(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第2金属膜形成工程は、前記立体成型工程における立体成型によって屈曲した前記樹脂フィルムの屈曲部上に位置する前記第1金属膜に亀裂が生じた場合に、前記第2金属膜によって前記亀裂を修復する請求項1に記載の立体配線基板の製造方法。
前記第1金属膜形成工程においては、銅、銀、ニッケル、若しくは金、又はこれらのいずれかを少なくとも含む合金を粒子状に0.02μm以上0.20μm以下堆積する請求項1乃至3のいずれか1項に記載の立体配線基板の製造方法。
前記第1金属膜形成工程においては、分子接合剤を用いて前記樹脂フィルムと前記第1金属膜とを化学結合する請求項1乃至4のいずれか1項に記載の立体配線基板の製造方法。
前記樹脂フィルムと前記第1金属膜との間に、前記樹脂フィルムと前記第1金属膜とを化学結合する分子接合剤を有する請求項8乃至11のいずれか1項に記載の立体配線基板。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照し、本発明の実施の形態について、実施例に基づき詳細に説明する。なお、本発明は以下に説明する内容に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲において任意に変更して実施することが可能である。また、実施例の説明に用いる図面は、いずれも本発明による立体配線基板及びその構成部材を模式的に示すものであって、理解を深めるべく部分的な強調、拡大、縮小、または省略などを行っており、立体配線基板及びその構成部材の縮尺や形状等を正確に表すものとはなっていない場合がある。更に、実施例で用いる様々な数値は、一例を示す場合もあり、必要に応じて様々に変更することが可能である。
【0016】
<実施例>
以下において、
図1乃至
図22を参照しつつ、本発明の実施例に係る立体配線基板の製造方法について詳細に説明する。ここで、
図1、
図2、
図4、
図9、
図12、
図17、及び
図19は、立体配線基板の製造工程における断面図である。また、
図5は
図4における破線領域Vの拡大概念図であり、
図10は
図9における破線領域Xの拡大概念図であり、
図18は
図17の破線領域XVIIIの拡大概念図であり、
図20は
図19における破線領域XXの拡大概念図である。更に、
図13乃至
図16は、本発明の実施例に係る立体成型に係る製造工程を示す概略図である。そして、
図3、
図6乃至
図8、
図11、
図21は、本発明の実施例に係る立体配線基板についての金属膜形成における概略図である。
図22は、本発明の実施例に係る立体配線基板の斜視図である。
【0017】
先ず、
図1に示すように、熱可塑性樹脂フィルム1を準備する(準備工程)。熱可塑性樹脂フィルム1としては、例えば、ポリイミド又はポリエチレンテレフタラート等の公知の樹脂フィルムを用いることができる。熱可塑性樹脂フィルム1の厚みには限定はなく、立体配線基板の用途及び要求される特性に応じて適宜変更することができる。例えば、立体配線基板を単体で使用する場合には、熱可塑性樹脂フィルム1の厚みを約100μm程度(75μm以上150μm以下)に調整してもよく、立体配線基板を他のモールド樹脂等の保持部材とともに使用する場合には、50μm以下に調整してもよい。
【0018】
なお、準備する樹脂フィルムは熱可塑性タイプに限定されることなく、比較的に大きな破断伸びを備える樹脂フィルムであれば、熱硬化性樹脂フィルム、或いは熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂を積層した(すなわち、熱可塑性樹脂フィルムと熱硬化性樹脂フィルムとを貼り合わせた)構造を備える複合樹脂フィルムを用いてもよい。ここで、比較的に大きな破断伸びとは、少なくとも50%以上の値であり、好ましくは150%以上である。破断伸びについては成型する立体形状により必要な特性が要求され、複雑で大きな段差形状を持つ場合には立体成型による材料が耐えられる様に、より大きな破断伸び強度を持つ樹脂フィルム材が必要となる。
【0019】
次に、
図2に示すように、熱可塑性樹脂フィルム1の表裏面(第1の面1a、及び第2の面1b)における導通を確保するために、NC加工、レーザ加工、又はパンチング加工等の開口技術を用いて貫通孔2を形成する。本実施例においては、貫通孔2の開口径を約0.3mmとした。なお、
