(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記従来例では、超速硬セメントを使用するため、コンクリート工場で加水することができず、モービル車と呼ばれる大型の特殊車両を用いて、現場で超速硬セメント、細骨材及び水を混練している。これにより、大型のモービル車を現場に設置するための場所を確保する必要があるため、伸縮装置の取り換え工事現場のように大型車両の設置場所の確保が困難な現場での施工には適さないという問題点があった。特に、伸縮装置の箱抜き部のような狭小な間詰め部の施工では、使用するコンクリートが少量(例えば、2m
3程度)であるにも拘わらず、大量のコンクリートを打設可能なモービル車を用いることは、工事費を無用に増加させることになる。また、超速硬セメントは非常に高価であるため、コンクリートの材料コストが高くなるという問題点もあった。
【0007】
本発明は前記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、狭小な間詰め部においても低コストで急速施工が可能なコンクリート施工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のコンクリート施工方法は、前記目的を達成するために、少なくとも普通ポルトランドセメント、超速硬性混和材及び骨材を加水せずに混合してなる混合材を
間詰め部のコンクリート施工現場に搬送し、
施工現場で前記混合材
を小型ミキサに投入するとともに、混合材に加水し、加水したコンクリートを
所定の第1の混練時間だけ混練した後、繊維を混合し、所定の第2の混練時間だけ混練した後、前記間詰め部に打設するコンクリート施工方法であって、前記間詰め部に打設されるコンクリートは、圧縮強度が材齢3時間で24N/mm
2以上、凝結始発時間が加水から30分以上である。
【0009】
これにより、セメント、超速硬性混和材及び骨材等の主たるコンクリート構成材の混合を施工現場で行う必要がないので、従来のように大型のモービル車を現場で使用する必要がなく、小型ミキサ等の最小限の機材を用いて施工現場でコンクリートの混練を行うことが可能となる。また、比較的安価な普通ポルトランドセメントに超速硬性混和材を混合して速硬性を得るようにしているので、従来のように高価な超速硬セメントを用いる必要がない。
更に、コンクリートに繊維が混合されることから、繊維によってコンクリートの欠け落ち防止効果が高められる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、セメント、超速硬性混和材及び骨材等の主たるコンクリート構成材の混合を施工現場で行う必要がないので、従来のように大型のモービル車を現場で使用する必要がなく、小型ミキサ等の最小限の機材を用いて施工現場でコンクリートの混練を行うことができる。これにより、例えば伸縮装置の取り換え工事現場のように大型車両の設置場所の確保が困難な現場であっても施工可能となり、例えば伸縮装置の箱抜き部など、狭小な間詰め部の施工のように必要なコンクリートが少量(例えば、2m
3程度)の施工に極めて有利である。更に、本実施形態では、比較的安価な普通ポルトランドセメントに超速硬性混和材を混合して速硬性を得るようにしているので、従来のように高価な超速硬セメントを用いる場合に比べ、コンクリートの材料コストを大幅に低減することができるという利点もある。
また、伸縮装置の周辺のように衝撃や振動を受けやすいコンクリートにおいても繊維による欠け落ち防止効果を高めることができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1乃至
図14は本発明の一実施形態を示すもので、例えば橋梁用伸縮装置の取り換え工事のコンクリート打設に用いられるコンクリート施工方法を示すものである。
【0013】
図1乃至
図3に示す伸縮装置1は、橋梁同士の遊間に遊間に沿って配置された対向一対の波形鋼板1aを備え、鋼板1a同士が接近または離間することにより、床版2の伸縮を吸収するようになっている。鋼板1aは、
図2に示すように遊間を間にして対向する床版2の端部に設けられた間詰め部としての後打ち部3(箱抜き部)にアンカー部材4、固定部材5及び鉄筋6を介して固定され、
図3に示すように後打ち部3には後打ちコンクリート7が打設される。
【0014】
以下、前記伸縮装置1の箱抜き部3のような狭小な間詰め部のコンクリート打設を急速施工により行う方法を示す。
【0015】
即ち、本実施形態では、少なくとも普通ポルトランドセメント、超速硬性混和材、骨材を加水せずに混合してなる混合材をコンクリート施工現場に搬送し、施工現場で混合材に加水して混練するとともに、更に繊維を加えて混練したコンクリートを間詰め部に打設することにより施工する。
