特許第6014872号(P6014872)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ダイハツ工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6014872-ニーボルスタ 図000002
  • 特許6014872-ニーボルスタ 図000003
  • 特許6014872-ニーボルスタ 図000004
  • 特許6014872-ニーボルスタ 図000005
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6014872
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年10月26日
(54)【発明の名称】ニーボルスタ
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/045 20060101AFI20161013BHJP
【FI】
   B60R21/045 F
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-70688(P2012-70688)
(22)【出願日】2012年3月27日
(65)【公開番号】特開2013-203089(P2013-203089A)
(43)【公開日】2013年10月7日
【審査請求日】2015年3月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115200
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 修之
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 慶司
(72)【発明者】
【氏名】海老名 瞬
【審査官】 飯島 尚郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−213128(JP,A)
【文献】 特開2005−343345(JP,A)
【文献】 米国特許第06086098(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/00−21/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機能性部品がインパネ内に配設された車両において、インパネリインフォースに設けられ乗員の膝位置に向けて突出した挫屈可能なブラケット部を有するニーボルスタであって、
前記ブラケット部はその周辺の配線類よりも上方に配設され、その車両前方側の部分が前記インパネリインフォースよりも前記機能性部品側に突出した形状を有し、
前記ブラケット部の下面に、衝突時に前記機能性部品と乗員の膝とからの荷重を受けて前記ブラケット部の下方に凸となるように座屈するのを促進する座屈促進部を形成し、該座屈促進部が前記インパネリインフォースよりも車両後方側に突出することにより、
衝突時に前記ブラケット部が前記機能性部品に早めに当接することで乗員の膝にかかる荷重のピークを抑制し、前記配線類を挟み込むことを抑制することを特徴とするニーボルスタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衝突時における乗員の脚部への負担を軽減しつつハーネス類の損傷を防止し得るニーボルスタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、車両の運転席又は助手席の前方には衝突時に運転者の膝を受けとめ、その移動を拘束する機能を有するニーボルスタが設けられている。例えば、特許文献1では、衝突時に乗員の膝への衝撃を吸収するため、インパネリインフォースから乗員の膝の方向に向けて挫屈可能なブラケット部を有したニーボルスタが設けられている。
【0003】
しかしながら、乗員の体型や着座位置によっては、乗員方向斜め下方に突出したブラケット部が衝突時に膝からの衝撃を受けてインパネリインフォースより前方に挫屈変形すると、そのブラケット部とブレーキブースタ等の機能部品との間に配設されるハーネス類を挟み込んでしまいハーネス類の短絡を招くおそれがある。また、ハーネス類が堅い部材の場合には衝突時の膝への負担も大きいものとなる(詳細な説明は後述する)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−164811号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、以上の事情に鑑みて創作されたものであり、衝突時における乗員の膝への負担を軽減することが可能である。さらに本発明によれば乗員の膝及びブレーキブースタ等の機能部品からの荷重でハーネス類が短絡等することを防止することが可能な構成のニーボルスタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために本発明では、機能性部品がインパネ内に配設された車両において、インパネリインフォースに設けられ乗員の膝位置に向けて突出した挫屈可能なブラケット部を有するニーボルスタを提供する。
本ニーボルスタは、前記ブラケット部はその周辺の配線類よりも上方に配設され、その車両前方側の部分が前記インパネリインフォースよりも前記機能性部品側に突出した形状を有している。
【0007】
