特許第6014797号(P6014797)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6014797
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年10月26日
(54)【発明の名称】陶磁器製容器
(51)【国際特許分類】
   A47J 27/00 20060101AFI20161013BHJP
   A47J 36/04 20060101ALI20161013BHJP
   A47J 36/02 20060101ALI20161013BHJP
【FI】
   A47J27/00 107
   A47J36/04
   A47J36/02 B
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-132147(P2014-132147)
(22)【出願日】2014年6月27日
(65)【公開番号】特開2016-10435(P2016-10435A)
(43)【公開日】2016年1月21日
【審査請求日】2015年7月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】316004240
【氏名又は名称】株式会社ミヤオカンパニーリミテド
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】特許業務法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】有地 隆広
(72)【発明者】
【氏名】野崎 伊織
(72)【発明者】
【氏名】阿部 志津恵
【審査官】 豊島 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】 登録実用新案第3040458(JP,U)
【文献】 特開2006−248853(JP,A)
【文献】 特開2003−290029(JP,A)
【文献】 特開平9−142820(JP,A)
【文献】 特開2007−260149(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 27/00 − 36/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に釉薬層が形成された陶磁器製容器であって、
非晶質炭素、結晶質炭素、炭化ケイ素、および窒化ホウ素のうちの少なくとも一種の化合物ならびにコージェライトを含む素地と、
前記素地と前記釉薬層との間に形成され、前記素地よりも熱伝導率の低い中間層と、を備えた陶磁器製容器。
【請求項2】
前記釉薬層よりも外側に電磁誘導により発熱する発熱体を備えた請求項1に記載の陶磁器製容器。
【請求項3】
前記素地には、異方性熱伝導材料が含まれる請求項1または請求項2に記載の陶磁器製容器。
【請求項4】
前記陶磁器製容器の厚み方向の熱伝導率に対する、前記陶磁器製容器の表面と平行な方向の熱伝導率の比が、1.20以上である請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の陶磁器製容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、陶磁器製容器に関する。
【背景技術】
【0002】
電磁調理器で調理を行う場合、調理用容器のうち、コイルの直上付近に配される部分では温度上昇が速いが、調理用容器の周縁部分は、コイルから離れた位置に配されるので温度上昇が遅い。特に、金属よりも熱伝導性の低い陶磁器製容器を用いて調理を行う場合には、当該容器の周縁部分の温度は上昇しにくい一方で、当該容器のコイルの直上付近に配される部分においては局部的な加熱が起こりやすく、このような局部的な加熱に起因して容器や調理物の焦げ付きの発生が問題となっていた。
【0003】
そこで、従来から、局部加熱(加熱ムラ)を抑制した陶磁器製の容器が検討されている(例えば特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−181044号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1には、土鍋の底を外側から削ってシリコン系接着剤でカーボン板を固着させた土鍋が開示されているが、土鍋の底を削る工程と、カーボン板を固着させる工程が必要であり、手間がかかるうえに、熱によりカーボン板がはがれるという懸念があった。
