(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記棒状の操作部材本体の側面に設けられ、前記棒状の操作部材本体が当該操作部材本体に接触する前記可動側部材の前記筒状部分の上端または前記ビームに対する滑りを抑制する滑り抑制部をさらに有する、
請求項11に記載の操作部材。
【背景技術】
【0002】
高速道路の中央分離帯などの道路または当該道路に隣接した所定の場所には、従来より地面に固定された防護柵が設置されている。このような防護柵は、支柱が地面に埋設されて当該地面に固定されているので、交通事故などの緊急時において、防護柵が障害となって、緊急車両が中央分離帯を越えて反対側車線へ行くこと、すなわち、Uターンすること、ができないおそれがある。
【0003】
そこで、特許文献1に記載されているように、平常時には地面に固定され、緊急時には移動可能な防護柵を設置することが提案されている。
【0004】
このような移動可能な防護柵は、道路の上を移動可能な複数の台車部と、前記台車部の上にそれぞれ立設された支柱と、支柱を横切る方向に延び、当該支柱に連結されたビームパイプと、台車部を道路に着脱自在に固定する台車部固定部とを備えている。
【0005】
台車部は、支柱を支持する支持台と、当該支持台を貫通する支持筒と、当該支持台の下部に設けられ、道路上を転動することが可能なキャスタとを備えている。支持筒は、支持台を貫通した状態で当該支持台に固定されている。台車部固定部は、支持筒に挿入および離脱が可能な長尺の挿入部材と、地面に固定され、挿入部材を固定する固定筒とを備えている。
【0006】
上記の防護柵では、通常の使用状態では、台車部は、挿入部材によって地面に固定される。すなわち、挿入部材が支持台に固定された支持筒に挿入され、さらに当該挿入部材の先端部が中央分離帯の地面に固定された固定筒に挿入される。これによって、台車部を中央分離帯の地面に固定することが可能である。この状態では、車両等がビームまたは支柱に衝突した時に、当該支柱が受ける衝撃は、支持台から当該支持台に固定された支持筒へ伝達され、支持筒を介して挿入部材に伝達される。そして、挿入部材に伝達された衝撃は、地面に固定された固定筒で受け止められる。これにより、防護柵は、中央分離帯で静止した状態で車両等の衝撃を受けることが可能である。
【0007】
一方、緊急時には、挿入部材を上方に移動させて固定筒から引き抜くとともに、支持筒から分離させることにより、容易に台車部の固定を解除することが可能である。これにより、台車部のキャスタを道路上で転動させて、容易に防護柵を道路上で移動させることが可能である。その結果、緊急時には防護柵を中央分離帯から離脱した位置へ移動させることにより、緊急車両などが中央分離帯を越えてUターンするための区間を確保することが可能になる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記の防護柵では、車両等の衝突時に当該防護柵が動かないように台車部を地面に強固に固定するために、台車部は、挿入部材を支持する部材として支持筒を有している。したがって、支持台には、支柱が立設されるとともに、当該支柱に隣接する位置に支持筒が固定されている。そのため、防護柵の構造が複雑であるとともに、防護柵の小型化および軽量化が難しいという問題がある。
【0010】
一方、支持筒を省略した場合には、挿入部材が支持台を貫通しただけの状態では、挿入部材と支持台との接触面積が小さく、支持台と挿入部材との結合状態が不十分である。そのため、防護柵は車両等の衝突時の衝撃に耐えうるだけの強度を維持することが難しくなる。
【0011】
また、上記の防護柵では、緊急時に防護柵を移動させる際に、挿入部材は支持筒から引き抜いて当該支持筒から分離させるので、緊急時には挿入部材を支持筒から分離された状態で保管しなければならない。そのため、挿入部材が紛失するおそれがあり、挿入部材の保管および管理が難しいという問題がある。
【0012】
本発明はかかる問題を解消するためになされたものであり、防護柵の強度を維持しながら小型化および軽量化が可能であり、かつ、防護柵の可動側の部材を地面に固定する部材の保管および管理が容易な防護柵を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の防護柵は、道路または当該道路に隣接する場所における所定の位置に配置される防護柵であって、上下方向に開放した第1空間を囲む筒状部分を有し、前記道路の上を移動可能な複数の可動側部材と、前記複数の可動側部材の前記筒状部分を横切る方向に延び、前記複数の可動側部材の前記筒状部分のそれぞれに連結されたビームと、前記所定の地面に固定され、上方に開放した第2空間を囲む形状を有する複数の静止側部材と、第1の高さ位置と当該第1の高さ位置よりも高い位置である第2の高さ位置との間で上下方向に移動自在に前記第1空間に収容された連結部材と、前記連結部材を前記第2の高さ位置で保持する保持部とを備え、前記連結部材は、前記第1の高さ位置では、前記可動側部材の第1空間および前記静止側部材の前記第2空間にそれぞれ挿入された状態で、当該可動側部材と当該静止側部材との間にまたがって配置され、一方、前記第2の高さ位置では、前記静止側部材から上方に離脱した状態で、前記保持部によって当該第2の高さ位置に保持されることを特徴とするものである。
【0014】
