(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6014857
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年10月26日
(54)【発明の名称】電気機器収納用箱の扉保持部材
(51)【国際特許分類】
H05K 5/03 20060101AFI20161013BHJP
H02B 1/38 20060101ALI20161013BHJP
【FI】
H05K5/03 D
H02B1/08 D
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-220944(P2012-220944)
(22)【出願日】2012年10月3日
(65)【公開番号】特開2014-75404(P2014-75404A)
(43)【公開日】2014年4月24日
【審査請求日】2015年8月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000227401
【氏名又は名称】日東工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085523
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 文夫
(74)【代理人】
【識別番号】100078101
【弁理士】
【氏名又は名称】綿貫 達雄
(74)【代理人】
【識別番号】100154461
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 由布
(72)【発明者】
【氏名】山澤 英丈
【審査官】
梅本 章子
(56)【参考文献】
【文献】
実開平05−075891(JP,U)
【文献】
特開2012−182983(JP,A)
【文献】
実開昭61−037366(JP,U)
【文献】
実開昭63−121483(JP,U)
【文献】
実開平02−096778(JP,U)
【文献】
実開昭64−054377(JP,U)
【文献】
実開平02−038782(JP,U)
【文献】
特開2011−052370(JP,A)
【文献】
特開2013−197242(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 5/00 − 5/06
H02B 1/00 − 7/08
E05C 1/00 − 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気機器収納用箱の水切部を備えた筐体に、ヒンジ軸により枢着された扉を開扉位置に保持する電気機器収納用箱の扉保持部材であって、
筐体の前記水切部に係合される水切係合部と、
扉の表面部と側端部とに亘り係合される扉係合部とが連結部を介して一体に連結され、
ヒンジ軸方向の外側から該電気機器収納用箱の上部及び下部のうち少なくとも一方の前記水切部及び前記扉の表面部と側端部とに亘り嵌め込んで使用されることを特徴とする電気機器収納用箱の扉保持部材。
【請求項2】
脱落防止片を有することを特徴とする請求項1記載の電気機器収納用箱の扉保持部材。
【請求項3】
前記脱落防止片は、前記水切部もしくは前記扉の側端部に当接するものであることを特徴とする請求項2記載の電気機器収納用箱の扉保持部材。
【請求項4】
前記脱落防止片は、回動自在なものであることを特徴とする請求項3記載の電気機器収納用箱の扉保持部材。
【請求項5】
前記脱落防止片を仮保持する仮保持部を備えたことを特徴とする請求項4記載の電気機器収納用箱の扉保持部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気機器収納用箱の扉を開いた状態に保持するための電気機器収納用箱の扉保持部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電気機器収納用箱の筐体内部に機器の取付けや配線作業などを行なう場合には、扉を開放して作業が行われるが、開いていた扉が衝撃や強風により不用意に閉じると、作業者に危険が及ぶおそれがある。このため、作業中は扉を開扉状態に安定に保持させておくことが必要である。
【0003】
そこで、筐体と扉との間に扉保持部材を配置し、扉を開扉状態に安定に保持させている。その一例は特許文献1に示される通りである。この扉保持部材は、筐体の開口部底部にストッパ係止具を固設し、扉の内側底部にストッパ位置可変係止具を固設し、これらの間に棒状の係止メンバを掛け渡して扉を開扉状態に安定保持する構造である。
【0004】
このように筐体や扉にストッパ係止具やストッパ位置可変係止具を固設する構造は、筐体や扉にドリルによる穴開け加工を行なう必要がある。しかし電気機器収納用箱の場合には、防水のために筐体や扉に穴開け加工を行なえないことが多い。
【0005】
なお、扉を開いたときに扉と筐体との間に形成される隙間に硬い部材を差し込んで扉を開扉状態に保つことも考えられるが、扉の回転軸に近い部分には大きな力が作用するので、硬い部材が扉を変形させてしまうおそれがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−314974号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って本発明の目的は上記した従来の問題点を解決し、筐体や扉に加工を施す必要がなく、しかも扉を開扉状態に確実に保持することができる電気機器収納用箱の扉保持部材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するためになされた本発明は、電気機器収納用箱の水切部を備えた筐体に、ヒンジ軸により枢着された扉を開扉位置に保持する電気機器収納用箱の扉保持部材であって、筐体の前記水切部に係合される水切係合部と、扉の
