特許第6014820号(P6014820)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ トヨタ車体株式会社の特許一覧 ▶ トヨタ自動車株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6014820-車両のアンダーカバー組付構造 図000002
  • 特許6014820-車両のアンダーカバー組付構造 図000003
  • 特許6014820-車両のアンダーカバー組付構造 図000004
  • 特許6014820-車両のアンダーカバー組付構造 図000005
  • 特許6014820-車両のアンダーカバー組付構造 図000006
  • 特許6014820-車両のアンダーカバー組付構造 図000007
  • 特許6014820-車両のアンダーカバー組付構造 図000008
  • 特許6014820-車両のアンダーカバー組付構造 図000009
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6014820
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年10月26日
(54)【発明の名称】車両のアンダーカバー組付構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/20 20060101AFI20161013BHJP
   B62D 25/08 20060101ALI20161013BHJP
   B62D 37/02 20060101ALI20161013BHJP
【FI】
   B62D25/20 N
   B62D25/08 M
   B62D37/02 D
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-120939(P2013-120939)
(22)【出願日】2013年6月7日
(65)【公開番号】特開2014-237380(P2014-237380A)
(43)【公開日】2014年12月18日
【審査請求日】2015年9月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】林 良二
【審査官】 田合 弘幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−180233(JP,A)
【文献】 特開2009−241667(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 25/20
B62D 25/08
B62D 37/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のフロア下に対してアンダーカバーを組み付けるための構造であって、
車両の後端に設けられ、前方に延びる延設部を有するアッパーカバーと、
車両のフロア下に設けられ、前記延設部と鉛直方向に重なり合うアンダーカバーと、を備え、
前記延設部及びアンダーカバーには共通の締結部材が挿通される孔が形成され、
アッパーカバー及びアンダーカバーの少なくとも一方には、前記延設部の孔とアンダーカバーの孔とが一致している状態においてアッパーカバーに近接する方向へのアンダーカバーの移動を規制する規制部が設けられ
アンダーカバーは前記延設部の上方に位置し、
前記規制部は前記延設部の上方に設けられ、アンダーカバーの後端が当接可能な凹部であり、
アッパーカバーにはリブが設けられ、
前記リブは、前方に延び、車両本体の係合孔に係合可能な係合片を有し、
前記凹部は前記リブに形成されている、
車両のアンダーカバー組付構造。
【請求項2】
前記係合片の側面には車両本体に対する車幅方向へのアッパーカバーの移動を規制する突部が形成されている、
請求項に記載の車両のアンダーカバー組付構造。
【請求項3】
アンダーカバーの下面における前記延設部の前端よりも前方には段差が形成されている、
請求項1又は請求項2に記載の車両のアンダーカバー組付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の前部或いは後部のフロア下に対してアンダーカバーを組み付けるための構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両のフロア下にアンダーカバーを設けることにより、フロア下における空気の流れを制御して車両の操縦安定性や燃費の向上を図るようにしている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1では、車両の後端にフロアパネルが取り付けられており、このフロアパネルの前方に延びる延設部の下方においてアンダーカバーの後端が同延設部と上下に重なり合っている。