特許第6014818号(P6014818)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6014818
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年10月26日
(54)【発明の名称】スパッタリングターゲット
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/34 20060101AFI20161013BHJP
   H01L 21/285 20060101ALI20161013BHJP
【FI】
   C23C14/34 B
   C23C14/34 C
   H01L21/285 S
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-78063(P2015-78063)
(22)【出願日】2015年4月6日
【審査請求日】2016年1月27日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】515094431
【氏名又は名称】株式会社クラフト
(73)【特許権者】
【識別番号】509094159
【氏名又は名称】株式会社プロスタッフ
(74)【代理人】
【識別番号】100137338
【弁理士】
【氏名又は名称】辻田 朋子
(72)【発明者】
【氏名】丹下 康彦
【審査官】 末松 佳記
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−222524(JP,A)
【文献】 米国特許第06551470(US,B1)
【文献】 特開2001−140063(JP,A)
【文献】 特開2000−265265(JP,A)
【文献】 米国特許第05674367(US,A)
【文献】 特開2003−027225(JP,A)
【文献】 特開2013−253288(JP,A)
【文献】 特開2013−245375(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/00−14/58
H01L 21/285
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円板状に形成された本体部と、
前記本体部の中心部に設けられて、本体部の厚さ方向に貫通する貫通孔と、
前記本体部の上面に形成された環状隆起部と、
前記貫通孔に挿通して前記本体部の位置を固定する固定部材と、を備え、
前記固定部材は、磁性体により形成されていることを特徴とする、スパッタリングターゲット。
【請求項2】
前記固定部材は、前記貫通孔に挿入される円柱部と、
前記貫通孔より大径に形成されたフランジ部と、を有していることを特徴とする、請求項1に記載のスパッタリングターゲット。
【請求項3】
前記固定部材に着脱可能に接続して前記固定部材を取外すための取り外し部材をさらに備え、
前記フランジ部の中心部には、ネジ穴が設けられ、
前記取外し部材の一端には、前記ネジ穴と接続するネジ山が設けられ、
前記取外し部材の他端には、鉤部が設けられていることを特徴とする、請求項2に記載のスパッタリングターゲット。
【請求項4】
前記環状隆起部の上面には、平坦面が形成され、前記環状隆起部の側面には、前記平坦面から前記貫通孔へ向かって下り勾配の内側テーパー面と、前記平坦面から前記本体部の外縁部に向かって下り勾配の外側テーパー面と、が形成されていることを特徴とする、請求項1〜3の何れかに記載のスパッタリングターゲット。
【請求項5】
前記本体部と前記環状隆起部が同一材料によって一体に形成されていることを特徴とする、請求項1〜の何れかに記載のスパッタリングターゲット。
【請求項6】
請求項1〜5の何れかに記載のスパッタリングターゲットを装着する真空容器を備えたスパッタリング装置であって、前記真空容器の内面に前記スパッタリングターゲットの本体部が嵌り込む凹部が設けられていることを特徴とする、スパッタリング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体等の各種デバイス、光学部品等の製造において薄膜を形成するために用いられるスパッタリング装置に設置されるスパッタリングターゲットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