かかる構成では、連結部材は、上下方向に移動自在に可動側部材の第1空間に収容されている。連結部材は、第1の高さ位置では、可動側部材の第1空間および静止側部材の第2空間にそれぞれ挿入された状態で、当該可動側部材と当該静止側部材との間にまたがって配置される。これにより、可動側部材と静止側部材とは、当該連結部材によって橋渡しされた状態で連結され、当該可動側部材を地面に固定することが可能である。そのため、従来の防護柵のように連結部材を受ける部材として支柱とは別に支持筒を設ける必要が無い。しかも、連結部材は、ビームが連結された筒状部分を内側から直接支持することが可能になる。そのため、防護柵の強度を維持しながら小型化および軽量化が可能である。
【0015】
さらに、緊急時において連結部材を前記第1の高さ位置よりも上方の第2の高さ位置へ移動させたときには、地面に固定された静止側部材から上方に離脱する。この第2の高さ位置では、連結部材は、保持部によって当該第2の高さ位置に保持される。そのため、緊急時に連結部材が紛失するおそれが無くなり、可動側部材を地面に固定する連結部材の保管および管理を容易に行うことが可能である。
【0016】
前記可動側部材は、支持台と、前記支持台を貫通した状態で当該支持台に立設された支柱とを備え、前記筒状部分は、前記支柱によって構成され、前記第1空間は、前記支柱の内部に形成されているのが好ましい。
【0017】
かかる構成によれば、支柱を支持台に貫通した状態で当該支持台に立設することによって、可動側部材において連結部材を第1空間内部で支持する面を上下方向に連続させることが可能である。また、支柱が支持台に貫通した状態で当該支持台に固定されることにより、防護柵の剛性が向上する。
【0018】
前記連結部材は、前記可動側部材の前記第1空間の内部で前記筒状部分の中心軸回りに回転可能な外径を有し、上下方向に延びる本体と、前記本体の側面に設けられた下降規制部とを有しており、前記可動側部材の前記筒状部分には、上下方向に延び、前記下降規制部の上下方向への移動を許容する溝と、当該溝の上端から当該筒状部分の周方向にずれた位置において前記下降規制部が載置される載置面とが形成され、前記保持部は、前記下降規制部と前記載置面とによって構成され、前記下降規制部が前記筒状部分の前記載置面に載置されることにより、前記連結部材の下降が規制され、前記連結部材は前記第2の高さ位置に保持されるのが好ましい。
【0019】
かかる構成では、連結部材の本体の側面に設けられた下降規制部は、可動側部材の筒状部分に形成された溝の中を上下方向へ移動可能である。そのため、連結部材は、下降規制部が筒状部分に干渉することなく、第1の高さ位置と第2の高さ位置との間で上下方向に昇降することが可能である。緊急時には、連結部材を上方の第2の高さ位置へ移動させて、地面に固定された静止側部材から離脱させるとともに下降規制部を溝の上端まで移動させる。そして、連結部材を筒状部分の中心軸回りに回転させて、可動側部材の筒状部分の溝の上端から周方向にずれた位置にある載置面に載置させる。これによって、連結部材の下降が規制される。したがって、連結部材は、下降規制部とそれを載置する載置面とによって、第2の高さ位置に保持される。そのため、連結部材は、簡単な構成で、静止側部材から離脱した第2の高さ位置で保持される。その結果、緊急時に連結部材が紛失するおそれが無くなり、連結部材の保管および管理を容易に行うことが可能である。
【0020】
前記ビームは、上下方向に離間して互いに対向する上板および下板と、当該上板および下板を連結することにより中空断面を形成する一対の側板とを有しており、前記上板および前記下板は、前記可動側部材の前記筒状部分が貫通する貫通孔と、当該貫通孔に連通して、前記下降規制部の上下方向への通過を許容する形状を有する切欠きとを有し、前記切欠きは、前記筒状部分の上下方向に延びる前記溝に連通するのが好ましい。
【0021】
かかる構成では、ビームとして、上板および下板並びに一対の側板によって構成されたいわゆる箱型のボックスビームが用いられている。この場合でも、連結部材が可動側部材の筒状部分の内部で上下方向へ移動させる際に、筒状部分の溝に沿って上下方向へ移動する下降規制部は、当該ビームの上板および下板に形成された切欠きを通して上下方向の移動が許容される。そのため、下降規制部がビームに干渉することなく連結部材の上下移動が可能である。
【0022】
前記連結部材は、前記本体の上端に設けられ、手で把持することが可能な形状を有する取っ手をさらに有してもよい。この場合、前記本体の下部が前記静止側部材の第2空間に挿入された状態では、前記取っ手の全体が、前記可動側部材の筒状部分の内部に収容されるのが好ましい。
【0023】
かかる構成では、連結部材が静止側部材の第2空間に挿入された状態では、取っ手が支柱の内部に収容されるので、外部から取っ手が見えにくくなる。そのため、防護柵の管理者等以外の第3者による連結部材の不正操作のおそれを低減することが可能である。
【0024】
なお、連結部材に溝を設けるとともに可動側部材の筒状部分に当該溝に係合する係合部を設けてもよい。具体的には、前記連結部材は、前記可動側部材の前記第1空間の内部で前記筒状部分の中心軸回りに回転可能な外径を有する上下方向に延びる本体を有しており、前記本体は、当該本体の側面に形成され、上下方向に延びる上下方向溝と、前記連結部材の側面に形成され、前記上下方向溝に連通して当該本体の周方向に延びる周方向溝とを有しており、前記可動側部材の前記筒状部分の内側には、前記上下方向溝および前記周方向溝の内部を相対的に移動可能な係合部が設けられ、前記保持部は、前記係合部と前記周方向溝の内壁とによって構成され、前記係合部が前記連結部材の前記周方向溝の内壁に係合することにより、前記連結部材の下降が規制され、前記連結部材は前記第2の高さ位置に保持されてもよい。