図2においては、1つの貫通孔2のみが示されているが、実際の立体配線基板においては複数の貫通孔2を有することになる。また、貫通孔2の数量は、立体配線基板の回路構成に応じて適宜変更することもできる。更に、後述する立体成型時の位置決めとして使用するための位置決め孔(例えば、開口径が3mm)を、熱可塑性樹脂フィルム1の外縁部分(すなわち、最終的に立体配線基板を構成することなく除去される部分)に形成してもよい。
【0020】
次に、熱可塑性樹脂フィルム1の第1の面1a、第2の面1b、及び貫通孔によって露出した熱可塑性樹脂フィルム1の側面1cを被覆するように、熱可塑性樹脂フィルム1の表面上に第1金属膜3を形成する(第1金属膜形成工程)。本実施例においては、熱可塑性樹脂フィルム1の表面上に、公知の分子接合技術を利用した無電解めっきによって金属をメタライジングする。
【0021】
より具体的には、先ず、前処理として、熱可塑性樹脂フィルム1にArプラズマ処理を施し、熱可塑性樹脂フィルム1の表面の脆弱層を除去し、後述する分子接合剤と相性のよい官能基を熱可塑性樹脂フィルム1の表面上に形成する。その後、Arプラズマ処理後の熱可塑性樹脂フィルム1を分子接合剤4の溶液に浸ける(
図3)。ここで、分子接合剤4は熱可塑性樹脂フィルム1と反応する官能基(第1官能基)を備えているため、熱可塑性樹脂フィルム1の官能基と分子接合剤4の官能基とか結びつき、
図4及び
図5に示すように、熱可塑性樹脂フィルム1の表面上に分子接合剤4が結合した状態が得られる。なお、
図4においては分子接合剤4をわかり易く示す観点から層状に図示しているが、実際には
図5に示すようなナノレベルの状態(分子接合剤4の厚みが数nm)で存在しており、他の材料と比較して非常に薄くなっている。よって、
図9以降では分子接合剤4を省略することがある。また、
図5における分子接合剤4の上下に伸びる直線は官能基を示し、より具体的には、熱可塑性樹脂フィルム1に向かって伸びた直線が熱可塑性樹脂フィルム1の官能基と結びついた状態の分子接合剤4の官能基を示し、熱可塑性樹脂フィルム1とは反対側に伸びた直線が第1金属膜3の金属と反応することになる分子接合剤4の官能基を示している。
【0022】
次に、分子接合処理がなされた熱可塑性樹脂フィルム1をキャタリスト液(Sn−Pdコロイド水溶液)に含浸する(
図6)。ここで、Sn−Pdコロイドは、熱可塑性樹脂フィルム1の表面に電気的に吸着される。その後、Sn−Pdコロイドが表面に担持した状態の熱可塑性樹脂フィルム1をアクセラレータ液に含浸すると、Pdの周囲を覆っていたSnが除去され、Pdイオンが金属Pdに変化する(
図7)。すなわち、触媒処理を行って熱可塑性樹脂フィルム1に触媒(例えばPd)を担持させることになる。なお、アクセラレータ液としては、シュウ酸(0.1%程度)を含む硫酸(濃度が10%)を用いることができる。その後、触媒であるPdを担持した熱可塑性樹脂フィルム1を無電解めっき槽に5分間浸漬する。当該浸漬により、Pdを触媒として例えば銅が析出し、析出した銅が分子接合剤4と結合することになる(
図8)。ここで、分子接合剤4は、第1金属膜3の金属と反応する官能基(第2官能基)も備えているため、分子接合剤4の熱可塑性樹脂フィルム1と結合している端部とは反対側に位置する端部(第2官能基)には、触媒を利用して金属が化学的に結合する。続いて、熱可塑性樹脂フィルム1に150℃、10分の加熱処理を施して、分子接合剤4と当該金属との化学結合を終結させ、
図9に示すように、熱可塑性樹脂フィルム1の表面を覆うように、第1金属膜3の形成(すなわち、熱可塑性樹脂フィルム1と第1金属膜3との分子接合)が完了する。
【0023】
ここで、上述した分子接合剤4とは、樹脂と金属等を化学的に結合させるための化学物であり、樹脂と結合する官能基と金属と結合する官能基が一つの分子構造中に存在するものである。また、分子接合技術とは、このような構造を備える分子接合剤4を用いて、樹脂と金属等を化学的に結合させる技術である。そして、これらの分子接合剤、及び分子接合技術は、特許第04936344号明細書、特許第05729852号明細書、及び特許第05083926号明細書において、より詳細に説明がなされている。
【0024】
本実施例においては、第1金属膜3の金属として銅を用い、