スパッタリング法は、物理気相成長法(Physical Vapor Deposition)の一種であり、基板上に薄膜を形成する技術である。このスパッタリング法では、まず不活性ガス原子に電圧等を印可することでイオン化させ、このイオン化させた原子を薄膜の材料となるスパッタリングターゲット(以下ターゲット)の表面に物理的に衝突させる。そして、この衝突によってターゲット表面から弾き出されたスパッタ粒子を基板表面に付着・堆積させることによって薄膜を形成している。
【0003】
このスパッタリング法においては、スパッタ粒子のエネルギーが大きく付着力が強いことや、成膜材料の制限が無いこと、大面積の均質で均一な薄膜が比較的容易に得られること等の利点があるため、絶縁体、半導体、導電体等の薄膜の形成方法として広く使用されている。
【0004】
一般に、このスパッタリング法においては、ターゲット表面に入射するイオンの入射角(ターゲット表面の法線と入射イオンの経路がなす角度)を大きくすると、スパッタリング率(入射イオン数と弾き出されたスパッタ粒子数の割合)が高くなることが知られている。しかしながら、従来から用いられている平面状のターゲットにおいては、入射イオンの入射角がほとんど0となってしまうため、スパッタリング率が最も低くなってしまうという問題があった。
【0005】
このような問題を解決するために、ターゲットの表面に傾斜面を設け、入射イオンの入射角を大きくすることで、スパッタリング率を向上させることが提案されている。例えば、特許文献1には、「表面に高さが1mm以上10mm以下の複数の傾斜面が形成されていることを特徴とするスパッタリングターゲット」が開示されている。このように、ターゲットの表面に複数の傾斜面を形成することで、スパッタリング率を向上させ、成膜速度を向上させることが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−27225号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、スパッタリング装置においては、定期的にターゲットの交換を行う必要がある。ターゲットは繰り返し使用しているうちに、ターゲットの構成元素が弾き飛ばされてしまうことによるエロージョン(消耗現象)が起きる。このようなエロージョンが起きたターゲットを継続使用して薄膜を形成すると、膜厚或いは抵抗の一様性に支障を来してしまう危険がある。そのため、ターゲットには有用寿命が設定され、この有用寿命を超える前に定期的にターゲットを交換するということが行われている。
【0008】
しかしながら、特許文献1のようにスパッタリング率を向上させた場合には、成膜速度を向上させることはできるが、エロージョンの進行も早まってしまうため、ターゲットの有用寿命が短いという問題があった。
【0009】
また、従来のターゲットの交換方法においては、作業工程が複雑であったため、作業時間が増大し、さらには、作業者のミスを誘発しやすいという問題があった。
すなわち、従来の交換作業においては、ターゲットを固定しているボルト等を取り外す工程、ターゲットを交換する工程、再度ボルトを取付ける工程が必要であり、スパッタリング装置によっては、数時間〜十数時間にも及ぶ交換作業が行われていた。
【0010】
また、従来のターゲットの製造工程においては、薄膜材料となる材料部を、インジウム等のボンディング材によって、バッキングプレートに貼り付ける(ボンディング)工程が必要であった。これは、材料部にネジ穴等を設けることができず、スパッタ装置に取り付けることができなかったためである。
【0011】
本発明は、かかる実情に鑑み、薄膜形成の速度を向上させつつ、ターゲットの有用寿命を延ばすことができるスパッタリングターゲットを提供することを課題とする。
また、本発明は、ターゲットの交換作業と製造工程とを容易にすることができるスパッタリングターゲットを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、本発明に係るスパッタリングターゲットは、円板状に形成された本体部と、前記本体部の中心部に設けられて、本体部の厚さ方向に貫通する貫通孔と、前記本体部の上面に形成された環状隆起部と、を備えることを特徴とする。
【0013】
このように、本体部の上面には環状隆起部が備えられていることにより、隆起させた分の薄膜材料を設けることができ、ターゲットの有用寿命を延伸させることができる。
また、本体部の中心部に貫通孔が設けられていることにより、ターゲットの交換作業と製造工程とを容易にすることができる。