【0016】
前記混合材の混合工程では、普通ポルトランドセメント、超速硬性混和材、骨材が所定の性能を発現するように所定の割合で配合され、コンクリート工場においてミキサ等により混合される。
【0017】
普通ポルトランドセメントとしては、速硬性を有さない水硬性セメントで、混練開始から硬化までの時間が、例えば3時間を超えるものが用いられる。
【0018】
超速硬性混和材としては、例えば急硬性鉱物であるカルシウムアルミネートと硫酸カルシウムとを主体とする微粉末で、セメントと併用して水で混練すると、短時間でエトリンガイトを水和生成して急激に硬化する周知の混和材が用いられる。
【0019】
骨材としては、通常のコンクリートに使用される骨材であれば、川砂等の細骨材、砕石等の粗骨材など、各種の骨材が用いられる。
【0020】
また、コンクリートの構成材には、減水剤等のセメント分散剤を必要に応じて用いるようにしてもよい。
【0021】
施工現場で加える繊維としては、鋼繊維等の金属繊維、ロックウール、鉱物繊維等の無機繊維、炭素繊維、アラミド繊維、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン繊維またはビニロン繊維等の有機繊維のうち、一種または二種以上の繊維が用いられる。
【0022】
打設されるコンクリートの性能としては、
図4に示すように、スランプ(JISA1101)が12.5cm以上、空気量(JISA1118)が0.5%以上3.5以下、凝結始発時間(JISA1147)が加水から30分以上、材齢3時間の圧縮強度(JISA1108)が24N/mm
2以上、材齢28日の圧縮強度(JISA1108)が50N/mm
2 以上、曲げ靭性(JSCE−G552)が1.40N/mm
2以上とする。
【0023】
次に、本実施形態のコンクリート施工方法について、
図5を参照して説明する。まず、前記混合材と繊維をそれぞれ別々に袋詰めし(S1)、運搬車両によってコンクリート施工現場に搬送する(S2)。次に、施工現場で混合材をミキサ(例えば、傾胴型の小型ミキサ)に投入するとともに(S3)、ミキサに水を投入し(S4)、所定の第1の混練時間T1 (210秒以上270秒以下)だけ混練する(S5)。ここで、スランプ値を測定した後(S6)、繊維を投入し(S7)、所定の第2の混練時間T2 (50秒以上70秒以下)だけ混練する(S8)。そして、スランプ値及び空気量を測定した後(S9)、間詰め部に打設する(S10)。
【0024】
前記混練工程における加水からスランプ計測までの第1の混練時間T1 は、210秒よりも短いと混練不足を生じ、270秒よりも長いと後工程の打設に十分な時間を確保できなくなるので、第1の混練時間T1 は210秒以上270秒以下が好ましい。
【0025】
また、前記混練工程における繊維投入からコンクリート排出までの第2の混練時間T2 は、50秒よりも短いと混練不足を生じ、70秒よりも長いと空気混合量が過剰になって強度不足を生ずるとともに、後工程の打設に十分な時間を確保できなくなるので、第2の混練時間T2 は50秒以上70秒以下が好ましい。
【0026】
このように、本実施形態によれば、少なくとも普通ポルトランドセメント、超速硬性混和材及び骨材を加水せずに混合してなる混合材をコンクリート施工現場に搬送し、施工現場で前記混合材に加水するとともに、加水したコンクリートを混練して間詰め部に打設するようにしたので、例えば伸縮装置の後打ち部(箱抜き部)のような狭小な間詰め部においても低コストで急速施工が可能となる。
【0027】
即ち、本実施形態では、セメント、超速硬性混和材及び骨材等の主たるコンクリート構成材の混合を施工現場で行う必要がないので、従来のように大型のモービル車を現場で使用する必要がなく、小型ミキサ等の最小限の機材を用いて施工現場でコンクリートの混練を行うことができる。これにより、例えば伸縮装置の取り換え工事現場のように大型車両の設置場所の確保が困難な現場であっても施工可能となり、例えば伸縮装置の箱抜き部など、狭小な間詰め部の施工のように必要なコンクリートが少量(例えば、2m
3程度)の施工に極めて有利である。更に、本実施形態では、比較的安価な普通ポルトランドセメントに超速硬性混和材を混合して速硬性を得るようにしているので、従来のように高価な超速硬セメントを用いる場合に比べ、コンクリートの材料コストを大幅に低減することができるという利点もある。
【0028】
また、間詰め部に打設されるコンクリートを、圧縮強度が材齢3時間で24N/mm