図10に示すように、無電解めっきは粒子状に生成され、銅の粒子3aによってポーラス状に第1金属膜3が形成される。ここで、ポーラス状とは、第1金属膜3が膜上に完全に形成される膜厚を備えることがないものの、粒子どうしが全部ではないものの少なくとも一部が接触することによって膜全体として導通している状態をいう(必ずしも電気的な導通が必要というわけではなく、立体成型で粒子間距離が離れても、後述する第2金属膜で導通されれば良い。)。これらのことを換言すると、本実施例においては、銅を粒子状に0.02μm以上0.20μm以下堆積し、光を透過することができる膜厚を備える第1金属膜3を形成している。このように第1金属膜3の状態(すなわち、膜厚)を調整する理由は、光を透過しない完全な膜状に第1金属膜3を形成してしまうと、後述する立体成型の際に第1金属膜3に亀裂が生じたとしても、後述する第2金属膜によっても当該亀裂の修復が困難になるからである。より具体的には、第1金属膜3が0.02μmより薄いと、樹脂と銅の接点が減少し密着が低下するとともに、伸ばされた後の粒子間距離がはなれすぎ後述する第2金属膜での導通修復が困難になる。また、光を透過する状態で伸ばされた場合、粒子間の距離が空くだけなので亀裂は小さいが、光が透過しない完全な膜状で伸ばされると限界をこえた金属膜(第1金属膜3)には亀裂が生じ幅の広いクラックとなる。なお、
図10においては、第1金属膜3の膜厚方向には1つの粒子3aのみが存在するように示されているが、第1金属膜3がポーラス状であれば、複数の粒子3aが膜厚方向に積層してもよい。
【0025】
第1金属膜3がポーラス状に形成される工程を、以下においてより詳細に説明する。
図8に示した銅が析出を開始した状態から更に銅の析出を続けると、新たに析出する銅は、分子接合剤4と、又は既に析出して分子接合剤4と反応している銅と化学結合をする。この際、銅の自己触媒作用によって触媒であるPdの方が活性度が高いため、銅の生成は面方向(すなわち、熱可塑性樹脂フィルム1の表面に広がる方向)に進むことになるものの、厚み方向(すなわち、第1金属膜3の膜厚方向)にも進み始めることになる。そして、銅の自己触媒作用が始まると、銅が順次析出して銅どうしの金属結合が進むことになり、銅の成長は厚み方向により進むことになり、膜厚が増加することになる。この状態においては、
図11に示すように、銅の存在しない空隙部分が存在し、部分的には電気的導通が得られていない部分があるものの、形成された金属膜全体としては電気的な接続経路が存在するため電気的導通が得られている。上述したように、このような状態が、本実施例におけるポーラス状ということになる。そして、このようなポーラス状の第1金属膜3においては、銅の破断伸び率を超えても、大きなクラックが発生することなく、部分的に銅分子どうしの距離が若干広がるに留まることになる。
【0026】
また、本実施例においては、分子接合剤4を介して、熱可塑性樹脂フィルム1と第1金属膜3とを化学結合しているため、熱可塑性樹脂フィルム1と第1金属膜3と界面を平滑にしつつも、両部材を強固に接合することができる。これにより、熱可塑性樹脂フィルム1の表面に凹凸を形成する必要がなくなり、製造工程の容易化及び製造コストの低減ならびに形成する配線回路の高精細化を図ることができる。なお、使用する分子接合剤は1種類に限定されることなく、例えば、分子接合剤4と当該分子接合剤4及び第1金属膜3と反応する官能基を備える他の分子接合剤とを混合して形成した化合物であってもよく、熱可塑性樹脂フィルム1及び第1金属膜3の材料に応じて、適宜変更することができる。
【0027】
また、第1金属膜3の材料は、銅に限定されることなく、例えば、銀、金、又はニッケル等の様々な金属、或いはこれらの金属及び銅のいずれかを少なくとも含む合金や各金属を積層したものを用いてもよいが、比較的にやわらかく破断伸び強度の高い金属を用いることが好ましい。ここで、使用する金属に応じて、光を透過し且つ導通している状態を実現するための膜厚が異なるため、他の金属を用いる場合には、第1金属膜3がポーラス状に形成されることを実現できるように、膜厚を適宜調整することになる。
【0028】
更に、第1金属膜3の形成方法については、上述した分子接合技術を用いた方法に限定されることなく、第1金属膜3をポーラス状に形成することができれば、例えば、スパッタ、蒸着、又は分子接合を使用する方法以外の湿式めっき等の成膜技術を用いてもよい。そして、第1金属膜3の形成については、使用される金属材料に応じて、最適な成膜技術を選択してもよい。
【0029】
なお、本実施例においては、熱可塑性樹脂フィルム1の第1の面1a、第2の面1b、及び貫通孔によって露出した熱可塑性樹脂フィルム1の側面1cを被覆するように、第1金属膜3を形成していたが、要求される立体配線基板の構造及び特性に応じて、熱可塑性樹脂フィルム1の第1の面1a又は第2の面1bのいずれかのみに第1金属膜3を形成してもよい。すなわち、本発明の立体配線基板には、両面に配線パターンが形成されたもののみならず、片面のみに配線パターンが形成されているものが含まれることになる。