そして、フロアパネルの延設部及びアンダーカバーの後端にそれぞれ形成された孔に共通の締結部材が挿通されることにより、フロアパネルに対してアンダーカバーが組み付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011―57147号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、車両の後部のフロア下にアンダーカバーを組み付けるに際して、組付作業者はフロア下で、既に車両の後端に組み付けられているフロアパネルやバンパー等のアッパーカバーに近接するように、前方から後方に向けてアンダーカバーを移動させる。そして、例えば図8に示すように、アッパーカバー120の延設部124の上面にアンダーカバー140の後端を重ね合わせ、延設部124の孔124aとアンダーカバー140の孔140aとを一致させて、これらの孔124a,140aに締結部材154を挿通する。そのため、アッパーカバー120とアンダーカバー140との位置合せ作業及び締結部材の挿通作業が繁雑なものとなっている。
【0006】
本発明の目的は、アッパーカバーに対してアンダーカバーを容易に組み付けることができる車両のアンダーカバー組付構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための車両のアンダーカバー組付構造は、車両のフロア下に対してアンダーカバーを組み付けるための構造であって、車両の後端に設けられ、前方に延びる延設部を有するアッパーカバーと、車両のフロア下に設けられ、前記延設部と鉛直方向に重なり合うアンダーカバーと、を備え、前記延設部及びアンダーカバーには共通の締結部材が挿通される孔が形成され、アッパーカバー及びアンダーカバーの少なくとも一方には、前記延設部の孔とアンダーカバーの孔とが一致している状態においてアッパーカバーに近接する方向へのアンダーカバーの移動を規制する規制部が設けられ、アンダーカバーは前記延設部の上方に位置し、前記規制部は前記延設部の上方に設けられ、アンダーカバーの後端が当接可能な凹部であり、アッパーカバーにはリブが設けられ、前記リブは、前方に延び、車両本体の係合孔に係合可能な係合片を有し、前記凹部は前記リブに形成されている
【0008】
アンダーカバーを車両に組み付けるに際して、作業者は、既に車両に組み付けられているアッパーカバーの延設部に対してアンダーカバーを鉛直方向に重ね合わせ、延設部の孔とアンダーカバーの孔とを一致させるために、アッパーカバーに近接する方向にアンダーカバーを移動させる。このとき、上記構成によれば、アッパーカバー及びアンダーカバーの少なくとも一方に規制部が設けられているため、上記のようにアンダーカバーを移動させていき、延設部の孔とアンダーカバーの孔とが一致した状態となると、この状態からのアッパーカバーに近接する方向へのアンダーカバーの更なる移動が規制される。従って、アッパーカバーとアンダーカバーとの位置合せを容易に行なうことができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、アッパーカバーに対してアンダーカバーを容易に組み付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】一実施形態に係る車両のリアバンパー、アンダースポイラー及びアンダーカバーを中心とした斜視図。
図2図1の2−2線に沿った断面図。
図3図1の3−3線に沿った断面図。
図4】同実施形態のブラケット、スクリューグロメット、アンダースポイラー、及びタッピングねじの分解斜視図。
図5】同実施形態におけるアンダースポイラーの係合片を中心とした断面図。
図6図5の6−6線に沿った断面図。
図7図2に対応する断面図であって、(a)は、ブラケットの係合孔にアンダースポイラーの係合片が係合された状態を示す断面図、(b)は、ブラケットとアンダースポイラーの延設部との隙間にアンダーカバーの後端が挿入された状態を示す断面図。
図8】従来のアッパーカバー及びアンダーカバーを中心とした断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図1図7を参照して、車両のアンダーカバー組付構造を具体化した一実施形態について説明する。尚、本実施形態の車両の後部構造は車幅方向の中央位置を中心に基本的に対称な構造とされている。このため、以降においては、車両の右側の構造について説明し、左側の構造については説明を省略する。
【0012】
図1に示すように、車両の後端にはリアバンパー10が設けられている。リアバンパー10の上部には複数の孔10aが形成されており、これらの孔10aに図示しないボルトが挿通され、同ボルトが車両本体90のタップ孔に螺入されることによってリアバンパー10が図2及び図3に示す車両本体90に対して組み付けられている。
【0013】
図1図3に示すように、リアバンパー10の下方にはアンダースポイラー20が設けられている。
図2及び図3に示すように、アンダースポイラー20は、スポイラー本体22、このスポイラー本体22から後方に向けて延び、その後端において屈曲して斜め前下方に延びて同スポイラー本体22の下端に接続される整流部22aを有している。スポイラー本体22はリアバンパー10の下面に沿って前後に延びており、その前端において屈曲して下方に延びている。また、スポイラー本体22の下端には整流部22aの下面に沿って前方に延びる延設部24が形成されている。
【0014】