【0025】
かかる構成では、可動側部材の筒状部分の内側に設けられた係合部は、連結部材に形成された上下方向溝の中を上下方向へ相対的に移動することが可能である。そのため、連結部材は、係合部に干渉することなく、上下方向に昇降することが可能である。緊急時には、連結部材を上方の第2の高さ位置へ移動させて、地面に固定された静止側部材から離脱させる。そして、連結部材を筒状部分の中心軸回りに回転させることにより、係合部を上下方向溝に連通する周方向溝の内壁に係合させる。これによって、連結部材の下降が規制される。したがって、連結部材は、係合部と周方向溝の内壁とによって、第2の高さ位置に保持される。そのため、連結部材は、簡単な構成で、静止側部材から離脱した第2の高さ位置で保持される。その結果、緊急時に連結部材が紛失するおそれが無くなり、連結部材の保管および管理を容易に行うことが可能である。また、上下方向溝が形成された連結部材は、その周囲を可動側部材の筒状部分によって覆われている。そのため、車両等が防護柵に衝突したときの衝撃によって連結部材の上下方向溝が開いて当該連結部材が変形するおそれを低減することが可能である。
【0026】
前記連結部材は、前記本体の上端に設けられた取っ手をさらに有しており、前記取っ手は、前記本体の上端に立設され、上下方向に延びる柄と、当該柄の上端に連結され、手で把持することが可能な形状を有する把持部とを有し、前記柄の長さは、前記本体が前記静止側部材に挿入された状態で当該柄の上端に連結された前記把持部が前記係合部よりも上に位置するような長さであるのが好ましい。
【0027】
かかる構成によれば、取っ手の把持部は常に突起の上の位置にあるので、連結部材を上下方向に移動するときに、取っ手の把持部が突起に干渉するおそれを回避することが可能である。
【0028】
前記防護柵は、前記筒状部分を貫通して前記ビームを当該筒状部分に固定する固定具をさらに備えており、前記固定具における前記筒状部分の前記第1空間の内部を通る部分は、前記係合部を構成しているのが好ましい。
【0029】
かかる構成によれば、ビームを筒状部分に固定する固定具における前記筒状部分の前記第1空間の内部を通る部分を、前記係合部として、連結部材を第2の高さ位置に保持するために用いることが可能である。そのため、部品点数の削減ならびに構造の簡素化が可能である。
【0030】
前記ビームは、前記固定具によって前記筒状部分に固定される板状または棒状の部材を備えるのが好ましい。
【0031】
かかる構成によれば、板状または棒状の部材によって製造されたビームは、簡単な形状であり、しかも軽量である。そのため、ビームを固定具によって筒状部分に簡易に固定することが可能である。
【0032】
本発明の防護柵の取り扱い方法は、上記の防護柵の取り扱い方法であって、上下方向に延びる本体および当該本体の上端に設けられ手で把持することが可能な形状を有する取っ手を有する前記連結部材であって、当該連結部材が前記可動側部材の前記第1空間および前記静止側部材の第2空間に挿入された状態で、前記連結部材の前記取っ手に棒状の操作部材の先端側の端部を引掛ける工程と、前記棒状の操作部材の側面を前記可動側部材の前記筒状部分の上端または前記ビームに当てて支点にしながら前記棒状の操作部材の手元側端部を下方へ押すことにより、テコの要領で、前記連結部材を上方へ引き上げる工程と、を含むことを特徴とする。
【0033】
静止側部材の内部に砂などの微小異物が付着した場合、または冬季に当該静止側部材の内部に霜や氷が発生した場合には、連結部材は静止側部材から抜けにくくなるおそれがある。そのような不具合を回避するために、上記のように、連結部材の取っ手に棒状の操作部材の先端側の端部を引掛けて、棒状の操作部材の側面を筒状部分の上端またはビームに当てて支点にしながら棒状の操作部材の手元側端部を下方へ押す方法が提案される。この方法では、棒状の操作部材を用いてテコの要領で小さい操作力で連結部材を引き上げることが可能である。その結果、連結部材を静止側部材から引き抜く作業を容易に行なうことが可能である。
【0034】
本発明の操作部材は、上記の防護柵の連結部材を引き上げるときに用いられる操作部材であって、前記先端側の端部と、前記手元側の端部とを有する棒状の操作部材本体と、前記先端側の端部に設けられたフックとを有しており、前記フックは、本体および当該本体の上端に設けられ手で把持することが可能な形状を有する取っ手を有する前記連結部材における当該取っ手を引掛けることが可能な形状を有することを特徴とする。
【0035】
かかる構成によれば、操作部材本体の先端側の端部に設けられたフックを連結部材の取っ手に引掛けることにより、取っ手が可動側部材の筒状部分の内部に収容された状態や取っ手がビームよりも下方に位置する状態であっても、連結部材を容易に引き上げることが可能である。
【0036】
前記操作部材は、さらに、前記棒状の操作部材本体の側面に設けられ、前記棒状の操作部材本体が当該操作部材本体に接触する前記可動側部材の前記筒状部分の上端または前記ビームに対する滑りを抑制する滑り抑制部を有するのが好ましい。