【0030】
次に、
図12に示すように、フォトリソグラフィによって第1金属膜3にパターニング処理を施し、所望の配線パターンを形成する(パターン形成工程)。具体的には、第1金属膜3が形成された状態の熱可塑性樹脂フィルム1の表面にレジストフィルムを熱圧着し、所定のパターンが印刷されたマスクフィルムを用いて露光及び現像を行う。続いて、現像されたレジストフィルムをエッチングマスクとして第1金属膜3にエッチングを施して所望の配線パターンを形成する。その後に、当該レジストフィルムを剥離除去する。ここで、後述する立体成型による第1金属膜3の伸び及び変形を考慮して、配線パターンの形状(配線幅、配線長、配線間隔等)を調整しておくことが好ましい。
【0031】
このように、フォトリソグラフィによって第1金属膜3にパターニングを施すため、インクジェット印刷技術又はグラビアオフセット印刷技術等を用いたパターニング形成よりも高精細なパターンを実現することができる。すなわち、第1金属膜3は、インクジェット印刷技術又はグラビアオフセット印刷技術等を用いてパターンニングされた配線パターンよりも、解像度が高く(すなわち、直線性が優れ高精細な配線形成が実現される。)なる。
【0032】
次に、第1金属膜3が形成された状態の熱可塑性樹脂フィルム1に対して、加熱処理及び加圧処理を施して立体成型を行う(立体成型工程)。具体的な立体成型工程としては、先ず、上述した位置決め孔を用いて、成型用の金型11に対して熱可塑性樹脂フィルム1の位置決めを行う。これは、成型位置と配線パターン位置を合わせるためのものである。すなわち、
図13に示すように、金型11の上部金型12と下部金型13との間に熱可塑性樹脂フィルム1を配置することになる。続いて、
図14に示すように、上部金型12を上部加熱装置14で加熱するとともに、下部金型13を下部加熱装置15によって加熱を行う。ここで、本実施例においては、熱可塑性樹脂フィルム1にポリイミドフィルムを用いているため、加熱温度は材料のガラス転移点温度より高い270℃〜350℃の範囲内(例えば、300℃)で調整することができるが、熱可塑性樹脂フィルム1の材料に応じて当該加熱温度は適宜調整されることになる。ここで、加熱温度は、当該ガラス転移温度以上であって、熱可塑性樹脂フィルム1の耐熱温度以下であることが必要となるが、当該範囲内においてできる限り低い温度に設定することが好ましい。これは、熱可塑性樹脂フィルム1上に形成される第1金属膜3と熱可塑性樹脂フィルム1の加熱による密着低下を低減するためである。
【0033】
当該加熱処理を行いつつ、上部金型12及び下部金型13を近づけ、熱可塑性樹脂フィルム1に対して、上下から所望の圧力(例えば、10MPa)によってプレス処理を行う(
図15)。なお、所望の圧力とは、熱可塑性樹脂フィルム1の材料、圧力が弱すぎると所望の立体成型が困難になる点を考慮して適宜調整することになる。そして、プレス処理の完了後に、熱可塑性樹脂フィルム1を金型11から取り出し(
図16)、熱可塑性樹脂フィルム1の立体成型が完了する。換言すると、立体配線基板用基材16の形成が完了する。なお、
図13乃至
図16において、第1金属膜3の図示は省略している。また、要求される立体形状にもよるが、実際の立体配線基板の形状は複数の凹凸が形成されることになるため、金型11も複数の凹凸を有しており、上部金型12と下部金型13との複数の凹凸が互いに嵌合するような構造が採用されてもよい。
【0034】
図17に示されているように、立体成型が完了した熱可塑性樹脂フィルム1(すなわち、立体配線基板用基材16)には、立体成型によって屈曲した屈曲部1dに亀裂17が生じやすくなっている。ここで、
図18に示すように、亀裂17とは、第1金属膜3を構成する銅の粒子3aの粒子間距離の拡大によって生じる隙間のことであり、光が透過しない完全な金属膜状において当該金属膜が伸ばされることによって生じる亀裂と比較して、その構造が異なっている。なお、第1金属膜3の成膜状態、及び立体成型による三次元形状によっては、亀裂が発生しない場合もある。また、
図18に示すように、亀裂17は、熱可塑性樹脂フィルム1が伸ばされたのに対し、第1金属膜3はそれに従って粒子間距離が広がることになるが、第1金属膜3がポーラス状に形成されているため、亀裂17自体の深さは粒子3aの寸法と同等であって非常に小さくなり、更には第1金属膜3が完全な膜状にて形成される場合と比較して亀裂17の幅も小さくなる。すなわち、本実施例に係る立体配線基板用基材16は、第1金属膜3が完全な膜状にて形成される場合と比較して、亀裂17の修復をより容易に可能とする状態になっている。換言すれば、光を透過する状態で伸ばされた場合、粒子間の距離が空くだけなので亀裂17(粒子間の隙間)は小さいが、光が透過しない完全な膜状で伸ばされると限界をこえた金属膜には亀裂が生じ幅の広いクラックが生じることになる。