表面部と側端部
とに亘り係合される扉係合部とが連結部を介して一体に連結され、ヒンジ軸方向
の外側から該電気機器収納用箱の上部及び下部のうち少なくとも一方の前記水切部及び前記扉の
表面部と側端部
とに亘り嵌め込んで使用されることを特徴とするものである。
【0009】
なお請求項2のように、本発明の扉保持部材は脱落防止片を有することが好ましく、その脱落防止片は、水切部もしくは扉の側端部に当接するものであることが好ましい。また請求項4のように、前記脱落防止片は回動自在なものであることが好ましく、請求項5のように、扉保持部材は脱落防止片を仮保持する仮保持部を備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の電気機器収納用箱の扉保持部材は、ヒンジ軸方向
の外側から水切部及び扉の
表面部と側端部
とに亘り嵌め込んで使用されるものであり、従来のような穴開け加工を要することがなく、ねじなどで固定する必要もない。従って筐体や扉に加工を施すことなく、容易に電気機器収納用箱に装着することができる。また、筐体の水切部は水切係合部によって保持され、扉の
表面部と側端部
とに亘る箇所が扉係合部によって保持されるので、確実に開扉状態を保持することができるうえ、扉を変形させるおそれもない。
【0011】
請求項2、3のように扉保持部材に脱落防止片を設けておけば、扉保持部材がヒンジ軸方向に脱落することを防止することができる。また請求項4のように脱落防止片を回動自在としておけば、脱落防止操作が容易となり、請求項5のように脱落防止片を仮保持する仮保持部を設けておけば、脱落防止片が不意に動いてしまうことを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図5】垂直設置された電気機器収納箱への装着例を示す斜視図である。
【
図6】垂直設置された電気機器収納箱への装着例を示す斜視図である。
【
図9】電気機器収納箱への装着例を示す斜視図である。
【
図10】電気機器収納箱への装着例を示す斜視図である。
【
図11】第1の実施形態の電気機器収納箱への装着状態の部分断面図である。
【
図12】第2の実施形態の電気機器収納箱への装着状態の部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に本発明の好ましい実施形態を示す。
図1〜
図7は本発明の第1の実施形態を示す図であり、1は電気機器収納箱の筐体、2はその扉である。筐体1の開口面の周囲には、水平辺3と、垂直な立上辺4と、その上端を外側に折り曲げた折曲辺5とからなる水切部6が形成されている。扉2はヒンジ7によって筐体1の開口面に軸支されている。扉2はハンドル等が取付けられる表面部8と、表面部8の端部を筐体1側に折り曲げ形成した側端部9を備えている。扉2を
図1のように開いた状態に保持するため、本発明の扉保持部材が使用される。
【0014】
図2に示すように、本発明の扉保持部材は、筐体1の水切部6の外側から係合される水切係合部10と、扉2の側端部9に係合される扉係合部11とをL字平板状の連結部12を介して一体に連結したものである。本実施形態では扉保持部材の全体が金属板により構成されているが、鋳造品としても、あるいは樹脂成形品としても差支えない。金属製とした場合には、その表面を塗装したり樹脂コーティングすることによって、電気機器収納箱が疵付けないようにしておくことが好ましい。なお、第1の実施形態の扉保持部材は、ヒンジ軸方向の外側から筐体1の上部及び下部のうち少なくとも一方の水切部6と扉2の側端部9に嵌め込んで使用される。すなわち、1つの扉保持部材を筐体1の上部もしくは下部に使用することができるし、2つの扉保持部材を筐体1の上部及び下部の両方同時に使用することもできる。
【0015】
水切係合部10は、筐体1の水平辺3の上面に当接する水平当接部13と、立上辺4の外側面に当接する立上当接部14と、折曲辺5の下面に当接する折曲当接部15とから構成されている。この水切係合部10は、L字平板状の連結部12の先端部に形成されており、筐体1の水切部6に外側から嵌め込まれる部分である。なお、折曲当接部15は省略することもできる。
【0016】
扉係合部11は、扉2の側端部9に係合させることができるように断面コの字状に形成されている。扉2の表面に当接する短辺16と、扉2の裏面に当接する長辺17とを備え、これらの2つの辺の間に扉2の側端部9を挟み込むことにより、扉2を開扉位置に保持することができる。なお、水切係合部10及び扉係合部11のうち、筐体1や扉2と当接する表面には、ゴムパッキンなどのすべり止めを設けておけば、すべり止め効果と密着効果によって、より確実な扉保持効果を得ることができる。
【0017】
これらの筐体1の水切部6と扉2の側端部9だけでも扉2を開扉位置に保持することはできるが、扉保持部材がヒンジ7の軸方向に外れる可能性がある。そこで本実施形態では、扉保持部材に脱落防止片18を設けてある。
【0018】
脱落防止片18は、前記した扉係合部11の長辺17の先端を連結部12と平行に折り曲げた脱落防止片取付部19に、ねじ20等の適宜の手段によって回動自在に取り付けられている。脱落防止片18は連結部12と平行な水切部当接辺21と、ねじ20を挟んだ反対側を水切部当接辺21に対して垂直に折り曲げた扉当接辺22を備えている。なお、扉係合部11の長辺17には扉当接辺22が通過できる通し孔23が形成されている。
