特許第6014788号(P6014788)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6014788
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月25日
(54)【発明の名称】ポリカーボネート樹脂組成物及び成形品
(51)【国際特許分類】
   C08L 69/00 20060101AFI20161011BHJP
   C08K 5/49 20060101ALI20161011BHJP
   C08K 5/526 20060101ALI20161011BHJP
   C08G 64/06 20060101ALI20161011BHJP
   C08G 64/08 20060101ALI20161011BHJP
   G02B 1/04 20060101ALI20161011BHJP
【FI】
   C08L69/00
   C08K5/49
   C08K5/526
   C08G64/06
   C08G64/08
   G02B1/04
【請求項の数】6
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2016-521800(P2016-521800)
(86)(22)【出願日】2015年10月29日
(86)【国際出願番号】JP2015005452
【審査請求日】2016年4月8日
(31)【優先権主張番号】特願2015-86056(P2015-86056)
(32)【優先日】2015年4月20日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】396001175
【氏名又は名称】住化スタイロンポリカーボネート株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001276
【氏名又は名称】特許業務法人 小笠原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】河越 昭人
【審査官】 藤井 勲
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−020607(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/142149(WO,A1)
【文献】 特開2008−163194(JP,A)
【文献】 特開2009−020963(JP,A)
【文献】 特開2009−144020(JP,A)
【文献】 特開2010−163549(JP,A)
【文献】 特開2011−068709(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/096410(WO,A1)
【文献】 特開2015−007246(JP,A)
【文献】 特許第5699240(JP,B2)
【文献】 特開2015−044966(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 69/00
C08G 64/00 − 64/42
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1):
【化24】
(式中、G及びGは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数1〜3のアルコキシル基を示す。Lは、炭素数2〜4のアルキレン基を示す。mは、0〜2の整数を示す)
で表されるジヒドロキシ化合物由来の構成単位と、
一般式(2):
【化25】
(式中、Mは、炭素数2〜4のアルキレン基を示す。nは、0〜2の整数を示す)
で表されるジナフトチオフェン化合物由来の構成単位とを有するポリカーボネート樹脂(A2)と、
リン系酸化防止剤(B)と
を含有してなり、
前記リン系酸化防止剤(B)の量が、前記ポリカーボネート樹脂(A2)100重量部に対して0.02〜1.5重量部である、ポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項2】
一般式(1)で表されるジヒドロキシ化合物が、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンであり、一般式(2)で表されるジナフトチオフェン化合物が、3,11−ジヒドロキシエトキシジナフトチオフェンである、請求項に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項3】
リン系酸化防止剤(B)が、一般式(3):
【化26】
(式中、R、R、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜12のアルキルシクロアルキル基、炭素数7〜12のアラルキル基又はフェニル基を示す。Rは、水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を示す。Xは、単結合、硫黄原子又は式:−CHR−(ここで、Rは、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数5〜8のシクロアルキル基を示す)で表される基を示す。Aは、炭素数1〜8のアルキレン基又は式:*−COR−(ここで、Rは、単結合又は炭素数1〜8のアルキレン基を示し、*は、酸素側の結合手であることを示す)で表される基を示す。Y及びZは、いずれか一方がヒドロキシル基、炭素数1〜8のアルコキシ基又は炭素数7〜12のアラルキルオキシ基を示し、もう一方が水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を示す)
で表される化合物である、請求項に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項4】
一般式(3)で表される化合物が、2,4,8,10−テトラ−t−ブチル−6−〔3−(3−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)プロポキシ〕ジベンゾ〔d,f〕〔1,3,2〕ジオキサホスフェピンである、請求項に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項5】
請求項に記載のポリカーボネート樹脂組成物からなる成形品。
【請求項6】
携帯情報端末のカメラに備えられるレンズである、請求項に記載の成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ポリカーボネート樹脂組成物及び成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
セキュリティ分野で使用されるウェブカメラや携帯情報端末のカメラ等の各種カメラ、センサー等の光学系において、耐熱性、寸法安定性等に優れる点から、光学部材として光学ガラスが採用されている。しかしながら、近年は光学部材にさらなる小型化が要求されてきており、成形加工が難しく生産性に劣るため、光学ガラスは実用的ではない。
【0003】
そこで、光学ガラスの代替材料として熱可塑性樹脂を採用することにより、射出成型による光学部材の大量生産が可能になり、生産性が向上している。
【0004】
熱可塑性樹脂の中でもポリカーボネート樹脂は、その特長である耐衝撃性、耐熱性及び透明性を活かして、光学部材として広く採用されている。特に、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンから誘導される構成単位を含むポリカーボネート樹脂は、その構造に由来して、屈折率が高く、配向複屈折が小さいといった光学性能を有することから、該ポリカーボネート樹脂を各種レンズ、プリズム、ディスク等の光学部材として用いることが提案されている(例えば、特許文献1〜4)。
【0005】
しかしながら、前記構成単位を含むポリカーボネート樹脂は、重合時の熱安定性が良好でないことに起因して黄変する場合があり、得られる光学部材を外装部品等に使用する際に制限が生じる恐れがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2007/142149号公報
【特許文献2】特開平10−101787号公報
【特許文献3】特許第5440500号公報
【特許文献4】特開2015−007246号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本開示は、高光線透過率、高屈折率等の優れた光学性能を維持しながら、熱安定性に優れ、流動性が良好であることから、高温では勿論のこと、比較的低温での成形加工も可能なポリカーボネート樹脂組成物を提供する。また本開示は、該ポリカーボネート樹脂組成物を成形した成形品を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
開示におけるポリカーボネート樹脂組成物は
一般式(1):
【化1】
(式中、G及びGは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数1〜3のアルコキシル基を示す。Lは、炭素数2〜4のアルキレン基を示す。mは、0〜2の整数を示す)