【0035】
また、屈曲部1dにおける亀裂17の発生を減少させる方法として、熱可塑性樹脂フィルム1を2枚の保護フィルムによって挟んだ状態において、上述した立体成型を行ってもよい。これにより、屈曲部1dにおける角部1eの形状を若干滑らかにすることができ、亀裂17の発生を抑制することができる。ここで、当該保護フィルムは、熱可塑性樹脂フィルム1と同一の材料で形成することが好ましい。更に、屈曲部1dにおける亀裂17の発生を減少させる方法として、屈曲部1dにおける角部1eの形状を湾曲させる、或いはその角度を90度よりも小さく(例えば、75度〜85度)となるように、金型11を設計してもよい。
【0036】
なお、本実施例においては、熱可塑性樹脂フィルム1を上部金型12及び下部金型13を用いて上下からプレス処理を施しているが、ヒートプレス後における熱可塑性樹脂フィルム1の厚みの均一性を確保することができれば、真空プレス、又は圧空プレス等の他のプレス加工方法を用いてもよい。
【0037】
次に、立体配線基板用基材16の第1金属膜3の表面を被覆するように、第2金属膜21を形成する(第2金属膜形成工程:
図19)。本実施例においては、一般的な無電解めっきによって第1金属膜3の表面上に金属を追加的に堆積する。
【0038】
具体的な第2金属膜形成工程としては、先ず、成型工程の加熱によって立体配線基板用基材16の表面上に形成された酸化層を除去するために、立体配線基板用基材16を所望の洗浄液(例えば、酸脱脂液、硫酸液)に浸す。続いて、触媒処理を行って立体配線基板用基材16の第1金属膜3に、第1金属膜3と置換するタイプの触媒(例えばPd触媒)を反応させ、その後に立体配線基板用基材16を無電解めっき液に浸す。そして、表面に触媒が存在する第1金属膜3の周囲に対してのみ選択的に金属が堆積することになり、配線回路とならない領域(すなわち、熱可塑性樹脂フィルム1の露出領域)には金属が堆積されず、第2金属膜21の追加のパターニングが不要となる。
【0039】
本実施例においては、第2金属膜21の金属として銅を用い、
図20及び
図21から分かるように、複数の銅の粒子21aが第1金属膜3の粒子3a上に堆積することになる。ここで、第2金属膜21をポーラス状に形成することなく、完全な膜状に形成する。特に、本実施例においては、1時間の浸漬により、5μm以上の膜厚を備える第2金属膜21を形成することができた。また、本実施例においては、第2金属膜21を構成する粒子21aが、第1金属膜3を構成する粒子3aの周囲に成長することになり、第2金属膜21の厚み方向及び当該厚み方向に直交する方向(第2金属膜21の平面方向)に対して同程度に成長することになる。これにより、立体成型によって生じた第1金属膜3の亀裂17を修復するように、第2金属膜21を形成することができる。すなわち、第2金属膜21の形成により、亀裂17による導通不良を回復させ、確実な導通を実現することができる配線回路(第1金属膜3及び第2金属膜21からなる導体層)を形成することができる。ここで、第2金属膜21による亀裂17の修復は、第2金属膜21の膜厚に対して2倍程度の亀裂17の幅を修復できるため、第2金属膜21の膜厚を想定される亀裂17の最大幅の1/2倍以上に調整してもよく、より好ましくは亀裂17の幅と同程度の膜厚に調整してもよい。また、この第2金属膜21は貫通穴2の側壁1cにも表層と同様に生成され、貫通穴2による表裏の導通不良が仮にあった場合でも導通を修復することが可能である。
【0040】
更に、本実施例においては、配線回路として必要となる導体層の層厚(配線パターン厚み)が第1金属膜3の膜厚では不足しているものの、第2金属膜21を形成することによって当該導体層の必要な層厚を確保することができる。
【0041】
なお、本実施例においては、無電解めっきによって第2金属膜21を形成したが、最終的に第1金属膜3の表面上のみ第2金属膜21を形成することができれば、他の成膜技術(例えば、電解めっき、導電性インクの塗布等)を用いてもよい。但し、本実施例の様に無電解メッキにより第2金属膜21を形成する場合は、独立した配線すなわち当該配線回路が成型体の外周部から電気的に離間していても形成が可能であるが、電解めっきによって第2金属膜21を形成する場合は、全ての配線が成型体の外周部と電気的に導通していることが必要であり、給電線の設置を含めて設計時に考慮することが必要となる。また、この場合、立体成型による非導通部分が発生していた場合、非導通部分から先は電気が流れないため第2金属膜21が形成出来なくなる。