【0037】
かかる構成によれば、棒状の操作部材本体の側面を筒状部分の上端やビームに当ててテコの要領で連結部材を引き上げる際に、滑り抑制部によって、棒状の操作部材本体が筒状部分の上端やビームに対して滑りにくくなる。そのため、棒状の操作部材本体が筒状部分やビームに対して移動するおそれが低減するので、操作部材を安定させた状態でテコの要領で連結部材を容易に引き上げることが可能である。
【0038】
本発明の防護柵システムは、道路または当該道路に隣接する場所における所定の位置に配置される防護柵と、当該防護柵を取り扱うときに用いられる操作部材とを備えた防護柵システムであって、前記防護柵は、上下方向に開放した第1空間を囲む筒状部分を有し、前記道路の上を移動可能な複数の可動側部材と、前記複数の可動側部材の前記筒状部分を横切る方向に延び、前記複数の可動側部材の前記筒状部分のそれぞれに連結されたビームと、前記所定の地面に固定され、上方に開放した第2空間を囲む形状を有する複数の静止側部材と、第1の高さ位置と当該第1の高さ位置よりも高い位置である第2の高さ位置との間で上下方向に移動自在に前記第1空間に収容され、本体、および当該本体の上端に設けられ手で把持することが可能な形状を有する取っ手を有する連結部材と、前記連結部材を前記第2の高さ位置で保持する保持部とを備え、前記連結部材は、前記第1の高さ位置では、前記可動側部材の第1空間および前記静止側部材の前記第2空間にそれぞれ挿入された状態で、当該可動側部材と当該静止側部材との間にまたがって配置され、一方、前記第2の高さ位置では、前記静止側部材から上方に離脱した状態で、前記保持部によって当該第2の高さ位置に保持され、前記操作部材は、前記先端側の端部と、前記手元側の端部とを有する棒状の操作部材本体と、前記先端側の端部に設けられ、前記連結部材の前記取っ手を引掛けることが可能な形状を有するフックとを有していることを特徴とする。
【0039】
かかる構成によれば、操作部材の操作部材本体の先端側の端部に設けられたフックを防護柵の連結部材の取っ手に引掛けることにより、取っ手が可動側部材の筒状部分の内部に収容された状態や取っ手がビームよりも下方に位置する状態であっても、連結部材を容易に引き上げることが可能である。
【発明の効果】
【0040】
以上説明したように、本発明の防護柵によれば、防護柵の強度を維持しながら小型化および軽量化が可能であり、かつ、可動側部材を地面に固定する連結部材の保管および管理が容易になる。
【0041】
本発明の防護柵の取り扱い方法によれば、防護柵の連結部材を静止側部材から引き抜く作業を容易に行なうことが可能である。
【0042】
本発明の操作部材およびそれを用いた防護柵システムによれば、連結部材の取っ手が筒状部分内部に収容された状態や当該取っ手がビームよりも下方に位置する状態であっても、連結部材を容易に引き上げることができる。
【発明を実施するための形態】
【0044】
つぎに図面を参照しながら本発明の防護柵の実施形態についてさらに詳細に説明する。
【0045】
図1〜3に示される防護柵1は、道路および道路に隣接する場所における所定の位置に配置される。防護柵1は、例えば、道路の中央分離帯Cに設置される場合には、当該中央分離帯Cの地面Gに固定された固定式の防護柵(図示せず)が途切れた区間で、当該固定式の防護柵と並んで配置される。
【0046】
防護柵1は、複数の可動側部材2と、当該複数の可動側部材2をつなぐボックスビーム4と、複数の固定筒10(静止側部材)と、各可動側部材2を固定筒10に連結する挿入管9と、挿入管9を上方へ引き上げたときに所定の高さ位置で保持する保持部とを備える。
【0047】
複数の可動側部材2は、
図6〜7に示されるように、それぞれ、上下方向に開放した第1空間3aを囲む筒状部分を有し、道路の上を移動可能な構成を有する。具体的には、可動側部材2は、支持台6と、筒状の支柱3と、道路の上を転がるキャスタ8とを備えている。
【0048】
支持台6は、支柱3が挿入可能な内径を有する貫通孔6a(
図6参照)を有する。貫通孔6aは、支持台6の幅方向および長手方向の両方における中間位置に配置される。
【0049】
支柱3は、支持台6を貫通した状態で当該支持台6に立設されている。具体的には、支柱3は、支持台6の貫通孔6aに挿入され、当該支持台6の少なくとも上面および下面のいずれかの面、(本実施形態では、上下両面)に対して溶接によって固定されている。
【0050】
筒状の支柱3は、上記の第1空間3aを囲む筒状部分を構成する。支柱3には、上下方向に延びる溝13が形成されている。溝13の上端は、支柱3の上端まで達して上方に開放されている。溝13の上端から当該支柱3の周方向にずれた位置には、平坦な載置面14が形成されている。
【0051】
キャスタ8は、任意の水平方向に移動できるように地面Gの上を転動する転動部材である。キャスタ8は、ボックスビーム4の延びる方向と直交する方向だけでなく、その他の方向へも道路上を自由自在に転動することが可能であるので、防護柵1を中央分離帯から容易に退避させることが可能である。
【0052】
ボックスビーム4は、
図1〜2に示されるように、複数の可動側部材2の支柱3を横切る方向に延び、複数の可動側部材2の支柱3のそれぞれに連結されている。
【0053】
ボックスビーム4は、
図1〜2および