【0019】
この脱落防止片18は、
図2の状態から時計方向に回転させたとき、水切部当接辺21が筐体1の水切部6の立上辺4の筐体内面側に当接し、水切係合部10と水切部当接辺21とによって水切部6を挟み込むようになっている。また、これと同時に扉当接辺22は通し孔23を通過して扉2の側端部9の筐体内面側に当接し、扉係合部11と扉当接辺22との間に扉2の側端部9を挟み込むようになっている。このため、脱落防止片18を回転させておけば、扉保持部材が脱落することはない。
【0020】
なお、脱落防止片18を脱落防止位置に保持するため、本実施形態では水切部当接辺21に仮保持孔24を設け、脱落防止片取付部19には頭部をドーム型としたゴム製のブッシュ25を設けてある。
図3に示すように、脱落防止片18が脱落防止位置まで回動されたときにブッシュ25が仮保持孔24に嵌まり込み、その位置に保持される。しかし仮保持可能な構造であれば必ずしもブッシュ25に限定されるものではなく、適宜の突起を形成しておいても差し支えない。
【0021】
なお、電気機器収納箱は
図1に示されるように平置き型として水平設置されるほか、壁掛け型として垂直設置されることもある。前者の場合には脱落防止片18が自由に回転できるように軸支しておけば、自重により回動できるようになり、容易に脱落防止位置に保持される。また後者の場合には脱落防止片18にある程度の力を加えないと回転できないようにしておけば、脱落防止位置から動いてしまうことがない。
【0022】
このように構成された扉保持部材は、
図4に示すように扉2を筐体1に対して所定角度開いた状態で、ヒンジ軸方向の外側から装着されるものであり、装着後に脱落防止片18を脱落防止位置に回動させておく。この結果、筐体1の水切部6と扉2の側端部8とが連結部12によって所定角度に安定に保持され、扉2を開扉位置に保持することができる。しかも穴開け加工を要することがなく、ねじなどで固定する必要もない。
【0023】
なお、
図5と
図6は垂直設置された電気機器収納箱に第1の実施形態の扉保持部材を装着した様子を示す図である。
【0024】
次に本発明の第2の実施形態を示す。この第2の実施形態の扉保持部材は、電気機器収納箱の内側からヒンジ軸方向に装着する構造である。
【0025】
図7、
図8に示すように、この扉保持部材も水切係合部50と扉係合部51とをL字平板状の連結部52を介して一体に連結したものである。水切係合部50は筐体1の水切部6の内側から係合されるもので、水切部6の立上辺4の下側に差し込まれる一対の垂直差込辺53と、水切部6の折曲辺5の上面に当接する水平辺54とからなる。これらの垂直差込辺53の上端面と水平辺54との間に側面視するとコ字状部が形成されるので、その間に筐体1の水切部6が挟まれるように装着される。なお、第2の実施形態の扉保持部材は、ヒンジ軸方向の筐体内側から筐体1の上部及び下部のうち少なくとも一方の水切部6と扉2の側端部9に差込んで使用される。すなわち、1つの扉保持部材を筐体1の上部もしくは下部に使用することができるし、2つの扉保持部材を筐体1の上部及び下部の両方同時に使用することもできる。
【0026】
扉係合部51は、連結部52に対して直角に折り曲げられた扉裏面当接部55と、これに対して反対方向に平行に延び、扉2の側端部9の下側面9aに当接する下側面当接部56と、その先端を直角に折り曲げ、側端部9の筐体内面側に当接する扉側部当接部57とからなる。
図10に示すように扉係合部51はこれらの各部によって扉2の側端部9と扉裏面を挟み込み、扉2を保持するものである。
【0027】
また、前記の水平辺54の先端部を直角に折り曲げて脱落防止辺取付部58が形成され、この部分に脱落防止辺59が軸60によって枢着されている。脱落防止辺59は扉当接辺61を備え、
図10のように回転させたときに扉2の側端部9の筐体外面側に位置し、扉保持部材が電気機器収納箱の内側方向に外れることを防止する。なお脱落防止辺59はその下部に規制辺62を備え、前記の水平辺54の先端部に形成された規制辺当接部63によって
図10の位置を保持できるようになっている。
【0028】
このように構成された第2の実施形態の扉保持部材は、
図9に示すように筐体1の内側から水切部6と扉2の側端部9に向かって差込し、
図10に示すように脱落防止辺59を回転させることによって脱落しないように装着するものである。また、扉係合部51を水切係合部50と同一直線上から離した位置に形成することで、扉2に閉まる方向に力が加わっても、扉回転方向に力が加わり、扉保持部材がずれることなく扉2を保持することができる。この結果、第1の実施形態と同様に扉2を開扉位置に安定に保持することができる。
【0029】
なお、
図11に第1の実施形態の装着状態の部分断面図を示し、
図12に第1の実施形態の装着状態の部分断面図を示した。
【符号の説明】
【0030】
1 電気機器収納箱の筐体
2 扉
3 水平辺
4 立上辺
5 折曲辺
6 水切部
7 ヒンジ
8 表面部
9 側端部
9a 下側面
10 水切係合部
11 扉係合部
12 連結部
13 水平当接部
14 立上当接部
15 折曲当接部
16 短辺
17 長辺
18 脱落防止片
19 脱落防止片取付部
20 ねじ
21 水切部当接辺
22 扉当接辺
23 通し孔
24 仮保持孔
25 ブッシュ
50 水切係合部
51 扉係合部
52 連結部
53 垂直差込辺
54 水平辺
55 扉裏面当接部
56 下側面当接部
57 扉側部当接部
58 脱落防止辺取付部
59 脱落防止辺
60 軸
61 扉当接辺
62 規制辺
63 規制辺当接部