【0042】
なお、第2金属膜21の材料は、銅に限定されることなく、ニッケル若しくはニッケルクロム、ニッケル銅、金、又は銀等の他の金属またはこれらを含む合金を用いてよく、立体配線基板に要求される特性及び信頼性に応じてその材料を適宜調整することができる。
【0043】
上述した製造工程を経てた後に、第2金属膜21の表面に防錆剤処理を施して、熱可塑性樹脂フィルム1、第1金属膜3、及び第2金属膜21から構成される立体配線基板30の製造が完了する。なお、立体配線基板30の表面の必要な部分に、ソルダーレジストからなる保護膜を更に形成してもよい。この場合に、インクジェット装置を用いたインジェット方式により、ソルダーレジストを必要な部分に塗布すること等の方法が考えられる。
【0044】
図19乃至
図21からわかるように、本実施例に係る立体配線基板30においては、熱可塑性樹脂フィルム1の表面においてポーラス状に形成された第1金属膜3に生じる亀裂が、第1金属膜3よりも厚い膜厚で形成された第2金属膜21によって確実に修復されており、配線回路の断線が防止された優れた信頼性が備えられている。また、上述した製造方法より、MID基板と比較して、より容易に微細な配線パターン(例えば、L/S=30/30μm)を実現することができ、小型化及び低コスト化も実現されている。
【0045】
そして、最終的に形成される立体配線基板30は、
図22に示すように、X方向及びY方向のそれぞれの位置において、Z方向の寸法(すなわち、高さ)が異なっており、XY平面において凹凸が形成されている。なお、
図22は、立体配線基板30の3次元形状を説明するための模式的な図面であり、配線パターン及び貫通孔は省略している。
【0046】
更に、本実施例に係る立体配線基板30は、熱可塑性樹脂フィルム1の表面(第1の面1a及び第2の面1b)に第1金属膜3及び第2金属膜21からなる導体層を有するとともに、立体的な形状を有しているため、様々の用途に適用することができる。例えば、熱可塑性樹脂フィルム1を比較的に厚く(例えば、100μm)すると、
図23に示すように、他の実装基板40上に実装された電子部品41に対して、電磁遮蔽を図りつつ、他の電子部品42をその表面に搭載することが可能である。この場合には、電子部品41側(すなわち内側)に位置する導体層(第1金属膜3及び第2金属膜21)によって電磁遮蔽を図るため、内側に位置する導体層に対してパターニングを施さない(すなわち、ベタパターンを形成する)ことになる。また、立体配線基板30は、実装基板40に対して半田又は導電性接着剤等の接合部材を用いて固着されることになる。なお、パターニングする導体層とパターニングしない導体層とを入れ替えることにより、立体配線基板30と実装基板40とによって遮蔽された空間内に電子部品42を配置し、且つ電子部品41及び電子部品42に対して電磁遮蔽を図るようにしてもよい。
【0047】
更に、パターニングを施さない導体層を接地してGND層として機能させ、当該パターニングされない導体層とは反対側に位置する導体層に単独の特性インピーダンス制御パターン又は差動インピーダンス制御パターンを形成してもよい。このような構造により、立体配線基板30においてはインピーダンス制御を図ることができる。
【0048】
そして、熱可塑性樹脂フィルム1を比較的に薄く(例えば、50μm以下)する場合には、三次元形状を備える他のモールド樹脂に立体配線基板30を接着し、従来のMID基板の代替となる複合体として使用することができる。これは、熱可塑性樹脂フィルム1が薄いため、他のモールド樹脂に立体配線基板30を接着しても、立体配線基板30及び他のモールド樹脂からなる複合体の厚みが大きくならず、且つ当該複合体としての強度を確保することができるからである。また、当該複合体は、従来から存在するMID基板と比較して、熱可塑性樹脂フィルム1の両面に導体層が形成されていることから、設計の自由度、外形サイズの狭小化を容易に図ることができる。
【0049】
また、立体成型された2つの部分を平坦な熱可塑性樹脂フィルムが結んだ構造にして2つの部分を結ぶ配線を施せば、いわゆるフレックスリジッド基板の様な構造、使用方法が得られる。
【0050】
<本発明の実施態様>