で表されるジヒドロキシ化合物由来の構成単位と、一般式(2):
【化2】
(式中、Mは、炭素数2〜4のアルキレン基を示す。nは、0〜2の整数を示す)
で表されるジナフトチオフェン化合物由来の構成単位とを有するポリカーボネート樹脂(A2)と、
リン系酸化防止剤(B)と
を含有してなり、
前記リン系酸化防止剤(B)の量が、前記ポリカーボネート樹脂(A2)100重量部に対して0.02〜1.5重量部であるものである。
【0009】
本開示における成形品は、
一般式(1):
【化3】
(式中、G及びGは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数1〜3のアルコキシル基を示す。Lは、炭素数2〜4のアルキレン基を示す。mは、0〜2の整数を示す)
で表されるジヒドロキシ化合物由来の構成単位と、一般式(2):
【化4】
(式中、Mは、炭素数2〜4のアルキレン基を示す。nは、0〜2の整数を示す)
で表されるジナフトチオフェン化合物由来の構成単位とを有するポリカーボネート樹脂(A2)と、
リン系酸化防止剤(B)と
を含有してなり、
前記リン系酸化防止剤(B)の量が、前記ポリカーボネート樹脂(A2)100重量部に対して0.02〜1.5重量部であるポリカーボネート樹脂組成
からなるものである。
【発明の効果】
【0010】
本開示におけるポリカーボネート樹脂組成物は、高光線透過率、高屈折率等の優れた光学性能を維持しながら、熱安定性に優れ、流動性が良好であることから、高温では勿論のこと、比較的低温での成形加工も可能である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施の形態を詳細に説明する。ただし、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。
【0012】
なお、発明者は、当業者が本開示を充分に理解するために以下の説明を提供するのであって、これらによって請求の範囲に記載の主題を限定することを意図するものではない。
【0013】
(実施の形態1−I:ポリカーボネート樹脂組成物I)
実施の形態1−Iに係るポリカーボネート樹脂組成物Iは、ポリカーボネート樹脂(A1)と、リン系酸化防止剤(B)とを含有したものである。なお、本開示におけるポリカーボネート樹脂組成物Iは、必要に応じて、その他の成分を含有していてもよい。
【0014】
ポリカーボネート樹脂(A1)は、一般式(1):
【化5】
(式中、G及びGは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数1〜3のアルコキシル基を示す。Lは、炭素数2〜4のアルキレン基を示す。mは、0〜2の整数を示す)
で表されるジヒドロキシ化合物由来の構成単位を有する重合体である。
【0015】
前記ジヒドロキシ化合物を表す一般式(1)において、G及びGは、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基であることが好ましく、Lは、炭素数2〜4のアルキレン基であることが好ましく、mは、0又は1であることが好ましい。
【0016】
一般式(1)で表されるジヒドロキシ化合物としては、例えば、
式(1−1):
【化6】
で表される9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン、
式(1−2):
【化7】
で表される9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、
式(1−3):
【化8】
で表される9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン
等が挙げられ、これらの中でも、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンが特に好ましい。
【0017】
ポリカーボネート樹脂(A1)は、例えば、前記一般式(1)で表されるジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとを、必要に応じて塩基性化合物触媒及び/又はエステル交換触媒の存在下で反応させるエステル交換法によって製造することができる。
【0018】
前記炭酸ジエステルとしては、例えば、ジフェニルカーボネート、ジトリールカーボネート、ビス(クロロフェニル)カーボネート、m−クレジルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブチルカーボネート、ジシクロヘキシルカーボネート等が挙げられる。これらの中でも、ジフェニルカーボネートが特に好ましい。
【0019】
前記塩基性化合物触媒としては、例えば、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、アンモニウム化合物やアミン化合物等が挙げられる。
【0020】
前記アルカリ金属化合物としては、例えば、ナトリウム、カリウム、セシウム、リチウム等の有機酸塩、無機塩、酸化物、水酸化物、水素化物、アルコキシド等が挙げられる。具体的には、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム、水酸化リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、炭酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸セシウム、酢酸リチウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸セシウム、ステアリン酸リチウム、水素化ホウ素ナトリウム、フェニル化ホウ素ナトリウム等が挙げられる。
【0021】
前記アルカリ土類金属化合物としては、例えば、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等の有機酸塩、無機塩、酸化物、水酸化物、水素化物、アルコキシド等が挙げられる。具体的には、例えば、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウム、炭酸水素マグネシウム、炭酸水素カルシウム、炭酸水素ストロンチウム、炭酸水素バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸ストロンチウム、炭酸バリウム、酢酸マグネシウム、酢酸カルシウム、酢酸ストロンチウム、酢酸バリウム等が挙げられる。
【0022】
前記アンモニウム化合物やアミン化合物としては、例えば、4級アンモニウムヒドロキシド及びそれらの塩、3級アミン類等が挙げられる。具体的には、例えば、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド等の、アルキル基、アリール基等を有する4級アンモニウムヒドロキシド類、トリエチルアミン、ジメチルベンジルアミン、トリフェニルアミン等の3級アミン類等が挙げられる。
【0023】
前記エステル交換触媒としては、亜鉛、スズ、ジルコニウム、鉛等の塩が好ましく、これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。具体的には、例えば、酢酸亜鉛、酢酸スズ、ジブチルスズジラウレート、酢酸鉛等が挙げられる。
【0024】
前記ジヒドロキシ化合物と前記炭酸ジエステルとを反応させるエステル交換法は、加熱して常圧で又は減圧下で、副生成物を除去しながら溶融重縮合を行う方法であり、反応は、一段工程又は二段以上の多段工程で実施される。該エステル交換法の条件等は、目的とする重合体(ポリカーボネート樹脂(A1))が得られる限り特に限定がないが、例えば以下の条件等を採用することができる。
【0025】
具体的には、まず、原料であるジヒドロキシ化合物及び炭酸ジエステルを溶融した後、常圧(760Torr)の条件下で、120〜260℃、好ましくは180〜240℃で0.5〜5時間、好ましくは0.7〜4時間反応させる。次いで、重合物の重合度を勘案して反応系の減圧度を上げ(〜数Torr)、さらに温度を上げる(〜280℃)ことにより、ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとの重縮合反応を進めることができる。反応はバッチ式で行ってもよく、連続式で行ってもよい。反応装置は、高粘度液撹拌用のヘリカルリボン攪拌翼、アンカー翼や、広い粘度範囲で適用可能な大型特殊翼であるマックスブレンド攪拌翼、フルゾーン撹拌翼等を装備した縦型撹拌槽であってもよく、パドル翼、格子翼、メガネ翼等を装備した横型撹拌槽であってもよい。さらにスクリューを装備した押出機型であってもよく、重合物の粘度を勘案して、反応装置を適宜組み合わせて使用することができる。
【0026】
また、後工程として、重合物中に残存する未反応物や副生成物などの低分子量体を除去する目的で、(i)重合物をジクロロメタン等の有機溶媒(良溶媒)へ溶解させたポリマー溶液を調製後に、沈殿剤としてメタノールやエタノール等の有機溶媒(貧溶媒)を用いて沈殿分別する方法、(ii)重合物を、高理論表面更新頻度を有する押出機に投入してペレット化する方法(例えば、特開平01−149827号公報参照)、(iii)重合物に水を添加し、加水分解を起こさない条件下でガス抜きをしながら混練押出する方法(例えば、特公平05−027647号公報参照)等の手段を用いることができる。