図4に示されるように、上下方向に離間して互いに対向する上板4aおよび下板4bと、当該上板4aおよび下板4bを連結することにより中空断面を形成する一対の側板4cとを有している。ボックスビーム4は、さらにこれら上板4a、下板4bおよび一対の側板4cによって形成される長尺の箱体の長手方向の端部の開口を閉じる端板4dを有する。これら上板4a、下板4b、一対の側板4c、および端板4dによって、いわゆる箱型のボックスビームが構成されている。
【0054】
上板4aおよび下板4bは、可動側部材2の支柱3が貫通する貫通孔4eと、当該貫通孔4eに連通する切欠き15と、ボルト18が挿通されるボルト挿通孔4fとを有している。切欠き15は、支柱3の上下方向に延びる溝13に連通する。切欠き15は、後述の下降規制部12の上下方向への通過を許容する形状を有する。
【0055】
ボックスビーム4は、
図6〜7に示されるように、その貫通孔4eに支柱3が挿入された状態で、支柱3の周面に固定された載置板17の上に載置される。その状態で、ボックスビーム4は、載置板17とともにボルト18によって上下方向に貫通され、ボルト18の端部にナット19が螺合される。これにより、ボックスビーム4は、支柱3の外周面に固定される。なお、載置板17には、溝13に連通する切欠き17aが形成されている。
【0056】
複数の固定筒10は、
図1および
図6〜7に示されるように、互いに離間した位置で中央分離帯Cなどの所定の位置の地面Gに固定されている。固定筒10は、挿入管9が挿入および離脱が可能な内径を有する。各固定筒10は、上方に開放した第2空間10aを囲む形状を有する。固定筒10の上端開口の縁には、リング状のシール部材11が取り付けられる。シール部材11は、固定筒10と挿入管9との隙間を塞いで当該隙間へのゴミや砂などの異物の侵入を防ぐ。シール部材11は、その形状および構造はとくに限定されないが、例えば、固定筒10と挿入管9との隙間を塞ぐ本体と、当該本体の上端縁から水平方向に延びるつば部を有する。
【0057】
挿入管9は、第1の高さ位置(
図6〜7に示される高さ位置)と当該第1の高さ位置よりも高い位置である第2の高さ位置(
図8〜9に示される高さ位置)との間で上下方向に移動自在に第1空間3aに収容されている。
【0058】
挿入管9は、
図5に示されるように、上下方向に延びる本体9aと、取っ手9bと、本体9aの側面に設けられた下降規制部12とを有している。
【0059】
本体9aは、上下方向に延びる筒状の部材などからなり、可動側部材2の第1空間3aの内部で上下方向に移動可能で、かつ支柱3の中心軸回りに回転可能な外径を有する。本体9aの上端は、蓋板9cによって閉じられている。
【0060】
下降規制部12は、本体9aの側面から当該側面を離れる方向に突出したものによって構成され、例えば、ピン状または棒状の突起などによって構成される。
【0061】
取っ手9bは、本体9aの上端を閉じる蓋板9cに取り付けられている。取っ手9bは、一対の柄9b1と、当該一対の柄9b1の上端同士をつなぐ把持部9b2とを有する。把持部9b2は、防護柵1を取り扱う作業者等が手で握ることが可能な形状を有する。
【0062】
挿入管9の本体9aは、支柱3の第1空間3aに上下方向に移動可能に収容される。本体9aの側面に設けられた下降規制部12は、支柱3の溝13に挿入され、上下方向の移動が許容されている。
【0063】
保持部は、挿入管9を第2の高さ位置(
図8〜9参照)で保持する構成を有する。具体的には、保持部は、上記の挿入管9の下降規制部12と支柱3の上端に形成された載置面14とによって構成されている。下降規制部12が挿入管9が第2の高さ位置において載置面14に載置されることにより、挿入管9を第2の高さ位置(
図8〜9参照)で保持することが可能である。
【0064】
以上のように構成された防護柵1では、通常の使用状態では、挿入管9は、第1の高さ位置(
図6〜7の高さ位置)にあり、可動側部材2の第1空間3aおよび固定筒10の第2空間10aにそれぞれ挿入された状態で、当該可動側部材2と当該固定筒10との間にまたがって配置される。これにより、可動側部材2と固定筒10とは、当該挿入管9によって橋渡しされた状態で連結され、当該可動側部材2を地面Gに固定することが可能である。そのため、従来の防護柵1のように挿入管9を受ける部材として支柱とは別に支持筒を設ける必要が無い。しかも、挿入管9は、ボックスビーム4が連結された支柱3を内側から直接支持することが可能になる。そのため、防護柵1の強度を維持しながら小型化および軽量化が可能である。
【0065】
緊急時には、作業者は挿入管9の取っ手9bを把持して、挿入管9を第1の高さ位置よりも上方の第2の高さ位置(
図8〜9の高さ位置)へ移動させ、挿入管9を地面Gに固定された固定筒10から上方に離脱する。そして、挿入管9を支柱3の中心軸回りに回転させて、可動側部材2の支柱3の溝13の上端から周方向にずれた位置にある載置面14に載置させる。これによって、挿入管9の下降が規制される。したがって、挿入管9は、下降規制部12とそれを載置する載置面14とによって、第2の高さ位置に保持される。このようにして、挿入管9は、下降規制部12および載置面14によって構成された保持部によって、当該第2の高さ位置に保持される。その結果、緊急時に挿入管9が紛失するおそれが無くなり、可動側部材2を地面Gに固定する挿入管9の保管および管理を容易に行うことが可能である。
【0066】