図3に示すように、スポイラー本体22には前方に延びる固定片23が形成されている。また、リアバンパー10には固定片23の上方に位置して重なり合う固定片13が形成されている。これら固定片23、13にはそれぞれ孔23a、13aが形成されている。これら孔23a、13aにボルト72が挿通され、同ボルト72が固定片13に組付けられた雌ねじ74に螺入されることによってリアバンパー10に対してアンダースポイラー20が固定されている。
【0015】
図2に示すように、車両本体90におけるアンダースポイラー20の前方であって上記固定片13よりも車幅方向内側には、アンダースポイラー20及び後述するアンダーカバー40を車両本体90に固定するためのブラケット60が設けられている。ブラケット60は上下に延び、その下端において屈曲して前方に延びている。
【0016】
図2及び図4に示すように、ブラケット60の上下に延びる部分には係合孔62が形成されている。また、ブラケット60の前後に延びる部分には嵌入孔64が形成されている。この嵌入孔64には下方からスクリューグロメット52が回転不能に嵌入されている。
【0017】
スポイラー本体22の前面には鉛直方向に延びるリブ28が突設されている。このリブ28には前方に延びる係合片30が形成されている。
係合片30は、ブラケット60の係合孔62に係合可能な部位であり、その下面には車幅方向に延びる凹部30aが形成されている。また、係合片30の一方の側面には突部32が形成されている。
【0018】
従って、図5に示すように、アンダースポイラー20の係合片30がブラケット60の係合孔62に挿入され、係合孔62の下縁に凹部30aが係合されると、同下縁に係合片30の凹部30aの上面が当接することによってアンダースポイラー20の下方への移動が規制される。この状態において、係合孔62の下縁に係合片30の凹部30aの前面或いは後面が当接することによってアンダースポイラー20の後方への移動或いは前方への移動が規制される。
【0019】
このとき、図6に示すように、係合孔62の側縁に係合片30の突部32が当接することによって車幅方向における突部32の突出方向へのアンダースポイラー20の移動が規制される。また、突部32の前面は、車幅方向において係合片30の本体から離間するほど後方に位置するように傾斜した傾斜面32aとされている。従って、アンダースポイラー20の係合片30をブラケット60の係合孔62に挿入する際に上記傾斜面32aによって係合片30の挿入が案内される。
【0020】
図1図3に示すように、車両のフロア下にはアンダーカバー40が設けられている。
図2及び図3に示すように、アンダーカバー40の後端はアンダースポイラー20の延設部24の上方に位置して重なり合っている。延設部24及びアンダーカバー40にはそれぞれ孔24a,40aが形成されている。これら孔24a,40aには下方から共通のタッピングねじ54が挿通され、同タッピングねじ54がブラケット60に組み付けられたスクリューグロメット52に螺入されている。このことによって、アンダーカバー40がアンダースポイラー20及びブラケット60に対して組み付けられている。
【0021】
図2に示すように、アンダーカバー40の下面における延設部24の前端よりも前方には、同前方の部位を一段低くする段差44が形成されている。
また、リブ28の下端には切欠28aが形成されており、この切欠28aと延設部24の上面とによって凹部38が区画されている。
【0022】
次に、アンダースポイラー20及びアンダーカバー40の車両本体90への組み付け手順について説明する。
図4に示すように、作業者は、まず、車両本体90に固設されているブラケット60の嵌入孔64に下方からスクリューグロメット52を嵌入する。
【0023】
次に、図5に示すように、ブラケット60の係合孔62にアンダースポイラー20の係合片30を後方から挿入して同係合孔62に係合させる。このことによって、ブラケット60、すなわち車両本体90に対するアンダースポイラー20の上下方向及び前後方向への移動が規制され、ブラケット60とアンダースポイラー20との位置合せが容易に行なわれる。この状態において、図3に示すように、ボルト72及び雌ねじ74によって、リアバンパー10に対してアンダースポイラー20を固定する。このことによって、図7(a)に示すように、アンダースポイラー20の係合片30とブラケット60の係合孔62の内縁とが非接触の状態となる。
【0024】
次に、図7(a)に矢印にて示すように、アンダーカバー40を車両本体90に組み付ける。このとき、アンダースポイラー20の延設部24とブラケット60との隙間に向けて前方からアンダーカバー40を移動させる。そして、図7(b)に示すように、アンダースポイラー20の延設部24とブラケット60との隙間にアンダーカバー40の後端を挿入し、上記延設部24の上にアンダーカバー40の後端を重ね合わせる。また、上記延設部24の孔24aとアンダーカバー40の孔40aとを一致させる。そして、上記延設部24の孔24aとアンダーカバー40の孔40aとが一致した状態になると、この状態からのアンダーカバー40の更なる後方への移動はアンダーカバー40の後端が凹部38の内縁に当接することによって規制される。従って、アンダースポイラー20とアンダーカバー40との位置合せを容易に行なうことができる。