【0027】
なお、前記ジヒドロキシ化合物に添加する前記炭酸ジエステルの量は、ジヒドロキシ化合物1モルに対して0.9〜1.1モル程度となるように調整することが、高分子量の重合物を得るという点から好ましく、ジヒドロキシ化合物と等モル程度であることがより好ましい。
【0028】
さらに、前記塩基性化合物触媒及び/又は前記エステル交換触媒を添加する場合には、ジヒドロキシ化合物1モルに対して1.0×10−8〜1.0×10−4モル程度となるように調整することが好ましい。
【0029】
ポリカーボネート樹脂(A1)のd線(波長587.6nm)に対する屈折率(以下、ndともいう)は、1.637以上、さらには1.639以上であることが好ましい。このように、ndが1.637以上であることにより、得られるポリカーボネート樹脂組成物Iは、各種レンズ、プリズム、ディスク等の光学部材、特に、意匠性が求められる外装部品用のレンズや、携帯情報端末のカメラに備えられるレンズ等の光学部材に好適である。
【0030】
ポリカーボネート樹脂(A1)のポリスチレン換算重量平均分子量(以下、Mwともいう)は、15000〜40000、さらには17000〜35000であることが好ましい。このように、Mwが15000〜40000の範囲であることにより、得られるポリカーボネート樹脂組成物Iの流動性が良好に維持される。
【0031】
ポリカーボネート樹脂(A1)のガラス転移温度(以下、Tgともいう)は、130℃以上、さらには140℃以上であることが好ましい。このように、Tgが130℃以上であることにより、得られるポリカーボネート樹脂組成物Iの耐熱性が良好に維持される。
【0032】
本実施の形態1−Iにおけるリン系酸化防止剤(B)は、前記ポリカーボネート樹脂(A1)とともに作用して、得られるポリカーボネート樹脂組成物Iの熱安定性を向上させる成分である。
【0033】
前記リン系酸化防止剤(B)としては、例えば、一般式(3):
【化9】
(式中、R、R、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜12のアルキルシクロアルキル基、炭素数7〜12のアラルキル基又はフェニル基を示す。Rは、水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を示す。Xは、単結合、硫黄原子又は式:−CHR−(ここで、Rは、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数5〜8のシクロアルキル基を示す)で表される基を示す。Aは、炭素数1〜8のアルキレン基又は式:*−COR−(ここで、Rは、単結合又は炭素数1〜8のアルキレン基を示し、*は、酸素側の結合手であることを示す)で表される基を示す。Y及びZは、いずれか一方がヒドロキシル基、炭素数1〜8のアルコキシ基又は炭素数7〜12のアラルキルオキシ基を示し、もう一方が水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を示す)
で表される化合物が挙げられる。
【0034】
一般式(3)において、R、R、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜12のアルキルシクロアルキル基、炭素数7〜12のアラルキル基又はフェニル基を示す。
【0035】
ここで、炭素数1〜8のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、t−ペンチル基、i−オクチル基、t−オクチル基、2−エチルヘキシル基等が挙げられる。炭素数5〜8のシクロアルキル基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基等が挙げられる。炭素数6〜12のアルキルシクロアルキル基としては、例えば、1−メチルシクロペンチル基、1−メチルシクロヘキシル基、1−メチル−4−i−プロピルシクロヘキシル基等が挙げられる。炭素数7〜12のアラルキル基としては、例えば、ベンジル基、α−メチルベンジル基、α,α−ジメチルベンジル基等が挙げられる。
【0036】
前記R、R及びRは、それぞれ独立して、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基又は炭素数6〜12のアルキルシクロアルキル基であることが好ましい。特に、R及びRは、それぞれ独立して、t−ブチル基、t−ペンチル基、t−オクチル基等のt−アルキル基、シクロヘキシル基又は1−メチルシクロヘキシル基であることが好ましい。特に、Rは、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、t−ペンチル基等の炭素数1〜5のアルキル基であることが好ましく、メチル基、t−ブチル基又はt−ペンチル基であることがさらに好ましい。
【0037】
前記Rは、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数5〜8のシクロアルキル基であることが好ましく、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、t−ペンチル基等の炭素数1〜5のアルキル基であることがさらに好ましい。
【0038】
一般式(3)において、Rは、水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を示す。炭素数1〜8のアルキル基としては、例えば、前記R、R、R及びRの説明にて例示したアルキル基が挙げられる。特に、Rは、水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基であることが好ましく、水素原子又はメチル基であることがさらに好ましい。
【0039】
一般式(3)において、Xは、単結合、硫黄原子又は式:−CHR−で表される基を示す。ここで、式:−CHR−中のRは、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数5〜8のシクロアルキル基を示す。炭素数1〜8のアルキル基及び炭素数5〜8のシクロアルキル基としては、例えば、それぞれ前記R、R、R及びRの説明にて例示したアルキル基及びシクロアルキル基が挙げられる。特に、Xは、単結合、メチレン基、又はメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基等で置換されたメチレン基であることが好ましく、単結合であることがさらに好ましい。
【0040】
一般式(3)において、Aは、炭素数1〜8のアルキレン基又は式:*−COR−で表される基を示す。炭素数1〜8のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、オクタメチレン基、2,2−ジメチル−1,3−プロピレン基等が挙げられ、好ましくはプロピレン基である。また、式:*−COR−におけるRは、単結合又は炭素数1〜8のアルキレン基を示す。Rを示す炭素数1〜8のアルキレン基としては、例えば、前記Aの説明にて例示したアルキレン基が挙げられる。Rは、単結合又はエチレン基であることが好ましい。また、式:*−COR−における*は、酸素側の結合手であり、カルボニル基がフォスファイト基の酸素原子と結合していることを示す。
【0041】
一般式(3)において、Y及びZは、いずれか一方がヒドロキシル基、炭素数1〜8のアルコキシ基又は炭素数7〜12のアラルキルオキシ基を示し、もう一方が水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を示す。炭素数1〜8のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、t−ブトキシ基、ペンチルオキシ基等が挙げられる。炭素数7〜12のアラルキルオキシ基としては、例えば、ベンジルオキシ基、α−メチルベンジルオキシ基、α,α−ジメチルベンジルオキシ基等が挙げられる。炭素数1〜8のアルキル基としては、例えば、前記R、R、R及びRの説明にて例示したアルキル基が挙げられる。
【0042】
一般式(3)で表される化合物としては、例えば、2,4,8,10−テトラ−t−ブチル−6−〔3−(3−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)プロポキシ〕ジベンゾ〔d,f〕〔1,3,2〕ジオキサホスフェピン、6−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロポキシ]−2,4,8,10−テトラ−t−ブチルジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン、6−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロポキシ]−4,8−ジ−t−ブチル−2,10−ジメチル−12H−ジベンゾ[d,g][1,3,2]ジオキサホスホシン、6−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]−4,8−ジ−t−ブチル−2,10−ジメチル−12H−ジベンゾ[d,g][1,3,2]ジオキサホスホシン等が挙げられる。これらの中でも、特に光学特性が求められる分野に、得られるポリカーボネート樹脂組成物Iを用いる場合には、2,4,8,10−テトラ−t−ブチル−6−〔3−(3−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)プロポキシ〕ジベンゾ〔d,f〕〔1,3,2〕ジオキサホスフェピンが好適であり、例えば、住友化学(株)製のスミライザーGP(「スミライザー」は登録商標)として商業的に入手可能である。