本実施形態の防護柵1では、可動側部材2は、支持台6と、支持台6を貫通した状態で当該支持台6に立設された支柱3とを備えている。可動側部材2の第1空間3aは、支柱3の内部に形成されている。この構成では、支柱3を支持台6に貫通した状態で当該支持台6に立設することによって、可動側部材2において挿入管9を第1空間3a内部で支持する面を上下方向に連続させることが可能である。また、支柱3が支持台6に貫通した状態で当該支持台6に固定されることにより、防護柵1の剛性が向上する。なお、可動側部材2は、支柱3と支持台6とを一体形成したものを備えてもよい。
【0067】
本実施形態の防護柵1では、挿入管9の本体9aの側面に設けられた下降規制部12は、可動側部材2の支柱3に形成された溝13の中を上下方向へ移動可能である。そのため、挿入管9は、下降規制部12が支柱3に干渉することなく、第1の高さ位置と第2の高さ位置との間で上下方向に昇降することが可能である。また、この防護柵1では、挿入管9を第2の高さ位置(
図8〜9参照)に保持する保持部は、下降規制部12と支柱3の上端の載置面14とによって構成されている。そのため、挿入管9は、簡単な構成で、固定筒10から離脱した第2の高さ位置で保持される。その結果、緊急時に挿入管9が紛失するおそれが無くなり、挿入管9の保管および管理を容易に行うことが可能である。
【0068】
なお、上記の実施形態では、載置面14は、支柱3の上端に形成されているが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、溝13の上端が支柱3の上端に達しておらず、かつ、溝13の上端から周方向に延びる周方向溝が支柱3の側面に形成されている場合には、当該周方向溝の内壁を載置面として用いてもよい。
【0069】
本実施形態の防護柵1では、ビームとして、上板4aおよび下板4b並びに一対の側板4cによって構成されたいわゆる箱型のボックスビーム4が用いられている。この場合でも、挿入管9が可動側部材2の支柱3の内部で上下方向へ移動させる際に、支柱3の溝13に沿って上下方向へ移動する下降規制部12は、当該ボックスビーム4の上板4aおよび下板4bに形成された切欠き15を通して上下方向の移動が許容される。そのため、下降規制部12がボックスビーム4に干渉することなく挿入管9の上下移動が可能である。
【0070】
本実施形態の防護柵1では、
図6〜7に示されるように、挿入管9の本体9aの下部が固定筒10の第2空間10aに挿入された状態では、取っ手9bの全体が、可動側部材2の支柱3の内部に収容されるので、外部から取っ手9bが見えにくくなる。そのため、防護柵1の管理者等以外の第3者による挿入管9の不正操作のおそれを低減することが可能である。
【0071】
つぎに、挿入管9の容易に引き上げることが可能な防護柵1の取り扱い方法について説明する。
【0072】
固定筒10の内部に砂などの微小異物が付着した場合、または冬季に当該固定筒10の内部に霜や氷が発生した場合には、挿入管9は固定筒10から抜けにくくなるおそれがある。そのような不具合を回避するために、
図10(a)〜(c)に示されるように、棒状の操作部材51を用いて、テコの要領で小さい操作力によって挿入管9を引き上げることが考えられる。
【0073】
防護柵1の挿入管9の引上げのために用いられる操作部材51は、例えば、
図10(a)に示されるように、先端側の端部52aと手元側の端部52bとを有する棒状の操作部材本体52と、当該先端側の端部52aに設けられたフック53とを有する。フック53は、挿入管9の取っ手9bを引掛けることが可能な形状を有し、例えば、折れ曲がった先端部53aを有する。なお、操作部材51は、その端部に取っ手9bに引掛けることができる形状であれば、上記のフック53を備えていなくてもよい。
【0074】
固定筒10に挿入されている挿入管9を上方へ引き上げる場合、10(a)に示されるように、支柱3の内部に収容されている挿入管9の取っ手9bに棒状の操作部材51の先端側の端部52aに設けられたフック53を引掛け、ついで、
図10(b)〜(c)に示されるように、棒状の操作部材51の側面を支柱3の上端またはボックスビーム4に当てて支点にしながら棒状の操作部材51の手元側端部52bを下方へ押せばよい。
【0075】
具体的には、本実施形態の 防護柵1の取り扱い方法では、2つの工程(I)、(II)すなわち、
(I) 挿入管9が可動側部材2の第1空間3aおよび固定筒10の第2空間10aに挿入された状態で、挿入管9の取っ手9bに棒状の操作部材51の先端側の端部51の先端側の端部52aに設けられたフック53を引掛ける工程(
図10(a)参照)と、
(II) 棒状の操作部材51の側面を可動側部材2の支柱3の上端またはボックスビーム4に当てて支点にしながら棒状の操作部材51の手元側端部52aを下方へ押すことにより、テコの要領で、挿入管9を上方へ引き上げる工程(
図10(b)〜(c)参照)と
が順に行われる。
【0076】
この取扱い方法では、棒状の操作部材51を用いてテコの要領で小さい操作力で挿入管9を引き上げることが可能である。その結果、挿入管9を固定筒10から引き抜く作業を容易に行なうことが可能である。
【0077】
本実施形態では、上記のように、防護柵1とそれを取り扱う操作部材51とを組み合わせた防護柵システムを構成することにより、挿入管9の引き抜き作業を容易に行なうことが可能である。
【0078】