【0014】
本発明の好ましい形態は、前記環状隆起部の上面には、平坦面が形成され、前記環状隆起部の側面には、前記平坦面から前記貫通孔へ向かって下り勾配の内側テーパー面と、前記平坦面から前記本体部の外縁部に向かって下り勾配の外側テーパー面と、が形成されていることを特徴とする。
このように、環状隆起部は、表面にテーパー面が形成されていることにより、成膜速度の向上を図ることができる。
【0015】
本発明の好ましい形態では、前記環状隆起部は、1つの隆起によって形成されており、高さが10mm以上あることを特徴とする。
このように、高さが10mm以上の隆起を1つ形成することにより、有効に成膜速度を向上させつつ有用寿命を延伸させることができる。
【0016】
本発明の好ましい形態では、前記本体部と前記環状隆起部とが同一材料によって一体に形成されていることを特徴とする。
このように、前記本体部と前記環状隆起部とを同一材料で一体に形成することにより、本体部と環状隆起部とを接着する工程を無くすことができ、ターゲットの製造を容易に行うことができる。
【0017】
本発明の好ましい形態では、前記貫通孔に挿通されて、前記本体部の位置を固定する固定部材をさらに備えていることを特徴とする。
このように、固定部材をさらに有することにより、ターゲットの交換作業の容易性をさらに向上させることができる。
【0018】
本発明によれば、スパッタリングターゲットを装着する真空容器を備えたスパッタリング装置であって、前記真空容器の内面に前記スパッタリングターゲットの本体部が嵌り込む凹部が設けられていることを特徴とする。
このように、スパッタリング装置の真空容器の内面にターゲットの本体部が嵌り込む凹部が設けられていることにより、作業者がターゲットの正しい取付位置を容易に把握することができ、ターゲットの固定性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、薄膜形成の速度を向上させつつ、ターゲットの有用寿命を延ばすことができるスパッタリングターゲットを提供することができる。
また、本発明は、ターゲットの交換作業と製造工程とを容易にすることができるスパッタリングターゲットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施形態に係るスパッタリングターゲットの斜視図である。
図2】本発明の一実施形態に係るスパッタリングターゲットの要部断面斜視図である。
図3】本発明の一実施形態に係るスパッタリングターゲットを取付ける真空容器の正面図である。
図4】本発明の一実施形態に係るスパッタリングターゲットの着脱作業を示す斜視図である。
図5】本発明の一実施形態に係るスパッタリングターゲットの着脱作業を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を図面に示した好ましい一実施形態に基づいて詳細に説明する。
図1には、本発明に係るスパッタリングターゲット10(以下ターゲット10)と、このターゲット10を取付け位置に固定する固定部材20と、ターゲット10を交換する際に用いる取外し部材30と、が示されている。
【0022】
図2は、ターゲット10の要部断面斜視図を示している。このターゲット10は、円盤状に形成された本体部11と、本体部11の中心部に設けられて本体部11の厚さ方向に貫通する貫通孔12と、本体部11の上面に形成された環状隆起部13と、を備えている。
【0023】
本体部11は、10〜20mmの厚さと、150〜200mmの直径を有した円盤状に形成されている。貫通孔12は、本体部11の中心部に30〜45mmの直径を有する円形状に形成され、この貫通孔12の円周には、貫通孔12の直径よりも大径に形成された段部11aが設けられている。この段部11aは45〜60mmの直径と、1〜10mmの深さを有している。
【0024】
環状隆起部13は、150〜200mmの直径を有したリング状に形成されており、上面には平坦面13aが、側面には内側テーパー面13bと、外側テーパー面13cとがそれぞれ形成されている。この環状隆起部13の隆起高さHは、10mm以上の高さを有しており、図1図5においては15〜25mmの範囲で形成されたターゲット10が示されている。しかしながら、隆起高さHを10mm以下(例えば5mm)に形成する場合であっても、成膜速度向上等の効果は当然に期待できる。
【0025】