本発明の第1実施態様に係る立体配線基板の製造方法は、50%以上(実際に使用したフィルムは破断伸びが160〜170%の125μm厚の熱可塑性ポリイミド材)の破断伸びを備える樹脂フィルムを準備する準備工程と、前記樹脂フィルムの表面上に第1金属膜を形成する第1金属膜形成工程と、フォトリソグラフィによって前記第1金属膜にパターニングを施し、所望のパターンを形成するパターン形成工程と、前記樹脂フィルムに対して加熱及び加圧を施して立体成型する立体成型工程と、パターン形成された前記第1金属膜上に第2金属膜を形成する第2金属膜形成工程と、を有し、前記第1金属膜形成工程においては、金属を粒子状に堆積し且つ膜厚を調整することによって前記第1金属膜をポーラス状に形成することである。
【0051】
第1実施態様においては、パターン形成された第1金属膜を用いて第2金属膜を形成するため、第1金属膜及び第2金属膜をパターニングするための特殊な装置や工程等が不要であり、既存の配線基板製造装置が使用でき、より微細な配線パターンをより低コストで実現することができる。また、樹脂フィルムの両面に第1金属膜及び第2金属膜を形成するため、片面基板と比較して、配線回路の自由度が高く、且つ小型化も容易に図ることが可能になる。更に、第1金属膜をポーラス状に形成するため、その後の立体形成工程においても、修復が不可能な亀裂を第1金属膜に発生することを防止することができる。以上から、本発明の立体配線基板の製造方法は、配線回路の微細加工及びコスト低減を図るとともに、配線回路の断線を防止して優れた信頼性を備える立体配線基板を製造することができる。
【0052】
本発明の第2実施態様に係る立体配線基板の製造方法は、上述した第1実施態様において、前記立体成型工程における立体成型によって屈曲した前記樹脂フィルムの屈曲部上に位置する前記第1金属膜に亀裂が生じた場合に、前記第2金属膜によって前記亀裂を修復することである。これにより、配線回路に導通不良が生じることなく、信頼性の高い立体配線基板を製造することができる。
【0053】
本発明の第3実施態様に係る立体配線基板の製造方法は、上述した第2実施態様において、前記第2金属膜形成工程で前記第2金属膜の厚みを前記亀裂の幅の1/2倍以上にすることである。これにより、第1金属膜に生じる亀裂を第2金属膜によって確実に修復することができる。
【0054】
本発明の第4実施態様に係る立体配線基板の製造方法は、上述した第1乃至第3実施態様のいずれかにおいて、前記第1金属膜形成工程で銅、銀、ニッケル、若しくは金、又はこれらのいずれかを少なくとも含む合金を粒子状に0.02μm以上0.20μm以下堆積することである。これにより、樹脂と金属の密着を損なわずに第1金属膜に生じる亀裂を小さくすることができ、第2金属膜によって確実に修復することができる。
【0055】
本発明の第5実施態様に係る立体配線基板の製造方法は、上述した第1乃至4実施態様のいずれかにおいて、前記第1金属膜形成工程で分子接合剤を用いて前記樹脂フィルムと前記第1金属膜とを化学結合することである。これにより、樹脂フィルムに凹凸を形成することなく、樹脂フィルムと第1金属膜とを確実に接合することができ、製造コストの低減および配線パターンの高精細化を図ることができる。
【0056】
本発明の第6実施態様に係る立体配線基板の製造方法は、上述した第5実施態様において、前記分子接合剤は、前記樹脂フィルムと反応する第1官能基及び前記第1金属膜の金属と反応する第2官能基を備えることである。これにより、樹脂フィルムと第1金属膜とをより確実に接合することができ、製造コストの更なる低減を図ることができる。
【0057】
本発明の第7実施態様に係る立体配線基板の製造方法は、上述した第1乃至6実施態様のいずれかにおいて、前記第1金属膜形成工程において前記樹脂フィルムの両面上に前記第1金属膜を形成し、前記パターン形成工程において前記樹脂フィルムの両面上に形成された前記第1金属膜のいずれに対してもパターニングを施し、前記第2金属膜形成工程おいてパターニングされた前記第1金属膜のいずれに対しても前記第2金属膜を形成することである。これにより、立体配線基板の両面に配線パターンを形成することができ、立体配線基板の高密度化を図ることができる。
【0058】
本発明の第8実施態様に係る立体配線基板は、立体的形状を備え、且つ50%以上の破断伸びを備える樹脂フィルムと、前記樹脂フィルムの表面上に形成され、所望のパターンを備える第1金属膜と、前記第1金属膜上に形成された第2金属膜と、を有し、前記第1金属膜は、金属を粒子状に堆積してなるポーラス状の構造となるように膜厚が調整されていることである。
【0059】
