アリールアルキル基、アルキレン基、水素、ハロゲン、またはそれらの組み合わせを含む、工程; (b) 置換されていてもよいアリール基(-R
2)および/または置換されていてもよいアリールアルコール基(OH-R
2)を含む反応物を提供する工程であって、R
2が約6個以上〜約22個の炭素原子を含み、かつすべての炭素原子が必ずしも芳香族であるわけではなく、かつ置換されている場合は、例えばハロゲン、酸素、硫黄、窒素、またはそれらの組み合わせなどの1個または複数個のヘテロ原子で、任意の1つまたは複数の位置において置換されていてよい、工程; ならびに(c) ハロゲン-金属結合含有フタロシアニン前駆体を含む該化合物と該反応物とを有機溶媒の存在下にて、一局面では有機溶媒に不溶性、難溶性、部分的に可溶性であるかまたは有機溶媒に少なくとも部分的に可溶性である一般構造(I)の化合物を形成するために有効な条件下で反応させる工程。
【0033】
無金属フタロシアニン(PC)の調製は当技術分野において公知である。例えば、米国特許第3,509,146号では、1,3-ジイミノイソインドリンまたはそれらの複素環式類似体とアルキルアルカノールアミンとを混合することによる無金属フタロシアニン(Pc)および関連化合物の調製が記載されている。EP 0 373 643 A2では、金属含有フタロシアニンの調製、例えば、o-フタロジニトリルおよび/または1,30ジイミノイソインドリンの混合物と金属化合物との反応による金属含有フタロシアニンの合成が記載されている。さらに、M. Durmus et al., Tetrahedron, 2007, 1385ではハロゲン-金属結合含有フタロシアニンの調製が記載されている。これらの化合物は、新たに蒸留されたキノリン溶媒中での金属塩化物によるフタロニトリルの処理によって例えば調製することができる。
【0034】
一局面では、一般構造(I)を有する化合物を調製するための方法の工程(b)は、置換されていてもよいアリール基(-R
2)および/または置換されていてもよいアリールアルコール基(OH-R
2)を含む反応物を提供する工程であって、R
2が約6個以上〜約18個の炭素原子または約6個以上〜約10個の炭素原子を含み、すべての炭素原子が必ずしも芳香族であるわけではなく、かつ該反応物が、置換されている場合は、ハロゲン、酸素、硫黄、窒素、またはそれらの組み合わせを例えば含む1個または複数個のヘテロ原子で、1つまたは複数の位置において置換されていてよい、工程を含む。
【0035】
別の局面では、一般構造(I)を有する化合物を調製するための方法の工程(b)は、置換されていてもよいアリール基(-R
2)および/または置換されていてもよいアリールアルコール基(OH-R
2)を含む反応物を提供する工程であって、R
2が、約6以上〜約22の炭素環員、約6以上かつ約18の炭素環員、または約6以上〜約10の炭素環員を含む単環式〜三環式の芳香環系を含み、すべての炭素が必ずしも芳香族であるわけではなく、かつ環系が任意の1つまたは複数の位置において1個または複数個のヘテロ原子で置換されていてもよい、工程を含む。さらなる局面では、そのようなヘテロ原子は、存在する場合は、ハロゲン、酸素、硫黄、窒素、またはそれらの組み合わせを含み得る。なおさらなる局面では、ヘテロ原子は、存在する場合は、塩素、フッ素、臭素、ヨウ素、またはそれらの組み合わせを含み得る。
【0036】
一局面では、一般構造(I)を有する化合物を調製するための方法の工程(b)は、置換されていてもよいアリール基(-R
2)および/または置換されていてもよいアリールアルコール基(OH-R
2)を含む反応物を提供する工程であって、R
2が、約6以上〜約22の炭素環員、約6以上かつ約18の炭素環員、または6以上〜約10の炭素環員を含む単環式〜三環式の芳香環系を含み、すべての炭素が必ずしも芳香族であるわけではなく、かつ環系が任意の1つまたは複数の位置において1個または複数個のハロゲンで置換されていてもよい、工程を含む。一局面では、環系はすべての環位置において1個または複数個のハロゲンで置換されていてもよい。別の局面では、ハロゲンは塩素を含まない。さらなる局面では、ハロゲンはフッ素、塩素、臭素、ヨウ素、またはそれらの組み合わせを含む。ハロゲンが塩素を含むなおさらなる局面では、環系はパラ位では置換されていない。ハロゲンが塩素を含むなおさらなる局面では、環系は1つまたは複数のオルト位で置換されている。特定の理論に拘束されることは望まないが、置換されたR
2は金属の周りの電子雲に影響を与えるほど高度に電気陰性であり得ると考えられる。
【0037】
別の局面では、一般構造(I)の化合物は溶媒の存在下で調製することができる。一局面では、好適な溶媒は、本発明の方法の温度において液体であって、関係するすべての化合物が少なくとも部分的に可溶性である、物質を含むことができる。例えば、そのような溶媒は標準圧力(101.325kPa)で約100℃超の沸点を有する。溶媒の存在下で本発明の方法において使用される一般構造(I)の化合物の溶液は、懸濁液または分散液の特性を有することもできる。好適な溶媒は、例えば芳香族化合物または極性非プロトン性化合物を含むことができる。一局面では、溶媒はトルエン、キシレン、メシチレン、テトラリン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、キノリン、ピリジン、スルホラン、THF、クロロメタン、クロロホルム、ジメチルスルホキシド、またはそれらの組み合わせを含むことができる。本発明の方法において使用可能な溶媒の量は、溶解する化合物の溶解度に依存するものであり、したがって広範囲内で変動し得る。別の局面では、1つまたは複数の溶媒を過剰に(重量比)加えることができる。
【0038】