本発明は、加熱ムラを抑制した陶磁器製容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、表面に釉薬層が形成された陶磁器製容器であって、非晶質炭素、結晶質炭素、炭化ケイ素、および窒化ホウ素のうちの少なくとも一種の化合物ならびにコージェライトを含む素地と、前記素地と前記釉薬層との間に形成され、前記素地よりも熱伝導率の低い中間層と、を備えた陶磁器製容器である。
【0007】
本発明においては、素地には、非晶質炭素、結晶質炭素、炭化ケイ素、および窒化ホウ素のうちの少なくとも一種の熱伝導性の高い化合物が含まれるので、素地においては熱伝導性が向上する。その一方、本発明においては、釉薬層と素地との間に、素地よりも熱伝導率の低い中間層が形成されているから、容器の厚み方向への熱伝導性が低下する。
【0008】
つまり、本発明においては、素地における熱伝導性は高まる一方、容器の厚み方向への熱伝導性が低下するので、加熱される部分における局部的な温度上昇を緩やかにしつつ、加熱される部分から離れた方向への熱伝導性が向上するので、局部加熱が抑制される。その結果、本発明によれば、加熱ムラを抑制した陶磁器製容器を提供することができる。
【0009】
本発明は以下の構成としてもよい。
前記釉薬層よりも外側に電磁誘導により発熱する発熱体を備えた構成であってもよい。
電磁誘導により発熱する発熱体を備えた陶磁器製容器では、特に、局部加熱の問題が起こりやすいが、上記のような構成とすると、発熱体を備えた陶磁器製容器においても加熱ムラを抑制することができる。
【0010】
前記素地には、異方性熱伝導材料が含まれていてもよい。
このような構成とすると、面方向と厚み方向の熱伝導率を適宜設定することができ、加熱ムラの発生を確実に抑制することができる。
【0011】
前記陶磁器製容器の厚み方向の熱伝導率に対する、前記陶磁器製容器の表面と平行な方向の熱伝導率の比が、1.20以上であるのが好ましい。
このような構成とすると、確実に容器の表面と平行な方向への熱伝導が早まるので、加熱ムラを抑制する効果が高まる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、加熱ムラを抑制した陶磁器製容器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施形態1の陶磁器製容器の斜視図
図2】陶磁器製容器を底面から示した斜視図
図3】陶磁器製容器とIH調理器との関係を示す図
図4】陶磁器製容器とコイルの位置との関係を示す一部断面図
図5図4のA−A線における一部断面図
図6】試験例で用いた装置を模式的に示した一部断面図
図7】実施例9−1の陶磁器製容器における温度と時間の関係を示すグラフ
図8】実施例9−2の陶磁器製容器における温度と時間の関係を示すグラフ
図9】実施例7の陶磁器製容器における温度と時間の関係を示すグラフ
図10】比較例1の陶磁器製容器における温度と時間の関係を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0014】
<実施形態1>
本発明の実施形態1を図1ないし図10によって説明する。
本実施形態の土鍋1(陶磁器製容器の一例)は、図2に示すように、調理物を入れるための陶磁器製の土鍋本体2(容器本体2)と、その底部の外壁面2Aに設けられた円盤状の発熱体6と、を備える。
【0015】
土鍋本体2は、図1に示すように、上面が開口した有底容器状をなしている。土鍋本体2においては、表面に釉薬層5が形成されている。詳しくは、土鍋本体2においては、図5に示すように、発熱体6の上に配された釉薬層5の上には、中間層3、素地4、中間層3、釉薬層5が順に積層されている。
【0016】
釉薬層5を形成する釉薬としては、加熱調理時に土鍋1にひびが入ったり土鍋1が割れたりするのを防ぐため、素地4より熱膨張係数が小さくなるように調製したものを用いる。
【0017】
釉薬としては、熱膨張係数が、素地4の熱膨張係数以下のものを用いると、釉面に貫入やマイクロクラックなどが発生しないので好ましい。
【0018】
釉薬の材料としては、ペタライト、珪石、酸化亜鉛、粘土、アルミナ、石灰、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、カオリン、ガラスフリット、スポジューメン、炭酸リチウム、カリ長石、ジルコンなどがあげられ、これらのうちの1種以上を組み合わせて調製したものが釉薬として使用される。