【0025】
最後に、上記延設部24の孔24aとアンダーカバー40の孔40aとに下方からタッピングねじ54を挿通し、スクリューグロメット52に螺入することによって、アンダーカバー40がアンダースポイラー20との位置合せがなされた状態で同アンダースポイラー20と共にブラケット60に組み付けられる。
【0026】
以上説明した本実施形態に係る車両のアンダーカバー組付構造によれば、以下に示す効果が得られるようになる。
(1)アンダースポイラー20の延設部24及びアンダーカバー40には共通のタッピングねじ54が挿通される孔24a,40aが形成されている。また、延設部24の上方には、延設部24の孔24aとアンダーカバー40の孔40aとが一致している状態において、アンダーカバー40の後方への移動を、アンダーカバー40の後端との当接によって規制する凹部38が形成されている。こうした構成によれば、アンダースポイラー20とアンダーカバー40との位置合せを容易に行なうことができ、アンダースポイラー20に対してアンダーカバー40を容易に組み付けることができる。
【0027】
また、既に車両に組み付けられているアンダースポイラー20の延設部24の上にアンダーカバー40の後端が重ね合わせられるため、アンダーカバー40の後端の下方への移動が延設部24によって規制される。従って、延設部の下にアンダーカバーが重ね合わせられる構成に比べて、延設部24の孔24aとアンダーカバー40の孔40aとの位置合せやタッピングねじ54の挿入を容易に行なうことができる。
【0028】
(2)アンダースポイラー20には前後方向に延びるリブ28が設けられている。リブ28は、前方に延び、車両本体90に固設されたブラケット60の係合孔62に係合可能な係合片30を有している。また、凹部38はリブ28に形成された切欠28aと延設部24の上面とによって区画されている。こうした構成によれば、アンダースポイラー20のリブ28から前方に延びる係合片30を車両本体90に固設されたブラケット60の係合孔62に係合させることによって車両本体90に対するアンダースポイラー20の移動が規制される。このため、車両本体90に対するアンダースポイラー20の位置決めを行なうことができる。
【0029】
(3)係合片30の側面には車両本体90に対する車幅方向へのアンダースポイラー20の移動を規制する突部32が形成されている。こうした構成によれば、車両本体90に対するアンダースポイラー20の車幅方向における位置決めを容易に行なうことができる。従って、位置決めされたアンダースポイラー20に対してアンダーカバー40を容易に組み付けることができる。
【0030】
(4)アンダーカバー40の下面における延設部24の前端よりも前方には段差44が形成されている。このため、アンダーカバー40を後方に移動させる際に、作業者は、上記段差44と延設部24の前端との距離に基づいて、延設部24の孔24aとアンダーカバー40の孔40aとが一致するまでに必要なアンダーカバー40の移動量を容易に把握することができる。
【0031】
なお、本発明に係る車両のアンダーカバー組付構造は、上記実施形態にて例示した構成に限定されるものではなく、これを適宜変更した例えば次のような形態として実施することもできる。
【0032】
・アンダーカバー40の上記段差44に代えて、アンダーカバーの下面におけるアンダースポイラーの延設部の前端よりも前方に目印としての凸部や凹部を形成するようにしてもよい。また、こうした目印のための段差や凸部、凹部をアンダーカバーに設けないこともできる。
【0033】
・アンダースポイラー20の係合片30から突部32を省略することもできる。
・本発明に係る規制部は上記実施形態において例示した凹部38に限られるものではない。アンダースポイラーの延設部の孔とアンダーカバーの孔とが一致している状態において後方へのアンダーカバーの移動を規制する部位であればよく、例えば突片等の面によって規制部を構成することもできる。
【0034】
・上記実施形態では、アッパーカバーの一例としてアンダースポイラー20について説明したが、アンダースポイラー20を省略し、アッパーカバーをリアバンパーとして具体化することもできる。
【0035】
・本発明に係るアッパーカバーは車両の後端に設けられるものに限定されず、車両の前端に設けられる例えばフロントバンパーとして具体化することもできる。
【符号の説明】
【0036】
10…リアバンパー、10a…孔、13…固定片、13a…孔、20…アンダースポイラー(アッパカバー)、22…スポイラー本体、23…固定片、23a…孔、24…延設部、24a…孔、28…リブ、28a…切欠、30…係合片、30a…凹部、32…突部、32a…傾斜面、38…凹部(規制部)、40…アンダーカバー、40a…孔、44…段差、52…スクリューグロメット、54…タッピングねじ(締結部材)、60…ブラケット、62…係合孔、64…嵌入孔、72…ボルト、74…雌ねじ、90…車両本体。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8