2 以上となるようにしたので、十分な速硬性を確保することができ、例えば既設の道路橋の施工においても短時間での交通開放が可能となる。
【0029】
更に、間詰め部に打設されるコンクリートを、凝結始発時間が加水から30分以上となるようにしたので、速硬性を確保しつつ可使時間を30分以上確保することができ、現場でのコンクリート打設作業を確実に行うことができる。
【0030】
即ち、圧縮強度が24N/mm
2 以上に達する材齢を3時間よりも短くすると、凝結始発時間が早くなり、コンクリートの打設作業時間を十分に確保することができなくなる。一方、凝結始発時間を長くすると、圧縮強度が24N/mm
2以上に達する材齢が長くなり、交通開放可能な強度までコンクリートが硬化する時間が長くなる。本実施形態では、圧縮強度を材齢3時間で24N/mm
2以上、凝結始発時間を加水から30分以上とすることにより、伸縮装置等の間詰め部の施工において、後打ちコンクリートの打設に必要な作業時間を確保しつつ早期の交通開放が可能な急速施工を行うことができる。
【0031】
また、間詰め部に打設されるコンクリートを、スランプが12.5cm以上となるようにしたので、伸縮装置の箱抜き部のような過密配筋箇所でもコンクリートを隙間なく充填することができ、コンクリート施工を確実に行うことができる。この場合、材料分離を防止するためには、スランプを18.0cm以下とすることが好ましい。
【0032】
更に、間詰め部に打設されるコンクリートを、空気含有量が0.5%以上3.5%以下となるようにしたので、空気含有量が低すぎることによる凍結融解を防止することができるとともに、空気含有量が高すぎることによる強度低下を抑制することができる。
【0033】
また、間詰め部に打設されるコンクリートを、圧縮強度が材齢28日で50N/mm
2 以上となるようにしたので、既定の設計基準値を満たすことができ、施工後の耐久性を確保することができる。
【0034】
更に、間詰め部に打設されるコンクリートを、曲げ靭性が1.40N/mm
2 以上となるようにしたので、伸縮装置の周辺のように衝撃や振動を受けやすいコンクリートにおいても繊維による欠け落ち防止効果を高めることができる。
【0035】
尚、前記実施形態では、伸縮装置1の後打ち部3にコンクリートを打設する例を示したが、狭小な間詰め部に少量のコンクリートを打設する施工であれば、床版、パラペット、高欄、排水部等、他の間詰め部の施工にも本発明を用いることができる。
【実施例】
【0036】
本発明のコンクリート施工方法に用いるコンクリートについて、以下の実施例1及び2に対して試験を行うことにより、本発明におけるコンクリート性能の目標値を満たすことを確認した。
[コンクリートの示方配合]
実施例1及び2には、
図6に示すように、水:170kg/m
3 、セメント:348kg/m
3、細骨材:812kg/m
3 、粗骨材:941kg/m
3 、混和材(紛体):167kg/m
3 、混和剤(液体):微量を配合した。更に、実施例1には繊維4.55kg/m
3、実施例2には繊維7.28kg/m
3を配合した。
【0037】
セメントには普通ポルトランドセメント(密度:3.16g/cm
3 )、細骨材には石灰砕砂(表乾密度:2.75g/cm
3,F.M.=2.63)、粗骨材には石灰砕石(表乾密度:2.76g/cm
3,F.M.=6.79)、混和材には超速硬性混和材(密度:3.16g/cm
3)、繊維にはポリプロピレン製短繊維(有機繊維)を用いた。
[フレッシュコンクリート試験]
実施例1及び2について、フレッシュコンクリートのスランプ試験(準拠規格:JISA1101)及び空気量試験(準拠規格:JISA1118)を行ったところ、
図7に示す結果が得られた。本試験では、実施例1は加水量が800cc、1300ccの2通りについて試験を行い、実施例2は加水量が800ccの1通りについて試験を行った。
【0038】
試験の結果、ベース配合(繊維投入前)のスランプは、実施例1及び2のいずれも18.5cmであった。これに対し、繊維を混入した後のスランプは、実施例1(繊維量0.5%)が14.5cm(4.0cmのスランプダウン)、実施例2(繊維量0.8%)が14.0cm(4.5cmのスランプダウン)であったが、実施例1及び2のいずれも目標値(12.5cm以上)を満たす結果であった。空気量は、実施例1及び2のいずれも2.0%であり、目標値(0.5%以上3.5%以下)を満たす結果であった。また、本試験により、高い外気温の下でも、加水量の調整で安定したフレッシュ性状が得られることを確認した。
[強度試験]