【0019】
釉薬は、釉薬の全質量に対して、SiOを63〜73%、Alを14〜18%、LiOを3.5〜7%、ZnOを3〜7%、BaOを0〜4%、CaOを0〜3%、ZrOを0〜6%含む。釉薬には、顔料などその他の成分が含まれていてもよい。
【0020】
釉薬は、中間層3の表面にスプレー吹き、あるいはディッピングなど公知の方法により100〜250μmの厚みとなるように均一に施釉される。中間層3に釉薬を施釉した後、1150℃〜1250℃で焼成すると、土鍋本体2の表面に釉薬層5が形成される。
【0021】
素地4は、粘土、カオリン、滑石(タルク)、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、アルミナ、シャモット、珪石などから選ばれる材料を含み、必要により焼結助剤を含む原料であってコージェライトを生成する原料(コージェライト系原料という)と、土状黒鉛などの非晶質炭素、鱗片状黒鉛などの結晶質炭素、炭化ケイ素、および窒化ホウ素のうちの少なくとも一種の(高熱伝導性)化合物を用いて、鋳込み成形法やローラマシン成形法、押し出し成形法、プレス成形法などの公知の成形法により成形される。焼結助剤としては、長石、石灰及びペタライトなどから選ばれる材料を用いることができる。
【0022】
高熱伝導性化合物としては、上記化合物のうち、鱗片状黒鉛や六方晶窒化ホウ素などの異方性熱伝導材料が好ましい。
【0023】
素地4の厚み方向における熱伝導率は1.5W/m・K〜6.0W/m・Kであるのが好ましく、素地4の面方向における熱伝導率は厚み方向における熱伝導率以上であればよい。
【0024】
高熱伝導性化合物の量は、コージェライト系原料と高熱伝導性化合物の合計質量に対して5質量%以上30質量%以下とすると、熱伝導率向上効果が得られかつ成形性がよいので好ましい。
【0025】
中間層3は、粘土、カオリン、滑石、アルミナ、珪石、長石、および石灰などの中間層3の原料を含むスラリーを、成形された素地4の表面にスプレー吹き、流し掛け、ディッピング等の方法により塗布したのち1200℃〜1280℃で焼成することにより得られる。
【0026】
中間層3の熱伝導率は、素地4の熱伝導率よりも小さく、素地4の熱伝導率の70%以下であるのが好ましい。
【0027】
本実施形態においては、土鍋1の厚み方向(図5における上下方向)の熱伝導率に対する、土鍋1の面方向(土鍋1表面と平行な方向、図5における左右方向)の熱伝導率の比が、1.20以上であると、確実に容器の表面と平行な方向への熱伝導が早まるので、加熱ムラを抑制する効果が高まり好ましい。
【0028】
次に本実施形態の土鍋1の製造方法の一例を説明する。
コ−ジェライト系の原料と高熱伝導性化合物を組み合わせた素地土を用いて、公知の成形方法により成形したのち、中間層3の原料を含むスラリーを公知の方法により塗布し、1200℃〜1280℃で焼成し中間層3が表面に形成された焼成体を作成する。
【0029】
上述の釉薬材料を適宜組み合わせて釉薬を調製し、焼成体の表面にスプレー吹き等の方法により、所定厚みとなるように均一に施釉し、焼成温度が1150℃〜1250℃となるように焼成して釉薬層5を形成することにより土鍋本体2が得られる。
【0030】
次に、土鍋本体2の底部の外壁面2Aの所定位置に、金属薄膜からなる発熱体6を張り付け、800℃〜900℃で焼成すると、本実施形態の土鍋1が得られる。
【0031】
次に本実施形態の作用・効果について説明する。
本実施形態の土鍋1を用いて調理を行う際には、土鍋1の内部に調理物(図示せず)を入れ、IH調理器20のプレート21上にセットする。そして、IH調理器20のスイッチを入れると、IH調理器20に内蔵されている加熱コイル22に電流が流されることによって磁力線が発生する(図3および図4を参照)。そして、この磁力線が土鍋1の発熱体6内を流れることにより渦電流が発生し、この発熱体6が発熱する。
【0032】
本実施形態において、素地4には、非晶質炭素、結晶質炭素、炭化ケイ素、および窒化ホウ素のうちの少なくとも一種の熱伝導性の高い化合物が含まれるので、素地4においては熱伝導性が向上するが、その一方、釉薬層5と素地4との間に、素地4よりも熱伝導率の低い中間層3が形成されているから、土鍋1の厚み方向への熱伝導性が低下する。
【0033】