【0043】
なお、前記一般式(3)で表される化合物は、フェノール類又はビスフェノール類と三ハロゲン化リンとアミン化合物とを反応させることにより製造される。この製造には、通常、まずフェノール類又はビスフェノール類と三ハロゲン化リンとを反応させて中間体を生成し、次いでアミン化合物を反応させる、二段反応法が採用される。反応は通常、有機溶剤中、0〜200℃の環境下で行われる。
【0044】
リン系酸化防止剤(B)として、前記一般式(3)で表される化合物のほかにも、例えば、一般式(4):
【化10】
(式中、Rは、炭素数1〜20のアルキル基を示し、aは、0〜3の整数を示す)
で表される化合物が挙げられる。
【0045】
前記一般式(4)において、Rは、炭素数1〜20のアルキル基であるが、さらには、炭素数1〜10のアルキル基であることが好ましい。
【0046】
一般式(4)で表される化合物としては、例えば、トリフェニルフォスファイト、トリクレジルフォスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト、トリスノニルフェニルホスファイト等が挙げられる。これらの中でも、特にトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイトが好適であり、例えば、BASF社製のイルガフォス168(「イルガフォス」はビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピアの登録商標)として商業的に入手可能である。
【0047】
リン系酸化防止剤(B)として、さらに例えば、一般式(5):
【化11】
(式中、R及びR10は、それぞれ独立して、炭素数1〜20のアルキル基又はアルキル基で置換されていてもよいアリール基を示し、b及びcは、それぞれ独立して、0〜3の整数を示す)
で表される化合物が挙げられる。
【0048】
前記一般式(5)において、R及びR10は、炭素数1〜20のアルキル基又はアルキル基で置換されていてもよいアリール基であるが、さらには、炭素数1〜10のアルキル基又はアルキル基で置換されていてもよいアリール基であることが好ましい。
【0049】
一般式(5)で表される化合物としては、例えば、3,9−ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジフォスファスピロ[5,5]ウンデカン、3,9−ビス(オクタデシロキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジフォスファスピロ[5,5]ウンデカン等が挙げられ、例えば、(株)ADEKA製のアデカスタブPEP−36A、アデカスタブPEP−8(「アデカスタブ」は登録商標)が商業的に入手可能である。これらの中でも3,9−ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジフォスファスピロ[5,5]ウンデカンが好適である。
【0050】
リン系酸化防止剤(B)として、さらに例えば、一般式(6):
【化12】
(式中、R11、R12、R13及びR14は、それぞれ独立して、炭素数1〜20のアルキル基又はアルキル基で置換されていてもよいアリール基を示す)
で表される化合物が挙げられる。
【0051】
一般式(6)で表される化合物としては、例えば、[1,1´−ビフェニル]−4,4´−ジイルビス[ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェノキシ)フォスフィン]等が挙げられ、例えば、BASF社製のイルガフォスP−EPQ(商品名)、クラリアントジャパン(株)製のサンドスタブP−EPQ(商品名)が商業的に入手可能である。
【0052】
リン系酸化防止剤(B)である前記一般式(3)〜(6)で表される化合物の中でも、環状亜リン酸エステル系化合物である一般式(3)で表される化合物や、亜リン酸エステル系化合物である一般式(4)で表される化合物を、一般式(1)で表されるジヒドロキシ化合物由来の構成単位を有するポリカーボネート樹脂(A1)と組み合わせた場合には、特に、優れた光学性能を維持しながら、熱安定性が極めて向上したポリカーボネート樹脂組成物Iを得ることができる。
【0053】
リン系酸化防止剤(B)の量は、ポリカーボネート樹脂(A1)100重量部に対して0.02〜1.5重量部であり、好ましくは0.03〜1重量部、さらに好ましくは0.04〜0.5重量部である。リン系酸化防止剤(B)の量が0.02重量部未満の場合は、熱安定性の向上効果が得られない。逆にリン系酸化防止剤(B)の量が1.5重量部を超える場合は、屈折率が大きく低下してしまう。
【0054】
実施の形態1−Iに係るポリカーボネート樹脂組成物Iには、本開示における効果を損なわない範囲で、必要に応じて公知の各種添加剤、ポリカーボネート樹脂(A1)及び後述するポリカーボネート樹脂(A2)以外のポリマー等が適宜配合されていてもよい。
【0055】
前記各種添加剤やポリカーボネート樹脂(A1)及びポリカーボネート樹脂(A2)以外のポリマーとしては、例えば、酸化防止剤;蛍光増白剤;酸化チタン、カーボンブラック、染料等の着色剤;炭酸カルシウム、クレー、シリカ、ガラス繊維、ガラス球、ガラスフレーク、カーボン繊維、タルク、マイカ、各種ウィスカー類等の充填剤;流動性改良剤;臭素系化合物、リン系化合物、シリコーン系化合物等の難燃剤;エポキシ化大豆油、流動パラフィン等の展着剤;ビスフェノールAから誘導されるジヒドロキシ化合物由来の構成単位を有するポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリスチレン、ハイインパクトポリスチレン、ポリアリレート、ABS樹脂、AES樹脂等のスチレン系ポリマー、ポリプロピレン、ポリカーボネートとアロイ化して通常使用されるポリマー等の他の熱可塑性樹脂;ポリブタジエン、ポリアクリル酸エステル、エチレン/プロピレン系ゴム等のゴムにメタアクリル酸エステル、スチレン、アクリロニトリル等の化合物をグラフト重合してなるゴム強化樹脂等の各種耐衝撃改良剤等が挙げられる。
【0056】
ポリカーボネート樹脂組成物Iの製造方法には特に限定がなく、ポリカーボネート樹脂(A1)及びリン系酸化防止剤(B)、並びに必要に応じて前記各種添加剤やポリカーボネート樹脂(A1)及びポリカーボネート樹脂(A2)以外のポリマー等について、各成分の種類及び量を適宜調整し、これらをタンブラー、リボンブレンダー、高速ミキサー等により一括混合した後、混合物を通常の一軸押出機又は二軸押出機を用いて溶融混練し、ペレット化させる方法、各成分の種類を適宜調整して別々に計量して、複数の供給装置から押出機内へ投入し、溶融混練してペレット化させる方法、ポリカーボネート樹脂(A1)にリン系酸化防止剤(B)を高濃度に配合して一旦溶融混合し、ペレット化させてマスターバッチを得た後、該マスターバッチとポリカーボネート樹脂(A1)とを所望の配合割合にて混合し、溶融混練してペレット化させる方法等を採用することができる。
【0057】
前記各成分を溶融混練する際の、押出機に投入する位置、押出温度、スクリュー回転数、供給量等は、状況に応じて任意の条件を選択することができる。また、前記マスターバッチとポリカーボネート樹脂(A1)とを、所望の配合割合にて乾式混合後、成形加工機に直接投入し、後述する成形品とすることも可能である。
【0058】
前記のごとく得られるポリカーボネート樹脂組成物Iのペレットの形状及び大きさには特に限定がなく、一般的な樹脂ペレットが有する形状及び大きさであればよい。例えば、ペレットの形状としては、楕円柱状、円柱状等が挙げられる。ペレットの大きさとしては、長さが2〜8mm程度であることが好適であり、楕円柱状の場合、断面楕円の長径が2〜8mm程度、短径が1〜4mm程度であることが好適であり、円柱状の場合、断面円の直径が1〜6mm程度であることが好適である。なお、得られたペレット1つずつがこのような大きさであってもよく、ペレット集合体を形成する全てのペレットがこのような大きさであってもよく、ペレット集合体の平均値がこのような大きさであってもよく、特に限定はない。
【0059】
(実施の形態1−II:ポリカーボネート樹脂組成物II)
実施の形態1−IIに係るポリカーボネート樹脂組成物IIは、ポリカーボネート樹脂(A2)と、リン系酸化防止剤(B)とを含有したものである。なお、本開示におけるポリカーボネート樹脂組成物IIは、必要に応じて、その他の成分を含有していてもよい。