一局面では、本発明の方法における構造(I)の一般的化合物の調製に関して規定される温度は、広範囲内で変動し得る。一般に、温度の選択は、一般構造(I)の化合物を形成する1つまたは複数の関係する化合物の溶解度に例えば依存し得るものであり、当業者が決定することができる。溶解度が高い一局面では、本発明の方法における反応に関して相対的に低い温度を選択することが例えば可能であり得る。一般に、本発明の方法における温度は約0℃〜約200℃の範囲より選択することができる。別の局面では、温度は約20℃〜約150℃の範囲であり得る。別の局面では、温度は約70℃〜約140℃の範囲であり得る。
【0039】
別の局面では、一般構造(I)の化合物を調製するための本発明の方法が行われる圧力範囲は変動し得る。様々な局面では、本発明の方法は標準圧力、わずかに減少した圧力、または高圧で行うことができる。一局面では、圧力は約90kPa〜約1000kPaの範囲より選択することができる。
【0040】
本方法は、この目的に好適な任意の装置中、例えば有機化合物の当業者に公知の装置中で行うことができる。一般分子構造(I)の化合物の取り出しおよびワークアップには、当業者が熟知する任意の方法を使用することが可能である。例えば、取り出しは例えば濾過または相分離によって行うことができる。別の局面では、ワークアップは、例えば化合物を液体で洗浄することなどの精製工程、および/または乾燥工程を含むことができる。
【0041】
別の局面では、(a)〜(c)の全工程の持続時間および任意の個々の工程の持続時間は、例えば温度に応じて変動し得る。別の局面では、全工程合計の持続時間は数分から最大で例えば約72時間までの広範囲内で変動し得る。
【0042】
本明細書に記載の方法が例示的であるように意図されており、限定的であるようには意図されていないと理解すべきである。本明細書に記載の本発明の組成物を調製するために他の方法を使用することができるのであり、本発明は、本明細書に記載の特定の方法に限定されるようには意図されていない。
【0043】
B. 太陽電池
本明細書において使用される第1の「最高被占軌道」(HOMO)または「最低空軌道」(LUMO)エネルギー準位が第2のHOMOまたはLUMOエネルギー準位よりも「大きい」かまたは「高い」のは、第1のエネルギー準位の方が真空エネルギー準位により近い場合である。イオン化ポテンシャル(IP)が真空準位に対して負のエネルギーとして測定されることから、より高いHOMOエネルギー準位は、より小さい絶対値を有するIP(負の程度がより小さいIP)に対応する。同様に、より高いLUMOエネルギー準位は、より小さい絶対値を有する電子親和力(EA)(負の程度がより小さいEA)に対応する。真空準位が上側にある通常のエネルギー準位図では、ある材料のLUMOエネルギー準位は同じ材料のHOMOエネルギー準位よりも高い。「より高い」HOMOまたはLUMOエネルギー準位は、「より低い」HOMOまたはLUMOエネルギー準位に比べてそのような図の上側により近くに現れる。
【0044】
有機材料に関連して、「供与体」および「受容体」という用語は、接触しているが異なる2つの有機材料のHOMOおよびLUMOエネルギー準位の相対位置を意味する。「電子供与体」という用語は材料の電子親和力を意味する。電子供与体材料は相対的に低い電子親和力を有し、すなわち、EA値はより小さい絶対値を有する。したがって、電子供与体材料はp型材料として作用する傾向にある。言い換えれば、電子供与体材料は正孔輸送材料として作用し得る。「電子受容体」という用語は材料の電子親和力を意味する。電子受容体材料は相対的に高い電子親和力を有する。したがって、電子受容体材料は電子輸送材料として作用し得る。
【0045】
本明細書において使用される「電荷輸送材料」という用語は、電荷、すなわち正孔または電子を輸送する材料を意味する。電子供与体材料は正孔を輸送し、電子受容体材料は電子を輸送する。
【0046】
本明細書において使用される「光活性領域」という用語は、励起(すなわち電子正孔対の形態での電気的に中性の励起状態)を発生させるために電磁放射線を吸収する感光素子の一部分のことである。
【0047】
一般分子構造(I)を有する化合物の使用が本明細書に記載される。一局面では、一般分子構造(I)を有する化合物を含む光電池が記載される。
【0048】
一局面では、一般分子構造(I)
を有する化合物を含む光電池であって、
式中、Mはアルミニウム、ガリウム、インジウム、またはそれらの組み合わせを含み;「n」は0以上の整数であり; 各R
1は独立して直鎖アルキル基、分岐アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、複素環基、単環式芳香族基、多環式芳香族基、アリール基、アルキルアリール基、アリールアルキル基、アルキレン基、水素、ハロゲン、またはそれらの組み合わせを含み得; R
2は、約6個以上〜約22個の炭素原子を含む置換されていてもよいアリール含有基を含み得、アリール含有基は、置換されている場合は、ハロゲン、酸素、硫黄、窒素、またはそれらの組み合わせを含む1個または複数個の同一のまたは異なるヘテロ原子で、1つまたは複数の位置において置換されていてよい。
【0049】
一局面では、有機光起電力素子の製作に関して、フェノキシ置換III族金属含有フタロシアニンは報告されていない。
【0050】
有機太陽電池は層状構造を一般に有しており、少なくとも以下の層を一般に含む: 陽極、光活性領域、および陰極。一般に、これらの層は基板上に配置される。有機太陽電池の構造は変動し得るものであり、様々な構造が当技術分野において、例えば参照により本明細書に完全に組み入れられる米国特許出願公開第2005/0098726号および米国特許出願公開第2005/0224905号において知られている。
【0051】
有機太陽電池は、電子供与体から電子受容体成分への光誘起電荷移動後に分離された電荷を生成するために正孔伝導性および電子伝導性共役分子の不均一接合領域を利用する。