つまり、本実施形態においては、素地4における熱伝導性は高まる一方、土鍋1の厚み方向への熱伝導性が低下するので、加熱される部分における局部的な温度上昇を緩やかにしつつ、加熱される部分から離れた方向への熱伝導性が向上し、局部加熱が抑制される。その結果、本実施形態によれば、加熱ムラを抑制した土鍋1(陶磁器製容器)を提供することができる。
【0034】
また、本実施形態によれば、釉薬層5よりも外側に電磁誘導により発熱する発熱体6を備えるから、特に、局部加熱の問題が起こりやすい発熱体6を備えた土鍋1においても加熱ムラを抑制することができる。
【0035】
また、素地4には、異方性熱伝導材料が含まれていてもよい。このような構成とすると、面方向と厚み方向の熱伝導率を適宜設定することができ、加熱ムラの発生を確実に抑制することができる。
例えば、粘土などの扁平な粒子を含む陶磁器素地はある一定方向に配向しやすい性質を有しており、鋳込み成形やローラマシン成形により素地4を成形する際に、成形型の面に対して平行に粘土粒子が配向するという特性がある。この特性を利用して配向性を制御することにより面方向と厚み方向の熱伝導率を適宜設定することができる。なお、粘土以外に扁平な鱗片状黒鉛や六方晶窒化ホウ素も同様に一定方向に配向しやすい性質を有していると考えられる。
【0036】
<実施例>
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。
1.実施例1〜8の容器、実施例9−1の容器、実施例9−2の容器、および比較例1の容器の作製
直径200mmの円盤状の容器(皿)を以下の方法により作製した。
(1)基材の作製
素地の材料として、鱗片状黒鉛、土状黒鉛、および炭化ケイ素から選ばれる一種または二種の化合物、ならびに、タルク、粘土、カオリン、長石、およびアルミナからなるコージェライト原料を用いた素地土をローラマシン成形機[新栄機工(株)製、型式ACTM−1R−50DT]により、所定形状に成形して円盤状の成形体を作製した。各実施例および比較例において用いた素地の材料の種類および配合量(質量部)を表1に示した。
【0037】
【表1】
【0038】
中間層を形成するための材料として、比較例1の素地を作製する際に用いた材料(コージェライト原料)を用いて、中間層スラリーを作製した。
【0039】
素地土を用いて成形した各成形体の表面に、中間層スラリーを塗布した後、1250℃で焼成し表面に中間層を備える基材を作製した(各実施例で用いたコージェライト原料は表1を参照)。
【0040】
ここで、実施例9−1では中間層の厚みが900μm、実施例9−2では中間層の厚みが100μm、実施例1〜8では中間層の厚みが500μmとなるようにスラリーを塗布した。なお、比較例1については、素地土から作製した成形体を1250℃で焼成して中間層を備えない基材を作製した。
【0041】
(2)釉薬層の形成
次に、釉薬材料として、ペタライト70質量部、珪石11質量部、酸化亜鉛4質量部、粘土15質量部を粉砕混合し、アルミナ、石灰、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、カオリンおよびガラスフリットを適宜混合して、釉薬の全質量に対して、SiOを68.0%、Alを16.5%、LiOを3.9%、ZnOを5.5%、CaOを0.8%、ZrOを3.0%、顔料などその他の成分を2.3%の割合で含有する釉薬を調製した。
【0042】
上記のように調製した釉薬を、基材の表面全体にスプレー吹きにより厚みが100〜250μmとなるように均一に施釉し、焼成温度が1150℃〜1250℃となるように焼成して釉薬層を形成させ各容器を得た。各容器の厚みは6.5mmであった。
【0043】
(3)発熱体の形成
各容器の底部の外壁面に、直径160mm円形の発熱体を貼り付け、880℃で3時間焼成することにより、発熱体を形成した。
【0044】
2.確認試験
(1)熱伝導率
実施例1〜8の容器、実施例9−1の容器、実施例9−2の容器、および比較例1の容器の厚み方向の熱伝導率と、各容器の表面と平行な方向の熱伝導率(面方向の熱伝導率)を京都電子工業(株)製熱伝導度測定装置〔TPS−2500S/ホットディスク法〕を用いて測定し表2に示した(表中、「容器の熱伝導率」の欄を参照)。また、実施例1〜8、実施例9−1、実施例9−2の容器を作製する際に中間層を形成しないで素地に釉薬層を形成したものについても厚み方向と面方向の熱伝導率を測定し表2に示した(表中、「素地の熱伝導率」の欄を参照)。
【0045】
(2)熱拡散性試験