【0060】
ポリカーボネート樹脂(A2)は、一般式(1):
【化13】
(式中、G及びGは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数1〜3のアルコキシル基を示す。Lは、炭素数2〜4のアルキレン基を示す。mは、0〜2の整数を示す)
で表されるジヒドロキシ化合物由来の構成単位と、一般式(2):
【化14】
(式中、Mは、炭素数2〜4のアルキレン基を示す。nは、0〜2の整数を示す)
で表されるジナフトチオフェン化合物由来の構成単位とを有する共重合体である。
【0061】
前記ジヒドロキシ化合物を表す一般式(1)において、G及びGは、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基であることが好ましく、Lは、炭素数2〜4のアルキレン基であることが好ましく、mは、0又は1であることが好ましい。
【0062】
一般式(1)で表されるジヒドロキシ化合物としては、例えば、前記式(1−1)で表される9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン、前記式(1−2)で表される9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、前記式(1−3)で表される9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン等が挙げられ、これらの中でも、後述する一般式(2)で表されるジナフトチオフェン化合物と共重合し易いという点から、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンが特に好ましい。
【0063】
前記ジナフトチオフェン化合物は、チオフェン環と縮合していない2つのベンゼン環が、各々置換基(官能基):−(O−M)−OHを有する化合物である。該ジナフトチオフェン化合物を表す一般式(2)において、Mは、炭素数2〜4のアルキレン基であることが好ましく、nは、1又は2であることが好ましく、特に1であることが、得られるポリカーボネート樹脂(A2)により高い屈折率を付与することができるという点から好ましい。また、チオフェン環と縮合していない2つのベンゼン環における置換位置が3,11である化合物が、前記一般式(1)で表されるジヒドロキシ化合物と共重合し易く、未反応モノマーが少ないという点で好ましい。
【0064】
一般式(2)で表されるジナフトチオフェン化合物としては、例えば、
式(2−1):
【化15】
で表される3,11−ジヒドロキシエトキシジナフトチオフェン、
式(2−2):
【化16】
で表される2,12−ジヒドロキシエトキシジナフトチオフェン、
式(2−3):
【化17】
で表される3,11−ビス(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシ)ジナフトチオフェン
等が挙げられ、これらの中でも、前記一般式(1)で表されるジヒドロキシ化合物と共重合し易いので未反応モノマーが少なく、得られるポリカーボネート樹脂(A2)の黄色度を良好に維持することができ、より高い屈折率を付与することができるという点から、3,11−ジヒドロキシエトキシジナフトチオフェンが特に好ましい。
【0065】
ポリカーボネート樹脂(A2)は、前記一般式(1)で表されるジヒドロキシ化合物及び前記一般式(2)で表されるジナフトチオフェン化合物を用い、例えば以下の方法にて製造することができる。
【0066】
まず、一般式(1)で表されるジヒドロキシ化合物に炭酸ジエステルを添加し、必要に応じて塩基性化合物触媒及び/又はエステル交換触媒を添加して、これらを撹拌しながら加熱溶融させる。
【0067】
前記炭酸ジエステルとしては、例えば、前記ポリカーボネート樹脂(A1)を製造する際に用いることができる化合物が例示され、特にジフェニルカーボネートが好ましい。
【0068】
前記塩基性化合物触媒としては、例えば、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、アンモニウム化合物やアミン化合物等が挙げられ、これらアルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、アンモニウム化合物及びアミン化合物としては、前記ポリカーボネート樹脂(A1)を製造する際に用いることができる化合物が各々例示される。
【0069】
前記エステル交換触媒としては、例えば、前記ポリカーボネート樹脂(A1)を製造する際に用いることができる化合物が例示される。
【0070】
前記ジヒドロキシ化合物と前記炭酸ジエステルとを溶融させるには、例えば、チッ素ガス、アルゴンガス等の不活性ガス雰囲気下、常圧(760Torr)で、120〜260℃、さらには180〜240℃に加熱し、0.5〜2時間撹拌することが好ましい。
【0071】
次いで、前記ジヒドロキシ化合物と前記炭酸ジエステルとの加熱溶融物に、一般式(2)で表されるジナフトチオフェン化合物を添加し、重合反応を行う。
【0072】
前記重合反応は、例えば、加熱溶融物とジナフトチオフェン化合物とを、0.5〜1.5時間撹拌した後、0.5〜1時間かけて、重合物の重合度を勘案して反応系の減圧度を上げ(〜数Torr)、120〜260℃、さらには180〜240℃で、さらに0.3〜0.5時間撹拌することによって行うことが好ましい。
【0073】
そして、前記重合反応の終了後、反応系を冷却し、目的とする共重合体であるポリカーボネート樹脂(A2)を得ることができる。
【0074】
また、後工程として、共重合体中に残存する未反応モノマーや副生成物等の低分子量体を除去する目的で、(i)共重合体をジクロロメタン等の有機溶媒(良溶媒)へ溶解させたコポリマー溶液を調製後に、沈殿剤としてメタノールやエタノール等の有機溶媒(貧溶媒)を用いて沈殿分別する方法、(ii)共重合体を、高理論表面更新頻度を有する押出機に投入してペレット化する方法(例えば、特開平01−149827号公報参照)、(iii)共重合体に水を添加し、加水分解を起こさない条件下でガス抜きをしながら混練押出する方法(例えば、特公平05−027647号公報参照)等の手段を用いることができる。
【0075】
なお、ポリカーボネート樹脂(A2)を製造する際に用いる反応装置には特に限定がなく、例えば、前記ポリカーボネート樹脂(A1)を製造する際に用いることができる反応装置が例示される。
【0076】
ポリカーボネート樹脂(A2)を製造する際に、一般式(1)で表されるジヒドロキシ化合物と一般式(2)で表されるジナフトチオフェン化合物との配合割合、すなわち、ジヒドロキシ化合物由来の構成単位とジナフトチオフェン化合物由来の構成単位との割合(ジヒドロキシ化合物/ジナフトチオフェン化合物)は、モル比で、10/90〜99.8/0.2、さらには20/80〜99.5/0.5であることが好ましい。該割合が99.8/0.2を超える場合には、屈折率の向上に効果が見られない恐れがあり、該割合が10/90未満である場合には、ジナフトチオフェン化合物の融点が高いことに起因して、反応装置中で反応系が未溶融の状態になる恐れがある。
【0077】
また、ジヒドロキシ化合物に添加する前記炭酸ジエステルの量は、ジヒドロキシ化合物とジナフトチオフェン化合物との合計1モルに対して0.9〜1.1モル程度となるように調整することが、高分子量の重合物を得るという点から好ましく、該合計と等モル程度であることがより好ましい。
【0078】
さらに、前記塩基性化合物触媒及び/又は前記エステル交換触媒を添加する場合には、ジヒドロキシ化合物とジナフトチオフェン化合物との合計1モルに対して1.0×10−8〜1.0×10−4モル程度となるように調整することが好ましい。
【0079】
ポリカーボネート樹脂(A2)のndは、1.640以上、さらには1.650以上であることが好ましい。ポリカーボネート樹脂(A2)は、前記ポリカーボネート樹脂(A1)と比較しても、特に、より高い屈折率を有するので、各種レンズ、プリズム、ディスク等の光学部材、特に、意匠性が求められる外装部品用のレンズや、携帯情報端末のカメラに備えられるレンズ等の光学部材にさらに好適である。
【0080】
ポリカーボネート樹脂(A2)のMwは、15000〜40000、さらには17000〜35000であることが好ましい。このように、Mwが15000〜40000の範囲であることにより、得られるポリカーボネート樹脂組成物IIの流動性が良好に維持される。
【0081】
ポリカーボネート樹脂(A2)のTgは、130℃以上、さらには140℃以上であることが好ましい。このように、Tgが130℃以上であることにより、得られるポリカーボネート樹脂組成物IIの耐熱性が良好に維持される。
【0082】
本実施の形態1−IIにおけるリン系酸化防止剤(B)は、前記ポリカーボネート樹脂(A2)とともに作用して、得られるポリカーボネート樹脂組成物IIの熱安定性を向上させる成分である。
【0083】
前記リン系酸化防止剤(B)としては、例えば、前記実施の形態1−Iに係るポリカーボネート樹脂組成物Iに含有されるリン系酸化防止剤(B)と同様のリン系酸化防止剤を用いることができ、例えば、前記一般式(3)〜(6)で表される化合物が挙げられる。