本発明は、インパネ内に硬い機能性部品が配設されている車両を想定している。ここでの機能性部品とは、例えば運転席側のインパネ内に配設されるブレーキブースタや助手席側のインパネ内に配設されるエアコンユニットなどである。本ニーボルスタでは、そのブラケット部がインパネリインフォースよりもブレーキブースタ等の機能性部品側に突出する形状を有している。このため衝突時にブレーキブースタ等が車内に侵入したとしてもブラケット部がブレーキブースタ等に当接することで衝突エネルギーを吸収することができる。このときブレーキブースタ等と乗員の膝との間の荷重で本ニーボルスタのブラケット部が変形したとしてもそのブラケット部がブレーキブースタ等に早めに当接するので乗員の膝にかかる荷重のピークを抑制することができる。
【0008】
また、本発明のニーボルスタでは、前記ブラケット部の下面に、衝突時に前記機能性部品と乗員の膝とからの荷重を受けて前記ブラケット部の下方に凸となるように座屈するのを促進する座屈促進部を形成し、該座屈促進部が前記インパネリインフォースよりも車両後方側に突出することが好ましい。
【0009】
本ニーボルスタによれば、衝突時にブラケット部の下面の座屈促進部が確実に下方に凸となるように屈曲させることができるためブラケット部の周辺のハーネス類(ワイヤーハーネス等の配線類全般を意味する)を挟み込んで損傷させ短絡させることを抑制できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明のニーボルスタによれば、衝突時における乗員の膝への負担を軽減することが可能であり、さらに衝突時の乗員の膝からの入力でハーネス類を挟み込んで短絡等させることを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明のニーボルスタの実施形態の衝突前後の様子の一例がその略側面視が示されている。(a)は衝突前、(b)は衝突後のニーボルスタ近傍の略側面視が示されている。
図2】衝突前における座屈促進部の周辺のみの略側面拡大図であり、(a)は図1に示す座屈促進部の側面拡大図であり、(b)は(a)の変形例である。
図3】衝突前におけるブラケット部及びその座屈促進部の略底面視であり、(a)は図2(b)の座屈促進部1b’、切欠2b’を示したものであり、(b)及び(c)は(a)の変形例である。
図4】従来のニーボルスタの衝突前後の様子の一例がその略側面視が示されている。(a)は衝突前、(b)は衝突後のニーボルスタ近傍の略側面視が示されている。
【発明を実施するための形態】
【0012】
従来のニーボルスタの略構成例
まず、本発明の実施形態に係るニーボルスタを説明する前提として、従来のニーボルスタの概ねの構成について例示説明する。
【0013】
図4には、従来のニーボルスタ13の衝突前後の様子の一例がその略側面視が示されている。図4において紙面上が車両の上方、紙面左が車両の前方を示している。また、図4の紙面方向は車両の幅方向を示している。図4(a)は、衝突前のニーボルスタ13近傍の略側面視である。この例ではブレーキブースタ4がインパネ内に配設されている。ニーボルスタ13は概ねブラケット部11と発泡材12とで構成されている。ブラケット部11は、ニーボルスタ13の外殻を構成しており、発泡材12をブラケット部11が覆っている。発泡材12は、スチロール材や硬質ウレタン材等で形成されている。
【0014】
ニーボルスタ13のブラケット部11は、車両の幅方向に延びており(図示せず)、インパネリインフォース5に連結することで車体に固定されている。また、ブラケット部11は全体的にインパネリインフォース5より車両後方側に位置しており、ブレーキブースタ4とある程度の距離だけ離れて対向している。ブラケット部11とブレーキブースタ4との間には、ハーネス類6が配設されている。ブラケット部11の車両後方側は車室内の空間であり、衝突前には通常、所定距離だけ離れて乗員の膝7が位置する。
【0015】
次に図4(b)は、衝突後のニーボルスタ13近傍の略側面視を示している。衝突時にはブレーキブースタ4やニーボルスタ13が車両後方側に進入し、乗員の膝7がブラケット部11の車内側表面に当接する。このときブレーキブースタ4とニーボルスタ13との間にハーネス類6が挟み込まれてしまう可能性があり、乗員の膝からの荷重によりハーネス類が短絡してしまう可能性があった。また、衝突時にニーボルスタ13がハーネス類6に当接するのでニーボルスタ13の変形ストロークにも限界があり、衝撃吸収性能も低下する。したがって、このニーボルスタ13では衝突時における乗員の膝7の傷害値も上がってしまうおそれがあった。
【0016】
本発明のニーボルスタの具体例
次に、本発明のニーボルスタ3の実施形態について説明する。図1には、図4の場合と同様に本ニーボルスタ3の衝突前後の様子の略側面視が示されている。図1においても紙面上が車両の上方、紙面左が車両の前方を示しており、紙面垂直方向は車両の幅方向を示している。図1(a)は、衝突前のニーボルスタ3近傍の略側面視である。この実施形態でもブレーキブースタ4がインパネ内に配設され、ニーボルスタ3は概ねブラケット部1と発泡材2とで構成されている。ブラケット部1は、ニーボルスタ3の外殻を構成しており、発泡材2をブラケット部1が覆っている。発泡材2は、スチロール材や硬質ウレタン材等で形成されている。
【0017】
ニーボルスタ3のブラケット部1は、車両の幅方向に延びており(図示せず)、インパネリインフォース5に連結することで車体に固定されている。ブラケット部1は、図4の従来のブラケット部11と異なり、車両前方側に延びている。図1において一点鎖線Xは、インパネリインフォース5の鉛直方向を示したものであり、ブラケット部1の車両前方側の部分1aが一点鎖線Xよりも突出していることがわかる。すなわち、本ニーボルスタ3は、図4の従来のニーボルスタ13よりも斜線部分の延設部分3aを有していることがわかる。したがって、延設部分3aの存在によりブラケット部1とブレーキブースタ4との距離は、図4の従来のニーボルスタ13の例よりも近くなっている。