第8実施態様においては、パターン形成された第1金属膜を用いて第2金属膜を形成するため、第1金属膜及び第2金属膜をパターニングするための特殊な装置や工程等が不要となり、より低コスト且つ微細な配線パターンが実現されている。また、樹脂フィルムの両面に第1金属膜及び第2金属膜を形成するため、片面基板と比較して、配線回路の自由度が高く、且つ小型化も容易に実現することが可能になる。更に、第1金属膜をポーラス状に形成するため、第1金属膜に亀裂が生じても第2金属膜で修復されており、導通不良がなく且つ優れた信頼性を備える配線回路が実現されている。以上から、本発明の立体配線基板は、配線回路の微細加工及びコスト低減が図れられているとともに、配線回路の断線を防止して優れた信頼性を備える。
【0060】
本発明の第9実施態様に係る立体配線基板は、上述した第8実施態様において、前記第2金属膜は、前記樹脂フィルムの屈曲部において前記第1金属膜に生じる亀裂を修復することである。これにより、配線回路に導通不良が生じることがなくなり、優れた信頼性を実現することができる。
【0061】
本発明の第10実施態様に係る立体配線基板は、上述した第9実施態様において、前記第2金属膜の厚みは、前記亀裂の幅の1/2倍以上である。これにより、第1金属膜に生じる亀裂を第2金属膜によって確実に修復することができる。
【0062】
本発明の第11実施態様に係る立体配線基板は、上述した第8乃至第10実施態様のいずれかにおいて、前記第1金属膜は、銅を粒子状に0.02μm以上0.20μm以下堆積したポーラス状の構造を備えることである。これにより、第1金属膜に生じる亀裂を小さくすることができ、第2金属膜によって確実に修復することができる。
【0063】
本発明の第12実施態様に係る立体配線基板は、上述した第8乃至第11実施態様のいずれかにおいて、前記樹脂フィルムと前記第1金属膜との間に、前記樹脂フィルムと前記第1金属膜とを化学結合する分子接合剤を有することである。これにより、樹脂フィルムに凹凸を形成する必要がなくなるため、製造コストの低減が図られるとともに、樹脂フィルムと第1金属膜とを強固に接合することができる。
【0064】
本発明の第13実施態様に係る立体配線基板は、上述した第12実施態様のいずれかにおいて、前記分子接合剤は、前記樹脂フィルムと反応する第1官能基及び前記第1金属膜の金属と反応することである。これにより、樹脂フィルムと第1金属膜とをより強固に接合することができ、製造コストの更なる低減を図ることができる。
【0065】
本発明の第14実施態様に係る立体配線基板は、上述した第8乃至第13実施態様のいずれかにおいて、前記第1金属膜が前記樹脂フィルムの両面上に形成されていることである。これにより、立体配線基板の高密度化を図ることができる。
【0066】
本発明の第15実施態様に係る立体配線基板用基材は、50%以上の破断伸びを備える樹脂フィルムと、前記樹脂フィルムの表面上に形成され、所望のパターンを備える第1金属膜と、を有し、前記第1金属膜は、金属を粒子状に堆積してなるポーラス状の構造となるように膜厚が調整されていることである。
【0067】
第15実施態様においては、第1金属膜をポーラス状に形成するため、第1金属膜に亀裂が生じても、追加の成膜によって当該亀裂を修復することができるため、最終的な導通不良の防止が図られている。
【0068】
本発明の第16実施態様に係る立体配線基板用基材は、上述した第15実施態様において、前記樹脂フィルムと前記第1金属膜との間に、前記樹脂フィルムと前記第1金属膜とを化学結合する分子接合剤を有することである。これにより、前記樹脂フィルムに凹凸を形成する必要がなくなるため、製造コストの低減が図られるとともに、前記樹脂フィルムと第1金属膜とを強固に接合することができる。
【0069】
本発明の第17実施態様に係る立体配線基板用基材は、上述した第15又は第16実施態様のいずれかにおいて、前記第1金属膜が前記樹脂フィルムの両面上に形成されていることである。これにより、立体配線基板の高密度化を図ることができる。
50%以上の破断伸びを備える樹脂フィルム(1)を準備する準備工程と、前記樹脂フィルムの表面上に第1金属膜(3)を形成する第1金属膜形成工程と、前記第1金属膜にパターニングを施し、所望のパターンを形成するパターン形成工程と、前記樹脂フィルムに対して加熱及び加圧を施して立体成型する立体成型工程と、パターン形成された前記第1金属膜上に第2金属膜(21)を形成する第2金属膜形成工程と、を有し、前記第1金属膜形成工程においては、金属を粒子状に堆積して前記第1金属膜をポーラス状に形成すること。