【0084】
前記一般式(3)〜(6)で表される化合物の中でも、環状亜リン酸エステル系化合物である一般式(3)で表される化合物や、亜リン酸エステル系化合物である一般式(4)で表される化合物を、一般式(1)で表されるジヒドロキシ化合物由来の構成単位と一般式(2)で表されるジナフトチオフェン化合物由来の構成単位とを有するポリカーボネート樹脂(A2)と組み合わせた場合には、特に、優れた光学性能を維持しながら、屈折率がより高く、熱安定性が極めて向上したポリカーボネート樹脂組成物IIを得ることができる。
【0085】
リン系酸化防止剤(B)の量は、ポリカーボネート樹脂(A2)100重量部に対して0.02〜1.5重量部であり、好ましくは0.03〜1重量部、さらに好ましくは0.04〜0.5重量部である。リン系酸化防止剤(B)の量が0.02重量部未満の場合は、熱安定性の向上効果が得られない。逆にリン系酸化防止剤(B)の量が1.5重量部を超える場合は、屈折率が大きく低下してしまう。
【0086】
実施の形態1−IIに係るポリカーボネート樹脂組成物IIには、本開示における効果を損なわない範囲で、必要に応じて公知の各種添加剤、ポリカーボネート樹脂(A2)及び前記ポリカーボネート樹脂(A1)以外のポリマー等が適宜配合されていてもよい。
【0087】
前記各種添加剤やポリカーボネート樹脂(A2)及びポリカーボネート樹脂(A1)以外のポリマーとしては、例えば、前記実施の形態1−Iに係るポリカーボネート樹脂組成物Iに含有される添加剤やポリマーと同様のものが例示される。
【0088】
ポリカーボネート樹脂組成物IIの製造方法には特に限定がなく、ポリカーボネート樹脂(A2)及びリン系酸化防止剤(B)、並びに必要に応じて前記各種添加剤やポリカーボネート樹脂(A2)及びポリカーボネート樹脂(A1)以外のポリマー等について、各成分の種類及び量を適宜調整し、これらをタンブラー、リボンブレンダー、高速ミキサー等により一括混合した後、混合物を通常の一軸押出機又は二軸押出機を用いて溶融混練し、ペレット化させる方法、各成分の種類を適宜調整して別々に計量して、複数の供給装置から押出機内へ投入し、溶融混練してペレット化させる方法、ポリカーボネート樹脂(A2)にリン系酸化防止剤(B)を高濃度に配合して一旦溶融混合し、ペレット化させてマスターバッチを得た後、該マスターバッチとポリカーボネート樹脂(A2)とを所望の配合割合にて混合し、溶融混練してペレット化させる方法等を採用することができる。
【0089】
前記各成分を溶融混練する際の、押出機に投入する位置、押出温度、スクリュー回転数、供給量等は、状況に応じて任意の条件を選択することができる。また、前記マスターバッチとポリカーボネート樹脂(A2)とを、所望の配合割合にて乾式混合後、成形加工機に直接投入し、後述する成形品とすることも可能である。
【0090】
前記のごとく得られるポリカーボネート樹脂組成物IIのペレットの形状及び大きさには特に限定がなく、前記ポリカーボネート樹脂組成物Iと同様に、一般的な樹脂ペレットが有する形状及び大きさであればよい。ペレットの形状及び大きさの例示は、前記ポリカーボネート樹脂組成物Iと同様であり、得られたペレット1つずつが前記例示の大きさであってもよく、ペレット集合体を形成する全てのペレットが前記例示の大きさであってもよく、ペレット集合体の平均値が前記例示の大きさであってもよく、特に限定はない。
【0091】
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、実施の形態1−I及び1−IIを説明した。しかしながら、本開示における技術は、これに限定されず、適宜、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施の形態にも適用可能である。
【0092】
(実施の形態2:成形品)
実施の形態2に係る成形品は、前記のごとく得られる実施の形態1−Iに係るポリカーボネート樹脂組成物I又は実施の形態1−IIに係るポリカーボネート樹脂組成物IIを成形して得られるものである。
【0093】
成形品の製造方法には特に限定がなく、例えば、公知の射出成形法、押出成形法、射出・圧縮成形法等により、ポリカーボネート樹脂組成物I又はポリカーボネート樹脂組成物IIを成形する方法が挙げられる。
【0094】
前記のごとく得られる実施の形態2に係る成形品は、例えば、各種レンズ、プリズム、ディスク等の光学部材として好適である。特に、実施の形態2に係る成形品は、熱安定性に優れており、高温での成形加工が可能であることから、意匠性が求められる外装部品用のレンズや、携帯情報端末のカメラに備えられるレンズ等の光学部材として好適である。なお、より高い屈折率を有するポリカーボネート樹脂(A2)を含むポリカーボネート樹脂組成物IIを成形して得られる成形品は、ポリカーボネート樹脂組成物Iを成形して得られる成形品よりも、意匠性が求められる外装部品用のレンズや、携帯情報端末のカメラに備えられるレンズ等の光学部材に、さらに好適である。
【0095】
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、実施の形態2を説明した。しかしながら、本開示における技術は、これに限定されず、適宜、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施の形態にも適用可能である。
【実施例】
【0096】
以下に、本開示を実施例により具体的に説明するが、本開示はこれらの実施例に制限されるものではない。
【0097】
ポリカーボネート樹脂(A1)及び/又はポリカーボネート樹脂(A2)の原料として、以下のものを使用した。
(1)ジヒドロキシ化合物
・BPEF
式(1−1):
【化18】
で表される9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン
【0098】
(2)ジナフトチオフェン化合物
・DHEODNT
式(2−1):
【化19】
で表される3,11−ジヒドロキシエトキシジナフトチオフェン
【0099】
製造例I−1(BPEF重合体の製造)
BPEF 264.2g(0.6025モル)、ジフェニルカーボネート(以下、DPCという)135.8g(0.6339モル)及び炭酸水素ナトリウム0.0015g(1.8×10−5モル)を、攪拌機及び留出装置付き反応器に入れ、撹拌しながら、チッ素ガス雰囲気下、常圧(760Torr)で215℃まで加熱し、溶融させた。
【0100】
反応系を90分間撹拌した後、40分間かけて150Torrまで減圧し、215℃、150Torrの条件で20分間撹拌して、重合反応させた。
【0101】
反応終了後、反応系を室温まで冷却し、重合物をジクロロメタンに溶解させてポリマー溶液を調製した後、メタノールにて沈殿分別を行い、目的とするポリカーボネート樹脂(A1)であるBPEF重合体(以下、BPEF PC−1という)を得た。
【0102】
製造例I−2(BPEF重合体の製造)
BPEFの量を268.7g(0.6127モル)に、DPCの量を131.3g(0.6129モル)に変更したほかは、製造例I−1と同様にしてポリカーボネート樹脂(A1)であるBPEF重合体(以下、BPEF PC−2という)を得た。
【0103】
製造例II(BPEF−DHEODNT共重合体の製造)
BPEF 40.74g(0.0929モル)、DPC 24.88g(0.1161モル)及び炭酸水素ナトリウム0.00029g(3.5×10−6モル)を、攪拌機及び留出装置付き反応器に入れ、撹拌しながら、チッ素ガス雰囲気下、常圧(760Torr)で215℃まで加熱し、溶融させた。
【0104】
反応系を90分間撹拌した後、DHEODNT 9.39g(0.0232モル)を反応器に入れ、さらに60分間撹拌した後、40分間かけて150Torrまで減圧し、215℃、150Torrの条件で20分間撹拌して、重合反応させた。
【0105】
反応終了後、反応系を室温まで冷却し、重合物をジクロロメタンに溶解させてコポリマー溶液を調製した後、メタノールにて沈殿分別を行い、目的とするポリカーボネート樹脂(A2)であるBPEF−DHEODNT共重合体(以下、BPEF−DHEODNTという)を得た。
【0106】
試験例(物性測定)
得られたBPEF PC−1、BPEF PC−2及びBPEF−DHEODNTについて、以下の方法にてnd、Mw及びTgを測定した。その結果を表1に示す。
【0107】
(a)屈折率(nd)
得られた重合体又は共重合体を、熱風循環式乾燥機により120℃で4時間乾燥した後、プレス成形機((株)神藤金属工業所製)を用い、金型温度250℃の条件にて、厚さ1.5mmの試験片に成形した。この試験片について、多波長アッベ屈折計((株)アタゴ製)を用い、JIS K 7142「プラスチック−屈折率の求め方」にて規定の方法に準拠して屈折率を測定した。
【0108】
(b)重量平均分子量(Mw)
ゲル浸透クロマトグラフィー測定装置(Waters社製、Alliance2695 Separations Module)を用い、以下の測定条件にて標準ポリスチレン換算のMwを求めた。
カラムの種類:アジレント・テクノロジー社製
Plgel 5μm MIXED−C
溶離液 :テトラヒドロフラン
流速 :1ml/min.