各容器の測定点(5箇所、詳細は後述する)に熱電対を貼り付けた後、耐火布で覆い、さらに1kgの重しをのせて、卓上用IH調理器〔パナソニック(株)製KZ−PS1(100V/1400W)〕を用いて2分加熱し、加熱停止後2分放置した(図6を参照)。加熱時と加熱停止後2分間の各容器の表面温度を熱電対により測定した。
【0046】
測定点は、容器の中心P0、中心から20mmの位置P1(φ40)、中心から40mmの位置P2(φ80)、中心から60mmの位置P3(φ120)、中心から90mmの位置P4(φ180)である。
【0047】
実施例7、実施例9−1、実施例9−2および比較例1については、表面温度と時間との関係をグラフ(図7図10)に示した。各グラフにおいて縦軸は表面の温度(℃)を示し、横軸は加熱開始からの経過時間を示す。経過時間は、分:秒で示されており、例えば「03:44.0」とは3分44秒を意味する。各グラフにおいて、中心は容器の中心P0での測定温度、φ40は中心から20mmの位置P1での測定温度、φ80は中心から40mmの位置P2での測定温度、φ120は中心から60mmの位置P3での測定温度、φ180は中心から90mmの位置P4での測定温度を示す。
【0048】
表2の「素地の熱伝導率」の欄には、実施例1〜8、実施例9−1、実施例9−2および比較例1の素地(中間層なし)の熱伝導率(厚み方向、面方向)とともに厚み方向の熱伝導率に対する面方向の熱伝導率の比(表中「比」と記載)を示した。また、表2の「容器の熱伝導率」の欄には、実施例1〜8、実施例9−1、実施例9−2および比較例1の容器の熱伝導率(厚み方向、面方向)とともに厚み方向の熱伝導率に対する面方向の熱伝導率の比(表中「比」と記載)を記載した。また表2の「最高温度に至った時間、その温度、その温度と各位置の温度の差」の欄には、各容器の表面温度が最高温度(5箇所の測定点のうち最高温度)に至った時間とそのときの温度(最高温度)、最高温度となった時の容器の中心P0の温度と最高温度との差(ΔT0)、最高温度となった時の中心から90mmの位置P4の温度と最高温度との差(ΔT4)を示した。さらに表2の「4分後の最高温度と最低温度の差」の欄には、加熱開始から4分後の容器表面のP0、P1、P2、P3の測定点のうちの、最高温度と最低温度との差を示した。
【0049】
【表2】
【0050】
(3)結果と考察
表2から明らかなように、実施例1〜8、実施例9−1および実施例9−2の容器では、比較例1の容器よりも最高温度に至るのが早かった。また、実施例1〜8、実施例9−1および実施例9−2の容器では、最高温度になった時の中心P0における温度と最高温度との差(ΔT0)が、比較例1のΔT0よりも小さく、最高温度となった時の中心から90mmの位置P4における温度と最高温度との差(ΔT4)が、比較例1のΔT4よりも小さかった。このことから、コージェライトと高熱伝導性化合物を含む素地と、中間層を備える本発明の陶磁器製容器では、熱伝導が速く加熱ムラが抑制されるということがわかった。さらに、実施例1〜8、実施例9−1および実施例9−2の容器では、比較例1の容器よりも4分後の最高温度と最低温度の差が小さく、本発明によれば加熱停止後の温度ムラも抑制されるということがわかった。
【0051】
図7図10のグラフに示す結果からも明らかなように、異方性熱伝導材料が含まれる実施例7の容器では特に、中心から90mmの位置P4の温度と中心P0の温度との差が実施例9−1や実施例9−2よりも小さかった。このことから、高熱伝導化合物として異方性熱伝導材料を用いると加熱ムラ抑制効果が高いということがわかった。
【0052】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態においては、電磁調理器20で用いることのできる発熱体6を備えた土鍋1を示し、実施例では円盤状の容器(皿)を示したが本発明はこれに限定されない。たとえば、発熱体を備えたIH炊飯器用の内釜などであってもよいし、発熱体を備えない土鍋や、皿などの陶磁器製容器であってもよい。
(2)上記実施形態では、中間層が二層形成されている例を示したが、中間層は一層のみでもよいし三層以上形成されていてもよい。中間層は容器全体でなく加熱される部分にのみ形成されていてもよい。
【符号の説明】
【0053】
1…土鍋(陶磁器製容器)
2…土鍋本体
3…中間層
4…素地
5…釉薬層
6…発熱体
20…IH調理器
21…プレート
22…コイル
25…耐火布
26…熱電対
27…重し
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10