【0052】
一局面では、本発明は、少なくとも1つの陰極と、少なくとも1つの陽極と、光活性材料としての上記定義の一般分子構造(I)の少なくとも1つの化合物とを伴う基板を含む、有機太陽電池を提供する。別の局面では、本発明の有機太陽電池は少なくとも1つの光活性領域を含む。光活性領域は2つの層を含むことができ、これらの層はそれぞれ均一な組成を有しており、供与体-受容体平面ヘテロ接合(PHJ)を形成するか、または供与体-受容体バルクヘテロ接合(BHJ)を形成する混合層を形成する。
【0053】
有機半導体では、光吸収によって、HOMO準位からLUMO準位への電子の昇位を通じた分子の励起(すなわち電子正孔対)の創製が生じ得る。分離された電荷を生成するために、励起を供与体-受容体界面において解離させることができ、このプロセスの推進力は、供与体分子および受容体分子のLUMO軌道間のエネルギーオフセットによって与えられる。
【0054】
したがって、分子ベースの素子において4つの基本的な段階が生じる: (a) 光吸収/励起発生; (b) 供与体-受容体接合の方への励起拡散; (c) 電荷移動/励起解離; ならびに(d) 外部電極における分離された電子および正孔の電荷収集。
【0055】
通常、光電池の性能は電流-電圧(I-V)曲線の分析によって評価され、この曲線から開路(V
OC)(受容体のLUMO準位と供与体のHOMO準位との間のギャップに関連する)、短絡密度(J
SC)(光がどれほど吸収可能であるかに比例する)、曲線因子(FF)、および電力変換効率(PCE)などの主要パラメータが抽出される。
【0056】
有機太陽電池に好適な基板は、ガラス、セラミックス、SiO
2、石英、ポリマー、例えばポリ塩化ビニル、ポリオレフィン、例えばポリエチレンおよびポリプロピレン、ポリエステル、フルオロポリマー、ポリアミド、ポリウレタン、ポリアルキル(メタ)アクリレート、ポリスチレン、ならびにそれらの混合物および複合材、ならびにそれらの組み合わせなどの材料を例えば含むことができる。
【0057】
好適な電極(陰極および陽極)は金属(例えば、周期表の8族、9族、10族、または11族の金属、例えばPt、Au、Ag、Cu、Al、In、Mg、Ca)、半導体(例えばドープSi、ドープGe、インジウムスズ酸化物(ITO)、ガリウムインジウムスズ酸化物(GITO)、亜鉛インジウムスズ酸化物(ZITO)など)、金属合金(例えばPt、Au、Ag、Cuなどに基づく合金、特にMg/Ag合金)、半導体合金などを含むことができる。使用される一方の電極は、入射光を本質的に透過する材料であり得る。これとしては例えばITO、ドープITO、FTO(フッ素ドープスズ酸化物)、AZO(アルミニウムドープZnO)、ZnO、TiO
2、Ag、Au、Ptが挙げられる。使用される他方の電極は、入射光を本質的に反射する材料であり得る。これとしては金属膜、例えばAl、Ag、Au、In、Mg、Mg/Al、Caなどの金属膜が例えば挙げられる。
【0058】
一方、光活性領域は、上記定義の一般分子構造(I)の少なくとも1つの化合物を有機半導体材料として含む少なくとも1つの層を含むことができる。光活性領域以外にも1つまたは複数のさらなる層が存在し得る。これらとしては例えば、電子伝導性を有する層(電子輸送層、ETL); 正孔伝導材料を含む層(正孔輸送層、HTL); 吸収を行わないはずである励起子遮断層および正孔遮断層(例えばEBL); ならびに増倍層が挙げられる。EBLの役割は、陰極蒸発による受容体層の損傷を防止すること; 電子受容体/陰極界面における望ましくない励起子消光を排除すること; および光活性領域と反射陰極との間にスペーサーを設けることで供与体-受容体界面における光強度を、したがって光吸収効率を増加させることである。
【0059】
好適な励起子遮断層および正孔遮断層は例えば米国特許第6,451,415号に記載されている。様々な局面では、励起子遮断層に好適な材料は、バソクプロイン(BCP)、4,4',4''-トリス[3-メチルフェニル-N-フェニルアミノ]トリフェニルアミン(m-MTDATA)、またはポリエチレンジオキシ-チオフェン(PEDOT)を含むことができる。
【0060】
一局面では、太陽電池は少なくとも1つの光活性供与体-受容体ヘテロ接合を含むことができる。有機材料の光励起時に励起子が発生する。光電流を生じさせるには、電子正孔対を通常は2つの異なった接触する材料の間の供与体-受容体界面において分離しなければならない。そのような界面において、供与体材料は受容体材料とのヘテロ接合を形成する。電荷が分離しない場合、消光としても知られる対再結合プロセスにおいて、入射光よりも低いエネルギーの光の発光によって放射活性的に、または熱の生成によって非放射活性的に再結合することがある。これらの結果はいずれも望ましくない。一局面では、一般分子構造(I)の少なくとも1つの化合物が電荷発生(供与体)およびHTM(正孔輸送材料)として使用される場合、対応する電子受容ETM(電子輸送材料)を、前記化合物の励起後にETMへの速やかな電子移動が生じるように選択することができる。好適なETMとしては例えばC
60フラーレンおよび他のフラーレン、ペリレン-3,4;9,10-ビス(ジカルボキシイミド)(PTCDI)などがある。
【0061】
一局面では、ヘテロ接合は平面構成(PHJ)を有することができる(Two layer organic photovoltaic cell, C. W. Tang, Appl. Phys. Lett., 48 (2), 183-185 (1986)またはN. Karl, A. Bauer, J. Holzapfel, J. Marktanner, M. Mobus, F. Stolzle, Mol. Cryst. Liq. Cryst., 252, 243-258 (1994)、M.V. Martinez-diaz, G. de la Toree, T. Torres, ChemChomm., 7090-7108 (2010)を参照)。