検出 :254nmにおける吸収
【0109】
(c)ガラス転移温度(Tg)
示差走査熱量計(セイコーインスツルメンツ社製、DSC6200)を用い、チッ素ガス雰囲気下で、250℃まで昇温して溶融後に−100℃まで冷却後、昇温速度10℃/min.で昇温した際に見られるTgを確認した。
【0110】
【表1】
【0111】
ポリカーボネート樹脂組成物I及び/又はポリカーボネート樹脂組成物IIの原料として、以下のものを使用した。
【0112】
1−1.ポリカーボネート樹脂(A1)
・BPEF PC−1
・BPEF PC−2
【0113】
1−2.ポリカーボネート樹脂(A2)
・BPEF−DHEODNT
【0114】
2.リン系酸化防止剤(B)
2−1.環状亜リン酸エステル系化合物
・以下の式:
【化20】
で表される2,4,8,10−テトラ−t−ブチル−6−〔3−(3−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)プロポキシ〕ジベンゾ〔d,f〕〔1,3,2〕ジオキサホスフェピン
スミライザーGP
(商品名、住友化学(株)製、以下、化合物Aという)
【0115】
2−2.亜リン酸エステル系化合物
・以下の式:
【化21】
で表される3,9−ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジフォスファスピロ[5,5]ウンデカン
アデカスタブPEP−36
(商品名、(株)ADEKA製、以下、化合物Bという)
【0116】
2−3.亜リン酸エステル系化合物
・以下の式:
【化22】
で表されるトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト
イルガフォス168
(商品名、BASF社製、以下、化合物Cという)
【0117】
2−4.リン酸エステル系化合物
・以下の式:
【化23】
で表される[1,1´−ビフェニル]−4,4´−ジイルビス[ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェノキシ)フォスフィン]
イルガフォスP−EPQ
(商品名、BASF社製、以下、化合物Dという)
【0118】
3.ヒンダードフェノール系酸化防止剤
・オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート
アデカスタブAO−50
(商品名、(株)ADEKA製、以下、化合物Eという)
【0119】
実施例I−1〜I−7及び比較例I−1〜I−3
前記各原料を、表2に示す割合にて一括してタンブラーに投入し、10分間乾式混合した後、二軸押出機((株)日本製鋼所製、TEX30α、軸直径=30mmφ、L/D=41)を用いて、溶融温度220℃にて溶融混練し、ポリカーボネート樹脂組成物のペレットを得た。なお、実施例I−1〜I−7及び比較例I−1〜I−3で得られたペレットは、いずれも、ほぼ楕円柱状であり、ペレット100個からなる集合体は、各々、以下のサイズ(平均値(mm))であった。
長さ 断面楕円の長径 断面楕円の短径
実施例I−1 5.0 4.0 2.5
I−2 5.0 3.9 2.7
I−3 5.1 4.0 2.7
I−4 5.2 4.2 2.9
I−5 5.2 4.1 2.9
I−6 5.2 4.1 2.7
I−7 5.0 3.9 2.8
比較例I−1 5.2 4.0 2.6
I−2 5.0 4.1 2.8
I−3 5.2 4.1 2.9
【0120】
得られたペレットを用い、以下の方法にしたがって各評価を行った。その結果を表2に示す。
【0121】
(ア)黄色度
得られたペレットを、熱風循環式乾燥機により120℃で4時間乾燥した後、プレス成形機((株)神藤金属工業所製)を用い、金型温度250℃の条件にて、厚さ1.5mmの試験片に成形した。
【0122】
この試験片について、スペクトロフォトメーター((株)村上色彩技術研究所製、CMS35−SP)を用い、D65光源、視野角10°の条件でYellowness Index(黄色度)を測定した。なお、黄色度が7.0未満を良好(表中、○で示す)、7.0以上を不良(表中、×で示す)とした。
【0123】
(イ)全光線透過率
前記(ア)黄色度の評価と同様にして成形した試験片について、スペクトロフォトメーター((株)村上色彩技術研究所製、HM−150)を用い、JIS K 7361−1「プラスチック−透明材料の全光線透過率の試験方法−第1部:シングルビーム法」にて規定の方法に準拠して全光線透過率を測定した。なお、全光線透過率が86.0%以上を良好(表中、○で示す)、86.0%未満を不良(表中、×で示す)とした。
【0124】
(ウ)屈折率(nd)
前記(ア)黄色度の評価と同様にして成形した試験片について、多波長アッベ屈折計((株)アタゴ製)を用い、JIS K 7142「プラスチック−屈折率の求め方」にて規定の方法に準拠して屈折率を測定した。なお、屈折率が1.6370以上を良好(表中、○で示す)、1.6370未満を不良(表中、×で示す)とした。
【0125】
(エ)流動性
得られたペレットを、熱風循環式乾燥機により120℃で4時間乾燥した後、高化式フローテスター((株)島津製作所製)を用い、シリンダー温度220℃の条件にて、せん断速度1000(sec−1)における見かけの溶融粘度(Pa・s)を求めた。なお、溶融粘度が1700Pa・s未満を良好(表中、○で示す)、1700Pa・s以上を不良(表中、×で示す)とした。
【0126】
(オ)総合判定
黄色度、全光線透過率、屈折率及び流動性の評価が、全て良好であるものを合格(表中、○で示す)、1つでも不良があるものを不合格(表中、×で示す)とした。
【0127】
【表2】
【0128】
実施例I−1〜I−7のポリカーボネート樹脂組成物Iは、酸化防止剤としてリン系酸化防止剤(B)が用いられており、かつ、このリン系酸化防止剤(B)の量が、ポリカーボネート樹脂(A1)100重量部に対して0.02〜1.5重量部の範囲内に調整されている。したがって、これらのポリカーボネート樹脂組成物Iから250℃の条件で成形された試験片はいずれも、全光線透過率及び屈折率が高いだけでなく、黄色度が非常に小さく、熱安定性にも優れており、しかも、220℃の条件での溶融粘度が低く、流動性が良好である。
【0129】