平坦面13aは、環状隆起部13の上面に形成され15〜25mmの幅を有し、内側テーパー面11b及び外側テーパー面11cは25〜35mmの幅を有している。そのため、環状隆起部13の表面は、2/3以上の面積がテーパー面によって形成されている。
【0026】
また、内側テーパー面13bは、平坦面13aから貫通孔12へ向かって下り勾配を有し、外側テーパー面13cは、平坦面13aから本体部11の外縁部に向かって下り勾配を有している。この内側テーパー面11b及び外側テーパー面11cの勾配の傾斜角度は、水平面に対して30〜60度であり、図1図5においては40〜50度の範囲で形成されたターゲット10が示されている。
【0027】
この本体部11と環状隆起部13とは、別々の材料によって形成しても良いが、好ましくは同一の材料によって形成される。この材料としては、薄膜材料として一般的に用いられている、アルミニウム、銅、チタン、タンタル、クロム、インジウム、ステンレス等が例示することができる。この他にも、一般にターゲット材料として用いられている材料は当然に用いることができる。
また、従来のスパッタ装置に適応する場合には、本体部11の下面にボンディング材を設けてバッキングプレートに貼り付けるようにしてもよい。
【0028】
固定部材20には、図1に示すように、円柱部21と、フランジ部22と、ネジ穴23と、が設けられている。円柱部21は、30〜45mmの直径と、10〜20mmの厚みとを有し、これは貫通孔12の直径と厚みに対応した形状に形成されている。
また、フランジ部22は、45〜60mmの直径と、1〜10mmの厚みとを有し、これは本体部11の段部11aの直径と深さに対応した形状に形成されている。
【0029】
このように、フランジ部22は、貫通孔12より大径に設けられていることにより、固定部材20をターゲット10に取り付けた際に、ターゲット10の下方向に抜けてしまうことがない。さらに、フランジ部22と段部11aの形状を対応させていることにより、固定部材20をターゲット10に取り付けた際に、段部11a及び貫通孔12を表面に露呈させることがない。
【0030】
この固定部材20は、磁性体によって形成されていることが好ましく、例えば、鉄、コバルト、ニッケル等の強磁性体が好ましく用いられる。このような強磁性体によって形成されていることにより、固定部材20は磁力によってターゲット10の取付位置に吸着される。この際、固定部材20の円柱部22が貫通孔12に挿通され、フランジ部21が段部11aに嵌合させられることで、ターゲット10を取付位置に圧着して固定させることができる。また、この固定部材20は、表面が錆びないようメッキ処理を施してあることが好ましい。
【0031】
取外し部材30は、フック状の鉤部31と、固定部材20のネジ穴23に螺合されるネジ山32と、を備えている。この取外し部材30の材料としては、アルミ、ステンレス、チタン等の非磁性体が好ましく用いられる。このように、非磁性体で形成することにより、磁力の影響を受けずに、容易に固定部材20に取り付けることができる。
この取外し部材30は、固定部材20に取り付けることで、鉤部31を固定部材20から突出させて、容易に固定部材20を取り外すことができる。
【0032】
次に、取り外し部材30を用いた、固定部材20及びターゲット10の取外し作業について図3図5を参照して詳細に説明する。
【0033】
図3は、ターゲット10が取り付けられるスパッタリング装置の真空容器C内を示している。この真空容器C内の底面には、薄膜形成される基板が貼り付けられる回転テーブルSが設けられ、天面にはターゲット10の本体部11が嵌り込む凹部C1が2つ設けられている。この図3においては、天面の右側の凹部C1にはターゲット10を取付けた様子が、左側の凹部C1にはターゲット10を取外した様子が、それぞれ示されている。
【0034】
凹部C1は、本体部11の直径と厚さに対応した形状に形成されており、150〜200mmの直径と、10〜20mmの深さを有している。この凹部C1は、作業者Wがターゲット10の取付位置を容易に分かるようにして、ターゲット10が水平方向に移動してしまうことを抑制することができる。
【0035】
図4及び図5は、実際にターゲット10を取り外す工程を示している。まず、図4に示すように、固定部材20に取外し部材30を取り付け、この取外し部材30の鉤部32にL字型治具Lを引っ掛ける。次に、図5に示すように、作業者WがL字型治具Lを下に押し下げることによって、てこの第二原理により固定部材20が容易に押し下げられて、固定部材20を取り外すことができる。