【0062】
別の局面では、ヘテロ接合はバルクヘテロ接合(BHJ)または供与体-受容体相互貫入網目構造として実現することができる。バルクヘテロ接合を有する有機光電池は例えばC. J. Brabec, N. S. Sariciftci, J. C. Hummelen in Adv. Funct. Mater., 11 (1), 15 (2001)またはJ. Xue, B. P. Rand, S. Uchida and S. R. Forrest in J. Appl. Phys. 98, 124903 (2005)、M.V. Martinez-diaz, G. de la Toree, T. Torres, ChemChomm., 7090-7108 (2010)に記載されている。
【0063】
別の局面では、一般分子構造(I)の化合物はM-i-M、p-i-n、p-n、M-i-p、またはM-i-n構造を有する太陽電池中の光活性材料として使用することができる(M=金属、p=pドープ有機半導体または無機半導体、n=nドープ有機半導体または無機半導体、i=有機層の本質的に導電性の系; 例えばJ. Drechsel et al., Org. Electron., 5 (4), 175 (2004)またはMaennig et al., Appl. Phys. A 79, 1-14 (2004)を参照)。
【0064】
別の局面では、一般分子構造(I)の化合物はタンデム型電池中の光活性材料として使用することもできる。タンデム型電池は2個の組み合わせられた単位電池を含み、各単位電池は2層の有機太陽電池である。好適なタンデム型電池はP. Peumans, A. Yakimov, S. R. Forrest in J. Appl. Phys, 93 (7), 3693-3723 (2003)(米国特許第4,461,922号、米国特許第6,198,091号、および米国特許第6,198,092号参照)に例えば記載されており、以下で詳細に説明する。
【0065】
一般分子構造(I)の化合物は、互いに積層された2個以上のM-i-M、p-i-n、M-i-p、またはM-i-nダイオードで構成されるタンデム型電池中の光活性材料として使用することもできる(特許出願DE 103 13 232.5参照)(J. Drechsel et al., Thin Solid Films, 451452, 515-517 (2004))。
【0066】
別の局面では、M層、n層、i層、およびp層の層厚は約10〜約1,000nmの範囲であり得る。薄層を、減圧下もしくは不活性ガス雰囲気下での気相蒸着によって、レーザーアブレーションによって、またはスピンコーティング、ナイフコーティング、流延法、噴霧、ディップコーティング、もしくは印刷(例えばインクジェット、フレキソ、オフセット、グラビア、凹版、ナノインプリンティング)などの溶液処理可能もしくは分散液処理可能な方法によって生成することができる。
【0067】
有機太陽電池の効率を改善するために、励起子がその発生部位からその解離部位(供与体-受容体界面)まで拡散可能な平均距離を、供与体材料および受容体材料の相互貫入網目構造中で減少させることができる。一局面では、バルクへテロ接合のモルフォロジーは、大きな供与体-受容体界面区域、および対向電極への連続的なキャリア伝導経路を特徴とする。
【0068】
バルクヘテロ接合は気相蒸着プロセス(物理気相蒸着、PVD)によって生成することができる。好適な方法は、本明細書において参照される米国特許出願公開第2005/0227406号に記載されている。この目的のために、通常は、電子供与体としての一般分子構造(I)の化合物、および少なくとも1つの電子受容体材料が共昇華による気相蒸着に供され得る。PVDプロセスは高真空条件下で行われ、以下の工程を含む: 気化、移動、堆積。
【0069】
別の局面では、太陽電池の他の層を公知の方法によって、例えば、減圧下もしくは不活性ガス雰囲気下での気相蒸着によって、レーザーアブレーションによって、またはスピンコーティング、ナイフコーティング、流延法、噴霧、ディップコーティング、もしくは印刷(例えばインクジェット、フレキソ、オフセット、グラビア、凹版、ナノインプリンティング)などの溶液処理可能もしくは分散液処理可能な方法によって生成することができる。別の局面では、完全な太陽電池を気相蒸着プロセスによって生成することができる。
【0070】
別の局面では、光活性領域(均一層または混合層)をその調製後、または太陽電池の一部である他の層の調製後、熱処理に直接供することができる。アニールによって光活性領域のモルフォロジーを改善することができる。熱処理に加えてまたは熱処理の代わりに、光活性領域を溶媒含有ガスを使用する処理に供することができる。一局面では、周囲温度での空気中飽和溶媒蒸気を使用する。好適な溶媒はトルエン、キシレン、クロロベンゼン、トリクロロメタン、ジクロロメタン、N-メチルピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、酢酸エチル、およびそれらの混合物を含むことができる。
【0071】
開示される化合物、および該化合物を調製するための方法、およびそれより作製される製品は、少なくとも以下の局面を含む。
【0072】
局面1: 一般構造(I)
の化合物であって、
式中、Mがアルミニウム、ガリウム、インジウム、またはそれらの組み合わせを含み;
「n」が0以上の整数であり;
各R
1が独立して直鎖アルキル基、分岐アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、複素環基、単環式芳香族基、多環式芳香族基、アリール基、アルキルアリール基、アリールアルキル基、アルキレン基、水素、ハロゲン、またはそれらの組み合わせを含み得;