具体的には、上記の操作部材51は、フック53を備えているので、操作部材本体52の先端側の端部52aに設けられたフック53を挿入管9の取っ手9bに引掛けることにより、取っ手9bが可動側部材2の支柱3の内部に収容された状態や取っ手9bがボックスビーム4よりも下方に位置する状態であっても、挿入管9を容易に引き上げることが可能である。
【0079】
なお、
図10(c)に示されるように、取っ手9bの少なくとも一部が支柱3の上端よりも上に突出する位置まで挿入管9が引き上げられたときには、
図11(a)〜(b)に示されるように、操作部材本体52の手元側端部52bを取って9bに引掛けて、上記(
図10(a)〜(c)と同様にテコの要領で挿入管9を引き上げればよい。これにより、挿入管9をより上方の位置まで引き上げることが可能である。
【0080】
棒状の操作部材51を用いる場合、棒状の操作部材本体52の側面に滑り抑制部54が設けられているのが好ましい。滑り抑制部54は、棒状の操作部材本体52が当該操作部材本体52に接触する可動側部材2の支柱3の上端またはボックスビーム4に対する滑りを抑制する。
【0081】
滑り抑制部54は、操作部材本体52の側面が上記の支柱3の上端等と接触したときの摩擦を増大させる構成を有しており、例えば、操作部材本体52の側面に設けられたゴム製または合成樹脂製の筒状のキャップなどによって構成される。また、滑り抑制部54は、操作部材本体52n側面に形成された凸凹や複数本の溝などであってもよい。
【0082】
このように滑り抑制部54を備えた構成では、棒状の操作部材本体52の側面を支柱3の上端やボックスビーム4に当ててテコの要領で挿入管9を引き上げる際に、滑り抑制部54によって、棒状の操作部材本体52が支柱3の上端やボックスビーム4に対して滑りにくくなる。そのため、棒状の操作部材本体52が支柱3やボックスビーム4に対して移動するおそれが低減するので、操作部材51を安定させた状態でテコの要領で挿入管9を容易に引き上げることが可能である。
【0083】
上記の実施形態では、
図6〜9に示されるように、可動側部材2の支柱3(筒状部分)に溝13を設けるとともに挿入管9(連結部材)に当該溝13に挿入される下降規制部12が設けられているが、本発明はこれに限定されない。挿入管9(連結部材)を第2の高さ位置に保持できる構成であれば他の構成でもよい。例えば、本発明の他の実施形態として、
図12〜17に示されるように、挿入管9(連結部材)に溝22、23を設けるとともに可動側部材2の支柱3(筒状部分)に当該溝に挿入される係合部24aを設けてもよい。
【0084】
すなわち、
図12〜17に示される実施形態の防護柵は、溝22、23(
図13参照)を有する挿入管9と、板状の本体20a(
図12および
図14参照)を有するガードレール20と、当該ガードレール20を可動側部材2の支柱3に固定するボルト24(
図14参照)と、溝無しの支柱3とを有する点で上記
図1〜9に示される実施形態の防護柵1とは異なる。その他の点については、
図1〜9に示される実施形態の防護柵1と同じであるので、説明を省略する。
【0085】
図13に示される挿入管9は、溝22、23を有する筒状の本体9aと、柄9b1の長い取っ手9bとを有する。
【0086】
具体的には、本体9aは、可動側部材2の第1空間3aの内部で、上下方向に移動可能で、かつ、支柱3の中心軸回りに回転可能な外径を有する上下方向に延びる筒状の部材である。
【0087】
筒状の本体9aの側面において本体9aの軸方向に延びる中心線を挟んで対向する位置には、それぞれ上下方向溝22および周方向溝23が形成されている。上下方向溝22は、上下方向に延びる溝である。周方向溝23は、上下方向溝22の下端に連通し、当該本体9aの周方向に延びる溝である。上下方向溝22および周方向溝23は連続する一連のL字状または逆L字状の溝を構成する。
【0088】
周方向溝23は、本体9aの軸方向に延びる中心線を挟んで対向する位置にそれぞれ配置されている。これらの周方向溝23の周方向に延びる向き(例えば、時計方向または反時計方向)は、互いに同じ向きになっている。
【0089】
ガードレール20は、複数の可動側部材2の支柱3を横切ってそれぞれの支柱3に連結されるビームの一種である。具体的には、ガードレール20は、複数の可動側部材2の支柱3を横切る一対の板状の本体20aと、当該一対の板状の本体20aの両端部の開口を閉じるサイドカバー20bとを有する。
【0090】
なお、本体20aは、板状の部材だけでなく、棒状の部材でもよい。
【0091】
ボルト24は、ガードレール20の一対の板状の本体20aおよび支柱3を貫通して当該一対の板状の本体20aを当該支柱3に固定する固定具である。なお、固定具は、板状の本体20aおよび支柱3を貫通して当該本体20aを支柱3に固定できるものであればよく、ボルト24に限定されない。
【0092】
この実施形態の防護柵では、ボルト24における支柱3の第1空間3aの内部を通る部分は、係合部24aを構成する。係合部24aは、支柱3の内側において、上下方向溝22および周方向溝23の内部を相対的に移動することが可能である。
【0093】
図16〜17に示されるように、係合部24aが挿入管9の周方向溝23の内壁に係合することにより、挿入管9の下降が規制され、挿入管9は第2の高さ位置に保持される。すなわち、挿入管9を第2の高さ位置に保持する保持部は、上記の係合部24aと周方向溝23の内壁とによって構成されている。
【0094】