特に、リン系酸化防止剤(B)として、環状亜リン酸エステル系化合物である化合物Aを用いたポリカーボネート樹脂組成物I(実施例I−2)及び亜リン酸エステル系化合物である化合物Cを用いたポリカーボネート樹脂組成物I(実施例I−5)は、全光線透過率及び屈折率がより高く、黄色度がより小さく、熱安定性にさらに優れている。
【0130】
これに対して、比較例I−1のポリカーボネート樹脂組成物では、ポリカーボネート樹脂(A1)100重量部に対するリン系酸化防止剤(B)の量が0.02重量部を下回っている。したがって、このポリカーボネート樹脂組成物から成形された試験片は、全光線透過率及び屈折率は良好であるものの、黄色度が大きく、熱安定性に劣っている。
【0131】
比較例I−2のポリカーボネート樹脂組成物では、ポリカーボネート樹脂(A1)100重量部に対するリン系酸化防止剤(B)の量が1.5重量部を上回っている。したがって、このポリカーボネート樹脂組成物から成形された試験片は、黄色度及び全光線透過率は良好であるものの、屈折率が低い。
【0132】
比較例I−3のポリカーボネート樹脂組成物では、リン系酸化防止剤(B)ではなくヒンダードフェノール系酸化防止剤が用いられている。したがって、このポリカーボネート樹脂組成物から成形された試験片は、屈折率は良好であるものの、全光線透過率が低いだけでなく、黄色度が大きく、熱安定性にも劣っている。
【0133】
実施例II−1〜II−6及び比較例II−1〜II−3
表3に示す割合にて前記各原料を配合したほかは、実施例I−1〜I−7及び比較例I−1〜I−3と同様にしてポリカーボネート樹脂組成物のペレットを得た。なお、実施例II−1〜II−6及び比較例II−1〜II−3で得られたペレットは、いずれも、ほぼ楕円柱状であり、ペレット100個からなる集合体は、各々、以下のサイズ(平均値(mm))であった。
長さ 断面楕円の長径 断面楕円の短径
実施例II−1 5.1 4.0 2.6
II−2 5.0 3.9 2.7
II−3 5.1 4.2 2.6
II−4 5.1 4.1 2.9
II−5 5.3 4.1 2.9
II−6 5.2 4.1 2.8
比較例II−1 5.2 4.0 2.6
II−2 5.1 4.0 2.7
II−3 5.2 4.1 2.9
【0134】
得られたペレットを用い、実施例I−1〜I−7及び比較例I−1〜I−3と同様にして各評価を行った。その結果を表3に示す。
【0135】
なお、実施例II−1〜II−6及び比較例II−1〜II−3で得られたペレットについては、黄色度が28.0未満を良好(表中、○で示す)、28.0以上を不良(表中、×で示す)、全光線透過率が79.0%以上を良好(表中、○で示す)、79.0%未満を不良(表中、×で示す)、屈折率が1.6500以上を良好(表中、○で示す)、1.6500未満を不良(表中、×で示す)、溶融粘度が1000Pa・s未満を良好(表中、○で示す)、1000Pa・s以上を不良(表中、×で示す)とした。
【0136】
【表3】
【0137】
実施例II−1〜II−6のポリカーボネート樹脂組成物IIは、酸化防止剤としてリン系酸化防止剤(B)が用いられており、かつ、このリン系酸化防止剤(B)の量が、ポリカーボネート樹脂(A2)100重量部に対して0.02〜1.5重量部の範囲内に調整されている。したがって、これらのポリカーボネート樹脂組成物IIから250℃の条件で成形された試験片はいずれも、全光線透過率及び屈折率が高いだけでなく、黄色度が小さく、熱安定性にも優れており、しかも、220℃の条件での溶融粘度が低く、流動性が良好である。
【0138】
特に、リン系酸化防止剤(B)として、環状亜リン酸エステル系化合物である化合物Aを用いたポリカーボネート樹脂組成物II(実施例II−2)は、全光線透過率及び屈折率がより高く、黄色度がより小さく、熱安定性にさらに優れている。
【0139】
これに対して、比較例II−1のポリカーボネート樹脂組成物では、ポリカーボネート樹脂(A2)100重量部に対するリン系酸化防止剤(B)の量が0.02重量部を下回っている。したがって、このポリカーボネート樹脂組成物から成形された試験片は、全光線透過率及び屈折率は良好であるものの、黄色度が大きく、熱安定性に劣っている。
【0140】
比較例II−2のポリカーボネート樹脂組成物では、ポリカーボネート樹脂(A2)100重量部に対するリン系酸化防止剤(B)の量が1.5重量部を上回っている。したがって、このポリカーボネート樹脂組成物から成形された試験片は、黄色度は良好であるものの、全光線透過率が低いだけでなく、屈折率も低い。
【0141】
比較例II−3のポリカーボネート樹脂組成物では、リン系酸化防止剤(B)ではなくヒンダードフェノール系酸化防止剤が用いられている。したがって、このポリカーボネート樹脂組成物から成形された試験片は、全光線透過率及び屈折率は良好であるものの、黄色度が大きく、熱安定性に劣っている。
【0142】
以上のように、本開示における技術の例示として、実施の形態を説明した。そのために、詳細な説明を提供した。
【0143】
したがって、詳細な説明に記載された構成要素の中には、課題解決のために必須な構成要素だけでなく、上記技術を例示するために、課題解決のためには必須でない構成要素も含まれ得る。そのため、それらの必須ではない構成要素が詳細な説明に記載されていることをもって、直ちに、それらの必須ではない構成要素が必須であるとの認定をするべきではない。
【0144】
また、上述の実施の形態は、本開示における技術を例示するためのものであるから、特許請求の範囲またはその均等の範囲において種々の変更、置き換え、付加、省略などを行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0145】
本開示は、各種レンズ、プリズム、ディスク等の光学部材、特に、意匠性が求められる外装部品用のレンズや、携帯情報端末のカメラに備えられるレンズ等の光学部材として好適に用いることができる。
【要約】
フルオレン系ジヒドロキシ化合物由来の構成単位を有するポリカーボネート樹脂(A1)及びリン系酸化防止剤(B)を含有し、リン系酸化防止剤(B)の量がポリカーボネート樹脂(A1)100重量部に対して0.02〜1.5重量部であるポリカーボネート樹脂組成物、フルオレン系ジヒドロキシ化合物由来の構成単位とジナフトチオフェン化合物由来の構成単位とを有するポリカーボネート樹脂(A2)及びリン系酸化防止剤(B)を含有し、リン系酸化防止剤(B)の量がポリカーボネート樹脂(A2)100重量部に対して0.02〜1.5重量部であるポリカーボネート樹脂組成物、及びそれらからなる成形品。