【0036】
本発明によれば、本体部11の上面には10mm以上の高さを有する環状隆起部13を備えることにより、従来のターゲットに比して、ターゲット10のスパッタリング材料を増量させて、有用寿命を延伸させることができる。そのため、ターゲットの交換周期を遅らせて、交換回数を低減させることができる。
【0037】
また、本発明によれば、環状隆起部13には、テーパー面11b、11cが設けられていることにより、スパッタリング率を向上させると共に、スパッタ粒子を放射状に放出することが可能である。そのため、スパッタ粒子の到達範囲を大面積にすることができ、成膜速度を向上させることができる。
【0038】
また、本発明によれば、ターゲット10の本体部11に貫通孔12を設けることで、固定部材20を挿通させて、真空容器C内に取り付けることができる。このように、本体部11に貫通孔12を設けたことにより、バッキングプレートにボンディングする必要がなく、ターゲット10の製造工程を容易にすることができる。さらに、従来法のように、ボルト等の手間のかかる方法を用いる必要がなく、固定部材20を挿通させるだけで容易にターゲット10を取り付けることができるため、交換作業時間を短縮することができる。
【0039】
また、本発明によれば、取外し部材30を固定部材20に取り付け、L字型治具Lを用いることで、固定部材20を容易に取り外すことができる。そのため、ターゲット10の取り外し作業時においても、ボルト等の手間のかかる方法を用いる必要がなく、容易にターゲット10を取り外すことができ、交換作業時間を短縮することができる。
【0040】
また、本発明によれば、本体部11と環状隆起部13とを同一の材料で形成することにより、本体部11と環状隆起部13とを接着する工程を無くすことができ、ターゲット10の製造を容易に行うことができる。
【0041】
また、本発明によれば、スパッタリング装置の真空装置C内に本体部11が嵌り込む凹部C1を備えていることによって、ターゲット10の取付位置を容易に把握することができ、さらに、ターゲット10が移動してしまうのを抑制して固定することができる。
【0042】
このように、本発明では、上記のようにターゲット10の交換作業を容易にして、作業時間を短縮することで、真空容器C内に不純物が混入してしまうことを抑制することができる。スパッタリング法においては、真空容器C内に不純物が残留したまま薄膜形成を行うと、薄膜中に意図しない不純物が混入してしまい、薄膜の性能を劣化させる原因となる。そのため、ターゲット10の交換作業を容易にし、作業時間を短縮させることで、予期せぬミスで真空容器C内を汚染してしまったり、長時間大気に曝露されて、不純物が真空容器C内に混入することを防ぐことができる。
【0043】
なお、以上の実施形態では、環状隆起部13を、平坦面13aとテーパー面13b,13cとで形成する例を示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、断面が半円状となるように環状隆起部13を形成しても良い。また、各部材の形状や大きさ、真空容器C内の凹部C1の数や配置などは、スパッタリング装置の構造や目的の用途に応じて適宜変更しても良い。
【符号の説明】
【0044】
10 ターゲット
11 本体部
11a 段部
12 貫通孔
13 環状隆起部
13a 平坦部
13b 内側テーパー部
13c 外側テーパー部
20 固定部材
21 円柱部
22 フランジ部
23 ネジ穴
30 取外し部材
31 鉤部
32 ネジ山
H 隆起高さ
C 真空容器
C1 凹部
L L字型治具
W 作業者

【要約】
【課題】
薄膜形成の速度を向上させつつ、ターゲットの有用寿命を延ばすことができ、さらに、ターゲットの着脱作業を容易に行うことができるスパッタリングターゲットを提供することを課題とする。
【解決手段】
円板状に形成された本体部11と、前記本体部11の中心部に設けられて、本体部11の厚さ方向に貫通する貫通孔12と、前記本体部11の上面に形成された環状隆起部13と、を備えることを特徴とする。このように、環状隆起部13を設けることで、ターゲット10の有用寿命を延伸させることができ、さらに、本体部11に貫通孔12を設けたことにより、ターゲット10の製造性と交換作業の容易性を向上させることができる。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5