この構成では、可動側部材2の支柱3の内側に設けられた係合部24aは、
図15〜16に示されるように、挿入管9に形成された上下方向溝22の中を上下方向へ相対的に移動することが可能である。そのため、挿入管9は、係合部24aに干渉することなく、上下方向に昇降することが可能である。緊急時には、挿入管9を上昇させて第1の高さ位置(
図15に示される高さ位置)から第2の高さ位置(
図16〜17に示される高さ位置)へ移動させて、地面Gに固定された固定筒10から離脱させる。そして、
図17に示されるように、挿入管9を支柱3の中心軸回りに回転させることにより、係合部24aを上下方向溝22に連通する周方向溝23の内壁に係合させる。これによって、挿入管9の下降が規制される。したがって、挿入管9は、係合部24aと周方向溝23の内壁とによって、第2の高さ位置に保持される。そのため、挿入管9は、簡単な構成で、固定筒10から離脱した第2の高さ位置で保持される。その結果、緊急時に挿入管9が紛失するおそれが無くなり、挿入管9の保管および管理を容易に行うことが可能である。
【0095】
また、上下方向溝22が形成された挿入管9は、その周囲を可動側部材2の支柱3によって覆われている。そのため、車両等が防護柵1に衝突したときの衝撃によって挿入管9の上下方向溝22が開いて当該挿入管9が変形するおそれを低減することが可能である。
【0096】
図13に示される取っ手9bは、上下方向に延びる一対の長い柄9b1と、それらの柄9b1の上端に連結された把持部9b2を有している。柄9b1の長さは、
図14〜15に示されるように、挿入管9の本体9aが固定筒10に挿入された状態で当該柄9b1の上端に連結された把持部9b2が係合部24aよりも上に位置するような長さである。したがって、取っ手9bの把持部9b2は常に係合部24aの上の位置にあるので、
図14〜17に示されるように、挿入管9を上下方向に移動するときに、取っ手9bの把持部9b2が係合部24aに干渉するおそれを回避することが可能である。
【0097】
上記
図12および
図14に示されるガードレール20は、ボルト24によって支柱3に固定される板状または棒状の本体20aを備える。この構成によれば、板状または棒状の部材によって製造されたガードレール20(ビーム)は、簡単な形状であり、しかも軽量である。そのため、ガードレール20をボルト24によって支柱3に簡易に固定することが可能である。
【0098】
また、
図12および
図14に示される防護柵は、ボルト24における支柱3の第1空間3aの内部を通る部分が係合部24aを構成している。したがって、ガードレール20(ビーム)を支柱3に固定するボルト24(固定具)における支柱3の第1空間3aの内部を通る部分を、係合部24aとして、挿入管9を第2の高さ位置に保持するために用いることが可能である。そのため、部品点数の削減ならびに構造の簡素化が可能である。
【0099】
なお、上記の
図12および
図14に示される防護柵では、ガードレール20の板状の本体20aがボルト24によって支柱3に直接固定されているが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明のさらに他の実施形態として、
図18〜24に示される防護柵のように、ガードレール30が一対の板状の本体30aをつなぐ梁材30bを備え、当該梁材30bがボルト24によって支柱3に固定されてもよい。そのような構成であっても、上記
図12〜17に示される防護柵と同様の作用効果(すなわち、挿入管9を第2の高さ位置で保持できる効果など)を奏することが可能である。
【0100】
図18〜19および
図21に示されるガードレール30は、複数の可動側部材2の支柱3を横切ってそれぞれの支柱3に連結されるビームの一種であり、具体的には、一対の板状の本体30aと、防護柵の幅方向に延び、当該一対の板状の本体30aを連結する梁材30bと、一対の板状の本体30aの両端部の開口を閉じるサイドカバー30cとを有する。このガードレール30では、一対の板状の本体30aを連結する梁材30bを備えているので、一対の板状の本体30aの間隔は、上記の
図14に示される一対の板状の本体20aの間隔よりも広くすることが可能である。
【0101】
なお、
図18〜24に示される例では、梁材30bを支柱3に固定するために、ボルト24が上下方向に2か所用いられ、当該ボルト24の支柱3の内側を通る部分、すなわち、係合部24aが上下方向に2か所配置されている。この場合、周方向溝23は、
図20および
図23に示されるように、係合部24aの配置に対応する位置に2か所形成すればよい。これにより、2つの係合部24aを備えていてもそれぞれ周方向溝23に係合することが可能になる。
【解決手段】防護柵1は、複数の可動側部材2と、複数の可動側部材2の支柱3のそれぞれに連結されたビーム4と、地面に固定された複数の固定筒(静止側部材)10と、第1の高さ位置と第2の高さ位置との間で上下方向に移動自在に可動側部材2の第1空間3aに収容された挿入管(連結部材)9と、挿入管9を第2の高さ位置で保持する保持部とを備えている。挿入管9は、第1の高さ位置では、可動側部材2の第1空間3aおよび固定筒10の第2空間10aにそれぞれ挿入された状態で、当該可動側部材2と当該固定筒10との間にまたがって配置され、第2の高さ位置では、固定筒10から上方に離脱した状態で、保持部によって当該第2の高さ位置に保持される。