【0018】
また、ブラケット部3の下面には、座屈促進部1bを有している。座屈促進部1bは車両前後方向からの挟時力が作用するとブラケット部3の下方に凸となるように座屈させる部分である。図1(a)では衝突前の状態でも座屈促進部1bが下方に突出するように示しているが、座屈促進部1bはハーネス類6より後方に位置していれば平坦であっても良い。また、ハーネス類6は、ブラケット部の下方に配設されている。なお、ブラケット部1の車両後方側は車室内の空間であり、衝突前には通常、所定距離だけ離れて乗員の膝7が位置する点は図4の場合と同様である。
【0019】
次に図1(b)は、衝突後のニーボルスタ3近傍の略側面視が示されている。衝突時にはブレーキブースタ4が車両後方側に進入し、衝突後の慣性力で乗員が前方に移動するため、乗員の膝7がブラケット部1の車内側表面に当接する。上記のようにブラケット部1はインパネリインフォース5よりもブレーキブースタ4側に突出しているため衝突時にブラケット部1がハーネス類6に当接するより早めにブレーキブースタ4に当接する。この点は、図1(a)に示すような衝突前のブラケット部1がハーネス類6よりも上方に配設される場合には、さらに顕著である。したがって、ブラケット部1の周辺のハーネス類6がブラケット部1とブレーキブースタ4とに挟み込まれて短絡することが抑制される。
【0020】
さらに、ブラケット部1がブレーキブースタ4に当接した後も乗員の膝7からの入力がある場合、ブレーキブースタ4と乗員の膝7とからの荷重によりブラケット部1が変形し、座屈促進部1bが下方に凸になるように順次突出していく。図1(b)では突出が進んで座屈促進部1bがハーネス類6の後方でハーネス類6より下方まで突出している。このブラケット部1の変形により衝撃荷重が十分に吸収されつつ乗員の膝7が直接ハーネス類6に接触することも回避できる。したがって、乗員の膝7への負担を大幅に低減できる。
【0021】
図2を参照すれば、衝突前における上述した座屈促進部1bの周辺のみの側面視を示した略拡大図である。図2(a)は、図1に示す座屈促進部1bの側面拡大図であり、図2(b)は(a)の変形例である。図2では図1と同様に紙面上が車両の上方、紙面左が車両の前方を示している。
図2(a)に示す座屈促進部1bは、前述するように下方に突出する形状であるがその位置はハーネス類6より後方かつ上方に位置している。座屈促進部1bは、最下部を変曲点として折り曲げられて形成されているためブラケット部1に前後方向の挟持力が作用すると変曲点に応力が集中に座屈を促進する。その結果、図1(b)に示すように座屈促進部1bが下方に延びていくこととなる。
【0022】
また、図2(b)は、図2(a)の変形例であり、ブラケット部1が座屈促進部1b’において幅方向に切断されている。そして、ブラケット部1に内封され発泡材2は座屈促進部1b’において切欠2b’が設けられている。この座屈促進部1b’、切欠2b’近傍の底面視が図3(a)に示されている。図3は紙面上が車両の前方、紙面左が車両の左方を示しており、一点鎖線Xは図2と同様にインパネリインフォース5の位置を示している。図3(a)からもわかるように座屈促進部1b’は幅方向に亘ってブラケット部1に切り込みが設けられており、その切り込みから発泡材2の切欠2b’が覗いている。この座屈促進部1b’の場合、この部分の剛性が下がるため座屈し易くなり、図1(b)のように下方に延びていくこととなる。以下、剛性が下がることで座屈を促進する変形例を説明する。
【0023】
図3(b)は、図3(a)の座屈促進部1b’の変形例としての座屈促進部1b”が示されている。この図からもわかるように座屈促進部1b”は、ブラケット部1の左右端に切欠を設けることで構成している。この場合、座屈促進部1b”に位置する発泡材2b”は特に処理していなくても良く、さらに効果的には図2(b)のごとき上への切欠を設けても良い。
【0024】
図3(c)は、図3(a)(b)の座屈促進部1b’、1b”の変形例としての座屈促進部1b’’’が示されている。この図からもわかるように座屈促進部1b’’’は、ブラケット部1に複数の貫通孔を設けることで構成している。この場合、座屈促進部1b’’’に位置する発泡材2b’’’は特に処理していなくても良く、さらに効果的には図2(b)のごとき上への切欠を設けても良い。
【0025】
以上、本発明におけるニーボルスタについての実施形態およびその概念について説明してきたが本発明はこれに限定されるものではなく特許請求の範囲および明細書等に記載の精神や教示を逸脱しない範囲で他の変形例、改良例が得られることが当業者は理解できるであろう。
【0026】
例えば、図1図3の本ニーボルスタ3では、のインパネ内にブレーキブースタ4を設ける車両の運転席側のニーボルスタを前提にして説明しているが、本発明のニーボルスタはこれに限定されるものではなく、ある程度の堅さを有するインパネ内に機能性部品が設けられた車両におけるニーボルスタに適用することができる。例えば、助手席前のインパネ内に設けられたエアコンユニットの後方にあるニーボルスタなどにも適用可能である。
【符号の説明】
【0027】
1、11 ブラケット部
1a、11a 部分
1b、11b 座屈促進部
2、12
発泡材
3、13 ニーボルスタ
3a 延設部分
4、14 ブレーキブースタ
5 インパネリインフォース
6 ハーネス類
7 膝

図1
図2
図3
図4