R
2が、約6個以上〜約22個の炭素原子を含む置換されていてもよいアリール含有基を含み得、アリール含有基が、置換されている場合は、ハロゲン、酸素、硫黄、窒素、またはそれらの組み合わせを含む1個または複数個の同一のまたは異なるヘテロ原子で、1つまたは複数の位置において置換されていてよい、
化合物。
【0073】
局面2: nが約0〜約4の範囲である、局面1の化合物。
【0074】
局面3: R
2が、約6個以上〜約18個の炭素原子を含む置換されていてもよいアリール含有基を含み、ここで置換されている場合は、1個または複数個の同一のまたは異なるヘテロ原子で、1つまたは複数の位置において置換されていてよい、局面1の化合物。
【0075】
局面4: R
2が金属を含まない、局面1の化合物。
【0076】
局面5: R
2が架橋基としてのヘテロ原子を含まない、局面1の化合物。
【0077】
局面6: R
2が、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、またはそれらの組み合わせを含むハロゲンを含む、局面1の化合物。
【0078】
局面7: R
2が塩素を含まない、局面6の化合物。
【0079】
局面8: R
2が塩素を含み、かつアリール含有基が、置換されている場合は、パラ位で置換されていることはありえない、局面6の化合物。
【0080】
局面9: R
2が塩素を含み、かつアリール含有基が、置換されている場合は、1つまたは複数のオルト位で置換されている、局面6の化合物。
【0081】
局面10: (a) ハロゲン-金属結合含有R
1置換フタロシアニン前駆体を含む化合物を提供する工程であって、ハロゲンが塩素、臭素、ヨウ素、フッ素、またはそれらの組み合わせを含み、かつ各R
1が独立して直鎖アルキル基、分岐アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、複素環基、単環式芳香族基、多環式芳香族基、アリール基、アルキルアリール基、アリールアルキル基、アルキレン基、水素、ハロゲン、またはそれらの組み合わせを含む、工程;
(b) 置換されていてもよいアリール基(-R
2)および/または置換されていてもよいアリールアルコール基(OH-R
2)を含む反応物を提供する工程であって、R
2が約6個以上〜約22個の炭素原子を含む、工程;
(c) ハロゲン-金属結合含有フタロシアニン前駆体を含む該化合物と該反応物とを有機溶媒の存在下にて、有機溶媒に不溶性、難溶性、部分的に可溶性であるかまたは有機溶媒に少なくとも部分的に可溶性である一般分子構造(I)の化合物を形成するために有効な条件下で反応させる工程
を含む、一般分子構造(I)の化合物を調製するための方法。
【0082】
局面11: 反応物が、置換されていてもよいアリール基(-R
2)または置換されていてもよいアリールアルコール基(OH-R
2)を含み、R
2が約6個以上〜約18個の炭素原子を含む、局面10の方法。
【0083】
局面12: 有機溶媒がトルエン、ジメチルスルホキシド、ジクロロメタンを含む、局面10の方法。
【0084】
局面13: 一般分子構造(I)
を有する化合物を含む光電池であって、
式中、Mがアルミニウム、ガリウム、インジウム、またはそれらの組み合わせを含み;
「n」が0以上の整数であり;
各R
1が独立して直鎖アルキル基、分岐アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、複素環基、単環式芳香族基、多環式芳香族基、アリール基、アルキルアリール基、アリールアルキル基、アルキレン基、水素、ハロゲン、またはそれらの組み合わせを含み得;
R
2が、約6個以上〜約22個の炭素原子を含む置換されていてもよいアリール含有基を含み得、アリール含有基が、置換されている場合は、ハロゲン、酸素、硫黄、窒素、またはそれらの組み合わせを含む1個または複数個の同一のまたは異なるヘテロ原子で、1つまたは複数の位置において置換されていてよい、
光電池。
【0085】
本明細書に記載の局面が、別途指定がない限り、開示される特定の組成物、物品、装置、システム、および/または方法に限定されず、したがって当然変動し得ると理解すべきである。また、本明細書で使用する用語法が特定の局面のみを説明するためのものであり、限定的であるようには意図されていないと理解すべきである。
【0086】
また、本発明の説明は、現在知られているその最良の態様での本発明を可能にする教示として示される。この目的で、当業者は、本発明の有利な結果をなお得ながらも本明細書に記載の本発明の様々な局面に対して変更および修正を行うことができると認識および理解するであろう。また、本発明のいくつかの望ましい利点を、本発明のいくつかの特徴の選択を他の特徴の利用なしに行うことで得ることができることは明らかであろう。したがって、当業者は、本発明の多くの修正および調節が可能であって、特定の場合では望ましいことさえあり、したがって本発明の一部でもあると認識するであろう。したがって、以下の説明は、本発明の原理を例示するものとして示され、その限定としては示されない。
【0087】
本開示の要素の様々な組み合わせ、例えば、同じ独立請求項に従属する従属請求項からの要素の組み合わせが本発明に包含される。
【0088】
さらに、別途明確に記述されない限り、本明細書に記載の任意の方法が、その段階が特定の順序で行われることを必要とするものと解釈されることは決して意図されないと理解すべきである。したがって、ある方法クレームが、その段階が従うべき順序に関して実際に記載していない場合、あるいは、本特許請求の範囲または説明において、段階が特定の順序に限定されるべきであると別途具体的に記述されていない場合、ある順序が推測されることはいかなる点においても決して意図されない。このことは、段階または運用フローの編成に関する論理の問題; 文法構成または句読法に由来する平文の意味; および本明細書に記載の態様の数または種類を含む、解釈に関する任意のありうる非明示的な基準にも当てはまる。