実施例1及び2について、圧縮強度試験(準拠規格:JISA1108)、静弾性係数試験(準拠規格JISA1149)、割裂引張強度試験(準拠規格:JISA1113)を行ったところ、
図8に示す結果が得られた。本試験では、材齢3時間及び材齢6時間はアンボンドキャッピングを用い、材齢1日は供試体を研磨して試験を行った。
【0039】
試験の結果、材齢3時間の圧縮強度の平均値は30.5N/mm
2 であり、目標値(材齢3時間で24N/mm
2以上)を満たす結果であった。また、材齢と圧縮強度の関係を
図9に示し、材齢と静弾性係数の関係を
図10に示す。材齢3時間から材齢6時間の間では圧縮強度が増加しないが、これは超速硬性混和材を用いた場合に通常見られる現象である。
[凝結時間試験]
実施例1及び2について、凝結時間の試験を行ったところ、
図11に示す結果が得られた。本試験では、プロクター貫入試験(準拠規格:JISA1147)により、貫入抵抗が基準値3.5N/mm
2に達する始発時間を測定した。
【0040】
試験の結果、加水から97分で基準値3.5N/mm
2 に達し、目標値(30分以上)を満たすことが確認された。
[充填試験]
実施例1及び2について、充填性能の試験を行ったところ、
図12に示す結果が得られた。本試験では、ボックス充填試験(準拠規格:JSCE−F511)により、充填装置(ボックス形容器)をテーブルバイブレータの上に設置し、60Hzの振動を与えながら試験を行った。試料の上面に浮きを設置し、時間経過に伴う沈降量をワイヤー変位計で計測した。
【0041】
試験の結果、実施例1及び2のいずれにおいても,R2障害(D13−3本,鉄筋あき35mm)を問題なく通過した。沈降量と経過時間の関係を
図13に示す。
図13における直線区間の傾きから、実施例1の近似直線の式をy=−14.166x+14.613、実施例2の近似直線の式をy=−7.0286x+5.1229とし、各実施例1及び2の沈降速度を求めたところ、実施例1が14.2mm/sec、実施例2が7.0mm/secであった。このことから、繊維の混入量を0.3vol.%増加させると、沈降速度(障害通過速度)が約1/2になることが確認された。
[後打ち部充填試験]
実施例1及び2について、伸縮装置の後打ち部への充填性能の試験を行ったところ、以下の結果が得られた。本試験では、
図14に示す充填試験用の模擬試験装置10を用いた。
【0042】
この模擬試験装置10は、伸縮装置の後打ち部を模したもので、試験用のコンクリートを充填可能な箱状に形成されている。模擬試験装置10は、上面側が路面に対応する第1の空間部10aと、上面側が路面の下方位置に対応する第2の空間部10bとからなり、第1の空間部10aは上面を開口している。第2の空間部10bは上面が第1の空間部10aの上面よりも低く形成され、第2の空間部10bの上方空間Aは実際の橋梁における伸縮装置の設置位置に対応している。また、模擬試験体10内には複数の鉄筋が配筋されている。本試験では、伸縮装置の前後方向(図中左右方向)に延びる上下3段の鉄筋Rd1(D16),Rd2(D16),Rd3(D19)をそれぞれ伸縮装置の幅方向(図中奥行き方向)に100mmピッチで配筋した。また、伸縮装置の幅方向に延びる上下3段の鉄筋Rw1(D22),Rw2(D25),Rw3(D19)を配筋した。この場合、伸縮装置の前後方向に、Rw1を125mmピッチで5本、Rw2を100mmピッチで4本、Rw3を125mmピッチで第1の空間部10a側に4本、Rw3を160mmピッチで第2の空間部10b側に3本配置した。
【0043】
本試験では、模擬試験体10内に第1の空間部10aの上面からコンクリートを流入し、第2の空間部10b内におけるコンクリートの充填状態を確認した。
【0044】
試験の結果、模擬試験体10内におけるコンクリートの流動性は十分であり、第2の空間部10b内の全体に亘ってコンクリートが充填された。その際、過密配筋箇所であるRw2(D25,100mmピッチ)も充填上の障害とはならず、最もコンクリートの通過が困難な箇所(図中P部)においてもコンクリートの通過に支障はなかった。また、Rw2(D25)を80mmピッチとした試験も行ったが、100mmピッチと同様、良好な結果が得られた。
【解決手段】少なくとも普通ポルトランドセメント、超速硬性混和材及び骨材を加水せずに混合してなる混合材をコンクリート施工現場に搬送し、施工現場で前記混合材に加水するとともに、加水したコンクリートを混練して間詰め部に打設するようにしたので、主たるコンクリート構成材の混合を施工現場で行う必要がなく、従来のように大型のモービル車を現場で使用する必要がない。これにより、例えば伸縮装置の箱抜き部など、狭小な間詰め部の施工のように必要なコンクリートが少量(例えば、2m