【0089】
本明細書において言及されるすべての刊行物は、該刊行物がそれに関連して引用される方法および/または材料を開示および説明するために、参照により本明細書に組み入れられる。
【0090】
また、本明細書で使用する用語法が特定の局面のみを説明するためのものであり、限定的であるようには意図されていないと理解すべきである。本明細書および特許請求の範囲において使用される「含む」という用語は、「からなる」および「から本質的になる」という局面を含むことができる。別途定義しない限り、本明細書において使用されるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者が通常理解するものと同一の意味を有する。本明細書および添付の特許請求の範囲において、本明細書に定義されるものとするいくつかの用語に言及する。
【0091】
本明細書および添付の特許請求の範囲において使用される単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」は、文脈上別途明らかな断りがない限り、複数の言及対象を含む。したがって、例えば「1つの芳香族化合物」に対する言及は、2つ以上のそのような芳香族化合物の混合物を含む。さらに、例えば充填剤に対する言及は充填剤の混合物を含む。
【0092】
本明細書において、範囲は、「約」1つの特定の値からの範囲、および/または「約」別の特定の値までの範囲として表すことができる。そのような範囲が表される場合、別の局面は、該1つの特定の値からの範囲、および/または該別の特定の値までの範囲を含む。同様に、値が「約」という先行詞の使用によって概算値として表される場合、特定の値が別の局面を形成すると理解されよう。さらに、各範囲のエンドポイントが、他方のエンドポイントに対してかつ他方のエンドポイントとは独立して意味を表すと理解されよう。また、本明細書においていくつかの値が開示されること、および本明細書において各値がその値自体に加えて「約」その特定の値としても開示されることが理解されよう。例えば、「10」という値が開示される場合、「約10」も開示される。また、2つの特定の単位間の各単位も開示されると理解されよう。例えば、10および15が開示される場合、11、12、13および14も開示される。
【0093】
開示される方法および組成物に使用可能であるか、それとの組み合わせで使用可能であるか、その調製において使用可能であるか、またはその生成物である、材料、化合物、組成物、および成分が開示される。これらのおよび他の材料は本明細書に開示されており、これらの材料の組み合わせ、サブセット、相互作用、群などが開示される際には、これらの化合物の様々な個別的および集合的な各組み合わせおよび順列に対する具体的な言及を明示的に開示することはできないが、いずれも本明細書において具体的に想定および記載されているということが理解されよう。例えば、特定の化合物が開示および説明されて、いくつかのR基に対して行われ得るいくつかの修飾が説明される場合、背反する指示が具体的にない限り、該阻害剤のおよびそのR基に対する修飾のあらゆる可能な組み合わせおよび順列が具体的に想定される。したがって、分子A、BおよびCのクラスならびに分子D、EおよびFのクラスが開示されて、組み合わせ分子の一例A-Dが開示される場合、各組み合わせが個々に記載されないとしても、各組み合わせが個別的および集合的に想定される。したがって、この例では、各組み合わせA-E、A-F、B-D、B-E、B-F、C-D、C-E、およびC-Fが具体的に想定されており、各組み合わせは、A、B、およびC; D、E、およびF; ならびに例示的組み合わせA-Dの開示によって開示されるとみなすべきである。同様に、これらに関する任意のサブセットまたは組み合わせも具体的に想定および開示される。したがって例えば、A-E、B-F、およびC-Eのサブグループが具体的に想定されており、サブグループは、A、B、およびC; D、E、およびF; ならびに例示的組み合わせA-Dの開示によって開示されるとみなすべきである。この概念は、開示される組成物を作製および使用する方法における段階を含むがそれに限定されない、本開示のすべての局面に当てはまる。したがって、種々のさらなる段階を行うことができる場合、これらのさらなる各段階を開示される方法の任意の特定の態様または態様組み合わせで行うことができること、および、そのような各組み合わせが具体的に想定されており、かつ開示されるとみなすべきであることが理解されよう。
【0094】
本明細書および添付の特許請求の範囲において、以下の意味を有すると定義されるものとするいくつかの用語に言及する。
【0095】
「任意の」または「任意に」とは、続いて記述される事象または状況が生じることもそうでないこともあり、その記述が該事象または状況が生じる場合およびそれが生じない場合を含むということを意味する。例えば、「置換されていてもよい低級アルキル」という語句は、低級アルキル基が置換されていても置換されていなくてもよいこと、および、記載が非置換低級アルキルと置換が存在する低級アルキルとの両方を含むことを意味する。
【0096】
本明細書において使用される「有効な」、「有効量」、または「〜するために有効な条件」という用語または語句は、有効量がそれに関して表される機能または特性を実行することが可能な量または条件を意味する。以下で指摘するように、必要とされる正確な量または正確な特定の条件は、使用される材料および観察される処理条件などの認識される変動要素に応じて、局面ごとに変動し得る。したがって、正確な「有効量」または「〜するために有効な条件」を特定することが常に可能であるわけではない。しかし、適切な有効量は、ごく日常的な実験を使用して当業者によって容易に決定されると理解すべきである。
【0097】
ある成分の重量パーセントは、背反する記述が具体的にない限り、該成分が含まれる一般分子構造または組成物の総重量に対するものである。例えば、ある組成物または物品中の特定の要素または成分が8重量%を有すると言われる場合、この割合は総組成割合100%に対するものであると理解されよう。
【0098】
化合物は標準命名法を使用して記述される。例えば、任意の指示された基で置換されていない任意の位置は、その原子価が、指示された結合または水素原子で満たされていると理解されよう。2つの文字または記号の間におけるものではないダッシュ記号(「-」)は、置換基の結合点を示すために使用される。例えば、-CHOは、カルボニル基の炭素を通じて結合する。別途定義されない限り、本明細書において使用される技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者が通常理解する意味と同一の意味を有する。
【0099】
本明細書において使用される「Pc」という用語は、背反する記述が具体的にない限り、フタロシアニン部分を意味するように意図されており、そのようなフタロシアニン部分は任意のフタロシアニン部分、その誘導体または類似体を含み得る。
【0100】
本明細書において使用される「アルキル基」という用語は、1〜24個の炭素原子の分岐または非分岐飽和炭化水素基、例えばメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、t-ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、デシル、テトラデシル、ヘキサデシル、エイコシル、テトラコシルなどのことである。「低級アルキル」基とは、1〜6個の炭素原子を含有するアルキル基のことである。
【0101】
本明細書において使用される「アルコキシ」という用語は、単一の末端エーテル結合を通じて結合しているアルキル基のことであり、すなわち、「アルコキシ」基は、Rが上記定義のアルキルである-ORとして定義することができる。「低級アルコキシ」基とは、1〜6個の炭素原子を含有するアルコキシ基のことである。
【0102】
本明細書において使用される「アルケニル基」という用語は、2〜24個の炭素原子で、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を含有する構造式の炭化水素基のことである。(AB)C=C(CD)などの非対称構造は、E異性体およびZ異性体の両方を含むように意図されている。このことは、非対称アルケンが存在する本明細書中の構造式において想定されることがあり、あるいは、結合記号Cによって明示的に示されることもある。
【0103】
本明細書において使用される「アルキニル基」という用語は、2〜24個の炭素原子で、少なくとも1つの炭素-炭素三重結合を含有する構造式の炭化水素基のことである。
【0104】
本明細書において使用される「アリール基」という用語は、ベンゼン、ナフタレンなどを含むがこれらに限定されない任意の炭素系芳香族基を意味する。「芳香族」という用語は「ヘテロアリール基」も含み、これは少なくとも1個のヘテロ原子が芳香族基の環内に包含された芳香族基として定義される。ヘテロ原子の例としては窒素、酸素、硫黄、およびリンが挙げられるがこれらに限定されない。アリール基は置換されていても置換されていなくてもよい。アリール基は、アルキル、アルキニル、アルケニル、アリール、ハロゲン化物、ニトロ、アミノ、エステル、ケトン、アルデヒド、ヒドロキシ、カルボン酸、またはアルコキシを含むがこれらに限定されない1個または複数個の基で置換されていてもよい。
【0105】
本明細書において使用される「シクロアルキル基」という用語は、少なくとも3個の炭素原子で構成される非芳香族炭素系環のことである。シクロアルキル基の例としてはシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどが挙げられるがこれらに限定されない。「ヘテロシクロアルキル基」という用語は、環の少なくとも1個の炭素原子が窒素、酸素、硫黄、またはリンなどであるがこれらに限定されないヘテロ原子で置換された上記定義のシクロアルキル基のことである。
【0106】
本明細書において使用される「アラルキル」という用語は、上記定義のアルキル基、アルキニル基、またはアルケニル基が芳香族基に結合したアリール基のことである。アラルキル基の一例はベンジル基である。
【0107】
本明細書において使用される「ヒドロキシアルキル基」という用語は、少なくとも1個の水素原子がヒドロキシル基で置換された上記のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アラルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン化アルキル基、またはヘテロシクロアルキル基のことである。
【0108】
「アルコキシアルキル基」という用語は、少なくとも1個の水素原子が上記のアルコキシ基で置換された上記のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アラルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン化アルキル基、またはヘテロシクロアルキル基として定義される。
【0109】
本明細書に開示される化合物は、上記で列挙した2個以上の基を独立して有することができる。例えば、R
1が直鎖アルキル基である場合、アルキル基の1個の水素原子はヒドロキシル基、アルコキシ基などで置換されていてもよい。選択される基に応じて、第1の基を第2の基内に組み込んでもよく、あるいは、第1の基を第2の基に懸垂させてもよい(すなわち結合させてもよい)。例えば、「エステル基を含むアルキル基」という語句に関して、エステル基をアルキル基の骨格内に組み込んでもよい。あるいは、エステルをアルキル基の骨格に結合させてもよい。第1の基を第2の基に埋め込むかまたは結合させるかは、選択される基の性質によって決定される。
【実施例】
【0110】
以下の実施例は、本明細書において記載および特許請求される化合物、組成物、物品、装置、および/または方法をどのようにして作製および評価するかの完全な開示および説明を当業者に示すために記載されるものであり、純粋な例示であるように意図されており、本発明者らがその発明であると見なしているものの範囲を限定するようには意図されていない。数(例えば量、温度など)について正確さを確保するよう努めたが、いくらかの誤差および偏差を考慮すべきである。別途指示がない限り、部は重量部であり、温度は℃または周囲温度であり、圧力は大気圧またはその近傍である。反応条件、例えば成分濃度、所望の溶媒、溶媒混合物、温度、圧力、ならびに他の反応範囲および反応条件の数多くの変形および組み合わせを、記載の方法から得られる生成物純度および生成物収率を最適化するために使用することができる。そのような方法条件を最適化するには、妥当かつ日常的な実験しか必要としない。
【0111】
実施例1
第1の実施例では、モデルフェノキシ基としての、m-クレゾールで官能化された金属-フタロシアニン(Pc)をうまく合成することができる(スキーム1)。すべてのPcは紫外可視分光測定およびサイクリックボルタンメトリーによって特徴づけた。
【0112】
スキーム1
スキーム1: m-クレゾールで官能化されたフタロシアニン: (m-クレゾール)-AlPc、(m-クレゾール)-GaPc、および(m-クレゾール)-InPc。
【0113】
本明細書に記載のフタロシアニン(Pc)を調製するための様々な方法を使用することができる。サブフタロシアニンの固体状態配置を設計する過去の方法論(Ind. Eng. Chem. Res. 2011, 50, 10910)を、金属を含有する本明細書に記載のフタロシアニン(Pc)の合成にまで拡張することができる。III族金属含有Pc(MPc)前駆体の塩化物-金属結合は、フェノキシド基のような求核剤による塩化物イオンの置換を受けやすい。
【0114】
予想実施例
例えば、オーブン乾燥および脱気100mlガラス反応器中のトルエン25mLにCl-AlPc(0.50g、0.87mmol)およびm-クレゾール(3.20g、29.63mmol)の混合物を加えることができた。反応混合物を超高純度N
2ガス下で115℃に終夜加熱することができた。粗生成物を室温に冷却した後、塩基性水溶液(2M KOH)で洗浄して過剰のフェノールを除去し、減圧乾燥させる。いくつかの場合、官能化Pcをイソプロパノールで洗浄し(場合によっては超音波処理し)、濾過して過剰のフェノールを除去することができる。得られた生成物を
1H NMR分光測定(DMSO)およびDART質量分析によって特徴づける。同様の条件を使用して、AlPc、GaPc、InPcのm-クレゾール誘導体(スキーム1)をクロロベンゼンおよびトルエン中で合成することができた。
【0115】
III族金属含有フタロシアニン(Pc)のサイクリックボルタンメトリー:
ジクロロメタン電解液中0.1M過塩素酸テトラブチルアンモニウム(TBAP)溶液中にて3電極電池アセンブリを室温で使用してサイクリックボルタンメトリー(CV)を行った。作用電極はグラッシーカーボンディスク電極とし、対極は研磨白金線とし、参照電極はAg/AgClとした。内部標準ビス(ペンタメチルシクロペンタジエニル)鉄(E
1/2,red = 0.012V)および走査速度100mV/秒をすべての測定に使用した。溶存酸素が存在しなくなるまで(各運転前の20〜30分間)、試料に窒素を吹き込んだ。各III群金属含有Pcに特徴的なサイクリックボルタモグラムは
図1に見ることができる。ピーク酸化
、ピーク還元
、半ピーク酸化
、および半ピーク還元
に関して報告されるCV測定による結果も表1に見ることができる。最後に比較として、III族金属含有Pcに対応するすべての最高被占軌道(E
HOMO)を、報告された経験的関係
(Dandrade et al. Organic Electronics 2005, 6, 11-20))から計算した。表1に報告する。
【0116】
m-クレゾール-GaPcおよびm-クレゾール-InPcはいずれも、それぞれHOMO準位-6.0eVおよび-5.4eVに対応する単一の可逆的酸化および2つの別個の可逆的還元を明らかにした(
図1、表1)。未反応Cl-GaPcは、ジクロロメタン(DCM)に可溶性ではなく、かつ/または少量で存在することから、これらの電気化学的測定値に影響を与えない。
【0117】
(表1)III族金属含有フタロシアニンの電気化学的および光学的特徴づけ
(Dandrade et al. Organic Electronics 2005, 6, 11-20)
2 E
Gap,OptはE
Gap,Opt = h*C/λを使用して決定した。式中、hはプランクの定数であり、Cは光の速度であり、λは吸光度スペクトルのカットオフ波長である。
3 E
LUMO = E
HOMO - E
Gap,Opt
【0118】
本出願を通じて様々な刊行物が参照される。これらの刊行物の開示は、本明細書に記載の化合物、組成物、および方法をより完全に説明するために、その全体が参照により本出願に組み入れられる。
【0119】
本明細書に記載の化合物、組成物、および方法に対して様々な修正および変形を行うことができる。本明細書に記載の化合物、組成物、および方法の他の局面は、本明細書の検討、ならびに本明細書に開示される化合物、組成物、および方法の実施により明らかとなろう。本明細書および実施例は例示的なものとみなされるように意図される。